説明

コンクリート杭の施工方法、ケーシングチューブ、ケーシングおよびコンクリート杭

【課題】 孔壁の崩壊を防止しつつ掘削することができ、杭の必要断面を保持することができ、ケーシングを回収する必要がないコンクリート杭の施工方法、該方法に使用されるケーシングチューブ、ケーシングおよびコンクリート杭を提供する。
【解決手段】場所打ちコンクリート杭の施工方法は、地盤に中空円筒の生分解性プラスチックからなるケーシングチューブ12aを圧入し、ケーシングチューブ内を掘削して、ケーシングを挿設した掘削孔を形成する工程と、ケーシング内にコンクリートを打設する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート杭を施工する方法、該方法に用いる生分解性プラスチックからなるケーシングチューブ、ケーシングチューブを連結して形成するケーシング、該ケーシングを用いて形成するコンクリート杭に関する。
【背景技術】
【0002】
建物を構築する上で、その建物を支持する基礎が重要となる。基礎は、建物の規模や地盤の状態によって形状が決定される。一般に、小規模の建物で、地盤の状態が良好である場合には、それぞれの基礎が独立している独立基礎が採用され、小規模から中規模の建物に対しては、建物の荷重がかかる柱を基礎梁で繋ぎ、その基礎梁からフーチングを出すことによって建物を支持する布基礎が採用される。また、中規模の建物に対しては、基礎の部分を1枚の版にし、版全体で建物の荷重を支えるべた基礎が採用されている。このべた基礎は、上記の2つの基礎に比較してしっかりした基礎であり、近年では、個人住宅に多く採用されている。
【0003】
中規模から大規模の建物で、地盤の状態があまり良好ではない場合には、地盤面下に長大な杭を打ちこんで建物を支持する杭基礎が採用されている。この杭基礎には、地盤の深いところにある硬い層まで杭を到達させて、その硬い層でもって支持させる支持杭と、土が杭に与える摩擦力でもって支える摩擦杭とがある。これらの杭には、杭体の品質が良く、コンクリート強度が大きいという利点を有する、既に完成したコンクリート杭を使用する既製コンクリート杭、既製コンクリート杭に比較して軽量で、運搬が容易で、水平力に強い鋼管杭、掘削後、鉄筋かごを収容し、コンクリートを打設して形成する場所打ちコンクリート杭、木材を使用する木杭が挙げられる。既製コンクリート杭のうち打撃工法によるものは、掘削し、直接たたいて打ち込むなどして挿入するため、騒音が著しく、近年では、あまり使用されていない。また、鋼管杭は、腐食に対する検討を要するといった問題がある。木杭は、完全な乾燥状態か、完全な湿潤状態かに保持しておかなければ、腐食してしまうといった問題がある。したがって、近年では、場所打ちコンクリート杭が多く採用されている。
【0004】
上記の場所打ちコンクリート杭の施工方法としては、主に、アースドリル工法、リバース工法、オールケーシング工法がある。アースドリル工法は、掘削バケットを回転させ、バケット内に土砂を鋤き取り、掘削孔外へ排出し、ベントナイト液を主体とする安定液を用いて底さらいバケットやエアーリフトによる孔底処理を行い、その後、鉄筋を挿入し、コンクリートを打設する工法である。リバース工法は、ビット(掘削用の爪)で掘削した土砂をかき越し、泥水とともに吸い上げ、排出し、その後、鉄筋かごを挿入し、トレミー管でコンクリートを打設する工法である。オールケーシング工法は、杭底部までケーシングチューブを揺動させながら挿入しつつ、ハンマーグラブで掘削、排土し、その後、鉄筋かごをケーシング内に挿入し、トレミー管を配設し、コンクリートを打設しながら、ケーシングを引き抜く工法である。
【0005】
上記アースドリル工法は、安定液の管理を、上記リバース工法は、泥水の管理を、それぞれ充分に行わないと、孔壁の崩壊や、コンクリート強度の低下を引き起こす。また、これらの工法は、廃泥水の処理量が多くなり、環境面での問題および経済上の問題がある。また、上記オールケーシング工法は、掘削孔の全長にわたってケーシングにより孔壁を保護するため、廃泥水量が少ないという利点を有する。しかしながら、掘削孔の全長にわたってケーシングを圧入するため、施工深度が地中深い場合には、ケーシングの引き抜きが不可能になるという問題がある。また、コンクリートを打設した後、すぐにケーシングを引き抜かなければならないため、杭体の出来上がりが良好か否かは不明確となり、場合によっては、杭の断面算定を検討する必要があった。
【0006】
