説明

コンクリート構造物用のゴム製マット

【課題】 アンカー部材の設置が簡単かつ短時間にでき、しかも運搬時などに邪魔にならず取り扱いも容易なコンクリート構造物用のゴム製マットを提供すること。
【解決手段】 ゴム製マット10に、アンカー部材12(13,14)を当該ゴム製マット10内に収納し得るアンカー部材収納部15を形成する一方、このアンカー部材収納部15にアンカー部材12を収納可能かつ突出させてコンクリート構造物と連結固定可能に装着してある。
これにより、運搬時や保管時などには、アンカー部材収納部15に収納することで、ゴム製マット10の表面を平坦にでき、アンカーとして機能させる場合には、アンカー部材収納部15から突き出すように操作することで、短時間で簡単に施工できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート構造物用のゴム製マットに関し、コンクリート構造物のひとつであるコンクリートケーソンやハイブリッドケーソンなどとケーソンマウンドとの間に敷設され、摩擦力を増大し、ケーソンの安定性を高めるもので、コンクリート構造物との連結強度を高めるアンカー部材の設置が容易で、しかも運搬時などに邪魔にならないようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造体のひとつに、例えば図9(a)に示すケーソンがあり、防波堤、岸壁、護岸などの堤体を構築する場合、地盤1上に捨石をして設けたケーソンマウンド2と、このケーソンマウンド2上に置くケーソン3との間に摩擦力を増大し、安定性を高めるためゴム製マット4を介在させることが行われている。
【0003】
このゴム製マットは、ケーソンの製作と同時に取り付けることが行われており、ゴム製マットとケーソンとの取り付け強度を高めるため、ゴム製マットに多数のアンカーを取り付けておき、打設するコンクリートに埋設して固定することが行われている。
【0004】
このようなアンカーを備えるゴム製マットとしては、例えば特許文献1に開示されたものでは、ゴム製マットに貫通孔とこの貫通孔の底部側に座ぐり部を形成し、座ぐり部からボルトを挿通してゴムマットの上面に突き出すようにしている。
【0005】
また、特許文献2には、ゴム製マットの底部側に座ぐり部を介して貫通孔を形成し、裏面側からボルトを挿通し、ゴム製マットの表面側からナットでゴム製マットを挟むように固定するとともに、ボルト上端にさらにナットを取り付けるようにしている。
【0006】
これらのアンカーでは、ゴム製マットの裏面側からの作業が多くなることから、これを改良するため、例えば図9(b)中に示すように、ゴム製マット4のアンカー5の取り付け位置に予め袋ナット6を埋設しておき、ゴム製マット4の表面側からアンカー5となるボルトをねじ込むことが行われている。
【特許文献1】特公平5−19617号公報
【特許文献2】実公平10−1951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、予め埋設した袋ナット6にボルトをねじ込んでアンカー5とする方式では、ゴム製マット4の表面側からアンカー5の取り付け作業ができるので、裏面側からの作業に比べ、作業能率を向上することができるものの、1箇所のボルトの取り付けに10回転位まわす必要があり、施工に多大な時間がかかるという問題がある。
【0008】
一方、工場などで予めゴム製マットにアンカーを取り付けておき、施工に要する時間を短縮しようとすると、ゴム製マットを重ねる場合にアンカーが邪魔になったり、運搬や施工の際の取り扱いが煩雑となるという問題がある。
【0009】
この発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、アンカー部材の設置が簡単かつ短時間にでき、しかも運搬時などに邪魔にならず取り扱いも容易なコンクリート構造物用のゴム製マットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためこの発明の請求項1記載のコンクリート構造物用のゴム製マットは、コンクリート構造体にアンカー部材を介して連結固定されるゴム製マットであって、前記ゴム製マットに、前記アンカー部材を当該ゴム製マット内に収納し得るアンカー部材収納部を形成する一方、このアンカー部材収納部に前記アンカー部材を収納可能かつ突出させて前記コンクリート構造物と連結固定可能に装着してなることを特徴とするものである。
【0011】
