コンクリート建材およびその製造方法
【課題】装飾性を損なわずにコンクリート建材を製造する方法を提供する。
【解決手段】(a)コンクリートを型枠10内に充填する工程と、(b)鉛直方向に延びる挿通孔11dが形成された蓋11を型枠に載置する工程と、(c)側面の長手方向に亘って凹凸加工が施されたガラス棒12を、各挿通孔に挿通させたのち、流動状態のコンクリート内に挿入する工程と、(d)コンクリートの固化成型物13を切断して、ガラス棒12の端面が表面に露出する板状の固化成型物13bを得る工程と、(e)固化成型物13bの表面処理をする工程と、(f)固化成型物13bの所定範囲を切り出して、コンクリート建材1を得る工程とからなり、型枠10内にコンクリートを充填した後にガラス棒12を挿入して、ガラス棒の数を増やしても固化成型物13内に空隙が生じないようにして、得られるコンクリート建材1の装飾性を損なわないようにした。
【解決手段】(a)コンクリートを型枠10内に充填する工程と、(b)鉛直方向に延びる挿通孔11dが形成された蓋11を型枠に載置する工程と、(c)側面の長手方向に亘って凹凸加工が施されたガラス棒12を、各挿通孔に挿通させたのち、流動状態のコンクリート内に挿入する工程と、(d)コンクリートの固化成型物13を切断して、ガラス棒12の端面が表面に露出する板状の固化成型物13bを得る工程と、(e)固化成型物13bの表面処理をする工程と、(f)固化成型物13bの所定範囲を切り出して、コンクリート建材1を得る工程とからなり、型枠10内にコンクリートを充填した後にガラス棒12を挿入して、ガラス棒の数を増やしても固化成型物13内に空隙が生じないようにして、得られるコンクリート建材1の装飾性を損なわないようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾性に優れたコンクリート建材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの表面に装飾を施して、装飾性を高めたコンクリート建材が種々提案されており、例えば特許文献1に開示されたものがある。
【特許文献1】特開平10−292598号公報
【0003】
特許文献1に開示されたコンクリート建材は、コンクリートからなる板状部材において、光を透過する透光材料を厚み方向に貫通させて設け、この透光材料を介して板状部材の一方の面から他方の面に光が透過するようにして、装飾性を向上させたものである。
【0004】
このコンクリート建材は、直方体形状の型枠内に複数の円柱形状の透光材料を、間隔を開けて並べて配置したのち、型枠内にコンクリートを充填して固化させ、得られた固化成型物を所定幅で切断することで製造される。
【0005】
しかし、特許文献1に開示されたコンクリート建材の製造方法の場合、型枠内に透光材料を配置したのちにコンクリートを充填するため、透光材料の数が多くなると、型枠内においてコンクリートが十分に行き渡らない場合がある。
この場合、コンクリートの固化により得られる固化成型物に空隙が生じ、固化成型物を切断して得られるコンクリート建材に意図しない穴が空き、装飾性が悪化することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を生ずることなしに、装飾性に優れたコンクリート建材を製造することのできる方法、そしてこの装飾性に優れたコンクリート建材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光を透過させる透光材料が厚み方向に貫通させた状態で設けられているコンクリート建材を製造する方法であって、(a)コンクリートを型枠内に充填する工程と、(b)鉛直方向に延びる挿通孔が形成された蓋体を型枠に載置する工程と、(c)挿通孔の各々に断面多角形形状の棒状の透光材料を挿通させたのち、挿通孔を通過した透光材料の各々を、流動状態のコンクリート内に挿入する工程と、(d)コンクリートを固化させて得られる固化成型物の切断または切削により、透光材料の端面が表面に露出する所定形状のコンクリート建材を得る工程とからなる構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンクリートを型枠内に充填したあとに、コンクリート内に棒状の透光材料を挿入するので、型枠内に棒状の透光材料を配置したのちにコンクリートを充填する場合と異なり、透光材料の数を増やしても、得られる固化成型物内に空隙が存在することがない。よって、コンクリート建材に意図しない穴が空くことがなく、装飾性が悪化することがない。
また、鉛直方向に延びる挿通孔が形成された蓋体を型枠上に載置し、棒状の透光材料を、箱体の挿通孔に挿通させたのちに、流動状態のコンクリート内に挿入するので、透光材料の挿入方向に所定長さを有する挿通孔により透光材料の侵入方向が規定される。その結果、コンクリート内において透光材料を所望の方向に揃えた状態で配置させることができる。
さらに、コンクリートを固化させて得られる固化成型物を切断または切削することで、透光材料の端面が表面に露出する固化成型物を得るので、コンクリート建材を大量かつ簡単に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施例を、添付図面を参照しながら説明する。
図1の(a)は、本実施例に係るコンクリート建材1の斜視図であり、(b)は(a)において仮想線で示す面Aでコンクリート建材1を切断した断面図である。(c)はコンクリート建材1の使用状態を説明する説明図である。
図1の(a)に示すコンクリート建材1において、本体部2は、上面視において略正方形を有する板状部材であり、コンクリートやモルタルより構成される。なお、以下の説明において、用語「コンクリート」は、コンクリートのみならずモルタルをも意味するものとする。
透光材料3は、光を透過する透明なガラス材料から構成される。透光材料3は、本体部2に複数設けられており、図1の(b)に示すように、本体部2の上面2aと下面2bの各々においてそれぞれ端面3a、3bが露出するように、本体部2を貫通させて配置される。
【0010】
かかる構成のコンクリート建材1によると、図1の(b)を参照して、例えば下面2bに向けて本体部2の下側から光が照射されると、照射された光は、下面2bにおいて露出する透光材料3の端面3bから入射し、透光材料3を通って、上面2aにおいて露出する透光材料3の端面3aから放射される。
この際、端面3bに対して直交する向きに進行する光Aは、進行方向を維持したままで、反対側の端面3aから放射され、端面3bに対して所定の角度を持って入射する光Bは、透光材料3の側面3cにより反射されてその進行方向が変えられたのちに、端面3aから放射されることになる。
よって、端面3bに入射する光の進行方向に応じた異なる方向に向かう光が端面3aから放射されるので、コンクリート建材1における視覚的な装飾の効果が向上する。
【0011】
例えば、図1の(c)を参照して、コンクリート建材1を壁材として用い、図中奥側に光源(図示せず)を配置した場合には、透光材料3に入射した光は、端面に対する入射角に応じて床面の異なる位置にそれぞれ到達し、透光材料3の断面形状に応じた形状の光の領域を形成する。
【0012】
実施例1にかかるコンクリート建材1の製造方法について説明する。
