説明

コンクリート改良剤

【課題】本発明の目的は、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、耐凍結融解性に優れ、また硬化物の強度低下を起こすことなく、優れたひび割れ抑制機能を示す、汎用性の高いコンクリート改良剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(I):[R−O−(XO)−]Y[−O−(XO)−R(I)(一般式(I)中、m、nは0〜500、m+n=5〜500であり、Yは水酸基を含有する化合物の残基を表し、p、qは0〜6である。)で表わされる化合物(A)と、下記一般式(II):R−O−(XO)−R(II)(一般式(II)中、sはXOの平均付加モル数を表し、sが1〜4である。)で表わされるポリオキシアルキルエーテル(B)とを含んで、該化合物(A)と該ポリオキシアルキルエーテル(B)とを、重量比で(A)/(B)=60/40〜99/1の割合で含有するコンクリート改良剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート改良剤に関する。より詳細には、水硬性材料の乾燥収縮ひび割れに対して、優れたひび割れ抑制機能を持ったコンクリート改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水硬性材料は、強度や耐久性等に優れた硬化物を与える。このことから、水硬性材料は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物として広く用いられている。水硬性材料は、土木・建築構造物を構築するために欠かすことができない。
【0003】
水硬性材料は、硬化した後に、外気温や湿度条件等により、内部に残った未反応水分の散逸を起こす。このため、乾燥収縮が進行し、硬化物中にひび割れが生じ、強度や耐久性が低下するという問題がある。土木・建築構造物の強度や耐久性等が低下すると、安全性の低下や修復コストの増大など、重大な問題が生じる。
【0004】
このような問題に対し、法規制が強化されてきている。1999年6月に成立した住宅の品質確保の促進に関する法律では、コンクリートのひび割れも瑕疵保証の対象となっている。2009年2月に改訂された、鉄筋コンクリート造に関する建築工事標準仕様書(JASS 5(日本建築学会))では、耐用年数が長期(100年以上)にわたるコンクリートにおける26週での収縮ひずみが8×10−4以下に規制された。
【0005】
最近、コンクリートのひび割れを抑制するために乾燥収縮を低減させる方法として、収縮低減剤が重要視されている。上記JASS 5の改訂と同時に、収縮低減剤に関する建築学会基準も制定された。
【0006】
従来の収縮低減剤として、炭素原子数1〜4のアルコールのアルキレンオキシド付加物(特許文献1参照)、2〜8価の多価アルコールのエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共付加物(特許文献2参照)、低級アルキルアミンのアルキレンオキシド付加物(特許文献3参照)、オリゴマー領域のポリプロピレングリコール(特許文献4参照)、低分子アルコール類(特許文献5参照)、2−エチルヘキサノールのアルキレンオキシド付加物(特許文献6参照)が報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの収縮低減剤は、コンクリートに使用した場合に強度が低下するという問題がある。このため、強度を保つためにセメントペースト分の割合を高くする必要があり、コンクリートコストが高くなるという問題が生じる。
【0008】
コンクリートに使用した場合の強度低下を抑制し得る収縮低減剤として、2〜8価の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物が報告されている(特許文献7、8参照)。しかしながら、これらの収縮低減剤は、いずれも、粉末樹脂、膨張材などの他の混和材料との組み合わせが必要となっており、コンクリートコストが高くなるという問題は解決できていない。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、耐凍結融解性に優れ、また硬化物の強度低下を起こすことなく、優れたひび割れ抑制機能を示す、汎用性の高いコンクリート改良剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のコンクリート改良剤は、 下記一般式(I):
[R−O−(XO)−]Y[−O−(XO)−R(I)
(一般式(I)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜8の炭化水素基を表し、XO、XOはそれぞれ独立に、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、m、nはそれぞれ、XO、XOの平均付加モル数を表し、m、nは0〜500、m+n=5〜500であり、Yは水酸基を含有する化合物の残基を表し、p、qはそれぞれ独立に0〜6である。ただしpとqは同時に0にはならない。)
で表わされる化合物(A)と、
下記一般式(II):
−O−(XO)−R (II)
(一般式(II)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基を表す。ただしRとRは同時に水素原子にはならない。XOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、sはXOの平均付加モル数を表し、sが1〜4である。)
