説明

コンクリート成型型枠

【課題】底板及び周囲の枠板で形成する型枠空間内に中子が配設され、底板は、コンクリート成型品の開口部を形成する突起部を上面に有すると共に、台枠と周囲の枠板とに形成した上下空間内を昇降し、成型後に底板の突起部がコンクリート成型品と干渉しない位置まで底板を下降させて、コンクリート成型品を水平方向へ中子から抜き取るコンクリート成型型枠において、底板の昇降を容易確実に行なえる構成を提供しようとする。
【解決手段】底板2と台枠1間に楔体4を介在させ、台枠1上をスライドする楔体4の傾斜面41を利用して係合する底板2を昇降させる。楔体4は、底板2との係合面が傾斜面41と頂部を形成する水平面42とから成る板体であり、楔体4と略同形の凹部23を底板2の係合面に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば側溝用コンクリート成型品を製造するのに用いる型枠のように、中子を有するコンクリート成型型枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長手方向に中空部を形成するコンクリート成型品では、この中空部を形成する中子(枠体を構成している。)と底板、小口板及び側板(以下、両板を総称して枠板と称することもある。)より成る本体とを組み合わせて型枠を構成している。
【0003】
そして、側板及び小口板は枠台へ起倒可能に構成し、側板及び小口板を起立して型組みを成し、脱型の際は、側方へ倒してコンクリート成形製品との接触を絶ち、取り出し間隙を形成する。
一方、中子は複数枚の枠板で周囲へ拡縮可能に構成され、脱型の際は中心へ縮んでコンクリート成型品との接触を絶ち、抜き取り間隙を形成するものとしている。
【0004】
そこで、コンクリート成型品と中子との分離は、コンクリート成型品との間隙を形成した中子を水平長手方向へ引き抜いて行い、その後コンクリート成型品を吊り上げ機(クレーン等)で底枠から持ち上げて所定場所へ移動する方法がある。
また他の方法として、中子が挿通している状態でコンクリート成型品を型枠本体から取り出し、別の場所へ置いて中子を引き抜いてコンクリート成型品を得る方法も提案されている。
【0005】
このような成型型枠において、型枠からコンクリート成型品自体を直接水平横方向へ引き抜いて脱型できれば効率がよいのである。
しかし、コンクリート成型品の上面に開口部を形成するための突起部が底板と一体に起設されているのであり、当該突起部を回避するためコンクリート成型品を上昇させて取り出す必要があるので、上記の様な方法を採用せざるを得ないのである。
【0006】
けれども、上記の各方法では成型型枠自体の設置面とは別に、中子やコンクリート成型品を一時的に置いておける余裕のあるスペースが近くに必要であり、整理整頓の行き届いた場内環境や、更には複数の昇降機械器具が必要となり、作業効率にも問題があるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−119023号公報
【特許文献2】特開2003−225904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、底板及び周囲の枠板で形成する型枠空間内に中子が配設され、底板は、コンクリート成型品の開口部を形成する突起部を上面に有すると共に、台枠と周囲の枠板とに形成した上下空間内を昇降し、成型後に底板の突起部がコンクリート成型品と干渉しない位置まで底板を下降させて、コンクリート成型品を水平方向へ中子から抜き取るコンクリート成型型枠が提案されている。
【0009】
本発明は斯かるコンクリート成型型枠において、底板の昇降を容易確実に行なえる構成を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るコンクリート成型型枠の請求項1の発明は、底板及び周囲の枠板で形成する型枠空間内に中子が配設され、底板は、コンクリート成型品の開口部を形成する突起部を上面に有すると共に、台枠と周囲の枠板とに形成した上下空間内を昇降し、成型後に底板の突起部がコンクリート成型品と干渉しない位置まで底板を下降させて、コンクリート成型品を水平方向へ中子から抜き取るコンクリート成型型枠において、底板と台枠間に楔体を介在させ、台枠上をスライドする楔体の傾斜面を利用して係合する底板を昇降させることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2のコンクリート成型型枠の発明は、請求項1の発明において、楔体は、底板との係合面が傾斜面と頂部を形成する水平面とから成る板体であり、楔体と略同形の凹部を底板の係合面に形成したことを特徴とするものである。
【0012】
請求項3のコンクリート成型型枠の発明は、請求項1の発明において、楔体は、底板との係合面が傾斜面と頂部を形成する水平面とから成る板体であり、底板に転子を下設して楔体の係合面と係合させたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項4のコンクリート成型型枠の発明は、請求項1乃至3の発明において、底板を台枠に、昇降のみ可能に規制するガイドを介して連繋したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