図2は、第1実施例にかかるコンクリート建材1の製造方法を説明するフローチャートである。図3乃至図5はコンクリート建材1の製造方法における各工程を説明する説明図である。
図2および図3の(a)を参照して、ステップ100において、上端に開口を有する長方体形状の型枠10に、所定の成分配合のコンクリートCを充填する。
図3の(b)、および(b)の面Bで切断した断面図である図3の(c)を参照して、ステップ101において、複数の挿通孔11dが形成された蓋11を、型枠10の上端側の端部10aに外嵌する。
図4の(a)を参照して、ステップ102において、棒状の透光材料(ガラス棒)12を、蓋11に形成された挿通孔11dに挿入したのち、型枠10の底に当接するまで流動状態のコンクリート内に押し込む。
ここで、コンクリートの熱伸縮特性とガラスの熱伸縮特性とが互いに近似しているので、ガラス棒が棒状の透光材料として採用される。
【0013】
図4の(b)に示すように、ステップ103において、型枠10内のコンクリートを養生・固化したのち、固化成型物13を型枠10から取り出す。
図4の(c)、および図5の(a)に示すように、ステップ104において、固化成型物13のガラス棒12が挿入された面13aを基準面として、この基準面に対して平行な面に沿って、切削具Xなどを用いて、固化成型物13を所定幅で順次切断して、複数の板状の固化成型物13bを得る。
【0014】
ステップ105において板状の固化成型物13bの表裏面と、板状の固化成型物13bの表面に露出するガラス棒12の端面の平滑化処理を行う。
ステップ106において、この板状の固化成型物13bから、所定の大きさの範囲を切り出すことで、図1に示すコンクリート建材1を得る。
なお、ガラス棒12がコンクリート成分により浸食されることのないように、作成されたコンクリート建材1の全面に亘ってクリスタルシーラ(商品名)を塗布することが好ましい。クリスタルシーラは、セメントの強いアルカリ性を利用して、コンクリート建材1の表面側を無機質に改質するので、ガラス棒12のアルカリ侵食を防止できる。
【0015】
蓋11について説明する。
図3の(b)、(c)を参照して、蓋11は、高さ方向に所定の厚みを有する直方体形状を有している。蓋11の外周縁には、蓋11を型枠10の上に載置した際に、型枠10上端側の端部10aに外嵌して、蓋11を型枠10上で保持する縁部11aが形成されている。
また、蓋11には、上面11bと下面11cとを貫通する挿通孔11dが複数設けられている。挿通孔11dは、ガラス棒12を挿通した際に、ガラス棒12の挿通方向を、鉛直方向に規定するガイドとして機能する。よって、挿通孔11dを貫通してコンクリートCにガラス棒12が挿入された際に、コンクリートC内においてガラス棒同士が互いに平行に位置するように、挿通孔11dの長さLの、型枠10の高さHに対する比率が決定される。例えば、型枠10の高さ60cmに対して、挿通孔11dの長さが20cmとなるように設定される。
また、挿通孔11dの断面形状は、ガラス棒12の断面形状と整合する形状を有し、ガラス棒12の挿通を妨げないようにガラス棒12の断面形状よりも若干大きく設定される。なお、蓋11の上面視において、各挿通孔11dはランダムに位置し、また挿通孔11dの断面形状の向きもランダムとなるように設定されている。
【0016】
ガラス棒12について説明する
ガラス棒の断面形状は、最終的に生成されるコンクリート建材1の透光材料3の部分の断面形状に応じて決まる。ここでは、断面視において略矩形形状を有するガラス棒が用いられ、かかるガラス棒は、所定の厚みを有するガラス板を所定幅で裁断することで得られる。なお、コンクリート建材からの透光材料3の脱落を防止するために、切断面が凹凸形状となるようにガラス板を切断して、ガラス棒の側面の長手方向に亘って凹凸が形成されている。
【0017】
ここで、ステップ100が発明における工程(a)に、ステップ101が工程(b)に、ステップ102が工程(c)に、そしてステップ103およびステップ104が工程(d)にそれぞれ相当する。
【0018】
以上の通り、本実施例では、光を透過させるガラス3が厚み方向に貫通させた状態で複数設けられている板状のコンクリート建材1を製造する方法であって、(a)コンクリートCを型枠10内に充填する工程と、(b)鉛直方向に延びる所定長さの挿通孔11dが複数形成された蓋11を型枠10に載置する工程と、(c)挿通孔11dの各々にガラス棒12を挿通させたのち、挿通孔11dを通過したガラス棒12の各々を、型枠10の底に当接するまで流動状態のコンクリートC内に挿入する工程と、(d)コンクリートCを固化させて得られる固化成型物13を切断することで、ガラスの端面3a、3bが表面に露出するコンクリート建材を得る工程とからなる構成とした。
よって、コンクリートCを型枠10内に充填したあとに、コンクリートC内にガラス棒12を挿入するので、ガラス棒12の数を増やしても、得られる固化成型物13内に空隙が生ずることがなく、得られるコンクリート建材1に穴が空いて装飾性が損なわれることはない。
【0019】
また、ガラス棒12を、鉛直方向に延びる所定長さの挿通孔11dを挿通させたのちに、コンクリートC内に挿入するので、ガラス棒12の挿入方向が挿通孔11dにより規定される結果、ガラス棒12の各々を、互いに平行となる状態で、かつ鉛直方向に向かって整列させた状態で配置させることができる。
さらに、コンクリートCを固化させて得られる固化成型物13を、所望の方向で切断することで、所定形状のコンクリート建材1を複数得ることができるので、コンクリート建材1を大量かつ簡単に製造することができる。
【0020】
また、ガラスは、コンクリートよりも引張り強度が高いので、コンクリート内にガラスを配置すると、圧縮に強く引張りに弱いコンクリートの弱点を補完することができ、強度の高いコンクリート建材を得ることができる。
さらに、コンクリートと接するガラスの側面に凹凸を形成して、ガラスとコンクリートとの接合強度を向上させているので、コンクリート建材に衝撃を加えても、ガラスがコンクリート建材から脱落することがない。
また、ガラスの熱伸縮特性はコンクリートの特性と似ているので、例えばコンクリートの熱伸縮特性と異なるアクリル樹脂を用いた場合のように、熱伸縮特性の違いに起因してコンクリートに亀裂が生ずることがない。
【0021】
さらに、コンクリート建材は、固化成型物13を、ガラス棒12の挿入方向に直交する面、言い換えると固化成型物13のガラス棒12が挿入された面13aに対して平行な面に沿って切断して得られる板形状のコンクリート建材であり、当該板形状のコンクリート建材の表裏面には、ガラス棒12の端面がそれぞれ露出する構成としたので、固化成型物13を所定方向に沿って切断するだけで、ガラス棒の端面が表面に露出する板形状のコンクリート建材を、大量かつ簡単に製造することができる。
【0022】
また、棒状の透光材料が、所定の厚みを有するガラス板を幅方向に切断して得た断面矩形形状のガラス棒12である構成としたので、市販の所定の厚みを有するガラス板を所望の幅で切断するだけで、棒状の透光材料を簡便に得ることができる。また、ガラス板の製造の際に生ずる切れ端のガラス棒も利用可能であるので、ガラス棒を安価に入手できる。
特に、切断面が凹凸形状となるようにガラス板を切断して、ガラス棒の側面の長手方向に亘って凹凸が形成されたガラス棒としたので、作成されるンクリート建材からの透光材料の脱落を防止することができる。
