コンクリート製品およびその製造方法
【課題】擁壁のコーナー部分を簡単に施工できるコーナーブロックを提供する。
【解決手段】コーナー13の左右に配置されるコンクリート製の第1の壁体11および第2の壁体12と、これらの壁体11および12のコーナー13の側に埋設され、コーナー13の角度を変えられるように壁体11および12を接続する鉄筋20とを有し、壁体11および12の間に隙間15が形成されたコンクリート製のコーナーブロック10を提供する。壁体11および12の角度を擁壁のコーナーに合わせて調整することができる。また、隙間15を通して、コーナー13の外側および内側に一体となるように目地用のコンクリートを現場で打ち込みできる。
【解決手段】コーナー13の左右に配置されるコンクリート製の第1の壁体11および第2の壁体12と、これらの壁体11および12のコーナー13の側に埋設され、コーナー13の角度を変えられるように壁体11および12を接続する鉄筋20とを有し、壁体11および12の間に隙間15が形成されたコンクリート製のコーナーブロック10を提供する。壁体11および12の角度を擁壁のコーナーに合わせて調整することができる。また、隙間15を通して、コーナー13の外側および内側に一体となるように目地用のコンクリートを現場で打ち込みできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擁壁を施工するのに好適なコンクリート製品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
宅地造成などにおいて土留めを行う必要がある箇所には、断面がL字状のコンクリート製品(コンクリートブロック)を用いて擁壁が施工される。擁壁は直線的なものに限らず、コーナー部を設けて擁壁の角度を変えることが必要となる場合が多い。コーナー部分の角度は、道路の交差部分に沿った擁壁であれば90度前後であることが最も多い。鋭角な交差点に沿った擁壁であれば、コーナー部分の角度は70度程度であることが必要となる。鈍角な交差点あるいは緩いカーブに沿った擁壁であると、角度が120度程度の緩やかな角度のコーナー部分が必要となる。また、直交する交差点に沿った擁壁であっても、現場によって角度は微妙に異なり、さらに、擁壁の直線部分の施工状況によっては、計画では90度であったとしても現実には90度以外のコーナー部分を施工することが必要となるケースは多い。
【0003】
特許文献1には、使用時に型枠を組み立てて所望のコーナー角に対応された成形型枠を構成し、L型擁壁コーナーブロックを成形することが記載されている。しかしながら、この方法は、殆どのケースでは、先にコーナーブロックを施工した後にプレハブのL型擁壁ブロックを接合するので、現場での測量ミスによるトラブルが発生しやすい。さらに、現場施工用の型枠が複雑となり、必要な角度に設定するために非常に手間がかかり、施工後の型枠を取り除くのも大変に手間がかかる。
【特許文献1】特開平9−239716号公報
【特許文献2】実開平5−96142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2には、L字状の2個のブロックピースを垂直壁部に埋設したゴムあるいは金属の可撓帯で接続一体化し、折り曲げ自在に形成した擁壁ブロックが開示されている。この擁壁ブロックは、現場の曲がり角度に合わせることができ、直線部分との接続も容易である。しかしながら、ゴムあるいは金属の可撓帯でコーナーが構成されるので、コンクリート製の他の壁部分と同程度の強度および信頼性が確保できない、あるいはコンクリートと同程度の信頼感が得られないなどの理由により実際に用いられているケースは殆どない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、擁壁のコーナー部分を施工するためのコンクリート製品であって、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、第1の壁体および第2の壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材であって、第1の壁体および第2の壁体の間に隙間が形成されるように埋設された接続部材とを有するコンクリート製品である。このコンクリート製品は、ゴムあるいは金属の帯状の部材によりコーナーを形成する代わりに、第1の壁体および第2の壁体の成すコーナーの角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材により、第1の壁体および第2の壁体の間に隙間が形成されるようにしている。したがって、第1の壁体および第2の壁体により構成されるコーナーの角度を現場で変えることができ、その後、第1の壁体および第2の壁体の間の隙間を介して、コーナーの外側および内側が一体となるようにコンクリートを打ち込み、コーナー部分をコンクリートによりシールできる。このため、コンクリート壁のコーナー部分の角度を現場に合わせて変えられると共に、そのコーナーをコンクリートでシールあるいは目地止めし、コンクリート製の他の壁部分と同程度の強度および信頼性が確保できる。したがって、第1の壁体および第2の壁体の間の隙間は、モルタルが流通する程度の隙間であることが望ましい。
【0006】
本発明は、他の一態様として、擁壁の施工方法を含み、この擁壁の施工方法は、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、第1および第2の壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材であって、第1の壁体および第2の壁体の間に隙間が形成されるように埋設された接続部材とを有するコンクリート製品を、擁壁の曲がり角度に合わせて設置する工程と、第1の壁体および第2の壁体の間の隙間を介して、第1および第2の壁体の成すコーナーの外側および内側が一体となるようにコンクリートを打ち込む工程とを有する。
【0007】
第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、第1および第2の壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材であって、第1の壁体および第2の壁体の間に隙間が形成されるように埋設される接続部材の好適なものは、ワイヤーメッシュまたは、これらの壁体の隣接する側の上下方向に断続的に埋設された鉄筋である。したがって、本発明の他の一態様は、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、これらの壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材とを有し、接続部材は、ワイヤーメッシュまたは断続的に埋設された複数の鉄筋である、コンクリート製品である。
【0008】
さらに、本発明においては、第1の壁体および第2の壁体を一体で成形し、第1および第2の壁体の境界部分が割れるようにして製造されたコンクリート製品を提供する。すなわち、本発明の他の一態様は、擁壁のコーナー部分を施工するためのコンクリート製品であって、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、これらの壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材とを有し、第1の壁体および第2の壁体の厚みは隣接する側が薄くなり、第1および第2の壁体の境界部分が割れて接続部材が表れているコンクリート製品である。第1の壁体および第2の壁体の間に隙間ができることが許容されるので、壁と壁の境界部分を割って分離するという製造方法を採用できる。工場などにおいて型枠から脱型するときに、境界部分が割れるようにすることにより、脱型後の保管も容易になる。さらに、第1および第2の壁体のコーナー側は製造するときなどにおいて割った面となるために、現場において打設されるコンクリートの付着力が高い。したがって、コーナー部分の耐久性、特に、コーナーの隅の部分の目地を施工するために打設されるコンクリートの耐久性を向上できる。
【0009】
したがって、本発明の他の一態様として擁壁の施工方法を含み、この擁壁の施工方法は、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、これらの壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材とを有し、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側が薄くなり、脱型するときに、これらの壁体の境界部分が割れて接続部材が表れているコンクリート製品を、擁壁の曲がり角度に合わせて設置する工程と、第1の壁体および第2の壁体の成すコーナーの外側および内側にコンクリートを打ち込む工程とを有する。
