コンクリート補強用シート及びコンクリート補強方法
【課題】軽量で、施工性が良く、強度が大きく、耐熱性が高く、コンクリート表面への適用が容易で、絶縁性を有し、コンクリートの表面剥落を防止できるコンクリート補強用シートを提供する。
【解決手段】トンネル構造体の表層部に設置されてトンネル構造体を補強する縦材16及び横材18を有する網目状のコンクリート補強用シート14であって、縦材16及び横材18はバサルト繊維にて形成され、縦材16及び横材18は、少なくとも一部がトンネル構造体内への埋設部として形成され、他はトンネル構造体表面への露出部として形成される。
【解決手段】トンネル構造体の表層部に設置されてトンネル構造体を補強する縦材16及び横材18を有する網目状のコンクリート補強用シート14であって、縦材16及び横材18はバサルト繊維にて形成され、縦材16及び横材18は、少なくとも一部がトンネル構造体内への埋設部として形成され、他はトンネル構造体表面への露出部として形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート補強用シート及びコンクリート補強方法に関し、特に、新設のコンクリート構造体のコンクリート補強用シート及びコンクリート補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、既設コンクリート構造物のコンクリート剥落防止として、コンクリートの表面を下地処理した後エポキシ樹脂等の接着剤で連続繊維シートを貼り合わせるコンクリート補修・補強工法が行われている。
【0003】
しかし、既設のトンネル内での貼り合わせ作業は作業性が悪く、しかも樹脂系接着剤で貼り合わせるため、火災時には補強効果がなくなるという問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1に示すような新設のコンクリート構造物に対するコンクリート剥落防止、表面付近のひび割れ防止を主な目的としたコンクリート補強材及びコンクリート構造体の形成方法が提案されている。
【0005】
このコンクリート補強材は、金属線又は非金属繊維を主原料とする網状体に接着剤で多数の粒状体を接着された状態となっており、このコンクリート補強材を新設のコンクリートの表面近くに埋め込むようにしている。
【0006】
このコンクリート補強材の主原料である金属線としては、ステンレス鋼、チタン等が用いられ、非金属繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維の他、アラミド、ビニロン、ポリプロピレン等の合成繊維が用いられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−232624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなコンクリート補強材にあっては、主原料としてガラス繊維やアラミド繊維を用いる場合には、強度が小さく、耐熱性が低いという問題がある。
【0009】
また、コンクリートの線膨張係数(温度変化に対する伸縮)は、10×10-6/℃であり、補強用繊維としては同等のものが望ましいが、炭素繊維、アラミド繊維等は線膨張係数が−4〜−6×10-6/℃と逆の挙動を示すため、コンクリート表面への適用が難しいという問題がある。
【0010】
さらに、金属線及び高強度で耐熱性の高い炭素繊維は、導電性を有するため、電気や磁気を利用する鉄道トンネルには不向きであるという問題がある。
【0011】
そしてさらに、コンクリート補強材がコンクリートの表面近くに埋め込まれるため、コンクリート補強材よりも表面側に位置するコンクリートの表面が剥落する可能性があるという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、軽量で、施工性が良く、強度が大きく、耐熱性が高く、コンクリート表面への適用が容易で、絶縁性を有し、コンクリートの表面剥落を防止できるコンクリート補強用シート及びコンクリート補強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)前記目的を達成するため、本発明のコンクリート補強用シートは、コンクリート構造体の表層部に設置されてコンクリート構造体を補強する縦材及び横材を有する網目状のコンクリート補強用シートであって、
前記縦材及び横材はバサルト繊維にて形成され、
前記縦材及び横材は、少なくとも一部がコンクリート構造体内への埋設部として形成され、他はコンクリート構造体表面への露出部として形成されることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、コンクリート構造物の表層部に設置されて網目状のコンクリート補強用シートをバサルト繊維にて形成することで、軽量で、施工性が良く、強度が大きく、耐熱性が高く、コンクリート表面への適用が容易となり、しかも、絶縁性を有して鉄道トンネルにも適用可能となる。
【0015】
さらに、縦材及び横材は少なくとも一部がコンクリート構造体への埋設部として形成されているため、コンクリート構造体表層部への食い付きが良く、埋設部以外はコンクリート構造体表面への露出部として形成されるため、コンクリートの表面剥落を防止できる。
【0016】
(2)本発明においては、(1)において、
前記コンクリート構造物はトンネル構造体とされ、
前記縦材がトンネルの内周方向に露出して設けられるようにすることができる。
【0017】
このような構成とすることにより、トンネル構造体の補強に有効なものとなり、しかも、耐火性、絶縁性に優れたコンクリート補強用シートであるため、トンネル内の火災時、あるいはリニアカー等の電磁力を用いるような鉄道トンネルであっても、磁力線に影響を与えるのを確実に防止して有効なものとすることが可能である。
【0018】
(3)本発明においては、(2)において、
トンネル内周面に露出する縦材の間隔は、コンクリートの劣化状況が把握可能な間隔とすることができる。
【0019】
このような構成とすることにより、縦材の間から露出するコンクリートの表面を目視することにより、確実にコンクリート表面の劣化状態を把握することができ、その劣化状況に応じて適宜最適な処置を施すことが可能となる。
【0020】
(4)本発明においては、(3)において、
前記縦材の間隔は、5cm〜30cmとすることができる。
【0021】
このような構成とすることにより、コンクリートの補強を確実に行った上で、コンクリートの劣化状態を把握するに十分な間隔を保持することができる。
【0022】
(5)本発明においては、(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記縦材及び横材は、少なくとも埋設部の裏面側にコンクリート構造体への食い付き部を有するものとすることができる。
【0023】
このような構成とすることにより、埋設部の裏面側に形成した食い付き部が表層部のコンクリートに食い付くことで、より一層確実にコンクリート構造体の補強を行うことが可能となる。
【0024】
(6)本発明においては、(5)において、前記食い付き部は、起毛部材にて形成されるようにすることができる。
【0025】
このような構成とすることにより、起毛部材により容易に食い付き部を形成することができる。
【0026】
(7)本発明においては、(1)〜(6)のいずれかにおいて、前記縦材及び横材の交点位置を先端部がコンクリート部材に挿入される係止ピンにて前記コンクリート構造体に係止可能とすることができる。
【0027】
このような構成とすることにより、コンクリート補強用シートをより確実にコンクリート構造体に係止させることができる。
【0028】
(8)本発明においては、(7)において、前記係止ピンは、バサルト繊維、ステンレスまたは合成樹脂製とすることができる。
【0029】
このような構成とすることにより、比較的安価な材料で係止ピンを形成することができる。
【0030】
(9)本発明のコンクリート補強方法は、(1)〜(8)のいずれかのコンクリート補強用シートを用いたコンクリート補強方法であって、
前記コンクリート補強用シートの縦材を型枠に接触させて固定した状態で前記型枠をコンクリート打設位置に設置する工程と、
前記コンクリート打設位置に設置した型枠に対してコンクリートを打設する工程と、
前記打設コンクリートが硬化した後、前記型枠をコンクリート構造物より取り外し、コンクリート構造物の表面に前記コンクリート補強用シートの縦材を露出させる工程と、
を含むことを特徴とする。
【0031】
