説明

コンクリート締固め用バイブレータ、コンクリート締固め用バイブレータシステム及びコンクリート締固め用バイブレータ送り方法

【解決手段】コンクリート締固め用バイブレータ28においては、振動体29に接続した電気ケーブル31を長尺剛体パイプ32に挿通して長尺剛体パイプ32の基端部から引き出し、振動体29を長尺剛体パイプ32の先端部に連結している。長尺剛体パイプ32は、互いに分離した複数の分割剛体パイプと、互いに隣接する両分割剛体パイプ間を着脱可能に連結する連結体とを備えている。コンクリート締固め用バイブレータ28をコンクリート打設室3外からコンクリート打設室3内に挿入する際、各分割剛体パイプを先端部側のものから順次連結しながら前進させる。コンクリート締固め用バイブレータ28をコンクリート打設室3内からコンクリート打設室3外へ引き出す際、各分割剛体パイプを基端部側のものから順次分離しながら後退させる。
【効果】コンクリート打設室3内でコンクリート締固め用バイブレータ28を円滑に移動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にトンネルにおける覆工コンクリートの品質を高めるためにその覆工コンクリートを締固める際に利用するバイブレータ及びそのバイブレータを利用したバイブレータシステム、並びに、そのバイブレータの送り方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1では、トンネルのコンクリート打設室内に挿入される振動具において、振動部が長尺の接続ケーブルを介して電源と接続され、このコンクリート打設室内にコンクリートを注入した後、その接続ケーブルをリールに巻いて振動部をコンクリート打設室内で移動させることによりこのコンクリートを締固めている。
【特許文献1】特開第2001−262986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1では、コンクリート打設室内のコンクリートで振動部を接続ケーブルにより移動させると、接続ケーブルには大きな張力が生じる。その接続ケーブルの断面積があまり小さ過ぎると、接続ケーブルの張力が不足して振動部を接続ケーブルにより円滑に移動させることができない。そのため、接続ケーブルの断面積を大きくしてその強度を上げる必要があった。しかし、接続ケーブルの断面積をあまり大きくし過ぎると、接続ケーブルをリールに対し円滑に巻くことができなかった。従って、コンクリートの締固めを確実に行うことができなかった。
【0004】
この発明は、コンクリート打設室内でバイブレータを円滑に移動させるとともに、コンクリート打設室内でバイブレータによりコンクリートの締固めを確実に行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
後記実施形態の図面(図1〜4及び図7〜10に示す第1実施形態、図5及び図7〜10に示す第2実施形態、図6及び図7〜10に示す第3実施形態、図11〜13に示す第4実施形態)の符号を援用して本発明を説明する。
【0006】
請求項1の発明にかかるコンクリート締固め用バイブレータ28(第1〜4実施形態に対応)においては、振動体29に接続した電気ケーブル31を長尺剛体パイプ32に挿通してその長尺剛体パイプ32の基端部から引き出し、この振動体29をこの長尺剛体パイプ32の先端部に連結している。ちなみに、「剛体」とは、一般的な辞書によると、厳密にはどのような力を加えても形や体積が変化しない理想的な固体(完全剛体)を言うが、ここでは、長尺剛体パイプ32が金属管であるために外力による変形が非常に少ない物体を言う。
【0007】
請求項1の発明では、バイブレータ28において、振動体29に接続した電気ケーブル31を挿通する長尺剛体パイプ32を利用したので、バイブレータ28の強度を向上させることができる。そのため、請求項3の発明にかかるコンクリート締固め用バイブレータシステムにおいてバイブレータ28をコンクリート打設室3外からコンクリート打設室3内に挿入したりコンクリート打設室3内からコンクリート打設室3外へ引き出したりする際、バイブレータ28の変形を防止し、従来技術の問題点を解消してバイブレータ28をコンクリート打設室3内で円滑に移動させることができる。