また、凹凸が透光材料の光が通過する光路にも及ぶので、透光材料を通過する光が凹凸によりいっそう複雑に乱反射する結果、コンクリート建材から放射される光の装飾性をより効果的に向上させることができる。
【0023】
上記した構成のコンクリート建材1では、図1の(c)に示すように、板状の本体部2の一方側から照射された光は、ガラス(透光材料3)を通って本体部2の他方側に照射される。よって、本発明にかかるコンクリート建材1は、例えば、図6の(a)に示すような表札や、看板として用いることも可能である。
また、図6の(b)に示すように、コンクリート建材1を、路面に設置された誘導路Gに適用することができる。
一般に、光を利用した誘導路の場合、光源、例えば光ファイバーを利用した光源を路面内に設けたピット内に設置しその上に透明な強化ガラスを設置して、光が路面上に放射されるようにしている。この場合、ピットの底がガラスを通して目視できるので、歩行者は心理的に強化ガラスの上をさけて歩くようになり、誘導路が歩行者の通行を妨げることがある。
しかし、コンクリート建材1を強化ガラスの代わりに用いると、ピットの底を隠しつつ誘導路としての役割も果たすので上記したような問題を生じることはない。
【0024】
さらに、コンクリート建材1を、集合住宅の外廊下や住宅のベランダなどに設置された転落防止用の柵として用いることも可能である。例えば、図7の(a)を参照して、集合住宅の外廊下の柵Fとして用いた場合、住居入口のドアDの上部に設置された光源Lからの光が、透光材料3から放射されることになるので、柵Fの後に人Sが隠れていると、各透光材料3から放射される光の加減が変化する。よって、建物の外からでも、光の加減の変化により柵Fの後に隠れている人Sの存在に気が付くことができる。
【0025】
さらに、図7の(b)を参照して、コンクリート建材1を建物の天井面Rに設置して、所望の色の光が天井R側から室内に放射されるようにしても良い。かかる場合、透光材料を着色して所望の色が照射されるようにすることや、天井内にRGB各色のLED等の光源を設置して、所望の色の光が光源から出力されたのち、透光材料を通して、室内に放射されるようにしても良い。例えば、店舗内の売り場毎に異なる色が天井面から放射されるように、図中点線Dよりも右側に位置するコンクリート建材からは緑色の光が、左側に位置するコンクリート建材からは青色の光が照射されるようにすることで、店舗内の装飾性を向上させつつ、売り場の位置を顧客に対して色により視覚的に伝えることができる。
【0026】
上記実施例では、上面視において矩形形状を有する板状のコンクリート建材の場合を例に挙げて説明をしたが、上面視において円形形状を有する板状のコンクリート建材としても良い。
例えば、図8に示すように、光源が内部に配置された円筒20の上面にコンクリート建材1を配置し、コンクリート建材1が、図柱矢印で示す円周方向に沿って回転するようにすると、コンクリート建材1の各透光材料3から放射される光の方向が、コンクリート建材1の回転により常に変化するので、より装飾性に優れたコンクリート建材とすることができる。この場合、コンクリート建材1の上面に装飾品などを載置するステージ21を設けることで、コンクリート建材1を、装飾品を飾りたてる陳列用の台座として使用できる。
なお、コンクリート建材1自体を回転させずに、円筒20内に配置した光源、例えば光ファイバーを利用した光源自体を回転させるようにしても良い。
【0027】
上記実施例では、コンクリート建材が板状である場合を例に挙げて説明をしたが、コンクリート建材の一方側から入射した光が、透光材料を通って、他方側から放射されるように構成されている限り、コンクリート建材の形状は特に限定されるものではなく、多角柱形状、例えば円柱形状のコンクリート建材としても良い。
図9の(a)は、第1の変形例にかかるコンクリート建材50の斜視図であり、(b)は、(a)の面Cでコンクリート建材50を切断した断面図である。
図9の(a)に示すコンクリート建材50において、符号51は本体部、符号52は透光材料である。
このコンクリート建材50では、各透光材料52が、本体部51の図中下方向側の側面から上方向側の側面に向けて、本体部51を厚み方向に貫通するように位置し、本体部51の外周面において、各透光材料52の端面52a、52bが露出している。
ここで、各透光材料52は、互いに接触すること無く、互いに平行となる位置関係で本体部51を貫通しており、本体部51の外周面に露出する端面52a、52bは、外周面と略面一となるように形成される。
【0028】
コンクリート建材50の製造方法について説明する。
なお、コンクリート建材50の製造方法は、型枠10から取り出した固化成型物13の切断方法のみが、上記したコンクリート建材1の製造方法と異なるので、ここでは、固化成型物13の切断以降の処理についてのみ説明をする。
【0029】
図10の(a)を参照して、型枠10から取り出した固化成型物13において、ガラス棒12が挿入されている側の端部を切断して、図10の(b)に示すような直方体形状の固化成型物13とする。そして、固化成型物13のガラス棒12の端面が露出する面13cを基準面として、この基準面に対して直交する面13dの所定範囲を、グラインダGなどを用いて、固化成型物13の厚み方向に垂直にくり抜いて、図10の(c)に示すような円柱状の固化成型物13eを複数得る。
続いて、円柱状の固化成型物13eの外周面の研磨処理により、外周面の平滑化を行ったのち、円柱状の固化成型物13eを長手方向において所定の長さで切断して、円柱形状のコンクリート建材50を得る。
【0030】
かかる構成のコンクリート建材50によると、図9の(b)を参照して、例えば本体部51に向けて図中下方向から光が照射されると、照射された光は、本体部51において照射方向側に露出するガラス棒52の端面52bから入射し、ガラス棒52を通って、反対側の端面52aから放射される。よって、ガラス棒52の端面52aから放射される光により、上記したコンクリート建材1の場合と同様の視覚的な効果を奏する。
かかるコンクリート建材50は、建物内の内装材のみならず、例えば図11に示すような車線分離標としても用いることができる。
【0031】
また、実施例に係るコンクリート建材のさらに別の変形例として、図12に示すように、直方体形状の固化成型物13を、図中に示す点線に沿って切断することで形成される形状のコンクリート建材1、1’としても良い。かかる形状のコンクリート建材は、表面に露出する透光材料から、光源Lからの光が放射されるので、例えば夜間でも視認が可能な車止めとして用いることができる。
【0032】
上記した実施例では、コンクリート建材の表面を研磨処理して、透過性材料であるガラス棒のコンクリート建材の表面に露出する端面が鏡面状に仕上げられている場合を例に挙げて説明をしたが、コンクリート建材の表面を研磨する行程を省略しても良い。
この場合、コンクリート建材の表面に露出するガラスの端面には、固化成型物の切削に起因する細かな荒れ模様などの凹凸が存在することになる。その結果、端面から放射される光の進行方向が凹凸により適度に乱されて、柔らかな印象を与える光がコンクリート建材1から放射されることになるので、より一層の装飾的な効果を与えるコンクリート建材とすることができる。
特に、コンクリート建材において、光が放射される側に位置するガラスの端面に細かな凹凸を形成すると、例えば、上記した誘導路Gに用いたコンクリート建材1の場合、コンクリート建材1の下方に位置する光源を隠すと共に、柔らかな印象を与える光を放射する誘導路とすることができる。