で表わされるポリオキシアルキルエーテル(B)とを含んでなるコンクリート改良剤であって、該化合物(A)と該ポリオキシアルキルエーテル(B)とを、重量比で(A)/(B)=60/40〜99/1の割合で含有するコンクリート改良剤に関する。
好ましい実施形態としては、前記化合物(A)が、前記一般式(I)において、XO、XOがオキシエチレン基である化合物である前記コンクリート改良剤が挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、耐凍結融解性に優れ、強度低下を起こすことなく、優れたひび割れ抑制機能を示す、汎用性の高いコンクリート改良剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係るひび割れ抵抗性の評価に用いるリング拘束供試体の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0014】
本発明のコンクリート改良剤は、前記化合物(A)及び前記ポリオキシアルキルエーテル(B)を含有する。化合物(A)は1種のみを含有していてもよいし、2種以上を含有していてもよい。ポリオキシアルキルエーテル(B)は1種のみを含有していてもよいし、2種以上を含有していてもよい。
【0015】
本発明で用いられる化合物(A)は下記一般式(I)で表される。
[R−O−(XO)−]Y[−O−(XO)−R (I)
一般式(I)中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜8の炭化水素基を表す。R、Rは、好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜4の炭化水素基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜2の炭化水素基であり、さらに好ましくは、水素原子である。
【0016】
前記一般式(I)中、XO、XOは、それぞれ独立に、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。XO、XOは、それぞれ1種類のみでもよく、2種以上のオキシアルキレン基が含まれていてもよい。2種以上のオキシアルキレン基が含まれる場合、(XO)及び(XO)は、それぞれランダム配列でもブロック配列でもよい。
【0017】
O、XOは、好ましくはオキシプロピレン基またはオキシエチレン基であり、より好ましくは、オキシエチレン基である。
【0018】
一般式(I)中、m、nは、それぞれ、XO、XOの平均付加モル数を表し、m、nは0〜500、m+n=5〜500である。
【0019】
O、XOのどちらか一方がオキシプロピレン基の場合は、m、nは、好ましくは1〜20、より好ましくは、1〜10である。XO、XOがどちらもオキシエチレン基の場合は、m、nは、好ましくは、5〜200、より好ましくは、10〜150、さらに好ましくは20〜100である。
【0020】
m、nを上記の範囲とすることで、ポリオキシアルキルエーテル(B)との併用により相乗的に、ひび割れ抑制性及び耐凍結融解性を向上させることができるコンクリート改良剤とすることができる。
【0021】
Yは水酸基を含有する化合物の残基を表す。水酸基を含有する化合物としては、例えば、炭素原子数1〜8の炭化水素に結合している水素原子の少なくとも1つが水酸基に置き換わったもの等が挙げられる。水酸基を含有する化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール等の1価アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、グリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコール類等がある。
なかでも、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類が好ましく、エチレングリコールがより好ましい。
【0022】
p、qはそれぞれ独立に0〜6である。ただしpとqは同時に0にはならない。pとqの合計が、好ましくは2〜12であり、より好ましくは2〜6である。
【0023】
化合物(A)としては、具体的には、炭素数1〜4のアルコールにエチレンオキシドを付加したポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、グリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコールにエチレンオキシドを付加した化合物、ポリエチレングリコール等が挙げられる。なかでも、ポリエチレングリコールが好ましい。ポリエチレングリコールの重量平均分子量は2000〜20000が好ましく、3000〜15000がより好ましく、4000〜10000が特に好ましい。
【0024】
本発明におけるポリオキシアルキルエーテル(B)は、下記一般式(II)で表される。
【0025】
−O−(XO)−R (II)
一般式(II)中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または、炭素数1〜6の炭化水素基を表す。ただしRとRは同時に水素原子とはならない。
【0026】
炭素原子数1〜6の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、及び、これらの構造異性体などが挙げられる。R、Rは、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、(イソ)ブチル基である。
【0027】
