説明

コンクリート打設用型枠

【課題】生コンクリートの上面に発生する余剰流出物を効率よく適正に排出することができ、コンクリートの打設作業能率を向上することができるコンクリート打設用型枠を提供する。
【解決手段】コンクリートを成形する成形用パネル43に対し打設空間内の生コンクリート中の余剰流出物を外部に排出する排出口44を設け、該排出口44に生コンクリートの流出を阻止し、かつ余剰流出物を排出する選別金網48を設け、該排出口44を開閉する開閉機構51を設ける。前記選別金網48の通孔を、前記余剰流出物の流出が進行して、生コンクリート中の粗骨材と、細骨材とモルタルとにより通孔が目詰まりを起こして栓をしたようになる大きさに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にトンネルの内側にアーチコンクリートを打設するのに適したコンクリート打設用型枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、掘削された岩盤に吹き付けられた一次復工コンクリートの内側、つまり、トンネル内壁面にはアーチコンクリートが打設されている。このアーチコンクリートを打設する場合には、トンネル内壁面の内側に、コンクリート打設用型枠を配置し、この型枠と、トンネル内壁面との間の空間に型枠の注入口から生コンクリートを注入(打設)している。前記打設空間の妻側は妻板で封止され、生コンクリートが前記空間の隅々まで充填されるようにしている。
【0003】
上記アーチコンクリートの強度を高めるため、前記型枠に形成した挿入口から棒状のバイブレータを生コンクリートに進入して、生コンクリートを締め固めるようにしている。そして、この締め固め作業において、生コンクリートの上面に発生する余剰水、レイタンス、水分の多いモルタル、細骨材等の余剰流出物を外部に排出してアーチコンクリートの上層部の品質を向上するため、従来、特許文献1に示されているように、前記妻板に余剰流出物が流出可能な通孔を多数形成したものが提案されている。前記通孔は、前記余剰流出物の流出が進行して、生コンクリート中の粗骨材と、細骨材とモルタルとにより通孔が目詰まりを起こして栓をしたようになる大きさに設定されている。
【特許文献1】特許第3375320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来のアーチコンクリートの打設用型枠は、妻板に設けた通孔からのみ前記余剰流出物が流出されるようになっているので、打設空間の全域の生コンクリートの余剰流出物を効率よく排出することができず、作業能率が低下するという問題があった。又、生コンクリートの上面に余剰流出物が残留し易いので、途中まで打設したコンクリートの上面に次のコンクリートを打設する際に、その接合部の接合強度が低下して、アーチコンクリートの強度が低下するという問題もあった。
【0005】
本発明は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、生コンクリートの上面に発生する余剰流出物を効率よく適正に排出することができ、コンクリートの打設作業能率を向上することができるコンクリート打設用型枠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、フレームにコンクリートを成形する成形用パネルを接合し、該成形用パネルに対し、生コンクリートの打設空間内の生コンクリート中の余剰流出物を外部に排出する排出口を設けたことを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記排出口に生コンクリートの流出を阻止する阻止手段を設けたことを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記阻止手段は生コンクリート中の余剰流出物のみを流出させる通孔が形成されたプレート又は金網であることを要旨とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3において、前記排出口には前記阻止手段と対応するように、該排出口を開閉する開閉手段が設けられていることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記排出口には余剰流出物を回収容器に流下させる配管が取り外し可能に接続されていることを要旨とする。
【0009】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項において、前記成形用パネルにはバイブレータの差し込み用の点検窓が形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成形用パネルに対し打設空間内の生コンクリート中の余剰流出物を外部に排出する排出口を設けたので、生コンクリートの上面に発生する余剰流出物を効率よく適正に排出することができ、コンクリートの打設作業能率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具体化したコンクリート打設用型枠の一実施形態を図面に従って説明する。
図4に示すように、岩盤にアーチ状に掘削されたトンネルの内壁面には、一次復工コンクリート11が吹き付けられている。この一次復工コンクリート11の内周面にはアーチコンクリート12が打設されるようになっている。このアーチコンクリート12は、アーチコンクリート打設用型枠13によって一次復工コンクリート11の内周面との間に形成される打設用空間Rに生コンクリートを充填することにより打設される。
【0012】