【0033】
また、上記した実施例では、透光材料であるガラス棒の断面形状が矩形形状である場合を例に挙げて説明をしたが、円形や三角形などの所望の断面多角形形状のガラス棒を使用してもよい。この場合、所望の形状の光がコンクリート建材から放射されることになるので、より一層の装飾的な効果を与えることができるコンクリート建材とすることができる。
なお、これら所望の断面多角形形状は、例えば矩形形状のガラス棒を、サンドブラスト処理により切削することで形成することができる。この場合ガラス棒の側面にはその長手方向に沿って凹凸が形成されることになるので、この凹凸によりガラス棒がコンクリート建材の本体部から脱落することを防止できる。
【0034】
また、上記した実施例では、ガラス棒の側面の長手方向に沿って凹凸が形成される場合を例に挙げて説明したが、例えば、円柱や多角柱形状のガラス棒の側面において、その長手方向に向かって、螺旋状に凹凸を設けたガラス棒としても良い。
かかる場合、生成されたコンクリート建材の透光材料(ガラス)に、透光材料の貫通方向に向かう力が作用しても、ガラス棒の周囲に設けた螺旋状の凹凸が、透光材料の貫通方向に向かう力に抗するので、透光材料のコンクリート建材からの脱落を防止できる。
【0035】
また、上記した実施例では、透明なガラス棒を用いる場合を例に挙げて説明をしたが、ガラス棒の少なくとも側面に所望の色で着色しても良い。かかる場合、所望の色相の光が、コンクリート建材の表面に露出する透光材料から放射されることになるので、より一層の装飾的な効果を与えるコンクリート建材とすることができる。
さらに、側面の少なくとも一部に銀を塗布したガラス棒を用いてコンクリート建材を作成しても良い。かかる場合、銀の塗布膜により光が反射されて、コンクリート建材の表面に露出する透光材料から照射される光の輝度が向上するので、より一層の視覚的な装飾効果を与えることができる。
【0036】
さらに、上記した実施例では、コンクリートの固化成型物を切断することで、ガラス棒の端面が表面に露出する板形状や、多角柱形状のコンクリート建材を作成したが、例えば、コンクリートの固化成型物を、サンドブラスト処理により削ることで、所望の形状のコンクリート建材を得るようにしても良い。かかる場合、サンドブラスト処理により、表面に曲面や流線型を有する立体的な形状のコンクリート建材を得ることができるので、コンクリート建材の装飾性がより一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例に係る装飾性建材の斜視図である。
【図2】実施例に係る装飾性建材の製造方法のフローチャートである。
【図3】実施例に係る装飾性建材の製造方法を説明する説明図である。
【図4】実施例に係る装飾性建材の製造方法を説明する説明図である。
【図5】実施例に係る装飾性建材の具体例を説明する説明図である。
【図6】実施例に係る装飾性建材の具体例を説明する説明図である。
【図7】実施例に係る装飾性建材の具体例を説明する説明図である。
【図8】実施例に係る装飾性建材の具体例を説明する説明図である。
【図9】装飾性建材の変形例を説明する説明図である。
【図10】変形例に係る装飾性建材の製造方法を説明する説明図である。
【図11】変形例に係る装飾性建材の具体例を説明する説明図である。
【図12】変形例に係る装飾性建材の製造方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1、50 コンクリート建材
2、51 本体部
3 透光材料
10 型枠
11 蓋(蓋体)
11b 縁部
11e 挿通孔
12 ガラス棒
13 固化成型物
13b 固化成型物
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾性に優れたコンクリート建材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの表面に装飾を施して、装飾性を高めたコンクリート建材が種々提案されており、例えば特許文献1に開示されたものがある。
【特許文献1】特開平10−292598号公報
【0003】
特許文献1に開示されたコンクリート建材は、コンクリートからなる板状部材において、光を透過する透光材料を厚み方向に貫通させて設け、この透光材料を介して板状部材の一方の面から他方の面に光が透過するようにして、装飾性を向上させたものである。
【0004】
このコンクリート建材は、直方体形状の型枠内に複数の円柱形状の透光材料を、間隔を開けて並べて配置したのち、型枠内にコンクリートを充填して固化させ、得られた固化成型物を所定幅で切断することで製造される。
【0005】
しかし、特許文献1に開示されたコンクリート建材の製造方法の場合、型枠内に透光材料を配置したのちにコンクリートを充填するため、透光材料の数が多くなると、型枠内においてコンクリートが十分に行き渡らない場合がある。
この場合、コンクリートの固化により得られる固化成型物に空隙が生じ、固化成型物を切断して得られるコンクリート建材に意図しない穴が空き、装飾性が悪化することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を生ずることなしに、装飾性に優れたコンクリート建材を製造することのできる方法、そしてこの装飾性に優れたコンクリート建材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光を透過させる透光材料が厚み方向に貫通させた状態で設けられているコンクリート建材を製造する方法であって、(a)コンクリートを型枠内に充填する工程と、(b)鉛直方向に延びる挿通孔が形成された蓋体を型枠に載置する工程と、(c)挿通孔の各々に断面多角形形状の棒状の透光材料を挿通させたのち、挿通孔を通過した透光材料の各々を、流動状態のコンクリート内に挿入する工程と、(d)コンクリートを固化させて得られる固化成型物の切断または切削により、透光材料の端面が表面に露出する所定形状のコンクリート建材を得る工程とからなる構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンクリートを型枠内に充填したあとに、コンクリート内に棒状の透光材料を挿入するので、型枠内に棒状の透光材料を配置したのちにコンクリートを充填する場合と異なり、透光材料の数を増やしても、得られる固化成型物内に空隙が存在することがない。よって、コンクリート建材に意図しない穴が空くことがなく、装飾性が悪化することがない。
また、鉛直方向に延びる挿通孔が形成された蓋体を型枠上に載置し、棒状の透光材料を、箱体の挿通孔に挿通させたのちに、流動状態のコンクリート内に挿入するので、透光材料の挿入方向に所定長さを有する挿通孔により透光材料の侵入方向が規定される。その結果、コンクリート内において透光材料を所望の方向に揃えた状態で配置させることができる。
さらに、コンクリートを固化させて得られる固化成型物を切断または切削することで、透光材料の端面が表面に露出する固化成型物を得るので、コンクリート建材を大量かつ簡単に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施例を、添付図面を参照しながら説明する。
