説明

コンクリート補強した端横桁、及び橋梁の施工方法。

【課題】従来より橋台に近接する位置に配された該鋼端横桁であっても施工が可能で、より自由度の高い設計が可能な端横桁および該端横桁の施工方法を提供する。
【解決手段】橋台40の近くに配される鋼端横桁2を現場にてコンクリートで巻き立てた端横桁および該端横桁の施工方法において、橋台40に近設する鋼端横桁2の下端部を折り曲げることによって、該鋼端横桁2の側板部並びに底板部を捨て型枠として、コンクリートを打設する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に道路橋に用いられる桁橋等の橋梁に係わり、特に剛性を向上させるためにコンクリート補強した端横桁を備えた橋梁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、橋台の間に架設された床版を長手方向に延びる複数の主桁(主に鋼桁)により補強した桁橋が、数多く採用されている。
特に、近年は振動対策等の要求から、桁橋の中でも、主桁の数が少ないものが多く求められるようになってきた。しかしながら、主桁の数を減少させると、桁橋は、構造上、主桁間の間隔が広くなり、剛性が低下するので、主桁の延びる方向に対して直交する方向に延びる横桁を、主桁同士の間に配して、該横桁によって主桁を連結することにより、剛性を向上させる構造とすることが一般的である。
【0003】
ここで、特許文献1に開示された技術は、横桁を備えた桁橋の構造に関するものであって、コンクリートと鋼材(山形鋼等)によって形成された横桁の構造と施工方法とが、開示されている。特許文献1の開示の技術は、横つなぎ材として鋼材を使用しており、さらに該鋼材を囲むようにしてコンクリートを打設するための型枠を組んでいる。特許文献1は、前記した型枠にコンクリートを打設することによって、前記した鋼材をコンクリートで覆って(巻き立て)施工する。なお、一般的に、横桁をコンクリートで覆えば、耐震性、防音性などが向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−213622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7を用いて、従来の主桁と横桁の位置関係を例示する。
例えば、図7のような構造によって、横桁を主桁間に配し、該横桁を主桁の長手方向に複数箇所に並べて配しようとすれば、最も橋台側に寄って配置された端の横桁(本発明においては端横桁と称する)が、橋台に極めて近接した位置になる。
ここで、前記した端横桁を、コンクリートにより補強して使用するとすれば、現場で型枠を設置して、該型枠にコンクリート充填(打設)する必要がある。
従来は、例えば、特許文献1の図5に開示されているように、横つなぎ材を中心として、周りから取り囲むようにして型枠を組んで、コンクリートを打設し、該コンクリートが硬化した後、型枠を取り外すという工程を行っていた。前述した端横桁以外の横桁については、周りに型枠を組む、或いは取り外すためのスペースが十分にあるので、型枠を組んでコンクリートを打設するという前述した工程の作業に支障はない。
【0006】
しかし、図7〜図9に示したように、橋台の近くに配されることになる端横桁については、事情が異なる。
というのは、例えば、図8に示したような鋼端横桁102を中心として型枠を設置し、コンクリートを打設し、図7の端横桁101のようにコンクリートを巻き立てようとした場合において、コンクリート105を打設するための型枠115を、現場で組み立てて取り付ける必要があるが、橋台40と鋼端横桁102の間には、型枠を取り付ける、或いは取り外すためのスペースが確保できない場合がある。
【0007】
例えば、図9を使用して従来技術の例を説明すれば、横つなぎ材として図9(1)に示すような鋼端横桁102を使用した場合に、その両面方向にコンクリート105を打設して補強するが、その際において、コンクリート105を充填するための型枠115を、鋼端横桁102の両面側(橋台のパラペット40A側、及び反パラペット40A側)に形成するから、型枠115を設置するために、ある程度の大きさ以上の背面の間隔が必要である。
【0008】
実際のところ、図9(2)に示した背面の間隔として、少なくとも300mm程度以上の寸法を確保しなければ、現場で型枠115を組むことは困難である。
従って、橋台40の橋台パラペット40Aに近接する位置にある鋼端横桁102について、型枠を設置するためのスペースを確保する必要性から、橋台パラペット40Aに一定の距離より、近づけて設置できないという制限を受けていた。
【0009】