【0010】
また、本発明の他の一態様は、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、これらの壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材とを有するコンクリート製品の製造方法であって、型枠により第1の壁体および第2の壁体を一体で成形する工程と、これらの壁体の境界部分が割れて接続部材が表れるように脱型する工程とを有する製造方法である。
【0011】
成形する工程では、第1の壁体および第2の壁体は、隣接する側が薄くなるように成形することが望ましい。脱型する工程において、コーナーの部分を割れ易くすると共に、コーナーの左右に位置する第1および第2の壁体の干渉を防止できる。
【0012】
さらに、成形する工程では、第1の壁体および第2の壁体の少なくとも外側の面を規定し、第1の壁体および第2の壁体を一体のほぼ平板として成形する外型枠と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側が凹むように成形する補助型枠とを用い、脱型する工程では、第1の壁体および第2の壁体の内側の面を吊り下げて脱型することが望ましい。さらに、外型枠は、これらの壁体の境界部分の外側を凹ませる突条を備えていることが望ましい。外側の面とは、第1および第2の壁体でコーナーを形成したときにコーナーの外側に表れる面を指し、内側の面とは、コーナーの内側、すなわち、擁壁であれば土圧を受ける面を示す。
【0013】
このため、本発明は、他の一態様として型枠を含み、この型枠は、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、これらの壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材とを有するコンクリート製品を製造するための型枠であって、第1の壁体および第2の壁体の少なくとも外側の面を規定し、第1の壁体および第2の壁体を一体のほぼ平板として成形する外型枠と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側が凹むように成形する補助型枠とを有する。外型枠は、これらの壁体の境界部分の外側を凹ませる突条を備えていることが望ましい。
【0014】
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材を有するコンクリート製品においては、接続部材をほぼ中心として第1および第2の壁体が相互に旋回する。この旋回の中心は、第1および第2の壁体が成すコーナーの外側に近いことが望ましい。これらの第1および第2の壁体は、擁壁のコーナー部分を形成し、擁壁の寸法は、ほとんどのケースで擁壁の外側に表れる面を基準として規定される。接続部材をコーナーの外側に近づけることにより、第1および第2の壁体の成す角度による、コーナー外側の開きの大きさの変動は小さくなり、第1および第2の壁体のなす角度に関わらず、第1および第2の壁体の外面の幅方向の長さは一定になる。このため、角度に関わらず、第1および第2の壁体の外面の幅方向の長さが、このコンクリート製品により施工される擁壁のコーナー部分の長さとほぼ一致するので、擁壁の施工がさらに容易になる。
【0015】
したがって、本発明の他の一態様のコンクリート製品は、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、これらの壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材であって、第1の壁体および第2の壁体の成すコーナーの外側に片寄った位置に埋設された接続部材とを有する。このコンクリート製品においては、第1および第2の壁体の旋回の中心となる接続部材がコーナーの外側に近づくので、コーナーの角度による壁体の幅方向の長さの変更は小さい。さらに、これら第1および第2の壁体により構成されるコーナー外側の目地幅が小さくなるので、モルタルなどの現地コンクリートの剥がれ落ちも防止できる。すなわち、これらの壁体の成すコーナーの外側に打設されるコンクリートは、擁壁の外側を構成し、これが剥がれ落ちることは、擁壁の見栄えが悪くなると共に、擁壁の強度が低下していることを想像させるので好ましくない。第1の壁体および第2の壁体の成すコーナーの外側に片寄った位置に埋設することにより、接続部材から外側に付着するコンクリートの量を低減することができる。このため、コーナーの外側に打設されるコンクリートの剥がれ落ちを防止できる。
【0016】
さらに、本発明に含まれるコンクリート製品の第1および第2の壁体は、フーチングと称される底から水平方向に突き出た基礎部も含めた断面がL字型のものであっても良いが、左右に位置する第1の壁体および第2の壁体が接続部材により接続された状態なので、水平方向に突き出た基礎部がなくても安定して自立する。したがって、水平方向に突き出た基礎部分は非常に小さくても良い。
【0017】
さらには、水平方向に突き出た基礎部分がなく、第1の壁体および第2の壁体が平板状であることが望ましい。特に、第1の壁体および第2の壁体が平板状であるコンクリート製品は、第1の壁体および第2の壁体を一体のほぼ平板状に型枠で成形し、脱型する際にこれらの壁体の境界部分を分断する(割る)製造方法により製造するのに適している。
【0018】
また、平板状の第1の壁体および第2の壁体は、それらの下方に、幅方向に並んで、これらの壁体の成すコーナーの内側に向かって突き出た複数の鉄筋を備えていることが望ましい。第1の壁体および第2の壁体からコーナーの内側に向かって突き出た複数の鉄筋の少なくとも一部を相互に交差させた後、それら複数の鉄筋と一体となるようにコンクリートを打ち込むことにより、現場で第1および第2の壁体を支持するための基礎部分を施工できる。水平方向に突き出た基礎部分の内側に複数の鉄筋を突き出しておくことは可能であるが、コーナーが鋭角になると、複数の鉄筋を処理する空間が基礎部分同士の間に確保できなくなる可能性がある。一方、そのような事態に対応するために鉄筋を短くすると、これらの壁体の成すコーナーが鈍角のときに複数の鉄筋を交差させることができず、充分な強度を備えた基礎部分を施工できない可能性がある。これに対し、平板状の第1および第2の壁体であれば、コーナーが鋭角であっても鉄筋を処理する空間を確保でき、コーナーが鈍角のときでも少なくとも一部が交差するように鉄筋を配置できる。
【0019】
本発明は他の一態様として擁壁の施工方法を含み、この擁壁の施工方法は、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、これらの壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材とを有し、第1の壁体および第2の壁体は、それらの下方に、幅方向に並んで、これらの壁体の成すコーナーの内側に向かって突き出た複数の鉄筋を備えているコンクリート製品を、擁壁の曲がり角度に合わせて設置する工程と、第1の壁体および第2の壁体から突き出た複数の鉄筋の少なくとも一部を交差させ、それら複数の鉄筋と一体となるようにコンクリートを打ち込む工程とを有する。
【0020】
本発明に含まれるコンクリート製品は、2つの壁体を接続部材により接続されたものに限定されず、3つ以上の壁体を接続したものであっても良い。すなわち、本発明は、第2の壁体に対して左右に隣接して配置され、第1の壁体と同様に第2の壁体に接続された第3の壁体を有するコンクリート製品を含む。これらの壁体は、同じ形態である必要はなく、例えば、3つの壁体を有するコンクリート製品の真ん中の第2の壁体は、両側の第1の壁体および第3の壁体に対して幅が狭く厚いものにすることができる。第2の壁体を、擁壁のコーナーポストとして使用し、擁壁のコーナーを面取りした状態で施工できる。さらに、第2の壁体の外側の面を凸に湾曲したものにすることにより、擁壁のコーナーを曲面に面取りした状態で施工できる。
【0021】