底板及び周囲の枠板で形成する型枠空間内に中子が配設され、底板は、コンクリート成型品の開口部を形成する突起部を上面に有すると共に、台枠と周囲の枠板とに形成した上下空間内を昇降し、成型後に底板の突起部がコンクリート成型品と干渉しない位置まで底板を下降させて、コンクリート成型品を水平方向へ中子から抜き取るコンクリート成型型枠において、請求項1の発明は、底板と台枠間に楔体を介在させ、台枠上をスライドする楔体の傾斜面を利用して係合する底板を昇降させるものであるから、簡易な構成と成り、楔体の傾斜面を利用するものであるから、最小の動力で重量のある底板を滑らかに昇降することが可能となる効果を有するものである。
【0015】
請求項2のコンクリート成型型枠の発明は、請求項1の発明の効果に加えて、楔体は、底板との係合面が傾斜面と頂部を形成する水平面とから成る板体であり、楔体と略同形の凹部を底板の係合面に形成したものであるから、底板の昇降を楔体と底板の凹部の傾斜部同士が摺動して作用させることになり、滑らかで確実安全に行なえる効果が得られる。
また、型組み時は楔体の水平部に底板が係合し、脱型時には楔体と凹部が嵌合した状態となって、共に安定した係合状態を維持できる効果がある。
【0016】
請求項3のコンクリート成型型枠の発明は、請求項1の発明の効果に加えて、楔体は、底板との係合面が傾斜面と頂部を形成する水平面とから成る板体であり、底板に転子を下設して楔体の係合面と係合させたものであるから、楔体のスライドに対して底板の転子が回転して楔体の斜面を転がるため昇降が容易確実となる効果を有する。
【0017】
請求項4のコンクリート成型型枠の発明は、請求項1乃至3の発明の効果に加えて、底板を台枠に、昇降のみ可能に規制するガイドを介して連繋したため、楔体のスライドによって、底板が横ズレを起こすこと無く、昇降作用へ確実に伝達する効果を有するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の型枠の一実施の形態を示す型組時の正面図である。
【図2】図1の一部底板を切欠いた平面図である。
【図3】図1の脱型時の正面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】他の実施の形態を示す型組時の正面図である。
【図6】図5の脱型時の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について図1から図4に基づいて説明する。
本実施形態のコンクリート成型型枠は、例えば、側溝のように長手方向に中空体を形成し、上面の一部に別体の蓋を嵌合するための開口部を有するコンクリート成型品を製造するものである。
【0020】
コンクリート成型型枠は、台枠1とその台枠1に設けられているコンクリート成型品用の型枠とを備え、コンクリート成型品用の型枠は、底板2と、周囲の枠板6である一対の長手方向の側板と、一対の前後端面の小口板と、底板2及び周囲の枠板6で形成する型枠空間内に配設される中子とで形成される。
【0021】
型枠の構成は、例えば、台枠1上に上下空間3を設けて、傾倒可能な側枠や小口板を支柱に支持し、支柱に連設した水平バーが中子内に挿通した状態で中子を係止し、夫々の構成部材が基台1に立設固定された支柱を介して固定される。
【0022】
尚、図では、本発明の特徴となる部材が見えるように、周囲の枠板6を構成する一対の側板、一対の前後端面の小口板と、底板2及び周囲の枠板6で形成する型枠空間内に配設される中子等の詳細構成を省略し鎖線で表示してある。
【0023】
また、底板2は、コンクリート成型品の開口部を形成する突起部21が上面に形成され、垂直方向に昇降可能となっており、底板2の突起部21が中子と接触すると共に、枠板6と型組する位置まで上昇させたり、底板2の突起部21がコンクリート成型品と干渉しない位置まで底板2を下降させたりすることができる。
【0024】
即ち、底板2及び周囲の枠板6で形成する型枠空間内に中子が配設され、底板2は、コンクリート成型品の開口部を形成する突起部21を上面に有すると共に、台枠1と周囲の枠板6とに形成した上下空間3内を昇降し、成型後に底板2の突起部21がコンクリート成型品と干渉しない位置まで底板2を下降させて、コンクリート成型品を水平方向へ中子から抜き取ることができるコンクリート型枠を構成している。
【0025】
底板2の昇降は、底板2と台枠1間に楔体4を介在させ、台枠1上をスライドする楔体4の傾斜面41を利用して係合する底板2を台枠1と周囲の枠板6とに形成した上下空間3内を、底板2の突起部21の上下幅を超えて昇降させるものである。
【0026】
楔体4は、底板2と係合面となる上端面が、傾斜面41と頂部を形成する水平面42とから成り、側面が台形状をした厚みを有する板体であって、台枠1の長手(側枠)方向の枠11上に楔体4、4・・・が対向して複数個設けられている。
また、傾斜面41の高低差(台形状の高さ)は底板2の突起部21の上下幅を超える長さとしてあり、後述の脚板22との係合・支持をより確実とするため溝条を上端面に形成してもよい。
【0027】
