説明

コンクリート構造物のひび割れ状態計測方法およびその装置

【課題】外乱に影響されにくく、かつ、受信波の強度を充分確保でき、ひび割れ状態を正確に計測し得るコンクリート構造物のひび割れ状態計測方法およびその装置を提供する。
【解決手段】ひび割れを隔てた一側から広帯域超音波を発信U1し、他側で広帯域超音波を受信U2し、送受信位置をずらして複数回送受信し、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求めU3、このスペクトルからフィルタを用いて所定周波数範囲のスペクトルを抽出して狭帯域受信波スペクトルを求めU4、狭帯域受信波スペクトルをフーリエ逆変換して時系列波を求めU5、該時系列波を時系列重み付け関数で切出すと共に、エンファシス処理を行なって処理波形を求めU6、処理波形から回折波の起生時刻を読出しU7、起生時刻に基づいて、ひび割れ状態を演算するU8ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波の発信探触子と受信探触子とを、コンクリートのひび割れを隔てた両側に配置して、コンクリートのひび割れ状態(ひび割れの深さや傾き等)を計測するようなコンクリート構造物のひび割れ状態計測方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、橋梁その他のコンクリート構造物において、その施工時より年月が経過すると、該コンクリートには、ひび割れが発生し、その補修に際しては該ひび割れの深さや傾きが判別できると、補修工事に有効となる。
【0003】
従来、このようなコンクリート構造物のひび割れ状態を計測する方法、装置としては、特許文献1に開示(特に、同公報の段落[0069]〜[0075]参照)されたものがある。
すなわち、コンクリート構造物としてのコンクリート塊におけるひび割れの深さの計測に際し、共振振動数が2.5MHzの発信探触子と受信探触子とを、ひび割れを挟むように配置し、ステップ型電圧を500ボルトとし、発信探触子に該ステップ型電圧を所定時間間隔(例えば、5m秒間隔)で連続して印加する。
【0004】
この時、上記発信探触子および受信探触子をコンクリート塊の表面に接触させながら、所定範囲内で移動させ、入力超音波毎に受信超音波を収録し、複数回の送受信の加算平均を行なった時系列波を求め、この時系列波から、ひび割れの底部を迂回する波(回折波)の起生時刻tを特定し、次の[数1]からひび割れの深さdeを求めるものである。
【数1】

但し、νは超音波のコンクリート内における音速[mm/μsec]
【0005】
しかしながら、この特許文献1に開示された従来技術においては、周波数が2.5MHz(2500kHz)と相対的に高い。このように、周波数が高い場合には、超音波の直進性が大きく、超音波の指向方向における強度の減衰が大となる。一般に、周波数が高くなる程、その減衰が加速度的に大きくなるため、2.5MHzの受信波では、その受信強度が小さくなる問題点があった。
また、2.5MHzを中心とする狭帯域波が使用される関係上、外乱の影響を受けやすい問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4050470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、ひび割れを隔てた一側のコンクリート表面より広帯域超音波を発信し、ひび割れを隔てた他側のコンクリート表面で広帯域超音波を受信し、送受信位置をずらして複数回送受信すると共に、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求め、このスペクトルからフィルタを用いて所定周波数範囲のスペクトルを抽出して狭帯域受信波スペクトルを求め、抽出された狭帯域受信波スペクトルをフーリエ逆変換して時系列波を求め、この時系列波を時系列重み付け関数で切出すと共に、エンファシス処理を行なって処理波形を求め、この処理波形から回折波の起生時刻を読出し、該起生時刻に基づいて、ひび割れ状態を演算することにより、外乱に影響されにくく、しかも、広帯域波の成分内には超音波の指向方向における強度の減衰率が小さい成分があり、受信波の強度を充分に確保することができると共に、ひび割れ状態を比較的正確に計測することができるコンクリート構造物のひび割れ状態計測方法およびその装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によりコンクリート構造物のひび割れ状態計測装置は、超音波を発信する発信探触子と、受信する受信探触子とを備え、両探触子を、コンクリートのひび割れを隔てた両側に配置して、コンクリートのひび割れ状態を計測するコンクリート構造物のひび割れ状態計測装置であって、ひび割れを隔てた一側のコンクリート表面より広帯域超音波を発信し、ひび割れを隔てた他側のコンクリート表面で広帯域超音波を受信し、送受信位置をずらして複数回送受信すると共に、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求める第1演算機能と、上記広帯域受信波スペクトルからフィルタを用いて所定周波数範囲のスペクトルを抽出して狭帯域受信波スペクトルを求める抽出機能と、抽出された狭帯域受信波スペクトルをフーリエ逆変換して時系列波を求める第2演算機能と、上記時系列波を時系列重み付け関数で切出すと共に、エンファシス処理を行なって処理波形を求める第3演算機能と、上記処理波形から回折波の起生時刻を読出す読出し機能と、上記起生時刻に基づいて、ひび割れ状態を演算する第4演算機能と、を備えた制御手段を設けたものである。
上述の広帯域超音波の周波数帯域は0〜5.0MHzに設定してもよい。また、フィルタで抽出する所定周波数範囲は、コンクリートのひび割れ計測に最も適した50kHz〜120kHzの間に中心周波数を有することが望ましい。
【0009】
上記構成によれば、第1演算機能は、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求め、抽出機能は、広帯域受信波スペクトルからフィルタを用いて所定周波数範囲のスペクトルを抽出して狭帯域受信波スペクトルを求め、第2演算機能は、抽出された狭帯域受信波スペクトルをフーリエ逆変換して時系列波を求め、第3演算機能は、時系列波を時系列重み付け関数で切出すと共に、エンファシス処理を行なって処理波形を求め、読出し機能は、処理波形から回折波の起生時刻を読出し、第4演算機能は、起生時刻に基づいて、ひび割れ状態を演算する。
【0010】
このように、超音波として広帯域波を用いるので、その成分内には、超音波の指向方向における強度の減衰率が小さい成分(相対的に周波数が低い成分)が存在し、この結果、受信波の強度を充分に確保することができる。
また、フィルタを用いて所定周波数範囲のスペクトルを抽出するので、コンクリートのひび割れ計測に最も適した周波数範囲を確保することができる。
【0011】
さらに、時系列波を時系列重み付け関数で切出すので、コンクリート中に存在する鉄筋からの反射波などの外乱を排除することができる。
しかも、エンファシス処理を行なって処理波形を求めるので、回折波の起生時刻の読出しが、正確かつ容易となる。
これらにより、比較的正確に、ひび割れ状態の計測を行なうことができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記制御手段は、コンクリート構造物表面の水平方向をy軸とし、コンクリートの深さ方向をx軸とした時、ひび割れ先端の座標(x,y)および超音波の音速νのパラメータ

