説明

コンクリート構造物断面欠損の修復材

【課題】現場でセメント等の構成成分を混合する必要がなく、粉塵が発生せず、簡易な操作で修復が可能なコンクリート構造物の断面欠損部の修復材を提供すること。
【解決手段】セメントと、その全部又は一部が軽量細骨材である細骨材と、沸点が30〜100℃の水溶性有機溶剤と、粘稠化材とを含有し、20℃での粘度が500Pa・sを超え3000Pa・s以下であることを特徴とするコンクリート構造物断面欠損の修復材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物などのコンクリート構造物の断面欠損の修復に使用する修復材に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物は、ジャンカなどの初期欠陥、塩害、中性化などの劣化、衝突などの損傷によって、部分的にコンクリートの断面欠損が起こることがあり、このような断面欠損は、構造上の問題、あるいは耐久性、美観等の観点から好ましくないことが多い。
このような部分的で小規模な断面の欠損の修復方法としては、従来、セメントモルタルやポリマーセメントモルタルなどが一般的に使用されている。これらの材料は、セメント、骨材及び各種混和材・混和剤などを現場で調合したり、予め水以外の粉体を既調合したプレミックスモルタルが使用されたりしている。
【0003】
しかし、これらの材料と水を施工現場で混合する必要があり、混合器具を準備し、水を計量し、混合器具を洗浄したりする手間が掛かかり、混練時に粉塵が発生するという問題点を有していた。
【0004】
ところで、コンクリートの亀裂部の補修方法において、施工現場での混合に関する手間、粉塵発生等を改善するために、特許文献1にポルトランドセメント及び/又は混合セメントとカルシウムアルミネートを含む粒子間隙が45〜65容積%の混合粒子と、溶解度パラメーターが9.0以上の有機溶媒とを含有し、20℃での粘度が20Pa・s以下である流体状硬化材を使用することが開示されている。
【0005】
しかしながら、この流体状硬化材を上記したコンクリート構造物の断面欠損の修復の用途に使用した場合には、粘度が低いのでダレてしまい、断面欠損への充填性がなく、全く使用することができない。
【0006】
【特許文献1】特開2005−314140
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、コンクリート構造物の断面欠損の修復に用いる修復材であって、現場での計量、混合操作の必要がなく、修復作業において、ダレることなくコンクリート構造物の断面欠損部へ良好な充填ができ、水を噴霧することで硬化して強度発現する修復材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、セメントと、細骨材と、特定の沸点範囲の水溶性有機溶剤と、粘稠化材とをプレミックスした、20℃での粘度が特定範囲のゲル状修復材が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)セメントと、その全部又は一部が軽量細骨材である細骨材と、沸点が30〜100℃の水溶性有機溶剤と、粘稠化材とを含有し、20℃での粘度が500Pa・sを超え3000Pa・s以下であることを特徴とするコンクリート構造物断面欠損の修復材;
(2)単位セメント量500〜1200g/l、セメント100容積部に対して細骨材が50〜300容積部、沸点が30〜100℃の水溶性有機溶剤をセメント、細骨材の合計量に対し25〜55質量%、および粘稠化材を含有する上記(1)のコンクリート構造物断面欠損の修復材;
(3)清浄化した修復対象部に、上記(1)又は(2)の修復材を充填し、水を噴霧することを特徴とするコンクリート構造物断面欠損の修復工法;
