説明

コンクリート柱体の補強材および補強方法

【課題】周辺環境の制約を受けることなく、コンクリート柱体に大きな曲げ応力の作用する部分を、効率的に容易かつ確実に補強できるコンクリート柱体の補強材および補強方法を提供する。
【解決手段】コンクリート電柱11の中空部の内壁面に、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の強化された連続繊維シートすなわち強化繊維シートで長尺の袋状に形成した補強材13を施工する。この袋状の補強材13は、内部に充填材14を注入することで充填材14からの内圧により広がってコンクリート電柱11の内壁面に密着可能の形状およびサイズに形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート電柱またはコンクリートポール等の既設のコンクリート柱体の補強材および補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート電柱は、遠心力を用いてコンクリートを締め固めるとともに中空部を形成している。
【0003】
このコンクリート電柱には、架線等への風圧荷重が働き、コンクリート電柱の頂部から地際に向かって、徐々に大きな曲げ応力が作用するため、これに応じた曲げ性能を有するコンクリート電柱を選定している。
【0004】
コンクリート電柱の地際部付近に最大の曲げ応力が発生するため、設計以上の曲げ応力が作用すると、ひび割れの発生するおそれがある。
【0005】
さらに、当初計画された以上の架線が敷設されたり、屈曲した架線配置にもかかわらず支線等を設置していないことからも、コンクリート電柱にひび割れの発生するおそれもある。
【0006】
また、ひび割れの発生したコンクリート電柱を放置しておけば、電柱内部に配置された鉄筋が腐食するため、ひび割れはさらに進展し、折損に至るおそれが指摘されている。
【0007】
外力に対して設計耐力の不足しているコンクリート電柱、あるいはひび割れの発生しているコンクリート電柱は、より大きな耐力を有するコンクリート電柱に建て替えるべきではあるが、周辺環境の制約(交通規制、作業時間等)から、建て替え作業の進まないのが現状である。
【0008】
このような状況に対して、いくつかのコンクリート電柱の補強方法が提案されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0009】
特許文献1には、コンクリート電柱の側面に形成した開口部から、電柱内部にモルタルまたは砂を注入し、さらに、硬化性のある充填材を注入する補強方法と、加えて補強材を挿入する補強方法が示されている。
【0010】
特許文献2には、コンクリート電柱の頂部の開口部から、電柱内部に補強材を吊り下ろし、硬化性のある充填材を注入する補強方法が示されている。
【0011】
特許文献3には、コンクリート電柱の外周に、繊維シートを接着剤で貼り付ける補強方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−92376号公報(第9頁、図3)
【特許文献2】特開2005−307479号公報(第7頁、図1)
【特許文献3】特開平6−322999号公報(第2頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1の方法は、コンクリート電柱の中空部にモルタルまたは砂を注入する工程、補強材を挿入する工程、さらに、硬化性のある充填材を注入する工程が必要であるため、作業が煩雑でかつ非効率である。また、補強材の位置決めに特殊な治具を必要とする上、充填材の注入量の管理にも熟練者の経験を必要とし、作業の容易性に欠ける課題がある。
【0014】
特許文献2の方法は、補強材をコンクリート電柱の内部に均等配置するために複雑な形状からなる治具を必要とし、なおかつ、その治具を再使用できない。また、全ての作業を立設された電柱の頂部から行なうために、高所での作業となり、落下防止対策、車両通行規制等を行なう必要があり、作業の容易性に欠ける課題がある。
【0015】
特許文献3の方法は、外周からコンクリート電柱を補強するため、効率的な補強を行なえるものの、地際下の補強を行なうためには電柱の周囲を掘削しなければならず、接着剤が硬化するまで周囲の養生を行なう必要があり、作業の容易性に欠ける課題がある。
【0016】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、周辺環境の制約を受けることなく、コンクリート柱体に大きな曲げ応力の作用する部分を、効率的に容易かつ確実に補強できるコンクリート柱体の補強材および補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に記載された発明は、長尺の袋状に成形された強化繊維シートであって、この袋状の強化繊維シートの内部に充填材を注入することで充填材からの内圧によりコンクリート柱体の中空部の内壁面に密着可能に形成されたコンクリート柱体の補強材である。