一般式(II)中、XOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。XOは、好ましくは、オキシエチレン基である。一般式(II)中、XOは1種類のみでもよく、2種以上のオキシアルキレン基が含まれていてもよい。2種以上のオキシアルキレン基が含まれる場合、(XO)はランダム配列でもブロック配列でもよい。
【0028】
一般式(II)中、sはXOの平均付加モル数を表す。sは1〜4であり、2〜3であることが好ましい。sが1〜4の範囲内であれば、化合物(A)との併用により相乗的に、ひび割れ抑制性及び耐凍結融解性を向上させることができるコンクリート改良剤とすることができる。
【0029】
本発明のコンクリート改良剤は、化合物(A)及びポリオキシアルキルエーテル(B)を、重量比で(A)/(B)=60/40〜99/1の割合で含有する。(A)/(B)の割合が上記範囲内に収まることにより、化合物(A)及びポリオキシアルキルエーテル(B)を併用することによる、ひび割れ抑制機能及び凍結融解性を相乗的に向上させる効果が得られ、さらにコンクリートのフレッシュ物性を良好に維持することができる。(A)/(B)の割合は、好ましくは70/30〜98/2、より好ましくは90/10〜95/5である。
【0030】
本発明のコンクリート改良剤の添加量は、セメントに対して、固形分換算で、好ましくは0.5〜20重量%であり、より好ましくは0.5〜15重量%であり、さらに好ましくは1〜10重量%である。コンクリート改良剤の添加量を0.5〜20重量%にすることにより、ひび割れ抑制性能及び耐凍結融解性を付与する効果を良好に得ることができる。
【0031】
本発明のコンクリート改良剤は、任意の適切な減水剤を併用してもよい。減水剤として、例えば、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系等のスルホン酸系減水剤;ポリオール誘導体;ポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体、好ましくは、ポリオキシアルキレン基とカルボキシル基とを有する重合体(ポリカルボン酸系減水剤)、あるいはポリオキシアルキレン基とリン酸基とを有する重合体などが挙げられる。ポリオキシアルキレン基とカルボキシル基とを有する重合体(ポリカルボン酸系減水剤)としては、例えば、(メタ)アリルアルコール、3−メチル3−ブテン−1−オール等の特定の不飽和アルコールにアルキレンオキシドを付加したアルケニルエーテル系単量体及び(メタ)アクリル酸やマレイン酸等の不飽和カルボン酸系単量体を含む単量体から得られる共重合体またはその塩(特開平10−236858号公報、特開2001−220417号公報参照);(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び(メタ)アクリル酸系単量体を含む単量体から得られる共重合体(特公昭59−18338号公報、特開平7−223852号公報参照)などが挙げられる。ポリオキシアルキレン基とリン酸基とを有する重合体としては、例えば、ポリオキシアルキレン基を有する特定の単量体とリン酸モノエステル系単量体とリン酸ジエステル系単量体とを含む単量体から得られる共重合体(特開2006−052381号公報参照)などが挙げられる。これらの中でも、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリカルボン酸系減水剤が特に好ましい。
【0032】
本発明のコンクリート改良剤は、一般式(I)で表わされる化合物(A)及び一般式(II)で表わされるポリオキシアルキルエーテル(B)を必須成分として含むものであるが、以下の(1)〜(20)に例示するような他の公知のコンクリート改良剤(材)を含有することができる。
【0033】
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の多糖類のアルキル化もしくはヒドロキシアルキル化誘導体の一部又は全部の水酸基の水素原子が、炭素数8〜40の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基又はそれらの塩を部分構造として含有するイオン性親水性置換基で置換されてなる多糖誘導体;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1,3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマー及びその四級化合物等。
【0034】
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
【0035】
(3)遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖等の単糖類や、二糖、三糖等のオリゴ糖、又はデキストリン等のオリゴ糖、又はデキストラン等の多糖類、これらを含む糖蜜類等の糖類;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
【0036】
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
【0037】
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
【0038】
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
【0039】
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
【0040】