本発明によれば、縦材を型枠に接触させた状態で、コンクリート補強用シートを型枠に固定して、型枠を設置し、コンクリートを打設した後、型枠を取り外せばコンクリート補強用シートの一部をコンクリト内に埋設させた状態で、縦材をコンクリと表面に露出させた状態とすることができる。
【0032】
(10)本発明においては、(9)において、
前記コンクリートに埋設される埋設側ピン部材と、前記埋設側ピン部材に取り付けられて前記コンクリート補強用シートを前記コンクリート側に係止する露出側ピン部材とを有する係止ピンを用い、
前記コンクリート補強用シートの縦材を型枠に接触させて固定する際に、前記埋設側ピン部材を前記コンクリート補強用シートの埋設側に設置し、露出側ピン部材を前記型枠を挟んで前記埋設側ピン部材に取り付けて、前記コンクリート補強用シートを前記型枠に固定する工程と、
前記コンクリート打設位置に設置した型枠に対してコンクリートを打設して型枠を取り外す際に、埋設側ピン部材より露出側ピン部材を取り外す工程と、
前記コンクリートから型枠を取り外した後、前記埋設側ピン部材より取り外した露出側ピン部材を埋設側ピン部材に取り付けてコンクリート補強用シートをコンクリートに係止する工程と、
を含むようにすることができる。
【0033】
このような構成とすることにより、係止ピンを用いて型枠設置時に型枠にコンクリート補強用シートを係止させ、コンクリートの打設終了後はその係止ピンを用いてコンクリート構造物に確実にコンクリート補強用シートを係止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるコンクリート補強用シートを用いてトンネルを構築する状態を示す部分断面斜視図である。
【図2】同図(A)は図2のコンクリート補強用シートの正面図、同図(B)はその部分拡大図である。
【図3】図2のコンクリート補強用シートをトンネルの表層部に埋め込んだ状態を示す断面図である。
【図4】同図(A)は図2及び図3のコンクリート補強用シートを係止ピンにてトンネル表層部に係止する状態を示す部分正面図、同図(B)はその断面図である。
【図5】係止ピンの変形例を示すもので、同図(A)はその平面図、同図(B)はその側面図である。
【図6】係止ピンの他の変形例を示すもので、同図(A)はコンクリート打設時の側面図、同図(B)はコンクリート打設後の側面図である。
【図7】図1〜図4のコンクリート補強用シートの継ぎ目部施工状態を示すもので、同図(A)は先行コンクリート打設時の状態を示す断面図、同図(B)は継ぎ目部を巻き込み施工した状態の断面図、同図(C)は継ぎ目部を重ね合わせて施工した状態を示す断面図である。
【図8】本実施の形態にかかるコンクリート補強用シートの食い付き部の一例を示す断面図である。
【図9】食い付き部の他の例を示す断面図である。
【図10】食い付き部のさらに他の例を示す断面図である。
【図11】食い付き部のさらに他の例を示すもので、同図(A)は部分平面図、同図(B)は部分断面図である。
【図12】食い付き部のさらに他の例を示すもので、同図(A)は部分平面図、同図(B)は部分側面図である。
【図13】食い付き部のさらに他の例を示すもので、同図(A)は部分平面図、同図(B)は部分側面図である。
【図14】本発明の他の実施の形態にかかるコンクリート補強用シートの斜視図である。
【図15】同図(A)は図14のコンクリート補強用シートの正面図、同図(B)はその部分拡大図である。
【図16】図14及び図15のコンクリート補強用シートをトンネルの表層部に埋め込んだ状態を示す断面図である。
【図17】本発明のさらに他の実施の形態にかかるコンクリート補強用シートを示すもので、同図(A)はコンクリート補強用シートの正面図、同図(B)はその部分拡大図である。
【図18】図17のコンクリート補強用シートをトンネルの表層部に埋め込んだ状態を示す断面図である。
【図19】バサルト繊維と、炭素繊維、アラミド繊維及びガラス繊維との物性比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0036】
図1は、本発明の一実施の形態にかかるコンクリート補強用シートをコンクリート構造体の表層部に設置した状態を示すもので、図中10がコンクリート構造体の一例としてのトンネル構造体で、このトンネル構造体10の内面12の表層部にコンクリート補強用シート14を設置するようにしている。
【0037】
このコンクリート補強用シート14は、トンネル構造体10を内周面側から補強するためのもので、バサルト繊維にて形成されたシート体からなるものとされている。
【0038】
また、このコンクリート補強用シート14は、図2に示すように、縦材16及び横材18を組み合わせた網目状のものとされている。
【0039】
さらに、縦材16及び横材18は、少なくとも一部がトンネル構造体10内への埋設部として形成され、他はトンネル構造体10表面への露出部として形成されるようになっている。
【0040】
具体的には、図2(A)、(B)に示すように、縦材16はトンネル構造体10の周方向に補強力が働くように、トンネル構造体10の周方向に沿って長手方向に繊維が揃うようになっており、横材18は縦材16に対して2方向に斜めに交差して設けられ、その長手方向に繊維が揃うようになっており、縦材16に比し横材18はトンネル構造体10の軸線方向に補強力が働くようになっている。
【0041】
そして、図3に示すように、横材18のすべての部分及び縦材16の一部がトンネル構造物10のコンクリート内への埋設部とされ、他の部分、すなわち縦材16の表面はトンネル構造体10の内周面への露出部として形成されている。
【0042】
また、同図(B)に示すように、縦材16の幅W1は例えば10mm、横材18の幅W2は例えば5mmとされ、横材18の交点間の距離L1は50mmとされている。
【0043】
さらに、図3に示すように、縦材16の厚さt1及び横材18の厚さt2はそれぞれ0.5mmとされている。
【0044】
ところで、バサルト繊維は、図19に示すように、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等に比し、次のような利点を有している。
【0045】
まず、アラミド繊維及びガラス繊維は、やや強度が小さいのに対して、バサルト繊維は、アラミド繊維及びガラス繊維に対して1.2〜1.7倍の強度を示している。
【0046】
次に、コンクリートの線膨張係数(温度変化に対する伸縮)は、10×10-6/℃であり、補強繊維としては同等の材料が望ましいが、炭素繊維、アラミド繊維は、−4〜−6×10-6/℃とコンクリートと逆の挙動を示すため、コンクリート表面への適用が難しいのに対して、バサルト繊維は、線膨張係数が7〜8×10-6/℃とコンクリートとほぼ同様の挙動を示す。
【0047】
次いで、アラミド繊維及びガラス繊維は、耐熱性が低いのに対して、バサルト繊維は、50%強度保持温度が600℃と炭素繊維同等の耐熱性を有している。
【0048】
さらに、高強度で耐熱性の高い炭素繊維は、導電性を有するため、電気や磁気を利用する鉄道トンネルには不向きであるが、バサルト繊維は、非導電性であるため、電気や磁気を利用した鉄道トンネルにも適した材料である。
【0049】
このように、トンネル構造物10の内周面表層部に設置されて網目状のコンクリート補強用シート14をバサルト繊維にて形成することで、軽量で、施工性が良く、強度が大きく、耐熱性が高く、コンクリート表面への適用が容易となり、しかも、絶縁性を有して鉄道トンネルにも適用可能となる。
【0050】
また、縦材16及び横材18は、少なくとも一部がトンネル構造体10への埋設部として形成されているため、トンネル構造体10表層部への食い付きが良く、埋設部以外はコンクリート構造体表面への露出部として形成されるため、コンクリートの表面剥落を防止することが可能となる。
【0051】
さらに、縦材16がトンネル構造体10の内周方向に露出して設けられるようにすることで、トンネル構造体10の補強に有効なものとなり、しかも、耐火性、絶縁性に優れたコンクリート補強用シートであるため、トンネル内の火災時、あるいはリニアカー等の電磁力を用いるような鉄道トンネルであっても、磁力線に影響を与えるのを確実に防止して有効なものとすることが可能である。
【0052】
また、本実施の形態において、トンネル構造体10の内面12に露出する縦材16の間隔P1は、図2(A)に示すように、コンクリートの劣化状況が把握可能な間隔、具体的には、5cm〜30cmとするようにしている。
【0053】