図1の(a)は、本実施例に係るコンクリート建材1の斜視図であり、(b)は(a)において仮想線で示す面Aでコンクリート建材1を切断した断面図である。(c)はコンクリート建材1の使用状態を説明する説明図である。
図1の(a)に示すコンクリート建材1において、本体部2は、上面視において略正方形を有する板状部材であり、コンクリートやモルタルより構成される。なお、以下の説明において、用語「コンクリート」は、コンクリートのみならずモルタルをも意味するものとする。
透光材料3は、光を透過する透明なガラス材料から構成される。透光材料3は、本体部2に複数設けられており、図1の(b)に示すように、本体部2の上面2aと下面2bの各々においてそれぞれ端面3a、3bが露出するように、本体部2を貫通させて配置される。
【0010】
かかる構成のコンクリート建材1によると、図1の(b)を参照して、例えば下面2bに向けて本体部2の下側から光が照射されると、照射された光は、下面2bにおいて露出する透光材料3の端面3bから入射し、透光材料3を通って、上面2aにおいて露出する透光材料3の端面3aから放射される。
この際、端面3bに対して直交する向きに進行する光Aは、進行方向を維持したままで、反対側の端面3aから放射され、端面3bに対して所定の角度を持って入射する光Bは、透光材料3の側面3cにより反射されてその進行方向が変えられたのちに、端面3aから放射されることになる。
よって、端面3bに入射する光の進行方向に応じた異なる方向に向かう光が端面3aから放射されるので、コンクリート建材1における視覚的な装飾の効果が向上する。
【0011】
例えば、図1の(c)を参照して、コンクリート建材1を壁材として用い、図中奥側に光源(図示せず)を配置した場合には、透光材料3に入射した光は、端面に対する入射角に応じて床面の異なる位置にそれぞれ到達し、透光材料3の断面形状に応じた形状の光の領域を形成する。
【0012】
実施例1にかかるコンクリート建材1の製造方法について説明する。
図2は、第1実施例にかかるコンクリート建材1の製造方法を説明するフローチャートである。図3乃至図5はコンクリート建材1の製造方法における各工程を説明する説明図である。
図2および図3の(a)を参照して、ステップ100において、上端に開口を有する長方体形状の型枠10に、所定の成分配合のコンクリートCを充填する。
図3の(b)、および(b)の面Bで切断した断面図である図3の(c)を参照して、ステップ101において、複数の挿通孔11dが形成された蓋11を、型枠10の上端側の端部10aに外嵌する。
図4の(a)を参照して、ステップ102において、棒状の透光材料(ガラス棒)12を、蓋11に形成された挿通孔11dに挿入したのち、型枠10の底に当接するまで流動状態のコンクリート内に押し込む。
ここで、コンクリートの熱伸縮特性とガラスの熱伸縮特性とが互いに近似しているので、ガラス棒が棒状の透光材料として採用される。
【0013】
図4の(b)に示すように、ステップ103において、型枠10内のコンクリートを養生・固化したのち、固化成型物13を型枠10から取り出す。
図4の(c)、および図5の(a)に示すように、ステップ104において、固化成型物13のガラス棒12が挿入された面13aを基準面として、この基準面に対して平行な面に沿って、切削具Xなどを用いて、固化成型物13を所定幅で順次切断して、複数の板状の固化成型物13bを得る。
【0014】
ステップ105において板状の固化成型物13bの表裏面と、板状の固化成型物13bの表面に露出するガラス棒12の端面の平滑化処理を行う。
ステップ106において、この板状の固化成型物13bから、所定の大きさの範囲を切り出すことで、図1に示すコンクリート建材1を得る。
なお、ガラス棒12がコンクリート成分により浸食されることのないように、作成されたコンクリート建材1の全面に亘ってクリスタルシーラ(商品名)を塗布することが好ましい。クリスタルシーラは、セメントの強いアルカリ性を利用して、コンクリート建材1の表面側を無機質に改質するので、ガラス棒12のアルカリ侵食を防止できる。
【0015】
蓋11について説明する。
図3の(b)、(c)を参照して、蓋11は、高さ方向に所定の厚みを有する直方体形状を有している。蓋11の外周縁には、蓋11を型枠10の上に載置した際に、型枠10上端側の端部10aに外嵌して、蓋11を型枠10上で保持する縁部11aが形成されている。
また、蓋11には、上面11bと下面11cとを貫通する挿通孔11dが複数設けられている。挿通孔11dは、ガラス棒12を挿通した際に、ガラス棒12の挿通方向を、鉛直方向に規定するガイドとして機能する。よって、挿通孔11dを貫通してコンクリートCにガラス棒12が挿入された際に、コンクリートC内においてガラス棒同士が互いに平行に位置するように、挿通孔11dの長さLの、型枠10の高さHに対する比率が決定される。例えば、型枠10の高さ60cmに対して、挿通孔11dの長さが20cmとなるように設定される。
また、挿通孔11dの断面形状は、ガラス棒12の断面形状と整合する形状を有し、ガラス棒12の挿通を妨げないようにガラス棒12の断面形状よりも若干大きく設定される。なお、蓋11の上面視において、各挿通孔11dはランダムに位置し、また挿通孔11dの断面形状の向きもランダムとなるように設定されている。
【0016】
ガラス棒12について説明する
ガラス棒の断面形状は、最終的に生成されるコンクリート建材1の透光材料3の部分の断面形状に応じて決まる。ここでは、断面視において略矩形形状を有するガラス棒が用いられ、かかるガラス棒は、所定の厚みを有するガラス板を所定幅で裁断することで得られる。なお、コンクリート建材からの透光材料3の脱落を防止するために、切断面が凹凸形状となるようにガラス板を切断して、ガラス棒の側面の長手方向に亘って凹凸が形成されている。
【0017】
ここで、ステップ100が発明における工程(a)に、ステップ101が工程(b)に、ステップ102が工程(c)に、そしてステップ103およびステップ104が工程(d)にそれぞれ相当する。
【0018】
以上の通り、本実施例では、光を透過させるガラス3が厚み方向に貫通させた状態で複数設けられている板状のコンクリート建材1を製造する方法であって、(a)コンクリートCを型枠10内に充填する工程と、(b)鉛直方向に延びる所定長さの挿通孔11dが複数形成された蓋11を型枠10に載置する工程と、(c)挿通孔11dの各々にガラス棒12を挿通させたのち、挿通孔11dを通過したガラス棒12の各々を、型枠10の底に当接するまで流動状態のコンクリートC内に挿入する工程と、(d)コンクリートCを固化させて得られる固化成型物13を切断することで、ガラスの端面3a、3bが表面に露出するコンクリート建材を得る工程とからなる構成とした。
よって、コンクリートCを型枠10内に充填したあとに、コンクリートC内にガラス棒12を挿入するので、ガラス棒12の数を増やしても、得られる固化成型物13内に空隙が生ずることがなく、得られるコンクリート建材1に穴が空いて装飾性が損なわれることはない。
【0019】
また、ガラス棒12を、鉛直方向に延びる所定長さの挿通孔11dを挿通させたのちに、コンクリートC内に挿入するので、ガラス棒12の挿入方向が挿通孔11dにより規定される結果、ガラス棒12の各々を、互いに平行となる状態で、かつ鉛直方向に向かって整列させた状態で配置させることができる。