本発明は、以上、説明したような問題点に鑑みてなされたものであり、コンクリートで補強した横桁を備えた橋梁を施工する場合においても、橋台と端横桁の間のスペースを最小化して効率的に施工できるコンクリート横桁を有する橋梁に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明による橋梁の端横桁は、
(1) 橋梁の橋台に近設されて橋台間に配した主桁を連結する鋼端横桁をコンクリート補強した端横桁において、該鋼端横桁は、上下方向に延在する側板部と、その下方部分が近接する橋台のパラペット側と反対側の方向に折り曲げられた底板部を有して、
該鋼端横桁の側板部並びに底板部を型枠としてコンクリートを打設する構成とした。
【0011】
本発明による橋梁の施工方法は、
(2) 橋梁の橋台に近設されて橋台間に配した主桁を連結する鋼端横桁をコンクリート補強した端横桁を備える橋梁の施工方法であって、該鋼端横桁は、上下方向に延在する側板部と、その下方部分が近接する橋台のパラペット側と反対側の方向に折り曲げられた底板部を有して、主桁に該鋼端横桁を設置した後、該鋼横桁の底板部分先端付近に上方向に延びる第2の側板を型枠として配し、該鋼端横桁の該側板部、底板部、並びに第2の側板によって囲まれた空間にコンクリートを打設する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、鋼端横桁の橋台側の面に、従来必要であったコンクリート打設用の型枠をあらためて設置する必要がない。従って、橋台に近接する位置に配された端横桁ついても、型枠を設置するためのスペースを確保する必要性がないから、従来技術に比較して橋台に近づけて設置することができ、従来技術の課題である橋台に一定の距離より、近づけることができないという問題を有しないので、自由度の高い橋梁の設計が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係わり橋梁の横桁部構造を説明する要部断面図である。
【図2】本実施形態に係わり鋼端横桁の配置と構造を説明する図である。
【図3】本実施形態に係わり端横桁を施工する際の工程を説明する概念図である。
【図4】本実施形態に係わりコンクリート打設時の型枠を説明する概念図である。
【図5】本実施形態に係わり橋梁の全体を説明する図である。
【図6】本実施形態に係わり横桁の位置を説明する図である。
【図7】従来技術に係わり橋梁の横桁部構造を説明する要部断面図である。
【図8】従来技術に係わり鋼端横桁の配置と構造を説明する図である。
【図9】従来技術に係わり端横桁を施工する際の工程を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面等に基づき本発明の好ましい実施形態の1例について詳細に説明する。
図1〜図5は本実施形態に係わり、図1は橋梁の横桁部構造を説明する要部断面図であり(2)は(1)の図をA−A方向から見た図である。図2は鋼端横桁の配置と構造を説明する図であり、図3は端横桁を施工する際の工程を説明する概念図、図4はコンクリート打設時の型枠を説明する概念図である。
図5は橋梁の全体を説明する図であり、図6は横桁の位置を説明する図である。
図7〜図9は参考として従来技術を説明する図であり、図7は橋梁の横桁部構造を説明する要部断面図であり、図8は鋼端横桁の配置と構造を説明する図であり、図9は端横桁を施工する際の工程を説明する概念図である。
【0015】
以下、本発明によるコンクリート横桁を有する橋梁の好ましい構成について、その1例を説明する。
まず、最初に図5に床版20を使用した一般的な橋梁の構成を示す。
図5に示した橋梁は、左右に並ぶ2カ所の橋台40の間に、コンクリート製の床版20を架設するとともに、床版20の下部を主桁35等により補強した桁橋50である。
図1に桁橋50の橋台40近辺の要部断面図を示すが、本実施形態における桁橋50は、床版20、主桁35、橋台40,並びに、横桁8及び端横桁1などで構成されている。
【0016】
なお、本実施形態において、橋台40は、その上部に橋台パラペット40Aなどを備えて構成されている。本実施形態における橋台40は、図1に示したように、基礎の上に立設された台部の上に、支承(支持台と称することもある)を介して主桁が載置されるとともに、その上部に橋台パラペット40Aが立設されて備えられている。
また、本実施形態に用いた床板20は、ウェブ鋼板の上にコンクリートを打設したタイプのものであって、床版20の幅方向の両サイドには地覆と高欄が設置されており、床版20の上面には自動車が通行する車両用道路が形成されている。
本実施形態による桁橋50は、所謂、道路橋と呼ばれるものである。