を設定する設定機能と、設定したパラメータで発信探触子から受信探触子への超音波の伝播時間を計算する計算機能と、上記計算機能で計算された計算値と実測値との残差を演算する残差演算機能と、上記残差が許容値以内か否かを判定する収束判定機能と、上記収束判定機能で残差が許容値以内であると判定された時、最終のパラメータを求めるパラメータ決定機能とを備えたものである。
【0013】
上記構成によれば、制御手段の設定機能は、ひび割れ先端の座標(x,y)および超音波の音速νのパラメータ

を設定し、計算機能は、設定したパラメータで発信探触子から受信探触子への超音波の伝播時間を計算し、残差演算機能は、上記計算機能で計算された計算値と実測値との残差を演算し、収束判定機能は、残差が許容値以内か否かを判定し、パラメータ決定機能は、上記収束判定機能で残差が許容値以内であると判定された時には、最終のパラメータを求める。
このため、ひび割れの傾斜の有無の如何にかかわらず、その先端位置を座標データとして特定することができ、ひび割れの深さ、ひび割れの傾斜角度を計測することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記収束判定機能で残差が許容値以上であると判定された時、パラメータを修正する修正機能を備えたものである。
上記構成によれば、残差が許容値より大きい時、パラメータを修正するので、残差が小さくなる方向への修正ができ、ひび割れの先端位置をより一層正確に特定することができる。
【0015】
この発明によるコンクリート構造物のひび割れ状態計測方法は、超音波を発信する発信探触子と、受信する受信探触子とを備え、両探触子を、コンクリートのひび割れを隔てた両側に配置して、コンクリートのひび割れ状態を計測するコンクリート構造物のひび割れ状態計測方法であって、ひび割れを隔てた一側のコンクリート表面より広帯域超音波を発信し、ひび割れを隔てた他側のコンクリート表面で広帯域超音波を受信し、送受信位置をずらして複数回送受信する第1の工程と、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求める第2の工程と、上記広帯域受信波スペクトルからフィルタを用いて所定周波数範囲のスペクトルを抽出して狭帯域受信波スペクトルを求める第3の工程と、抽出された狭帯域受信波スペクトルをフーリエ逆変換して時系列波を求める第4の工程と、上記時系列波を時系列重み付け関数で切出すと共に、エンファシス処理を行なって処理波形を求める第5の工程と、上記処理波形から回折波の起生時刻を読出す第6の工程と、上記起生時刻に基づいて、ひび割れ状態を演算する第7の工程と、を備えたものである。
【0016】
上記構成によれば、第1の工程で、ひび割れを隔てた一側のコンクリート表面より広帯域超音波を発信し、ひび割れを隔てた他側のコンクリート表面で広帯域超音波を受信し、送受信位置をずらして複数回送受信する。
【0017】
第2の工程で、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求め、第3の工程で、上記広帯域受信波スペクトルからフィルタを用いて所定周波数範囲のスペクトルを抽出して狭帯域受信波スペクトルを求める。
第4の工程で、抽出された狭帯域受信波スペクトルをフーリエ逆変換して時系列波を求め、第5の工程で、上記時系列波を時系列重み付け関数で切出すと共に、エンファシス処理を行なって処理波形を求める。
第6の工程で、上記処理波形から回折波の起生時刻を読出し、第7の工程で、該起生時刻に基づいて、ひび割れ状態を演算する。
【0018】
このように、超音波として広帯域波を用いるので、その成分内には、超音波の指向方向における強度の減衰率が小さい成分(相対的に周波数が低い成分)が存在し、この結果、受信波の強度を充分に確保することができる。
また、フィルタを用いて所定周波数範囲のスペクトルを抽出するので、コンクリートのひび割れ計測に最も適した周波数範囲を確保することができる。
【0019】
さらに、時系列波を時系列重み付け関数で切出すので、コンクリート中に存在する鉄筋からの反射波などの外乱を排除することができる。
しかも、エンファシス処理を行なって処理波形を求めるので、回折波の起生時刻の読出しが、正確かつ容易となる。
これらにより、比較的正確に、ひび割れ状態の計測を行なうことができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、ひび割れを隔てた一側のコンクリート表面より広帯域超音波を発信し、ひび割れを隔てた他側のコンクリート表面で広帯域超音波を受信し、送受信位置をずらして複数回送受信すると共に、受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求め、このスペクトルからフィルタを用いて所定周波数範囲のスペクトルを抽出して狭帯域受信波スペクトルを求め、抽出された狭帯域受信波スペクトルをフーリエ逆変換して時系列波を求め、この時系列波を時系列重み付け関数で切出すと共に、エンファシス処理を行なって処理波形を求め、この処理波形から回折波の起生時刻を読出し、該起生時刻に基づいて、ひび割れ状態を演算するので、外乱に影響されにくく、しかも、広帯域波の成分内には超音波の指向方向における強度の減衰率が小さい成分(相対的に周波数が低い成分)があり、受信波の強度を充分に確保することができると共に、ひび割れ状態を比較的正確に計測することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のコンクリート構造物のひび割れ状態計測装置を示すブロック図
【図2】発信探触子の説明図
【図3】発信探触子のステップ型電圧発生器の説明図
【図4】受信探触子の説明図
【図5】広帯域超音波の説明図
【図6】(a)はひび割れ状態計測時の平面図、(b)は(a)のC1−C1線矢視断面図
【図7】(a)はひび割れ状態計測時の平面図、(b)は(a)のC2−C2線矢視断面図
【図8】(a)はひび割れ状態計測時の平面図、(b)は(a)のC3−C3線矢視断面図
【図9】実施形態1の工程図
【図10】広帯域受信波の時系列波を示す波形図
【図11】広帯域受信波スペクトルを示す波形図
【図12】フィルタで抽出された狭帯域受信波スペクトルの波形図
【図13】フーリエ逆変換で求めた時系列波の波形図
【図14】エンファシス処理された処理波形の波形図
【図15】(a)はひび割れ状態計測時の平面図、(b)は(a)のC4−C4線矢視断面図、(c)は(b)の模式図
【図16】実施形態2の工程図
【図17】広帯域受信波の時系列波を示す波形図
【図18】広帯域受信波スペクトルを示す波形図
【図19】フィルタで抽出された狭帯域受信波スペクトルの波形図
【図20】フーリエ逆変換で求めた時系列波の波形図
【図21】エンファシス処理された処理波形の波形図
【図22】(a)はひび割れ状態計測時の平面図、(b)は(a)のC5−C5線矢視断面図
【図23】(a)はひび割れ状態計測時の平面図、(b)は(a)のC6−C6線矢視断面図
【図24】実施形態3の工程図
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施形態1]
この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
図面はコンクリート構造物のひび割れ状態計測方法およびその装置を示すが、まず、図1を参照して、コンクリート構造物のひび割れ状態計測装置の構成について説明する。
【0023】
図1において、被探知体として、ひび割れ29が発生したコンクリート構造物30(以下単にコンクリートと略記する)の表面に接触配置する発信探触子31と受信探触子32とを設けている。
上述の発信探触子31は広帯域超音波(例えば0〜5.0MHz)を発信するものであり、上述の受信探触子32は0〜5.0MHzの広帯域超音波を受信するものである。
上述の発信探触子31には超音波発信装置の電流供給回路33から電流が供給され、この発信探触子31から超音波が発信してコンクリート30内に入射する。
【0024】
また受信探触子32が受信した超音波信号は解析装置34に入力されて解析される。
この解析装置34においては、受信探触子32の受信信号が増幅回路35により増幅された後、フィルタ回路36でフィルタリングを受けた信号がAD変換回路37(アナログ・デジタル変換回路)によってデジタル信号に変換され、ゲートアレイ38を介してCPU40に入力される。
【0025】
