説明

コンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物及びこれを用いたコンクリート片及びタイルの剥落を防止する方法

【課題】コテ、ハケ塗りができて塗布作業に優れ、反応硬化後の塗膜は透明な樹脂塗膜を形成し、トップコートなしで耐候性に優れた高強度樹脂塗膜を形成することができ、かつ、コンクリート構造物のメンテナンスにおけるコンクリートの劣化診断が目視により容易にでき、ビル等の建築物のタイル仕上げ外壁の既存の外観を維持でき、施工時周囲への飛散のない、コンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物およびこれを用いたコンクリート片及びタイルの剥落防止方法を提供する。
【解決手段】イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)と揺変性付与剤(B)とを含有する、コンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物を用い、これからなる樹脂塗膜を含む補強層をコンクリート構造物又はタイルを張り付けた壁面の表面に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物及びタイルを張り付けた壁面の表面に補強層を形成してコンクリート片及びタイルの剥落を防止するために用いる一成分型ポリウレタン樹脂組成物、および該一成分型ポリウレタン樹脂組成物を用いるコンクリート片及びタイルの剥落防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年コンクリート構造物におけるコンクリート片の落下が問題となっている。例えば、トンネル内、高速道路橋脚、鉄道橋脚、橋梁などからのコンクリート片の落下である。コンクリート片の落下は、コンクリートの表面が何らかの劣化因子によって部分的に母体から剥離し、または剥離が進行してコンクリート片として剥落することを意味している。コンクリート片の落下等の原因は様々な要因が指摘されており、施工時に発生するひび割れ、コールドジョイント等の初期欠陥に基づくと思われるもの、地震などの衝撃によるひび割れ剥離などの損傷によると思われるもの、及びコンクリート構造物建築後の中性化、塩害、アルカリ骨材反応などによる劣化と思われるものなどが一般に知られている。また、ビル等の建築物の外壁面にタイルを張り付けた構造物においても、経年劣化等によるタイルの落下が問題になっている。
【0003】
これらのコンクリート構造物からのコンクリート片の落下を防止するため、従来コンクリート構造物の表面に接着剤を介してガラス繊維、炭素繊維などの繊維からなるクロスを貼り付け、さらにこの上にエポキシ樹脂などを塗布して樹脂中に繊維シートを埋めた構成の補強層を形成したものが多くみられる。しかしながら、これらの工法は、工程数が多く、施工時間の短縮や低コスト化が難しい、また、シートをコンクリート構造物の表面に馴染ませ貼り付ける作業に時間がかかるため作業効率が悪く熟練を要する、また接着剤の硬化に長時間を必要とし施工時間の短縮が難しく工事の影響が大きい、などの問題点がみられる(特許文献1)。
【0004】
また、近年補強剤を用いないコンクリート片の落下防止法が開発されている。速硬化性のウレタン樹脂やウレア樹脂の保護材を特殊な装置を用いて吹き付けるスプレー工法であり、コンクリート構造物表面に高硬度樹脂膜を短い工期で形成するものである。しかしながら、特殊な塗布装置が必要であること、吹き付けの際保護材の周囲への飛散が問題となっている。
【0005】
さらに、コンクリート片剥落事故防止のため使用されている様々な補強材や保護材は不透明であるため、施工後のメンテナンスにおけるコンクリートの劣化やひび割れの目視劣化診断が困難となったり、時間と手間がかかったり、美観上見苦しい仕上がりとなる、などの問題がある(特許文献2、3)。
【0006】
また、ビル等の建築物の外壁面にタイルを張り付けた構造物からのタイルの落下を防止するために、前記の従来公知のコンクリート片剥落事故防止法を用いると、タイル仕上げの外壁の外観が既存のものと異なってしまうという問題もある。
【0007】
混合の手間が要らず、従って混合不良等のリスクのない一成分型で反応硬化性を有し、特殊な塗装装置を必要とせず、コテ、ハケ塗りができて塗布作業に優れ、反応硬化後の塗膜は透明な樹脂塗膜とすることができ、トップコートなしで耐候性に優れた高強度樹脂塗膜を形成することができる、コンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物およびこれを用いたコンクリート片及びタイルの剥落防止方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−59937号公報
【特許文献2】特開2005−213844号公報
【特許文献3】特開2006−1812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
コテ、ハケ塗りができて塗布作業に優れ、反応硬化後の塗膜は透明な樹脂塗膜とすることができ、トップコートなしで耐候性に優れた高強度樹脂塗膜を形成することができ、かつ、コンクリート構造物のメンテナンスにおけるコンクリートの劣化診断が目視により容易にでき、ビル等の建築物のタイル仕上げ外壁の外観を維持しつつ、施工時周囲への飛散のない、コンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物およびこれを用いたコンクリート片及びタイルの剥落防止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)と揺変性付与剤(B)とを含有する、コンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物を用い、これからなる樹脂塗膜を含む補強層をコンクリート構造物又はタイルを張り付けた壁面の表面に形成することによって、上記課題を解決した。
すなわち、本発明は、
(1)イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)と揺変性付与剤(B)とを含有する、コンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物、であり、
かかる樹脂組成物は、
(2)さらに湿分により加水分解して活性水素基を再生する基を含有する化合物(C)を含有することができる。
(3)前記湿分により加水分解して活性水素基を再生する基を含有する化合物(C)は、オキサゾリジン環を有する化合物である、ことが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、
(4)さらに溶剤(D)と耐候安定剤(E)とを含有することができる。
(5)イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)は、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上のポリイソシアネートから誘導されたものである、ことが好ましく、また、
(6)イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)は、高分子のポリオールと、低分子のポリオールと、活性水素基及び光硬化性のエチレン性不飽和基をそれぞれ少なくとも1個以上有する化合物とからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の活性水素含有化合物と、ポリイソシアネートを、水酸基と活性水素基の合計の活性水素基に対してイソシアネート基が過剰な条件で反応させて得られたものである、ことも好ましい。
本発明のコンクリート片及びタイルの剥落を防止する方法は、
(7)コンクリート構造物又はタイルを張り付けた壁面の表面に補強層を形成してコンクリート片及びタイルの剥落を防止する方法であって、上記(1)〜(6)のコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物を塗布して樹脂塗膜を形成する工程、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明のコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物は、コテ、ハケ塗りが容易にでき、垂直面への塗布作業でもタレることがなく、塗布作業に優れ、施工時周囲への飛散がなく、速やかに硬化し、反応硬化後の塗膜は透明な高強度樹脂塗膜または高強度な樹脂塗膜を形成することができ、この高強度な樹脂塗膜によりコンクリート片及びタイルの剥落を防止することができる。また、トップコートなしで耐候性に優れた高強度樹脂塗膜を形成することができるため、透明な高強度樹脂塗膜の場合にコンクリート構造物のメンテナンスにおけるコンクリートの劣化診断が目視により容易にでき、ビル等の建築物のタイル仕上げ外観の既存の外観を維持でき、従来の合成樹脂塗膜とガラス繊維などの連続繊維シート等からなる工法に比べて、作業効率の向上や施工時間の短縮、熟練を要せず、低コスト化を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において用いるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)は、イソシアネート基が大気中の水分(湿気)と反応し、尿素結合を形成して架橋・硬化するもので、本発明における一成分型ポリウレタン樹脂組成物に反応硬化成分として含有するものであり、有機イソシアネートと活性水素基含有化合物とを活性水素(基)に対してイソシアネート基過剰の条件で反応させて得られるものである。
【0013】
前記有機イソシアネートとしては、具体的にいえば、有機ポリイソシアネートと、有機ポリイソシアネートと有機モノイソシアネートとの混合物が挙げられる。