このように縦材16間の間隔P1を設定することにより、縦材16の間から露出するコンクリートの表面を目視することにより、コンクリートの補強を確実に行った上で、コンクリートの劣化状態を把握するに十分な間隔を保持し、確実にコンクリート表面の劣化状態を把握することができ、その劣化状況に応じて適宜最適な処置を施すことが可能となる。
【0054】
このようなコンクリート補強用シートを用いたコンクリート補強方法は、次のような手順で行われる。
【0055】
まず、図3に示すように、コンクリート補強用シート14の縦材16を型枠20に接触させて固定する。
【0056】
次いで、この状態で、型枠20をコンクリート打設位置に設置する。
【0057】
次に、コンクリート打設位置に設置した型枠20に対して、例えば山岳トンネル等の場合、岩盤と型枠20との間にコンクリートを打設する。
【0058】
そして、打設したコンクリートが硬化した後、型枠20をコンクリート構造物、すなわちトンネル構造物10の内面12より取り外し、トンネル構造物10の表面にコンクリート補強用シート14の縦材を露出させる。
【0059】
この場合、トンネル構造物10の表面に露出した縦材16の表面以外はすべてコンクリート内に埋設されて、コンクリートへの食い付き部として機能することとなり、コンクリートへの確実な取り付けが可能となり、しかも、縦材16の表面部分にはコンクリートが付着していないので、コンクリートの崩落の恐れは生じないこととなる。
【0060】
この場合、図4に示すような係止ピン22を用いて、コンクリート補強用シート14をコンクリート構造体10に係止するようにすることができる。
【0061】
この係止ピン22は、同図(A)に示すように、隣接する縦材16及び交差する横材18の交点位置を覆う大きさのピン頭部24を有し、同図(B)に示すように、ピン頭部24を縦材16の表面に接触させ、ピン本体26をコンクリート構造体10側に突出させることで、ピン本体26が確実にコンクリート部材に保持され、それによってコンクリート補強用シート14がより確実にトンネル構造体10に係止されるようになっている。
【0062】
ピン本体の長さL2は、鉄筋被り以下とされ、例えば40mm程度とされる。
【0063】
この係止ピン22の取り付けは、型枠20に係止ピン22を設置し、その上からコンクリート補強用シート14の縦材16を型枠20に接触させて固定し、コンクリートを打設すればコンクリート構造体10へのコンクリート補強用シート14の係止が完了することとなる。
【0064】
また、係止ピン22は、強度、耐熱性、非導電性を考慮すると、バサルト繊維からなるものが好ましいが、ステンレスまたは合成樹脂製であっても良い。
【0065】
このようにすることで、比較的安価な材料で係止ピン22を形成することができる。
【0066】
図5には、係止ピンの変形例を示す。
【0067】
この係止ピン28は、同図(A)に示すように、一方が両端が隣接する両横材18に達する長さを有し、他方が一方の長さ方向と直交する方向で一方の長さ方向より短くて隣接する横材18間に挿入可能な長さとされたピン頭部30と、このピン頭部30より突出するピン本体32とを有している。
【0068】
ピン頭部30の長さ方向の両端部には、同図(B)に示すように、横材18の厚さに相応した溝34が形成されており、コンクリート補強用シート14への取り付け時には、長手辺側を横材18の長手方向に沿わせた状態で、ピン頭部30を横材18間に挿入し、同図(A)に示すように、例えば矢印方向に回転させることで、隣接する横材18に対して両溝34が係合し、取り付け状態となる。
【0069】
そして、この状態で、コンクリート補強用シート14を、その縦材16を型枠20に接触させて、型枠20にコンクリートを打設して硬化後型枠20を取り外せば、係止ピン28によって、コンクリート補強用シート14がより確実にトンネル構造体10に係止されることとなる。
【0070】
図6には、係止ピンの他の変形例を示す。
【0071】
この係止ピン36は、ステンレス製のものとされ、コンクリートに埋設される埋設側ピン部材38と、埋設側ピン部材38に取り付けられてコンクリート補強用シート14をコンクリート側に係止する露出側ピン部材40とを有している。
【0072】
埋設側ピン部材38は、隣接するそれぞれの縦部材16及び横部材18にまたがる大きさの埋設プレート部42と、この埋設プレート部42に設けられたナット部44と、このナット部44より突出するねじ付きのピン本体46とを有している。
【0073】
露出ピン部材40は、埋設プレート部42とほぼ同様の大きさの露出プレート部48と、露出プレート部48より突出しナット部44に螺合されるボルト部50とを有している。
【0074】
この係止ピン36を用いたコンクリート補強方法は、次の手順で行われる。
【0075】
まず、図6(A)に示すように、コンクリート補強用シート14の縦材16を型枠20に接触させて固定する際に、埋設側ピン部材38をコンクリート補強用シート14の埋設側、すなわち横材18側に設置し、露出側ピン部材40を型枠20を挟んで埋設側ピン部材38に取り付けて、コンクリート補強用シート14を型枠20に固定する。
【0076】
この場合、埋設側ピン部材38の埋設プレート部42を横材18に接触させてピン本体46を横材18より突出させた状態とし、縦材16が接触している型枠20の反対側の面より型枠20に形成した貫通孔52より露出側ピン部材40のボルト部50を埋設側ピン部材38のナット部44に螺合させて締め付けることで、埋設プレート部42と露出プレート部48で型枠20及びコンクリート補強用シート14を挟み込み、コンクリート補強用シート14を型枠に仮止めするようにしている。
【0077】
次いで、コンクリート打設位置に設置した型枠20に対してコンクリートを打設して、コンクリート硬化後に型枠20を取り外す際に、埋設側ピン部材38より露出側ピン部材40を取り外す。
【0078】
この場合、露出側ピン部材40を回転させてボルト部50を埋設側ピン部材38のナット部44から取り外せば容易に取り外しができる。
【0079】
次に、トンネル構造体10を構成するコンクリートから型枠20を取り外した後、埋設側ピン部材38より取り外した露出側ピン部材40を埋設側ピン部材38に取り付けてコンクリート補強用シート14をコンクリートに係止する。
【0080】
この場合、露出側ピン部材40を回転させてボルト部50を埋設側ピン部材38のナット部44に螺合させれば容易に取り付けができる。
【0081】
このようにすることにより、係止ピン36を用いて型枠20設置時に型枠20にコンクリート補強用シート14を係止させ、コンクリートの打設終了後はその係止ピン38を用いてトンネル構造物10に確実にコンクリート補強用シート14を係止させることができる。
【0082】
図7には、コンクリート補強用シート14の継ぎ目部施工状態を示す。
【0083】
同図(A)は先行コンクリート打設時の状態を示す断面図で、先行コンクリート54の打設時に、先行側のコンクリート補強用シート14Aの継ぎ目側端部を型枠20の継ぎ目側端部よりはみ出した状態で先行コンクリート54を打設する。
【0084】
次に、コンクリートの継ぎ目部でコンクリート補強用シート14を巻き込み施工する場合には、同図(B)に示すように、先行側のコンクリート補強用シート14Aの継ぎ目側端部を岩盤側に折り曲げた状態とし、後行の型枠20及びコンクリート補強用シート14Bを設置して後行のコンクリートを打設することで、継ぎ目部を巻き込み施工するようにしている。
【0085】
また、コンクリートの継ぎ目部でコンクリート補強用シート14を重ね合わせて施工する場合には、同図(C)に示すように、先行側のコンクリート補強用シート14Aの継ぎ目側端部をそのまままっすぐに伸ばした状態で、後行の型枠20及びコンクリート補強用シート14Bを設置して後行のコンクリートを打設することで、継ぎ目部を重ね合わせ施工するようにしている。
【0086】
このように、コンクリート補強用シート14の継ぎ目部を巻き込み施工したり、重ね合わせ施工したりすることで、トンネル構造物10を連続的に補強することができることとなる。
【0087】
本実施の形態においては、コンクリート補強用シート14の縦材16及び横材18は、少なくとも埋設部の裏面側にトンネル構造体10への食い付き部を有するものとし、この埋設部の裏面側に形成した食い付き部が表層部のコンクリートに食い付くことで、より一層確実にコンクリート構造体の補強を行うことが可能となるもので、図8〜図13にその例を示す。
【0088】
図8は、コンクリート補強用シートの食い付き部の一例を示す断面図である。
【0089】
このコンクリート補強用シート14は、横材18の裏面側に食い付き部として多数の起毛部材56を形成し、この起毛部材56をコンクリートに食い付かせるようにしている。