【0008】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明(第1,3実施形態に対応)において、前記長尺剛体パイプ32は、互いに分離した複数の分割剛体パイプ33,34,35と、この各分割剛体パイプ33,34,35のうち互いに隣接する両分割剛体パイプ33,34間と34,34間と34,35間を着脱可能に連結する連結体36とを備え、この各分割剛体パイプ33,34,35のうち、最先端部側の分割剛体パイプ33に前記振動体29を連結するとともに、最基端部側の分割剛体パイプ35から前記電気ケーブル31を引き出している。この連結体36としては、請求項2の発明以外に、軸部と孔部とを単に嵌合させるだけのものであってもよい。請求項2の発明では、請求項3の発明にかかるコンクリート締固め用バイブレータシステムにおいて、バイブレータ28をコンクリート打設室3外からコンクリート打設室3内に挿入する際に各分割剛体パイプ33,34,35を順次連結しながら行ったり、コンクリート打設室3内からコンクリート打設室3外へ引き出す際に各分割剛体パイプ33,34,35を順次分離しながら行うことができる。そのため、バイブレータ28が嵩張らず、バイブレータ28の設置スペースを節約することができる。
【0009】
請求項3の発明にかかるコンクリート締固め用バイブレータシステム(第1〜4実施形態に対応)においては、請求項1または請求項2に記載のコンクリート締固め用バイブレータ28をコンクリート打設室3外からコンクリート打設室3内にガイド4,7,11,56に沿って前進向きXFへ挿入する前進送り装置MFと、請求項1または請求項2に記載のコンクリート締固め用バイブレータ28をコンクリート打設室3内からコンクリート打設室3外へガイド4,7,11,56に沿って後退向きXBへ引き出す後退送り装置MBとのうち、少なくとも後退送り装置MBを備えている。例えば、前記コンクリート打設室3はトンネル1内に設置した型枠2とトンネル1の内周壁面1aとの間に設けられ、後退把持機構9及び前進把持機構46が前進位置Fと後退位置Bとの間で移動する際にコンクリート打設室3内でトンネル1の長手方向Xに沿って移動する。
【0010】
請求項3の発明では、バイブレータ28の強度を向上させることができるので、バイブレータ28をコンクリート打設室3外からコンクリート打設室3内に挿入したりコンクリート打設室3内からコンクリート打設室3外へ引き出したりする際、バイブレータ28の変形を防止し、従来技術の問題点を解消してバイブレータ28をコンクリート打設室3内で円滑に移動させることができる。
【0011】
請求項4の発明にかかるコンクリート締固め用バイブレータ送り方法(第1実施形態に対応)においては、請求項2に記載のコンクリート締固め用バイブレータ28をコンクリート打設室3外からコンクリート打設室3内に挿入する際、各分割剛体パイプ33,34,35を先端部側のものから順次連結しながら前進させる。
【0012】
請求項5の発明にかかるコンクリート締固め用バイブレータ送り方法(第1実施形態に対応)においては、請求項2に記載のコンクリート締固め用バイブレータ28をコンクリート打設室3内からコンクリート打設室3外へ引き出す際、各分割剛体パイプ33,34,35を基端部側のものから順次分離しながら後退させる。
【0013】
請求項4〜5の発明では、バイブレータ28が嵩張らず、バイブレータ28の設置スペースを節約することができる。
請求項2の発明を前提とする第6の発明(第1,3実施形態に対応)において、前記連結体36は分割剛体パイプ33,34,35に対しねじ部39,40,42(雌雄ねじ部)により着脱可能に連結されている。第6の発明では、各分割剛体パイプ33,34,35の着脱を簡単な連結構造のもとで容易に行うことができる。
【0014】
請求項3の発明を前提とする第7の発明(第4実施形態に対応)において、前記後退送り装置MBは、コンクリート締固め用バイブレータ28の長尺剛体パイプ32に対し位置調節可能に取り付けられる連結部材57,49と、この連結部材57に連結された牽引索54と、コンクリート締固め用バイブレータ28を後退向きXBへ引くようにこの牽引索54を送る送り操作部55とを備えている。第7の発明では、後退送り装置MBを簡単な構造にすることができる。
【0015】
請求項3の発明を前提とする第8の発明(第4実施形態に対応)において、前記前進送り装置MFは、コンクリート締固め用バイブレータ28の長尺剛体パイプ32に対し位置調節可能に取り付けられる連結部材49と、この連結部材49に連結された牽引索54と、コンクリート締固め用バイブレータ28を前進向きXFへ引くようにこの牽引索54を送る送り操作部55とを備えている。第8の発明では、前進送り装置MFを簡単な構造にすることができる。
【0016】