また、本発明に含まれるコンクリート製品は、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に、第1の壁体および第2の壁体の間を挟んで、第1の壁体および第2の壁体の間に沿って並び、第1の壁体および第2の壁体の成すコーナーの内側に向かって突き出し、第1の壁体および第2の壁体がコーナーを形成するように配置されると、少なくとも一部が重なる複数対の鉄筋を備えていることが望ましい。これら複数対の鉄筋は、コンクリート製品の第1の壁体および第2の壁体が立った状態になると、第1の壁体および第2の壁体の間を挟んで、上下に並んでコーナーの内側に突き出す状態になる。第1および第2の壁体が大型になると、コーナー部分の強度を得るために、それらの壁体を接続する接続部材の強度を上げることが要求される場合がある。例えば、接続部材が鉄筋であれば、鉄筋が太くなり、また、数が増える可能性がある。しかしながら、鉄筋が太くなったり、数が増えると、第1の壁体と第2の壁体との角度を調整することが難しくなる。複数対の鉄筋を、第1の壁体および第2の壁体の間に沿って上下に配置し、コーナーを形成するときにそれら複数対の鉄筋が重なるようにしておくと、複数対の鉄筋によりコーナー部分の強度を得ることができる。したがって、接続部材となる鉄筋の径および/または数を低減することが可能となり、第1の壁体と第2の壁体との成す角度を調整しやすいコンクリート製品を提供できる。
【0022】
これら複数対の鉄筋は溶接により接続しても良い。これら複数対の鉄筋を溶接しなくても、ある程度の長さ(例えば、直径の20倍)だけ重なった状態でコンクリートに含めて一体にすることにより、連続した鉄筋として強度が評価される。したがって、上述した擁壁の施工方法において、コンクリート製品を擁壁の曲がり角度に合わせて設置する工程では、さらに、複数対の鉄筋のうち、対を成す鉄筋の少なくとも一部を重ね、コンクリートを打ち込む工程では、複数対の鉄筋を含めてコンクリートを打ち込むことが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1に、擁壁の一般的な構成を示している。図1(a)に断面により示すように、擁壁1は、垂直方向に延びた壁部2と、その壁部2の底から水平方向に延びた基礎部3とがL型に組み合わされた断面がL型のコンクリート製ブロック5を現場で並べて設置して施工される。L型ブロック5は、基礎コンクリート4の上に配置され、擁壁1の壁部2の外側が側溝6および/または道路7となる。擁壁1の壁部2の内側には土8が盛られ、道路7に対して一段高い宅地9などとして利用され、擁壁1は、宅地9の境界および土留めとして機能する。壁部2と、基礎部3との接合部分は、湾曲していたり、リブが付けられていたりするなどの種々の構成が知られている。
【0024】
一般的なL型ブロック5は直線の擁壁1を構成するためのものである。擁壁1は、宅地9のコーナーあるいは湾曲した境界に沿った部分も備えている。擁壁1を構成するためのコーナー1cの多くは、図1(b)に示すように90度であるが、図1(c)に示すように、110度程度あるいはそれ以上の鈍角のコーナー1cが必要となることもある。また、鈍角のコーナー1cを幾つか組み合わせて湾曲した境界を構成することがある。また、道路が鋭角に交わるところでは、図1(d)に示すように、擁壁1を構成するために70度程度の鋭角なコーナー1cが必要となる場合もある。これらのコーナー1cは、現場で適切な型枠を作って施工することが可能である。一方、擁壁1の直線部分を構成するL型ブロック5は工場においてプレハブされているので、それらを繋ぎ合わせることにより直線部分の壁1は短期間で施工できる。したがって、コーナー1cを構成するブロックもプレハブされていることが望ましい。しかしながら、コーナー1cの角度は90度に限定されるものではない。さらに、設計ではコーナーの角度は90度になっていたとしても、種々の都合あるいは要因により、実際のコーナーの角度は90度から数度異なるケースも多く、90度にプレハブされたブロックを用いて擁壁1を施工すると直線部分を構成するブロック5とスムーズに繋がらない。さらに、擁壁1の直線部分を施工するために要するブロックの数に対して、コーナー部分を構成するために要するブロックの数は大幅に少なく、様々な角度のコーナーに対応したブロックをプレハブすることは経済的とは言えない。
【0025】
図2〜図4に、本発明の一実施形態のコンクリート製品の概略構成を示している。このコンクリート製品は、擁壁1のコーナー部分を構成するコンクリート製のコーナーブロック10である。図2は、コーナーブロック10を後方(内側)から見た外観を示す斜視図である。図3は、コーナーブロック10を前方(外側)から見た外観を示す斜視図である。図4(a)は、コーナーブロック10を上から見た平面図であり、底面から見た場合も同一に表れる。図4(b)は、コーナーブロック10の断面図である。図4(c)は、コーナーブロック10の正面図、図4(d)は背面図、図4(e)は右側面図であり、左側面図は対称に表れる。
【0026】
このコーナーブロック10は、コーナーの頂点あるいは稜線13rの左右に隣接して配置されるコンクリート製で平板状の第1の壁体11および第2の壁体12と、第1の壁体11および第2の壁体12が成すコーナー13の稜線13rの側、すなわち、隣接する側に埋設され、壁体11および12が成すコーナー13の角度を変えられるように第1の壁体11および第2の壁体12を接続する接続部材20を備えている。壁体11および12の内面11iおよび12iのコーナーの稜線13rの側は斜めに凹んだあるいは切欠いた面14となっている。したがって、これらの壁体11および12の上面16および底面17は、コーナーの稜線13rの側がほぼ片台形となっている。
【0027】
このコーナーブロック10の接続部材20は、第1の壁体11および第2の壁体12の間に、これらの壁11および12を接続するように、コーナーの稜線13rの上下に沿って断続的に埋設された鉄筋である。そして、第1の壁体11および第2の壁体12の間に、コーナーの稜線13rの上下方向に延びた、モルタルが通る程度の幅の隙間15が形成されている。隙間15の幅は、5〜25mm程度、さらには、10〜15mm程度が好ましい。この稜線13rに沿った隙間15は、後述するように、コーナーブロック10を脱型するときに、壁11および12の境界部分を割る、あるいは境界部分が割れることにより形成される。したがって、隙間15の両側となる、壁体11および12の隣接する側の面18は成形された面ではなく、コンクリートが割れたことによる適度な凹凸を備えた面となっている。
【0028】
平板状の第1の壁体11および第2の壁体12は、それらの下方の底17から若干上の部分に、壁体11および12のそれぞれの幅方向に並んで内側の面11iおよび12iから突き出た複数の鉄筋25を備えている。したがって、これらの鉄筋25は、壁体11および12が適当な角度のコーナー13を形成するときに、そのコーナー13の内側に向かって突き出る。それぞれの壁体11および12から突き出たこれらの鉄筋25は、少なくとも内側の数本は必ず交差する長さとなっている。
【0029】
また、壁体11および12の稜線13rと反対側の縁には、壁体11および12の内面11iおよび12iのほぼ中央には、このコーナーブロック10を擁壁1の直線部分を構成するコンクリートブロック5と仮止めするための金具、例えばインサート19が埋設されている。仮止めするための金具はインサート19に限らず、ボルトあるいは接続板などによりコンクリートブロック同士が仮止めできるものであれば良い。
【0030】
すなわち、コーナーブロック10は、底板なしの直壁状の2つの壁体11および12が鉄筋20により接続され、L型ブロックの基礎部である底板を設けず、ほぼ直壁状の壁体11および12の下側から内側に鉄筋25を伸ばした構成となっている。このようにすれば、左右の直壁11および12から伸びた主筋25を交差させることが可能となるので、擁壁1の現場でコンクリートを打ち込むことにより左右の壁体11および12の底部が一体となり直壁状の壁体11および12が分断され、接続用の鉄筋20により連結された状態であっても強固なコーナー部が形成される。
【0031】
また、擁壁1を施工する前、すなわち、保管時や搬送時には、底板がなくても接続部材20で連結された壁11および12を内側に、曲げておくことにより転倒の恐れはない。底板のない一枚壁は不安定であり、また、底板があってもそれが短い場合は不安定であるが、このコーナーブロック10は、連結用の鉄筋20により接続された壁11および12を、コーナーの頂点13rを中心に内側に曲げておくことで安定して自立する。さらに、施工後は、接続部材20でつながれている二つの壁11および12はその下部から出た主筋同士が重なり合うことにより、網状となるので、そこに投入されたコンクリートによりきわめて強固に一体化される。
