説明

コンクリート打設用型枠およびこれを使用したコンクリートの養生方法

【課題】設備コストが軽減できかつ迅速な空調によるコンクリートの適正な養生を可能とする。
【解決手段】打設されたコンクリートに接する外壁361と該外壁の周縁に内方へ向けて立設された側壁362とで内方へ開く容器状に成形された本体36を備え、空調風を流通させる流通管37を側壁362間に架設して該流通管の管壁に風吹出し孔371を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート打設用型枠およびこれを使用したコンクリートの養生方法に関し、特に、トンネル等の覆工用コンクリートを打設する際に好適に使用できるコンクリート打設用型枠およびこれを使用したコンクリートの養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの二次覆工等のためにコンクリートを打設する場合、特に寒冷地等ではコンクリート養生温度が適温(20〜30℃)よりもかなり低くなるため、必要な強度が出るまでの養生に長期間を要し工事期間が延びる。そこで、例えば特許文献1では、型枠を備えるセントルフォームの前方と後方に仕切部材を設けて、これら仕切部材によってセントルフォームが位置するトンネル空間全体を閉鎖し、この閉鎖空間内に空調風を供給して型枠が接する覆工コンクリートの養生温度を適温に保つものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−31715
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記公報に記載の構造では、セントルフォームが位置する大容量のトンネル空間部分を空調するために大型の空調機を必要とし、設備コストを要するとともに、迅速な空調が困難であるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、設備コストが軽減できかつ迅速な空調によるコンクリートの適正な養生を可能としたコンクリート打設用型枠およびこれを使用したコンクリートの養生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明のコンクリート打設用型枠では、打設されたコンクリートに接する外壁(361)と該外壁の周縁に内方へ向けて立設された側壁(362)とで内方へ開く容器状に成形された本体(36)を備え、空調風を流通させる流通管(37)を側壁(362)間に架設して該流通管の管壁に風吹出し孔(371)を設ける。
【0007】
本第1発明のコンクリート打設用型枠において、内方へ開く本体の開放口を、一部開いた状態でシート材で閉鎖し、風吹出し孔から空調風を吹き出させることによって、閉鎖された本体内に滞留した空調風によって外壁を介して、打設されたコンクリートを加熱ないし冷却してこれを適温に保つことにより速やかな養生を行うことができ、設備コストの軽減と迅速な空調によるコンクリートの適正な養生が実現される。
【0008】
本発明のコンクリート打設用型枠はトンネル用セントルに使用することによって大きな効果が得られるものであり、本第2発明においては、上記コンクリートはトンネルの覆工用コンクリートであり、上記本体はセントルフォームを構成するフレームである。
【0009】
本第2発明によれば、必要最小限の本体内空間のみを空調すれば良いから、セントルフォームが位置する大容量のトンネル空間部分を空調する従来のものに比して、設備コストが大きく軽減され、かつ迅速な空調による覆工コンクリートの適正な養生が可能である。
【0010】
本第3発明は、上記コンクリート打設用型枠を使用したコンクリートの養生方法であって、上記本体(36)の内方へ開く開放口を、一部開いた状態でシート材(5)で閉鎖して、上記風吹出し孔(371)から流出した空調風を、閉鎖された本体(36)内で滞留させて、滞留した空調風によって外壁(361)を介して、打設されたコンクリートを加熱ないし冷却する。
【0011】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明のコンクリート打設用型枠およびこれを使用したコンクリートの養生方法によれば、設備コストが軽減できかつ迅速な空調によるコンクリートの適正な養生が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示す、コンクリート打設用型枠を備えたトンネル用スライドセントルの横断面図である。
【図2】型枠部材を構成する天端フォームのフレームの横断面図である。
【図3】型枠部材を構成する天端フォームのフレームの斜視図である。
【図4】型枠部材を構成する天端フォームのフレームの縦断面図である。
【図5】シート材を張設した状態の、型枠部材を構成する天端フォームのフレームの横断面図である。
【図6】シート材を張設した状態の、型枠部材を構成する天端フォームのフレームの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には本発明のコンクリート打設用型枠を備えたトンネル用スライドセントルの横断面を示す。図1において、スライドセントル1は車両通行可能な門型のガントリー2を備えており、当該ガントリー2には、その上半を覆うように配設したアーチ型の型枠3が支持されている。そして、型枠3の外周壁とトンネルTの内周壁との間に二次覆工用のコンクリートCが打設されている。ガントリー2は紙面垂直の前後方向へ一定の長さを有しており、その前後端の脚部21下端には車輪22が設けられてレール23上に位置している。また、ガントリー2の前後方向の中間に位置する複数の各脚部24にはそれぞれ下端に補助ジャッキ25が設けられている。なお、図1の左右半部は、それぞれガントリー長手方向における異なる位置での横断面である。
【0015】