ここで、環境面に配慮した材料として、生分解性プラスチックが提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3を参照)。すなわち、土中で充分な排水機能を与え、土と一体化する埋設構造体として提供し、植物を育成する技術、地中壁の壁体の一部として構成し、地中壁がそのまま残置されても、所定期間経過後、分解され、地下水流を確保できる技術、不要地中管を撤去する際、地中管を破砕するわけであるが、生分解性プラスチックで構成された推進管を掘削機に連結しておき、掘削された孔壁を推進管で保護し、所定期間経過後、土と一体化する技術に採用されている。なお、これら生分解性プラスチックは、土壌中の微生物の働きにより、水および炭酸ガスに分解されるものである。
【0007】
上記生分解性プラスチックからなる推進管を用いる方法では、掘削機に推進管を連結するため、推進管は、掘削機の外径に合う管径とされ、掘削機は回転しながら掘削を行うため、回転翼よりわずかに大きい径の孔が形成される。これにより、掘削孔と推進管との間に隙間が生じる。また、掘削機が到達する先端部分には、推進管は挿入されず、空隙を形成する。万一、推進管内にコンクリートを流し込んだ場合、上記空隙を通り、上記隙間に流れ込み、土と一体化するべき生分解性プラスチックがコンクリート内に埋設された状態になってしまう。
【特許文献1】特開2005−023549号公報
【特許文献2】特開2002−363976号公報
【特許文献3】特開2004−286076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、孔壁の崩壊を防止しつつ掘削することができ、杭の必要断面を保持でき、ケーシングを回収する必要がないコンクリート杭の施工方法、さらには、付着を良好にし、簡単に連結することができるケーシングチューブ、ケーシングおよび該ケーシングを用いて形成されるコンクリート杭を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、従来の鋼製のケーシングチューブに代えて、生分解性プラスチックからなるケーシングチューブにすることで、コンクリート打設後、ケーシングを回収する必要がなくなり、環境面における問題も生じることなく、さらには、そのまま地盤中に残置するため、杭の必要断面を保持することができ、また、内面に溝および突起を設けてケーシングとコンクリートとの間の付着を良好にすることができ、その複数のケーシングチューブを、樹脂溶接、または、嵌合溝および突出部の利用により、簡単に連結できることを見出すことによりなされたものである。上記課題は、本発明のコンクリート杭の施工方法、ケーシングチューブ、ケーシング、コンクリート杭を提供することにより達成される。
【0010】
本発明の請求項1の発明によれば、場所打ちコンクリート杭の施工方法であって、
地盤に中空円筒の生分解性プラスチックからなるケーシングチューブを圧入し、前記ケーシングチューブ内を掘削して、ケーシングを挿設した掘削孔を形成する工程と、
前記ケーシング内にコンクリートを打設する工程とを含む、方法が提供される。
【0011】
本発明の請求項2の発明によれば、前記掘削孔を形成する工程は、ケーシングチューブを連結する工程を含む方法が提供される。
【0012】
本発明の請求項3の発明によれば、さらに、前記掘削孔内に鉄筋かごを挿設する工程を含む方法が提供される。
【0013】
本発明の請求項4の発明によれば、さらに、前記掘削孔を形成する工程後、前記掘削孔の孔底に堆積する堆積物を排出させる工程を含む方法が提供される。
【0014】
本発明の請求項5の発明によれば、前記ケーシングチューブは、内面に複数の溝および突起を備える方法が提供される。
【0015】
本発明の請求項6の発明によれば、前記ケーシングチューブは、一方の端面に複数の突出部を備え、他方の端面に複数の嵌合溝を備える方法が提供される。
【0016】
本発明の請求項7の発明によれば、場所打ちコンクリート杭の施工において、掘削孔内に挿設されるケーシングを形成するために用いられるケーシングチューブであって、中空円筒の生分解性プラスチックからなり、内面に複数の溝および突起を備えることを特徴とする、ケーシングチューブが提供される。
【0017】
本発明の請求項8の発明によれば、前記ケーシングチューブは、一方の端面に複数の突出部を備え、他方の端面に複数の嵌合溝を備えるケーシングチューブが提供される。
【0018】
本発明の請求項9の発明によれば、場所打ちコンクリート杭を形成するために掘削孔内に挿設されるケーシングであって、中空円筒の生分解性プラスチックからなり、内面に複数の溝および突起と、一方の端面に複数の突出部と、他方の端面に複数の嵌合溝とを備えるケーシングチューブを、互いに嵌合させ、前記ケーシングチューブ同士を連結して形成される、ケーシングが提供される。
【0019】