上記アーチコンクリート打設用型枠13について説明すると、トンネルの底面には、左右一対のガイドレール14が敷設されている。このガイドレール14には、走行可能な支持枠体15が走向車輪16によって走向可能に支持されている。前記支持枠体15の上面には、支持枠17を介して円弧状の第1型枠パネル18が装着されている。前記第1型枠パネル18の左右両側端縁には、円弧状の第2型枠パネル19及び第3型枠パネル20がヒンジ機構21,22によって前記一次復工コンクリート11から離隔又は接近する方向に回動可能に連結されている。前記第2及び第3型枠パネル19,20の下端縁には、第4型枠パネル23及び第5型枠パネル24がヒンジ機構25,26によって同じく前記一次復工コンクリート11から離隔又は接近する方向に回動可能に連結されている。
【0013】
前記第1〜第3型枠パネル18,19,20には、生コンクリートをアーチコンクリート12の打設用空間Rに供給するためのコンクリート供給口27が複数箇所に形成されている。このコンクリート供給口27は、生コンクリートが打設用空間Rに供給された後に、生コンクリートを締め固めするためのバイブレータ57を差し込むとともに、打設用空間Rの内部を点検する点検窓の機能も兼用している。各コンクリート供給口27には生コンクリートを供給した後に、該コンクリート供給口27を閉鎖するためのシャッター(図示略)が手動操作可能に装着されている。
【0014】
前記支持枠体15の上面には、生コンクリートを前記コンクリート供給口27から打設用空間Rに分配供給するための分配器31が装着され、この分配器31の基端注入口には、例えば生コン車から生コンクリートが供給されるようになっている。前記分配器31に設けた複数の吐出フランジ32には、生コンクリート供給用の配管33の基端部が接続されている。この配管33の先端部を前記コンクリート供給口27に挿入することにより前記打設用空間Rに生コンクリートを供給するようになっている。
【0015】
次に、打設用空間Rに供給された生コンクリートの上面に生じる余剰水、モルタル、レイタンス等の余剰流出物を外部に排出するための排出機構40について説明する。
前記第1型枠パネル18は、図4に示すように複数の型枠パネル41を円周方向に3枚円弧状に連結すると共に、図3に示すようにトンネルの軸線方向に5枚直列に連結して構成されている。前記第2及び第3型枠パネル19,20は、前記型枠パネル41をトンネルの軸線方向に5枚それぞれ直列に連結して構成されている。
【0016】
前記各型枠パネル41は図5に示すように、フレーム42とそのフレーム42の円弧状の周縁部に溶接により接合した円弧板状のパネル43とによって構成されている。前記パネル43には、余剰流出物を外部に排出するための排出口44が形成され、その排出口44の外周縁には、排出用の筒部45が接続されている。この筒部45の先端部には、フランジ継ぎ手46を介して、排出用のフレキシブルな配管47の基端部が脱着可能に接続されている。図1に示すように、前記配管47の下端部は回収容器Tに接続されている。
【0017】
前記排出口44付近には打設用空間Rから生コンクリートの上面に生じた余剰流出物を排出可能な通孔(細隙)を有する阻止手段としての選別金網48が取り付けられている。又、前記排出口44と対応して、該排出口44を開閉するための開閉手段としての開閉機構51が装着されている。この開閉機構51は、前記パネル43の外表面に軸受52、支持軸53及びアーム54を介して往復回動可能に支持された遮蔽板55と、この遮蔽板55を開閉回動するシリンダ56とによって構成されている。図5は開閉機構51の遮蔽板55が開放位置に保持されている。この状態において、前記シリンダ56が作動されると、図6に示すように遮蔽板55が排出口44を閉鎖する位置に移動される。
【0018】
前記選別金網48の通孔は、前記余剰流出物の流出が進行して、生コンクリート中の粗骨材と、細骨材とモルタルとにより通孔が目詰まりを起こして栓をしたようになる大きさに設定されている。
【0019】
次に、前記のように構成したアーチコンクリート成型用型枠を用いてアーチコンクリート12を打設する作業について説明する。
最初に、図2に示すように、トンネル内において既に打設された左側に示すアーチコンクリート12の端縁にアーチコンクリート打設用型枠13の一端縁を接合すると共に、一次復工コンクリート11の内周面と、アーチコンクリート打設用型枠13の外周面との間に、コンクリート打設用空間Rを形成する。この打設用空間Rの右側の開口端縁を妻板59によって遮蔽する。この妻板59にも余剰流出物が流出可能な通孔を多数形成した金網が用いられている。この通孔も、前記余剰流出物の流出が進行して、生コンクリート中の粗骨材と、細骨材とモルタルとにより通孔が目詰まりを起こして栓をしたようになる大きさに設定されている。
【0020】
次に、妻板59を省略した図3に示すように、第2及び第3型枠パネル19(20)の型枠パネル41に形成されたコンクリート供給口27に前記配管33の先端を挿入して、生コンクリートを前記打設用空間Rに供給する。さらに、前記配管33を挿入していないコンクリート供給口27を利用してバイブレータ57を打設用空間Rに進入させ、生コンクリートを締め固める。前記配管33による生コンクリートの供給量は、前記パネル43に設けた排出口44の上下方向の位置とほぼ同じ高さに生コンクリートの上面が位置するように設定される。
【0021】
この第1回目の生コンクリートの供給動作の終了後において、前記バイブレータ57による生コンクリートの締め固めが行われるとともに、その上面に生じた余剰流出物が前記排出口44から選別金網48の通孔を通して外部に排出され、生コンクリートの上層部の打設状態が適正化される。
【0022】
第1回目の生コンクリートの打設作業が終了した後、前記開閉機構51の遮蔽板55によってアーム54を開放位置から閉鎖位置に切り換えると共に、コンクリート供給口27から配管33及びバイブレータ57を引き出し、コンクリート供給口27を図示しないシャッターにより閉鎖する。
【0023】
次に、2回目の生コンクリートの供給作業を行うが、この場合には、図3に示す第2型枠パネル19の上側のコンクリート供給口27及び排出口44が用いられて、第1回目の生コンクリートの供給作業と同様に、生コンクリートの打設作業、締め固め作業及び余剰流出物の排出作業が行われる。以下、順次同様にして、第1型枠パネル18の下から1〜3段目のコンクリート供給口27及び排出口44を利用して、生コンクリートの打設作業、締め固め作業及び余剰流出物の排出作業が順次行われる。
