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コンクリート構造物の補修工法
説明

コンクリート構造物の補修工法

【課題】コンクリート構造物の劣化箇所を単に修繕するだけにとどまらず、塩害、スケーリング、凍結融解等に対する優れた抵抗力を付与することが可能になり、かつ、産業副産物の有効利用に資することができるコンクリート構造物の補修技術を提供する。
【解決手段】コンクリート構造物の表面を、γ−2CaO・SiO2、α−CaO・SiO2およびカルシウムマグネシウムシリケートから選ばれる1種または2種以上の非水硬性化合物を含有する断面修復材で修復し、断面修復材が硬化後、当該構造物の前記修復部分の表面を炭酸化処理するコンクリート構造物の補修工法。この場合、炭酸化深さを0.5mm以上、鉄筋かぶり厚の1/3以下とすることが好ましく、また、炭酸化処理の開始時期を断面修復材の圧縮強度が20N/mm2以上となった時点以降とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、土木・建築業界において適用されるコンクリート構造物の補修工法、特に、補修後のコンクリート構造物が著しく高耐久化されるコンクリート構造物の補修工法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンクリート構造物の耐久性が大きくクローズアップされている。特に、鉄筋コンクリート構造物中への塩化物イオンの浸透によってもたらされる鉄筋の腐食現象、いわゆる塩害や、塩化物系融雪剤の散布によってもたらされるコンクリート表面の剥離現象、いわゆるスケーリングが問題視されている。また、融雪剤を用いる寒冷地では凍結融解によるコンクリートの劣化も顕在化している。
【0003】
劣化したコンクリート構造物を延命化させるために、補修が行われる。例えば、劣化コンクリートをはつり、断面修復材にて補修するのが一般的である。しかしながら、従来の補修工法は、劣化したコンクリート構造物の延命化のための一助的な工法にすぎず、補修後のコンクリート構造物の耐久性を飛躍的に向上させるものではなかった。殊に、耐久性を飛躍的に高めることができるコンクリート構造物の補修工法の開発が強く求められている。
【0004】
一方、最近では産業界において環境問題への配慮が強く求められており、産業副産物の有効利用について様々な試みがなされている。しかしながら、これら副産物の中には、未だに有効利用方法が確立されていないものも多く見受けられる。特に、製鋼スラグおよびステンレススラグは効果的な有効利用法が見出されておらず、ほとんど産業廃棄物として処分されているのが現状である。
【0005】
【特許文献1】国際公開第03/016234号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コンクリート構造物の耐久性を飛躍的に高めることができ、かつ、製鋼スラグ等の産業副産物の有効利用に資することのできるコンクリート構造物の補修工法を開発し提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、先に、γ−2CaO・SiO2、α−CaO・SiO2、カルシウムマグネシウムシリケートといった水硬性を持たない化合物に着目し、セメント混和材としての用途を提案した(特許文献1)。これにより、ヨーロッパ規格(EN規格)を基本とした新しい国際規格への対応、セメントの水和発熱抑制、および中性化防止という課題に対し、一応の解決を見た。ところが本発明者らは、詳細な検討の結果、このような非水硬性化合物を含む硬化体に意図的に炭酸化処理を施したところ極めて優れた耐久性が付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明では、コンクリート構造物の表面を、γ−2CaO・SiO2、α−CaO・SiO2およびカルシウムマグネシウムシリケートから選ばれる1種または2種以上の非水硬性化合物を含有する断面修復材で修復し、断面修復材が硬化後、当該構造物の前記修復部分の表面を炭酸化処理するコンクリート構造物の補修工法が提供される。
【0009】
ここで、コンクリート構造物の修復対象となる表面は、劣化部分を含む表層部をはつり取ることにより形成された新たな表面の他、当該構造物の初期から存在する表面を含む。後者の例としては、劣化前に予め耐久性付与のために本発明の工法を適用する場合が挙げられる。修復対象となる表面は当該コンクリート構造物表面の一部であっても良いし全部であっても良い。
【0010】