このコンクリート構造物用のゴム製マットによれば、ゴム製マットに、アンカー部材を当該ゴム製マット内に収納し得るアンカー部材収納部を形成する一方、このアンカー部材収納部に前記アンカー部材を収納可能かつ突出させてコンクリート構造物と連結固定可能に装着してあり、運搬時や保管時などには、アンカー部材収納部に収納することで、ゴム製マット表面を平坦にでき、アンカーとして機能させる場合には、アンカー部材収納部から突き出すように操作することで、短時間で簡単に施工できるようになる。
【0012】
また、この発明の請求項2記載のコンクリート構造物用のゴム製マットは、請求項1記載の構成に加え、前記アンカー部材を、前記アンカー部材収納部に固定される固定用部材と、この固定用部材に取り付けられ収納可能かつ突出させて前記コンクリート構造物に連結固定される連結用アンカー部材とで構成してなることを特徴とするものである。
【0013】
このコンクリート構造物用のゴム製マットによれば、前記アンカー部材を、前記アンカー部材収納部に固定される固定用部材と、この固定用部材に取り付けられ収納可能かつ突出させて前記コンクリート構造物に連結固定される連結用アンカー部材とで構成してあり、固定用部材をゴム製マット内に収納状態で取り付けておき、この固定用部材に取り付けた連結用アンカー部材を収納状態としたり、突出させた連結固定状態にでき、一層、短時間かつ簡単に操作できるようになる。
【0014】
さらに、この発明の請求項3記載のコンクリート構造物用のゴム製マットは、請求項2記載の構成に加え、前記固定用部材に、前記連結用アンカー部材の基端部を回動可能に連結して構成してなることを特徴とするものである。
【0015】
このコンクリート構造物用のゴム製マットによれば、前記固定用部材に、前記連結用アンカー部材の基端部を回動可能に連結して構成してあり、固定用部材に対して連結用アンカー部材を回動することで、収納状態にしたり、突出させた連結固定状態にでき、回動だけで簡単に操作できるようになる。
【0016】
また、この発明の請求項4記載のコンクリート構造物用のゴム製マットは、請求項2記載の構成に加え、前記アンカー部材を、前記固定用部材と、この固定用部材に両端部が回動可能に支持されるアンカー取付部材と、このアンカー取付部材に取り付けられる前記連結用アンカー部材とで構成し、これら固定用部材およびアンカー取付部材を、前記ゴム製マットへの前記アンカー部材収納部の形成とともに埋設してなることを特徴とするものである。
【0017】
このコンクリート構造物用のゴム製マットによれば、前記アンカー部材を、前記固定用部材と、この固定用部材に両端部が回動可能に支持されるアンカー取付部材と、このアンカー取付部材に取り付けられる前記連結用アンカー部材とで構成し、これら固定用部材およびアンカー取付部材を、前記ゴム製マットへの前記アンカー部材収納部の形成とともに埋設してあり、ゴム製マットの製作時に固定用部材およびアンカー取付部材を埋設することで、工場で製作取付でき、寸法精度が高く、大きなアンカー部材収納部とすることもでき、連結用アンカー部材を収納状態から突出状態にすることが容易となるとともに、この部分にコンクリートが入り込むので強固に連結することができるようになる。
【0018】
さらに、この発明の請求項5記載のコンクリート構造物用のゴム製マットは、請求項2記載の構成に加え、前記固定用部材に、前記連結用アンカー部材を伸縮可能に連結してなることを特徴とするものである。
【0019】
このコンクリート構造物用のゴム製マットによれば、前記固定用部材に、前記連結用アンカー部材を伸縮可能に連結してあり、固定用部材に対して連結用アンカー部材を伸縮することで、収納状態にしたり、突出させた連結固定状態にでき、引き出したり押し込むだけで簡単に操作できるようになる。
【0020】
また、この発明の請求項6記載のコンクリート構造物用のゴム製マットは、請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加え、前記アンカー部材または前記連結用アンカー部材に、突出状態を保持する突出保持手段を設けたことを特徴とするものである。
【0021】
このコンクリート構造物用のゴム製マットによれば、前記アンカー部材または前記連結用アンカー部材に、突出状態を保持する突出保持手段を設けてあり、打設されるコンクリートで収納状態に戻らないようにし、突き出した連結固定状態を確実に保持できるようになる。
【発明の効果】
【0022】
この発明の請求項1記載のコンクリート構造物用のゴム製マットによれば、ゴム製マットに、アンカー部材を当該ゴム製マット内に収納し得るアンカー部材収納部を形成する一方、このアンカー部材収納部に前記アンカー部材を収納可能かつ突出させてコンクリート構造物と連結固定可能に装着したので、運搬時や保管時などには、アンカー部材収納部に収納することで、ゴム製マット表面を平坦にすることができ、アンカーとして機能させる場合には、アンカー部材収納部から突き出すように操作することで、短時間で簡単に施工することができる。