有機ポリイソシアネートとしては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート等のトルエンジイソシアネート類、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート類、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等のフェニレンジイソシアネート類、2,4,6−トリメチルフェニル−1,3−ジイソシアネート、2,4,6−トリイソプロピルフェニル−1,3−ジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンジイソシアネート類、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート類などの芳香脂肪族ポリイソシアネート、1,4−シクロヘキシジルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。更に、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、クルードトルエンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートも使用できる。また、これらの有機ポリイソシアネートを変性して得られる、ウレトジオン結合、イソシアヌレート結合、アロファネート結合、ビュレット結合、ウレトンイミン結合、カルボジイミド結合、ウレタン結合、ウレア結合などを1以上含有する変性イソシアネートも使用できる。
【0014】
有機モノイソシアネートとしては、具体的にいえば、n−ブチルモノイソシアネート、n−ヘキシルモノイソシアネート、n−ヘキサデシルモノイソシアネート、n−オクタデシルモノイソシアネート、p−イソプロピルフェニルモノイソシアネート、p−ベンジルオキシフェニルモノイソシアネートが挙げられる。有機モノイソシアネートは、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の変性用として本発明のコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物の硬化塗膜強度に悪影響を与えない範囲で使用することができるが、使用しないほうが好ましい。
これらは、いずれも単独であるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
これらのうち、低粘度で透明液状体が得られ、耐候性、耐久性に優れている点で、有機ポリイソシアネートが好ましく、さらに、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環式系ポリイソシアネートが好ましく、特に、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0015】
活性水素基含有化合物としては、高分子や低分子のポリオール、アミノアルコール、ポリアミン、活性水素基及びエチレン性不飽和基をそれぞれ少なくとも1個以上有する化合物などが挙げられる。
【0016】
高分子のポリオールとしては、ポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテル・エステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリル系ポリオール、炭化水素系ポリオールなどが挙げられ、数平均分子量500以上のものである。
【0017】
ポリオキシアルキレン系ポリオールとしては、アルキレンオキシドを開環付加重合させたものや、活性水素(基)を2個以上含有する化合物などの開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させたものなどが挙げられる。
【0018】
前記開始剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の低分子多価アルコール類、ソルビトール、シュークロース、グルコース、ラクトース、ソルビタン等の糖類系低分子多価アルコール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF等の低分子多価フェノール類、エチレンジアミン、ブチレンジアミン等の低分子ポリアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の低分子アミノアルコール類、アジピン酸、テレフタル酸等の低分子ポリカルボン酸類、これらの少なくとも1種にアルキレンオキシドを反応させて得られる低分子量のポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。
【0019】
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなどが挙げられ、これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて開環付加重合させることができる。
【0020】
すなわち、前記ポリオキシアルキレン系ポリオールは、具体的には、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオール、ポリ−(オキシエチレン)−(オキシプロピレン)−ランダムあるいはブロック共重合ポリオール、ポリ−(オキシプロピレン)−(オキシブチレン)−ランダムあるいはブロック共重合ポリオールなどを挙げることができ、また、これら各種のポリオールとトルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの有機ポリイソシアネートとを、イソシアネート基に対して水酸基過剰で反応させて、分子末端を水酸基としたものが挙げられる。
【0021】
ポリオキシアルキレン系ポリオールは、数平均分子量が500〜50,000、更に1,000〜20,000、特に1,000〜10,000のものが好ましく、また、1分子あたり平均のアルコール性水酸基の個数は2個以上、更に2〜4個が好ましく、2個が最も好ましい。数平均分子量が500未満では得られる硬化物のモジュラス(低伸張時の引張応力)、伸びが悪化して脆くなり動的耐久性が低下する。また、数平均分子量が50,000を超えると粘度が高くなり、得られる一成分型ポリウレタン樹脂組成物の作業性が低下し、好ましくない。
【0022】
更に、ポリオキシアルキレン系ポリオールは、複合金属シアン化錯体などの触媒を使用して得られる、総不飽和度が0.1meq/g以下、更に0.07meq/g以下、特に0.04meq/g以下のものが好ましく、分子量分布[ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比=Mw/Mn]が1.6以下。特に1.0〜1.3の狭いものが好ましい。
【0023】
なお、本発明において、ポリオキシアルキレン系ポリオールとは、分子1モルの水酸基を除いた部分の50質量%以上、更に80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上がポリオキシアルキレンで構成されていれば、残りの部分がエーテル、ウレタン、エステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリオレフィンなどで変性されていても良いことを意味するが、本発明においては、水酸基を除いた分子の95質量%以上がポリオキシアルキレンで構成されていることが好ましい。
【0024】
前記ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオールとしては、例えば、公知のコハク酸、アジピン酸、テレフタル酸等のジカルボン酸、それらの酸エステル、酸無水物等と、前記のポリオキシアルキレン系ポリオールの合成に開始剤として使用される活性水素(基)を2個以上含有する化合物との脱水縮合反応で得られる化合物を挙げることができる。さらにε−カプロラクトン等の環状エステル(すなわちラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオール等も挙げられる。
【0025】
前記ポリエーテル・エステルポリオールとしては、例えば、前記ポリオキシアルキレン系ポリオールと前記のジカルボン酸、酸無水物等とから製造される化合物が挙げられる。
【0026】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、前述のポリオキシアルキレン系ポリオールの製造に用いる低分子多価アルコール類と、ホスゲンの脱塩酸反応、あるいは、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどとのエステル交換反応などから得られる化合物が挙げられる。
【0027】
前記ポリ(メタ)アクリル系ポリオールとしては、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を少なくとも含有するエチレン性不飽和化合物を重合開始剤の存在下又は不存在下に、そして溶剤の存在下又は不存在下において、バッチ式又は連続重合などの公知のラジカル重合の方法により、好ましくは150〜350℃、さらに好ましくは210〜250℃で高温連続重合反応して得られるものが、反応性生物の分子量分布が狭く低粘度になるため好適である。ポリ(メタ)アクリル系ポリオールは、水酸基含有(メタ)アクリル単量体を単独で重合して得られえるものであってもよく、これを2種以上共重合して得られえるものであってもよく、さらにこれらそれぞれの1種又は2種以上とこれら以外のエチレン性不飽和化合物とを共重合して得られえるものであってもよい。これらのうち、ポリ(メタ)アクリル系ポリオールの水酸基の含有量を調節することが容易で、硬化樹脂の物性を選択しやすい点から、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体の1種又は2種以上とこれら以外のエチレン性不飽和化合物の1種又は2種以上とを共重合して得られえるもの、特に炭素数が9以下の水酸基含有(メタ)アクリル系単量体の1種又は2種以上と炭素数が10以上の水酸基含有(メタ)アクリル系単量体の1種又は2種以上とを合計で50質量%以上、さらに70質量%以上とこれら以外のエチレン性不飽和化合物の1種又は2種以上とを共重合して得られえるものが好ましい。この共重合の際、それぞれ1種又は2種以上の水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を、ポリ(メタ)アクリル系ポリオール1分子あたり平均水酸基官能数が1.0〜10個となるように使用するのが好ましく、更に好ましくは1.2〜3個となるように使用するのが好ましい。平均水酸基官能数が10個を超えると、硬化後の物性が硬くなりすぎてゴム状弾性がなくなる。このうち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量が500〜30,000、更に1,000〜15,000、Tgが0℃以下、更に−70〜−20℃、特に−70〜−30℃、25℃における粘度が100,000mPa・s以下、特に50,000mPa・s以下のポリ(メタ)アクリル系ポリオールが好ましい。数平均分子量30,000、Tgが0℃、25℃における粘度が100,000mPa・sをそれぞれ超えると、施工時の作業性が悪くなる。