この補修工法においては、特に、炭酸化深さを0.5mm以上、鉄筋かぶり厚の1/3以下とすることが好ましく、また、炭酸化処理の開始時期を断面修復材の圧縮強度が20N/mm2以上となった時点以降とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の補修工法によれば、既存のコンクリート構造物において、単に劣化箇所を修繕するだけにとどまらず、塩害、スケーリング、凍結融解等に対する優れた抵抗力を付与することが可能になる。しかも、製鋼スラグ等の産業副産物を大量に利用することができ、環境負荷低減の観点からも有効である。したがって本発明は、既存コンクリート構造物の長寿命化をもたらすとともに、産業界における環境対策として寄与しうるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書において「部」および「%」は特に規定しない限り質量基準である。
【0013】
本発明で用いる断面修復材は、γ−2CaO・SiO2、α−CaO・SiO2およびカルシウムマグネシウムシリケートから選ばれる1種または2種以上の非水硬性化合物を含有していればよく、特に限定されるものではない。断面修復材はコテ塗りタイプと吹付け施工タイプに大別される。一般的には、断面修復材はポリマーセメントモルタルが主流である。すなわち、ポリマーを含んでいる。本発明では、ポリマーを含まないものも使用可能であり、この点にも本発明の特徴がある。
【0014】
すなわち、従来の断面修復材はポリマーを混入することで耐久性の確保を期待している。これはポリマーの混入により、ひび割れ抵抗性が増すこと、また、塩化物イオンや炭酸ガスなどの劣化因子の硬化体中への物質移動を阻害する作用が得られるためである。しかし、本発明では、γ−2CaO・SiO2、α−CaO・SiO2およびカルシウムマグネシウムシリケートから選ばれる1種または2種以上の非水硬性化合物を含有させた断面修復材を使用し、それが硬化後に炭酸化処理を行うので、ポリマーを含有させなくても非常に高いひび割れ抵抗性や物質遮蔽性を得ることが可能となるのである。もちろんポリマーを含有させてもこの効果は変わらないが、ポリマー材料は高価であるので、コストダウンの観点から非ポリマー系断面修復材を使用することが望ましい。
【0015】
本発明で言う、γ−2CaO・SiO2とは、CaOとSiO2を主成分とするダイカルシウムシリケートの1種である。ダイカルシウムシリケートには、α型、α'型、β型およびγ型が存在する。α型、α'型、β型は水硬性を持つが、γ型は水硬性を持たない。また、これらは結晶構造や密度も異なる。よって、これらのダイカルシウムシリケートは化学成分の上では酷似しているが、全く異なる化合物と見なせる。本発明では、γ型のダイカルシウムシリケートを用いる。γ型でないと、本発明の効果が得られない。
【0016】
本発明で言う、α−CaO・SiO2とは、CaOとSiO2を主成分とするモノカルシウムシリケートの1種である。モノカルシウムシリケートにはα型とβ型が存在する。α型とβ型は結晶構造や密度が異なる。よって、これらのモノカルシウムシリケートは化学成分の上では酷似しているが、全く異なる化合物と見なせる。天然に産出するモノカルシウムシリケートはβ型である。モノカルシウムシリケートは、一般的にワラストナイトと呼ばれる。本発明では、α型のワラストナイトを用いる。α型でないと本発明の効果が得られない。なお、α型のワラストナイトはプスードワラストナイトと呼ばれることもある。
【0017】
本発明で言う、カルシウムマグネシウムシリケートは、特に限定されるものではなく、その具体例としては、例えば、メルヴィナイト、アケルマナイト、モンチセライトが挙げられる。これらのうちで、メルヴィナイトを選定することが本発明の効果を顕著に引き出す上で好ましい。
【0018】
本発明では、これらの非水硬性化合物供給源として、γ−2CaO・SiO2、α−CaO・SiO2、カルシウムマグネシウムシリケートのいずれかを含有する製鋼スラグやステンレススラグを利用することができる。これらの非水硬性化合物を1種以上含有していれば、スラグの種類は特に限定されるものではないが、上記非水硬性化合物の1種以上を合計60%以上含有するものが好適であり、合計70%以上含有するものが一層好適である。ただし、製鋼スラグは鋼種の違いやプロセスの違いによってその組成が千差万別である。製鋼スラグであっても、γ−2CaO・SiO2、α−CaO・SiO2、カルシウムマグネシウムシリケートのいずれをも含有していないものは、本発明で使用する断面修復材の構成原料としては特段の価値を有しない。なお、スラグは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記非水硬性化合物を含有するスラグのなかでも、特にγ−2CaO・SiO2を含有するものが好ましい対象となる。この場合、スラグに含まれるγ−2CaO・SiO2の量は35%以上であることが好ましく、45%以上がより好ましい。スラグに含まれるγ−2CaO・SiO2含有量の上限は特に制限されない。製鋼スラグおよびステンレススラグの中では、γ−2CaO・SiO2含有量が多い電気炉還元期スラグまたはステンレススラグが好ましい。