第7の発明または第8の発明を前提とする第9の発明(第4実施形態に対応)において、前記連結部材49は、長尺剛体パイプ32に対し位置調節可能に遊嵌される力伝達部51を有し、牽引索54を送る際にこの力伝達部51で長尺剛体パイプ32に係止されて長尺剛体パイプ32とともに移動する。第9の発明では、長尺剛体パイプ32に対する連結部材49の位置調節と係止とを容易に行うことができる。
【0017】
請求項3の発明を前提とする第10の発明(第1〜3実施形態に対応)において後退送り装置MBは、下記の後退把持機構9と駆動機構10,13とを備えている。この後退把持機構9においては、コンクリート打設室3内に挿入されるバイブレータ28をコンクリート打設室3外で把持する把持状態Pとその把持状態Pを解除する把持解除状態Qとを取り得る。この駆動機構10,13においては、その後退把持機構9を前進位置Fと後退位置Bとの間で往復移動させるとともに、その後退把持機構9が前進位置Fから後退位置Bへ移動する際に前記把持状態Pになるとともにその後退把持機構9が後退位置Bから前進位置Fへ移動する際に前記把持解除状態Qになるように、その後退把持機構9を駆動させて、前記バイブレータ28をコンクリート打設室3内で移動させる。例えば、この後退把持機構9は、案内レール6上をバイブレータ28の移動方向Xに沿って往復移動する。ちなみに、後退把持機構9を把持状態Pにするタイミングや、後退把持機構9を把持解除状態Qにするタイミングについては、後退把持機構9の往復移動位置に合わせて適宜設定することができる。第10の発明では、従来技術と異なり接続ケーブルを採用せず、その接続ケーブルに代えて上記後退把持機構9及び駆動機構10,13を採用しているので、従来技術の問題点を解消してバイブレータ28をコンクリート打設室3内で円滑に移動させることができる。
【0018】
第10の発明を前提とする第11の発明(第1〜3実施形態に対応)において、前記駆動機構10,13は、前記後退把持機構9を前進位置Fと後退位置Bとの間で往復移動させる往復駆動部(例えば、油圧等による流体シリンダ13)のほかに、その後退把持機構9を前進位置Fから後退位置Bへ移動させる駆動力により後退把持機構9を把持解除状態Qから把持状態Pにするとともに、その後退把持機構9を後退位置Bから前進位置Fへ移動させる駆動力により後退把持機構9を把持状態Pから把持解除状態Qにする把持駆動部10、例えば流体シリンダ13に連結したリンク機構、を備えている。第11の発明では、後退把持機構9の前進及び後退と後退把持機構9の把持及び把持解除とを行う駆動機構10,13を簡単な構造にすることができる。
【0019】
第10の発明または第11の発明を前提とする第12の発明(第1〜3実施形態に対応)において、前記後退把持機構9は、バイブレータ28を挟持する把持状態Pとその挟持を解除する把持解除状態Qとを取り得る挟持部材23,25を備えている。第12の発明では、バイブレータ28を挟持部材23,25により機械的に挟持して把持するので、バイブレータ28を確実に送ることができる。
【0020】
請求項3の発明を前提とする第13の発明(第3実施形態に対応)において前進送り装置MFは、下記の前進把持機構46と駆動機構10,13とを備えている。この前進把持機構46においては、コンクリート打設室3内に挿入されるバイブレータ28をコンクリート打設室3外で把持する把持状態Pとその把持状態Pを解除する把持解除状態Qとを取り得る。この駆動機構10,13においては、その前進把持機構46を前進位置Fと後退位置Bとの間で往復移動させるとともに、その前進把持機構46が後退位置Bから前進位置Fへ移動する際に前記把持状態Pになるとともにその前進把持機構46が前進位置Fから後退位置Bへ移動する際に前記把持解除状態Qになるように、その把持機構前進46を駆動させて、前記バイブレータ28をコンクリート打設室3内で移動させる。第13の発明では、従来技術と異なり接続ケーブルを採用せず、その接続ケーブルに代えて上記前進把持機構46及び駆動機構10,13を採用しているので、従来技術の問題点を解消してバイブレータ28をコンクリート打設室3内で円滑に移動させることができる。
【0021】
第13の発明を前提とする第14の発明(第3実施形態に対応)において、前記駆動機構10,13は、前記前進把持機構46を前進位置Fと後退位置Bとの間で往復移動させる往復駆動部(例えば、油圧等による流体シリンダ13)のほかに、その前進把持機構46を後退位置Bから前進位置Fへ移動させる駆動力により前進把持機構46を把持解除状態Qから把持状態Pにするとともに、その前進把持機構46を前進位置Fから後退位置Bへ移動させる駆動力により前進把持機構46を把持状態Pから把持解除状態Qにする把持駆動部10を備えている。第14の発明では、前進把持機構46の前進及び後退と前進把持機構46の把持及び把持解除とを行う駆動機構10,13を簡単な構造にすることができる。