【0024】
前記妻板59にも従来と同様に余剰流出物の排出手段としての選別金網が用いられているので、妻板59側に近い打設用空間Rの余剰流出物が速やかに外部に排出される。
上記実施形態のコンクリート打設用型枠によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0025】
(1)上記実施形態では、第1〜第3型枠パネル18,19,20を構成する型枠パネル41のパネル43に複数の排出口44を形成し、各排出口44に選別金網48を設け、筒部45及び配管47から回収容器Tに余剰流出物を回収するようにした。このため、打設用空間Rの生コンクリートの上面に生じる余剰流出物を効率よく迅速に外部に排出することができ、コンクリートの打設作業能率を向上することができる。又、生コンクリートの上層部の締め固め状態を適正化して、アーチコンクリート12の強度を向上することができる。
【0026】
(2)上記実施形態では、前記筒部45及び配管47から回収容器Tに余剰流出物を集中して回収するようにしたので、余剰流出物の廃棄作業を能率的に行うことができる。
(3)上記実施形態では、排出口44の開閉機構51を設けたので、選別金網48の通孔から生コンクリート中の水分が流出するのを防止することができる。
【0027】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 前記実施形態では、アーチコンクリート12を打設するためのアーチコンクリート打設用型枠13に具体化したが、各種のコンクリート構造物のコンクリート成型用型枠に具体化してもよい。
【0028】
○ 前記阻止手段として、生コンクリートの余剰水、レイタンス、水分の多いモルタル及び細骨材の群のうち少なくとも一種を含む余剰流出物のみを流出させる通孔が形成されたプレート又は金網を用いてもよい。
【0029】
○ 前記選別金網48を省略してもよい。この場合には、排出口44を開閉する手動開閉機構又は自動の開閉機構51が必要となる。
○ 図示しないが、前記開閉機構51の遮蔽板55を板状に形成し、パネル43の外表面において直線往復動させて排出口44を開閉するようにしてもよい。
【0030】
○ 前記開閉機構51を省略してもよい。この場合には選別金網48等の阻止手段に対し、前記余剰流出物の流出が進行して、生コンクリート中の粗骨材と、細骨材とモルタルとにより通孔が目詰まりを起こして栓をしたようになる大きさに設定する必要がある。
【0031】
(技術的思想)前述した実施形態から把握される請求項以外の技術的思想について説明する。
(1)請求項1〜5のいずれか一項において、前記開閉手段を構成する遮蔽板は、アクチュエータにより遮蔽位置と開放位置との間で切り換えられるように構成されていることを特徴とするコンクリート打設用型枠。
【0032】
(2)請求項1〜5のいずれか一項において、コンクリート打設用型枠は、多数枚組み合わされて、トンネルの内側にアーチコンクリートを打設するものであることを特徴とするコンクリート打設用型枠。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明をアーチコンクリート打設用型枠に具体化した横断面図。
【図2】アーチコンクリート打設用型枠の使用状態を示す縦断面図。
【図3】アーチコンクリート打設用型枠の使用状態を示す斜視図。
【図4】アーチコンクリート打設用型枠の使用状態を示す横断面図。
【図5】排出口の開放状態を示す断面図。
【図6】排出口の閉鎖状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0034】
T…回収容器、12…アーチコンクリート、41…型枠パネル、42…フレーム、44…排出口、47…配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームにコンクリートを成形する成形用パネルを接合し、該成形用パネルに対し、生コンクリートの打設空間内の生コンクリート中の余剰流出物を外部に排出する排出口を設けたことを特徴とするコンクリート打設用型枠。
【請求項2】
請求項1において、前記排出口に生コンクリートの流出を阻止する阻止手段を設けたことを特徴とするコンクリート打設用型枠。
【請求項3】
請求項2において、前記阻止手段は生コンクリート中の余剰流出物のみを流出させる通孔が形成されたプレート又は金網であることを特徴とするコンクリート打設用型枠。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記排出口には前記阻止手段と対応するように、該排出口を開閉する開閉手段が設けられていることを特徴とするコンクリート打設用型枠。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、前記排出口には余剰流出物を回収容器に流下させる配管が取り外し可能に接続されていることを特徴とするコンクリート打設用型枠。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、前記成形用パネルにはバイブレータの差し込み用の点検窓が形成されていることを特徴とするコンクリート打設用型枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−241714(P2006−241714A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55059(P2005−55059)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000158725)岐阜工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】