ハードディスク39には解析処理アプリケーションソフトウェアと、CPU40により演算処理された時系列データが保存される。ここで、上述のCPU40はフーリエ変換・フーリエ逆変換を行う処理部である。
また、上述の解析結果は表示装置41にも入力されて表示される。
【0026】
さらに、必要な情報が入力手段としてのキーボードなどの入力装置42からCPU40に入力されるように構成している。メモリ43はCPU40が演算する際にデータを一時的に格納するために用いられる。また、CPU40からコントロール回路44に制御信号が出力され、コントロール回路44は増幅回路35、フィルタ回路36、AD変換回路37、ゲートアレイ38および電流供給回路33に作動指令信号を出力する。
【0027】
電流供給回路33は同軸ケーブル45を介して発信探触子31に接続されており、発信探触子31には図2に示すように、基盤化されたステップ型電圧発生器46と振動子47とが内蔵されている。
【0028】
ステップ型電圧発生器46には、図3に示すようにステップ電圧駆動回路461とステップ電圧発生回路462とが設けられており、ステップ電圧駆動回路461で発生するステップ関数型電圧を振動子47に印加する。
【0029】
広帯域超音波を被探知体としてのコンクリート30に入力する都度、受信探触子32で受信波を得る。
この受信波は同軸ケーブル49を介して、解析装置34の増幅回路35へ電圧の時間変動データとして送られる。増幅回路35へ送られた時間変動データは、フィルタ回路36を介してAD変換回路37に達し、この電圧のアナログ量が該AD変換回路37によりデジタル量に変換され、ゲートアレイ38を介してCPU40に転送され、電圧デジタル値の時刻歴が表示装置41に表示される。
【0030】
自動的に、またはキーボードなどの入力装置42を用いた外部からの指示で、電圧の増幅または減幅およびローパス/ハイパスフィルタ処理の指令がCPU40に伝達され、CPU40はコントロール回路44を介して増幅回路35およびフィルタ回路36を制御する。
【0031】
図4に示すように、受信探触子32には所定範囲の特性の振動数における漸減型ハイパスフィルタ回路50、増幅回路51および振動子52が内蔵されている。
【0032】
電流供給回路33はコントロール回路44により制御されて、所定の時間間隔で動作する。
これにより、発信探触子31に内蔵された振動子47(図2参照)から、所定の時間間隔で超音波がコンクリート30に入射される。
【0033】
受信探触子32に内蔵された振動子52(図4参照)は超音波が入力する都度、コンクリート30の音圧変化にともなって振動が励起する。この振動励起で振動子52に生じる電圧の時間変化が、受信探触子32内のフィルタ回路50および増幅回路51で1次処理される。
【0034】
図1の増幅回路35およびフィルタ回路36の制御が終了した段階で、CPU40の指示でコントロール回路44が動作し、ゲートアレイ38に受信波の加算処理を命令する。
【0035】
ゲートアレイ38は、AD変換回路37で得られる電圧に関する時刻歴デジタル量を、上記時刻歴を得る都度、指定回数加算する。そして、CPU40のコントロール下にて加算平均時刻歴を作成し、表示装置41にその時刻歴をリアルタイム表示する。
【0036】
フィルタ回路50,36および増幅回路51,35は受信探触子32と解析装置34との双方にそれぞれ内蔵されている。受信探触子32に内蔵されているハイパスフィルタ回路50および増幅回路51は受信波に対して1次処理を行なうものであり、解析装置34に内蔵されている増幅回路35とフィルタ回路36は、1次処理された受信波に対し、CPU40のコントロール下にて微調整するものである。この微調整は装置機能の高度化のために必要なものであるから、これら増幅回路35、フィルタ回路36は省略してもよい。
【0037】
次に、図5を参照してパルス型電圧積荷による超音波と、ステップ関数型電圧積荷による超音波の相違について説明する。
図5(a)は振動子にパルス型電圧(30〜500V)を印加した場合のスペクトルを示し、この場合には同図に示すように振動子の厚さ方向共振振動数を中心周波数とする比較的狭帯域のスペクトルをもつ発信超音波を得ることになる(従来技術の狭帯域周波数に相当。)。
図5(b)は発信探触子31内の振動子47にステップ関数型電圧(30〜
500V)を印加した場合のスペクトルを示し、この場合には同図に示すように共振振動数はもちろんのこと、これよりも低周波の成分も励起されたスペクトルとなり、この実施形態の広帯域超音波は図5(b)による超音波を意味する。
【0038】
実施形態1は後述する実施形態2、3の前提条件となる構成であって、コンクリート構造物(以下単に、コンクリートと略記する)30に発生したひび割れ29は図6に示すように、垂直なものと、図7に示すように左下方に傾斜するものと、図8に示すように右下方に傾斜するものとが存在するが、コンクリート30の表面30bからは、これらのひび割れ29の状態を判別することは不可能である。
【0039】
そこで、図6、図7、図8に示すように、探触子31,32の下方にひび割れ29が存在しない場合には、コンクリート底部30aからの反射波α1の経路は、ひび割れ29が存在する場合に対して短くなり、探触子31,32の下方にひび割れ29が存在する場合には、ひび割れ29の回折経路により、コンクリート底部30aからの反射波α2の経路は、ひび割れ29が存在しない場合に対して長くなることを利用して、ひび割れ29の状態を判別するものである。
【0040】
この実施形態1では、図6、図7、図8に示すように、ひび割れ29を隔てた一方側に、発信探触子31および受信探触子32を配置して、図9の各ステップQ1〜Q7での処理を実行した後に、ひび割れ29を隔てた他方側に、発信探触子31および受信探触子32を配置して、図9の各ステップQ1〜Q7での処理を実行し、ひび割れ29を隔てた左側と右側とで反射波の起生時刻t(図14参照)に差異があるか否か、また差異がある場合には、左右何れの起生時刻tが長いかを判定することで、ひび割れ29の状態を判別するものである。
【0041】
この実施形態1のひび割れ29の状態判別方法を、図9に示す工程図を参照して、以下に詳述する。
ステップQ1で、発信探触子31から0〜5.0MHzの広帯域超音波(0〜5.0MHzまでの範囲の周波数成分を全て含む超音波)をコンクリート30の表面30bから発信する。
【0042】
次に、ステップQ2で、発信探触子31と同じ側の受信探触子32で広帯域超音波(0〜5.0MHz)を受信する。(ステップQ1で図6〜図8の左側の探触子31から発信した場合には、ステップQ2で図6〜図8の左側(同じ側)の探触子32で受信することを意味する)。そして、送受信位置をずらして複数回送受信を行ない、これら複数回分を加算平均した広帯域受信波re1(図10参照)を得る。
【0043】
次に、ステップQ3で、図10に示す広帯域受信波re1(時系列波)をフーリエ変換して、図11に示すような広帯域受信波スペクトルsp1を求める。
【0044】
次に、ステップQ4で、図11に示す広帯域受信波スペクトルsp1から、コンクリート30のひび割れ29の計測に最も適した50kHz〜120kHzの間に中心周波数fを有するフィルタFIL1により所定周波数範囲のスペクトルを抽出して、図12に示す狭帯域受信波スペクトルsp2を求める。
上記フィルタFIL1は、関数B(f)(B(f)=1.0)で示すことができ、中心周波数をfとし、所定値をfとする時、次のように定義することができる。
【0045】
f≦f−fでB(f)=0.0
f=fでB(f)=1.0
f≧f+fでB(f)=0.0
−f<f<fでB(f)は増加関数
<f<f+fでB(f)は減少関数
この実施形態では、中心周波数がf=55.8kHzのフィルタFIL1(図11参照)を用いたが、この中心周波数fの数値はこれに限定されるものではなく、50kHz〜120kHzの間に中心周波数fが存在すれば、他のフィルタであってもよい。
【0046】
次に、ステップQ5で、図12に示す狭帯域受信波スペクトルsp2をフーリエ逆変換して、図13に示す時系列波TS1を求める。
次に、ステップQ6で、図13に示す時系列波TS1を、同図に示す時系列重み付け関数(いわゆる、重み付けTGC関数)G1で切出すと共に、最小=乗法などによるエンファシス処理を行なって、図14に示す処理波形em1を求める。図13と図14との対比から明らかなように、エンファシス処理された波形は、必要とする特徴部が際立った波形となる。
【0047】
