説明

コンクリート用型枠、コンクリート用型枠の電気ヒータ装置及びコンクリートの養生方法

【課題】電気ヒータの型枠への取り付けを改良してその取り付けななどを容易に行うようにする。
【解決手段】 ンクリート用型枠1の養生として電気ヒータ装置10を取り付けて、電気エネルギーによる発熱により養生を行うようにする。コンクリート用の鋼製の型枠本体2に設けられる養生用の発熱体10Aに固定用の永久磁石14を設ける。養生温度の管理が電気制御によって正確に、しかも容易に行うことができるので、養生に伴うエネルギーの削減を図ることができる。さらに、未硬化のコンクリート8を収容するたことにより、発熱体10Aを永久磁石14を介して型枠本体2に吸引力を利用して固定することができるので、平面部13のような任意の箇所に貼り付けるようにして簡単に装着することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート用型枠、コンクリート用型枠の電気ヒータ装置及びコンクリートの養生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の断熱構造の養生槽を備え、各養生槽内へ蒸気を供給するボイラーを備え、各養生槽内に未硬化のコンクリート 製品を収容し、各養生槽内を上記ボイラーから供給される高温蒸気で満たして硬化を促すコンクリート製品の蒸気養生槽が知られている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−137220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のような蒸気を用いた未硬化のコンクリート製品の養生にあっては、ボイラー、蒸気配管を必要とするので、装置が比較的大きくなってしまうという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために同一出願人は、特願2006−23699号に係る未硬化のコンクリートを収容するコンクリート用型枠本体に電気ヒータを設けたコンクリート用型枠、未硬化のコンクリートを型枠に収容した状態で加熱して硬化を促すコンクリートの養生方法において、前記加熱手段を前記型枠に設けた電気ヒータにより行うコンクリートの養生方法を提案している。
【0005】
本発明はこのような電気ヒータを利用したコンクリート用型枠、コンクリートの養生方法において、電気ヒータの型枠への取り付けを改良してその取り付けを容易に行うことができると共に、その取り外しも容易に行えるようにしたことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、未硬化のコンクリートを収容するコンクリート用の型枠本体に電気ヒータを設けたコンクリート用型枠であって、前記型枠本体と電気ヒータとの間に固定用の磁石を介在することを特徴とするコンクリート用型枠である。
【0007】
請求項2の発明は、未硬化のコンクリートを収容するコンクリート用の型枠本体に設けられる養生用の電気ヒータ本体に固定用の磁石を設けたことを特徴とするコンクリート用型枠の電気ヒータ装置である。
【0008】
請求項3の発明は、未硬化のコンクリートを型枠に収容した状態で加熱して硬化を促すコンクリートの養生方法において、前記加熱手段を前記型枠に磁力により着脱自在に設けたことを特徴とするコンクリートの養生方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、電気エネルギーによる発熱により養生を行うようにしたので、養生温度の管理が電気制御によって正確に、しかも容易に行うことができ、さらに電気ヒータを任意の箇所に貼り付けるようにして簡単に着脱可能に装着することができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、電気エネルギーによる発熱により養生を行うようにしたので、養生温度の管理が電気制御によって正確に、しかも容易に行うことができ、さらに電気ヒータを任意の箇所に貼り付けるようにして簡単に着脱可能に装着することができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、加熱手段を磁力によって型枠本体の所望箇所に固定できると共に、加熱手段を取り外して他の型枠に再び磁力によって簡単に付け替えすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0013】
図1〜3に示す実施例1のコンクリート用型枠1は、例えばビルのコンクリート製の外壁パネル(図示せず)を成形するためのものであり、この型枠本体2は、磁性金属製、例えば18−8ステンレス鋼を除く鋼製であり、この型枠本体2は底板部(図示せず)の前後に前後側板部3,4と、左右に左右側板部5,6を一体的に設けて上部を開口したものである。そして、底板部、前後側板部3,4、左右側板部5,6は連結具(図示せず)によって組み立てられている。そして、上部開口部7から未硬化のコンクリート8を型枠本体2内に収容するものである。前後側板部3,4や左右側板部5,6の外面には補強用リブ9が間隔をおいて格子状に設けられている。
【0014】