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
【0041】
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
【0042】
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
【0043】
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
【0044】
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
【0045】
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
【0046】
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
【0047】
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
【0048】
(16)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシ基を置換基として有してもよい、スルホン酸基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
【0049】
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
【0050】
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
【0051】
(19)収縮低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
【0052】
(20)膨張材;エトリンガイト系、石灰系等。
【0053】
本発明のコンクリート改良剤は、本発明の作用効果を奏する限り、必要に応じて、その他の成分を併用してもよい。しかしながら、本発明のコンクリート改良剤は、他の混和材料と組み合わせなくても、硬化物の強度低下を抑制し、優れたひび割れ抑制機能を示し、優れた耐凍結融解性を示すことができる。したがって、低コストで本発明のコンクリート改良剤を提供することを考えた場合には、上記その他の成分は必ずしも併用する必要はない。
【0054】
本発明のコンクリート改良剤の製造方法については、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、化合物(A)とポリオキシアルキルエーテル(B)を、任意の適切な混合方法によって混合することが挙げられる。
【0055】
本発明のコンクリート改良剤の使用形態としては、水硬性材料組成物に添加する方法が一般的であるが、硬化後の水硬性材料組成物の表面に本発明のコンクリート改良剤を塗布、もしくは散布しても良い。
【0056】
本発明のコンクリート改良剤は、水/セメント比の適用範囲が広く、水/セメント比(重量比)で、好ましくは60%〜15%のコンクリートまで製造が可能である。従って、汎用性が高く、種々の用途の水硬性材料組成物に添加して用いることが可能である。
【0057】
本発明のコンクリート改良剤を用いた水硬性材料組成物とは、好ましくは、セメント、細骨材、及び水から成るモルタル、さらに粗骨材から成るコンクリート等のセメント組成物に、本発明のコンクリート改良剤を所定の割合で添加したものである。
【0058】
セメント組成物の製造に用いるセメントとしては、例えば、普通、低熱、中庸熱、早強、超早強、耐硫酸塩等のポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメント、シリカヒュームセメントが挙げられる。また、セメント組成物中の粉体として、例えば、シリカヒューム、フライアッシュ、石灰石微粉末、高炉スラグ微粉末、膨張材、その他の鉱物質微粉末等が挙げられる。細骨材としては、例えば、川砂、山砂、海砂、砕砂、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、再生骨材が挙げられる。粗骨材としては、例えば、川砂利、砕石、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、再生骨材が挙げられる。水としては、例えば、JIS A 5308付属書9に示される上水道水、上水道水以外の水(河川水、湖沼水、井戸水など)、回収水が挙げられる。
【0059】
セメント組成物中には、任意の適切な添加剤を加えてもよい。例えば、硬化促進剤、凝結遅延剤、防錆剤、防水剤、防腐剤が挙げられる。
【0060】
セメント組成物の製造方法、運搬方法、打設方法、養生方法、管理方法などについては、任意の適切な方法を採用し得る。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部及び%は重量基準である。
[製造例1]化合物(A):PEG400の合成
温度計、撹拌機、窒素及びエチレンオキシド導入管を備えたステンレス製高圧反応容器に、トリエチレングリコールを200g及び48%水酸化ナトリウム水溶液を0.6g仕込んだ。反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で昇温して加熱攪拌した。加熱攪拌下に微量の窒素を流通させながら、反応容器内を減圧し、内温を120℃まで上げて内圧100mmHgで1時間脱水を行った。1時間脱水後、窒素で加圧し、内温を150℃まで上げて、安全圧下(反応容器内の窒素分圧の方がエチレンオキシド分圧より常に高くなるような条件)で、内温を150±5℃に維持しながらエチレンオキシド600gを添加することにより、重量平均分子量400のポリエチレングリコール(PEG400)を得た。