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンクリート構造物断面欠損の修復材は、セメント、その全部又は一部が軽量細骨材である細骨材、水溶性有機溶剤、粘稠化材をプレミックスしたゲル状修復材であって、現場での計量、混合操作が必要なく、粉塵を発生することもない。そして、本発明のゲル状修復材は、修復作業時、ダレることなく(細骨材として軽量細骨材を必須成分とするため非ダレ特性にすぐれ、補修箇所が大きい場合でもダレることがない。)、コンクリート構造物の断面欠損部へ良好に充填ができ、水を噴霧することにより、噴霧水が水溶性有機溶剤と置き換わり、かつ水溶性有機溶剤が蒸発することにより、水とセメントの反応が起こり/促進され、硬化して強度が発現する。また、本発明の修復材は、水を含まないため、保管時、長期にわたって硬化せず、適切な粘度であるため、分離することもなく、良好な作業性が確保されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のコンクリート構造物断面欠損の修復材は、セメントと、その全部又は一部が軽量細骨材である細骨材と、特定の沸点範囲の水溶性有機溶剤と、粘稠化材とをプレミックスした特定粘度範囲のゲル状修復材である。
【0011】
本発明で使用されるセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントなどのポルトランドセメント;及び高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントなどの混合セメントが挙げられ、また、超速硬セメントとして、例えば、11(CaO)7(Al23)CaF2を主成分とする、いわゆるジェットセメント;ポルトランドセメントとアルミナセメントとせっこうの3成分から構成される超速硬セメント;アルミナセメント単体などが使用できる。
本発明においては、水溶性有機溶剤の存在によりセメントの水和が遅れるため、超速硬セメントの使用が好ましく、JIS R5201に準じて測定された硬化時間(終結時間)が1分〜60分程度の超速硬セメントであることが好ましい。また、硬化時間を調整するために、セメントの水和を早くする炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸リチウム、トリエタノールアミン及びギ酸カルシウムなどの硬化促進剤を併用することが好ましい。
本発明の修復材に使用されるセメントの配合量は、単位セメント量として500〜1200g/lであることが好ましく、さらに好ましくは600〜1000g/l、特に好ましくは700〜1000g/lであることが望ましい。
【0012】
本発明の修復材に使用される細骨材はその全部又は一部が軽量細骨材である。
軽量細骨材とは絶乾密度2.3未満の細骨材をいい、それら軽量細骨材としては、膨張頁岩、膨張粘土、膨張スレート、フライアッシュ等を主原料とした人工軽量細骨材(絶乾密度1.3未満)や、火山れきなどの天然軽量細骨材(絶乾密度1.3以上1.8未満)、膨張スラグなどの副産軽量細骨材(絶乾密度1.8以上2.3未満)を挙げることができる。
人工軽量細骨材の具体的な市販品としては、粉砕された頁岩を焼成して製造された角形の「メサライト」(商品名、日本メサライト工業(株)製、主成分:膨張頁岩)、「アサノライト」(商品名、太平洋マテリアル(株)製、主成分:膨張頁岩)、「フヨーライト」(商品名、芙蓉パーライト(株)製、主成分:黒曜石)等を挙げることができる。
また、本発明で使用される軽量細骨材の最大粒径は6mm以下で、該細骨材の平均粒径が0.1mm〜2.5mmのものが好ましい。
【0013】
本発明では、軽量細骨材とともに絶乾密度2.4〜3.0程度の普通細骨材を使用することができる。
普通細骨材としては、川砂、海砂、山砂、砕砂、3〜8号珪砂、石灰石、及びスラグ骨材等を使用することができ、特に、粗い骨材を含まない粒度調整した珪砂や石灰石等の細骨材を用いることが好ましく、乾燥した細骨材を用いることが好ましい。また、普通細骨材の最大粒径は6mm以下で、該細骨材の平均粒径が0.1mm〜2.5mmのものが好ましい。
【0014】
本発明の修復材において、その全部又は一部が軽量細骨材である細骨材の配合割合はセメント100容積部に対して50〜300容積部使用されることが好ましく、さらに好ましくは80〜250容積部、特に好ましくは100〜200容積部であることが望ましい。