【0018】
請求項2に記載された発明は、コンクリート柱体の中空部に挿入され内部に充填材を注入することで充填材からの内圧によりコンクリート柱体の中空部の内壁面に密着可能に形成された長尺の袋体と、この袋体に一体的に取り付けられ、袋体とともに充填材からの内圧によりコンクリート柱体の中空部の内壁面に沿って配置される補強体とを具備したコンクリート柱体の補強材である。
【0019】
請求項3に記載された発明は、コンクリート柱体の側面に開口部を設け、この開口部から上記コンクリート柱体の中空部に、請求項1または2記載の補強材と、この補強材の内部に差し込まれた充填材注入用のホースとを挿入し、上記ホースにより充填材を上記補強材の内部に注入して、上記充填材の内圧により上記補強材をコンクリート柱体の内壁面に密着するまで広げ、コンクリート柱体の中空部に補強材で覆われた充填材の構造体を形成するコンクリート柱体の補強方法である。
【0020】
請求項4に記載された発明は、請求項3記載のコンクリート柱体の補強方法において、コンクリート柱体の中空部に対する補強材および充填材による補強は、地上で劣化状況を視認できるチェックポジションのレベルまで行なう補強方法である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明によれば、長尺の袋状に成形された強化繊維シートを内部注入した充填材によりコンクリート柱体の中空部の内壁面に密着可能に形成した補強材は、必要な長さに切断して用いることができるとともに、コンクリート柱体の中空部の内壁面に密着して、コンクリート柱体に大きな曲げ応力の作用する部分を効率的に容易かつ確実に補強できる。また、充填材からの内圧によりコンクリート柱体の中空部の内壁面に補強材を配置できるので、柱体の周囲を覆ったり養生する手間が不要であるとともに周辺環境の制約を受けない効果がある。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、充填材からの内圧によりコンクリート柱体の中空部の内壁面に密着可能な長尺の袋体により、補強体をコンクリート柱体の中空部の内壁面に沿って配置できるので、コンクリート柱体に大きな曲げ応力の作用する部分を効率的に容易かつ確実に補強できるコンクリート柱体の補強材を提供できる。また、充填材からの内圧によりコンクリート柱体の中空部の内壁面に袋体および補強体を配置できるので、柱体の周囲を覆ったり養生する手間が不要であるとともに周辺環境の制約を受けない効果がある。
【0023】
請求項3記載の発明によれば、コンクリート柱体の中空部に長尺の袋状に成形された補強材を充填材注入用のホースとともに挿入して、ホースから注入される充填材の内圧により上記補強材をコンクリート柱体の中空部の内壁面に密着させて、コンクリート柱体に大きな曲げ応力の作用する部分を、補強材および充填材により効率的に容易かつ確実に補強できる。また、コンクリート柱体の側面に開口部を設け、この開口部から補強材とホースとをコンクリート柱体の中空部に挿入したので、高所での作業や柱体周囲での養生が不要であるとともに周辺環境の制約を受けない効果がある。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、地上で劣化状況を視認できるチェックポジションのレベルまで補強材および充填材による補強をすることで、そのチェックポジションに負荷がかかり、ひび割れの拡大等の劣化現象が最初に現われるので、チェックポジションを優先的に監視することでコンクリート柱体の劣化状況を把握でき、保守点検を簡易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る補強材の一実施の形態により補強されたコンクリート柱体を示す断面図である。
【図2】同上補強材の一実施の形態によるコンクリート柱体の補強方法を示す工程図である。
【図3】本発明に係る補強材の他の実施の形態により補強されたコンクリート柱体を示す断面図である。
【図4】同上コンクリート柱体に用いられる補強材の他の実施の形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を、図1および図2に示された一実施の形態、図3および図4に示された他の実施の形態、図示されない実施の形態を参照しながら説明する。
【0027】
図1および図2に示された一実施の形態は、コンクリート柱体としてのコンクリート電柱11の中空部12の内壁面に、長尺の袋状に成形されたアラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の強化された連続繊維シートすなわち強化繊維シートで形成された補強材13を施工するものであり、この袋状の補強材13は、内部に充填材14を注入することで充填材14からの内圧により広がってコンクリート電柱11の中空部12の内壁面に補強材13を密着可能の形状およびサイズに形成されている。