【0020】
製鋼スラグおよびステンレススラグの各々の成分は特に限定されるものではないが、具体的には、CaO、SiO2、Al23、MnO2、Cr23、FおよびMgO等を主要な化学成分とし、その他、TiO2、Na2O、S、P25およびFe23等が挙げられる。また、化合物としては、ダイカルシウムシリケート2CaO・SiO2、トライカルシウムシリケート3CaO・SiO2、ランキナイト3CaO・2SiO2、ワラストナイトCaO・SiO2等のカルシウムシリケート、非晶質12CaO・7Al23、CaO・7Al23・CaF2、および3CaO・Al23等のカルシウムアルミネート、メルヴィナイト3CaO・MgO・2SiO2、アケルマナイト2CaO・MgO・2SiO2、モンチセライトCaO・MgO・SiO2等のカルシウムマグネシウムシリケート、ゲーレナイト2CaO・Al23・SiO2、アノーサイトCaO・Al23・2SiO2等のカルシウムアルミノシリケート、並びに、アケルマナイト2CaO・MgO・2SiO2とゲーレナイト2CaO・Al23・SiO2の混晶であるメリライト、遊離石灰、遊離マグネシア、カルシウムフェライト2CaO・Fe23、カルシウムアルミノフェライト4CaO・Al23・Fe23、リューサイト(K2O、Na2O)・Al23・SiO2、スピネルMgO・Al23、マグネタイトFe34を含む場合がある。
【0021】
なお、上述した化合物のうち、ランキナイト、ワラストナイト、メルヴィナイト、アケルマナイト、モンチセライト、ゲーレナイト、アノーサイト、メリライトも非水硬性化合物である。
【0022】
断面修復材の構成材料である「非水硬性化合物を含有する物質」(以下、本明細書において「混和材」という)のブレーン比表面積は特に限定されるものではない。混和材が製鋼スラグの場合、通常、2000cm2/g未満の粉粒状を呈している。これをそのまま使用しても良いし、さらに粉砕処理して微粉末としたものを使用しても良い。混和材は粉粒状のものを用いると、細骨材の一部として多量に配合することができる。一方、微粉末を用いると、粉粒状のように多量に配合することはできないが、少ない配合量でも本発明の効果は顕著となるため、充分な効果を得ることができる。
【0023】
混和材の使用量は特に限定されるものではないが、通常、断面修復材中の結合材100部に対して、10〜100部が好ましく、30〜50部がより好ましい。10部未満では、塩害、スケーリング、凍結融解に対する抵抗性を著しく向上させることや、収縮を小さくすることが難しくなる場合がある。100部を超えても更なる効果の増進が期待できない。ここで、結合材とは、各種セメントのほか、高炉水砕スラグ、フライアッシュ、シリカフューム等の潜在水硬性物質やポゾラン物質の合計を意味する。よって、石灰石微粉末や高炉徐冷スラグ微粉末、ケイ石微粉末等の水和不活性な無機粉末は含まれない。
【0024】
断面修復材に使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、および中庸熱等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、またはシリカを混合した各種混合セメント、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰等を原料として製造された廃棄物利用セメント、いわゆるエコセメント(登録商標)、および石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末等を混合した各種フィラーセメント等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上が使用可能である。
【0025】
また、砂や砂利等の骨材の他に、石灰石微粉末および高炉徐冷スラグ微粉末等の混和材料、膨張材、急硬材、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、ポリマー、凝結調整剤、スチールファイバー、ビニロンファイバー、炭素繊維等の繊維質物質、ベントナイト等の粘土鉱物、並びに、ハイドロタルサイト等のアニオン交換体等のうちの1種または2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0026】