本発明の請求項10の発明によれば、中空円筒の生分解性プラスチックからなり、内面に複数の溝および突起を備えるケーシングチューブを地盤に圧入し、前記ケーシングチューブ内を掘削して、ケーシングを挿設した掘削孔を形成し、前記ケーシング内にコンクリートを打設し、微生物に前記ケーシングを分解させることにより、複数の溝および突起を備える表面を形成させた、コンクリート杭が提供される。
【0020】
本発明の請求項11の発明によれば、前記ケーシングは、複数の前記ケーシングチューブを連結して構成され、前記複数のケーシングチューブの各々は、一方の端面に複数の突出部を備え、他方の端面に複数の嵌合溝を備えており、第1のケーシングチューブの複数の嵌合溝のそれぞれに、第2のケーシングチューブの複数の突出部を挿入し、嵌合させることにより、ケーシングチューブ同士を連結するコンクリート杭が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明のコンクリート杭の施工方法を提供することにより、孔壁の崩壊を防止しつつ掘削することができ、ケーシングチューブに生分解性プラスチックを採用し、地盤に隣接させて設置することができるため、ケーシングを回収する必要がなくなり、環境面における問題が生じることもなく、上述した従来の方法に比較して1工程少なくすることができ、短期間での施工が可能となる。本発明のケーシングチューブ、ケーシングを提供することにより、杭の必要断面を保持することができ、また、コンクリートとの付着を良好なものにすることができる。また、簡単に連結することができるため、施工が容易となる。本発明のコンクリート杭を提供することにより、基礎に高い支持力を付与することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を、図面を参照して詳細に説明するが、本発明の場所打ちコンクリート杭の施工方法、ケーシングチューブ、ケーシングおよびコンクリート杭は、以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。本発明の場所打ちコンクリート杭の施工方法を、図1〜図8を参照して説明する。
【0023】
図1〜図8は、本発明の場所打ちコンクリート杭の施工を行う各工程を例示した図である。第1の工程では、図1に示すように、揺動装置10を地面11の所定位置に配置し、揺動装置10に、中空円筒の生分解性プラスチックからなるケーシングチューブ12を設置する。揺動装置10は、杭芯を確認しながら設置される。揺動装置10は、ケーシングチューブ12を揺動させつつ、昇降可能にする装置であり、揺動昇降手段10aを備えている。揺動装置10の揺動昇降手段10aは、ケーシングチューブ12を揺動させつつ、降下させて、地盤中にケーシングチューブ12を圧入する。本発明では、揺動に限らず、ケーシングチューブ12を回転可能に支持する回転昇降手段を備える装置とし、ケーシングチューブを回転させつつ、降下させて、地盤中に圧入させることもできる。
【0024】
第2の工程では、図2に示すように、埋設したケーシングチューブ12の内部の土砂を、掘削手段13を用いて掘削する。図2に示す実施の形態では、掘削手段13として、ハンマーグラブを用いている。掘削手段13としては、その他、アースドリルを用いることもできる。土砂を、掘削手段13を用いて掘削し、掘削孔を形成するが、掘削孔の孔壁にケーシングチューブ12が隣接して配置される状態になるため、掘削孔形成中の孔壁の崩壊を防止することができる。なお、ケーシングチューブ12は、すべてが圧入されず、一部が地面11から露出するように残される。これは、そのケーシングチューブと連結するケーシングチューブとを溶接、または、嵌合させて連結するためである。
【0025】
第3の工程では、図3に示すように、ケーシングチューブ12を連結し、掘削を継続する。図3に示す実施の形態では、ケーシングチューブ12の端面と、連結されるケーシングチューブ12aの端面とを樹脂溶接することにより連結している。本発明では、ケーシングチューブの一端の面に凹状の嵌合溝を複数設け、他端の面に、嵌合溝に対応する凸状の突出部を複数設けた構成とし、それらの嵌合により、連結することもできる。その他いかなる構成であってもよい。
【0026】
第4の工程では、図4に示すように、ケーシングチューブ12の圧入および連結を繰り返し、ケーシング14を形成している。ケーシング14は、地盤上に構築される建物の規模、地盤の状態で決定された長さに形成される。この工程では、杭を構築する地盤の支持層への貫入量を確認し、最終的な掘削孔の長さを確認する。また、支持層を確認し、想定していた地盤より軟弱で強度不足を生じる場合には、深さ方向に、さらに延ばすことができる。
【0027】