[製造例2]化合物(A):PEG2000の合成
温度計、撹拌機、窒素及びエチレンオキシド導入管を備えたステンレス製高圧反応容器に、重量平均分子量400のポリエチレングリコール(PEG400)を200g及び48%水酸化ナトリウム水溶液を0.2g仕込んだ。反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で昇温して加熱攪拌した。加熱攪拌下に微量の窒素を流通させながら、反応容器内を減圧し、内温を120℃まで上げて内圧50mmHgで1時間脱水を行った。1時間脱水後、窒素で加圧し、内温を150℃まで上げて、安全圧下(反応容器内の窒素分圧の方がエチレンオキシド分圧より常に高くなるような条件)で、内温を150±5℃に維持しながらエチレンオキシド200gを添加することにより、重量平均分子量800のポリエチレングリコール(PEG800)を得た。
【0062】
温度計、撹拌機、窒素及びエチレンオキシド導入管を備えたステンレス製高圧反応容器に、得られたPEG800を150g及び48%水酸化ナトリウム水溶液0.42gを仕込んだ。反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で昇温して加熱攪拌した。加熱攪拌下に微量の窒素を流通させながら、反応容器内を減圧し、内圧50mmHgで1時間脱水を行った。1時間脱水後、窒素で加圧し、内温を150℃まで上げて、安全圧下(反応容器内の窒素分圧の方がエチレンオキシド分圧より常に高くなるような条件)で、内温を150±5℃に維持しながらエチレンオキシド225gを添加することにより、重量平均分子量2000のポリエチレングリコール(PEG2000)を得た。
[製造例3]化合物(A):PEG4500の合成
温度計、撹拌機、窒素及びエチレンオキシド導入管を備えたステンレス製高圧反応容器に、重量平均分子量400のポリエチレングリコール(PEG400)を200g及び48%水酸化ナトリウム水溶液を0.2g仕込んだ。反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で昇温して加熱攪拌した。加熱攪拌下に微量の窒素を流通させながら、反応容器内を減圧し、内温を120℃まで上げて内圧50mmHgで1時間脱水を行った。1時間脱水後、窒素で加圧し、内温を150℃まで上げて、安全圧下(反応容器内の窒素分圧の方がエチレンオキシド分圧より常に高くなるような条件)で、内温を150±5℃に維持しながらエチレンオキシド200gを添加することにより、重量平均分子量800のポリエチレングリコール(PEG800)を得た。
【0063】
温度計、撹拌機、窒素及びエチレンオキシド導入管を備えたステンレス製高圧反応容器に、得られたPEG800を150g及び48%水酸化ナトリウム水溶液0.42gを仕込んだ。反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で昇温して加熱攪拌した。加熱攪拌下に微量の窒素を流通させながら、反応容器内を減圧し、内圧50mmHgで1時間脱水を行った。1時間脱水後、窒素で加圧し、内温を150℃まで上げて、安全圧下(反応容器内の窒素分圧の方がエチレンオキシド分圧より常に高くなるような条件)で、内温を150±5℃に維持しながらエチレンオキシド700gを添加することにより、重量平均分子量4500のポリエチレングリコール(PEG4500)を得た。
[ひび割れ抵抗性評価]
本発明のコンクリート改良剤の所定量を秤量して水で希釈したもの300gと、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)600gをホバート型モルタルミキサー(ホバート社製、型番:N−50)を用いて低速で3分間混練して、評価用供試体を調製するためのセメントペーストを得た。
【0064】
得られたセメントペースト250gを、図1に示した形状のリング拘束供試体を調製するために、リング拘束試験型枠(外枠:PE蓋付きポリスチレン、金属製リング:SUS304)に流し込んで、3日間密封養生を行なった。
【0065】
3日間密封養生後、ペースト硬化体をリング拘束試験型枠から取り出し、リング拘束供試体とした。リング拘束供試体の形態は図1に示した通りである。
【0066】
この供試体を、室温20℃、湿度60%の恒温恒湿室内に保管し、ひび割れ抵抗性の評価を行なった。保管開始から供試体にひび割れが生じるまでの時間をひび割れ発生時間とした。ひび割れ発生時間が長いほど、ひび割れ抵抗性に優れていることを示す。
<実施例1>
本発明のコンクリート改良剤を、表1に示す通り、化合物(A)として、製造例2で得たPEG2000及び、ポリオキシアルキルエーテル(B)として、トリエチレングリコールジメチルエーテル(TEDM:日本乳化剤製)を、セメントに対して1.5%用いて、上記ひび割れ抵抗性の評価方法にしたがって、セメントペーストを調製し、当該ペーストからリング拘束供試体を作成した。ひび割れ抵抗性の評価結果を表2に示す。
<実施例2>
本発明のコンクリート改良剤を、表1に示す通り、化合物(A)として、製造例3で得たPEG4500及び、ポリオキシアルキルエーテル(B)として、トリエチレングリコールジメチルエーテル(TEDM:日本乳化剤製)を、セメントに対して1.5%用いて上記ひび割れ抵抗性の評価方法にしたがって、セメントペーストを調製し、当該ペーストからリング拘束供試体を作成した。ひび割れ抵抗性の評価結果を表2に示す。
<実施例3>