【0017】
ここで、桁橋50のように横桁を複数箇所に配設した場合に、橋台40間に架設した床板20の長手方向の両端に配した2つの横桁が、橋台40に最も近づいた位置に設置することになる。本実施形態においては、説明のため、橋台40側に配置された端の横桁を端横桁1と称し、それ以外の横桁を、横桁8と称することにする。図6に端横桁1と、横桁1の位置関係を例示する。
【0018】
以下、本実施形態における端横桁1について詳細を説明する。
桁橋50の幅方向(橋の長手方向に直交する方向)から見た場合の要部断面図を図1(1)に示し、A−A方向(橋の長手方向から見たA−A断面)から見た場合の要部断面図を図1(2)に示す。
図1(1)又(2)に示したように、桁橋50の長手方向に延在して並列する2つの主桁35が、床版20を支えるようにして、その下部に配されている。主桁35は、橋台40の上に支承41を介して、その上に載せられて置かれている。
そして、並列する主桁35の間には、端横桁1が、主桁35を繋ぐように、架設されて、並列する主桁35を互いに連結している。
なお、詳細な説明を省略するが、橋台に近い端横桁1以外の横桁8について、同様に、並列する主桁35の間において、主桁35を繋ぐように架設され、主桁35を連結している。
【0019】
次に、端横桁1の施工方法について、説明する。
まず、最初の工程において、金属製の鋼端横桁2が、並列する2つの主桁35の間に架設されて、床板20の下方で垂下するように取り付けられる。
この場合、鋼端横桁2の幅方向(橋の長手方向に直交する方向)における両サイド部分は、主桁35の側面に、ボルト止め、或いは溶接されて、固定される。
なお、本実施形態においては、主桁35の間に架設された鋼端横桁2は、図2(1)に示したように、上下の中間付近で何回か折り曲げられた形状となっており、中間段差がついた状態となっているとともに、さらに下方部分を直角に曲げた形状となっている。
後述の打設工程を明確にするために説明しておけば、本発明においては、図4に示すように、鋼端横桁2の上下方向に延びている部分を側板部分と称し、下方部分を直角に曲げた部分を底板部分と称することとする。
【0020】
また、本実施形態においては、後述するコンクリート105の打設工程の際において、鋼端横桁2を補強するコンクリート105が鋼端横桁2から剥離しないようにするため、鋼端横桁1の反パラペット40A側の面にスタッドジベル2Aが多数配されている構造となっている。
なお、本実施形態においては、鋼端横桁2の上部が、橋台パラペット40Aの極めて近接した位置に取り付けられる。
【0021】
図3(1)に、鋼端横桁2が床版20の下方に配されている状態を示す。
この状態から、図3(2)に示すように、コンクリートを充填するための型枠15を、現場(桁橋50の設置箇所)にて組み立てる。
ここで、本実施形態においては、コンクリートを充填するための型枠として、鋼端横桁2を利用する。具体的に説明すれば、鋼端横桁2の床版20から垂下されようにして取り付けられて、上下方向に延びる側板部分と、その下方で反パラペット側に向かって直角に折り曲げられた底板部分を利用し、該側板部分を橋台パラペット40A側の型枠部分として使用し、該直角に折り曲げた底板部分を型枠の底板部分として使用する。
従って、本実施形態においては、鋼端横桁2以外として新たに、該底板部分の反パラペット40A側に、上下方向に延びる第2の側板を配して型枠15とすれば、コンクリートを充填するための型枠が完成する。
なお、鋼端横桁2の側板部分と底板部分、並びに型枠15の幅方向両サイド部分について、主桁35の側面に密着させることにより、充填したコンクリートは型枠から流れ出さない。
【0022】
以上説明したように、本実施形態においては、鋼端横桁2をコンクリート充填用の型枠の一部として使用するため、鋼端横桁2の橋台パラペット40A側に向いた面、並びに底部分に、新たな型枠を形成する必要はない。
従って、橋台40の橋台パラペット40Aと、鋼端横桁2との間に、新たに型枠を組むためのスペースが必要なく、橋台40に極めて近接する位置にコンクリート補強した端横桁1を取り付けることが可能である。
【0023】
なお、図3(2)のように型枠15を組んだ状態において、コンクリートを充填して打設した後、コンクリートが硬化したことを確認してから、型枠15を取り外す。
本実施形態においては、鋼端横桁2をコンクリート充填用の型枠の一部として使用しているため、コンクリート打設後において、鋼端横桁2の反パラペット40A側に向いた面の側板を取り外せば型枠15の除去が完了する。
従って、橋台40と鋼端横桁2の間に、型枠を取り外すためのスペースは必要ないので、橋台40に極めて近接する位置にコンクリート補強した端横桁1を取り付けることが可能である。