【0022】
第13の発明または第14の発明を前提とする第15の発明(第3実施形態に対応)において、前記前進把持機構46は、バイブレータ28を挟持する把持状態Pとその挟持を解除する把持解除状態Qとを取り得る連結部材49を備えている。第15の発明では、バイブレータ28を連結部材49により機械的に挟持して把持するので、バイブレータ28を確実に送ることができる。
【0023】
第15の発明を前提とする第16の発明(第3実施形態に対応)において、前記連結部材49は、バイブレータ28に対し位置調節可能に遊嵌される力伝達部51を有し、前進把持機構46を後退位置Bから前進位置Fへ移動させる際にこの力伝達部51でバイブレータ28に係止されてバイブレータ28とともに移動する。第16の発明では、連結部材49を簡単な構造にすることができる。
【0024】
第10の発明または第11の発明または第12の発明または第13の発明または第14の発明または第15の発明または第16の発明を前提とする第17の発明(第1〜3実施形態に対応)において、後退送り装置MBと前進送り装置MFとに互いに切り替える手段を備えている。例えば、後退送り装置MBにおいて、後退把持機構9を把持解除状態Qのまま維持するストッパ45を着脱可能に取り付けるとともに、前進把持機構46を着脱可能に取り付けて前進送り装置MFとする。第17の発明では、後退送り装置MBと前進送り装置MFとを兼用して簡単な構造にすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、コンクリート打設室3内でバイブレータ28を円滑に移動させるとともに、コンクリート打設室3内でバイブレータ28によりコンクリートの締固めを確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態について図1〜4及び図7〜10を参照して説明する。
図1(a)(b)(c)、図2(a)(b)(c)及び図10(a)に示すように、トンネル1内に設置された型枠2とトンネル1の内周壁面1aとの間にはアーチ状のコンクリート打設室3が設けられている。このコンクリート打設室3内の天井部分には内周方向の複数箇所(例えば四箇所)で複数の内側ガイド4がトンネル1の長手方向Xへ並設されている。図10(b)(c)に示すように、この各内側ガイド4は円環状の案内輪4aを有している。なお、型枠2には各内側ガイド4の付近で検査窓2aが設けられている。
【0027】
前記コンクリート打設室3の外端部を仕切る型板3aの付近において内周方向の複数箇所(例えば四箇所)でそれぞれ支持台5が型枠2の内側から外側へトンネル1の長手方向Xに沿って延設されている。この各支持台5には型板3aの外側付近からトンネル1の長手方向Xに沿って延びる案内レール6が載設されている。図7(a)(b)及び図10(d)に示すように、この各案内レール6でトンネル1の長手方向Xの両側である両端部(型板3a側の一端部とその反対側になる他端部)にはガイドローラ台7(外側ガイド)が取り付けられている。後退把持機構9と把持駆動部10(駆動機構の一部であるリンク機構)とを組み付けた送り機構8がこの両ガイドローラ台7間で各案内レール6に対しトンネル1の長手方向Xへ移動可能に支持されている。この各案内レール6で型板3a側の一端部には型板3aに面する洗浄リング台11(外側ガイド)がガイドローラ台7に隣接して取り付けられている。
【0028】
前記各案内レール6内には往復駆動部である油圧シリンダ13(駆動機構の一部である流体シリンダ)が取り付けられ、そのピストンロッド13aが案内レール6の一端部側へ向けて延びている。図8及び図9(a)(b)に示すように、前記送り機構8の把持駆動部10においては、第一レバー14と第二レバー15と第三レバー16とがそれぞれ可動台17に対し支軸18,19,20により回動可能に支持されている。この第一レバー14の第一腕部14aと第二レバー15の第一腕部15a、この第二レバー15の第二腕部15bと第三レバー16の腕部16a、この第一レバー14の第二腕部14bと前記油圧シリンダ13のピストンロッド13aとは、それぞれ、長孔21に対するピン22の係入による滑り対偶により互いに連結されている。前記送り機構8の後退把持機構9においては、下側挟持体23(挟持部材)が前記可動台17に対し上下動可能に支持されているとともに前記第二レバー15の第一腕部15aに対し支軸24で回動可能に支持され、上側挟持体25(挟持部材)が前記第三レバー16の腕部16aに対し支軸26で回動可能に支持されているとともに圧縮コイルばね27により付勢されている。前記ピストンロッド13aが前進向きXFへ伸長すると、前記送り機構8が案内レール6の一端部側に接近して前進位置Fとなり、前記ピストンロッド13aが後退向きXBへ収縮すると、前記送り機構8が案内レール6の一端部側から離間して後退位置Bとなる。