【0028】
前記炭化水素系ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオールや水素添加ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールや水素添加ポリイソプレンポリオール、塩素化ポリエチレンポリオール、塩素化ポリプロピレンポリオールなどが挙げられる。
また、一般にポリウレタン工業において公知の活性水素を含有する、数平均分子量500以上の、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等も挙げられる。
【0029】
これらのうち、得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の粘度が低く、硬化後の塗膜物性が良好なため、これから得られる一成分型ポリウレタン樹脂組成物の粘度が低く作業性が良好な点と、硬化後の塗膜のゴム弾性物性や接着性が高く耐候性が良い点で、ポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリ(メタ)アクリル系ポリオールが好ましく、更にポリオキシアルキレン系ポリオールは、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリテトラメチレンポリオールが好ましい。
【0030】
低分子ポリオールとしては、前記ポリオキシアルキレン系ポリオールの製造原料として挙げた数平均分子量500未満の低分子多価アルコールが挙げられる。
アミノアルコールとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−フェニルジエタノールアミンなどが挙げられる。
【0031】
ポリアミンとしては、ポリプロピレングリコールの末端ジアミノ化などの、数平均分子量500以上でポリオキシアルキレン系ポリオールの末端がアミノ基となったポリオキシアルキレンポリアミン等の高分子ポリアミンが挙げられる。
【0032】
ポリアミンとしては更に、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノフェニルメタン、ジエチレントリアミン等の数平均分子量500未満の低分子ポリアミンが挙げられる。
【0033】
前記の活性水素基及びエチレン性不飽和基を少なくとも1個以上有する化合物としては、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基と反応する活性水素基を少なくとも1個以上含有し、かつ、光硬化性のエチレン性不飽和基を少なくとも1個以上有する化合物である。
【0034】
この活性水素基としては、具体的には、水酸基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、エチレン性不飽和基としては、具体的には、ビニル基、ビニレン基、シンナモイル基、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基などが挙げられる。これらのうち、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と反応が容易で比較的粘度上昇が小さい点で、活性水素基としては水酸基が好ましく、また、光に暴露されることにより比較的短時間で重合反応して耐候性に優れた被膜を形成する点で、光硬化性のエチレン性不飽和基としてはアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基が好ましい。活性水素基として水酸基を少なくとも1個以上含有し、かつ、光硬化性のエチレン性不飽和基としてアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を少なくとも1個以上有する化合物は、例えば、東亞合成社製「アロニックス」シリーズ、日本化薬社製「KAYARAD」シリーズなどから好適に挙げることができる。
【0035】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)を構成するポリオール成分の一部として活性水素基及び光硬化性のエチレン性不飽和基をそれぞれ少なくとも1個以上有する化合物を使用し、かつ、高分子ポリオールと組み合わせることで、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの耐候性を向上させることができ、更に当該イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに後述する湿分により加水分解して活性水素基を再生する基を含有する化合物(C)を配合して一成分型ポリウレタン樹脂組成物としたとき、作業性を悪化させることなく、発泡することなく速やかに硬化して塗膜を形成し、その塗膜は優れたゴム物性のものとすることができる。
【0036】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)を含有する一成分型ポリウレタン樹脂組成物が優れた耐候性、優れたゴム物性を有するためには、活性水素基及びエチレン性不飽和基をそれぞれ1個以上有する化合物は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)を構成する活性水素基含有化合物中に、1.0〜7.0質量%含まれることが好ましい。
活性水素基含有化合物は、いずれもそれぞれ単独であるいは2種以上を組合わせて使用できる。
【0037】
本発明におけるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)には、オクチル酸第一錫、オクチル酸錫などの亜鉛、錫、鉛、ジルコニウム、ビスマス、コバルト、マンガン、鉄等の金属とオクチル酸、オクテン酸、ナフテン酸等の有機酸との金属塩、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、錫系キレート化合物であるEXCESTAR C−501(旭硝子社製)などの金属キレート化合物、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属化合物、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等の有機アミンやその塩等の公知のウレタン化触媒を用いることができる。これらのうち金属有機酸塩や有機金属化合物が好ましい。また、更に公知の有機触媒を用いることもできる。
【0038】
本発明におけるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)は、一括仕込み反応法、多段階仕込み反応法のいずれでも合成できるが、プレポリマーの分子中にイソシアネート基を残す必要がある。有機ポリイソシアネートのイソシアネート基と活性水素基含有化合物の活性水素(基)とのイソシアネート基/活性水素(基)の当量比は、1.1〜5.0/1.0が好ましく、更に1.3〜2.0/1.0が好ましい。このようにして得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有量は、0.1〜15.0質量%が好ましく、特に0.3〜10.0質量%が好ましく、最も好ましくは0.4〜8.0質量%である。イソシアネート基含有量が0.1質量%未満では分子量が大きくなりすぎて粘度が増大し作業性が低下する。また、プレポリマー中の架橋点が少ないため、十分な接着性が得られない。イソシアネート基含有量が15.0質量%以上ではプレポリマー中の架橋点が多くなりゴム弾性が悪化すること、湿気との反応によって炭酸ガスの発生量が多くなり硬化物が発泡すること、また、湿分により加水分解して活性水素基を再生する基を含有する化合物(C)の配合量が多くなり経済的でないことにより好ましくない。
【0039】
本発明における揺変性付与剤(B)は、コンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物に揺変性を付与して、当該一成分型ポリウレタン樹脂組成物をコンクリート構造物又はタイルを張り付けた壁面の垂直面に塗布したときにタレを起こさないようにするために使用するものであり、タレを起こさないようにすることは、コンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物として使用したときに極めて重要な要件となるものである。タレの防止は、コテやヘラによる塗布作業性を向上させ、少ない塗布回数で必要な塗膜厚みを確保でき、塗布した後にこの樹脂の液ダレによる工事現場の環境悪化などを防止することができる。具体的には、例えば、微粉状シリカ、表面処理炭酸カルシウム等の無機系揺変性付与剤、有機ベントナイト、変性ポリエステルポリオール、脂肪酸アマイド等の有機系揺変性付与剤などが挙げられ、これらのなかから1種あるいは2種以上を適宜選択して使用することができる。これらのうち微粉状シリカは、少量の配合で揺変性を付与できるため好ましいが、当該一成分型ポリウレタン樹脂組成物の硬化速度を高めるため後述する硬化促進触媒を使用すると揺変性付与構造が破壊されることがあり、垂直面に塗布したときにタレを起こすため使用には注意が必要である。これに対し有機表面処理炭酸カルシウムは前述のような欠点がなく、安定した揺変性を付与することができる。
【0040】
当該一成分型ポリウレタン樹脂組成物が透明(クリアー)な硬化物を形成するものであると、当該一成分型ポリウレタン樹脂組成物を塗布した下地コンクリートの経年変化を目視により観察することができ、下地コンクリートの劣化状況を容易に判断することが可能となり特に好ましい。このとき揺変性付与剤としては、補強性を有し透明性を確保できる点で微粉状シリカが好ましく、特にフュームドシリカ、後述する有機シラン化合物で処理した処理シリカが好ましい。
【0041】
本発明において、揺変性付与剤の使用量は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー100質量部(樹脂分)に対して、1〜200質量部、さらに5〜150質量部が好ましい。1質量部を下回ると揺変性付与効果がなくなり、200質量部を超えると得られるコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物の粘度が上がり作業性が悪くなるため好ましくない。
【0042】