さらに、コンクリートCを固化させて得られる固化成型物13を、所望の方向で切断することで、所定形状のコンクリート建材1を複数得ることができるので、コンクリート建材1を大量かつ簡単に製造することができる。
【0020】
また、ガラスは、コンクリートよりも引張り強度が高いので、コンクリート内にガラスを配置すると、圧縮に強く引張りに弱いコンクリートの弱点を補完することができ、強度の高いコンクリート建材を得ることができる。
さらに、コンクリートと接するガラスの側面に凹凸を形成して、ガラスとコンクリートとの接合強度を向上させているので、コンクリート建材に衝撃を加えても、ガラスがコンクリート建材から脱落することがない。
また、ガラスの熱伸縮特性はコンクリートの特性と似ているので、例えばコンクリートの熱伸縮特性と異なるアクリル樹脂を用いた場合のように、熱伸縮特性の違いに起因してコンクリートに亀裂が生ずることがない。
【0021】
さらに、コンクリート建材は、固化成型物13を、ガラス棒12の挿入方向に直交する面、言い換えると固化成型物13のガラス棒12が挿入された面13aに対して平行な面に沿って切断して得られる板形状のコンクリート建材であり、当該板形状のコンクリート建材の表裏面には、ガラス棒12の端面がそれぞれ露出する構成としたので、固化成型物13を所定方向に沿って切断するだけで、ガラス棒の端面が表面に露出する板形状のコンクリート建材を、大量かつ簡単に製造することができる。
【0022】
また、棒状の透光材料が、所定の厚みを有するガラス板を幅方向に切断して得た断面矩形形状のガラス棒12である構成としたので、市販の所定の厚みを有するガラス板を所望の幅で切断するだけで、棒状の透光材料を簡便に得ることができる。また、ガラス板の製造の際に生ずる切れ端のガラス棒も利用可能であるので、ガラス棒を安価に入手できる。
特に、切断面が凹凸形状となるようにガラス板を切断して、ガラス棒の側面の長手方向に亘って凹凸が形成されたガラス棒としたので、作成されるンクリート建材からの透光材料の脱落を防止することができる。
また、凹凸が透光材料の光が通過する光路にも及ぶので、透光材料を通過する光が凹凸によりいっそう複雑に乱反射する結果、コンクリート建材から放射される光の装飾性をより効果的に向上させることができる。
【0023】
上記した構成のコンクリート建材1では、図1の(c)に示すように、板状の本体部2の一方側から照射された光は、ガラス(透光材料3)を通って本体部2の他方側に照射される。よって、本発明にかかるコンクリート建材1は、例えば、図6の(a)に示すような表札や、看板として用いることも可能である。
また、図6の(b)に示すように、コンクリート建材1を、路面に設置された誘導路Gに適用することができる。
一般に、光を利用した誘導路の場合、光源、例えば光ファイバーを利用した光源を路面内に設けたピット内に設置しその上に透明な強化ガラスを設置して、光が路面上に放射されるようにしている。この場合、ピットの底がガラスを通して目視できるので、歩行者は心理的に強化ガラスの上をさけて歩くようになり、誘導路が歩行者の通行を妨げることがある。
しかし、コンクリート建材1を強化ガラスの代わりに用いると、ピットの底を隠しつつ誘導路としての役割も果たすので上記したような問題を生じることはない。
【0024】
さらに、コンクリート建材1を、集合住宅の外廊下や住宅のベランダなどに設置された転落防止用の柵として用いることも可能である。例えば、図7の(a)を参照して、集合住宅の外廊下の柵Fとして用いた場合、住居入口のドアDの上部に設置された光源Lからの光が、透光材料3から放射されることになるので、柵Fの後に人Sが隠れていると、各透光材料3から放射される光の加減が変化する。よって、建物の外からでも、光の加減の変化により柵Fの後に隠れている人Sの存在に気が付くことができる。
【0025】
さらに、図7の(b)を参照して、コンクリート建材1を建物の天井面Rに設置して、所望の色の光が天井R側から室内に放射されるようにしても良い。かかる場合、透光材料を着色して所望の色が照射されるようにすることや、天井内にRGB各色のLED等の光源を設置して、所望の色の光が光源から出力されたのち、透光材料を通して、室内に放射されるようにしても良い。例えば、店舗内の売り場毎に異なる色が天井面から放射されるように、図中点線Dよりも右側に位置するコンクリート建材からは緑色の光が、左側に位置するコンクリート建材からは青色の光が照射されるようにすることで、店舗内の装飾性を向上させつつ、売り場の位置を顧客に対して色により視覚的に伝えることができる。
【0026】
上記実施例では、上面視において矩形形状を有する板状のコンクリート建材の場合を例に挙げて説明をしたが、上面視において円形形状を有する板状のコンクリート建材としても良い。
例えば、図8に示すように、光源が内部に配置された円筒20の上面にコンクリート建材1を配置し、コンクリート建材1が、図柱矢印で示す円周方向に沿って回転するようにすると、コンクリート建材1の各透光材料3から放射される光の方向が、コンクリート建材1の回転により常に変化するので、より装飾性に優れたコンクリート建材とすることができる。この場合、コンクリート建材1の上面に装飾品などを載置するステージ21を設けることで、コンクリート建材1を、装飾品を飾りたてる陳列用の台座として使用できる。
なお、コンクリート建材1自体を回転させずに、円筒20内に配置した光源、例えば光ファイバーを利用した光源自体を回転させるようにしても良い。
【0027】
上記実施例では、コンクリート建材が板状である場合を例に挙げて説明をしたが、コンクリート建材の一方側から入射した光が、透光材料を通って、他方側から放射されるように構成されている限り、コンクリート建材の形状は特に限定されるものではなく、多角柱形状、例えば円柱形状のコンクリート建材としても良い。
図9の(a)は、第1の変形例にかかるコンクリート建材50の斜視図であり、(b)は、(a)の面Cでコンクリート建材50を切断した断面図である。
図9の(a)に示すコンクリート建材50において、符号51は本体部、符号52は透光材料である。
このコンクリート建材50では、各透光材料52が、本体部51の図中下方向側の側面から上方向側の側面に向けて、本体部51を厚み方向に貫通するように位置し、本体部51の外周面において、各透光材料52の端面52a、52bが露出している。
ここで、各透光材料52は、互いに接触すること無く、互いに平行となる位置関係で本体部51を貫通しており、本体部51の外周面に露出する端面52a、52bは、外周面と略面一となるように形成される。
【0028】
コンクリート建材50の製造方法について説明する。
なお、コンクリート建材50の製造方法は、型枠10から取り出した固化成型物13の切断方法のみが、上記したコンクリート建材1の製造方法と異なるので、ここでは、固化成型物13の切断以降の処理についてのみ説明をする。
【0029】
図10の(a)を参照して、型枠10から取り出した固化成型物13において、ガラス棒12が挿入されている側の端部を切断して、図10の(b)に示すような直方体形状の固化成型物13とする。そして、固化成型物13のガラス棒12の端面が露出する面13cを基準面として、この基準面に対して直交する面13dの所定範囲を、グラインダGなどを用いて、固化成型物13の厚み方向に垂直にくり抜いて、図10の(c)に示すような円柱状の固化成型物13eを複数得る。