【0029】
ちなみに、前記送り機構8(後退把持機構9及び把持駆動部10)と油圧シリンダ13とから後退送り装置MBが構成されている。
図3(a)(b)に示すように、各バイブレータ28においては、剛体振動パイプ30(金属管)を有する振動体29に接続された電気ケーブル31が長尺剛体パイプ32(金属管)に挿通されている。この長尺剛体パイプ32は、互いに分離された複数(例えば5本)の分割剛体パイプ33,34,35と、この各分割剛体パイプ33,34,35のうち互いに隣接する両分割剛体パイプ33,34間と34,34間と34,35間を連結する連結体36とを備えている。前記振動体29の剛体振動パイプ30は最先端部側の分割剛体パイプ33に取着されている。図4(b)(c)に示すように、前記連結体36においては、連結管37の外周に回動操作部38が形成され、この回動操作部38の両側でこの連結管37の外周に雄ねじ部39,40が形成されている。この連結体36の両雄ねじ部39,40のうち一方の雄ねじ部39が左ねじになっているとともに他方の雄ねじ部40が右ねじになっている。前記電気ケーブル31は、各分割剛体パイプ33,34,35及び連結体36の連結管37に挿通されて最基端部側の分割剛体パイプ35から引き出されている。図4(a)(c)に示すように、前記各分割剛体パイプ33,34,35の先端部及び基端部にはそれぞれ連結筒41が螺着され、この各連結筒41の内周には前記連結体36の両雄ねじ部39,40のうち左ねじの雄ねじ部39または右ねじの雄ねじ部40が螺合される雌ねじ部42が形成されている。この連結体36の連結管37は互いに隣接する両分割剛体パイプ33,34,35の連結筒41に挿嵌される。この連結体36の回動操作部38を一方向へ回動せると、雌雄ねじ部としてこの連結体36の両雄ねじ部39,40がこの両分割剛体パイプ33,34,35の雌ねじ部42に螺合され、両分割剛体パイプ33,34,35の連結筒41が互いに接近して連結体36の回動操作部38に当接し、両分割剛体パイプ33,34,35と連結体36とが互いに連結される。また、この連結体36の回動操作部38を逆方向へ回動せると、両分割剛体パイプ33,34,35の連結筒41が互いに離間して連結体36の回動操作部38から離れ、連結体36の両雄ねじ部39,40が両分割剛体パイプ33,34,35の雌ねじ部42から外れて両分割剛体パイプ33,34,35と連結体36とが互いに分離される。
【0030】
前記各バイブレータ28をコンクリート打設室3外からコンクリート打設室3内に前進向きXFへ挿入する際には、図1(a)に示すように互いに分離された各分割剛体パイプ33,34,35を作業者Wが図1(b)に示すように所定位置で先端部側のものから順次連結しながら各分割剛体パイプ33,34,35の連結ごとに前進させる。図1(c)に示すように各分割剛体パイプ33,34,35が互いに連結された各バイブレータ28は、前記両ガイドローラ台7上と後退把持機構9の上下両側挟持体25,23間と洗浄リング台11内とに挿入されるとともに、型板3aのシール口部からコンクリート打設室3内に挿入されて各ガイド4の案内輪4a内に挿入される。
【0031】
このようにしてコンクリートの打設前に各バイブレータ28をコンクリート打設室3内に挿入して振動体29をトンネル1の長手方向Xでコンクリート打設室3内の最深部に位置させた後、図2(a)に示すようにこのコンクリート打設室3内に覆工コンクリートCを下部側から天井部分側へ順次充填する。
【0032】