図14で示したこの処理波形em1は、図1の表示装置41に可視表示される。そこで、次のステップQ7で、図14の処理波形em1から反射波α1またはα2の起生時刻tを読出す。
【0048】
このような各ステップQ1〜Q7の処理は、一対の探触子31,32を用いて、ひび割れ29の両側において実行される。この場合、一対の探触子31,32を、ひび割れ29の一方側に配置して各ステップQ1〜Q7の処理を行なった後に、ひび割れ29の他方側で各ステップQ1〜Q7での処理を行なう。または、ひび割れ29の両側にそれぞれ一対の探触子31,32を配置し、広帯域超音波の送受信を含む各ステップQ1〜Q7での処理をそれぞれ別々に行なってもよく、あるいは、ひび割れ29の両側にそれぞれ一対の探触子31,32を配置し、一方側と他方側とで各ステップQ1〜Q7での処理を並行して行なってもよい。
【0049】
次に、ステップQ8で、ひび割れ29を隔てた左側と右側との反射波α1またはα2の起生時刻tの差異判定を実行する。
そして、ひび割れ29を隔てた左側と右側とで起生時刻tが等しいか、または略等しい場合には、ステップQ9に移行し、このステップQ9で、ひび割れ29は図6に示すような垂直なものであると認定する。
【0050】
また、ひび割れ29を隔てた左側の起生時刻tが、右側のそれよりも長い場合には、別のステップQ10に移行し、このステップQ10で、ひび割れ29は図7に示すような左下方に傾斜するものであると認定する。
さらに、ひび割れ29を隔てた右側の起生時刻tが、左側のそれよりも長い場合には、さらに別のステップQ11に移行し、このステップQ11で、ひび割れ29は図8に示すような右下方に傾斜するものであると認定する。
【0051】
ここで、上記各ステップQ9,Q10,Q11による処理内容は、図1で示した表示装置41に可視表示される。すなわち、これらの各ステップQ9,Q10,Q11は判定結果を可視表示する表示手段を構成するものである。また、図9に示す工程図の各ステップQ1〜Q11はその処理内容に対応する手段を構成する。
このように、上記各ステップQ1〜Q11での処理により、コンクリート30に発生したひび割れ29の種別(垂直、左下方に傾斜するもの、右下方に傾斜するもの)を容易に判別することができる。
【0052】
[実施形態2]
図15〜図21はコンクリート構造物のひび割れ29の状態計測方法およびその装置の実施形態2を示すが、この実施形態2においても、図1〜図5で示した回路装置を用いる。
この場合、図1で示した制御手段としてのCPU40は、図15(a)、(b)に示すように、ひび割れ29を隔てた一側のコンクリート30の表面30bより発信探触子31から広帯域超音波(0〜5.0MHzの帯域)を発信し、ひび割れ29を隔てた他側のコンクリート30表面で受信探触子32にて広帯域超音波を受信し、送受信位置(pos1,pos2,pos3)をずらして複数回送受信すると共に、受信した広帯域受信波(図17参照)からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルsp3(図18参照)を求める第1演算機能(図16のステップU3参照)と、上記広帯域受信波スペクトルsp3(図18参照)からフィルタFIL2を用いて所定周波数範囲のスペクトルを抽出して狭帯域受信波スペクトルsp4(図19参照)を求める抽出機能(ステップU4参照)と、抽出された狭帯域受信波スペクトルsp4(図19参照)をフーリエ逆変換して時系列波(図20参照)を求める第2演算機能(ステップU5参照)と、上記時系列波(図20参照)を時系列重み付け関数G2で切出すと共に、エンファシス処理を行なって処理波形em2(図21参照)を求める第3演算機能(ステップU6参照)と、上記処理波形em2(図21参照)から回折波β(図15参照)の起生時刻tを読出す読出し機能(ステップU7参照)と、上記起生時刻tに基づいて、ひび割れ29の状態を演算する第4演算機能(ステップU8参照)と、を備えている。
【0053】
図15に示すように、コンクリート30には一般に該コンクリート30の表面30bから所定の深さ位置(例えば、約10.0cmの深さ位置)に鉄筋28が等間隔で複数埋設されており、発信探触子31から広帯域超音波を発信した場合、図15(b)に示すように、この鉄筋28による反射波γと、コンクリート底部30aでの反射波α1と、ひび割れ29の先端位置で回折される回折波βとが発生する。
【0054】
ここで、ひび割れ29の状態を計測する場合、上述の各反射波α1,γは何れも外乱となるので、この外乱の影響を受けないように、外乱を排除して回折波βのみを抽出処理することが要請される。
特に、この実施形態2では、図20に示す時系列波TS2を時系列重み付け関数G2(同図参照)で切出すことにより、コンクリート30中に存在する鉄筋28からの反射波γつまり外乱を排除するように構成している。
【0055】
つぎに、図16に示す工程図を参照して、コンクリート構造物のひび割れ29の状態計測方法について詳述する。
ステップU1で、ひび割れ29の図示左側に配置した発信探触子31から0〜5.0MHzの広帯域超音波(0〜5.0MHzまでの範囲の周波数成分を全て含む超音波)を、コンクリート30の表面30bから発信する。
【0056】
次に、ステップU2で、ひび割れ29の図示右側に配置した受信探触子32で広帯域超音波(0〜5.0MHz)を受信する。そして、送受信位置を図15のポジションpos1からポジションpos2にずらして送受信を行ない、さらにポジションpos2からポジションpos3にずらして送受信を行ない、このような複数回(この場合は、3回)の送受信を行なったものを加算平均した広帯域受信波re2(図17参照)を得る(第1の工程)。なお、送受信回数は3回に限定するものではなく、4回以上の複数回であってもよい。
【0057】
図17において、時刻tで比較的大きい波が確認されるが、この波は本来外乱となる鉄筋28による反射波γであり、また時間t=300μsec前後で、さらに大きい波が確認されるが、この波も本来外乱となるコンクリート底部30aからの反射波α1である。
次に、ステップU3で、図17に示す広帯域受信波re2(時系列波)をフーリエ変換して、図18に示すような広帯域受信波スペクトルsp3を求める(第2の工程)。
【0058】
次に、ステップU4で、図18に示す広帯域受信波スペクトルsp3から、コンクリート30のひび割れ29の計測に最も適した50kHz〜120kHzの間に中心周波数fを有するフィルタFIL2により所定周波数範囲のスペクトルを抽出し、図19に示す狭帯域受信波スペクトルsp4を求める(第3の工程)。
上記フィルタFIL2は、関数B(f)(B(f)=1.0)で示すことができ、中心周波数をfとし、所定値をfとする時、次のように定義することができる。
【0059】
f≦f−fでB(f)=0.0
f=fでB(f)=1.0
f≧f+fでB(f)=0.0
−f<f<fでB(f)は増加関数
<f<f+fでB(f)は減少関数
この実施形態では、中心周波数f=52.5kHzのフィルタFIL2(図18参照)を用いたが、この中心周波数fの数値はこれに限定されるものではなく、50kHz〜120kHzの間に中心周波数fが存在すれば、他のフィルタであってもよい。
【0060】
次にステップU5で、図19に示す狭帯域受信波スペクトルsp4をフーリエ逆変換して、図20に示す時系列波TS2を求める(第4の工程)。
次にステップU6で、図20に示す時系列波(TS2)を、同図に示す時系列重み付け関数(いわゆる、重み付けTGC関数)G2で切出すと共に、最小=乗法などによるエンファシス処理を行なって、図21に示す処理波形em2を求める(第5の工程)。図20と図21との対比から明らかなように、エンファシス処理された波形は、必要とする特徴部が際立った波形となる。
【0061】
図21に示したこの処理波形em2は、図1の表示装置41に可視表示される。そこで、次のステップU7で、図21の処理波形em2から回折波βの起生時刻tを読出す(第6の工程)。
【0062】
次にステップU8で、上記起生時刻tに基づいて、垂直ひび割れ29の深さdeを演算する(第7の工程)。
上記ひび割れ29の深さdeは次のようにして演算することができる。
【0063】
まず、次の[数2]により発信探触子31からひび割れ29の先端を経由して受信探触子32に至る超音波伝播距離Dの平均値D ̄(なお、D ̄は数式においてDの上に“ ̄”を付された符号を表す。以下同じ。)(図15(c)参照)を演算する。
【数2】

