説明

コンクリート版舗装の目地構造

【課題】互いに隣り合うコンクリート版の温度伸縮を吸収でき、しかもポンピング現象に目地部下の空洞化が生じないコンクリート版舗装の目地構造の提供。
【解決手段】コンクリート版3を連設し、隣り合うコンクリート版3の目地の下に枕版4を敷設する。枕版4の上で隣り合うコンクリート版3の端部間に緩衝版6を配置する。緩衝版6と隣り合う各コンクリート版3との間に伸縮目地7をそれぞれ設ける。各コンクリート版3と緩衝版6とはそれぞれボルト10,11で枕版4に固定する。各コンクリート版3に設けたボルト通し孔12は、各コンクリート版3の温度伸縮を許容する大きさになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプレストレストコンクリート版(PC版)や鉄筋コンクリート版(RC版)が隣接して敷設されたコンクリート版舗装の目地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンクリート版舗装の目地構造は、図6に示すように、互いに隣り合うコンクリート版50,50の接合端部下に、両者間に跨らせて枕板51を設置し、これに両コンクリート版50,50をボルト52,52によって固定する方法(特許文献1)や、図7に示すように両プキャストコンクリート版50,50間に跨らせて形成した連結棒挿入孔53、54内に鋼棒55を挿入し、固化性のグラウト56によって鋼棒55を連結棒挿入孔53,54内に埋め込むことによってコンクリート版50,50間を一体化し、コンクリート版間に段差を生じさせないようにしている(特許文献2)。
【0003】
一方、例えば、100m以上もの間に継ぎ目のない長スパンのコンクリート版を使用したコンクリート版舗装では、コンクリートの温度変化による伸縮(温度伸縮)により、端部が大きく移動するような場合に、前述の如きコンクリート版間を一体化させる継ぎ目構造とすると、温度伸縮を吸収することができない。
【0004】
そこで従来は、図8に示すように、温度伸縮を許容するための伸縮目地構造が採用されている。この伸縮目地構造は、枕版51の両端にコンクリート版50,50の端部を載せ、その間にコンクリート製の緩衝版59を置き、その緩衝版59の両端と各コンクリート版50,50との間に伸縮目地57,57を介在させ、この伸縮目地57,57によってコンクリート版50,50の温度伸縮を吸収するようにしている。尚、図中58はコンクリート版50,50及び緩衝版59下に充填したグラウト材である。
【特許文献1】特開平11−350409号公報
【特許文献2】特開平7−197406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図8に示す如き伸縮目地を設置すると、この目地部から雨水が舗装版下に入り込み、車両の走行によって踏まれることによるコンクリート版の端部の上下動作によって、雨水が押し出されたり吸い込まれたりする所謂ポンピング現象が生じ、このポンピング現象によってコンクリート版下のグラウト材58が浸食され、図9に示すように、コンクリート版50,50下に空洞ができ、目地部に段差が生じることとなるという問題がある。
【0006】
かかる従来の問題に鑑み、本発明は、長大な目地のない場所打ちのPC版やRC版、或いはプレキャストPC版やプレキャストRC版を使用したコンクリート版舗装にあっても、温度伸縮を充分に吸収でき、しかも前述したポンピング現象による空洞化が生じないコンクリート版舗装の目地構造を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、各コンクリート版の温度伸縮を容易に吸収できるコンクリート版舗装の目地構造を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、舗装面上を重量物が走行する場合でも、各コンクリート版の温度伸縮を安全に容易に吸収できるコンクリート版舗装の目地構造を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、各コンクリート版がボルトで枕版に固定されていても、ボルト締め箇所での各コンクリート版の温度伸縮移動が可能なコンクリート版舗装の目地構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の各目的を達成する本発明の構造を説明すると、下記のとおりである。
【0011】
請求項1の発明は、コンクリート版が連設され、隣り合う前記コンクリート版の目地の下に枕版が敷設され、前記枕版の上で隣り合う前記コンクリート版の端部間に緩衝版を介在させ又は介在せずして互いに隣り合う前記コンクリート版の端部に伸縮目地が設けられているコンクリート版舗装の目地構造であって、