【0032】
このコーナーブロック10は、製造後の保管および運搬時は、壁11および12を、約90度程度のコーナー13を成すようにしておくことが好ましい。その状態が、最も安定して自立すると考えられるからである。一方、これらの壁11および12は、接続用の鉄筋20で接続されているだけなので、現場で壁11および12の成すコーナー13の角度を調整する必要があれば、バールなどで壁11および12の位置、向き、角度などを調整することができる。
【0033】
図5に、コーナーブロック10により擁壁1のコーナー部分1cを施工する様子を示している。図5(a)は、コーナーブロック10の壁11および12を90度程度の角度を成すように現場でセットした状態を示し、図5(b)は、コーナーブロック10の壁11および12を110度程度の角度を成すように現場でセットした状態を示し、図5(c)は、コーナーブロック10の壁11および12を70度程度の角度を成すように現場でセットした状態を示している。このコーナーブロック10は、この程度の角度範囲のコーナーを、1種類のコーナーブロック10をプレハブしておくことにより対応できる。したがって、高さの異なるコーナーブロック10をプレハブすることにより、種々の擁壁を経済的に短期間で施工できる。さらに、現場で詳細な角度設定が可能なので、90度、110度あるいは70度などという設計上の角度ではなく、現場に合わせた、実際の擁壁のコーナー部分1cの角度に壁11および12の角度をセットできる。
【0034】
70度以下のコーナーも構成できるようなコンクリートブロックを提供することは可能である。このコーナーブロック10では、図4(a)などに示すように、内側の壁面11iおよび12iの稜線13rの側を斜めにカットした面14を形成して、壁11および12を内側に曲げたときに壁同士が干渉しないようにしている。したがって、この面14によりカットされる壁内面の角度を大きくすると、これらの壁体11および12がより鋭角に交差するコーナーも構成可能なコンクリートブロックを提供できる。しかしながら、逆に、鈍角のコーナーを構成するときに面14の間が広がるので、現場でコーナーの稜線13rの部分を埋めるためのコンクリート量が多くなる。
【0035】
また、基礎用の鉄筋25の点からは、より鋭角に対応できるようにすると、鋭角なコーナーでは壁11および12の間が狭くなるので、それらの間に収まるように基礎用の鉄筋25を配置する必要があり、逆に鈍角のコーナーを構成するときに鉄筋25の交差が少なくなる結果になる。したがって、本例のコーナーブロック10においては、70度以下のコーナーが必要になるケースは非常に稀なので、ある程度鈍角のコーナーも構成できる汎用性を考慮した設計を採用している。90度以下の鋭角用のコーナーブロックと、90度以上の鈍角用のコーナーブロックというような商品群を分けることによりこのような問題を解決することも可能である。
【0036】
一方、コーナーブロック10により110度以上のコーナーを構成することは可能である。以下で示すように、コーナーブロック10の壁11および12は、180度に開いた状態で成形されるので、壁同士が直線になるまで角度を開くことは可能である。しかしながら、角度を大きくすると、現場で施工する際に安定して自立し難くなるので、自立するための一時的な補強を施すことが好ましい。また、基礎用の鉄筋25の交差量が減るので、基礎用の鉄筋25を交差してコンクリートで一体にすることにより左右の壁11および12を一体化するという効果は低減する。しかしながら、現場コンクリートで基礎を施工した後は、直線を構成するL字型のコンクリートブロックに近い構成になるだけなので、擁壁としての強度を確保することは可能である。
【0037】
図6および図7に、このコーナーブロック10により擁壁1を施工する様子を示している。図6(a)および図7(a)は、コーナー部分を上方から見た状態を示し、図6(b)および図7(b)は、コーナー部分を横方向から見た状態を示す。まず、図6(a)および(b)に示したように、基礎コンクリート4の上に、コーナーブロック10の壁11および12を、擁壁1の曲がり角度に合わせて設置する。この段階では、コーナーブロック10は、基礎部を備えていないが、壁11に対し壁12がコーナー13を成すようにすることにより安定して自立する。そして、バールなどにより、壁11および12の成すコーナー13の角度を調整し、それぞれが擁壁1の直線部分を構成するブロック5の壁と一直線になるようにする。そして、インサート19に連結板19aをボルト19bにより止めて、直線部分を構成するブロック5とコーナーブロック10とを仮止めする。壁体11および12の下部からコーナー13の内側に向かって突き出た複数の鉄筋25は、相互に交差した状態になる。
【0038】
次に、図7(a)および(b)に示すように、まず、壁体11および12の下部からコーナー13の内側に向かって突き出た複数の鉄筋25と一体となるようにコンクリートを打ち込み、コーナー部分の基礎26を施工する。これにより、壁体11および12が一体になり、断面がL字型の擁壁1が構成される。
【0039】
さらに、第1の壁体11および第2の壁体12の間の隙間15を介して、コーナー13の稜線13rの外側および内側に、一体となるコンクリート21を打ち込む。コーナーの稜線13rには、多段で壁体11および12を連結する鉄筋20が埋設されているので、目地材となるコンクリート(モルタル)を鉄筋20に引っ掛けるように打ち込みあるいは注入することができ、現場で施工する目地材がすべり落ちることを防止できる。特に、連結材である鉄筋同士の間には細い隙間15が開いているので、コーナー13の背面、すなわち、内側から現場で生コンクリートを投入することにより、その生コンクリートが充分にコーナー13の表側に回り、コーナー13の内側と外側の稜線13rの目地部分が一体となるようにコンクリートで埋めることができ、直線部分と同様の強度を備えたコーナー13を施工できる。現場打ちコンクリート21で施工される、コーナー13の稜線13rの目地止めの部分は、コーナー13の内側が広いので、コーナー13の内側に生コンクリートを注入するための型枠を組んで、生コンクリートを注入し、隙間15を介してコーナー13の外側に漏れ出したコンクリートによりコーナー13の稜線13rの外側の目地の部分を施工することができる。
【0040】
さらに、コーナー13の稜線13rの外側の面18は、脱型するときに破断させた面になっているので、現場打ちコンクリートとの密着性が高く、その点でも、目地用のコンクリートが剥がれ落ちることを防止できる。すなわち、接続部材の鉄筋20の現場でコンクリートを注入する面18は、プレハブコンクリートが破断されることにより形成されているので、破断面にはノコギリの歯のような凹凸ができる。これにより、さらに目地材の付着力が増す。
【0041】
コーナーの左右を構成する壁を、コーナーの上下に沿って延びた帯状のゴム板あるいはステンレスの鋼板により接続することも可能であるが、帯状の部材には目地用のコンクリートを引っ掛けることができず、また、帯状の部材は目地用のコンクリートを遮断するのでコーナーの前後で一体化することもできない。
【0042】
コーナー13の稜線13rに沿って隙間15を設けるためには、鉄筋20の代わりに、ワイヤーメッシュを接続部材として埋設しても良く、ワイヤーメッシュを介してコーナー13の隙間を埋めることにより、コーナーの稜線13rの前後が一体となるように施工できる。隙間15から目地材となるコンクリート21がコーナーの稜線13rの表と裏とに貫通あるいは流通するので、表と裏のコンクリートは一体化される。さらに、目地材は、稜線13rの隙間15を横切るように配置された多段の鉄筋20あるいはワイヤーメッシュに引っかかる。このため、施工段階では、目地材21を挿入したとき、垂れ落ちにくくなる。さらに、目地材21が硬化した後、剥離し難くなる。
【0043】
図8に、コーナーブロック10を製造する過程を示している。図8に示した製造方法では、型枠30により第1の壁体11および第2の壁体12を一体で成形する工程(図8(c))と、コーナーの稜線13rとなる壁体11および12の境界部分が割れて接続部材である鉄筋20が表れるように脱型する工程(図8(d))とを有する。まず、この製造方法において使用する型枠30は、図8(a)に断面で示すように、第1の壁体11および第2の壁体12の外側の面11oおよび12oを規定し、第1の壁体11および第2の壁体12を一体のほぼ平板として成形する外型枠31と、第1の壁体11および第2の壁体12の内側11iおよび12iを、それらの隣接する側が薄くなるように逆三角形の凹み14を成形する、断面が逆三角形の補助型枠32とを有する。さらに、外型枠31は、これらの壁体11および12の境界部分で、これらの壁体11および12によりコーナー13を構成したときに稜線13rとなる部分を凹ませるように外型枠31の内側に向けて突き出た一筋の凸条(突条)33を備えている。