前記微粉状シリカとしては、例えば、石英、ケイ砂、珪藻土等を粉砕して微粉状にした天然シリカ、また、沈降法シリカ等の湿式シリカ、フュームドシリカ等の乾式シリカなどの合成シリカなどが挙げられる。また、これらシリカ粒子表面の性質としては、有機物で処理しない親水性のものと、粒子表面をジメチルジクロロシラン等の有機シラン化合物で処理した疎水性のものとが挙げられる。
【0043】
前記表面処理炭酸カルシウムとしては、例えば、沈降炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムと称される微粉状の合成炭酸カルシウム、あるいは、天然の炭酸カルシウムを粉砕して微粉状にした重質炭酸カルシウムの表面を、揺変性付与能力を与える目的と二次凝集を防ぐ目的で、脂肪酸類、脂肪酸アルキルエステル類、脂肪酸金属塩類、ロジン酸等の樹脂酸の金属塩、有機ポリイソシアネートとステアリルアルコールとの反応生成物、後述のシランカップリング剤と同様のカップリング剤などの有機物系の化合物で処理した炭酸カルシウムが挙げられる。ここで、脂肪酸金属塩としては、好ましくはステアリン酸等の炭素数10〜25の脂肪酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウムの塩である。これらの市販品としては、例えば、白艶華CC、白艶華CCR、白艶華R06、VIGOT−10、VIGOT−15、STAVIGOT−15A(以上白石工業社製)、NCC#3010、NCC#1010(以上日東粉化工業社製)等が挙げられる。
これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0044】
この記表面処理炭酸カルシウムの平均粒径は、0.01〜0.5μm、さらに0.03〜0.15μmが好ましく、BET比表面積は、5〜200m/g、さらに10〜60m/gが好ましい。平均粒径が0.01μmを下回るか、BET比表面積が200m/gを上回ると得られる硬化性組成物の粘度が上がり作業性が悪化し、平均粒径が0.5μmを上回るか、BET比表面積が5m/gを下回ると揺変性付与効果がなくなるため好ましくない。
【0045】
本発明における湿分により加水分解して活性水素基を再生する基を含有する化合物(C)は、具体的には、湿分により加水分解して第1級および/または第2級アミンを生成するケチミン化合物、エナミン化合物、アルジミン化合物、湿分により加水分解して水酸基とアミノ基を生成するオキサゾリジン環を有する化合物、湿分により加水分解してポリオールを生成することが可能なケイ酸エステル化合物が挙げられる。これらのうち、コンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物の貯蔵安定性に優れ、非発泡性、硬化性に優れることから、オキサゾリジン環を有する化合物が好ましい。
【0046】
オキサゾリジン環を有する化合物は、酸素原子と窒素原子を含む飽和5員環の複素環であるオキサゾリジン環を分子内に1個以上、好ましくは2〜6個有する化合物であり、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の潜在性硬化剤として機能するものである。前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基が大気中の水分(湿気)と反応すると、尿素結合が生成して硬化するが、この際炭酸ガスも発生し、硬化物の中に炭酸ガスによる気泡が生じ外観の悪化、硬化物の破断、接着性の低下などの不具合を生じるが、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)にオキサゾリジン環を有する化合物とを混合したものを湿気に暴露した場合は、湿気とイソシアネート基が反応する前にオキサゾリジン環を有する化合物のオキサゾリジン環が湿気により加水分解を受け、2級アミノ基とアルコール性水酸基を再生し、これらの活性水素がイソシアネート基と反応して炭酸ガスを発生することなく硬化することにより、これらを含むコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物の炭酸ガスによる発泡を防止できるものである。
【0047】
特に、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基が脂肪族系有機ポリイソシアネート由来のものであるとき、このイソシアネート基は、水やアルコール性水酸基との反応は遅いが、オキサゾリジン環を有する化合物から再生する2級アミノ基とは速やかに反応して硬化するため、後述するように、有機金属系触媒を全く使用しないか、あるいは使用してもその使用量を極めて少量に抑えることができるため、硬化速度が大きいにもかかわらず発泡することがない点で、このオキサゾリジン環を有する化合物は有効な働きをする。
【0048】
オキサゾリジン環を有する化合物としては、具体的には、例えば、水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の水酸基と、有機イソシアネート化合物のイソシアネート基や有機カルボン酸化合物のカルボキシル基とを反応させて得られる、ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物やエステル基含有オキサゾリジン化合物、あるいはまた、オキサゾリジンシリルエーテル、カーボネート基含有オキサゾリジンなどが挙げられ、製造し易く粘度の低い点でウレタン基(ウレタン結合)及びオキサゾリジン環を有する化合物が好ましい。
【0049】
ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物としては、具体的には、水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の水酸基と、有機イソシアネート化合物のイソシアネート基とを、イソシアネート基/水酸基のモル比が0.9〜1.2の範囲、好ましくは0.95〜1.05の範囲となるように使用し、有機溶剤の存在下または不存在下に50〜100℃の温度で反応して得られるものが挙げられる。
【0050】
ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物の合成に用いられる有機イソシアネート化合物としては、前述のイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の合成に用いられる有機イソシアネート化合物と同様のものが挙げられ、ウレタン基含有オキサゾリジン化合物の結晶性が低く、溶解性に優れる点で、脂肪族系有機ポリイソシアネートが好ましく、さらにイソホロンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく、特にヘキサメチレンジイソシアネートか好ましい。
【0051】
前記水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物としては、具体的には、アルカノールアミンの2級アミノ基と、ケトン化合物またはアルデヒド化合物のカルボニル基との脱水縮合反応により得られるN−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンが挙げられる。
【0052】
この水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の合成方法としては、アルカノールアミンの2級アミノ基1.0モルに対し、アルデヒドまたはケトンのカルボニル基が1.0当量以上、好ましくは1.0〜1.5当量以上、更に好ましくは1.0〜1.2当量以上使用し、トルエン、キシレン等の溶媒中で、加熱、還流し、副生する水を除去しながら脱水縮合反応を行う方法が挙げられる。
【0053】
アルカノールアミンとしてはジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(2−ヒドロキシプロピル)アミンなどが挙げられる。ケトン化合物としては、アセトン、ジエチルケトン、イソプロピルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−t−ブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド、n−へキシルアルデヒド、2−メチルペンチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、3,5,5−トリメチルへキシルアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物;ベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、トリメチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、イソプロピルベンズアルデヒ、イソブチルベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ジメトキシベンズアルデヒド、トリメトキシベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物などが挙げられる。
【0054】
これらのうち、水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の製造の容易さと、得られる一成分型ポリウレタン樹脂組成物が硬化するときの発泡防止性に優れている点で、アルカノールアミンとしてはジエタノールアミンが好ましく、ケトン化合物またはアルデヒド化合物のうちアルデヒド化合物が好ましく、さらにイソブチルアルデヒド、2−メチルペンチルアルデヒド、ベンズアルデヒドが好ましい。これらの具体的な例として、2−イソプロピル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2−(1−メチルブチル)−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2−フェニル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジンなどが挙げられる。
【0055】
オキサゾリジンシリルエーテルは、例えば、前述した水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物と、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシランとの脱アルコール反応により得られる。
【0056】
エステルオキサゾリジンは、例えば、前述した水酸基及びオキサゾリジン環を有する化合物とジカルボン酸もしくはポリカルボン酸の低級アルキルエステルとのエステル交換反応によって得ることができる。