【0023】
また、この発明の請求項2記載のコンクリート構造物用のゴム製マットによれば、前記アンカー部材を、前記アンカー部材収納部に固定される固定用部材と、この固定用部材に取り付けられ収納可能かつ突出させて前記コンクリート構造物に連結固定される連結用アンカー部材とで構成したので、固定用部材をゴム製マット内に収納状態で取り付けておき、この固定用部材に取り付けた連結用アンカー部材を収納状態としたり、突出させた連結固定状態にすることができ、一層、短時間かつ簡単に操作することができる。
【0024】
さらに、この発明の請求項3記載のコンクリート構造物用のゴム製マットによれば、前記固定用部材に、前記連結用アンカー部材の基端部を回動可能に連結して構成したので、固定用部材に対して連結用アンカー部材を回動することで、収納状態にしたり、突出させた連結固定状態にすることができ、回動だけで簡単に操作することができる。
【0025】
また、この発明の請求項4記載のコンクリート構造物用のゴム製マットによれば、前記アンカー部材を、前記固定用部材と、この固定用部材に両端部が回動可能に支持されるアンカー取付部材と、このアンカー取付部材に取り付けられる前記連結用アンカー部材とで構成し、これら固定用部材およびアンカー取付部材を、前記ゴム製マットへの前記アンカー部材収納部の形成とともに埋設したので、ゴム製マットの製作時に固定用部材およびアンカー取付部材を埋設することで、工場で製作取付することができ、寸法精度が高く、大きなアンカー部材収納部とすることもでき、これにより、連結用アンカー部材を収納状態から突出状態にすることが容易となるとともに、この部分にコンクリートが入り込むので強固に連結することができる。
【0026】
さらに、この発明の請求項5記載のコンクリート構造物用のゴム製マットによれば、前記固定用部材に、前記連結用アンカー部材を伸縮可能に連結したので、固定用部材に対して連結用アンカー部材を伸縮することで、収納状態にしたり、突出させた連結固定状態にすることができ、引き出したり押し込むだけで簡単に操作することができる。
【0027】
また、この発明の請求項6記載のコンクリート構造物用のゴム製マットによれば、前記アンカー部材または前記連結用アンカー部材に、突出状態を保持する突出保持手段を設けたので、打設されるコンクリートで収納状態に戻らないようにすることができ、突き出した連結固定状態を確実に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、この発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
図1はこの発明のコンクリート構造物用ゴム製マットをケーソンマットに適用した一実施の形態にかかり、(a)は収納状態の平面図および正面図、(b)は突出させた連結固定状態の平面図および正面図である。
【0029】
このコンクリート構造物用のゴム製マット10は、既に図7で説明したように、例えばケーソンマットとして使用され、ケーソンの製作時、コンクリート型枠の底部に敷かれるゴム板状マット11と、このゴム板状マット11に多数取り付けられコンクリートに埋設されることで連結固定されるアンカー部材12とを備えて構成されており、ゴム板状マット11にアンカー部材12を取り付けた状態でアンカー部材12が邪魔にならないように積み重ねて運搬することができ、コンクリート型枠の底部に敷いた後コンクリートの打設前には、アンカー部材12をゴム板状マット11から簡単に突出した状態にできるようになっている。
【0030】
このケーソンマットして使用されるゴム製マット10では、アンカー部材12がゴム板状マット11内に固定される固定用部材13と、この固定用部材13に回動可能に取り付けられて倒すことで収納され、起こすことで突出させることができる連結用アンカー部材14とで構成してある。
【0031】
このアンカー部材12を構成する固定用部材13は、図2(a)に上部および下部からの斜視状態を、同図(b)に平面、正面、右側面状態をそれぞれ示すように、金属製または合成樹脂製の例えば一体成形品とされ、左右フランジ部13a、13aとその中央部の後方フランジ部13bとが一平面をなすように略T字状に配置され、左右フランジ部13a,13aの間に前方に開口する水平断面がU字状の回動支持部13cが形成され、この回動支持部13cのU字状の上端部から後方に突出して後方フランジ部13bが配置された状態で一体成形されている。そして、U字状の対向する回動支持部13cにピン取付孔13dが形成され、回動ピン13eの両端を支持できるようにしてある。