軽量細骨材とともに普通細骨材を併用する場合、それらの配合割合は、軽量細骨材:普通細骨材の容積比が95:5〜30:70であることが好ましく、95:5〜50:50であることがより好ましく、95:5〜65:35であることがさらに好ましい。かかる容積比で普通細骨材を併用することにより、細骨材の比重増大によるダレ性の悪化がほとんどなしに、噴霧水と水溶性有機溶剤との置換性をよくすることができ、その置換時間が短縮される。
【0015】
本発明で使用される有機溶剤は、水溶性であり、沸点が30〜100℃のものである。修復作業時、噴霧水がセメントと反応するために、噴霧水と有機溶剤が混ざって置き換わってゆくよう有機溶剤は水溶性であることを要し、また、セメントと水との水和反応が進行し、硬化が進むためには、有機溶剤が速やかに蒸発するよう沸点が30〜100℃であることを要し、沸点が30〜80℃であることがより好ましい。
かかる水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノールなど低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどケトン類、酢酸エチルなどエステル類等が挙げられ、人体への影響などの点からエタノールが最も好ましく用いられる。
その配合割合は、セメント及び細骨材の合計量に対し25〜55質量%が好ましく、より好ましくは25〜45質量%、特に好ましくは、25〜40質量%とすることが望ましい。
水溶性有機溶剤量は、少なすぎるとゲル性状にできても粘性が高すぎて充填性、作業性が悪くなり、多すぎると粘性が低下しすぎて充填してもダレが生じ充填しても隙間が生じ、また、噴霧水との置き換わりに時間を要してセメントの水和反応(硬化反応)が遅くなる。
【0016】
本発明のゲル状修復材は、セメント、細骨材、沸点が30〜100℃の水溶性有機溶剤のみでは、セメントや細骨材が沈降して有機溶剤が分離して均一なゲル状態を維持できないため、粘稠化材を必須成分とする。
本発明に好適に用いられる粘稠化材として次のようなものを挙げることができる。
メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等、水溶性有機溶剤にも可溶のセルロース系水溶性高分子などの有機増粘剤;スメクタイト等、水溶性有機溶剤に分散可能な粘土鉱物などの無機増粘剤;炭酸カルシウム、ケイ酸質微粉末等、セメントスラリー分離防止能を有する無機微粉体などを用いることができる。これらのうち、増粘作用が大きいセルロース系水溶性高分子などの有機増粘剤は必ず用いられ、無機増粘剤、無機微粉体など他の粘稠化材をも併用することが好ましい。
また、主増粘剤である有機増粘剤は、2%濃度水溶液の20℃粘度が1000〜4000mPa・s程度の比較的高分子量のセルロース系水溶性高分子を使用するのが好ましい。
有機増粘剤であるセルロース系水溶性高分子は、通常、セメントと細骨材の合計100質量部に対し、0.1〜5質量部の範囲で配合される。また、無機増粘剤、無機微粉体を併用する場合は、セメントと細骨材の合計100質量部に対し、有機増粘剤0.1〜5.0質量部に加え、無機増粘剤0.2〜3.0質量部、無機微粉体1.0〜20.0質量部の範囲で添加するのが好ましい。
【0017】
本発明のゲル状修復材の粘度は、コンクリート構造物断面欠損部への充填性、作業性、及び修復材自体の分離安定性の観点から、20℃で500Pa・sを超え3000Pa・s以下であることを要する。この粘度が低すぎると、充填してもダレが生じ、また、修復材保存時に材料分離が起こる。一方、この粘度が高すぎると、欠損部へ隙間なく充填することが難しく、作業性が悪いゲルとなる。
かかる粘度は、粘稠化材の量を加減して粘度調整することができ、あるいは水溶性有機溶剤の量を加減して粘度調整することもできる。
【0018】
本発明のゲル状修復材には、さらにJIS A 6203に規定される再乳化型粉末樹脂を好ましく配合することができる。これら再乳化型粉末樹脂としては、例えば、メチルメタクリレート/ブチルアクリレートなどのポリアクリル酸エステル、スチレン/アクリル酸エステル系コポリマー、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステルコポリマー等の樹脂が挙げられる。