【0090】
このような起毛部材56による場合には、容易に食い付き部を形成することができる
図9は、食い付き部の他の例を示す断面図で、このコンクリート補強用シート14においては、横材18の裏面側に横材18の長手方向に沿って曲線加工を施したバサルト繊維製の曲線材58を接着することで食い付き部を形成するようにしている。
【0091】
図10は、食い付き部のさらに他の例を示す断面図で、このコンクリート補強用シート14は、縦材16間に位置する横材18にバサルト繊維製のロックウール60を巻き付けることで、食い付き部を形成するようにしている。
【0092】
図11は、食い付き部のさらに他の例を示し、同図(A)は部分平面図、同図(B)は部分断面図で、このコンクリート補強用シート14は、(A)に示すように、横材18の幅方向中央位置に長手方向に沿って所定間隔でスリット62を形成し、(B)に示すように、スリット62を矢印方向に拡開してコンクリートが入り込むようにすることで、食い付き部を形成するようにしている。
【0093】
図12は、食い付き部のさらに他の例を示し、同図(A)は部分平面図、同図(B)は部分側面図で、このコンクリート補強用シート14は、横材18の裏面側に、バサルト繊維で形成した撚り線64を接着し、この撚り線64のコンクリート付着力をもって食い付き部を形成するようにしている。
【0094】
図13は、食い付き部のさらに他の例を示し、同図(A)は部分平面図、同図(B)は部分側面図で、このコンクリート補強用シート14は、横材18の長手方向に沿って所定間隔で編み込み孔66を形成し、この編み込み孔66にバサルト繊維で形成した撚り線64を編み込み、この撚り線64のコンクリート付着力をもって食い付き部を形成するようにしている。
【0095】
図14〜図16には、本発明の他の実施の形態にかかるコンクリート補強用シートを示す。
【0096】
図14は本実施の形態にかかるコンクリート補強用シートの斜視図、図15(A)は図14のコンクリート補強用シートの正面図、同図(B)はその部分拡大図、図16は図14及び図15のコンクリート補強用シートをトンネルの表層部に埋め込んだ状態を示す断面図である。
【0097】
本実施の形態においては、コンクリート補強用シート14は、トンネル構造体10の内面12における周方向に沿って配設され、かつ、軸線方向に所定ピッチで配設された縦材16と、この縦材16に対し直交する方向で所定ピッチで配設された第1の横材18Aと、縦材16に対して2方向に斜めに交差して設けられた第2の横材18Bとを有したものとなっている。
【0098】
また、この場合、図15(B)に示すように、縦材16の幅W3は10mm、第1の横材18A及び第2の横材18Bの幅W4は5mmとされ、第2の横材18Bの交点間距離L3は50mm、その交点と第1の横材18Aまでの距離L4は25mmとされている。
【0099】
さらに、図16に示すように、縦材16の厚さt3は0.6mm、第1の横材18A及び第2の横材18Bの厚さt4は0.3mmとされている。
【0100】
本実施の形態のコンクリート補強用シート14は、図16に示すように、縦材16、第1の横材18A及び第2の横材18B間に多くの空間部が形成されるため、コンクリートへの食い付きが非常によいものとなっている。
【0101】
図17及び図18には、本発明のさらに他の実施の形態にかかるコンクリート補強用シートを示す。
【0102】
図17(A)は本実施の形態にかかるコンクリート補強用シートの正面図、同図(B)はその部分拡大図、図18は図17のコンクリート補強用シートをトンネルの表層部に埋め込んだ状態を示す断面図である。
【0103】
本実施の形態におけるコンクリート補強用シート14は、トンネル構造体10の内面12における周方向に沿って配設され、かつ、軸線方向に所定ピッチで配設された縦材16と、この縦材16に対し直交する方向で所定ピッチで配設された横材18Aとを有したものとなっている。
【0104】
また、この場合、図17(B)に示すように、縦材16の幅W5は10mm、横材18の幅W6は5mmとされ、縦材16と横材18との交点間距離L5は50mmとされている。
【0105】
さらに、図18に示すように、縦材16の厚さt3は0.6mm、横材18の厚さt5は0.6mmとされている。
【0106】
本実施の形態のコンクリート補強用シート14は、縦材16も横材18も十分な厚さを有しており、強度が高く、補強効果も高くなるものである。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の実施の形態に変形可能である。
【0108】
例えば、前記実施の形態においては、コンクリート構造体としてトンネル構造体を示したが、この例に限定されるものではなく、橋梁、橋脚等種々のコンクリート構造物に適用可能である。
【符号の説明】
【0109】
10 トンネル構造体
12 内面
16 縦材
18 横材
18A 第1の横材
18B 第2の横材
20 型枠
22 係止ピン
38 埋設側ピン部材
40 露出側ピン部材
56 起毛部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート補強用シート及びコンクリート補強方法に関し、特に、新設のコンクリート構造体のコンクリート補強用シート及びコンクリート補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、既設コンクリート構造物のコンクリート剥落防止として、コンクリートの表面を下地処理した後エポキシ樹脂等の接着剤で連続繊維シートを貼り合わせるコンクリート補修・補強工法が行われている。
【0003】
しかし、既設のトンネル内での貼り合わせ作業は作業性が悪く、しかも樹脂系接着剤で貼り合わせるため、火災時には補強効果がなくなるという問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1に示すような新設のコンクリート構造物に対するコンクリート剥落防止、表面付近のひび割れ防止を主な目的としたコンクリート補強材及びコンクリート構造体の形成方法が提案されている。
【0005】
このコンクリート補強材は、金属線又は非金属繊維を主原料とする網状体に接着剤で多数の粒状体を接着された状態となっており、このコンクリート補強材を新設のコンクリートの表面近くに埋め込むようにしている。
【0006】
このコンクリート補強材の主原料である金属線としては、ステンレス鋼、チタン等が用いられ、非金属繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維の他、アラミド、ビニロン、ポリプロピレン等の合成繊維が用いられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−232624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなコンクリート補強材にあっては、主原料としてガラス繊維やアラミド繊維を用いる場合には、強度が小さく、耐熱性が低いという問題がある。
【0009】
また、コンクリートの線膨張係数(温度変化に対する伸縮)は、10×10-6/℃であり、補強用繊維としては同等のものが望ましいが、炭素繊維、アラミド繊維等は線膨張係数が−4〜−6×10-6/℃と逆の挙動を示すため、コンクリート表面への適用が難しいという問題がある。
【0010】
さらに、金属線及び高強度で耐熱性の高い炭素繊維は、導電性を有するため、電気や磁気を利用する鉄道トンネルには不向きであるという問題がある。
【0011】
そしてさらに、コンクリート補強材がコンクリートの表面近くに埋め込まれるため、コンクリート補強材よりも表面側に位置するコンクリートの表面が剥落する可能性があるという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、軽量で、施工性が良く、強度が大きく、耐熱性が高く、コンクリート表面への適用が容易で、絶縁性を有し、コンクリートの表面剥落を防止できるコンクリート補強用シート及びコンクリート補強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)前記目的を達成するため、本発明のコンクリート補強用シートは、コンクリート構造体の表層部に設置されてコンクリート構造体を補強する縦材及び横材を有する網目状のコンクリート補強用シートであって、
前記縦材及び横材はバサルト繊維にて形成され、