前記コンクリート版の端部はボルトで前記枕版に固定され、
前記コンクリート版に設けられているボルト通し孔は、前記コンクリート版の温度伸縮を許容する大きさになっていることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1において、前記コンクリート版の前記ボルト通し孔が設けられている部分の表面には温度伸縮を許容する大きさで凹部がそれぞれ設けられ、前記凹部の底面には表面が滑り面となっている被押圧部材が設けられ、前記被押圧部材の上には下面が滑り面となっている押さえ部材が前記凹部内で摺動できるように配置され、前記ボルトは前記押さえ部材を貫通して該前記押さえ部材を介して前記コンクリート版を押さえる構造になっており、前記凹部の入口は蓋部材で閉塞されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記コンクリート版に前記凹部と前記ボルト通し孔とが設けられている箇所には、前記凹部の内面に嵌る底部付き筒部と前記ボルト通し孔に嵌る筒部とが一体になった筒状体が嵌められ、前記筒状体の前記底部付き筒部の前記底部が、表面が滑り面となっている前記被押圧部材となっていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3において、前記押さえ部材は上下2枚の座金の間に緩衝層が介在され、下側の前記座金の下面が前記滑り面となっている構造であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るコンクリート版舗装の目地構造では、コンクリート版の端部が、その下側の枕版にボルトで固定され、そのコンクリート版に設けられているボルト通し孔は、コンクリート版の温度伸縮を許容する大きさになっているので、ボルトが中を通っていても温度伸縮を許容する大きさのボルト通し孔の存在により、ボルトに邪魔されずに各コンクリート版がその版面方向に動いて温度伸縮が可能となる。即ち、目地の箇所で各コンクリート版の温度伸縮を吸収することがでる。
【0016】
このような構造で、コンクリート版のボルト通し孔が設けられている部分の表面には温度伸縮を許容する大きさで凹部がそれぞれ設けられ、凹部の底面には表面が滑り面となっている被押圧部材が設けられ、該被押圧部材の上には下面が滑り面となっている押さえ部材が凹部内で摺動できるように配置され、ボルトは押さえ部材を貫通して該前記押さえ部材を介してコンクリート版を押さえる構造になっていると、対向する滑り面の存在により各コンクリート版の温度伸縮移動が容易となり、温度伸縮を容易に吸収することができる。また、凹部の入口が蓋部材で閉塞されていると、舗装面の凹部をなくすことができる。
【0017】
また、コンクリート版に凹部とボルト通し孔とが設けられている箇所には、凹部の内面に嵌る底部付き筒部とボルト通し孔に嵌る筒部とが一体になった筒状体が嵌められ、筒状体の底部付き筒部の底部が、表面が滑り面となっている被押圧部材であると、筒状体の存在による機械的補強効果によって、舗装面上を重量物が走行する場合でも、コンクリート版の温度伸縮を安全に容易に吸収することがでる。
【0018】
さらに、押さえ部材は上下2枚の座金の間に緩衝層が介在され、下側の前記座金の下面が滑り面となっている構造であると、押さえ部材を介してボルトでコンクリート版を押圧しても、緩衝層の存在によりコンクリート版の温度伸縮移動を容易に行わせることができる。また、コンクリート版温度伸縮に際してのボルトの張力変動を緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るコンクリート版舗装の目地構造を実施するための最良の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
本例のコンクリート版舗装の目地構造では、図1に示すように、路盤1の上にグラウト材2を介してコンクリート版3が連続して敷設されている。このコンクリート版3は、長大な目地のない場所打ちのPC版やRC版の他、プレキャストPC版又はプレキャストRC版であってもよい。
【0021】
隣り合うコンクリート版3の目地の下に例えばコンクリート製の枕版4が敷設される。枕版4は、路盤1の対応箇所に凹部5を設けて設置されている。この枕版4の上面も、凹部5を設けていない路盤1の表面と同じ高さになっている。この枕版4の上面にもグラウト材2が同様に設けられている。枕版4の上で隣り合うコンクリート版3の端部間に、コンクリート製の緩衝版6が配置されている。各コンクリート版3の端部には、隣り合う緩衝版6の端部との間隙を埋める伸縮目地7がそれぞれ設けられている。