本発明のコンクリート改良剤を、表1に示す通り、化合物(A)として、製造例3で得たPEG4500及び、ポリオキシアルキルエーテル(B)として、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEDM:日本乳化剤製)を、セメントに対して1.5%用いて、上記ひび割れ抵抗性の評価方法にしたがって、セメントペーストを調製し、当該ペーストからリング拘束供試体を作成した。ひび割れ抵抗性の評価結果を表2に示す。
<実施例4>
本発明のコンクリート改良剤を、表1に示す通り、化合物(A)として、製造例3で得たPEG4500及び、ポリオキシアルキルエーテル(B)として、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG:日本乳化剤製)を、セメントに対して1.5%用いて、上記ひび割れ抵抗性の評価方法にしたがって、セメントペーストを調製し、当該ペーストからリング拘束供試体を作成した。ひび割れ抵抗性の評価結果を表2に示す。
<実施例5>
本発明のコンクリート改良剤を、表1に示す通り、化合物(A)として、製造例3で得たPEG4500及び、ポリオキシアルキルエーテル(B)として、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMFDG:日本乳化剤製)を、セメントに対して1.5%用いて、上記ひび割れ抵抗性の評価方法にしたがって、セメントペーストを調製し、当該ペーストからリング拘束供試体を作成した。ひび割れ抵抗性の評価結果を表2に示す。
<実施例6>
本発明のコンクリート改良剤を、表1に示す通り、化合物(A)として、製造例3で得たPEG4500及び、ポリオキシアルキルエーテル(B)として、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(BDG:日本乳化剤製)を、セメントに対して1.5%用いて、上記ひび割れ抵抗性の評価方法にしたがって、セメントペーストを調製し、当該ペーストからリング拘束供試体を作成した。ひび割れ抵抗性の評価結果を表2に示す。
【0067】
≪比較例1,2≫
比較例として、表1に示す通り、化合物(A)として、製造例3で得たPEG4500のみを、セメントに対して1.5%用いて作製したセメントペーストや、ポリオキシアルキルエーテル(B)の比率が本発明の範囲を外れた過剰量とし、セメントに対して1.5%用いた場合のリング拘束供試体によるひび割れ抵抗性評価結果を表2に示す。
表2において、本発明のコンクリート改良剤を用いた実施例1〜6では、いずれもひび割れ発生時間が50時間を越えており、優れたひび割れ抵抗性を示すことが判る。一方、比較例1,2では、実施例よりひび割れ発生時間が長くなっており、本発明のコンクリート改良剤には及ばないことが判る。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価で、硬化物の強度低下を抑制し、優れたひび割れ抑制機能を示し、優れた耐凍結融解性を示す、汎用性の高いコンクリート改良剤として有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】
【特許文献1】特公昭56−51148号公報
【特許文献2】特公平1−53214号公報
【特許文献3】特公平1−53215号公報
【特許文献4】特開昭59−152253号公報
【特許文献5】特公平6−6500号公報
【特許文献6】特許第2825855号公報
【特許文献7】特開平9−301758号公報
【特許文献8】特開2002−68813号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
[R−O−(XO)−]Y[−O−(XO)−R(I)
(一般式(I)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜8の炭化水素基を表し、XO、XOはそれぞれ独立に、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、m、nはそれぞれ、XO、XOの平均付加モル数を表し、m、nは0〜500、m+n=5〜500であり、Yは水酸基を含有する化合物の残基を表し、p、qはそれぞれ独立に0〜6である。ただしpとqは同時に0にはならない。)
で表わされる化合物(A)と、
下記一般式(II):
−O−(XO)−R (II)
(一般式(II)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基を表す。ただしRとRは同時に水素原子にはならない。XOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、sはXOの平均付加モル数を表し、sが1〜4である。)
で表わされるポリオキシアルキルエーテル(B)とを含んでなるコンクリート改良剤であって、
該化合物(A)と該ポリオキシアルキルエーテル(B)とを、重量比で(A)/(B)=60/40〜99/1の割合で含有するコンクリート改良剤。
【請求項2】
前記化合物(A)が、前記一般式(I)において、XO、XOがオキシエチレン基である化合物である請求項1に記載のコンクリート改良剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコンクリート改良剤とセメントとを含む、セメント組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2013−53014(P2013−53014A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190282(P2011−190282)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】