第5の工程では、図5に示すように、孔底15に堆積する堆積物を排出する。切刃などの切削部材を備える容器であるバケット16を、孔底15に配置し、孔底15に堆積する堆積物をくみ上げ、孔外へ排出することができる。この堆積物の主なものは、泥水である。水分は、後に充填されるコンクリートに混合されると、配合比が変化し、構築される杭の強度を弱める。また、泥水は、時間経過とともに浸透し、その泥水が堆積していた孔底15に空隙を生じさせる。これは、杭の先端支持力の低下を生じさせる。これらのことから、泥水を排出することが重要である。本発明では、泥水であれば、ポンプなどを使用して吸液し、孔外へ排出することもできる。
【0028】
第6の工程では、図6に示すように、鉄筋かご17を挿設し、トレミー管18を連結する。鉄筋かご17は、円筒状かご形に組み立てた鉄筋で、構築される杭の強度を向上させるために挿設される。強度に応じて、いかなる形状であってもよく、また、いかなる本数の鉄筋を使用して組み立てられていてもよい。トレミー管18は、コンクリート打設するための管で、連結して孔底15まで延ばされ、管を取り外しながらコンクリートを打設するものである。最上部に連結されるトレミー管は、コンクリートミキサー車などに連結されるラインに接続され、コンクリートミキサー車から孔内へのコンクリートの供給を可能にする。図6に示す実施の形態では、鉄筋かご17は、中央部に、トレミー管18を挿脱可能にするための穴が形成されていて、その穴を通して、連結したトレミー管18を、孔底15に近隣する位置まで挿入した状態にしている。
【0029】
第7の工程では、図7に示すように、トレミー管18からコンクリートを流出させ、コンクリートを打設する。上述したようにして挿設されたトレミー管18からコンクリート19を流出させ、掘削孔内にコンクリート19を打設する。このコンクリートの打設は、トレミー管18を取り外しながら行われる。
【0030】
従来の工法では、最後に、ケーシング14を、コンクリートが固まるまでに引き抜き、ケーシング14を構成するケーシングチューブ12を分離する工程を実施しなければならないが、本発明では、ケーシング14を構成するケーシングチューブ12に、生分解性プラスチックを使用するため、そのまま残置しておいても、微生物によって分解され、消失させることができる。
【0031】
所定期間経過後、図8に示すように、ケーシング14が消失して、鉄筋かご17を含む一定径のコンクリート杭20を形成する。この一定径の杭は、杭の必要断面を保持し、水平方向の荷重に対する曲げ抵抗を強くする。これにより、高い支持力を付与することができる。なお、コンクリートの打設は、地面11に盛り上がるように行われるため、平坦になるように、コンクリート表面がはつり取られる。これらは、グラインダーやブレーカーなどを使用して行うことができる。
【0032】
図9は、図1〜図3に示されるケーシングチューブ12を例示した図である。図9に示すケーシングチューブ12は、中空円筒の生分解性プラスチックからなるものである。図9(a)に示すケーシングチューブ12の両方の端面21a、21bには、特に何も設けられておらず、樹脂溶接することにより、ケーシングチューブ同士が連結されるようになっている。具体的には、加熱された溶接棒をそれぞれの端面に押し当て、それぞれの端面の樹脂を溶かし、それぞれを隣接させたまま冷却することにより溶接する。ケーシングチューブ12の内面には、複数の溝22および突起23が設けられている。図9(a)には、誇張された複数の溝22および突起23が示されている。この複数の溝22および突起23により、管内部に充填されるコンクリートとの付着を良好なものにし、良好な杭を提供することが可能となる。また、この溝22および突起23は、ケーシングが消失した場合、コンクリート表面に対応する形状として残り、これらが地盤とかみ合った状態となり、コンクリート杭に高い支持力を付与する。この溝22および突起23は、いかなる数設けられていてもよく、形状、大きさもいかなるものであってもよい。
【0033】
図9(b)に示すケーシングチューブ12の両端には、一方の端面21aに、凹状の嵌合溝24が複数設けられ、他方の端面21bに、凸状の突出部25が、嵌合溝24に対応して複数設けられている。この嵌合溝24および突出部25は、互いを嵌合させることができるものであればいかなる形状、深さおよび長さであってもよい。また、嵌合溝24および突出部25の数は、連結して形成されるケーシングの強度を向上させるために多いほうが好ましい。図9(b)に示す実施の形態では、4つずつ設けられているが、例えば、嵌合溝24を周方向に等間隔で6つあるいは8つ設け、突出部25を、それに対応させて6つあるいは8つ設けることもできる。この場合、各突出部25にかかる荷重を均一にするため、60°毎(6つの場合)あるいは45°毎(8つの場合)に嵌合溝24および突出部25を設けることができる。なお、ケーシングチューブ12は、杭の径および長さに応じて適切な径、長さ、孔壁から受ける土圧に応じて適切な厚さにすることができる。また、突出部25も、ケーシングチューブ12と同じ材料、すなわち生分解性プラスチックから形成することができる。なお、図9(b)に示すケーシングチューブ12も、図示していないが、内面に複数の溝22および突起23が設けられている。