【0022】
各コンクリート版3はボルト10により押さえ部材8を介し、また緩衝版6はボルト11により押さえ部材9を介してそれぞれ枕版4に固定されている。各コンクリート版3に設けられているボルト通し孔12は、図2に示すように、各コンクリート版3の温度伸縮を許容する大きさ、即ち、温度変化によりコンクリート版3の端部が移動した際に、移動しないボルト10,11に対してコンクリート版3が相対移動できる大きさになっている。
【0023】
この温度伸縮を許容する大きさのボルト通し孔12は、丸孔か温度伸縮方向に長さをもつ長孔で形成されている。緩衝版6に設けられているボルト通し孔13も、緩衝版6の温度伸縮を許容する大きさのボルト通し孔となっている。
【0024】
具体的には、各コンクリート版3のボルト通し孔12が設けられている部分の表面には、図3に示すように、温度伸縮を許容する大きさで凹部14がそれぞれ設けられている。凹部14の底面には、表面が滑り面15となっている被押圧部材16が設けられ、該被押圧部材16の上には下面が滑り面17となっている押さえ部材8が凹部14内で摺動できるように配置されている。
【0025】
ボルト10は、押さえ部材8を貫通し、該前記押さえ部材8を介してコンクリート版3を押さえる構造になっている。凹部14の入口は、蓋部材19で閉塞されている。本例で蓋部材19は、凹部14の入口内面に螺合されている。
【0026】
コンクリート版3における凹部14とボルト通し孔12とが設けられている箇所には、凹部14の内面に嵌る底部(被押圧部材16)付き筒部20とボルト通し孔12に嵌る筒部21とが一体になった筒状体22が嵌められている。筒状体22の底部付き筒部20の底部が、表面が滑り面15となっている被押圧部材16となっている。筒状体22は、無収縮モルタル23でコンクリート版3に固定されている。
【0027】
押さえ部材8は、上下2枚の座金24,25の間にゴム製の緩衝層26が介在され、下側の座金25の下面に滑り面17をもっている構造となっている。
【0028】
ボルト10を設ける箇所で、枕版4には有底縦穴27が設けられ、この有底縦穴27内にアンカーボルト28が嵌められ、アンカーボルト28の上部にはカプラー29の下方部分が螺合されている。アンカーボルト28とカプラー29とは、エポキシ樹脂からなる固定材30で有底縦穴27の中心に縦向きに固定されている。固定材30はカプラー29のネジ孔は塞がないようになっている。ボルト10はこのカプラー29のネジ孔に螺合されて締め付けを行うようになっている。
【0029】
ボルト11による緩衝版6の枕版4に対する固定も、同様な構造としてもよいが、緩衝版6の温度伸縮は長さが短いので、緩衝版6は伸縮移動しないようにボルト11で枕版4に固定してもよい。
【0030】
伸縮目地7には、弾性目地材31が充填されている。
【0031】
次に、ボルト10によるコンクリート版3の枕版4に対する固定方法を、図4(a)〜(e)を参照して説明する。
(イ)図4(a)に示すように、コンクリート版3に凹部14とボルト通し孔12とを削孔し、グラウト材2に孔を削孔し、及び枕版4に有底縦穴27を削孔する。
(ロ)図4(b)に示すように、枕版4の有底縦穴27に、カプラー29付きアンカーボルト28をエポキシ樹脂からなる固定材30で固定するとともに、凹部14とボルト通し孔12とに筒状体22を嵌め、無収縮モルタル23でコンクリート版3に固定する。
(ハ)図4(c)に示すように、緩衝層26付き座金24,25を被押圧部材16の上に置き、この緩衝層26付き座金24,25にボルト10を通し、該ボルト10をカプラー29に螺合し、コンクリート版3を締結する。
(ニ)図4(d)に示すように、凹部14の入口は蓋部材19で閉塞する。
【0032】
このような構造にすると、標準の状態では図5(a)に示すように、ボルト10がボルト通し孔12の中央にあり、弾性目地材31が稍圧縮された通常の状態となるが、コンクリート版3が、熱膨張すると図5(b)に示すように、端部が弾性目地材31側に移動するが、ボルト通し孔12内の半径分だけはボルト10に拘束されることなく移動し、その移動分だけ弾性目地材が圧縮される。
【0033】
逆にコンクリート版3が冷却収縮すると、コンクリート版3の端部は弾性目地材31から離れる方向に移動するが、図5(c)に示すようにその移動は、ボルト通し孔12の内径分は、ボルト10に拘束されることなく移動することとなり、その移動分だけ弾性目地材31が引き伸ばされる。
【0034】
このように本発明では、ボルト10によってコンクリート版3の端部は枕版4に固定されて車両等が走行による繰り返し荷重が作用しても、ポンピング現象が防止され、且つコンクリート版3の温度変化による伸縮作用が生じても固定用のボルト10に拘束されることなくコンクリート版3の端部が移動し、温度伸縮を効果的に吸収することができる。