ここに、tは回折波βの起生時刻
νはコンクリート30内での超音波の速度(つまり音速)
一例として、起生時刻tが171.4μsec、音速νが4004.3m/secの場合には、平均値D ̄は68.6cmとなる。
【0064】
上記[数2]により超音波伝播距離Dの平均値D ̄を演算した後、次の[数3]により、ひび割れ29の深さdeを演算する。
【数3】

ここにa1は一対の探触子31,32の中心間距離(図15(c)参照)
φは探触子31,32の直径
一例として、中心間距離a1が100mm、直径φが15mm、平均値D ̄が68.6cmの場合には、ひび割れ29の深さdeは34.0cmとなり、コンクリート30の供試体(いわゆるコンクリート版)として用いた版厚=500mm、ひび割れの深さ=30.0cmのものに対して、略一致するひび割れの深さdeを演算により求めることができた。
【0065】
このように、図15〜図21で示した実施形態2のコンクリート構造物のひび割れ状態計測装置は、超音波を発信する発信探触子31と、受信する受信探触子32とを備え、両探触子31,32を、コンクリート30のひび割れ29を隔てた両側に配置して、コンクリート30のひび割れ29の状態を計測するコンクリート構造物のひび割れ状態計測装置であって、ひび割れ29を隔てた一側のコンクリート30の表面30bより広帯域超音波(0〜5.0MHz)を発信し、ひび割れ29を隔てた他側のコンクリート30の表面30bで広帯域超音波を受信し、送受信位置pos1,pos2,pos3をずらして複数回送受信すると共に、受信した広帯域受信波re2(図17参照)(詳しくは、加算平均した広帯域受信波)からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルsp3(図18参照)を求める第1演算機能(ステップU3参照)と、上記広帯域受信波スペクトルsp3からフィルタFIL2(図18参照)を用いて所定周波数範囲のスペクトルを抽出して狭帯域受信波スペクトルsp4(図19参照)を求める抽出機能(ステップU4参照)と、抽出された狭帯域受信波スペクトルsp4をフーリエ逆変換して時系列波TS2(図20参照)を求める第2演算機能(ステップU5参照)と、上記時系列波TS2(図20参照)を時系列重み付け関数G2で切出すと共に、エンファシス処理を行なって処理波形em2(図21参照)を求める第3演算機能(ステップU6参照)と、上記処理波形em2(図21参照)から回折波βの起生時刻tを読出す読出し機能(ステップU7参照)と、上記起生時刻tに基づいて、ひび割れ状態(特に、ひび割れ29の深さde参照)を演算する第4演算機能(ステップU8参照)と、を備えた制御手段(CPU40参照)を設けたものである。
【0066】
ここで上記広帯域超音波の周波数帯域は0〜5.0MHzに設定している。また、フィルタFIL2で抽出する所定周波数範囲は、コンクリート30のひび割れ29の計測に最も適した50kHz〜120kHzの間に中心周波数を有するように設定している。
【0067】
この構成によれば、第1演算機能(ステップU3)は、受信した広帯域受信波re2(詳しくは、加算平均されたもので、図17参照)からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルsp3(図18参照)を求め、抽出機能(ステップU4)は、広帯域受信波スペクトルsp3からフィルタFIL2を用いて所定周波数範囲のスペクトルを抽出して狭帯域受信波スペクトルsp4(図19参照)を求め、第2演算機能(ステップU5)は、抽出された狭帯域受信波スペクトルsp4をフーリエ逆変換して時系列波TS2(図20参照)を求め、第3演算機能(ステップU6)は、時系列波TS2(図20参照)を時系列重み付け関数G2で切出すと共に、エンファシス処理を行なって処理波形em2(図21参照)を求め、読出し機能(ステップU7)は、処理波形em2(図21参照)から回折波βの起生時刻tを読出し、第4演算機能(ステップU8)は、起生時刻tに基づいて、ひび割れ29の状態(ひび割れの深さde参照)を演算する。
【0068】
このように、超音波として広帯域波(0〜5.0MHz)を用いるので、その成分内には、超音波の指向方向における強度の減衰率が小さい成分(相対的に周波数が低い成分)が存在し、この結果、受信波の強度を充分に確保することができる。
【0069】
また、フィルタFIL2を用いて所定周波数範囲(50kHz〜120kHzの間に中心周波数fを有するコンクリートのひび割れ29計測に最適な範囲)のスペクトルを抽出(狭帯域受信波スペクトルsp4参照)するので、コンクリート30のひび割れ29の計測に最も適した周波数範囲を確保することができる。
さらに、時系列波TS2(図20参照)を時系列重み付け関数G2で切出すので、コンクリート30中に存在する鉄筋28からの反射波γなどの外乱を排除することができる。
【0070】
しかも、エンファシス処理を行なって処理波形em2(図21参照)を求めるので、この処理波形は特徴部分が際立ったものとなり、この結果、回折波βの起生時刻tの読出しが、正確かつ容易となる。
これらにより、比較的正確に、ひび割れ状態(特に、ひび割れ29の深さde参照)の計測を行なうことができる。
【0071】