前記縦材及び横材は、少なくとも一部がコンクリート構造体内への埋設部として形成され、他はコンクリート構造体表面への露出部として形成されることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、コンクリート構造物の表層部に設置されて網目状のコンクリート補強用シートをバサルト繊維にて形成することで、軽量で、施工性が良く、強度が大きく、耐熱性が高く、コンクリート表面への適用が容易となり、しかも、絶縁性を有して鉄道トンネルにも適用可能となる。
【0015】
さらに、縦材及び横材は少なくとも一部がコンクリート構造体への埋設部として形成されているため、コンクリート構造体表層部への食い付きが良く、埋設部以外はコンクリート構造体表面への露出部として形成されるため、コンクリートの表面剥落を防止できる。
【0016】
(2)本発明においては、(1)において、
前記コンクリート構造物はトンネル構造体とされ、
前記縦材がトンネルの内周方向に露出して設けられるようにすることができる。
【0017】
このような構成とすることにより、トンネル構造体の補強に有効なものとなり、しかも、耐火性、絶縁性に優れたコンクリート補強用シートであるため、トンネル内の火災時、あるいはリニアカー等の電磁力を用いるような鉄道トンネルであっても、磁力線に影響を与えるのを確実に防止して有効なものとすることが可能である。
【0018】
(3)本発明においては、(2)において、
トンネル内周面に露出する縦材の間隔は、コンクリートの劣化状況が把握可能な間隔とすることができる。
【0019】
このような構成とすることにより、縦材の間から露出するコンクリートの表面を目視することにより、確実にコンクリート表面の劣化状態を把握することができ、その劣化状況に応じて適宜最適な処置を施すことが可能となる。
【0020】
(4)本発明においては、(3)において、
前記縦材の間隔は、5cm〜30cmとすることができる。
【0021】
このような構成とすることにより、コンクリートの補強を確実に行った上で、コンクリートの劣化状態を把握するに十分な間隔を保持することができる。
【0022】
(5)本発明においては、(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記縦材及び横材は、少なくとも埋設部の裏面側にコンクリート構造体への食い付き部を有するものとすることができる。
【0023】
このような構成とすることにより、埋設部の裏面側に形成した食い付き部が表層部のコンクリートに食い付くことで、より一層確実にコンクリート構造体の補強を行うことが可能となる。
【0024】
(6)本発明においては、(5)において、前記食い付き部は、起毛部材にて形成されるようにすることができる。
【0025】
このような構成とすることにより、起毛部材により容易に食い付き部を形成することができる。
【0026】
(7)本発明においては、(1)〜(6)のいずれかにおいて、前記縦材及び横材の交点位置を先端部がコンクリート部材に挿入される係止ピンにて前記コンクリート構造体に係止可能とすることができる。
【0027】
このような構成とすることにより、コンクリート補強用シートをより確実にコンクリート構造体に係止させることができる。
【0028】
(8)本発明においては、(7)において、前記係止ピンは、バサルト繊維、ステンレスまたは合成樹脂製とすることができる。
【0029】
このような構成とすることにより、比較的安価な材料で係止ピンを形成することができる。
【0030】
(9)本発明のコンクリート補強方法は、(1)〜(8)のいずれかのコンクリート補強用シートを用いたコンクリート補強方法であって、
前記コンクリート補強用シートの縦材を型枠に接触させて固定した状態で前記型枠をコンクリート打設位置に設置する工程と、
前記コンクリート打設位置に設置した型枠に対してコンクリートを打設する工程と、
前記打設コンクリートが硬化した後、前記型枠をコンクリート構造物より取り外し、コンクリート構造物の表面に前記コンクリート補強用シートの縦材を露出させる工程と、
を含むことを特徴とする。
【0031】
本発明によれば、縦材を型枠に接触させた状態で、コンクリート補強用シートを型枠に固定して、型枠を設置し、コンクリートを打設した後、型枠を取り外せばコンクリート補強用シートの一部をコンクリト内に埋設させた状態で、縦材をコンクリと表面に露出させた状態とすることができる。
【0032】
(10)本発明においては、(9)において、
前記コンクリートに埋設される埋設側ピン部材と、前記埋設側ピン部材に取り付けられて前記コンクリート補強用シートを前記コンクリート側に係止する露出側ピン部材とを有する係止ピンを用い、
前記コンクリート補強用シートの縦材を型枠に接触させて固定する際に、前記埋設側ピン部材を前記コンクリート補強用シートの埋設側に設置し、露出側ピン部材を前記型枠を挟んで前記埋設側ピン部材に取り付けて、前記コンクリート補強用シートを前記型枠に固定する工程と、
前記コンクリート打設位置に設置した型枠に対してコンクリートを打設して型枠を取り外す際に、埋設側ピン部材より露出側ピン部材を取り外す工程と、
前記コンクリートから型枠を取り外した後、前記埋設側ピン部材より取り外した露出側ピン部材を埋設側ピン部材に取り付けてコンクリート補強用シートをコンクリートに係止する工程と、
を含むようにすることができる。
【0033】
このような構成とすることにより、係止ピンを用いて型枠設置時に型枠にコンクリート補強用シートを係止させ、コンクリートの打設終了後はその係止ピンを用いてコンクリート構造物に確実にコンクリート補強用シートを係止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるコンクリート補強用シートを用いてトンネルを構築する状態を示す部分断面斜視図である。
【図2】同図(A)は図2のコンクリート補強用シートの正面図、同図(B)はその部分拡大図である。
【図3】図2のコンクリート補強用シートをトンネルの表層部に埋め込んだ状態を示す断面図である。
【図4】同図(A)は図2及び図3のコンクリート補強用シートを係止ピンにてトンネル表層部に係止する状態を示す部分正面図、同図(B)はその断面図である。
【図5】係止ピンの変形例を示すもので、同図(A)はその平面図、同図(B)はその側面図である。
【図6】係止ピンの他の変形例を示すもので、同図(A)はコンクリート打設時の側面図、同図(B)はコンクリート打設後の側面図である。
【図7】図1〜図4のコンクリート補強用シートの継ぎ目部施工状態を示すもので、同図(A)は先行コンクリート打設時の状態を示す断面図、同図(B)は継ぎ目部を巻き込み施工した状態の断面図、同図(C)は継ぎ目部を重ね合わせて施工した状態を示す断面図である。
【図8】本実施の形態にかかるコンクリート補強用シートの食い付き部の一例を示す断面図である。
【図9】食い付き部の他の例を示す断面図である。
【図10】食い付き部のさらに他の例を示す断面図である。
【図11】食い付き部のさらに他の例を示すもので、同図(A)は部分平面図、同図(B)は部分断面図である。
【図12】食い付き部のさらに他の例を示すもので、同図(A)は部分平面図、同図(B)は部分側面図である。
【図13】食い付き部のさらに他の例を示すもので、同図(A)は部分平面図、同図(B)は部分側面図である。
【図14】本発明の他の実施の形態にかかるコンクリート補強用シートの斜視図である。
【図15】同図(A)は図14のコンクリート補強用シートの正面図、同図(B)はその部分拡大図である。
【図16】図14及び図15のコンクリート補強用シートをトンネルの表層部に埋め込んだ状態を示す断面図である。
【図17】本発明のさらに他の実施の形態にかかるコンクリート補強用シートを示すもので、同図(A)はコンクリート補強用シートの正面図、同図(B)はその部分拡大図である。
【図18】図17のコンクリート補強用シートをトンネルの表層部に埋め込んだ状態を示す断面図である。
【図19】バサルト繊維と、炭素繊維、アラミド繊維及びガラス繊維との物性比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0036】
図1は、本発明の一実施の形態にかかるコンクリート補強用シートをコンクリート構造体の表層部に設置した状態を示すもので、図中10がコンクリート構造体の一例としてのトンネル構造体で、このトンネル構造体10の内面12の表層部にコンクリート補強用シート14を設置するようにしている。
【0037】
このコンクリート補強用シート14は、トンネル構造体10を内周面側から補強するためのもので、バサルト繊維にて形成されたシート体からなるものとされている。
【0038】