【0032】
この固定用部材13に回動可能に取り付けられる連結用アンカー部材14は、金属製、あるいは合成樹脂製の板材をL字状に成形して構成され、支柱部14aと先端部の交差突出部14bとを備え、支柱部14aの基端部にピン孔14cが形成してある。
【0033】
そして、固定用部材13の回動支持部13cの間に連結用アンカー部14の支柱部14aの基端部が挿入され、回動ピン13eをピン取付孔13dおよびピン孔14cに入れることで回動可能に連結され、アンカー部材12が構成される。
【0034】
そして、ゴム製マット10のゴム板状マット11には、これら固定用部材13と連結用アンカー部材14を倒した状態で収納することができるアンカー部材収納部15がゴム板状マット11の表面に開口した凹部として形成してある。このアンカー部材収納部15は、少なくとも固定用部材13と連結用アンカー部材14とを連結して倒した状態でゴム板状マット11の表面と面一状態となり、ゴム板状マット11の表面が平坦となるように形成すれば良く、余裕のある大きさに形成しても良い。
【0035】
このように構成したゴム製マット10では、ゴム板状マット11に必要個数のアンカー部材収納部15を形成し、各アンカー部材収納部15にそれぞれ、固定用部材13に連結用アンカー部材14を連結したアンカー部材12を装着し、連結用アンカー部材14を倒した状態にして収納する。
【0036】
こうしてゴム製マット10を運搬したり、積み重ねることで、ゴム板状マット11だけの場合と同様に、アンカー部材12が突出して邪魔になることもなく、取り扱いが容易となるとともに、敷設の際の歩行なども障害がなく、容易に施工できる。また、保管スペースが少なくて済むとともに、アンカー部材12が収納されているので、損傷を防止することができる。
【0037】
一方、ケーソン製作時、ケーソンの底部に対応してゴム製マット10を敷設した後、固定用部材13に対して連結用アンカー部材14を起こすように回動し、ゴム板状マット11から上方に突き出した状態とする。
【0038】
このように連結用アンカー部材14を回動して起すだけで、アンカーを設置することができ、従来のボルトをねじ込む場合に比べ簡単かつ短時間にアンカーを設置することができる。
【0039】
こののち、コンクリートを打設することで、コンクリート内にアンカー部材12が埋設され、ゴム製マット10がケーソンに強固に連結固定される。
【0040】
なお、このゴム製マット10では、固定用部材13に対して回動してゴム板状マット11から突き出すようにした連結用アンカー部材14が転倒して収納状態にならないようにするため突出保持手段16が設けられ、連結用アンカー部材14を起した連結固定状態で、連結用アンカー部材14の下端部がゴム板状マット11の表面に押し付けられるように膨らみ部16aが形成してあり、例えば2mm程度膨らませて押しつけるようにしてある。
【0041】
この突出保持手段16の膨らみ部16aにより、固定用部材13に対して回動した連結用アンカー部材14を確実にゴム板状マット11から突出した状態に保持することができる。
【0042】
次ぎに、この発明の他の一実施の形態について、図3により説明する。
図3はこの発明のコンクリート構造物用ゴム製マットをケーソンマットに適用した一実施の形態にかかり、(a)は収納状態の平面図および正面図、(b)は突出させた連結固定状態の平面図および正面図である。
【0043】
このゴム製マット10Aでは、すでに説明したゴム製マット10の固定用部材13の上下を反転して設置したもので、左右フランジ部13a,13aおよび後方フランジ部13bをアンカー部材収納部15の底部に設置するようにしてあり、他の構成は、ゴム製マット10と同一であるので、重複する説明は省略する。
【0044】
このゴム製マット10Aによってもゴム製マット10と同一の作用効果を奏し、運搬時や保管時などには、アンカー部材収納部に収納することで、ゴム製マット表面を平坦にすることができ、アンカーとして機能させる場合には、アンカー部材収納部から突き出すように操作することで、短時間で簡単に施工することができる。
【0045】
また,このゴム製マット10Aによれば、左右フランジ部13a,13aおよび後方フランジ部13bをゴム板状マット11に形成した溝に挟むようにすることで、ゴム板状マット11への装着強度が向上し、確実に装着しておくことができる。
【0046】
次ぎに、この発明のさらに他の一実施の形態について、図4により説明する。