また、図15〜図21で示した実施形態2のコンクリート構造物のひび割れ状態計測方法は、超音波を発信する発信探触子31と、受信する受信探触子32とを備え、両探触子31,32を、コンクリート30のひび割れ29を隔てた両側に配置して、コンクリート30のひび割れ29の状態を計測するコンクリート構造物のひび割れ状態計測方法であって、ひび割れ29を隔てた一側のコンクリート30の表面30bより広帯域超音波を発信し、ひび割れ29を隔てた他側のコンクリート30の表面30bで広帯域超音波を受信し、送受信位置pos1,pos2,pos3をずらして複数回送受信する第1の工程(ステップU1、U2参照)と、受信した広帯域受信波re2(図17参照)からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルsp3(図18参照)を求める第2の工程(ステップU3参照)と、上記広帯域受信波スペクトルsp3からフィルタFIL2を用いて所定周波数範囲のスペクトルを抽出して狭帯域受信波スペクトルsp4(図19参照)を求める第3の工程(ステップU4参照)と、抽出された狭帯域受信波スペクトルsp4をフーリエ逆変換して時系列波TS2(図20参照)を求める第4の工程(ステップU5参照)と、上記時系列波TS2(図20参照)を時系列重み付け関数G2で切出すと共に、エンファシス処理を行なって処理波形em2(図21参照)を求める第5の工程(ステップU6参照)と、上記処理波形em2(図21参照)から回折波βの起生時刻tを読出す第6の工程(ステップU7参照)と、上記起生時刻tに基づいて、ひび割れ状態(ひび割れ29の深さde参照)を演算する第7の工程(ステップU8参照)と、を備えたものである。
【0072】
この構成によれば、第1の工程(ステップU1,U2参照)で、ひび割れ29を隔てた一側のコンクリート表面30bより0〜5.0MHzの広帯域超音波を発信し、ひび割れ29を隔てた他側のコンクリート表面30bで広帯域超音波(0〜5.0MHzの範囲の周波数成分を全て含む超音波)を受信し、送受信位置pos1,pos2,pos3をずらして複数回送受信する。
【0073】
第2の工程(ステップU3参照)で、受信した広帯域受信波re2(詳しくは、加算平均されたもので、図17参照)からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルsp3(図18参照)を求め、第3の工程(ステップU4参照)で、上記広帯域受信波スペクトルsp3から50kHz〜120kHzの間に中心周波数fをもつフィルタFIL2を用いて所定周波数範囲のスペクトルを抽出して狭帯域受信波スペクトルsp4(図19参照)を求める。
【0074】
第4の工程(ステップU5参照)で、抽出された狭帯域受信波スペクトルsp4をフーリエ逆変換して時系列波TS2(図20参照)を求め、第5の工程(ステップU6参照)で、上記時系列波TS2(図20参照)を時系列重み付け関数G2(いわゆる、重み付けTGC関数)で切出すと共に、エンファシス処理を行なって処理波形em2(図21参照)を求める。
【0075】
第6の工程(ステップU7参照)で、上記処理波形em2(図21参照)から回折波βの起生時刻tを読出し、第7の工程(ステップU8参照)で、該起生時刻tに基づいて、ひび割れ状態(ひび割れ29の深さde参照)を演算する。
【0076】
このように、超音波として広帯域波を用いるので、その成分内には、超音波の指向方向における強度の減衰率が小さい成分(相対的に周波数が低い成分)が存在し、この結果、受信波の強度を充分に確保することができる。
また、フィルタFIL2を用いて所定周波数範囲のスペクトルを抽出(狭帯域受信波スペクトルsp4参照)するので、コンクリート30のひび割れ29の計測に最も適した周波数範囲を確保することができる。
【0077】
さらに、時系列波TS2(図20参照)を時系列重み付け関数G2(いわゆる、重み付けTGC関数)で切出すので、コンクリート30中に存在する鉄筋28からの反射波γなどの外乱を排除することができる。
しかも、エンファシス処理を行なって処理波形em2(図21参照)を求めるので、回折波βの起生時刻tの読出しが、正確かつ容易となる。
【0078】
これらにより、比較的正確に、ひび割れ状態(ひび割れ29の深さde参照)の計測を行なうことができる。特に、実施形態1でひび割れ29の種別が垂直なものであると判別した後、この実施形態2でその深さdeを計測する際に有効となる。
【0079】
[実施形態3]
図22〜図24はコンクリート構造物のひび割れ状態計測方法およびその装置の実施形態3を示すが、この実施形態3においても、図1〜図5で示した回路装置を用いる。
【0080】
図22に示すように、コンクリート30のひび割れ29を隔てた一方側に発信探触子31を配置し、ひび割れ29を隔てた他方側の受信探触子32の位置をNo.1〜No.5へと順次移動させて、ひび割れ29からの回折波の伝播時間を実測し、ポジションpos1,pos2,pos3でそれぞれ実測した伝播時間の値を加算平均し、探触子31,32と回折波の伝播時間(加算平均値)から、最小二乗法により、ひび割れ29の先端位置を求めるものである。
【0081】
図22で示した各探触子31,32の配置に代えて、図23に示すように、コンクリート30のひび割れ29を隔てた一方側に受信探触子32を配置し、ひび割れ29を隔てた他方側の発信探触子31の位置をNo.1〜No.5へと順次移動させて、上述同様の処理を行なってもよい。
【0082】
この場合、図1で示した制御手段としての、CPU40は、コンクリート30の表面30bの水平方向をy軸とし、コンクリート30の深さ方向をx軸とした時、ひび割れ29先端の座標(x,y)および超音波の音速ν(詳しくは、コンクリート中における超音波の音速)のパラメータ