【0028】
次に、この補強材13をコンクリート電柱11の内部に施工してコンクリート電柱11の底部から地際GLより1m程度上側までの地際部を補強する補強方法を説明する。
【0029】
(1) 図2(a)に示されるように、コンクリート電柱11の地際GLから1.0m乃至2.5mの範囲に設けられている足場受口位置や接地引入口を利用して、電柱内部への開口部15を設ける。
【0030】
(2) コンクリート電柱11の内面に通水をして、後で充填するモルタル等の水分が吸収されないように準備する。
【0031】
(3) コンクリート電柱11の設計内径程度の袋状に成形した上記強化繊維シートを上記補強材13として用いるため、この袋状の補強材13を、必要な長さに切断して用意する。この補強材13は、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の強化繊維を織り込んで形成された連続繊維シートであるため、若干の伸縮性を有する。そのため、後で充填されるモルタル等の充填材14から作用する内圧により、コンクリート電柱11の内壁面に密着することが可能である。
【0032】
(4) 図2(b)に示されるように、上記袋状の補強材13を、その内部に挿入された充填材注入用のホース16とともに、上記コンクリート電柱11の開口部15から電柱中空部12に挿入する。
【0033】
(5) 強化繊維シート製の補強材13の袋底部およびホース16の先端とが電柱中空部12の底面(品種によって異なるが、開口部から2.5m〜5.5m下側に位置する)に到達したら、底面から徐々にホース16を通じてモルタル等の充填材14をポンプ(図示せず)により注入していく。図2(c)に示されるように、その充填材14の内圧により袋状の補強材13が電柱内壁面に密着するまで広がる。
【0034】
充填材としては、無収縮モルタルを用いることが望ましく、充填部での隙間の形成を防止し、強度を確保できる。
【0035】
(6) 充填材14の注入に合わせてホース16を引き上げていき、補強材13の広がりを妨げないようにする。
【0036】
(7) モルタル等の充填材14が地際GLからほぼ1m程度に達したら、ホース16を取り外し、充填材14の注入を終了する。
【0037】
(8) コンクリート電柱11の開口部15を塞ぐ処理を行なう。このようにして、コンクリート電柱11の内部に袋状強化繊維シートの補強材13で覆われた充填材14の構造体を形成する。
【0038】
このように、強化繊維シートの補強材13をコンクリート電柱11の内部に施工してコンクリート電柱11を補強する補強方法では、コンクリート電柱11の側面に開口部15を設け、この開口部15から上記コンクリート電柱11の中空部12に、強化繊維シートの補強材13と、この補強材13の内部に差し込まれた充填材注入用のホース16とを挿入し、上記ホース16によりモルタル等の充填材14を上記補強材13の内部に注入して、上記充填材14の内圧により上記補強材13をコンクリート電柱11の内壁面に密着するまで広げ、コンクリート電柱11の中空部12に、強化繊維シートの補強材13で覆われた充填材14の構造体を形成する。
【0039】
言い換えると、コンクリート電柱11の地際部に、コンクリート電柱11とモルタル等の充填材14との間に強化繊維シートの補強材13を挟んで一体化された3層構造体を形成する。
【0040】
このとき、コンクリート電柱11の中空部12に対する補強材13および充填材14による補強は、図2(c)に示されるように地上で劣化状況を視認できるチェックポジション17のレベルまで行なう。
【0041】
このチェックポジション17は、地際GLから1.0m乃至2.5mの範囲に設けられている開口部15のやや下側に設定する。
【0042】
次に上記図1および図2に示された一実施の形態による効果を説明する。
【0043】
長尺の袋状に成形された強化繊維シートを内部注入したモルタル等の充填材14によりコンクリート電柱11の中空部12の内壁面に密着可能に形成した補強材13は、必要な長さに切断して用いることができるとともに、コンクリート電柱11の中空部12の内壁面に密着して、コンクリート電柱11に大きな曲げ応力の作用する部分を効率的に容易かつ確実に補強できる。
【0044】
また、充填材14からの内圧によりコンクリート電柱11の中空部12の内壁面に補強材13を配置できるので、電柱11の周囲を覆ったり養生する手間が不要であるとともに周辺環境の制約を受けない効果がある。
【0045】
そして、コンクリート電柱11の中空部12でモルタル等の充填材14を注入した強化繊維シート袋の補強材13により、コンクリート電柱11の地際部や地中部を強化することで、これらの地際部や地中部が起点となるコンクリート電柱11の折損倒壊を回避できる。
【0046】