続いて、円柱状の固化成型物13eの外周面の研磨処理により、外周面の平滑化を行ったのち、円柱状の固化成型物13eを長手方向において所定の長さで切断して、円柱形状のコンクリート建材50を得る。
【0030】
かかる構成のコンクリート建材50によると、図9の(b)を参照して、例えば本体部51に向けて図中下方向から光が照射されると、照射された光は、本体部51において照射方向側に露出するガラス棒52の端面52bから入射し、ガラス棒52を通って、反対側の端面52aから放射される。よって、ガラス棒52の端面52aから放射される光により、上記したコンクリート建材1の場合と同様の視覚的な効果を奏する。
かかるコンクリート建材50は、建物内の内装材のみならず、例えば図11に示すような車線分離標としても用いることができる。
【0031】
また、実施例に係るコンクリート建材のさらに別の変形例として、図12に示すように、直方体形状の固化成型物13を、図中に示す点線に沿って切断することで形成される形状のコンクリート建材1、1’としても良い。かかる形状のコンクリート建材は、表面に露出する透光材料から、光源Lからの光が放射されるので、例えば夜間でも視認が可能な車止めとして用いることができる。
【0032】
上記した実施例では、コンクリート建材の表面を研磨処理して、透過性材料であるガラス棒のコンクリート建材の表面に露出する端面が鏡面状に仕上げられている場合を例に挙げて説明をしたが、コンクリート建材の表面を研磨する行程を省略しても良い。
この場合、コンクリート建材の表面に露出するガラスの端面には、固化成型物の切削に起因する細かな荒れ模様などの凹凸が存在することになる。その結果、端面から放射される光の進行方向が凹凸により適度に乱されて、柔らかな印象を与える光がコンクリート建材1から放射されることになるので、より一層の装飾的な効果を与えるコンクリート建材とすることができる。
特に、コンクリート建材において、光が放射される側に位置するガラスの端面に細かな凹凸を形成すると、例えば、上記した誘導路Gに用いたコンクリート建材1の場合、コンクリート建材1の下方に位置する光源を隠すと共に、柔らかな印象を与える光を放射する誘導路とすることができる。
【0033】
また、上記した実施例では、透光材料であるガラス棒の断面形状が矩形形状である場合を例に挙げて説明をしたが、円形や三角形などの所望の断面多角形形状のガラス棒を使用してもよい。この場合、所望の形状の光がコンクリート建材から放射されることになるので、より一層の装飾的な効果を与えることができるコンクリート建材とすることができる。
なお、これら所望の断面多角形形状は、例えば矩形形状のガラス棒を、サンドブラスト処理により切削することで形成することができる。この場合ガラス棒の側面にはその長手方向に沿って凹凸が形成されることになるので、この凹凸によりガラス棒がコンクリート建材の本体部から脱落することを防止できる。
【0034】
また、上記した実施例では、ガラス棒の側面の長手方向に沿って凹凸が形成される場合を例に挙げて説明したが、例えば、円柱や多角柱形状のガラス棒の側面において、その長手方向に向かって、螺旋状に凹凸を設けたガラス棒としても良い。
かかる場合、生成されたコンクリート建材の透光材料(ガラス)に、透光材料の貫通方向に向かう力が作用しても、ガラス棒の周囲に設けた螺旋状の凹凸が、透光材料の貫通方向に向かう力に抗するので、透光材料のコンクリート建材からの脱落を防止できる。
【0035】
また、上記した実施例では、透明なガラス棒を用いる場合を例に挙げて説明をしたが、ガラス棒の少なくとも側面に所望の色で着色しても良い。かかる場合、所望の色相の光が、コンクリート建材の表面に露出する透光材料から放射されることになるので、より一層の装飾的な効果を与えるコンクリート建材とすることができる。
さらに、側面の少なくとも一部に銀を塗布したガラス棒を用いてコンクリート建材を作成しても良い。かかる場合、銀の塗布膜により光が反射されて、コンクリート建材の表面に露出する透光材料から照射される光の輝度が向上するので、より一層の視覚的な装飾効果を与えることができる。
【0036】
さらに、上記した実施例では、コンクリートの固化成型物を切断することで、ガラス棒の端面が表面に露出する板形状や、多角柱形状のコンクリート建材を作成したが、例えば、コンクリートの固化成型物を、サンドブラスト処理により削ることで、所望の形状のコンクリート建材を得るようにしても良い。かかる場合、サンドブラスト処理により、表面に曲面や流線型を有する立体的な形状のコンクリート建材を得ることができるので、コンクリート建材の装飾性がより一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例に係る装飾性建材の斜視図である。
【図2】実施例に係る装飾性建材の製造方法のフローチャートである。
【図3】実施例に係る装飾性建材の製造方法を説明する説明図である。
【図4】実施例に係る装飾性建材の製造方法を説明する説明図である。
【図5】実施例に係る装飾性建材の具体例を説明する説明図である。
【図6】実施例に係る装飾性建材の具体例を説明する説明図である。
【図7】実施例に係る装飾性建材の具体例を説明する説明図である。
【図8】実施例に係る装飾性建材の具体例を説明する説明図である。
【図9】装飾性建材の変形例を説明する説明図である。
【図10】変形例に係る装飾性建材の製造方法を説明する説明図である。
【図11】変形例に係る装飾性建材の具体例を説明する説明図である。
【図12】変形例に係る装飾性建材の製造方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1、50 コンクリート建材
2、51 本体部
3 透光材料
10 型枠
11 蓋(蓋体)
11b 縁部
11e 挿通孔
12 ガラス棒
13 固化成型物
13b 固化成型物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過させる透光材料が厚み方向に貫通させた状態で設けられているコンクリート建材を製造する方法であって、
(a)コンクリートを型枠内に充填する工程と、
(b)鉛直方向に延びる挿通孔が形成された蓋体を型枠に載置する工程と、
(c)挿通孔の各々に断面多角形形状の棒状の透光材料を挿通させたのち、挿通孔を通過した透光材料の各々を、流動状態のコンクリート内に挿入する工程と、
(d)コンクリートを固化させて得られる固化成型物の切断または切削により、前記透光材料の端面が表面に露出する所定形状のコンクリート建材を得る工程と
からなる方法。
【請求項2】
前記(d)工程のあとに、