前記型枠本体2の内部に収容された未硬化のコンクリート8を硬化させる養生のため、前後側板部3,4と左右側板部5,6に電気ヒータ装置10を装着する。この電気ヒータ装置9は、例えば加熱手段としての電気ヒータ本体である電気式面状発熱体10Aを備えており、この発熱体10Aには電気コード11を介して接続部たる電気プラグ12が接続している。この発熱体10Aは種々の構造のものが知られており、例えば炭素繊維とポリエステル等のフィラメントを混抄した不職布型の面状発熱体やその他の線面発熱体なども知られており、本発明ではこれら全部を面状発熱体に含むものとする。尚、発熱体10Aはシーズヒータ等の線状発熱体により形成してもよく、さらにこれら発熱体10Aは温度上昇に対して自己ヒューズ機能を有して自己温度制御するものが好ましい。尚、本発明は自己温度制御ではなく温度センサを別に備えたようなものでもよい。発熱体10Aの縦横の大きさは、前後側板部3,4、左右側板部5,6において補強用リブ9によって格子状に区切られた平面部13の縦横の大きさよりも小さく形成されるように、例えば縦幅A、横幅Bをそれぞれ300mm、150mm程度の平面矩形に形成している。そして、その消費電力は25〜50W程度であり、また耐熱温度を180℃程度としている。
【0015】
前記電気ヒータ装置10の発熱体10Aの前面にはシート状或いは板状の永久磁石14が設けられると共に、発熱体10Aの後面には断熱層15が設けられている。シート状の永久磁石14は、マグネットシート、ゴム磁石、ボンド磁石等とも称せられ、可撓性に優れたものである。一般に永久磁石は硬くもろく、加工しにくい材料であるが、永久磁石の粉末をゴムやプラスチックに混ぜ合わせて成形することによりゴムのようなしなやかさ性に優れるようにしている。このシート状の永久磁石14は発熱体10Aの前面全体を覆うように接着によって一体化されている。尚、このシート状永久磁石14はフィルム状であってもよく、発熱体10Aの発熱温度に耐えられる温度性能を有する。また、磁石はシート状ではなく、ブロック状のものを発熱体10Aのところどころに設けて、これらの磁石の吸引力によって発熱体10Aを取り付けてもよい。
【0016】
前記断熱層15は発熱体10Aの後面が直接表れないように後面の全体に設けられるものであって、断熱シートや断熱塗装によって設けられている。尚、この断熱層15は発熱体10Aの発熱温度に耐えられる温度性能を有する。
【0017】
尚、図中16は前後側板部3,4、左右側板部5,6の外側を覆うように設けられた平板状の断熱材であり、この断熱材16は平板状に形成された発泡材や断熱シート等の断熱性に優れると共に比較的軽量のものである。そして、断熱材16は前後側板部3,4、左右側板部5,6の後面を補強リブ9を介してその外側を覆うように設けられる。尚、型枠本体2の上面にも上部断熱材17が載置して設けられている。
【0018】
次に前記構成についてその作用を説明する。予め底板部上に前後側板部3,4、左右側板部5,6を組み立てて型枠本体2を形成する。そして、上方から上部開口部7を通して未硬化のコンクリート8を型枠本体2の内部に収容し、コンクリート8を養生する。
【0019】
この養生の際に、電気ヒータ装置10を前後側板部3,4、左右側板部5,6に装着しておく。この電気ヒータ装置10の装着は、永久磁石14を平面部13に吸着させることで行われる。この吸着状態はシート状磁石14が平面部13に全面的に吸着されるようになる。そして、発熱体10Aに接続された電機コード11の電気プラグ12を100Vや200Vの電源に接続する。
【0020】
この後、前後側板部3,4、左右側板部5,6の外側、上部開口部7の上方に、断熱材16、上部断熱材17を配置する。
【0021】
そして、電源(図示せず)より電気コード11を介して給電を行うことにより発熱体10Aは発熱し、この熱は永久磁石14を通して平面部13に至り、さらに鋼製の平面部13を通してコンクリート8を加熱する。この加熱によりコンクリート8は雰囲気温度よりも高温状態で温められて養生期間を早めることができる。尚、この発熱した熱の一部は、外側に放熱されるようになるが、外側に配置された断熱層15によって発熱体10Aの放熱は阻止される。また永久磁石14の周囲の平面部13においては、外側に表れてそこから放熱するようになるが、そのような放熱を断熱材16により阻止し、さらには型枠本体2における上方への放熱を上部断熱材17により阻止するようになっている。
【0022】
このような養生を行った後に、型枠本体2を分解、除去することで、コンクリート製品を取り出すものである。そして再び型枠本体2を組立てた後に未硬化のコンクリートを再び収容し、そして発熱体10Aの発熱によってコンクリートの養生を促進する。
【0023】
このような型枠1によるコンクリート製品の成型が終了したときには、予め型枠本体2より電気ヒータ装置10を永久磁石14の磁力に抗して取り外し、そして型枠本体2を分解して倉庫などに収納する。尚、取り外された電気ヒータ装置10は再び他の型枠に使用される。
【0024】
以上のように、前記実施例ではコンクリート用型枠1の養生として電気ヒータ装置10を取り付けて、電気エネルギーによる発熱により養生を行うようにしたので、養生温度の管理が電気制御によって正確に、しかも容易に行うことができるので、養生に伴うエネルギーの削減を図ることができる。また、型枠本体2に養生用の電気ヒータ装置10を設けることでボイラーや蒸気配管等大規模な設備をしないため、大型の設備を必要としないので、例えばコンクリート製品製造工場のほかに、建設現場またはその近傍での製造が容易にでき、輸送コスト、ひいては製造コストを低減することができる。
【0025】