を設定する設定機能(図24のステップJ1参照)と、設定したパラメータpで発信探触子31から受信探触子32への超音波の伝播時間を計算する計算機能(ステップJ2参照)と、上記計算機能(ステップJ2)で計算された計算値と実測値との残差Δdを演算する残差演算機能(ステップJ3参照)と、上記残差Δdが許容値以内か否かを判定する収束判定機能(ステップJ4参照)と、上記収束判定機能(ステップJ4)で残差Δdが許容値以内であると判定された時、最終のパラメータpを求めるパラメータ決定機能(ステップJ5参照)と、上記収束判定機能(ステップJ4)で残差Δdが許容値以上であると判定された時、パラメータpを修正する修正機能(各ステップJ6、J7、J8から成るルーチンR1参照)と、を兼ねる。
【0083】
つぎに、図24に示す工程図(フローチャート)を参照して、ひび割れ状態計測方法について詳述する。
【0084】
測定(この測定については、先の実施形態2を応用する)によりN個のデータd(詳しくはデータの組)が得られたとする。一方、M個のパラメータp(詳しくはパラメータの組)で記述されるモデルがあり、データdは該モデルの応答で近似できるものとする。このとき、両者d,pの関係は形式的に、次の[数4]で表される。
【数4】

上記[数4]においてFは関数であり、この関数Fはパラメータpに関して非線形であるから、上記[数4]から直接、パラメータpを求めることはできない。このため、後述する非線形最小二乗法を適用するものである。
そこで、上記[数4]を線形化するために、まずステップJ1でパラメータpの初期値p(0)を設定する。
【0085】
この実施形態3のパラメータpは、ひび割れ29の先端の座標(x,y)、コンクリート30内での超音波の音速νである。したがって、パラメータpは次の[数5]で示すことができる。
【数5】

【0086】
次に、ステップJ2で、設定したパラメータpでの伝播時間を計算する。
すなわち、i番目の観測データにおける送信点(発信探触子31参照)の座標を(x1,i,y1,i)とし、受信点(受信探触子32参照)の座標を(x2,i,y2,i)とすると、伝播時間F(いわゆる到達時間)は次の[数6]で示すことができる。
【0087】
【数6】

【0088】
次に、ステップJ3で、上記計算機能(ステップJ2参照)で計算された計算値と、実測値との残差Δd(図22(b)、図23(b)参照)を演算する。この場合、図24で示す各ステップJ2、J3、J4、J6、J7、J8の処理による反復k回目のモデルをp(k)で表し、F(p)をその周りでテイラー展開すると、次の[数7]を得ることができる。
【0089】
【数7】

ここで、Aは偏微分係数からなるヤコビアン行列で、その成分Aijは次の[数8]で示すことができる。
また、Δpは後述するパラメータの修正量である。
【0090】
【数8】

但し、i=1〜N、j=1〜M
なお、上記成分AijはパラメータPが応答F(p)にどの程度貢献しているかを示す。
【0091】
上記[数4]および[数7]から次に[数9]で示す線形方程式を得ることができる。
【数9】

【0092】
上述のステップJ3では、上記[数9]により計算値と実測値の残差Δd(詳しくは、データとモデル応答値の残差のことで、図22、図23参照)を計算するものである。
なお、上記線形方程式は、特異値分解法、修正グラムシュミット法、ハウスホルダ法(ヤコビアン行列の計算方法)などにより解くことができるが、この実施形態3では、ハウスホルダ法を採用している。
【0093】
次にステップJ4で、残差Δdが許容値以内か否かを判定し、残差Δdが許容値以内の場合(YES判定時)には、次のステップJ5に移行し、残差Δdが許容値以上の場合(NO判定時)には、別のステップJ6を含むルーチンR1に移行するが、この実施形態3では、次に[数10]、[数11]、[数12]で示す反復計算の打切り条件の何れか1つが成立すると、ステップJ5に移行するものである。
【数10】

【数11】

【数12】

【0094】
上述のステップJ4でNO判定されると、ルーチンR1に移行して、パラメータpを修正するが、まず、ステップJ6で、ヤコビアン行列Aの計算を行なう。
【0095】
上記[数8]および[数6]よりF(p)の偏微分係数は、次の[数13]で示され、これによりヤコビアン行列Aの計算を行なうことができる。
【0096】
【数13】

【0097】
次にステップJ7で、ハウスホルダ法によるパラメータ修正量Δpを計算し、次のステップJ8で、パラメータpの修正を実行する。このようにして、パラメータpが修正されると、この内容はステップJ2,J3での処理に反映される。
一方、上述のステップJ4でYES判定されると、ステップJ5に移行して、このステップJ5で最終のパラメータpが決定される。
【0098】
【数14】

上記[数14]の残差=乗和Sが充分小さくなるように最終のパラメータpが決定されるので、ひび割れ29の先端の座標(x,y)から、ひび割れ29の先端の位置を適確に求めることができると共に、コンクリート30の表面30bにおけるひび割れ29上端の位置が既知であることから、該ひび割れ29の傾斜角度をも求めることができる。
【0099】
なお、ひび割れ29の先端座標(x,y)の初期値は、解析対象領域内にあれば、反復計算により最小=乗解に自動的に誘導されるため、この実施形態では便宜的に解析対象領域の中央、あるいは探触子座標の平均位置としている。解析対象領域(ひび割れ29の存在範囲)を手動設定した場合、解析対象領域の中央が初期値となり、自動設定した場合、探触子座標の平均位置が初期値となる。
【0100】
また、コンクリート内30での超音波の伝播速度ν(いわゆる音速)は、予め分かっている場合には既知数として、ひび割れ29の先端座標(x,y)のみを逆解析パラメータとすることもできる。
【0101】
さらに、求解の安定化にはマルカート法を用いており、パラメータpの値を大きくすると安定した解が得られるが、多くの反復回数を要し、逆に、パラメータpの値を小さくすると収束が早まる反面、パラメータ修正量Δpが発散する危険性が高まる。通常の解析スケール、伝播速度においては、概ね1程度に設定すれば、特に問題はない。
さらに、反復計算の打切り条件は、上述の[数10]、[数11]、[数12]の何れか1つが成立すれば、反復を打切るとよい。
【0102】
このように、図22〜図24で示した実施態様3においては、制御手段としての、CPU40(図1参照)は、コンクリート30の表面30bの水平方向をy軸とし、コンクリートの深さ方向をx軸とした時、ひび割れ29先端の座標(x,y)および超音波の音速νのパラメータ