一方、地上で劣化状況を視認できるチェックポジション17のレベルまで補強材13および充填材14による補強をすることで、そのチェックポジション17に負荷がかかり、ひび割れの拡大等の劣化現象が最初に現われるので、このチェックポジション17を優先的に監視することでコンクリート電柱11の劣化状況を容易に把握でき、保守点検を簡易化できる。
【0047】
例えば、地際からほぼ1m程度までを充填範囲とした場合は、補強範囲外との境界(地上1m)に負荷がかかり、ひび割れの拡大等の劣化状況を視認し易いので、この特定位置をチェックポジション17として保守管理を行なうと、保守点検が容易となる。
【0048】
このコンクリート電柱11の中空部12に地際部に近い開口部15から補強材13を挿入する補強方法は、全ての作業を地表から効率良く行なうことができるため、作業時間を短縮でき、かつ作業の容易性および確実性が高く、車両交通規制等の必要があっても最低限ですますことができる。
【0049】
上記補強材13は、複雑な治具を用いることなく作業を行なえるので、作業者の熟練度の影響を受けることなく、作業の容易性および安定した品質を確保できる。
【0050】
以上のように、図1および図2に示された一実施の形態によれば、コンクリート電柱11の中空部12に長尺の袋状に成形された強化繊維シートの補強材13を充填材注入用のホース16とともに挿入して、このホース16から注入されるモルタルなどの充填材14の内圧により上記補強材13をコンクリート電柱11の中空部12の内壁面に密着させて、コンクリート電柱11に大きな曲げ応力の作用する部分を、上記補強材13および上記充填材14により効率的に容易かつ確実に補強できる。また、コンクリート電柱11の側面に開口部15を設け、この開口部15から上記補強材13と上記ホース16とをコンクリート電柱11の中空部12に挿入したので、高所での作業や電柱周囲での養生が不要であるとともに周辺環境の制約を受けない効果がある。
【0051】
次に、図3および図4に示された他の実施の形態の補強方法は、コンクリート柱体としてのコンクリート電柱11の中空部の内壁面に、上記補強材13とは異なる補強材21を施工するものであり、この補強材21は、コンクリート電柱11の中空部に挿入され内部にモルタル等の充填材14を注入することで充填材14からの内圧により広がってコンクリート電柱11の中空部の内壁面に密着可能の形状およびサイズに形成された長尺の袋体22と、この袋体22に一体的に取り付けられ、袋体22とともに充填材14からの内圧によりコンクリート電柱11の中空部の内壁面に沿って配置される複数の補強体23とを具備したものである。
【0052】
すなわち、図1および図2に示された上記強化繊維シートを用いた袋状の補強材13の代替品として、図3および図4に示された補強材21は、土嚢袋に用いられているポリエチレン等の袋体22をコンクリート電柱11の中空部サイズの円筒状袋に加工し、その袋体22に可撓性を有する鋼材またはアラミド樹脂棒等の複数の補強体23をコンクリート電柱11の周方向に所定間隔で配置し、袋体22の長尺方向と平行になるように複数の結束体24により結束したり、袋体22に編み込んだり、または接着した補強材である。
【0053】
このように、補強材21は、袋体22を補強材として用いるのではなく、袋体22に可撓性を有する鋼材またはアラミド樹脂棒等の複数の補強体23をコンクリート電柱の軸方向となるように結束したり編み込んだり接着して、複数の補強体23をコンクリート電柱11の内壁面にバランス良く配置できるように構成したものである。
【0054】
そして、この図3および図4に示された補強材21をコンクリート電柱11の内部に施工してコンクリート電柱11を補強する補強方法でも、コンクリート電柱11の側面に開口部(図示せず)を設け、この開口部から上記コンクリート電柱11の中空部に、袋体22に可撓性を有する補強体23を一体化した補強材21と、この補強材21の袋体22内に差し込まれた充填材注入用のホース(図示せず)とを縮径方向に纏めた状態で挿入し、上記ホースによりモルタル等の充填材14を上記補強材21の内部に注入して、上記充填材14の内圧により上記補強材21の袋体22をコンクリート電柱11の内壁面に密着するまで広げ、コンクリート電柱11の中空部に、袋体22に補強体23を一体化した補強材21で覆われた充填材14の構造体を形成する。
【0055】
このとき、コンクリート電柱11の中空部に対する補強材21および充填材14による補強は、地上で劣化状況を視認できるチェックポジションのレベルまで行なうことは、図1および図2の実施の形態と同様である。
【0056】
このように、袋体22の内部にモルタル等の充填材14を注入することで、この袋体22を広げて、鋼材またはアラミド樹脂棒等の補強体23をコンクリート電柱11の内壁面に沿って配置し、コンクリート電柱11の中空部に、鋼材またはアラミド樹脂棒等の補強体23と充填材14とによる合成構造体を形成する。