前記各バイブレータ28をコンクリート打設室3内からコンクリート打設室3外へ後退向きXBへ引き出す際には、図2(a)に示すように互いに連結された各分割剛体パイプ33,34,35を作業者Wが図2(b)に示すように所定位置で基端部側のものから順次分離しながら前記油圧シリンダ13を各分割剛体パイプ33,34,35の分離ごとに繰り返し操作して後退させる。この油圧シリンダ13においては、ピストンロッド13aが収縮して把持駆動部10の第一レバー14の第二腕部14bに回動力(駆動力)が加わると、この把持駆動部10により後退把持機構9の上下両側挟持体25,23が互いに接近してバイブレータ28を挟持する把持状態Pとなる。また、このピストンロッド13aが伸長して把持駆動部10の第一レバー14の第二腕部14bに回動力(駆動力)が加わると、この把持駆動部10により後退把持機構9の上下両側挟持体25,23が互いに離間してバイブレータ28の挟持を解除する把持解除状態Qとなる。そのため、油圧シリンダ13のピストンロッド13aの後退により後退把持機構9が前進位置Fから後退位置Bへ移動する際にバイブレータ28を把持するとともに、そのピストンロッド13aの前進により後退把持機構9が後退位置Bから前進位置Fへ移動する際にバイブレータ28の把持を解除する往復動作を繰り返す。従って、バイブレータ28は、その振動体29によりコンクリート打設室3内で覆工コンクリートCの締固めを行いながら、トンネル1の長手方向Xに沿って最深部側から入口側へ強制的に送られ、図2(c)に示す状態となる。
【0033】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について第1実施形態との相違点を中心に図5及び図7〜10を参照して説明する。ちなみに、図5(a)は図1(a)に対応し、図5(b)は図1(c)に対応し、図5(c)は図2(a)に対応し、図5(d)は図2(c)に対応する。
【0034】
この第2実施形態における長尺剛体パイプ32は、第1実施形態における長尺剛体パイプ32と異なり、各分割剛体パイプ33,34,35に分離できず、その長尺剛体パイプ32のまま、バイブレータ28をコンクリート打設室3外からコンクリート打設室3内に挿入したりコンクリート打設室3内からコンクリート打設室3外へ引き出す。なお、この第2実施形態では、前記各案内レール6の他端部付近で支持ローラ台12(外側ガイド)が各支持台5に対しトンネル1の長手方向Xへ移動可能に支持されてこの他端部に対し接近及び離間し得る。この支持ローラ台12と各バイブレータ28の長尺剛体パイプ32の基端部との間には連動チェーン43が連結されている。図5(d)に示す状態で、バイブレータ28の長尺剛体パイプ32の基端部にある連動チェーン43により支持ローラ台12が引かれてこの長尺剛体パイプ32を支えながら支持台5に沿って後退する。
【0035】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について第1実施形態との相違点を中心に図6及び図7〜10を参照して説明する。
【0036】
第1実施形態においては送り機構8(後退把持機構9及び把持駆動部10)と油圧シリンダ13とにより後退送り装置MBが構成されているが、第3実施形態ではこの後退送り装置MBを利用して前進送り装置MFに転用している。この前進送り装置MFにおいては、把持駆動部10の可動台17に形成された止め孔44に対しストッパとしての止めピン45が着脱可能に挿着されて第二レバー15の上動を阻止しているために、後退把持機構9の上下両挟持体25,23が常に把持解除状態Qのまま維持され、この第二レバー15の第二腕部15bに対し前進把持機構46が着脱可能に取り付けられている。
【0037】
この前進把持機構46においては、第二腕部15bにリンク47が軸部48により回動可能に支持されているとともに、このリンク47に把持腕49(連結部材)が軸部50により回動可能に支持され、この把持腕49にはC形状の力伝達部51が形成されている。この力伝達部51は上側の係止腕部52と下側の係止腕部53とを有し、これらの係止腕部52,53の内側には図12(b)に示すように段差状の滑止め部52a,53aが形成されている。この力伝達部51は前記バイブレータ28の長尺剛体パイプ32に対し遊嵌される。図6(a)に示すように、ピストンロッド13aが伸長して送り機構8が前進すると、前記前進把持機構46においてその前進に伴う力により把持腕49がリンク47を介して前進向きXFへ引かれて傾動し、この把持腕49の力伝達部51がその滑止め部52a,53aで長尺剛体パイプ32に対しかみ込んで係止される。そのため、把持腕49は長尺剛体パイプ32とともに前進する。また、図6(b)に示すように、ピストンロッド13aが収縮して送り機構8が後退すると、前記前進把持機構46においてその後退に伴う力により把持腕49がリンク47を介して後退向きXBへ引かれて傾動し、この把持腕49の力伝達部51の滑止め部52a,53aと長尺剛体パイプ32の外周との間には隙間が生じる。そのため、長尺剛体パイプ32が停止したまま、把持腕49のみが後退する。
【0038】