【0044】
図8(b)に示すように、壁体11および12の境界となる、外型枠31の中央を前後に横切る線に沿って、接続用の複数の鉄筋20を断続的に配置する。これらの接続用の複数の鉄筋20は、凸条33と補助型枠32とで挟みこむようにすることで安定する。図8(c)に示すように、さらに壁体11および12の構造用の鉄筋24と、基礎用の鉄筋25とを配置してから、外型枠31の内部にコンクリート39を注入する。そして、図8(d)に示すように、壁体11および12の内面11iおよび12iの適当な位置に脱型用の吊り具38を埋設し、補助型枠32を外した後に、ロープ37などを用いて壁体11および12を含むコーナーブロック10を外型枠31から脱型させる。このとき、壁体11および12はそれらの間で折り曲げられ、コーナーブロック10は、薄く形成された境界部分13bで分断あるいは破断される。
【0045】
脱型するときにロープ37により、それぞれの壁体11および12を中心方向に引っ張ることにより、壁体11および12に折れ曲がる力が加わり、壁体11および12の自重も作用することにより、境界部分13bには応力が集中して、壁体11および12の境界部分13bは自発的に割れて稜線13rとなる。すなわち、2枚の壁体11および12をそれぞれクレーンで吊り上げるとき、その中心部にはコンクリートの自重により大きな力が加えられる。このときであれば、自然に曲がるか、あるいは真ん中に少しの力を加えるだけで、壁体11および12の境界部分13bの薄いコンクリートは簡単に破断され、接続部材である鉄筋20も曲がる。特に、脱型する時点では、コンクリート39は所定の強度を保持していないので、境界部分13bは破断されやすい。境界部分13bの厚みによっては、単に脱型するときにコーナーブロック10を持ち上げるだけでは破断しないこともある。そのような場合は、境界部分13bを折るような適当な力を加えることにより、簡単に壁体11および12を折り曲げて、これらの壁体11および12を分断し、稜線13rとなる部分を形成できる。壁体11および12を折り曲げて配置できれば、上述したように、壁体11および12の底面17が下になるように壁体11および12を立てて保管することができ、安全である。
【0046】
通常の断面がL型の擁壁用のブロック5は、縦打ちと呼ばれる方法で製造されている。すなわち、L字を逆さにした空間を型枠で構成し、その空間に底板の側からコンクリートを打ち込み、脱型するときは、底板の側から引っ張り出す。コーナーブロック10は、この方法で製造することも可能である。しかしながら、脱型するときに壁体同士を折り曲げることはできない。そこで、壁体を平板とすると共に、平面打ちとすることにより、脱型時に、吊り上げれば、自重で曲がるか、わずかな力を上から加えれば、曲がり、このとき所望の部分が簡単に破断されるようにしている。
【0047】
接続部材として鉄筋20を用いて平面打ちにより製造する方法は、さらに幾つかのメリットを備えている。まず、接続部材の鉄筋20を平に配列できるので、余分な鉄筋が不要であり、配列する作業も極めて容易である。縦打ちの場合は、接続用の鉄筋20が垂直方向に並ぶので、構造用の鉄筋24などに接続用の鉄筋20を結びつけるなどの作業が発生する。
【0048】
接続部材として帯状の部材を用いると、コーナーの外側の面を形成するために接続部材の外側にコンクリートを回し込むことが難しくなる。例えば、帯状の接続部材の前、すなわち、帯状の部材と型枠の内面との隙間が2センチ程度であると、25ミリの砂利を使用したコンクリートは入りにくい。これに対し、帯状の部材の代わりに鉄筋20を連結材とし、断続的に配置すると、鉄筋20のない部分は外型枠に沿った外面を確実に成形できる。また、生コンクリートは鉄筋20の周囲から回りこむので、鉄筋20の前面に入りやすく、コーナーの稜線13rの部分も含めて、コーナーブロック10の外面を綺麗に仕上げることができる。
【0049】
縦打ちでも、接続部材として鉄筋20を採用することにより、外側へ生コンクリートを回しこみやすくする問題は解決する。しかしながら、縦打ちの場合、鉄筋20を縦に断続的に配置するために縦筋が必要になり、生コンクリートの流動性を阻害しやすい。したがって、平面打ちが適している。
【0050】
また、このコーナーブロック10には、錆あるいは土圧に対する安全性を考慮すると、接続用の鉄筋20としては直径が9mm程度あるいはそれ以上が好ましく、これらを直径の15倍程度のピッチで配列したとすると、いったんコンクリートの強度が確保できた状態になると、いくら薄くてもその部分を破断するときにかなりの力が必要となる。したがって、コンクリートの強度があまり出ていないうちに折り曲げて、破断することが好ましい。それには、平面的な型枠により成形して、脱型時にほぼ90度程度に曲げてしまうことが好ましい。
【0051】
脱型時に壁体11および12の境界部分13bを割り、コーナーの稜線13rを形成する製造方法においては、境界部分13bが精度良く割れないと、歩留まりが低下する。さらに、割れたときに、稜線13rとなる部分に所望の隙間15が形成されるようにする必要がある。一方、コーナー13の目地、特に稜線13rの外側の目地を構成する面18が割れた面であることは現場でのコンクリートとの付着力を増すために有用である。コーナー部分の外側の面を精度良く成形するためには、型枠でブロックを製造するときにコンクリートが、コーナーの外側になる部分に回りこむスペースが確保できていることが望ましい。本例では、2つの壁11および12を1つの型枠30で形成し、それらの壁11および12が連絡する部分13bは鉄筋が断続的に埋まっているだけなので、鉄筋の間を通って稜線13rとなる境界部分13bもコンクリートが流通し易い。したがって、精度の高い形状を備えたコーナーブロック10を提供できる。
【0052】
図9(a)に拡大して示すように、二枚の壁体11および12を、ほぼ水平な一つの外型枠31により製造し、それと共に、凸条33と補助型枠32により、コーナーの稜線13rを薄く形成する。さらに、接続部材である鉄筋20を、第1の壁体11および第2の壁体12が成すコーナー13の外側、すなわち、外面11oおよび12oに片寄った位置に埋設している。鉄筋20をコーナー13の外側に片寄った位置、例えば、外側から壁厚の1/3あるいはそれ以下の位置に埋設する。このような構成を採用することにより、境界部分13bを形成するための、外型枠31の内側の凸条33は小さくなる。脱型される状態では、コーナー13の外側には、境界部分13bである、ごく浅い溝18aが形成され、コーナー13の内側は、凹んだ面14により大きく切りかかれている状態となる。したがって、脱型するときは、図9(b)に示すように、壁体11および12は、簡単に外型枠31から外れ、境界部分13bの浅い溝18aに沿って亀裂が入り、コーナー13の外側が割れ、稜線13rが形成される。そして、鉄筋20は、コーナー13の外側が伸びるように曲がるので、鉄筋20の直径前後の隙間15が、稜線13rに沿って、壁体11および12の間に形成される。
【0053】
第1の壁体11および第2の壁体12を仕切る板となる凸条の幅は約15mmであり、この程度の隙間があると、鉄筋20が境界部分13bで曲がりやすくなる。すなわち、鉄筋20は曲げるとアール形状となり、そのような変化する部分がコンクリートで埋まっていると曲がりにくいのに対し、凸条33により溝18aのような逃げ部が形成されていると、脱型するときに鉄筋20が曲がりやすく、壁11および12が折れ曲がり、境界部分13bが割れやすくなる。
【0054】
図10(a)および(b)に示すように、接続用の鉄筋20を、壁厚のほぼ中央に配置することも可能である。この場合、境界部分13bの厚みを同程度にしようとすると、外型枠31の凸条33は高くなり、コンクリートとの付着面積が増えるので脱型するときに離型し難くなる可能性がある。一方、凸条33を低くすると、境界部分13bが厚くなるので、割れ難く、また、割れたときにその形状が歪んだり、幅広く割れてしまう可能性があるので、稜線13rの形状が不安定になり、また、それに沿って予定より大きな隙間が形成されてしまう可能性がある。したがって、鉄筋20をコーナー13の外側に片寄った位置、例えば、外側から壁厚の1/3あるいはそれ以下の位置に埋設することが望ましい。ワイヤーメッシュを接続部材として採用する場合も同様である。
【0055】