断面修復材に使用する水の量は特に限定されるものではなく、通常の使用範囲が適用される。具体的には、水結合材比で30〜60%が好ましく、40〜50%がより好ましい。30%未満では作業性が悪くなる場合があり、60%を超えると耐久性が確保しにくくなる。
【0027】
本発明における断面修復の方法は特に限定されるものではなく、乾式または湿式の吹付け工法やコテ塗り工法が挙げられる。付着性を確保する観点から、また、施工の合理化の観点から、吹付け工法が好ましい。なかでも、耐久性の観点から、また、粉塵発生量が少ないことによる作業環境の観点から、湿式吹付け工法がより好ましい。
【0028】
本発明では、断面修復材で修復後のコンクリート構造物表面を炭酸化処理する。その炭酸化深さは、0.5mm以上を確保することが好ましい。また炭酸化深さの上限は鉄筋かぶり厚の1/3以下とすることが好ましい。炭酸化深さが0.5mm未満では本発明の効果が充分に得られない場合があり、鉄筋かぶり厚の1/3を超えると中性化による鉄筋の腐食の観点から好ましくない。
【0029】
炭酸化処理の方法は特に限定されるものではないが、その具体例としては、例えば、硬化した断面修復材の表面を炭酸成分と接触させる方法が挙げられる。本発明で言う炭酸成分とは、CO2成分、CO32-やHCO3-等を供給可能な物質を総称するものであり、特に限定されるものではない。その具体例としては、例えば、炭酸ガス、超臨界二酸化炭素、ドライアイス、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸鉄等の炭酸塩、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸鉄等の重炭酸塩、および炭酸水等が挙げられる。炭酸ガス濃度10%の空気を炭酸成分とする場合、硬化した断面修復材の表面に連続的に接触させてもよいが、毎日、所定時間(この場合は8〜16時間)ずつ繰り返して接触させることもできる。なお、炭酸化処理の際には適度な湿分が必要である。また、温度も20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましい。
【0030】
炭酸化処理のタイミングは、打設した断面修復材が充分に硬化した後に行うのが好ましい。具体的には、断面修復材の圧縮強度が20N/mm2以上に達した時点以降に炭酸化処理を開始することが好ましく、断面修復材の圧縮強度が30N/mm2以上に達した時点以降に開始することがより好ましい。断面修復材の圧縮強度が20N/mm2未満の段階で炭酸化処理を行うと、0.5mm以上の炭酸化深さを確保しても本発明の効果が充分に得られない場合がある。なお、断面修復材がまだ固まらないうちに、あるいは、凝結直後に炭酸化処理を行って硬化させた場合には、本発明の効果は全く得られない。
【0031】
鉄筋かぶり厚は、鉄筋コンクリート構造物の種類や大きさによっで一義的に決定されるものではないが、通常、50mm以下の範囲にあり、多くの場合40mm以下の範囲にある。したがって、本発明では、炭酸化深さは必然的に50mmのl/3以下の範囲とすることが好ましい。なお、本発明で炭酸化処理した部分は中性化される。したがって、かぶり厚の1/3を炭酸化処理した場合には、その部分が中性化領域となる。しかしながら、かぶり厚の2/3に相当する非中性化部分が、自然環境に置かれる中でその後に中性化される速度は、本発明の炭酸化処理を行う前と比べて非常に小さくなるのである。このため、本発明を適用ことは鉄筋の腐食防止の観点からも有益である。
【0032】
ここで、本発明の効果を得るための炭酸化深さは、5mm程度以下で充分であり、それ以上に炭酸化深さが大きくなっても著しい効果の増進は期待できない。言い換えれば、本発明のコンクリート構造物の補修工法は、鉄筋の腐食保護の観点からは充分なアルカリ性領域を確保できる範囲で炭酸化させるにもかかわらず、塩化物イオンや炭酸ガスなどの劣化因子の硬化体中への透過が効果的に抑制でき、また、凍結融解や収縮の低減なども達成できるという、特有の効果を奏するものである。
【実施例1】
【0033】
セメント100部、水セメント比45%、細骨材200部からなる断面修復材を調製した。その際、表1に示す各種混和材を細骨材に置換して30部配合し、各断面修復材のフロー値が170±10mmとなるようにAE減水剤を使用した。