また、このコンクリート補強用シート14は、図2に示すように、縦材16及び横材18を組み合わせた網目状のものとされている。
【0039】
さらに、縦材16及び横材18は、少なくとも一部がトンネル構造体10内への埋設部として形成され、他はトンネル構造体10表面への露出部として形成されるようになっている。
【0040】
具体的には、図2(A)、(B)に示すように、縦材16はトンネル構造体10の周方向に補強力が働くように、トンネル構造体10の周方向に沿って長手方向に繊維が揃うようになっており、横材18は縦材16に対して2方向に斜めに交差して設けられ、その長手方向に繊維が揃うようになっており、縦材16に比し横材18はトンネル構造体10の軸線方向に補強力が働くようになっている。
【0041】
そして、図3に示すように、横材18のすべての部分及び縦材16の一部がトンネル構造物10のコンクリート内への埋設部とされ、他の部分、すなわち縦材16の表面はトンネル構造体10の内周面への露出部として形成されている。
【0042】
また、同図(B)に示すように、縦材16の幅W1は例えば10mm、横材18の幅W2は例えば5mmとされ、横材18の交点間の距離L1は50mmとされている。
【0043】
さらに、図3に示すように、縦材16の厚さt1及び横材18の厚さt2はそれぞれ0.5mmとされている。
【0044】
ところで、バサルト繊維は、図19に示すように、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等に比し、次のような利点を有している。
【0045】
まず、アラミド繊維及びガラス繊維は、やや強度が小さいのに対して、バサルト繊維は、アラミド繊維及びガラス繊維に対して1.2〜1.7倍の強度を示している。
【0046】
次に、コンクリートの線膨張係数(温度変化に対する伸縮)は、10×10-6/℃であり、補強繊維としては同等の材料が望ましいが、炭素繊維、アラミド繊維は、−4〜−6×10-6/℃とコンクリートと逆の挙動を示すため、コンクリート表面への適用が難しいのに対して、バサルト繊維は、線膨張係数が7〜8×10-6/℃とコンクリートとほぼ同様の挙動を示す。
【0047】
次いで、アラミド繊維及びガラス繊維は、耐熱性が低いのに対して、バサルト繊維は、50%強度保持温度が600℃と炭素繊維同等の耐熱性を有している。
【0048】
さらに、高強度で耐熱性の高い炭素繊維は、導電性を有するため、電気や磁気を利用する鉄道トンネルには不向きであるが、バサルト繊維は、非導電性であるため、電気や磁気を利用した鉄道トンネルにも適した材料である。
【0049】
このように、トンネル構造物10の内周面表層部に設置されて網目状のコンクリート補強用シート14をバサルト繊維にて形成することで、軽量で、施工性が良く、強度が大きく、耐熱性が高く、コンクリート表面への適用が容易となり、しかも、絶縁性を有して鉄道トンネルにも適用可能となる。
【0050】
また、縦材16及び横材18は、少なくとも一部がトンネル構造体10への埋設部として形成されているため、トンネル構造体10表層部への食い付きが良く、埋設部以外はコンクリート構造体表面への露出部として形成されるため、コンクリートの表面剥落を防止することが可能となる。
【0051】
さらに、縦材16がトンネル構造体10の内周方向に露出して設けられるようにすることで、トンネル構造体10の補強に有効なものとなり、しかも、耐火性、絶縁性に優れたコンクリート補強用シートであるため、トンネル内の火災時、あるいはリニアカー等の電磁力を用いるような鉄道トンネルであっても、磁力線に影響を与えるのを確実に防止して有効なものとすることが可能である。
【0052】
また、本実施の形態において、トンネル構造体10の内面12に露出する縦材16の間隔P1は、図2(A)に示すように、コンクリートの劣化状況が把握可能な間隔、具体的には、5cm〜30cmとするようにしている。
【0053】
このように縦材16間の間隔P1を設定することにより、縦材16の間から露出するコンクリートの表面を目視することにより、コンクリートの補強を確実に行った上で、コンクリートの劣化状態を把握するに十分な間隔を保持し、確実にコンクリート表面の劣化状態を把握することができ、その劣化状況に応じて適宜最適な処置を施すことが可能となる。
【0054】
このようなコンクリート補強用シートを用いたコンクリート補強方法は、次のような手順で行われる。
【0055】
まず、図3に示すように、コンクリート補強用シート14の縦材16を型枠20に接触させて固定する。
【0056】
次いで、この状態で、型枠20をコンクリート打設位置に設置する。
【0057】
次に、コンクリート打設位置に設置した型枠20に対して、例えば山岳トンネル等の場合、岩盤と型枠20との間にコンクリートを打設する。
【0058】
そして、打設したコンクリートが硬化した後、型枠20をコンクリート構造物、すなわちトンネル構造物10の内面12より取り外し、トンネル構造物10の表面にコンクリート補強用シート14の縦材を露出させる。
【0059】
この場合、トンネル構造物10の表面に露出した縦材16の表面以外はすべてコンクリート内に埋設されて、コンクリートへの食い付き部として機能することとなり、コンクリートへの確実な取り付けが可能となり、しかも、縦材16の表面部分にはコンクリートが付着していないので、コンクリートの崩落の恐れは生じないこととなる。
【0060】
この場合、図4に示すような係止ピン22を用いて、コンクリート補強用シート14をコンクリート構造体10に係止するようにすることができる。
【0061】
この係止ピン22は、同図(A)に示すように、隣接する縦材16及び交差する横材18の交点位置を覆う大きさのピン頭部24を有し、同図(B)に示すように、ピン頭部24を縦材16の表面に接触させ、ピン本体26をコンクリート構造体10側に突出させることで、ピン本体26が確実にコンクリート部材に保持され、それによってコンクリート補強用シート14がより確実にトンネル構造体10に係止されるようになっている。
【0062】
ピン本体の長さL2は、鉄筋被り以下とされ、例えば40mm程度とされる。
【0063】
この係止ピン22の取り付けは、型枠20に係止ピン22を設置し、その上からコンクリート補強用シート14の縦材16を型枠20に接触させて固定し、コンクリートを打設すればコンクリート構造体10へのコンクリート補強用シート14の係止が完了することとなる。
【0064】
また、係止ピン22は、強度、耐熱性、非導電性を考慮すると、バサルト繊維からなるものが好ましいが、ステンレスまたは合成樹脂製であっても良い。
【0065】
このようにすることで、比較的安価な材料で係止ピン22を形成することができる。
【0066】
図5には、係止ピンの変形例を示す。
【0067】
この係止ピン28は、同図(A)に示すように、一方が両端が隣接する両横材18に達する長さを有し、他方が一方の長さ方向と直交する方向で一方の長さ方向より短くて隣接する横材18間に挿入可能な長さとされたピン頭部30と、このピン頭部30より突出するピン本体32とを有している。
【0068】
ピン頭部30の長さ方向の両端部には、同図(B)に示すように、横材18の厚さに相応した溝34が形成されており、コンクリート補強用シート14への取り付け時には、長手辺側を横材18の長手方向に沿わせた状態で、ピン頭部30を横材18間に挿入し、同図(A)に示すように、例えば矢印方向に回転させることで、隣接する横材18に対して両溝34が係合し、取り付け状態となる。
【0069】
そして、この状態で、コンクリート補強用シート14を、その縦材16を型枠20に接触させて、型枠20にコンクリートを打設して硬化後型枠20を取り外せば、係止ピン28によって、コンクリート補強用シート14がより確実にトンネル構造体10に係止されることとなる。
【0070】
図6には、係止ピンの他の変形例を示す。
【0071】
この係止ピン36は、ステンレス製のものとされ、コンクリートに埋設される埋設側ピン部材38と、埋設側ピン部材38に取り付けられてコンクリート補強用シート14をコンクリート側に係止する露出側ピン部材40とを有している。
【0072】
埋設側ピン部材38は、隣接するそれぞれの縦部材16及び横部材18にまたがる大きさの埋設プレート部42と、この埋設プレート部42に設けられたナット部44と、このナット部44より突出するねじ付きのピン本体46とを有している。
【0073】
露出ピン部材40は、埋設プレート部42とほぼ同様の大きさの露出プレート部48と、露出プレート部48より突出しナット部44に螺合されるボルト部50とを有している。
【0074】
この係止ピン36を用いたコンクリート補強方法は、次の手順で行われる。