図4はこの発明のコンクリート構造物用ゴム製マットをケーソンマットに適用した一実施の形態にかかり、(a)は収納状態の平面図および正面図、(b)は突出させた連結固定状態の平面図および正面図である。
【0047】
このゴム製マット10Bでは、すでに説明したゴム製マット10、10Aの固定用部材13を簡素化したもので、円柱状の棒材で構成した固定用部材13Aを備えるものである。
【0048】
この円柱状の棒材の固定用部材13Aの中央部に連結用アンカー部材14のピン孔14cが位置するように装着してある。
【0049】
また、このゴム製マット10Bでは、突出保持機構16として連結用アンカー部材14の支柱部14aに金属製や合成樹脂製の保持板材16bの端部の一部分が溶接などの溶接部16cで取り付けてあり、溶接部16cなどを基点として外側に折り曲げて突き出すようにし、ゴム板状マット11の表面に当てることで、転倒せず突出状態を保持できるようにしてある。
【0050】
なお、他の構成は、ゴム製マット10、10Aと同一であるので、重複する説明は省略する。
【0051】
このゴム製マット10Bによってもゴム製マット10、10Aと同一の作用効果を奏し、運搬時や保管時などには、アンカー部材収納部に収納することで、ゴム製マット表面を平坦にすることができ、アンカーとして機能させる場合には、アンカー部材収納部から突き出すように操作することで、短時間で簡単に施工することができる。
【0052】
また,このゴム製マット10Bによれば、固定用部材13Aが簡素化され、製作が容易となるとともに、安価となる。
【0053】
次ぎに、この発明のさらに他の一実施の形態について、図5により説明する。
図5はこの発明のコンクリート構造物用ゴム製マットをケーソンマットに適用した一実施の形態にかかり、(a)は収納状態の概略斜視図、(b)は突出させた連結固定状態の正面図である。
【0054】
このケーソンマットして使用されるゴム製マット10Cでは、アンカー部材12を構成するゴム板状マット11内に固定される固定用部材13Cが、図5(a)に斜視状態を示すように、金属製または合成樹脂製の例えば一体成形品とされ、左右フランジ部13a、13aとその後方フランジ部13bとが一平面をなすように略T字状に配置され、左右フランジ部13a,13aの間に上方に開口する垂直断面がU字状の開口部13fが形成されるとともに、左右フランジ部13a,13aおよび開口部13fの後端に連続して略逆Ω字状の回動支持部13cが形成されて後方フランジ部13bが後方に突き出すように配置された状態で一体成形されている。そして、回動支持部13cの略逆Ω字状の部分に回動軸13gが装着してあり、中央部に形成した図示しない連結穴が開口部13fに位置するようにしてある。この連結穴には、雌ねじを形成したり、単に穴だけとしてある。
【0055】
この固定用部材13Cに回動可能に取り付けられる連結用アンカー部材14Cは、金属製、あるいは合成樹脂製の丸棒材を略T字状に成形して構成され、支柱部14aと先端部の交差突出部14bとを備えるとともに、支柱部14aの基端が固定用部材13Cの連結穴に連結できるようにしてあり、雄ねじを形成したり、単に押し込んで連結するようにしてある。
【0056】
したがって、このゴム製マット10Cでは、固定用部材13Cの回動支持部13cの回動軸13gの連結穴に、連結用アンカー部材14Cの支柱部14aの基端部を挿入して連結することで、回動軸13gを中心に連結用アンカー部材14Cが回動可能に連結され、アンカー部材12が構成される。
【0057】
そして、ゴム製マット10Cのゴム板状マット11には、これら固定用部材13Cと連結用アンカー部材14Cを倒した状態で表面が平坦となるように収納することができるアンカー部材収納部15Cがゴム板状マット11の表面に開口した凹部として形成される。
【0058】
なお、このアンカー部材収納部15Cも、少なくとも固定用部材13Cと連結用アンカー部材14Cとを連結して倒した状態でゴム板状マット11の表面と面一状態で収納できるように形成すれば良く、余裕のある大きさに形成しても良い。
【0059】
このように構成したゴム製マット10Cでもゴム製マット10、10A、10Bと同一の作用効果を奏し、運搬時や保管時などには、アンカー部材収納部に収納することで、ゴム製マット表面を平坦にすることができ、アンカーとして機能させる場合には、アンカー部材収納部から突き出すように操作することで、短時間で簡単に施工することができる。
【0060】
次ぎに、この発明の他の一実施の形態について、図6により説明する。