【0057】
なお、オキサゾリジン環を有する化合物は、分子内に、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基と5〜35℃の常温で反応する官能基を実質的に有していない。この実質的に有していないとは、例えば前述のウレタン基及びオキサゾリジン環を有する化合物の合成において、当量比の選択により少量の活性水素が分子内に残存する場合があるが、本発明の目的を達成する上で、有していないとしても差し支えないことを意味する。
【0058】
前記オキサゾリジン環を有する化合物の使用量は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)中のイソシアネート基1.0当量に対して、オキサゾリジン環を有する化合物が加水分解して再生する2級アミノ基の活性水素が0.3当量以上、さらに0.5〜1.5当量となるように使用するのが好ましい。0.3当量未満では発泡防止が不十分となり好ましくない。
【0059】
次に、オキサゾリジン環を有する化合物の加水分解触媒について説明する。
オキサゾリジン環の加水分解触媒は、オキサゾリジン環を有する化合物が湿気と反応し加水分解をして活性水素を再生するのを促進させ、または再生した活性水素とイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基との反応を促進させて、本発明のコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物の硬化速度を向上させるために添加するものであり、有機金属系触媒、有機カルボン酸系触媒、これらの酸無水物、p−トルエンスルホニルイソシアネート、p−トルエンスルホニルイソシアネートと水分との反応物、有機燐酸エステル化合物などを好適に挙げることができる。
【0060】
これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
オキサゾリジン環の加水分解触媒の使用量は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)100質量部(樹脂分)に対して、0.001〜10質量部が好ましく、さらに0.1〜5質量部が好ましい。0.001質量部未満ではオキサゾリジン環を有する化合物の加水分解を促進させる効果がなく、10質量部を超えると硬化性組成物の貯蔵安定性に悪影響を及ぼす。
【0061】
本発明において使用できる溶剤(D)としては、n−ヘキサンなどの脂肪族系溶剤、シクロヘキサンなどの脂環族系溶剤、トルエンやキシレンなどの芳香族系溶剤、これらを含有する石油系溶剤など従来公知の有機溶剤が挙げられ、これらは、組成物の各成分に反応しないものであればどのようなものでも使用できる。
【0062】
本発明において使用できる耐候安定剤(E)としては、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)の硬化後の酸化や光劣化、熱劣化を防止して耐候性だけでなく耐熱性をさらに向上させる目的で使用する。耐候安定剤としては、具体的には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光硬化性化合物が挙げることができる。
【0063】
前記酸化防止剤としては、具体的には、ヒンダードアミン系やヒンダードフェノール系酸化防止剤を挙げることができ、ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。また、三共社製の商品名サノールLS−292などの他、旭電化工業社の商品名アデカスタブシリーズのLA−52、LA−57、LA−62、LA−67、LA−77、LA−82、LA−87などの分子量1,000未満のヒンダードアミン系酸化防止剤、同じくLA−63P、LA−68LDあるいはチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名CHIMASSORBシリーズの119FL、2020FDL、944FD、944LDなどの分子量1,000以上の高分子量のヒンダードアミン系酸化防止剤なども挙げられる。
【0064】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオアミド]、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシC7−C9側鎖アルキルエステル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノールなどが挙げられる。
【0065】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤、オクタベンゾン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0066】
前記光硬化性化合物としては、前記の活性水素基及びエチレン性不飽和基を少なくとも1個以上有する化合物に加え、アクリロイル基やメタクリロイル基などの光によって反応硬化する基を分子内に1個以上含有する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、イソシアネート基含有ウレタン樹脂に水酸基含有アクリレート化合物や水酸基含有メタクリレート化合物を反応させたウレタンアクリレートやウレタンメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートやトリメチロールプロパントリメタクリレートなどのエステルアクリレートやエステルメタクリレート、ポリエチレンアジペートポリオールのアクリレートやメタクリレートなどのポリエステルアクリレートやポリエステルメタクリレート、ポリエーテルポリオ−ルのアクリレートやメタクリレートなどのポリエーテルアクリレートやポリエーテルメタクリレート、あるいはポリケイ皮酸ビニル類、アジド化樹脂などが挙げられ、分子量10,000以下、更に分子量5,000以下の単量体、オリゴマーが好ましく、特にアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を1分子当たり平均して2個以上含有するものが好ましい。
【0067】
耐候安定剤(E)は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)100質量部(樹脂分)に対して、0.1〜30質量部、特に1〜20質量部配合するのが好ましい。
【0068】
本発明のコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物には、当該一成分型ポリウレタン樹脂組成物の性能を損なわない程度に各種添加剤を使用することができる。本発明における添加剤としては、充填剤、可塑剤、接着性付与剤、硬化促進触媒、保存安定性改良剤(脱水剤)などが挙げられ、それぞれ補強や増量、物性調整、接着性向上、貯蔵安定性向上のために使用される。
【0069】
前記充填剤としては、例えば、無水ケイ酸、石英微粉末などが挙げられ、前記可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等のフタル酸エステル類、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバペート等の非芳香族2塩基酸エステル類、トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類、塩素化パラフィン等のハロゲン化脂肪族化合物などの分子量500未満の低分子量可塑剤が挙げられ、分子量500以上の高分子量タイプの可塑剤としては、例えば、液状ポリウレタン樹脂、ジカルボン酸とグリコール類とからのポリエステル類等のポリエステル系可塑剤、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのエーテル化あるいはエステル化誘導体、シュークロースなどの糖類多価アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加重合し、さらにエーテル化あるいはエステル化した糖類系ポリエーテル類等のポリエーテル系可塑剤、ポリ−α−メチルスチレン等のポリスチレン系可塑剤、低粘度の(メタ)アクリル酸系可塑剤などが挙げられる。
【0070】
これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
これらのうち、可塑剤は硬化物表面に移行(ブリード)し難い点で、分子量500以上の高分子量タイプの可塑剤が好ましく、更に液状ポリウレタン樹脂が好ましい。
可塑剤は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)100質量部(樹脂分)に対して、1〜500質量部、特に10〜100質量部使用するのが好ましい。
【0071】
前記接着性付与剤としては、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコアルミネート系などの各種カップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物、有機ポリイソシアネート、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0072】
シラン系カップリング剤としては、具体的には、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシランなどの炭化水素結合アルコキシシラン類、ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシランなどの炭化水素結合イソプロペノキシシラン類、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメイルメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、3−グリシドキシプロピルエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の官能基を有するアルコキシシラン類などの分子量500以下、好ましくは400以下の低分子化合物及び/又はこれらシラン系カップリング剤の1種または2種以上の部分加水分解縮合物で分子量200〜3,000の化合物が挙げられる。
【0073】
前記保存安定性改良剤としては、組成物中に存在する水分と反応する、前記ビニルトリメトキシシランなどの低分子の架橋性シリル基含有化合物、p−トルエンスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