【0075】
まず、図6(A)に示すように、コンクリート補強用シート14の縦材16を型枠20に接触させて固定する際に、埋設側ピン部材38をコンクリート補強用シート14の埋設側、すなわち横材18側に設置し、露出側ピン部材40を型枠20を挟んで埋設側ピン部材38に取り付けて、コンクリート補強用シート14を型枠20に固定する。
【0076】
この場合、埋設側ピン部材38の埋設プレート部42を横材18に接触させてピン本体46を横材18より突出させた状態とし、縦材16が接触している型枠20の反対側の面より型枠20に形成した貫通孔52より露出側ピン部材40のボルト部50を埋設側ピン部材38のナット部44に螺合させて締め付けることで、埋設プレート部42と露出プレート部48で型枠20及びコンクリート補強用シート14を挟み込み、コンクリート補強用シート14を型枠に仮止めするようにしている。
【0077】
次いで、コンクリート打設位置に設置した型枠20に対してコンクリートを打設して、コンクリート硬化後に型枠20を取り外す際に、埋設側ピン部材38より露出側ピン部材40を取り外す。
【0078】
この場合、露出側ピン部材40を回転させてボルト部50を埋設側ピン部材38のナット部44から取り外せば容易に取り外しができる。
【0079】
次に、トンネル構造体10を構成するコンクリートから型枠20を取り外した後、埋設側ピン部材38より取り外した露出側ピン部材40を埋設側ピン部材38に取り付けてコンクリート補強用シート14をコンクリートに係止する。
【0080】
この場合、露出側ピン部材40を回転させてボルト部50を埋設側ピン部材38のナット部44に螺合させれば容易に取り付けができる。
【0081】
このようにすることにより、係止ピン36を用いて型枠20設置時に型枠20にコンクリート補強用シート14を係止させ、コンクリートの打設終了後はその係止ピン38を用いてトンネル構造物10に確実にコンクリート補強用シート14を係止させることができる。
【0082】
図7には、コンクリート補強用シート14の継ぎ目部施工状態を示す。
【0083】
同図(A)は先行コンクリート打設時の状態を示す断面図で、先行コンクリート54の打設時に、先行側のコンクリート補強用シート14Aの継ぎ目側端部を型枠20の継ぎ目側端部よりはみ出した状態で先行コンクリート54を打設する。
【0084】
次に、コンクリートの継ぎ目部でコンクリート補強用シート14を巻き込み施工する場合には、同図(B)に示すように、先行側のコンクリート補強用シート14Aの継ぎ目側端部を岩盤側に折り曲げた状態とし、後行の型枠20及びコンクリート補強用シート14Bを設置して後行のコンクリートを打設することで、継ぎ目部を巻き込み施工するようにしている。
【0085】
また、コンクリートの継ぎ目部でコンクリート補強用シート14を重ね合わせて施工する場合には、同図(C)に示すように、先行側のコンクリート補強用シート14Aの継ぎ目側端部をそのまままっすぐに伸ばした状態で、後行の型枠20及びコンクリート補強用シート14Bを設置して後行のコンクリートを打設することで、継ぎ目部を重ね合わせ施工するようにしている。
【0086】
このように、コンクリート補強用シート14の継ぎ目部を巻き込み施工したり、重ね合わせ施工したりすることで、トンネル構造物10を連続的に補強することができることとなる。
【0087】
本実施の形態においては、コンクリート補強用シート14の縦材16及び横材18は、少なくとも埋設部の裏面側にトンネル構造体10への食い付き部を有するものとし、この埋設部の裏面側に形成した食い付き部が表層部のコンクリートに食い付くことで、より一層確実にコンクリート構造体の補強を行うことが可能となるもので、図8〜図13にその例を示す。
【0088】
図8は、コンクリート補強用シートの食い付き部の一例を示す断面図である。
【0089】
このコンクリート補強用シート14は、横材18の裏面側に食い付き部として多数の起毛部材56を形成し、この起毛部材56をコンクリートに食い付かせるようにしている。
【0090】
このような起毛部材56による場合には、容易に食い付き部を形成することができる
図9は、食い付き部の他の例を示す断面図で、このコンクリート補強用シート14においては、横材18の裏面側に横材18の長手方向に沿って曲線加工を施したバサルト繊維製の曲線材58を接着することで食い付き部を形成するようにしている。
【0091】
図10は、食い付き部のさらに他の例を示す断面図で、このコンクリート補強用シート14は、縦材16間に位置する横材18にバサルト繊維製のロックウール60を巻き付けることで、食い付き部を形成するようにしている。
【0092】
図11は、食い付き部のさらに他の例を示し、同図(A)は部分平面図、同図(B)は部分断面図で、このコンクリート補強用シート14は、(A)に示すように、横材18の幅方向中央位置に長手方向に沿って所定間隔でスリット62を形成し、(B)に示すように、スリット62を矢印方向に拡開してコンクリートが入り込むようにすることで、食い付き部を形成するようにしている。
【0093】
図12は、食い付き部のさらに他の例を示し、同図(A)は部分平面図、同図(B)は部分側面図で、このコンクリート補強用シート14は、横材18の裏面側に、バサルト繊維で形成した撚り線64を接着し、この撚り線64のコンクリート付着力をもって食い付き部を形成するようにしている。
【0094】
図13は、食い付き部のさらに他の例を示し、同図(A)は部分平面図、同図(B)は部分側面図で、このコンクリート補強用シート14は、横材18の長手方向に沿って所定間隔で編み込み孔66を形成し、この編み込み孔66にバサルト繊維で形成した撚り線64を編み込み、この撚り線64のコンクリート付着力をもって食い付き部を形成するようにしている。
【0095】
図14〜図16には、本発明の他の実施の形態にかかるコンクリート補強用シートを示す。
【0096】
図14は本実施の形態にかかるコンクリート補強用シートの斜視図、図15(A)は図14のコンクリート補強用シートの正面図、同図(B)はその部分拡大図、図16は図14及び図15のコンクリート補強用シートをトンネルの表層部に埋め込んだ状態を示す断面図である。
【0097】
本実施の形態においては、コンクリート補強用シート14は、トンネル構造体10の内面12における周方向に沿って配設され、かつ、軸線方向に所定ピッチで配設された縦材16と、この縦材16に対し直交する方向で所定ピッチで配設された第1の横材18Aと、縦材16に対して2方向に斜めに交差して設けられた第2の横材18Bとを有したものとなっている。
【0098】
また、この場合、図15(B)に示すように、縦材16の幅W3は10mm、第1の横材18A及び第2の横材18Bの幅W4は5mmとされ、第2の横材18Bの交点間距離L3は50mm、その交点と第1の横材18Aまでの距離L4は25mmとされている。
【0099】
さらに、図16に示すように、縦材16の厚さt3は0.6mm、第1の横材18A及び第2の横材18Bの厚さt4は0.3mmとされている。
【0100】
本実施の形態のコンクリート補強用シート14は、図16に示すように、縦材16、第1の横材18A及び第2の横材18B間に多くの空間部が形成されるため、コンクリートへの食い付きが非常によいものとなっている。
【0101】
図17及び図18には、本発明のさらに他の実施の形態にかかるコンクリート補強用シートを示す。
【0102】
図17(A)は本実施の形態にかかるコンクリート補強用シートの正面図、同図(B)はその部分拡大図、図18は図17のコンクリート補強用シートをトンネルの表層部に埋め込んだ状態を示す断面図である。
【0103】
本実施の形態におけるコンクリート補強用シート14は、トンネル構造体10の内面12における周方向に沿って配設され、かつ、軸線方向に所定ピッチで配設された縦材16と、この縦材16に対し直交する方向で所定ピッチで配設された横材18Aとを有したものとなっている。
【0104】
また、この場合、図17(B)に示すように、縦材16の幅W5は10mm、横材18の幅W6は5mmとされ、縦材16と横材18との交点間距離L5は50mmとされている。
【0105】
さらに、図18に示すように、縦材16の厚さt3は0.6mm、横材18の厚さt5は0.6mmとされている。
【0106】
本実施の形態のコンクリート補強用シート14は、縦材16も横材18も十分な厚さを有しており、強度が高く、補強効果も高くなるものである。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の実施の形態に変形可能である。
【0108】