一方、コンクリート構造物として、壁厚600mm、高さ1.5m、長さ2.5m、鉄筋かぶり厚30mmの鉄筋コンクリートを用意した。このコンクリート構造物に用いたコンクリートは、単位セメント量315kg/m3、単位水量171kg/m3、s/aが39%、スランプ18cmのものであった。コンクリート構造物を打設後、材齢91日が経過した時点で、ウォータジェットにより鉄筋が露出するまではつり、その面を被補修面とした。
【0034】
上記各断面修復材を前記コンクリート構造物の被補修面に吹き付けて修復した。修復施工後、材齢5日の時点でコアリングした供試体について圧縮強度を測定したところ約20N/mm2であった。
材齢5日を経過した時点で修復面の炭酸化処理を開始した。比較のために、はつりおよび修復を行っていないコンクリート壁面についても同時に炭酸化処理に供した。炭酸化処理の条件は、修復面を35℃の温水で湿潤させた後、修復面をシートで覆い、コンクリート壁とシートの間に炭酸ガス濃度10%の空気を温風とともに送り込むものである。この処理を毎日8時間ずつ繰り返して計7回行った。その後、炭酸化処理を施したコンクリート壁面に水道水を散水した後、冷凍庫に運び込んでマイナス10℃で凍結させ、次いで、市販の塩化物系融雪・融氷剤(塩化カルシウムと塩化ナトリウムの混合物)を散布して融氷させるサイクルを繰り返して50回行った。各断面修復材を施して炭酸化処理した部分、および断面修復材を施さずに炭酸化処理した部分について、コンクリート壁を表面からコアリングして塩化物浸透深さを確認するとともに、スケーリングによる劣化の程度を観察した。結果を表1に示す。
【0035】
他方、前記配合の断面修復材からなるテストピースを別途作製して、上記と同様の条件で炭酸化処理した場合の塩化物浸透試験、スケーリング試験、凍結融解試験および長さ変化率を測定した。結果を表1に併記する。
【0036】
なお、断面修復材に使用した材料、および試験方法は以下のとおりである。
<使用材料>
・セメント:市販の普通ポルトランドセメント、ブレーン比表面積3000cm2/g。
・混和材A:γ−2CaO・SiO2、2モルの炭酸カルシウムと1モルの二酸化ケイ素を配合して1450℃で焼成して合成。比重3.01、ブレーン比表面積1800cm2/g。
・混和材B:α−CaO・SiO2、1モルの炭酸カルシウムと1モルの二酸化ケイ素を配合して1450℃で焼成して合成。比重2.93、ブレーン比表面積1500cm2/g。
・混和材C:メルヴィナイトの合成品。比重3.33、ブレーン比表面積1500cm2/g。
・混和材D:製鋼スラグ(電気炉還元期スラグ)。酸化物換算CaO含有量52%、酸化物換算SiO2含有量27%、Al23含有量11%、MgO含有量0.5%、フッ素含有量0.7%、S含有量0.5%。主な化合物相はγ−2CaO・SiO2含有量約45%、α−CaO・SiO2約20%、12CaO・7Al23固溶体約25%、比重3.06、ブレーン比表面積1200cm2/g。非水硬性化合物含有量はγ−2CaO・SiO2含有量45%とα−CaO・SiO2の含有量20%の和で約65%。
・混和材E:製鋼スラグ(ステンレススラグ)。CaO含有量52%、SiO2含有量28%、MgO含有量10%、Al23含有量7%、Na2O含有量0.5%、フッ素含有量0.5%。主な化合物相はγ−2Ca0・SiO2含有量約35%、メルヴィナイト約44%、12CaO・7Al23固溶体約14%、遊離マグネシア約4%。比重3.14、ブレーン比表面積1500cm2/g。非水硬性化合物含有量はγ−2CaO・SiO2含有量35%とメルヴィナイト含有量44%の和で約79%。
・混和材F:製鋼スラグ(電気炉還元期スラグ)。酸化物換算CaO含有量53%、酸化物換算SiO2含有量35%、Al23含有量4%、MgO含有量6%、フッ素含有量1.5%、S含有量0.5%。主な化合物相はγ−2CaO・SiO2含有量約40%、カスピディン14%、メルヴィナイト40%。比重3.04、ブレーン比表面積1200cm2/g。非水硬性化合物含有量はγ−2CaO・SiO2含有量40%と、カスピディン含有量14%と、メルヴィナイト含有量40%の和で約95%。
・混和材G:製鋼スラグ(電気炉還元期スラグ)。酸化物換算CaO含有量53%、酸化物換算SiO2含有量26%、Al23含有量13%、MgO含有量5%、フッ素含有量2.0%、S含有量0.5%。主な化合物相はγ−2CaO・SiO2含有量約40%、カスピディン12%、メルヴィナイト18%、12CaO・7Al23固溶体約25%。比重3.03、プレーン比表面積1200cm2/g。非水硬性化合物含有量はγ−2CaO・SiO2含有量40%と、カスピディン含有量12%と、メルヴィナイト含有量18%の和で約70%。
・混和材H:石灰石微粉末。新潟県青海鉱山産の石灰石の粉砕物。比重2.71、ブレーン比表面積1500cm2/g。
・水 :水道水
・細骨材:新潟県姫川産。比重2.62。