前記止めピン45を把持駆動部10の可動台17の止め孔44から抜くとともに、前記前進把持機構46(リンク47及び把持腕49)を取り外すと、元の後退送り装置MBとして機能させることができる。
【0039】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について第1実施形態との相違点を中心に図11〜13を参照して説明する。ちなみに、図11(a)は図5(a)に対応し、図11(b)は図5(b)に対応し、図11(c)は図5(c)に対応し、図11(d)は図5(d)に対応する。
【0040】
この第4実施形態では、第1実施形態の後退送り装置MB及び第3実施形態の前進送り装置MFをそれぞれ手動式の簡易的なものに変更し、第2実施形態と同様に各分割剛体パイプ33,34,35に分離できない長尺剛体パイプ32を採用している。
【0041】
この第4実施形態の前進送り装置MFは、図12(a)(b)に示すように、バイブレータ28の長尺剛体パイプ32に対し位置調節可能に取り付けられる連結部材としての把持腕49と、この把持腕49に連結された牽引索としてのチェーン54と、バイブレータ28を後退向きXBへ引くようにこのチェーン54を巻くことなく長手方向に沿って送る送り操作部としてのチェーンホイスト55とを備えている。この把持腕49は第3実施形態のものと同様である。バイブレータ28をコンクリート打設室3外からコンクリート打設室3内に内側ガイド4や洗浄リング台11やガイドローラ台7やガイド管56(外側ガイド)に沿って挿入する際には、長尺剛体パイプ32に取り付ける把持腕49の位置を変更しながら、チェーンホイスト55を操作して長尺剛体パイプ32を前進向きXFへ引く。その際、把持腕49が第3実施形態と同様に前進に伴う力により前進向きXFへ引かれて傾動し、この把持腕49の力伝達部51がその滑止め部52a,53aで長尺剛体パイプ32に対しかみ込んで係止される。
【0042】
この第4実施形態の後退送り装置MBは、図13(a)(b)に示すように、バイブレータ28の長尺剛体パイプ32に対し位置調節可能に取り付けられる連結部材としてのクランプ57と、このクランプ57に連結された牽引索としてのチェーン54と、バイブレータ28を後退向きXBへ引くようにこのチェーン54を巻くことなく長手方向に沿って送る送り操作部としてのチェーンホイスト55とを備えている。バイブレータ28をコンクリート打設室3内からコンクリート打設室3外へ内側ガイド4や洗浄リング台11やガイドローラ台7やガイド管56(外側ガイド)に沿って引き出す際には、長尺剛体パイプ32に取り付けるクランプ57の位置を変更しながら、チェーンホイスト55を操作して長尺剛体パイプ32を後退向きXBへ引く。
【0043】
なお、図13(c)に示すように、上記後退送り装置MBにおいても、上記前進送り装置MFと同様に連結部材として把持腕49を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】(a)(b)(c)はそれぞれ第1実施形態にかかるバイブレータシステムをトンネルの天井部分に設置してコンクリートの打設を行う前の状態を側面側から見た部分断面図である。
【図2】(a)(b)(c)はそれぞれ第1実施形態にかかるバイブレータシステムをトンネルの天井部分に設置してコンクリートの打設を行った後の状態を側面側から見た部分断面図である。
【図3】(a)は図1(a)のバイブレータを示す拡大側面図であり、(b)は図1(c)のバイブレータを示す拡大側面図である。
【図4】(a)は上記バイブレータの分割剛体パイプを示す一部切欠側面図であり、(b)は上記バイブレータの連結体を示す側面図であり、(c)はこの両分割剛体パイプと連結体との連結状態を示す部分断面図である。
【図5】(a)(b)はそれぞれ第2実施形態にかかるバイブレータシステムをトンネルの天井部分に設置してコンクリートの打設を行う前の状態を側面側から見た部分断面図であり、(c)(d)はそれぞれ同じくコンクリートの打設を行った後の状態を側面側から見た部分断面図である。
【図6】(a)は第3実施形態にかかるバイブレータシステムにおいて前進把持機構を前進向きへ移動させる状態を示す部分拡大断面図であり、(b)は同じく前進把持機構を後退向きへ移動させる状態を示す部分拡大断面図である。
【図7】(a)は第1〜3実施形態にかかるバイブレータシステムにおいて後退把持機構が前進位置にある状態を側面側から見た部分拡大断面図であり、(b)は同じく後退位置にある状態を側面側から見た部分拡大断面図である。