さらに、このコーナーブロック10において、鉄筋20は、第1の壁体11と第2の壁体12とが相互あるいは相対的に旋回するときの中心となる。したがって、鉄筋20をコーナー13の外側に片寄った位置に設定することにより、図9(b)に示すように、第1の壁体11および第2の壁体12は、鉄筋20が埋設されたコーナー13の外側を中心に旋回する。一方、鉄筋20が壁厚の中央付近にあると、図10(b)に示すように、第1の壁体11および第2の壁体12は、図9(b)の場合よりコーナー13の内側を中心に旋回する。このため、コーナー13の角度が変わると、壁体11および12の外面11oおよび12oのコーナーから離れた縁の位置はコーナー13から離れる(延びる)ようになる。擁壁1の寸法は、擁壁1の外面を基準に設定されるので、外面に近い位置を中心に壁体を旋回する構造を採用することにより、擁壁の設計、製造、施工における手間を省くことができる。
【0056】
例えば、L型擁壁を施工するためのコンクリートブロックは、一般的に長さが2メートルを単位として標準化されているが、現場の測量によって、所望の延長の擁壁を施工するために、2メートル以下の端数の寸法を埋めるためのコンクリートブロックを製造する。擁壁1のコーナー部分を施工するコーナーブロック10の長さがコーナー部分の角度によって変わるようであると、その長さも見込んだ設計を行い、現場の測量結果に加えて、コーナーブロックの長さ変動も見込んだ特注の製造を行なう必要があり面倒である。この実施例では、壁体11および12の外面11oおよび12oから3cm程度内側に入ったところに鉄筋20を埋設している。この構成であると、壁体11および12の角度を変えたときに、それらの外面11oおよび12oのコーナーと反対側の縁の位置の変動は4cm程度あるいはそれ以下に収まり、長さ調整用の特注の直線部分のコンクリートブロックは、この4cm程度の延びを考慮したものであれば良い。この程度であれば、隙間が開いたとしてもモルタルなどを用いて現場で目地仕上げすることで対応できる。
【0057】
さらに、鉄筋20をコーナー13の外側に片寄った位置に設定することにより、図9(b)に示すように、コーナー13の稜線13rの外側の目地コンクリート21で埋める部分22の広がりを小さくできるというメリットがある。鉄筋20が壁厚の中央付近にあると、図10(b)に示すように、コーナー13の稜線13rの外側が大きく開くので、目地コンクリート(目地モルタル)21で埋める部分22が広くなる。そのため、目地モルタル21を押し付けても垂れ落ちてくる可能性が高くなる。また、逆に、コーナーの稜線13rの内側の部分23が狭くなり、隙間15を介してコーナーの稜線13rの内側23と外側22とが一体となるように目地コンクリート21を施工しても、内側23の部分で外側22の部分を安定して保持することが難しくなる。また、コーナーの稜線13rの外側の部分22は、外に広がるテーパー状であるので、壁に衝撃が加わると目地コンクリート21が外れやすい。鉄筋20を、壁厚のコーナー13の外側に片寄った位置に設定することにより、これらの問題が発生する可能性を抑制できる。
【0058】
コーナー13の内側の部分23は、土に埋もれる部分なので、目地コンクリートを壁よりも厚く施工することは可能であり、コーナー13の外側のように見栄えが求められることはほとんどなく、施工は容易である。例えば、下側を目地仕上げしていったん土砂で埋めて壁を安定させ、さらに、上側を目地仕上げして固まったら更に埋め戻すといった施工方法が可能である。あるいは、目地部分に板を押し当てて土砂を埋め、その後に目地23の上から比較的柔らかいモルタルを落とすこともできる。コーナー13の裏側は見えなくなるので、外側の表面に型枠を当てるよりも簡単な施工で良く、しかも土砂を埋めることにより、型枠を固定する面倒な手間を省くことができる。しかも、コーナー13の内側の目地材は土砂で押されているので剥離して落ちることはない。
【0059】
接続部材として帯状のゴムあるいは金属板を用いる場合でも、接続部材を外側に片寄った位置にセットすることにより、目地コンクリートが外れる問題をある程度解決できる。特に、脱型するときに割れてのこぎり状の断面18がコーナーの稜線13rの外側に表れるようにすることにより、目地コンクリートが外れて落ちるようなトラブルをある程度防止できる。したがって、接続部材は、極力、コーナー13の表側、すなわち、壁の外面11oおよび12oに近い位置に埋設することが好ましいが、鉄筋20に対するコンクリートの被りを考慮すれば、表面11oおよび12oから少なくとも2cm程度の被りを確保できる位置に埋設することが好ましい。
【0060】
図11に、本発明の異なる実施形態のコーナーブロック40を用いて擁壁1を施工する様子を示している。このコーナーブロック40は、コーナー13の左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体11および第2の壁体12と、これらの壁体11および12を接続するためにこれらの壁体11および12の隣接する側に埋設された鉄筋20とを備えており、コーナーの稜線13rに沿って適当な隙間15が形成されている点では上記のコーナーブロック10と共通である。それぞれの壁体11および12は、基礎部となる底板41および42を備えており、その底板41および42の内側に基礎用の複数の鉄筋25が突き出ている。したがって、コーナーブロック40の断面はL字型になっている。底板41および42は、上方から見た形状がコーナー13を頂点とする三角形であり、壁体11および12を折り曲げたときに底板同士が干渉しないようになっている。
【0061】
このコーナーブロック40は、底板41および42を予め備えているので、擁壁のコーナーを施工する際に、基礎を形成するために現場で打ち込むコンクリート量を少なくできる。その一方で、底板41および42から基礎用の鉄筋25が突き出ているので、それらを交差させて基礎コンクリートを打ち込むことにより、壁体11および12を固定できる。また、図11(b)に示すように、鈍角のコーナーを構成したときに基礎用の鉄筋25を用いて基礎部分を拡張できるので、底板の面積の不足を補うことも容易である。
【0062】
しかしながら、図11(c)のように、鋭角なコーナーを形成するときに底板41および42の間のスペースが殆どなくなってしまうために、基礎用の鉄筋25を処理する空間がなくなる。したがって、施工する際に、基礎用の鉄筋25を切断するような作業が発生する可能性がある。さらに、底板41および42の間のスペースが殆どなくなってしまうと、その領域に現場で施工されるコンクリートは細長い三角形となってしまい、曲げ荷重に弱いので、底板あるいは基礎としては安定計算上の問題がある。さらに、底板41および42をプレハブするために、上記のコーナーブロック10のように、平面打ちにより製造することが難しい。したがって、本発明の実施形態としては、コーナーブロック10のように底板を設けず、ほぼ直壁の下側から内側に基礎用の鉄筋25を伸ばすことが望ましい。
【0063】
なお、上記のコーナーブロックは、現場にて、角度調整させることを主たる目的としているが、現場の測量が間違いなく打ち合わせできている場合などは、現場でなく二次製品として工場で底板を施工し、左右のブロックを一体化して現場に搬入することも可能である。
【0064】
また、コーナーブロックの壁体11および12の形状は上記に限定されない。例えば、図12に示すように、壁体11および12の上面16に沿った内面11iおよび12iを欠いて段差51を形成し、上面16の幅を薄くすることが可能である。このような段差51は、コーナーブロック10を平面打ちするときに、適当な厚みの板材を補助型枠としてセットすることにより形成できる。そして、擁壁1の直線部分を施工するL型ブロックの壁厚と、コーナーブロック10の壁厚が異なるときに、地面に見える擁壁1の上面の厚みを簡単に揃えることが可能となる。図13(a)は、このコーナーブロック10を上から見た平面図であり、底面から見た場合も同一に表れる。図13(b)は、コーナーブロック10の断面図である。図13(c)は、コーナーブロック10の正面図、図13(d)は背面図、図13(e)は右側面図であり、左側面図は対称に表れる。
【0065】
図14に、本発明の異なる実施形態のコーナーブロック60を示している。このコーナーブロック60は、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体11、第2の壁体12および第3の壁体61を備えている。さらに、コーナーブロック60は、これらの壁体11、12および61を接続するために、それぞれの壁体の隣接する側に埋設された鉄筋20を備えている。そして、それぞれの壁体11、12および61により形成されるコーナーの稜線13rに沿って適当な隙間15が形成されている。また、それぞれの壁体11、12および61からは、基礎を施工するための鉄筋25が突き出ている。