図6はこの発明のコンクリート構造物用ゴム製マットをケーソンマットに適用した一実施の形態にかかり、(a)は収納状態の断面図、(b)は突出させた連結固定状態の断面図である。
【0061】
このケーソンマットして使用されるゴム製マット10Dでは、アンカー部材12がゴム板状マット11内に固定される固定用部材13Dと、この固定用部材13Dに伸縮可能に取り付けられて収縮状態とすることで収納され、引き出して伸長させることで突出させた連結固定状態にできる連結用アンカー部材14Dとで構成してある。
【0062】
このアンカー部材12を構成する固定用部材13Dと連結用アンカー部材14Dが上端部に向って細くなる円筒体で構成されて、上方のものを下方のものの内側に収納できるようにしてあり、上下端に円板が取り付けられ塞がれている。
【0063】
このような複数の円筒体のうち基端部の円筒体が固定用部材13Dとされ、これに連結される上方の複数の円筒体が連結用アンカー部材14Dとされる。
【0064】
そして、ゴム製マット10のゴム板状マット11には、これら固定用部材13Dと連結用アンカー部材14Dを収縮させた状態で表面が平坦となるように収納することができるアンカー部材収納部15がゴム板状マット11の表面に開口した凹部として形成してある。
【0065】
なお、このアンカー部材収納部15も、少なくとも固定用部材13Dをゴム板状マット11の表面と面一状態で収納できるように形成すれば良く、余裕のある大きさに形成しても良い。
【0066】
このように構成したゴム製マット10Dでは、ゴム板状マット11に必要個数のアンカー部材収納部15を形成し、各アンカー部材収納部15にそれぞれ、固定用部材13Dに連結用アンカー部材14Dを連結したアンカー部材12を装着し、収縮させた状態にして収納する。
【0067】
こうしてゴム製マット10Dを運搬したり、積み重ねることで、ゴム板状マット11だけの場合と同様に、アンカー部材12が突出して邪魔になることもなく、取り扱いが容易となるとともに、敷設の際の歩行なども障害がなく、容易に施工できる。また、保管スペースが少なくて済むとともに、アンカー部材12が収納されているので、損傷を防止することができる。
【0068】
一方、ケーソン製作時、ケーソンの底部に対応してゴム製マット10Dを敷設した後、固定用部材13Dに対して連結用アンカー部材14Dを引き出すように伸長させ、ゴム板状マット11から上方に突き出した状態とする。
【0069】
このように連結用アンカー部材14Dを引き出して突出させるだけで、アンカーを設置することができ、従来のボルトをねじ込む場合に比べ簡単かつ短時間にアンカーを設置することができる。
【0070】
こののち、コンクリートを打設することで、コンクリート内にアンカー部材12が埋設され、ゴム製マット10Dがケーソンに強固に連結固定される。
【0071】
次ぎに、この発明の他の一実施の形態について、図7および図8により説明する。
図7および図8は、この発明のコンクリート構造物用ゴム製マットをケーソンマットに適用した一実施の形態にかかり、図7(a)は収納状態の概略斜視図、同(b)は突出させた連結固定状態の断面図、同(c)はアンカー取付部材の状態の説明図、図8はゴム製マット製作時のアンカー部材などの分解斜視図である。
【0072】
このケーソンマットとして使用されるゴム製マット10Eでは、アンカー部材12が、固定用部材13Eと、この固定用部材13Eに両端部が回動可能に支持されるアンカー取付部材17と、このアンカー取付部材17に取り付けられる連結用アンカー部材14Eとで構成してあり、これら固定用部材13Eおよびアンカー取付部材17は、予めゴム板状マット11へのアンカー部材収納部15の形成とともに埋設して取り付けるようにし、連結用アンカー部材14Eを後で取り付けてアンカー部材収納部15に収納して運搬される。
【0073】
このアンカー部材12の固定用部材13Eは、図8に示すように、中空円筒状に形成され、先端部外周に僅かに突き出すフランジ部が形成され、アンカー取付部材17の端部が挿入され、回動可能に支持する。
【0074】
また、アンカー取付部材17は、図8に示すように、両端部が小径円柱状とされて固定用部材13Eに挿入される回動支持部17aとされ、中間部には、上部(連結用アンカー部材を上方に突き出して使用する状態で上部)に連結用アンカー部材14Eを取り付ける底付きの取付穴17bが下方に向けて形成されて雌ねじが形成してあり、下部(連結用アンカー部材を上方に突き出して使用する状態で下部)は円柱側面を削り落とした水平な平坦面17cとしてある。
【0075】
連結用アンカー部材14Eは、丸棒をL字状に曲げ加工したもので、取り付け状態の下部となる端部に雄ねじが形成してあり、アンカー取付部材17の取付穴17bにねじ込んで固定できるようにしてある。