これら再乳化型粉末樹脂は、ゲル状修復材塗布後の噴霧水によって再乳化され、コンクリート構造物断面欠損への接着性、付着性を上げる効果がある。耐水性等の耐久性がすぐれるために、アクリル系の再乳化型粉末樹脂の使用が特に好ましい。
再乳化形粉末樹脂の再乳化液は、最低造膜温度が0℃以上であることが望ましい。最低造膜温度が0℃以上であることにより、コンクリートとの付着性がよく、また修復材の表面硬度が硬くなり、早期強度発現性に優れることとなる。
再乳化形粉末樹脂の配合量としては、セメントと細骨材の合計100質量部に対し、0.1〜5質量部が好ましい。
さらに、コンクリート構造物の修復対象部との色調整をする目的で、白色や黒色等の顔料を添加することができる。
【0019】
本発明は、コンクリート構造物断面欠損の修復工法を提供する。
それは、清浄化した修復対象部に、上記したゲル状修復材を充填し、水を噴霧するものである。
修復対象部であるコンクリート構造物断面欠損部をエアー又は水により、また場合によってはワイヤーブラシ等を用いて、浮き、脆弱部、ほこり等を除去して表面を清浄化して後、本発明のゲル状修復材をコテやヘラなどを使って充填する。その後、修復部を霧吹きにより水を噴霧する。噴霧水と沸点が30〜100℃の水溶性有機溶剤が混ざって置き換わってゆき、有機溶剤は蒸発して、セメントと水との水和反応が起こり、硬化が進行して強度発現する。結果、コンクリート構造物断面欠損が修復される。
【0020】
なお、本発明のゲル状修復材は、製造後、プラチューブ・ゴムチューブ・プラ容器・ガラス容器・金属管などの密閉容器中にて保管され、使用に供される。
【実施例】
【0021】
以下に本発明の実施例を挙げて、さらに詳しく本発明を説明する。
実施例1〜6
(1)ゲル状修復材の製造
[使用材料]
セメント:ライオンシスイ105(住友大阪セメント株式会社製)
軽量細骨材:フヨーライト特1号(芙蓉パーライト株式会社製)
細骨材:珪砂6号、7号、8号を同質量混合(土岐砿業株式会社製)
有機溶剤:試薬エタノール95.5%(関東化学株式会社製)
再乳化形粉末樹脂:モビリスパウダーDM2072P(ニチゴーモビニール株式会社製)
水溶性セルロース:ヒドロキシプロピルセルロースHPC−H(日本曹達株式会社製)
スメクタイト:ヘクトライトBENTONE CT(エレメンティスジャパン株式会社製)
炭酸カルシウム:LP200(近江鉱業株式会社製)
温度20℃、湿度60%に制御した室内で、上記材料を表1に示す所定量(単位:質量部)を計量した混合機(千代田技研工業株式会社製;オムニミキサOMN−15、容量15リットル)中に入れ、5分間混合してゲル状修復材を得た。
【0022】
(2)ゲル状修復材の物性の測定及び作業性等の評価
上記のようにゲル状修復材を製造し、その粘度の測定、材料分離の評価を、5、10、20、30℃の各温度の恒温槽を用いて下記のように行なった。
[粘度の測定]
500ccのビーカーにゲル状修復材試料を500cc入れ、所定温度に1日静置後、TV−10型粘度計(東機産業株式会社製;TVB−10M)を用い、ロータNo.7を使用し0.3rpm又は0.6rpmで測定した。
結果を第1表に示した。
[材料分離の評価]
透明ガラス製の高さ100mm・φ30mmの円筒容器に入れて各温度の恒温槽中に7日静置し、有機溶剤が上部に分離して浮いてくるかどうかにより評価した。
結果を第1表に示した。
○:分離なし
△:わずかに分離あり
×:分離あり
【0023】
充填性、作業性、硬化状況の評価、曲げ強度、圧縮強度、及び付着強度の測定を、ゲル状修復材を製造した室内において下記のように行なった。
なお、コンクリート欠損部(モデル)は、次のように作製した。
超早強セメント100重量部と、珪砂3号:5号を質量比で1:1の混合珪砂200重量部と、水60重量部と減水材1重量部の割合で、ハンドミキサーで混練し、そのモルタルを200×200×10mmの型枠に打設し、打設後にビニール(ラップ)で覆い、約10ヶ所においてビニール上面より注射器でモルタルとビニールの境目に空気を挿入し、それぞれ直径約10mm深さ3〜5mmの模擬的な欠損部を作製し、モルタルを硬化させた。モルタルの作製は温度20℃湿度85%RHに調整した室内で行い、モルタルは3時間後に脱型し、1日養生をおこなった。