【0074】
前記硬化促進触媒としては、具体的には、有機金属化合物、アミン類等が挙げられ、例えば、オクチル酸錫、ナフテン酸錫等の2価の有機錫化合物、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の4価の有機錫化合物、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、錫系キレート化合物の旭硝子社製EXCESTAR C−501、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトンマグネシウム、アセチルアセトンビスマス、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンマンガン等の各種金属のキレート化合物、オクチル酸鉛等の有機酸鉛塩、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類、オクチル酸ビスマス、ビスマスパーサテイト等の有機ビスマス化合物、ブチルアミン、オクチルアミン等の第1級アミン類、ジブチルアミン、ジオクチルアミン等の第2級アミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の第1級、第2級アミン類、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、N−エチルモルホリン等の第3級アミン類、或いはこれらのアミン類とカルボン酸等の塩類、カオリンクレー、塩酸等の無機系酸性化合物、エチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルホスフェート等の有機リン酸系酸性化合物、或いはこれらとアミンとの塩類などが挙げられ、これらのうち、反応速度が高く、毒性及び揮発性の比較的低い液体である点から有機金属化合物や金属キレート化合物が好ましく、更に錫系キレート化合物が好ましく、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)が最も好ましい。
【0075】
硬化促進触媒は、硬化速度、硬化物の物性などの点から、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)100質量部(樹脂分)に対して、0〜5質量部、特に0.01〜2質量部配合するのが好ましい。2質量部以上の使用は硬化後の塗膜の劣化を生じるため好ましくない。
【0076】
本発明のコンクリート片及びタイルの剥落防止方法は、道路や鉄道の高架橋の高欄、橋脚などのコンクリート構造物又はタイルを張り付けた壁面の表面に、合成樹脂からなる補強層を形成して、コンクリート構造物からコンクリート片が剥落すること及びタイルを張り付けた壁面からタイルが剥落することを防止するものである。補強層の形成位置は、コンクリート構造物の外壁面、下面など、コンクリートの剥落のおそれがある箇所及びタイルを張り付けた壁面などである。例えば、高架橋では高欄や橋脚の外壁面、床版や橋桁の下面、橋脚張り出し部の下面、タイルを張り付けたビル外壁面などがその対象である。具体的には、
(1)最初にコンクリート構造物の表面の脆弱層や、塵埃や異物を除去する。さらにコンクリート構造物の表面に突起物や段差がある場合、工具を使用して表面を平滑にする。コンクリート構造物の表面の補強層が形成される部分(被形成面)を平滑処理した後、ブラシ、エアーブローなどで被形成面を清掃し、塵埃や異物を除去する。
(2)次いで、清掃済みのコンクリート構造物の表面に、場合によりプライマーを塗布しプライマー層を形成する。プライマーをコンクリート構造物の表面に塗布する方法としては、スプレーガンによって噴射する方法、ローラーや刷毛もしくはレーキによって塗布する方法など各種採用できる。
(3)次いで、場合によりプライマー層が形成されたコンクリート構造物の表面に、本発明の一成分型ポリウレタン樹脂組成物を塗布して樹脂塗膜を形成する。樹脂塗膜をコンクリート構造物の表面に形成する方法としては、ローラーや鏝もしくはレーキによって塗布する方法など各種採用できる。また、場合により、樹脂塗膜厚を確保するために、また、更なる樹脂塗膜層の補強のためにガラスクロス及び/又は繊維編み上げメッシュを樹脂塗膜中に埋設させて樹脂塗膜を形成することができる。
また、タイルを張り付けた壁面についても同様にして補強層を形成することができる。
【0077】
本発明のコンクリート片及びタイルの剥落防止方法は、上記(1)〜(3)により、コンクリート構造物又はタイルを張り付けた壁面の表面の被形成面に合成樹脂からなる補強層を形成するものである。この補強層は、場合によりプライマー層を含み、また、場合により樹脂塗膜厚を確保するためや更なる樹脂塗膜層の補強のために樹脂塗膜中に埋没させたガラスクロス及び/又は繊維編み上げメッシュの層を含む、樹脂塗膜層から形成されている。プライマーを使用する場合のプライマー層は、コンクリート構造物又はタイルを張り付けた壁面と樹脂塗膜に対して親和性を有するものであることが好ましく、コンクリート構造物又はタイルを張り付けた壁面の表面が湿っている場合もあり、湿潤面に接着可能であるものが好ましい。プライマー層としては、常温硬化性のウレタン系樹脂や、エポキシ樹脂からなるプライマーが好ましく用いられ、1液硬化型でも2液硬化型でもよい。
【0078】
樹脂塗膜の厚さは、0.5mm〜4mm程度であることが好ましい。本発明の一成分型ポリウレタン樹脂組成物を用いて形成された樹脂塗膜は適度な伸び、柔軟性及び弾性を有しており、コンクリート構造物の撓みなどによる変形に追従して変形し、破断し難いから、コンクリート構造物からのコンクリートの破片や塊の剥落防止及びタイルを張り付けた壁面からのタイルの剥落防止の機能を長期にわたって安定に維持できる。
【0079】
本発明の一成分型ポリウレタン樹脂組成物を塗布して形成した樹脂塗膜層とプイマーを使用した場合に形成されるプライマー層との積層構造からなるコンクリート表面に形成された補強層及びタイルを張り付けた壁面に形成された補強層は、ガラスクロス及び/又は繊維編み上げメッシュ(3軸ビニロンメッシュ等)を使用することなく、充分な剥落防止効果を発揮することができ、また、本発明の一成分型ポリウレタン樹脂組成物を用いたコンクリート片の剥落防止及びタイルを張り付けた壁面からのタイルの剥落防止の方法により充分な剥落防止効果を発揮することができる。具体的には、後述する実施例において示す日本道路公団の試験方法である押抜き試験において、10mm以上の変位でなお且つ1.5kN以上の最大応力を示す補強層とすることができる。また、主にイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)や、プライマーを使用する場合はプライマーの種類を選択することにより、補強層を透明な層に調整することができ、さらにまた、補強層を形成直後、あるいは長期に屋外で暴露された後も着色が少なく、下地の目視観察を妨げない補強層を形成することができる。すなわち、サンシャインウェザオメーターにて1000時間暴露後、試験片の色差(ΔE)≦3、光沢度保持率80%以上の補強層を形成することができる。
トップコート層は、本発明の樹脂塗膜では特に必要としないが、用いることもできる。
【実施例】
【0080】
(イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−1の合成)
攪拌機、温度計、窒素シール管および加熱・冷却装置付き反応容器に、窒素ガスを流しながらポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土谷化学社製、PTG2000SN,平均分子量2000)78.1g、活性水素基及びエチレン性不飽和基を有する化合物としてペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成社製、アロニックスM305、分子量298)を2.3g、酢酸エチルを30.0g仕込み、攪拌しながらイソホロンジイソシアネート(デグサジャパン社製、VESTANAT IPDI、分子量222)を19.6g仕込み、さらに反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.02gを加え、70〜80℃で2時間攪拌しながら反応させ、滴定によるイソシアネート基含有量が理論値(2.92質量%)以下になった時点で反応を終了し、冷却してイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−1を合成した。得られたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−1は、R値2.05、滴定によるイソシアネート基含有量2.81質量%、25℃における粘度1200mPa・sの常温で透明液体であった。
(イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−2の合成)
【0081】
攪拌機、温度計、窒素シール管および加熱・冷却装置付き反応容器に、窒素ガスを流しながらポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土谷化学社製、PTG2000SN,平均分子量2000)71.6g、アロニックスM305を2.1g、酢酸エチルを30.0g仕込み、攪拌しながらイソホロンジイソシアネート(デグサジャパン社製、VESTANAT IPDI、分子量222)を26.2g仕込み、さらに反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.02gを加え、70〜80℃で2時間攪拌しながら反応させ、滴定によるイソシアネート基含有量が理論値(5.09質量%)以下になった時点で反応を終了し、冷却してイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−2を合成した。得られたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−2は、R値3.0、滴定によるイソシアネート基含有量5.00質量%、25℃における粘度600mPa・sの常温で透明液体であった。
(イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−3の合成)
【0082】