【0066】
このコーナーブロック60は、上記の2枚構成のコーナーブロック10を3枚構成にしたものであり、図15に示すように、2枚構成のコーナーブロック10とほぼ同様の製造方法により製造することができる。また、3枚構成に限らず、4枚以上の壁体を備えたコーナーブロックであっても製造し、提供することができる。すなわち、脱型するときに、それぞれの壁体の内面11i、12iおよび61iを吊り上げることにより、それぞれの壁体11、12および61の境界部分13bを割って、それぞれの壁体11、12および61の成すコーナーの稜線となる部分を製造できる。
【0067】
図16から図18に、コーナーブロック60によりコーナーを構成する幾つかの例を示している。2枚構成のコーナーブロック10と同様に、現場の状況に合わせて種々の角度のコーナーを施工することができる。さらに、3枚構成のコーナーブロック60により擁壁のコーナーを構成することにより、面取りされた形状のコーナーを簡単に施工できる。このような面取りされたコーナーを備えた擁壁1により区切られた道路は、見通しが良いなど車両の通行に適している。複数のコーナーブロック60を用いることにより、道路の曲率半径の大きなカーブに沿って、湾曲した擁壁を施工することも可能となる。
【0068】
図19に、本発明のさらに異なる実施形態のコーナーブロック65を示している。このコーナーブロック65も、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体11、第2の壁体12および第3の壁体61を備えている。さらに、コーナーブロック65は、これらの壁体11、12および61を接続するために埋設された鉄筋20を備えている。また、それぞれの壁体11、12および61からは、基礎を施工するための鉄筋25が突き出ている。
【0069】
このコーナーブロック65においては、3つの壁体11、12および61の真ん中となる第2の壁体12の断面形状を、両側の第1の壁体11および第3の壁体61に対して幅を狭くし、厚みを大きくしている。さらに、第2の壁体12の外側の面12oを凸に湾曲させている。第2の壁体12は、擁壁のコーナーポストとして使用することが可能であり、コーナーの稜線部分が曲面に面取りされた形状の擁壁を施工できる。
【0070】
このコーナーブロック65も、図20に示すように、2枚構成のコーナーブロック10とほぼ同様の製造方法により製造することができる。また、図21に、コーナーブロック65によりコーナーを構成する幾つかの例を示すように、2枚構成のコーナーブロック10と同様に、現場の状況に合わせて種々の角度のコーナーを施工することができる。
【0071】
図22に、本発明のさらに異なる実施形態のコーナーブロック70を示している。このコーナーブロック70は、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体11および第2の壁体12を備えている。さらに、コーナーブロック70は、これらの壁体11および12を接続するために埋設された鉄筋20を備えている。また、それぞれの壁体11および12からは、基礎を施工するための鉄筋25が突き出ている。さらに、コーナーブロック70は、第1の壁体11および第2の壁体12の間(隙間)15を挟み、第1の壁体11および第2の壁体12の間15に沿って並び、第1の壁体11および第2の壁体12の内面11iおよび12iから、これらの壁体11および12が成すコーナーの内側に向かって突き出した複数対の鉄筋75を備えている。これら複数対の鉄筋75は、第1の壁体11および第2の壁体12がコーナーを形成するように配置されると、第1の壁体11および第2の壁体12の間15に沿って上下に並び、それぞれの鉄筋75は、対を成す鉄筋75と少なくとも一部が重なる長さを備えている。
【0072】
図23に、コーナーブロック70の構成を断面により示している。コーナーブロック70は、これらの壁体11および12を接続するために、それぞれの壁体の隣接する側に埋設された鉄筋20を備えている。そして、それぞれの壁体11および12により形成されるコーナーの稜線13rに沿って適当な隙間15が形成されている。また、隙間15を挟んで、それぞれの壁体の隣接する側の斜面14の近傍には、L字状に曲げられた鉄筋75が埋設されており、それらの鉄筋75の一部が内面11iおよび12iから突き出ている。
【0073】
図24から図28に、このコーナーブロック70により擁壁1を施工する様子を示している。図24は、コーナー部分を上方から見た状態を示しており、基礎コンクリートの上に、コーナーブロック70の壁11および12を、擁壁1の曲がり角度に合わせて設置する。この段階では、コーナーブロック70は、基礎部を備えていないが、壁11に対し壁12がコーナー13を成すようにすることにより安定して自立する。そして、バールなどにより、壁11および12の成すコーナー13の角度を調整し、それぞれが擁壁1の直線部分を構成するブロック5の壁と一直線になるようにする。壁体11および12の下部からコーナー13の内側に向かって突き出た複数の鉄筋25は、相互に交差した状態になる。さらに、コーナー13の内側に、コーナー13が折れ曲がる付近で、稜線13rに沿って上下に並んで突き出た複数対の鉄筋75も、相互に交差した状態になる。この状態で、交差した鉄筋75を結束したり、溶接することにより壁体11および12を鉄筋75により連結することができる。すなわち、壁体11および12が、接続部材(連結部材)である鉄筋20に加え、鉄筋75によっても実質的に連結され、強度が向上する。
【0074】
壁体11および12が大型になると、例えば、壁体11および12の高さが高いとき(基礎が深いとき)、壁が厚いときは、壁体11および12を連結する部分にも高い強度が要求される。例えば、予め埋設されている鉄筋20のみにより、壁体11および12により構成されるコーナー13の強度を得ようとする場合は、鉄筋20を太くしたり、鉄筋20の数を多くする必要がある。上述した実施形態のコーナーブロックにおいて、鉄筋20を太くしたり、数を多くすることは可能であり、対応できることである。しかしながら、壁体11および12の連結部分の強度が高くなるので、壁体11および12の角度を変えるために大きな力が必要になる。したがって、壁11および12により成すコーナー13の角度を微調整することが難しくなる。一方、コーナー13の角度を微調整し易いように鉄筋20の強度を下げたり、数を少なくすると、コーナーブロックにより構成されるコーナー部分の強度を確保することが難しい。
【0075】
これに対し、この実施形態のコーナーブロック70においては、接続部材である鉄筋20に加えて、コーナー13を構成したときに連結できる鉄筋であって、角度を調整するときには曲げなくても良い鉄筋75を設けている。基礎を構成するように壁11および12の下側からコーナー13の内側に突き出た鉄筋25も、壁11および12の連結強度を高める機能を備えている。鉄筋75は、壁体11および12のコーナーの稜線13rに沿って上下方向に設けられているので、これらの鉄筋75を接続することにより、コーナー13の基礎部分に限らず、コーナー13の全体の強度を向上できる。したがって、接続部材である鉄筋20を細くしたり、数を減らしたりすることが可能となる。このため、施工現場において、壁11および12の成すコーナー13の角度を微調整することが容易になる。
【0076】
本例のコーナーブロック70では、5組の鉄筋75が、壁体11および12から突き出ている。これらの鉄筋75は、対峙あるいは対向する鉄筋同士を重ねて生コンクリートで覆うことによっても一体あるいは一本の鉄筋としての強度を得ることができる。例えば、土木学会などにおいては、鉄筋径の20倍の長さで重なった、あるいは交差させた状態でコンクリートに埋設されている場合は、それらの鉄筋は強度的に一体であると認められている。
【0077】