を設定する設定機能(ステップJ1参照)と、
設定したパラメータpで発信探触子31から受信探触子32への超音波の伝播時間Fを計算する計算機能(ステップJ2参照)と、上記計算機能で計算された計算値と実測値との残差Δdを演算する残差演算機能(ステップJ3参照)と、上記残差Δdが許容値以内か否かを判定する収束判定機能(ステップJ4参照)と、上記収束判定機能で残差Δdが許容値以内であえると判定された時、最終のパラメータpを求めるパラメータ決定機能(ステップJ5参照)とを備えたものである。
【0103】
上記構成によれば、制御手段としてのCPU40の設定機能(ステップJ1)は、ひび割れ29の先端の座標(x,y)および超音波の音速ν(但し、コンクリート30内での音速を意味する)のパラメータ

を設定し、計算機能(ステップJ2)は、設定したパラメータpで発信探触子31から受信探触子32への超音波の伝播時間Fを計算し、残差演算機能(ステップJ3)は、上記計算機能(ステップJ2)で計算された計算値と実測値との残差Δdを演算し、収束判定機能(ステップJ4)は、残差Δdが許容値以内か否かを判定し、パラメータ決定機能(ステップJ5)は、上記収束判定機能(ステップJ4)で残差Δdが許容値以内であると判定された時には、最終のパラメータpを求める。
【0104】
このため、ひび割れ29の傾斜の有無の如何にかかわらず、その先端位置を座標(x,y)データとして特定することができ、ひび割れ29の深さ、ひび割れ29の傾斜角度を計測することができる。
また、上記収束判定機能(ステップJ4参照)で残差Δdが許容値以上の時、パラメータpを修正(パラメータ修正量Δp参照)する修正機能(ルーチンR1参照)を備えたものである。
【0105】
上記構成によれば、残差Δdが許容値より大きい時、パラメータpを修正するので、残差Δdが小さくなる方向への修正ができ、ひび割れ29の先端位置をより一層正確に特定することができる。
【0106】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の制御手段は、実施例のCPU40に対応し、
以下同様に、
第1演算機能はCPU40制御によるステップU3に対応し、
抽出機能は、ステップU4に対応し、
第2演算機能は、ステップU5に対応し、
第3演算機能は、ステップU6に対応し、
読出し機能は、ステップU7に対応し、
第4演算機能は、ステップU8に対応し、
第1の工程は、ステップU1,U2に対応し、
第2の工程は、ステップU3に対応し、
第3の工程は、ステップU4に対応し、
第4の工程は、ステップU5に対応し、
第5の工程は、ステップU6に対応し、
第6の工程は、ステップU7に対応し、
第7の工程は、ステップU8に対応し、
設定機能は、ステップJ1に対応し、
計算機能は、ステップJ2に対応し、
残差演算機能は、ステップJ3に対応し、
収束判定機能は、ステップJ4に対応し、
パラメータ決定機能は、ステップJ5に対応し、
修正機能は、ルーチンR1に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、図22、図23においては探触子32または31を位置No.1〜No.5へ順次移動させると共に、ポジションpos1〜pos3に移動させたが、これは位置No.1〜No.2まででもよく、またはNo.1〜No.5よりもさらに多い位置を設定してもよく、ポジションpos1〜pos3についても同様であって、送受信回数や探触子の移動位置については上記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0107】
29…ひび割れ
30…コンクリート
31…発信探触子
32…受信探触子
40…CPU(制御手段)
U1,U2…第1の工程
U3…第2の工程(第1演算機能)
U4…第3の工程(抽出機能)
U5…第4の工程(第2演算機能)
U6…第5の工程(第3演算機能)
U7…第6の工程(読出し機能)
U8…第7の工程(第4演算機能)
J1…設定機能
J2…計算機能
J3…残差演算機能
J4…収束判定機能
J5…パラメータ決定機能
R1…修正機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を発信する発信探触子と、受信する受信探触子とを備え、
両探触子を、コンクリートのひび割れを隔てた両側に配置して、コンクリートのひび割れ状態を計測するコンクリート構造物のひび割れ状態計測装置であって、
ひび割れを隔てた一側のコンクリート表面より広帯域超音波を発信し、ひび割れを隔てた他側のコンクリート表面で広帯域超音波を受信し、送受信位置をずらして複数回送受信すると共に、
受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求める第1演算機能と、
上記広帯域受信波スペクトルからフィルタを用いて所定周波数範囲のスペクトルを抽出して狭帯域受信波スペクトルを求める抽出機能と、
抽出された狭帯域受信波スペクトルをフーリエ逆変換して時系列波を求める第2演算機能と、
上記時系列波を時系列重み付け関数で切出すと共に、エンファシス処理を行なって処理波形を求める第3演算機能と、
上記処理波形から回折波の起生時刻を読出す読出し機能と、
上記起生時刻に基づいて、ひび割れ状態を演算する第4演算機能と、を備えた
制御手段を設けた
コンクリート構造物のひび割れ状態計測装置。
【請求項2】
上記制御手段は、
コンクリート構造物表面の水平方向をy軸とし、コンクリートの深さ方向をx軸とした時、
ひび割れ先端の座標(x,y)および超音波の音速νのパラメータ

を設定する設定機能と、
設定したパラメータで発信探触子から受信探触子への超音波の伝播時間を計算する計算機能と、
上記計算機能で計算された計算値と実測値との残差を演算する残差演算機能と、上記残差が許容値以内か否かを判定する収束判定機能と、
上記収束判定機能で残差が許容値以内であると判定された時、最終のパラメータを求めるパラメータ決定機能とを備えた
請求項1記載の
コンクリート構造物のひび割れ状態計測装置。
【請求項3】
上記収束判定機能で残差が許容値以上であると判定された時、パラメータを修正する修正機能を備えた
請求項2記載の
コンクリート構造物のひび割れ状態計測装置。
【請求項4】
超音波を発信する発信探触子と、受信する受信探触子とを備え、
両探触子を、コンクリートのひび割れを隔てた両側に配置して、コンクリートのひび割れ状態を計測するコンクリート構造物のひび割れ状態計測方法であって、
ひび割れを隔てた一側のコンクリート表面より広帯域超音波を発信し、ひび割れを隔てた他側のコンクリート表面で広帯域超音波を受信し、送受信位置をずらして複数回送受信する第1の工程と、
受信した広帯域受信波からフーリエ変換にて広帯域受信波スペクトルを求める第2の工程と、
上記広帯域受信波スペクトルからフィルタを用いて所定周波数範囲のスペクトルを抽出して狭帯域受信波スペクトルを求める第3の工程と、
抽出された狭帯域受信波スペクトルをフーリエ逆変換して時系列波を求める第4の工程と、
上記時系列波を時系列重み付け関数で切出すと共に、エンファシス処理を行なって処理波形を求める第5の工程と、
上記処理波形から回折波の起生時刻を読出す第6の工程と、
上記起生時刻に基づいて、ひび割れ状態を演算する第7の工程と、を備えた
コンクリート構造物のひび割れ状態計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−13150(P2011−13150A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158968(P2009−158968)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【出願人】(506258305)有限会社エッチアンドビーソリューション (5)
【Fターム(参考)】