攪拌機、温度計、窒素シール管および加熱・冷却装置付き反応容器に、窒素ガスを流しながらポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土谷化学社製、PTG2000SN,平均分子量2000)63.9g、アロニックスM305を1.9g、トリメチロールプロパン(TMP)を1.3g、酢酸エチルを30.0g仕込み、攪拌しながらイソホロンジイソシアネート(デグサジャパン社製、VESTANAT IPDI、分子量222)を32.9g仕込み、さらに反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.02gを加え、70〜80℃で2時間攪拌しながら反応させ、滴定によるイソシアネート基含有量が理論値(6.39質量%)以下になった時点で反応を終了し、冷却してイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−3を合成した。得られたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−3は、R値3.0、滴定によるイソシアネート基含有量6.28質量%、25℃における粘度1500mPa・sの常温で透明液体であった。
【0083】
(イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−4の合成)
攪拌機、温度計、窒素シール管および加熱・冷却装置付き反応容器に、窒素ガスを流しながらポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土谷化学社製、PTG2000SN,平均分子量2000)46.8g、アロニックスM305を2.0g、アクリルポリオール(東亞合成社製、UH2032、平均分子量2000)を20.0g、酢酸エチルを30.0g仕込み、攪拌しながらイソホロンジイソシアネート(デグサジャパン社製、VESTANAT IPDI、分子量222)を31.2g仕込み、さらに反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.02gを加え、70〜80℃で2時間攪拌しながら反応させ、滴定によるイソシアネート基含有量が理論値(6.05質量%)以下になった時点で反応を終了し、冷却してイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−4を合成した。得られたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−4は、R値3.0、滴定によるイソシアネート基含有量5.98質量%、25℃における粘度500mPa・sの常温で透明液体であった。
【0084】
(ウレタンビスオキサゾリジンの合成)
攪拌機、温度計、窒素シール管および加熱・冷却装置付き反応容器に、ジエタノールアミンを435.0g入れた後、トルエンを183.3g加えた。この中に攪拌しながら更にイソブチルアルデヒド328.3gを加えた後、加温して110〜150℃で3時間脱水反応を続けて、エステル管により水74.5を除いた。次いで減圧して、過剰のイソブチルアルデヒド及びトルエンを除去して、水酸基含有オキサゾリジン化合物を得た。この水酸基含有オキサゾリジン化合物658.9g中に、ヘキサメチレンジイソシアネート341.0gを加え、80℃で8時間加熱し、滴定による実測イソシアネート基含有量が0.0質量%以下となった時点でウレタン化反応の終点とした。得られた反応生成物は常温で半透明の液体であった。
【0085】
実施例1
冷却装置及び窒素シール管付き混練容器に、窒素ガスを流しながら合成例1で得たイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−1を130.0g、酢酸エチル2.0g、ヒンダードアミン系酸化防止剤(三共社製、サノールLS292)1.0g、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGANOX1010)1.0g、合成したウレタンビスオキサゾリジン16.9g、揺変性付与剤(日本アエロジル社製、アエロジル200(フュームドシリカ、比表面積200m/g))12.1gを順次仕込み、均一になるまで混練した。次いで、30〜100hPaで減圧脱泡し、容器に充填、密封して、透明でペースト状のコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物を調製した。
【0086】
実施例2
実施例1において、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−1に替えてイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−2を130.0g、ウレタンビスオキサゾリジン30.1g、揺変性付与剤13.1gを使用した以外は同様にして、透明でペースト状のコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物を調製した。
【0087】
実施例3
実施例1において、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−1に替えてイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−3を130.0g、ウレタンビスオキサゾリジン37.8g、揺変性付与剤13.7gを使用した以外は同様にして、透明でペースト状のコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物を調製した。
【0088】
実施例4
実施例1において、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−1に替えてイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーP−4を130.0g、ウレタンビスオキサゾリジン36.0g、揺変性付与剤13.6gを使用した以外は同様にして、透明でペースト状のコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物を調製した。
【0089】
比較例1
実施例1において、揺変性付与剤を使用しない以外は同様にして、透明でペースト状のコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物を調製した。
【0090】
比較例2
2液硬化型ポリウレタン系樹脂(ダイフレックス社製、商品名:CVスプレーR3、主剤:硬化剤=1:1(容量比))及びトップコート(ダイフレックス社製、商品名:レジトップ、主剤:硬化剤=1:3(重量比))を用いた。
【0091】
比較例3
ミゼロンB−500グレー塗料液(三井金属塗料化学社製、水酸基当量625g/eq、平均官能基数2.7のポリオール成分54質量部、二酸化チタン、二酸化珪素、マイカ、カーボンブラックからなる顔料40質量部、添加剤3質量部からなる塗料液、固形分100%)97質量部、二酸化チタン20質量部からなる成分Aを117質量部と、ミゼロンA−5000硬化剤(三井金属塗料化学社製ポリイソシアネート、イソシアネート基当量135、官能基数2.7、固形分100%)33質量部の成分Bを、卓上ディスパー1500rpmの条件で1分間混合攪拌し、次いで30〜100hPaで減圧脱泡して樹脂組成物を得た。
【0092】
(性能試験)
上記実施例1〜4及び比較例1〜3の樹脂組成物について、以下の性能試験を実施した。その結果を表1に示す。
(1)外観
コンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物を約2mmも厚みのシートにし、23℃50%相対湿度の標準状態で10日間養生して硬化物を作製した。この硬化物を目視観察により評価した。無色透明であるとき○、わずかに着色又はわずかな濁りがあるとき△、着色又は濁りがあるとき×とした。
(2)タックフリー時間
JIS A1439(1997、改正2002)「建築用シーリング材の試験方法」の「4.19 タックフリー試験」に準拠して、23℃50%相対湿度におけるタックフリー時間を測定した。
(3)タレ性
B8U型回転粘度計、ローターNo.7を使用し、25℃における粘度を10rpmと100rpmで測定し、コンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物を塗布した際のタレ性の指標としてTI値(=10rpmの粘度値/100rpmの粘度値)を算出した。TI値4.0以上を○、TI値4.0未満を×と評価した。
(4)ゴム物性
伸び100%時の引張り応力:M100、切断時の引張強さ:Tb、切断時の伸び:Ebを、JIS K6251(1993)「加硫ゴムの引張試験方法」に準拠して測定した。コンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物を約2mmの厚みのシートにし、23℃50%相対湿度の標準状態で10日間硬化養生した。次に、シートからダンベル状4号形を使用して試験片を打ち抜き、引張試験を行った。
【0093】
引裂き強さは、JIS K6252(2001)「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引裂き強さの求め方」に準拠して測定した。この際、前記シートから切込みなしアングル形を使用して試験片を打ち抜き、これを使用して試験を実施した。
【0094】
硬さは、JIS K6253(1997)「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」の「5.デュロメータ硬さ試験(タイプDデュロメータ)」に準拠して測定した。(5)促進暴露試験
JIS B7753に規定するサンシャインウェザオメーター(ブラックパネル温度:63℃、シャワー18分/120分、スガ試験機株式会社製)を用いて評価した。試験片は、コンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物を約2mmの厚みのシートにし、23℃50%相対湿度の標準状態で10日間硬化養生した。次に、このシートから縦100mm×横50mm×厚さ2mmの短冊状に試験片を採取し、促進暴露試験に供した。試験片を目視により観察し、クラック・変色のない場合を○、クラック・変色がわずかに認められる場合を△、目視によるクラック・変色が認められる場合を×と評価した。
【0095】
(6)光沢保持率
JIS K5600−4−7:1999「塗料一般試験方法の鏡面光沢度(60°)に準拠し、促進暴露試験養生後の試験片の鏡面光沢度(micro-TRI-gloss, BYK Gardner社)を初期値とし、これに対する促進暴露試験後の試験片の鏡面光沢度を保持率として評価した。保持率が80%以上を○、60%以上80%未満を△、60%未満を×と評価した。