【0034】
ケーシングは、中空円筒の生分解性プラスチックからなる1つのケーシングチューブ12から構成することもできるが、複数のケーシングチューブ12から構成することもできる。ケーシングチューブ12は、上述したように、生分解性プラスチックから構成されるため、土壌中に存在する微生物によって分解され、所定期間経過後、消失する。
【0035】
生分解性プラスチックとしては、でんぷん、セルロース、乳酸、コハク酸、グリコール、これらの混合物からなるものを挙げることができる。地盤に圧入するため、特に、キトサン、セルロース、でんぷんを主成分とするもの、ポリカプロラクトン、カプロラクトン系共重合体、とうもろこしやじゃがいもなどのでんぷんから得られるポリ乳酸、ポリ乳酸系樹脂、脂肪族ジカルボン酸とジオールとから合成される脂肪族ポリエステル、酢酸セルロース、ニトロセルロース、アミロースポリエステル共重合体などの硬質プラスチックが望ましい。
【0036】
ケーシングチューブ12は、上記生分解性プラスチック材料を型枠に流し込み、固化させることにより製造することができる。その他、これまで知られたいかなる手段および方法を使用して、ケーシングチューブ12を製造することができる。その際、ケーシングチューブ12の内面とコンクリートとの付着を良好にするため、その内面に溝22および突起23を設けることができる。この溝および突起は、必要に応じて設けることができ、本発明では、これら溝および突起を設けなくてもよい。また、本発明では、嵌合溝がねじ加工され、突出部に代えて中子構造が形成されたケーシングチューブであってもよく、この場合、中子構造から嵌合溝へとボルトを通し、中子構造内でボルト頭を回転させ、互いを連結することもできる。この場合のボルトも、生分解性プラスチックからなるものを用いることができる。
【0037】
図10は、ケーシングチューブ12の別の実施の形態を示した図である。図10に示すケーシングチューブ12は、図9に示すケーシングチューブ12と同様、中空円筒の生分解性プラスチックから構成されるが、そのケーシングチューブ12の内部に螺旋状のワイヤ26が埋設されている。このワイヤ26を含んで一体形成することにより、ケーシングチューブ12により高い強度を付与することができる。ワイヤ26は、鋼製で、ケーシングチューブ12の厚さより小さい径のものであればいかなる径のものであってもよい。本発明では、所定の強度を付与することができるのであれば、ワイヤ26に限らず、所定間隔で埋設される複数の鋼棒であってもよい。この場合も、内面に、複数の溝および突起を設けることができ、端面に嵌合溝や突出部を設けることができる。
【0038】
本発明のケーシングは、図4および図9に示すように、ケーシングチューブ12の端面21aと、他のケーシングチューブ12aの端面21bとを溶接、または、嵌合させることによりケーシングチューブ同士を連結し、それを地盤の深さ方向に延ばすことにより形成することができる。例えば、ケーシングチューブ12の長さの2/3を圧入し、次に、溶接または嵌合させて連結し、これを繰り返すことにより、ケーシング14を形成することができる。
【0039】
本発明のコンクリート杭20は、図4に示すケーシング14を形成し、図5〜図7に示す各工程を実施することにより構築することができる。図8に示すコンクリート杭20は、内部に鉄筋かご17を含むコンクリート構造物を、さらにケーシング14で覆うように形成される。ケーシング14は生分解性プラスチックから構成され、ケーシング14表面は土壌に隣接して挿設されるため、土壌中の微生物によって分解され、所定期間経過後、消失する。したがって、コンクリート構造物のみがコンクリート杭20として残ることとなる。上述したように、ケーシング14の内面に、溝や突起を多数設けておくことにより、ケーシング14が消失しても、コンクリート構造物の表面に、それらに対応した溝および突起が形成されているため、これらの溝および突起と地盤とかみ合った状態となり、支持力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のコンクリート杭の施工方法において実施される第1工程を示した図。