【0057】
そして、充填材14からの内圧によりコンクリート電柱11の中空部の内壁面に密着可能な長尺の袋体22により、補強体23をコンクリート電柱11の中空部の内壁面に沿って配置できるので、コンクリート電柱11に大きな曲げ応力の作用する部分を効率的に容易かつ確実に補強できるコンクリート電柱11の補強材21を提供できる。また、充填材14からの内圧によりコンクリート電柱11の中空部の内壁面に袋体22および補強体23を配置できるので、コンクリート電柱11の周囲を覆ったり養生する手間が不要であるとともに周辺環境の制約を受けない。
【0058】
以上のように、図3および図4に示された他の実施の形態によれば、コンクリート電柱11の中空部に、長尺の袋体22と補強体23とを具備した補強材21を充填材注入用のホースとともに挿入して、ホースから注入される充填材14の内圧により、図3に示されるように上記補強材21をコンクリート電柱11の中空部の内壁面に密着させて、コンクリート電柱11に大きな曲げ応力の作用する部分を、袋体22で形状保持される補強体23と充填材14とにより効率的に容易かつ確実に補強できる。また、コンクリート電柱11の側面に開口部を設け、この開口部から可撓性を有する袋体22と補強体23とで構成した補強材21とホースとをコンクリート電柱11の中空部に挿入したので、高所での作業や電柱周囲での養生が不要であるとともに周辺環境の制約を受けない効果がある。
【0059】
次に、本発明の図示しない別の実施の形態を説明する。
【0060】
上記各実施の形態に示された補強方法によりコンクリート電柱11の中空部12を補強するとともに、その中空部補強に加えて、コンクリート電柱11の地中部外周面および地際部外周面を外側からアラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の強化繊維シートの外側補強材(図示せず)で補強することにより、コンクリート電柱11の地中部および地際部を、内側および外側から2重に補強するようにしてもよい。強化繊維シートの地中部は土やアスファルト、強化繊維シートの地際部は外側シートで円周方向を拘束する。
【0061】
このコンクリート電柱11の地中部および地際部を内側および外側から2重に補強した2重補強方式により、高荷重のコンクリート電柱の折損倒壊を回避できる。
【0062】
また、各実施の形態における充填材14としては、硬化性のある充填材であれば一般的なモルタルに限定されず、例えば樹脂モルタルなどでも良い。
【0063】
さらに、本発明の補強材21および補強方法は、コンクリート電柱11だけでなく、コンクリートポール(図示せず)などにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、コンクリート柱体の補修工事を業として行なう者にとって利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
11 コンクリート柱体としてのコンクリート電柱
12 中空部
13 補強材
14 充填材
15 開口部
16 ホース
17 チェックポジション
21 補強材
22 袋体
23 補強体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の袋状に成形された強化繊維シートであって、この袋状の強化繊維シートの内部に充填材を注入することで充填材からの内圧によりコンクリート柱体の中空部の内壁面に密着可能に形成された
ことを特徴とするコンクリート柱体の補強材。
【請求項2】
コンクリート柱体の中空部に挿入され内部に充填材を注入することで充填材からの内圧によりコンクリート柱体の中空部の内壁面に密着可能に形成された長尺の袋体と、
この袋体に一体的に取り付けられ、袋体とともに充填材からの内圧によりコンクリート柱体の中空部の内壁面に沿って配置される補強体と
を具備したことを特徴とするコンクリート柱体の補強材。
【請求項3】
コンクリート柱体の側面に開口部を設け、
この開口部から上記コンクリート柱体の中空部に、請求項1または2記載の補強材と、この補強材の内部に差し込まれた充填材注入用のホースとを挿入し、
上記ホースにより充填材を上記補強材の内部に注入して、上記充填材の内圧により上記補強材をコンクリート柱体の内壁面に密着するまで広げ、
コンクリート柱体の中空部に補強材で覆われた充填材の構造体を形成する
ことを特徴とするコンクリート柱体の補強方法。
【請求項4】
コンクリート柱体の中空部に対する補強材および充填材による補強は、地上で劣化状況を視認できるチェックポジションのレベルまで行なう
ことを特徴とする請求項3記載のコンクリート柱体の補強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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