【0096】
(7)色差(ΔE)
JIS K5600−4−6:1999「塗料一般試験方法の測色(SCE)に準拠し、促進暴露試験養生後の試験片のL(SPECTROPHTOMETER CM-2500d, KONIKA MINOLTA社製)を初期値とし、これに対する促進暴露試験後の試験片のLをΔEで評価した。ΔE≦3を○、3<ΔE≦15を△、15<ΔEを×と評価した。
【0097】
(8)押抜き試験
JHS−424;2004「はく落防止の押抜き試験方法」に準拠して行った。
下地として、JIS A 5372に規定されている上ぶた式U形側溝(ふた)の1種呼び名300(400×600×60mm)(以下、「U形ふた」という)を用いた。プライマーとして1液硬化型ウレタン系樹脂溶剤系プライマー(オート化学工業社製、商品名:OP−2531)を0.15kg/mローラー塗布し、23℃で1時間養生した。次に、樹脂塗膜厚を確保するためU形ふたプライマー塗布面上の四辺に厚さ2mm×幅10mmのバッカーを貼り枠を形成した。次にコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物を枠内に塗布して23℃で7日間養生した。次に、補強層の形成された面の反対側が水中に漬かるように水中に半没させて、補強層を1週間養生した。次いで、補強層の形成されたU形ふたを、穿孔が形成されている側の面を上面として、スパン400mmにてH鋼上にガタがないように載置した。次いで、穿孔底面の中央部に鉛直、均等に荷重がかかるようにロードセルで穿孔底面に載荷した。速度5mm/minで載荷して押抜き試験をおこない、押抜き最大荷重(最大耐荷力)を測定した。最大60mm程度の変位までの剥落防止性能を確認した。日本道路公団試験研究規格「連続繊維シート接着の押抜き試験方法」に規定されている、ロードセルの変位10mm以上、最大耐荷力1.5kN以上というA種基準を満たす場合を○、ロードセルの変位10mm未満、最大耐荷力1.5kN未満を×と評価した。
【表1】

【0098】
実施例5
次に具体的にコンクリート片及びタイルの剥落防止方法を示してその効果を示す。
日本道路公団試験研究規格「連続繊維シート接着の押抜き試験方法」に準拠して、コンクリート構造物又はタイルを張り付けた壁面の表面に形成される補強層の性能を評価した。下地としてU形ふた(400×600×60mm)を使用し、これを24時間水中に浸漬した。次いで、水中から取り出して、穿孔が形成されている側の面を底面とし、この底面と対向する面を表面として、この表面の水分をウェスで拭き取った。次いで、前記表面にプライマーを塗布し、日東紡製3軸ビニロンメッシュ(メッシュ幅2mm)1枚挟み樹脂塗膜を形成して補強層とした。プライマーとしては、1液硬化型ウレタン系樹脂溶剤系プライマー(オート化学工業社製、商品名:OP−2531)を用い、樹脂塗膜を形成する合成樹脂としては、実施例2の透明なペースト状のコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物を用いた。プライマーの使用量を0.2kg/mとした。樹脂塗膜を形成する合成樹脂の樹脂塗膜の膜厚は、1回目がコア部とコア周辺部の実測平均膜厚1.95mm、2回目がコア部とコア周辺部の実測平均膜厚2.80mmであった。次いで、補強層形成後、補強層の形成された側が水中に漬かるように水中に半没させて、補強層を1週間養生した。次いで、補強層の形成されたU形ふたを、穿孔が形成されている側の面を上面として、スパン400mmにてH鋼上にガタがないように載置した。次いで、穿孔底面の中央部に鉛直・均等に荷重がかかるようにロードセルで穿孔底面に載荷した。速度5mm/minで載荷して押抜き試験をおこない、押抜き最大荷重(最大耐荷力)を測定した。最大60mm程度の変位までの剥落防止性能を確認した。その結果、1回目が最大荷重2.0kN、最大荷重時の変位17mm、損傷発生時の変位18mmであり、2回目が最大荷重2.3kN、最大荷重時の変位16mm、損傷発生時の変位36mmであった。これは、日本道路公団試験研究規格「連続繊維シート接着の押抜き試験方法」に規定されている、ロードセルの変位10mm以上、最大耐荷力1.5kN以上という基準を十分に満たしている。
【0099】
実施例6
実施例5において、日東紡製3軸ビニロンメッシュを使用しない以外は同様にして、コンクリート構造物又はタイルを張り付けた壁面の表面に形成される補強層の性能を評価した。樹脂塗膜を形成する合成樹脂の樹脂塗膜の膜厚は、1回目がコア部とコア周辺部の実測平均膜厚1.08mm、2回目がコア部とコア周辺部の実測平均膜厚1.37mmであった。押抜き試験の結果は、1回目が最大荷重3.2kN、最大荷重時の変位60mm、損傷発生時の変位60mmであり、2回目が最大荷重4.4kN、最大荷重時の変位60mm、損傷発生時の変位60mmであった。これは、日本道路公団試験研究規格「連続繊維シート接着の押抜き試験方法」に規定されている、ロードセルの変位10mm以上、最大耐荷力1.5kN以上という基準を十分に満たしている。
【0100】
比較例4
実施例5において、1液硬化型ウレタン系樹脂溶剤系プライマー(オート化学工業社製、商品名:OP−2531)に替えて、セメントモルタル含有エポキシ樹脂系素地調整材(商品名:タフガードE−Wフィラー、日本ペイント社製)を塗布量1.0kg/mで鏝にて塗布して20℃で16時間養生し、更に、湿気硬化型ウレタン樹脂系プライマー(商品名:タフガードR−Mプライマー、日本ペイント社製)を塗布量0.15kg/mでハケにて塗布して20℃で2時間養生した。次に、日東紡製3軸ビニロンメッシュを使用せず、実施例2の透明なコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物に替えて、ミゼロンB−500グレー塗料液(三井金属塗料化学社製、水酸基当量625g/eq、平均官能基数2.7のポリオール成分54質量部、二酸化チタン、二酸化珪素、マイカ、カーボンブラックからなる顔料40質量部、添加剤3質量部からなる塗料液、固形分100%)97質量部、二酸化チタン20質量部からなる成分Aを117質量部と、ミゼロンA−5000硬化剤(三井金属塗料化学社製ポリイソシアネート、イソシアネート基当量135、官能基数2.7、固形分100%)33質量部の成分Bを、卓上ディスパー1500rpmの条件で1分間混合攪拌して得た樹脂組成物を使用した。この樹脂組成物を塗布量1.4kg/m(平均膜厚1.4mm)で鏝にて塗布して3時間養生した。更に、ウレタン系樹脂上塗り塗料(商品名:タフガードUD上塗り、日本ペイント社製)を塗布量0.12kg/mでハケにて塗布して20℃で7日間養生した。その他は実施例5と同様にして押抜き試験を行った。その結果、10mmまでの変位で樹脂膜に亀裂が生じてしまい、基準を満たすことはできなかった。
実施例5、6及び比較例4で得られた結果を表2に示した。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)と揺変性付与剤(B)とを含有する、コンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
さらに湿分により加水分解して活性水素基を再生する基を含有する化合物(C)を含有する、請求項1に記載のコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記湿分により加水分解して活性水素基を再生する基を含有する化合物(C)が、オキサゾリジン環を有する化合物である、請求項2に記載のコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
さらに溶剤(D)と耐候安定剤(E)とを含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)が、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上のポリイソシアネートから誘導されたものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(A)が、高分子のポリオールと、低分子のポリオールと、活性水素基及び光硬化性のエチレン性不飽和基をそれぞれ少なくとも1個以上有する化合物とからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の活性水素含有化合物と、ポリイソシアネートを、水酸基に対してイソシアネート基が過剰な条件で反応させて得られたものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
塗布後に透明樹脂塗膜を形成することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
コンクリート構造物又はタイルを張り付けた壁面の表面に補強層を形成してコンクリート片及びタイルの剥落を防止する方法であって、請求項1〜7のいずれか一項に記載のコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物を塗布して樹脂塗膜を形成する工程、を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
コンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物を塗布する前に、プライマーを塗布してプライマー層を形成する工程を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
予めガラスクロス及び/又は繊維編み上げメッシュを配置してからコンクリート片及びタイルの剥落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物を塗布して樹脂塗膜を形成し、樹脂塗膜中にガラスクロス及び/又は繊維編み上げメッシュを埋没させた補強層を形成することを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。

【公開番号】特開2011−252292(P2011−252292A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125657(P2010−125657)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000133342)株式会社ダイフレックス (24)
【出願人】(000103541)オート化学工業株式会社 (83)
【Fターム(参考)】