・粗骨材:新潟県姫川産。比重2.64。
【0037】
<測定方法>
・凍結融解試験:10×10×40cmのテストピースを作製し、JSCE−G 501−1999に準じて行った。
・長さ変化率試験:10×10×40cmのテストピースを作製し、JIS A6202(B)に準じて行った。
・スケーリング試験:ASTM C672に準じて行い、スケーリング量(kg/m2)を求めた。
・塩化物浸透深さ:擬似海水に材齢28日のテストピースを4週間にわたって浸漬した。その後テストピースを切断し、断面をEPMAのマッピング分析によって観察し、塩素の浸透深さを計測した。
【0038】
【表1】

【0039】
表1からわかるように、γ−2CaO・SiO2、α−CaO・SiO2およびカルシウムマグネシウムシリケートから選ばれる1種または2種以上の非水硬性化合物を十分量含有させた実施例のものは実験No.1−1の比較例と比べ、塩害、スケーリング、凍結融解に対して、いずれも顕著な抵抗性を発揮した。また、収縮に対しても優れた低減効果が確認された。実験No.1−9の比較例に見られるように、混和材として、本実施例と同じ使用量の石灰石微粉末(混和材H)を配合しても、実施例のような効果を得ることは難しい。
【実施例2】
【0040】
混和材Aを使用し、混和材の使用量を表2に示すように変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0041】
【表2】

【0042】
表2からわかるように、断面修復材中の結合材(セメント)100部に対して、γ−2CaO・SiO2(混和材A)の使用量を30〜100部とすることによって塩害、スケーリング、凍結融解に対する抵抗性は著しく向上し、収縮も小さくなった。
【実施例3】
【0043】
混和材Aを使用し、炭酸化処理期間を表3に示すように変化したこと以外は実施例1と同様にテストピースを用いた試験を行った。なお、炭酸化深さの測定は以下のようにした。結果を表3に併記する。
<測定方法>
・炭酸化深さ:テストピース断面にフェノールフタレインの1%濃度のアルコール溶液を噴霧して、赤変しなかった部分を炭酸化深さと見なした。
【0044】
【表3】

【0045】
表3からわかるように、γ−2CaO・SiO2(混和材A)を含有させた断面修復材では、炭酸化処理によって炭酸化深さを0.5〜10.0mmの範囲に確保することができた。特に炭酸化処理期間が7日以上で炭酸化深さは2.5mm以上確保され、塩害、スケーリング、凍結融解に対する抵抗性が飛躍的に高まった。また、収縮に対しても充分な低減効果が得られた。
【実施例4】
【0046】
混和材Aを使用し、炭酸化開始時の断面修復材の圧縮強度を表4に示すように変化したこと以外は実施例1と同様にテストピースを用いた試験を行った。結果を表4に併記する。
【0047】
【表4】

【0048】
表4からわかるように、γ−2CaO・SiO2(混和材A)を含有させた断面修復材では、その圧縮強度が20N/mm2以上となった時点以降に炭酸化処理を開始することによって塩害、スケーリング、凍結融解に対する優れた抵抗力を付与できた。また、収縮の低減も達成できた。
【実施例5】
【0049】
混和材Aを使用し、炭酸成分としてドライアイスを用いたこと以外は実施例1と同様にテストピースを用いた試験を行った。結果を表5に併記する。
【0050】
【表5】

【0051】
表5からわかるように、γ−2CaO・SiO2(混和材A)を含有させた断面修復材の表面に接触させる炭酸成分として、ドライアイスを用いても炭酸ガスによる炭酸化処理と同等の効果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の表面を、γ−2CaO・SiO2、α−CaO・SiO2およびカルシウムマグネシウムシリケートから選ばれる1種または2種以上の非水硬性化合物を含有する断面修復材で修復し、断面修復材が硬化後、当該構造物の前記修復部分の表面を炭酸化処理するコンクリート構造物の補修工法。
【請求項2】
炭酸化深さを0.5mm以上、鉄筋かぶり厚の1/3以下とする請求項1に記載のコンクリート構造物の補修工法。
【請求項3】
炭酸化処理の開始時期を断面修復材の圧縮強度が20N/mm2以上となった時点以降とする請求項1または2に記載のコンクリート構造物の補修工法。

【公開番号】特開2007−22878(P2007−22878A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209906(P2005−209906)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】