【図2】本発明のコンクリート杭の施工方法において実施される第2工程を示した図
【図3】本発明のコンクリート杭の施工方法において実施される第3工程を示した図
【図4】本発明のコンクリート杭の施工方法において実施される第4工程を示した図
【図5】本発明のコンクリート杭の施工方法において実施される第5工程を示した図
【図6】本発明のコンクリート杭の施工方法において実施される第6工程を示した図
【図7】本発明のコンクリート杭の施工方法において実施される第7工程を示した図
【図8】本発明のコンクリート杭の施工方法により完成したコンクリート杭を示した図。
【図9】本発明のケーシングチューブの実施例を示した図。
【図10】本発明のケーシングチューブの別の実施例を示した図。
【符号の説明】
【0041】
10…揺動装置
10a…揺動昇降手段
11…地面
12、12a…ケーシングチューブ
13…掘削手段
14…ケーシング
15…孔底
16…バケット
17…鉄筋かご
18…トレミー管
19…コンクリート
20…コンクリート杭
21a、21b…端面
22…溝
23…突起
24…嵌合溝
25…突出部
26…ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
場所打ちコンクリート杭の施工方法であって、
地盤に中空円筒の生分解性プラスチックからなるケーシングチューブを圧入し、前記ケーシングチューブ内を掘削して、ケーシングを挿設した掘削孔を形成する工程と、
前記ケーシング内にコンクリートを打設する工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記掘削孔を形成する工程は、ケーシングチューブを連結する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、前記掘削孔内に鉄筋かごを挿設する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、前記掘削孔を形成する工程後、前記掘削孔の孔底に堆積する堆積物を排出させる工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ケーシングチューブは、内面に複数の溝および突起を備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ケーシングチューブは、一方の端面に複数の突出部を備え、他方の端面に複数の嵌合溝を備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
場所打ちコンクリート杭の施工において、掘削孔内に挿設されるケーシングを形成するために用いられるケーシングチューブであって、中空円筒の生分解性プラスチックからなり、内面に複数の溝および突起を備えることを特徴とする、ケーシングチューブ。
【請求項8】
前記ケーシングチューブは、一方の端面に複数の突出部を備え、他方の端面に複数の嵌合溝を備える、請求項7に記載のケーシングチューブ。
【請求項9】
場所打ちコンクリート杭を形成するために掘削孔内に挿設されるケーシングであって、中空円筒の生分解性プラスチックからなり、内面に複数の溝および突起と、一方の端面に複数の突出部と、他方の端面に複数の嵌合溝とを備えるケーシングチューブを、互いに嵌合させ、前記ケーシングチューブ同士を連結して形成される、ケーシング。
【請求項10】
中空円筒の生分解性プラスチックからなり、内面に複数の溝および突起を備えるケーシングチューブを地盤に圧入し、前記ケーシングチューブ内を掘削して、ケーシングを挿設した掘削孔を形成し、前記ケーシング内にコンクリートを打設し、微生物によって前記ケーシングを分解させることにより、複数の溝および突起を備える表面を形成させた、コンクリート杭。
【請求項11】
前記ケーシングは、複数の前記ケーシングチューブを連結して形成され、前記複数のケーシングチューブの各々は、一方の端面に複数の突出部を備え、他方の端面に複数の嵌合溝を備えており、第1のケーシングチューブの複数の嵌合溝のそれぞれに、第2のケーシングチューブの複数の突出部を挿入し、嵌合させることにより、ケーシングチューブ同士を連結する、請求項10に記載のコンクリート杭。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−274745(P2006−274745A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98720(P2005−98720)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】