【0076】
したがって、ゴム板状マット11に埋設固定した固定用部材13Eに両端部を支持した状態でアンカー取付部材17を取り付けておき、アンカー部材収納部15に位置するアンカー取付部材17の取付穴17bに連結用アンカー部材14Eの雄ねじをねじ込んで固定することで、連結用アンカー部材14Eをアンカー部材収納部15に収納してゴム面より飛び出さないようにしたり、引き起こして突き出してアンカーとして機能させることができる。
【0077】
このようなアンカー部材12を備えるゴム板状マット11の製作時には、図8に示すように、アンカー部材収納部15を確保するための収納部用コア18が用いられ、アンカー取付部材17の中間部と連結用アンカー部材14Eを、余裕を持って収納できる空間を確保できるように大きさおよび形状が設定してある。
【0078】
そして、この収納部用コア18には、アンカー取付部材17を装着する装着孔18aが形成され、この装着孔18aにアンカー取付部材17の中間部を装着したときに平坦面17cが露出してアンカー部材収納部15の底面を形成できるように装着孔18aの底部に開口部18bが形成してある。
【0079】
このような収納部用コア18を用いるゴム板状マット11の製作時には、収納部用コア18の装着孔18aにアンカー取付部材17を装着し、開口部18bを平坦面17cで塞ぐようにするとともに、収納部用コア18から突き出た回動支持部17aに固定用部材13Eを装着してセットする。
【0080】
こうして所定個数がセットされたゴム板状マット11が製作された後、収納部用コア18を取り去り、アンカー取付部材17に連結用アンカー部材14Eをねじ込んで固定した後に、アンカー部材収納部15に倒しこんでゴム面より飛び出さないようにしてゴム製マット10Eが完成し、この状態で工場から出荷し、運搬する。
【0081】
このゴム製マット10Eの運搬の際には、図7(c)に示すように、ゴム板状マット11の製作の際、アンカー取付部材17の平坦面17cでアンカー部材収納部15の底面が平坦に形成してある(同図左端参照)のに対し、アンカー取付部材17に連結用アンカー部材14Eを連結して倒した収納・運搬状態では、アンカー取付部材17の円筒側面がゴム板状マット11の平坦な底面を圧縮して固定状態を保持するように作用する(同図中央参照)。
【0082】
一方、施工現場では、アンカー部材収納部15の余裕のある空間を利用し、連結用アンカー部材14Eを上方に突き出すようにして設置する。この連結用アンカー部材14Eを立ててアンカーとして機能させる場合には、アンカー取付部17の平坦面17cとゴム板状マット11の平坦な底面とが接触し、転倒を防止することができる(図7(c)右端参照)。
【0083】
したがって、アンカー取付部材17の平坦面17cによって形成されるゴム板状マット11の平坦面とアンカー取付部材17の円筒側面および平坦面17cで突出保持手段を構成している。
【0084】
このようなゴム製マット10Eによれば、アンカー取付部材17および両端の固定用部材13Eがコンパクトで構造も簡素化され、安価である。
【0085】
また、連結用アンカー部材14Eをゴム板状マット11の製作後に工場で取り付ければ良く、ゴム製マット10Eの製作が容易であり、工場で寸法精度を確保して製作することができる。
【0086】
さらに、固定用部材13Eとアンカー取付部材17がゴム板状マット11の製作時に埋設するので、強固に取り付けることができる。
【0087】
また、収納部用コア18でアンカー部材収納部15を形成するので、空間の確保が自由にでき、大きな空間を確保することで、連結用アンカー部材12Eを上方に突き出すように起こす作業が簡単にできるとともに、この空間にコンクリートが打設されるので、函体との連結強度が高く、せん断力に対しても強度が向上する。
【0088】
このように構成したゴム製マット10Eでも、ゴム製マット10、10A、10B、10C,10Dと同一の作用効果を奏し、運搬時や保管時などには、アンカー部材収納部に収納することで、ゴム製マット表面を平坦にすることができ、アンカーとして機能させる場合には、アンカー部材収納部から突き出すように操作することで、短時間で簡単に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】この発明のコンクリート構造物用ゴム製マットをケーソンマットに適用した一実施の形態にかかり、(a)は収納状態の平面図および正面図、(b)は突出させた連結固定状態の平面図および正面図である。