【0035】
尚、上述の例では、コンクリート版3,3の端部間に緩衝版6を介在させ、これをともに枕版4にボルト止めしている場合を示しているが、例えばコンクリート版3がPC版ではなく、コンクリート版3,3間に作業用の空間を必要としないRC版やプレキャスト版である等の場合においては、この緩衝版6は必ずしも必要とせず、コンクリート版3,3の端面間を付き合わせ、その間に伸縮目地7を介在させる構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(a)は、本例のコンクリート版舗装の目地構造の一例を示す縦断面図、(b)は同平面図である。
【図2】本例のコンクリート版舗装の目地構造でコンクリート版の枕版に対するボルト締め部の縦断面図である。
【図3】同上の部分拡大断面図である。
【図4】(a)〜(d)は図2の製作工程図である。
【図5】(a)〜(c)は、本例の目地構造においてコンクリート版の温度変化による膨張、収縮時のコンクリート版端部の移動状態を示す断面図である。
【図6】従来のコンクリート版舗装のコンクリート版端部間を固定した目地構造の一例を示す断面図である。
【図7】従来のコンクリート版舗装のコンクリート版端部間を固定した目地構造の他の例を示す断面図である。
【図8】従来のコンクリート版舗装の端部のコンクリート版端部を移動可能にした目地構造を示す断面図である。
【図9】同上の目地構造のポンピング現象による空洞が形成された状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 路盤
2 グラウト材
3 コンクリート版
4 枕版
5 凹部
6 緩衝版
7 伸縮目地
8,9 押さえ部材
10,11 ボルト
12,13 ボルト通し孔
14 凹部
15 滑り面
16 被押圧部材
17 滑り面
19 蓋部材
20 底部付き筒部
21 筒部
22 筒状体
23 無収縮モルタル
24,25 座金
26 緩衝層
27 有底縦穴
28 アンカーボルト
29 カプラー
30 固定材
31 弾性目地材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート版が連設され、隣り合う前記コンクリート版の目地の下に枕版が敷設され、前記枕版の上で隣り合う前記コンクリート版の端部間に緩衝版を介在させ又は介在せずして互いに隣り合う前記コンクリート版の端部に伸縮目地が設けられているコンクリート版舗装の目地構造であって、
前記コンクリート版の端部はボルトで前記枕版に固定され、
前記コンクリート版に設けられているボルト通し孔は、前記コンクリート版の温度伸縮を許容する大きさになっていることを特徴とするコンクリート版舗装の目地構造。
【請求項2】
前記コンクリート版の前記ボルト通し孔が設けられている部分の表面には温度伸縮を許容する大きさで凹部がそれぞれ設けられ、前記凹部の底面には表面が滑り面となっている被押圧部材が設けられ、前記被押圧部材の上には下面が滑り面となっている押さえ部材が前記凹部内で摺動できるように配置され、前記ボルトは前記押さえ部材を貫通して該前記押さえ部材を介して前記コンクリート版を押さえる構造になっており、前記凹部の入口は蓋部材で閉塞されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート版舗装の目地構造。
【請求項3】
前記コンクリート版に前記凹部と前記ボルト通し孔とが設けられている箇所には、前記凹部の内面に嵌る底部付き筒部と前記ボルト通し孔に嵌る筒部とが一体になった筒状体が嵌められ、前記筒状体の前記底部付き筒部の前記底部が表面が滑り面となっている前記被押圧部材となっていることを特徴とする請求項2に記載のコンクリート版舗装の目地構造。
【請求項4】
前記押さえ部材は上下2枚の座金の間に緩衝層が介在され、下側の前記座金の下面が前記滑り面となっている構造であることを特徴とする請求項2または3に記載のコンクリート版舗装の目地構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−75339(P2008−75339A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255783(P2006−255783)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(501198039)国土交通省国土技術政策総合研究所長 (23)
【出願人】(000112196)株式会社ピーエス三菱 (181)
【Fターム(参考)】