【0024】
なお、前述の工程は施工方法の1例を示したものであるが、施工方法によっては、床板20を設置する前に、主桁35間に横桁1を配する場合もある。
しかし、そのようなケースにおいても、橋台40に極めて近接する位置にコンクリート補強した端横桁1を取り付けることができなという問題点は同じであり、本発明であれば、橋台40と鋼端横桁2の間に、型枠を取り外すためのスペースは必要としないので、橋台40に極めて近接する位置にコンクリート補強した端横桁1を取り付けることが可能である。
【0025】
前述したように従来技術においては、図9(2)に示したように、鋼端横桁102の周りを取り囲むようにしてコンクリートを打設しているから、鋼端横桁2の橋台パラペット40A側に向いた面にも、新たな型枠115を設置する必要がある。
詳しく説明すれば、鋼端横桁102を中心として、橋台パラペット40A側、及び、反パラペット40A側に、それぞれ床版20から垂下させた側板を配し、さらに下方部分に底板を配することによって、前記2枚の側板を封止する必要がある。
従って、橋台40と鋼端横桁2の間に、新たに型枠を組むためのスペースが必要であるために橋台40に近接する位置に端横桁101を取り付けることができない。
【0026】
さらに言えば、従来技術においては、鋼端横桁102を中心として、新たな型枠115を組んだ状態において、コンクリートを充填して打設した後、コンクリートが硬化したことを確認してから、型枠115を取り外す必要がある。
ここで、従来技術においては、コンクリート打設後において、鋼端横桁2の橋台パラペット40A側に向いた面の側板を取り外す必要があり、取り外すためのスペースが必要であるから、その意味においても、橋台40に極めて近接した位置にコンクリート補強した端横桁101を取り付けることができない。
【0027】
以上説明したように、従来技術においては、橋台40と鋼端横桁102の間に、新たに型枠を組むためのスペースを確保しなければならないので、橋台40に、一定の距離より、近づけることができないという制限を受ける。
【0028】
本実施形態においては、鋼端横桁2をコンクリート打設のための型枠として利用することによって、新たに設置する型枠15の一部を省略することができ、結果、作業が効率化できるとともに、コスト削減につながり、従来技術の問題である橋台40に、一定の距離より、近づけられないという制限も受けない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように本願発明に係わるコンクリート横桁を有する橋梁は、従来技術に比較して、作業が効率化できるとともに、コスト削減につながる。また、従来技術の課題である橋台に、一定の距離より、近づけることができないという問題も有しないので、自由度の高い橋梁の設計が可能になる。
【符号の説明】
【0030】
1 端横桁
2 鋼端横桁
5 コンクリート
8 横桁
15 型枠
20 床板
35 主桁
40 橋台
41 支承
50 桁橋
101 端横桁
102 鋼端横桁
115 型枠
2A スタッドジベル
40A 橋台パラペット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の橋台に近設されて橋台間に配した主桁を連結する鋼端横桁をコンクリート補強した端横桁において、
該鋼端横桁は、上下方向に延在する側板部と、その下方部分が近接する橋台のパラペット側と反対側の方向に折り曲げられた底板部を有して、
該鋼端横桁の側板部並びに底板部を型枠としてコンクリートを打設するコンクリート補強した端横桁。
【請求項2】
橋梁の橋台に近設されて橋台間に配した主桁を連結する鋼端横桁をコンクリート補強した端横桁を備える橋梁の施工方法であって、
該鋼端横桁は、上下方向に延在する側板部と、その下方部分が近接する橋台のパラペット側と反対側の方向に折り曲げられた底板部を有して、
主桁に該鋼端横桁を設置した後、該鋼横桁の底板部分先端付近に上方向に延びる第2の側板を型枠として配し、該鋼端横桁の該側板部、底板部、並びに第2の側板によって囲まれた空間にコンクリートを打設することを特徴としたコンクリート補強した端横桁を備えた橋梁の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−74572(P2011−74572A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223936(P2009−223936)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】