【0024】
[充填性の評価]
ゲル状修復材試料をコンクリート欠損部にコテ・ヘラを使って充填した。その充填性を下記の基準で評価し、結果を第1表に示した。
○:垂直面・上面もダレが発生せず、欠損部へ隙間なく充填できた。
△:低粘度であり、垂直面はダレが発生しないが、上面ではダレが発生;又は高粘度のため欠損部へ隙間なく充填することが難しかった。
×:低粘度すぎて垂直面でもダレが発生;又は高粘度すぎて欠損部へ充填することが困難であった。
【0025】
[作業性の評価]
ゲル状修復材試料をコンクリート欠損部(モデル)にコテ・ヘラを使って充填した際の作業性を下記の基準で評価し、結果を第1表に示した。
○:コテやヘラ離れがよく、充填作業性が良好であった。
△:コテ・ヘラ離れがあまりよくなく、充填作業性が良好とはいえなかった。
×:コテ・ヘラ離れが悪く、充填作業性が不良であった。
【0026】
[硬化状況の評価]
ゲル状修復材試料をコンクリート欠損部(モデル)にコテ・ヘラを使って充填した後の硬化状況を下記の基準で評価し、結果を第1表に示した。
○:1cm厚に充填後12時間以内に硬化する。
△:1cm厚に充填後12〜24時間以内に硬化する。
×:1cm厚に充填後24時間以内に硬化しない。
【0027】
[曲げ強度及び圧縮強度の測定]
曲げ強度と圧縮強度は、それぞれ10mm×10mm×40mmと10mm×10mm×10mmの型枠中にゲル状修復材試料を充填し、水を噴霧して硬化させ、材齢3日において島津製作所株式会社製「オートグラフAG−G 50kN」を使用して測定した。
結果を第1表に示した。
【0028】
[付着強度の測定]
基板に40×40×10の型を置きヘラを用いて塗り込むようにゲル状修復材試料を充填し、水を噴霧して硬化させ供試体を作製し、JIS A 1171「ポリマーセメントモルタルの試験方法 7.3 接着強さ試験」に従い、材齢7日において丸菱科学機械製作所製「接着剥離試験機BA−800D」を使用して付着強度を測定した。
実施例1〜6すべての付着強度は1.0N/mm2以上であった。
【0029】
【表1】

【0030】
第1表の結果から、20℃での粘度が500Pa・sを超え3000Pa・s以下の範囲内である実施例1〜6の修復材は、充填性、作業性、硬化状況ともに良好であり、曲げ強度及び圧縮強度も十分な強度であることがわかる。そして、実施例1〜6の修復材は、5〜30℃において保存時の材料分離はほとんど見られず、保管時の良好な作業性も確保されている。
さらにこれら本発明の修復材は、5〜30℃における粘度の変化及び材料分離のデータからみて、ほぼ1年を通じて使用可能であることが知られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、その全部又は一部が軽量細骨材である細骨材と、沸点が30〜100℃の水溶性有機溶剤と、粘稠化材とを含有し、20℃での粘度が500Pa・sを超え3000Pa・s以下であることを特徴とするコンクリート構造物断面欠損の修復材。
【請求項2】
単位セメント量500〜1200g/l、セメント100容積部に対して細骨材が50〜300容積部、沸点が30〜100℃の水溶性有機溶剤をセメント、細骨材の合計量に対し25〜55質量%、および粘稠化材を含有する請求項1に記載のコンクリート構造物断面欠損の修復材。
【請求項3】
清浄化した修復対象部に、請求項1又は2に記載の修復材を充填し、水を噴霧することを特徴とするコンクリート構造物断面欠損の修復工法。

【公開番号】特開2008−156195(P2008−156195A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350075(P2006−350075)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【出願人】(000219934)エア・ウォーター・ゾル株式会社 (17)
【Fターム(参考)】