例えば、前記実施の形態においては、コンクリート構造体としてトンネル構造体を示したが、この例に限定されるものではなく、橋梁、橋脚等種々のコンクリート構造物に適用可能である。
【符号の説明】
【0109】
10 トンネル構造体
12 内面
16 縦材
18 横材
18A 第1の横材
18B 第2の横材
20 型枠
22 係止ピン
38 埋設側ピン部材
40 露出側ピン部材
56 起毛部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造体の表層部に設置されてコンクリート構造体を補強する縦材及び横材を有する網目状のコンクリート補強用シートであって、
前記縦材及び横材はバサルト繊維にて形成され、
前記縦材及び横材は、少なくとも一部がコンクリート構造体内への埋設部として形成され、他はコンクリート構造体表面への露出部として形成されることを特徴とするコンクリート補強用シート。
【請求項2】
請求項1において、
前記コンクリート構造物はトンネル構造体とされ、
前記縦材がトンネルの内周方向に露出して設けられることを特徴とするコンクリート補強用シート。
【請求項3】
請求項2において、
トンネル内周面に露出する縦材の間隔は、コンクリートの劣化状況が把握可能な間隔とされていることを特徴とするコンクリート補強用シート。
【請求項4】
請求項3において、
前記縦材の間隔は、5cm〜30cmとされていることを特徴とするコンクリート補強用シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記縦材及び横材は、少なくとも埋設部の裏面側にコンクリート構造物への食い付き部を有することを特徴とするコンクリート補強用シート。
【請求項6】
請求項5において、
前記食い付き部は、起毛部材にて形成されていることを特徴とするコンクリート補強用シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
少なくとも前記縦材及び横材のいずれかを先端部がコンクリート部材に挿入される係止ピンにて前記コンクリート構造体に係止可能とされていることを特徴とするコンクリート補強用シート。
【請求項8】
請求項7において、
前記係止ピンは、バサルト繊維、ステンレスまたは合成樹脂製とされることを特徴とするコンクリート補強用シート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のコンクリート補強用シートを用いたコンクリート補強方法であって、
前記コンクリート補強用シートの縦材を型枠に接触させて固定した状態で前記型枠をコンクリート打設位置に設置する工程と、
前記コンクリート打設位置に設置した型枠に対してコンクリートを打設する工程と、
前記打設コンクリートが硬化した後、前記型枠をコンクリート構造物より取り外し、コンクリート構造物の表面に前記コンクリート補強用シートの縦材を露出させる工程と、
を含むことを特徴とするコンクリート補強方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記コンクリートに埋設される埋設側ピン部材と、前記埋設側ピン部材に取り付けられて前記コンクリート補強用シートを前記コンクリート側に係止する露出側ピン部材とを有する係止ピンを用い、
前記コンクリート補強用シートの縦材を型枠に接触させて固定する際に、前記埋設側ピン部材を前記コンクリート補強用シートの埋設側に設置し、露出側ピン部材を前記型枠を挟んで前記埋設側ピン部材に取り付けて、前記コンクリート補強用シートを前記型枠に固定する工程と、
前記コンクリート打設位置に設置した型枠に対してコンクリートを打設して型枠を取り外す際に、埋設側ピン部材より露出側ピン部材を取り外す工程と、
前記コンクリートから型枠を取り外した後、前記埋設側ピン部材より取り外した露出側ピン部材を埋設側ピン部材に取り付けてコンクリート補強用シートをコンクリートに係止する工程と、
を含むことを特徴とするコンクリート補強方法。
【請求項1】
コンクリート構造体の表層部に設置されてコンクリート構造体を補強する縦材及び横材を有する網目状のコンクリート補強用シートであって、
前記縦材及び横材はバサルト繊維にて形成され、
前記縦材及び横材は、少なくとも一部がコンクリート構造体内への埋設部として形成され、他はコンクリート構造体表面への露出部として形成されることを特徴とするコンクリート補強用シート。
【請求項2】
請求項1において、
前記コンクリート構造物はトンネル構造体とされ、
前記縦材がトンネルの内周方向に露出して設けられることを特徴とするコンクリート補強用シート。
【請求項3】
請求項2において、
トンネル内周面に露出する縦材の間隔は、コンクリートの劣化状況が把握可能な間隔とされていることを特徴とするコンクリート補強用シート。
【請求項4】
請求項3において、
前記縦材の間隔は、5cm〜30cmとされていることを特徴とするコンクリート補強用シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記縦材及び横材は、少なくとも埋設部の裏面側にコンクリート構造物への食い付き部を有することを特徴とするコンクリート補強用シート。
【請求項6】
請求項5において、
前記食い付き部は、起毛部材にて形成されていることを特徴とするコンクリート補強用シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
少なくとも前記縦材及び横材のいずれかを先端部がコンクリート部材に挿入される係止ピンにて前記コンクリート構造体に係止可能とされていることを特徴とするコンクリート補強用シート。
【請求項8】
請求項7において、
前記係止ピンは、バサルト繊維、ステンレスまたは合成樹脂製とされることを特徴とするコンクリート補強用シート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のコンクリート補強用シートを用いたコンクリート補強方法であって、
前記コンクリート補強用シートの縦材を型枠に接触させて固定した状態で前記型枠をコンクリート打設位置に設置する工程と、
前記コンクリート打設位置に設置した型枠に対してコンクリートを打設する工程と、
前記打設コンクリートが硬化した後、前記型枠をコンクリート構造物より取り外し、コンクリート構造物の表面に前記コンクリート補強用シートの縦材を露出させる工程と、
を含むことを特徴とするコンクリート補強方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記コンクリートに埋設される埋設側ピン部材と、前記埋設側ピン部材に取り付けられて前記コンクリート補強用シートを前記コンクリート側に係止する露出側ピン部材とを有する係止ピンを用い、
前記コンクリート補強用シートの縦材を型枠に接触させて固定する際に、前記埋設側ピン部材を前記コンクリート補強用シートの埋設側に設置し、露出側ピン部材を前記型枠を挟んで前記埋設側ピン部材に取り付けて、前記コンクリート補強用シートを前記型枠に固定する工程と、
前記コンクリート打設位置に設置した型枠に対してコンクリートを打設して型枠を取り外す際に、埋設側ピン部材より露出側ピン部材を取り外す工程と、
前記コンクリートから型枠を取り外した後、前記埋設側ピン部材より取り外した露出側ピン部材を埋設側ピン部材に取り付けてコンクリート補強用シートをコンクリートに係止する工程と、
を含むことを特徴とするコンクリート補強方法。
【図1】
【図2】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図17】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図16】
【図18】
【図19】
【図2】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図17】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図16】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−188880(P2012−188880A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54233(P2011−54233)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】
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