【図8】第1〜3実施形態にかかるバイブレータシステムにおいて後退把持機構の把持解除状態を側面側から見た部分拡大断面図である。
【図9】(a)は第1〜3実施形態にかかるバイブレータシステムにおいて後退把持機構の把持状態を側面側から見た部分拡大断面図であり、(b)は同じく正面側から見た部分断面図である。
【図10】(a)は第1〜3実施形態にかかるトンネルのコンクリート打設室の天井部分を正面側から見た部分断面図であり、(b)はそのコンクリート打設室内に設けた内側ガイドを正面側から見た部分拡大断面図であり、(c)はその内側ガイドとバイブレータの振動体とを側面側から見た部分拡大断面図であり、(d)は図8のガイドローラ台を正面側から見た部分断面図である。
【図11】(a)(b)はそれぞれ第4実施形態にかかるバイブレータシステムをトンネルの天井部分に設置してコンクリートの打設を行う前の状態を側面側から見た部分断面図であり、(c)(d)はそれぞれ同じくコンクリートの打設を行った後の状態を側面側から見た部分断面図である。
【図12】(a)は図11(a)の前進送り装置を示す部分拡大側面図であり、(b)はその前進送り装置の連結部材を示す部分断面図である。
【図13】(a)は図11(d)の後退送り装置を示す部分拡大側面図であり、(b)はその後退送り装置の連結部材を示す部分断面図であり、(c)はその後退送り装置の連結部材の別例を示す部分拡大側面図である。
【符号の説明】
【0045】
3…コンクリート打設室、4…内側ガイド、7…ガイドローラ台(ガイド)、11…洗浄リング台(ガイド)、28…バイブレータ、29…振動体、31…電気ケーブル、32…長尺剛体パイプ、33,34,35…分割剛体パイプ、36…連結体、39,40…雄ねじ部、42…雌ねじ部、49…把持腕、(連結部材)、51…力伝達部、54…チェーン(牽引索)、55…チェーンホイスト(送り操作部)、56…ガイド管(ガイド)、57…クランプ(連結部材)、X…トンネルの長手方向(バイブレータの移動方向)、XB…後退送り装置、XF…前進送り装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動体に接続した電気ケーブルを長尺剛体パイプに挿通してその長尺剛体パイプの基端部から引き出し、この振動体をこの長尺剛体パイプの先端部に連結したことを特徴とするコンクリート締固め用バイブレータ。
【請求項2】
前記長尺剛体パイプは、互いに分離した複数の分割剛体パイプと、この各分割剛体パイプのうち互いに隣接する両分割剛体パイプ間を着脱可能に連結する連結体とを備え、この各分割剛体パイプのうち、最先端部側の分割剛体パイプに前記振動体を連結するとともに、最基端部側の分割剛体パイプから前記電気ケーブルを引き出したことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート締固め用バイブレータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコンクリート締固め用バイブレータをコンクリート打設室外からコンクリート打設室内にガイドに沿って前進向きへ挿入する前進送り装置と、請求項1または請求項2に記載のコンクリート締固め用バイブレータをコンクリート打設室内からコンクリート打設室外へガイドに沿って後退向きへ引き出す後退送り装置とのうち、少なくとも後退送り装置を備えたことを特徴とするコンクリート締固め用バイブレータシステム。
【請求項4】
請求項2に記載のコンクリート締固め用バイブレータをコンクリート打設室外からコンクリート打設室内に挿入する際、各分割剛体パイプを先端部側のものから順次連結しながら前進させることを特徴とするコンクリート締固め用バイブレータ送り方法。
【請求項5】
請求項2に記載のコンクリート締固め用バイブレータをコンクリート打設室内からコンクリート打設室外へ引き出す際、各分割剛体パイプを基端部側のものから順次分離しながら後退させることを特徴とするコンクリート締固め用バイブレータ送り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−336257(P2006−336257A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160592(P2005−160592)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(000158725)岐阜工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】