(e)前記コンクリート建材の表面を研磨する工程をさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンクリート建材は、前記固化成型物を、前記透光材料の挿入方向に直交する面に沿って切断して得られる板形状のコンクリート建材であり、当該板形状のコンクリート建材の表裏面には、前記透光材料の端面がそれぞれ露出する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コンクリート建材は、前記固化成型物を、前記透光材料の挿入方向に直交する方向に切断して得られる多角柱形状のコンクリート建材であり、当該多角柱形状のコンクリート建材の外周面には、前記透光材料の端面が露出する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記棒状の透光材料は、所定の厚みを有するガラス板を幅方向に切断して得た断面矩形形状のガラス棒である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記棒状の透光材料は、所定の厚みを有するガラス板を幅方向に切断して得たガラス棒のサンドブラスト処理により得られた、所望の多角形形状の断面を有するガラス棒である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記棒状の透光材料には着色剤が塗布されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちの何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記棒状の透光材料には銀が塗布されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちの何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記棒状の透光材料の側面には凹凸が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のうちの何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
光を透過させる透光材料材が厚み方向に貫通させた状態で設けられていると共に前記透光材料の端面が表面に露出する所定形状のコンクリート建材であって、コンクリートを型枠内に充填し、断面多角形形状の棒状の透光材料を流動状態のコンクリート内に鉛直に挿入し、コンクリートを固化させて得られる固化成型物を切断または切削して得られるコンクリート建材。
【請求項11】
前記コンクリート建材は、前記固化成型物を、前記透光材料の挿入方向に直交する面に沿って切断して得られる板形状のコンクリート建材であり、当該板形状のコンクリート建材の表裏面には、前記透光材料の端面がそれぞれ露出する
ことを特徴とする請求項10に記載のコンクリート建材。
【請求項12】
前記コンクリート建材は、前記固化成型物を、前記透光材料の挿入方向に直交する方向で切断して得られる多角柱形状のコンクリート建材であり、当該多角柱形状のコンクリート建材の外周面には、前記透光材料の端面が露出する
ことを特徴とする請求項10に記載のコンクリート建材。
【請求項1】
光を透過させる透光材料が厚み方向に貫通させた状態で設けられているコンクリート建材を製造する方法であって、
(a)コンクリートを型枠内に充填する工程と、
(b)鉛直方向に延びる挿通孔が形成された蓋体を型枠に載置する工程と、
(c)挿通孔の各々に断面多角形形状の棒状の透光材料を挿通させたのち、挿通孔を通過した透光材料の各々を、流動状態のコンクリート内に挿入する工程と、
(d)コンクリートを固化させて得られる固化成型物の切断または切削により、前記透光材料の端面が表面に露出する所定形状のコンクリート建材を得る工程と
からなる方法。
【請求項2】
前記(d)工程のあとに、
(e)前記コンクリート建材の表面を研磨する工程をさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンクリート建材は、前記固化成型物を、前記透光材料の挿入方向に直交する面に沿って切断して得られる板形状のコンクリート建材であり、当該板形状のコンクリート建材の表裏面には、前記透光材料の端面がそれぞれ露出する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コンクリート建材は、前記固化成型物を、前記透光材料の挿入方向に直交する方向に切断して得られる多角柱形状のコンクリート建材であり、当該多角柱形状のコンクリート建材の外周面には、前記透光材料の端面が露出する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記棒状の透光材料は、所定の厚みを有するガラス板を幅方向に切断して得た断面矩形形状のガラス棒である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記棒状の透光材料は、所定の厚みを有するガラス板を幅方向に切断して得たガラス棒のサンドブラスト処理により得られた、所望の多角形形状の断面を有するガラス棒である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記棒状の透光材料には着色剤が塗布されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちの何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記棒状の透光材料には銀が塗布されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちの何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記棒状の透光材料の側面には凹凸が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のうちの何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
光を透過させる透光材料材が厚み方向に貫通させた状態で設けられていると共に前記透光材料の端面が表面に露出する所定形状のコンクリート建材であって、コンクリートを型枠内に充填し、断面多角形形状の棒状の透光材料を流動状態のコンクリート内に鉛直に挿入し、コンクリートを固化させて得られる固化成型物を切断または切削して得られるコンクリート建材。
【請求項11】
前記コンクリート建材は、前記固化成型物を、前記透光材料の挿入方向に直交する面に沿って切断して得られる板形状のコンクリート建材であり、当該板形状のコンクリート建材の表裏面には、前記透光材料の端面がそれぞれ露出する
ことを特徴とする請求項10に記載のコンクリート建材。
【請求項12】
前記コンクリート建材は、前記固化成型物を、前記透光材料の挿入方向に直交する方向で切断して得られる多角柱形状のコンクリート建材であり、当該多角柱形状のコンクリート建材の外周面には、前記透光材料の端面が露出する
ことを特徴とする請求項10に記載のコンクリート建材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−214961(P2008−214961A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54072(P2007−54072)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(507071659)アトミック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(507071659)アトミック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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