さらに、未硬化のコンクリート8を収容するコンクリート用の鋼製の型枠本体2に設けられる養生用の発熱体10Aに固定用の永久磁石14を設けたことにより、発熱体10Aを永久磁石14を介して型枠本体2に吸引力を利用して固定することができるので、平面部13のような任意の箇所に貼り付けるようにして簡単に装着することができる。
【0026】
また、未硬化のコンクリート8を収容するコンクリート用の型枠本体2に電気式発熱体10Aを設けたコンクリート用型枠であって、前記型枠本体2と発熱体10Aとの間に永久磁石を介在することにより、発熱体10Aを磁力によって型枠本体2の所望箇所、例えば実施例のように補強用リブ9に囲まれた平面部13に固定することができる。 さらに、未硬化のコンクリート8を型枠本体2に収容した状態で加熱して硬化を促すコンクリート8の養生方法において、前記加熱手段である発熱体10Aを型枠本体2に磁力により着脱自在に設けたことにより、発熱体10Aを磁力によって型枠本体2の所望箇所に固定できると共に、発熱体10Aを取り外して他の型枠に再び磁力によって簡単に付け替えすることができる。
【0027】
さらに、実施例のように永久磁石14を可撓性のシート状のようにすることで、永久磁石14を平面部13に沿って面接触するように固定できるので、伝熱面積を確保することができ、伝熱効率を向上することができる。
【0028】
しかも、発熱体10Aの外側には断熱層15を設けたことにより、発熱体10Aの熱が外側に放熱せず、熱効率を向上することができる。
【実施例2】
【0029】
図4〜5に示した実施例2は、トンネル内で覆工コンクリートを打設する装置を示しており、トンネル21内には覆工コンクリート打設装置の一部として断面がアーチ型に配置された型枠22と、この鋼製型枠22を支持する台車23付き支持装置24が設置されている。そしてトンネル21の内周面21Aと型枠22との間にコンクリート打設室25が順次設けられる。これらのコンクリート打設室25にコンクリート(図示せず)を打設することで覆工コンクリート(図示せず)がトンネル21の内周21Aでトンネル21の長手方向に沿って成形される。
【0030】
そして、型枠22の下面には実施例1と同様な電気ヒータ装置10が間隔をおいて設けられている。この電気ヒータ装置10の配置は、発熱体10Aの熱によって型枠22の全域の表面温度がほぼ均一になるように考慮されている。
【0031】
したがって、トンネル21内で型枠22を組んでコンクリート打設室25を形成すると共に、型枠22に発熱体10Aを永久磁石14を介して固定する、そして、コンクリート打設室25にコンクリートを打設し、そして電気ヒータ装置10に通電して養生する。この養生の際、コンクリートが温められて養生が促進されるものである。
【0032】
以上のように、実施例2においても実施例1と同様に電気ヒータ装置10による電気エネルギーによる発熱により養生を行うようにしたので、養生温度の管理が電気制御によって正確に、しかも容易に行うことができ、また、ボイラーや蒸気配管等大規模な設備をしないため、トンネル工事における設備の大型化を解消することができ、工期の短縮化や工費の節減を図ることができる。
【実施例3】
【0033】
図6に示した実施例3では、発熱体10Aの後面に磁石14を、この磁石14の後面に断熱層15を設けたものである。このように発熱体10Aを前側板部3、ひいては型枠本体2に直接貼り付けするように接続することでコンクリート8への熱伝導をいっそう向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように本発明に係るコンクリート用型枠、コンクリート用型枠の電気ヒータ装置及びコンクリートの養生方法は、種々の用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1を示す全体の一部切り欠き斜視図である。
【図2】本発明の実施例1を示す要部の断面図である。
【図3】本発明の実施例1を示す要部の一部切り欠き斜視図である。
【図4】本発明の実施例2を示す全体の断面図である。
【図5】本発明の実施例2を示す要部の断面図である。
【図6】本発明の実施例3を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
2 型枠本体
8 コンクリート
10 電気ヒータ装置
10A 発熱体
14 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未硬化のコンクリートを収容するコンクリート用の型枠本体に電気ヒータを設けたコンクリート用型枠であって、前記型枠本体と電気ヒータとの間に固定用の磁石を介在することを特徴とするコンクリート用型枠。
【請求項2】
未硬化のコンクリートを収容するコンクリート用の型枠本体に設けられる養生用の電気ヒータ本体に固定用の磁石を設けたことを特徴とするコンクリート用型枠の電気ヒータ装置。
【請求項3】
未硬化のコンクリートを型枠に収容した状態で加熱して硬化を促すコンクリートの養生方法において、前記加熱手段を前記型枠に磁力により着脱自在に設けたことを特徴とするコンクリートの養生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−114376(P2008−114376A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296873(P2006−296873)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(596070401)株式会社浅見製作所 (7)
【Fターム(参考)】