【図2】この発明のコンクリート構造物用ゴム製マットをケーソンマットに適用した一実施の形態にかかり、(a)はアンカー部材を構成する固定用部材13の上部および下部からの斜視図、(b)は平面図、正面図および右側面図である。
【図3】この発明のコンクリート構造物用ゴム製マットをケーソンマットに適用した一実施の形態にかかり、(a)は収納状態の平面図および正面図、(b)は突出させた連結固定状態の平面図および正面図である。
【図4】この発明のコンクリート構造物用ゴム製マットをケーソンマットに適用した一実施の形態にかかり、(a)は収納状態の平面図および正面図、(b)は突出させた連結固定状態の平面図および正面図である。
【図5】この発明のコンクリート構造物用ゴム製マットをケーソンマットに適用した一実施の形態にかかり、(a)は収納状態の概略斜視図、(b)は突出させた連結固定状態の正面図である。
【図6】この発明のコンクリート構造物用ゴム製マットをケーソンマットに適用した一実施の形態にかかり、(a)は収納状態の断面図、(b)は突出させた連結固定状態の断面図である。
【図7】この発明のコンクリート構造物用ゴム製マットをケーソンマットに適用した一実施の形態にかかり、(a)は収納状態の概略斜視図、(b)は突出させた連結固定状態の断面図、(c)はアンカー取付部材の状態の説明図である。
【図8】この発明のコンクリート構造物用ゴム製マットをケーソンマットに適用した一実施の形態にかかるゴム製マット製作時のアンカー部材などの分解斜視図である。
【図9】この発明のコンクリート構造物用ゴム製マットの適用対象であるケーソンマットの使用状態の概略斜視図およびケーソン製作状態での部分拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0090】
1 地盤
2 ケーソンマウンド
3 ケーソン(コンクリート構造物)
4 ゴム製マット
10 コンクリート構造体用のゴム製マット(ケーソンマット)
11 ゴム板状マット
12 アンカー部材(13,14)
13 固定用部材
13a 左右フランジ部
13b 後方フランジ部
13c 回動支持部
13d ピン取付孔
13e 回動ピン
13f 開口部
13g 回動軸
14 連結用アンカー部材
14a 支柱部
14b 交差突出部
14c ピン孔
15 アンカー部材収納部
16 突出保持手段
16a 膨らみ部
16b 保持板部
16c 溶接部
17 アンカー取付部材
17a 回動支持部
17b 装着穴
17c 平坦面
18 収納部用コア
18a 装着孔
18b 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造体にアンカー部材を介して連結固定されるゴム製マットであって、
前記ゴム製マットに、前記アンカー部材を当該ゴム製マット内に収納し得るアンカー部材収納部を形成する一方、このアンカー部材収納部に前記アンカー部材を収納可能かつ突出させて前記コンクリート構造物と連結固定可能に装着してなることを特徴とするコンクリート構造物用のゴム製マット。
【請求項2】
前記アンカー部材を、前記アンカー部材収納部に固定される固定用部材と、この固定用部材に取り付けられ収納可能かつ突出させて前記コンクリート構造物に連結固定される連結用アンカー部材とで構成してなることを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物用のゴム製マット。
【請求項3】
前記固定用部材に、前記連結用アンカー部材の基端部を回動可能に連結して構成してなることを特徴とする請求項2記載のコンクリート構造物用のゴム製マット。
【請求項4】
前記アンカー部材を、前記固定用部材と、この固定用部材に両端部が回動可能に支持されるアンカー取付部材と、このアンカー取付部材に取り付けられる前記連結用アンカー部材とで構成し、これら固定用部材およびアンカー取付部材を、前記ゴム製マットへの前記アンカー部材収納部の形成とともに埋設してなることを特徴とする請求項2記載のコンクリート構造物用のゴム製マット。
【請求項5】
前記固定用部材に、前記連結用アンカー部材を伸縮可能に連結してなることを特徴とする請求項2記載のコンクリート構造物用のゴム製マット。
【請求項6】
前記アンカー部材または前記連結用アンカー部材に、突出状態を保持する突出保持手段を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のコンクリート構造物用のゴム製マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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