型枠3は一定幅の同形の型枠部材31を前後方向で複数互いに連結して構成されている。そして、各型枠部材31はそれぞれ、頂部に位置する天端フォーム32、天端フォーム32の両端下面に回動可能に連結されて両側に位置する側フォーム33、および側フォーム33の下端に回動可能に連結された下端フォーム34より構成されている。天端フォーム32は、ガントリー2の頂部上に前後方向へ複数設けたジャッキ26によって昇降可能に支持されている。また、側フォーム33と下端フォーム34はそれぞれジャッキ27,28によってガントリー2の脚部21,24に連結されて、内外方向へ回動させられる。
【0016】
型枠部材31を構成する天端フォーム32、側フォーム33および下端フォーム34にはコンクリートCに接する外周壁の内面に、前後方向(型枠部材31の幅方向)へ平行に延びる多数の強化リブ35が設けてある。これら強化リブ35は図2に示すように、略U字形に屈曲させた板材の開口縁を、連続する曲面に形成された各外壁361,381,391の内面に接合して閉断面の筒状としたものである。なお、強化リブとしては溝形鋼やアングル材等の形鋼を使用しても良い。図2は、天端フォーム32を構成する中央のフレーム36(図1参照)の全体と、これに接合された左右の各フレーム38,39の端部の各断面を示すものであり、本体としての各フレーム36,38,39は、覆工用コンクリートに接する上記外壁361,381,391とこれら外壁361,381,391の周縁に内方(図2の下方)へ向けて立設された側壁362,382,392とで、内方へ開く容器状に成形されている。なお、側フォーム33や下端フォーム34も同様の容器状に成形された単一ないし複数のフレームで構成されている。
【0017】
フレーム36には図2に示すように型枠部材31(図1参照)の長手方向の左右二個所で、前後で対向する側壁362間に流通管37が架設してあり、これら流通管37は、図3、図4に示すように、隣接する型枠部材31の各フレーム36に設けたものが互いに連通させられている。流通管37には周方向の四箇所に(図2)、長手方向へ間隔をおいて多数の風吹出し孔371が設けられている(図4)。
【0018】
図3に示すように、型枠3の長手方向の端部に位置するフレーム36の一端には支持板41が突設されて、支持板41上に空調装置42が設置してある。空調装置42はインバータ制御のモータ44とこれによって駆動されるファン45を備えている。空調装置42の送風パイプ43はヘッダパイプ46に連結されており、ヘッダパイプ46からは風供給パイプ47が分岐して、これら風供給パイプ47がそれぞれ、フレーム36の流通管37の一端に接続されている。天端フォーム32の他のフレーム38,39や、側フォーム33、下端フォーム34にもこれらに対応させて空調装置42が設けてあり(図1)、上記と同様の構造でその流通管に風供給パイプが接続されて連通している。なお、図2では理解を容易にするために強化リブ35の設置数を実際のものより少なくしてあり、また図3、図4では強化リブ35の図示を省略してある。
【0019】
このような構造のコンクリート打設用型枠において、覆工用コンクリートの養生を行う場合には、図5、図6に示すように、内方へ開く容器状の各フレーム36,38,39の開放口をシート材5で閉鎖する。これらシート材5は、例えば周縁に面ファスナーを設けて、これらを各フレーム36,38,39の開放口周縁に設けた面ファスナーに着脱可能に止着する等によって開放口を覆うように取り付けられる。なお、シート材5には一部に、空気流出用の開閉式の小窓や、空気抜き穴を設けておく。
【0020】
このようにして各フレーム36,38,39の開放口をシート材5で閉鎖した後、空調装置42を運転して空調風を流通管37内へ供給し、その風吹出し孔371から各フレーム36,38,39内へ空調風を吹き出してここに滞留させる。このようにしてフレーム36,38,39内に冷却風が滞留させられる結果、外壁361,381,391を介して覆工用コンクリートが適温に保たれて、覆工用コンクリートの養生期間が大幅に短縮される。
【符号の説明】
【0021】
36…フレーム(本体)、361,381,391…外壁、362,382,392…側壁、37…流通管、371…風吹出し孔、42…空調装置、5…シート材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設されたコンクリートに接する外壁と該外壁の周縁に内方へ向けて立設された側壁とで内方へ開く容器状に成形された本体を備え、空調風を流通させる流通管を側壁間に架設して該流通管の管壁に風吹出し孔を設けたことを特徴とするコンクリート打設用型枠。
【請求項2】
前記コンクリートはトンネルの覆工用コンクリートであり、前記本体はセントルフォームを構成するフレームである請求項1に記載のコンクリート打設用型枠。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコンクリート打設用型枠を使用したコンクリートの養生方法であって、前記本体の内方へ開く開放口を、一部開いた状態でシート材で閉鎖して、前記風吹出し孔から流出した空調風を、閉鎖された前記本体内で滞留させて、滞留した空調風によって前記外壁を介して、打設されたコンクリートを加熱ないし冷却することを特徴とするコンクリートの養生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−92575(P2012−92575A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241078(P2010−241078)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000158725)岐阜工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】