各楔体4は、格子状ロッド43によって一体に連結され、格子状ロッド43の一端と、台枠1に付設した進退機構44の進退部材とが連繋して進退部材の進退に従動して楔体4、4・・・が台枠1の長手方向の枠11上を一体的に連動してスライドすることになる。
【0028】
一方、底板2には脚板22を、台枠1の長手方向の枠11上で、且つ前記楔体4、4・・・に突合する位置に垂設し、脚板22の下端面が楔体4の上端面に係合して支承される。
そして、脚板22の下端部には、各楔体4に対応して略同一形状の凹部23が形成されている。
【0029】
したがって、楔体4が凹部23に嵌合する位置に在るときは、脚板22が直接台枠1の長手方向の枠11上に載置した降下位置となり、底板2の突起部21が枠板6から下方に露出した型組み前或いは脱型時の状態となる。
そして、型組のため進退機構44によって楔体4を傾斜面41側方向へスライドさせれば凹部23との傾斜面同士が摺擦しながら徐々に底板2が上昇して行き、頂部の水平面42に脚板22が載置した上昇位置となり、底板2の突起部21が枠板6内で中子と突合した型組時(成型時)の状態となる。
【0030】
図中5は底板2を台枠1に対して、昇降のみ可能に規制するガイド機構であり、台枠1に突設したガイド用板12にガイドロッド13を垂直に立設し、このガイドロッド13が貫通する透孔24を有する規制板25を、脚板22にガイド用板12の上方位置に重ねて設けたものである。
【0031】
図面に表示したガイド機構5は一例であり、例えば、台枠1と底板2間に、長孔を穿設したガイド板を長孔が垂直方向に位置するように一方に取り付け、この長穴に沿って摺動するピンや転子を他方に設けて連繋したものでも良い。
【0032】
ここで、コンクリート成型品の製造工程について説明すると、先ず、楔体4をスライドさせることにより、底板2を上昇させて型組みをし、枠内にコンクリートを投入する。
そして、コンクリートが固まったら、コンクリート成型品と周囲の枠板6である側板及び小口板と間に隙間を形成する。
次ぎに、中子及びコンクリート成型品の垂直方向の位置を維持したまま、逆方向に楔体4をスライドさせ、底板2の突起部21がコンクリート成型品と干渉しない位置まで底板2を下降させ、コンクリート成型品を水平方向へ中子から抜き取ることで得られるものである。
【0033】
図5及び図6は、他の実施の形態を表す図であり、底板2の楔体4との係合を底板2に下設した転子26で行なうものとしている。
楔体4のスライドに対して底板2の転子26が回転して楔体4の傾斜面41を転がるため昇降が容易確実となるものである。
転子26の転接面に溝を形成して楔体4からの脱輪を防止することも望ましい。
また、楔体4の頂部の水平面42にストッパーとして突起45を形成して安全性を高めることも好ましい。
【0034】
以上、本発明を実施の形態を図面に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の思想を逸脱することない範囲の他の実施の形態にも適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 台枠
11 長手方向の枠
12 ガイド用板
13 ガイドロッド
2 底板
21 突起部
22 脚板
23 凹部
24 透孔
25 規制板
26 転子
3 上下空間
4 楔体
41 傾斜面
42 水平面
43 格子状ロッド
44 進退機構
45 突起
5 ガイド機構
6 枠板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板及び周囲の枠板で形成する型枠空間内に中子が配設され、底板は、コンクリート成型品の開口部を形成する突起部を上面に有すると共に、台枠と周囲の枠板とに形成した上下空間内を昇降し、成型後に底板の突起部がコンクリート成型品と干渉しない位置まで底板を下降させて、コンクリート成型品を水平方向へ中子から抜き取るコンクリート成型型枠において、
底板と台枠間に楔体を介在させ、台枠上をスライドする楔体の傾斜面を利用して係合する底板を昇降させることを特徴とするコンクリート成型型枠。
【請求項2】
楔体は、底板との係合面が傾斜面と頂部を形成する水平面とから成る板体であり、楔体と略同形の凹部を底板の係合面に形成したことを特徴とする請求項1記載のコンクリート成型型枠。
【請求項3】
楔体は、底板との係合面が傾斜面と頂部を形成する水平面とから成る板体であり、底板に転子を下設して楔体の係合面と係合させたことを特徴とする請求項1記載のコンクリート成型型枠。
【請求項4】
底板を台枠に、昇降のみ可能に規制するガイドを介して連繋したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のコンクリート成型型枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−228813(P2012−228813A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98127(P2011−98127)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(592011516)鶴田製作株式会社 (5)
【Fターム(参考)】