このため、図25に示すように、壁体11および12の隙間15に沿って上下に並んだ5対の鉄筋75を曲げて重ね、さらに、図26に示すように、上下に並んで重ねられた5対の鉄筋75の内側に上下に延びるように型枠79をセットし、図27に示すように、コンクリート21を注入する(打ち込む)ことが望ましい。これにより、図28に示すように、コーナー13の稜線13rの内側に沿って、壁体11および12を接続する、断面が略三角形で上下に延びた補強部分78を現場打ちのコンクリート21により施工できる。このコンクリート21による補強部分78は、上下に並んだ鉄筋75を巻き込んで一体にしているだけではなく、第1の壁体11および第2の壁体12の間の隙間15を介して、コーナー13の稜線13rの外側および内側に繋がっている。したがって、コンクリート21による補強部分78は、鉄筋75を一体化して強度を確保するとともに、鉄筋75により、コーナーの稜線13rに沿って壁体11および12に密着している。このため、稜線13rの目地部分も含めて、補強部分78が、コーナーブロック70からすべり落ちたり、剥がれたりすることを防止できる。複数の鉄筋75は、2枚構成のコーナーブロックに限らず、図14または図19に示した3枚構成のコーナーブロック、さらには4枚以上の構成のコーナーブロックにも適用できる。
【0078】
これらの実施形態に示すように、本発明に含まれるコーナーブロックは、壁体部分の内側が土に埋まるタイプの擁壁を施工するのに適している。防火壁などのように、土留めとなる部分に加えて壁体の一部が地上に立ち上がるようなタイプの擁壁を施工するためのコーナーブロックも本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】擁壁の概要を示す図であり、(a)は擁壁が施工された状態を断面図で示し、(b)は90度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示し、(c)は110度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示し、(d)は70度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示している。
【図2】本発明の一実施形態のコーナーブロックを後方(背面)から見た斜視図である。
【図3】コーナーブロックを前方(正面)から見た斜視図である。
【図4】コーナーブロックの外観を示す図であり、(a)は平面図(底面図と同一)、(b)は断面図、(c)は正面図、(d)は背面図、(e)は右側面図(左側面図は対称)である。
【図5】コーナーブロックを用いて擁壁を施工する様子を示す図であり、(a)は90度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示し、(b)は110度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示し、(c)は70度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示している。
【図6】コーナーブロックを擁壁のコーナーに設置した状態を示す図であり、(a)は上方から見た様子を示し、(b)は側方から見た様子を示す。
【図7】コーナーブロックに現場コンクリートを打ち込んだ様子を示す図であり、(a)は上方から見た様子を示し、(b)は側方から見た様子を示す。
【図8】コーナーブロックを製造する過程を示す図であり、(a)は型枠の断面を示し、(b)は型枠を組み立てた状態を断面で示し、(c)はコーナーブロックが成形された状態を断面で示し、(d)は脱型する様子を示している。
【図9】脱型する様子を拡大して示す図であり、(a)は壁体の境界部分が折り曲げられる前、(b)は壁体の境界部分が折り曲げられた後を示している。
【図10】異なる実施形態のコーナーブロックを脱型する様子を拡大して示す図であり、(a)は壁体の境界部分が折り曲げられる前、(b)は壁体の境界部分が折り曲げられた後を示している。
【図11】さらに異なるコーナーブロックを用いて擁壁を施工する状態を示す図であり、(a)は90度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示し、(b)は110度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示し、(c)は70度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示している。
【図12】さらに異なるコーナーブロックを背面から見た斜視図である。
【図13】図12に示すコーナーブロックの外観を示す図であり、(a)は平面図(底面図と同一)、(b)は断面図、(c)は正面図、(d)は背面図、(e)は右側面図(左側面図は対称)である。
【図14】さらに異なる、3枚構成のコーナーブロックを背面から見た斜視図であり、壁体を直線状にセットした状態を示す図である。
【図15】図14に示すコーナーブロックを型枠により製造する様子を示す図である。
【図16】図14に示すコーナーブロックの壁体により120度のコーナーを構成した状態を示す図であり、(a)は断面図であり、(b)はその斜視図である。
【図17】図14に示すコーナーブロックの壁体により90度のコーナーを構成した状態を示す図であり、(a)は断面図であり、(b)はその斜視図である。
【図18】図14に示すコーナーブロックの壁体により60度のコーナーを構成した状態を示す図であり、(a)は断面図であり、(b)はその斜視図である。
【図19】さらに異なる、3枚構成のコーナーブロックを正面から見た斜視図であり、(a)は120度のコーナーを構成した状態、(b)は70度のコーナーを構成した状態を示す図である。
【図20】図19に示すコーナーブロックを型枠により製造する様子を示す図である。
【図21】図19に示すコーナーブロックの壁体によりコーナーを構成した状態を示す図であり、(a)は3枚の壁体により120度のコーナーを構成した状態を示し、(b)は3枚の壁体により90度のコーナーを構成した状態を示し、(c)は3枚の壁体により70度のコーナーを構成した状態を示す。
【図22】さらに異なるコーナーブロックの概要を、コーナーブロックが開いた状態で示す図である。
【図23】図22に示すコーナーブロックの横方向の断面図である。
【図24】図22に示すコーナーブロックによりコーナーを施工する様子を示す図であり、コーナーブロックをコーナーに沿って並べた状態を示す。
【図25】図24に続き、コーナーブロックの内側に突き出た鉄筋を曲げて重ねた状態を示す。
【図26】図25に続き、曲げた鉄筋の内側に型枠をセットした状態を示す。
【図27】図26に続き、型枠の内側にコンクリートを注入した状態を示す。
【図28】上記の施工方法により、コーナーに沿って配置されたコーナーブロックの壁体の内側に補強部分を形成した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1 擁壁、 5 L字型のブロック
10、40、60、65、70 コーナーブロック
11、12、61 壁体
13 コーナー、 13b 壁体の境界部分
13r コーナーの稜線、 15 隙間、 18 割れた面
20 接続用の鉄筋、 25 基礎用の鉄筋
【技術分野】
【0001】
本発明は、擁壁を施工するのに好適なコンクリート製品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
宅地造成などにおいて土留めを行う必要がある箇所には、断面がL字状のコンクリート製品(コンクリートブロック)を用いて擁壁が施工される。擁壁は直線的なものに限らず、コーナー部を設けて擁壁の角度を変えることが必要となる場合が多い。コーナー部分の角度は、道路の交差部分に沿った擁壁であれば90度前後であることが最も多い。鋭角な交差点に沿った擁壁であれば、コーナー部分の角度は70度程度であることが必要となる。鈍角な交差点あるいは緩いカーブに沿った擁壁であると、角度が120度程度の緩やかな角度のコーナー部分が必要となる。また、直交する交差点に沿った擁壁であっても、現場によって角度は微妙に異なり、さらに、擁壁の直線部分の施工状況によっては、計画では90度であったとしても現実には90度以外のコーナー部分を施工することが必要となるケースは多い。
【0003】
特許文献1には、使用時に型枠を組み立てて所望のコーナー角に対応された成形型枠を構成し、L型擁壁コーナーブロックを成形することが記載されている。しかしながら、この方法は、殆どのケースでは、先にコーナーブロックを施工した後にプレハブのL型擁壁ブロックを接合するので、現場での測量ミスによるトラブルが発生しやすい。さらに、現場施工用の型枠が複雑となり、必要な角度に設定するために非常に手間がかかり、施工後の型枠を取り除くのも大変に手間がかかる。
【特許文献1】特開平9−239716号公報
【特許文献2】実開平5−96142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2には、L字状の2個のブロックピースを垂直壁部に埋設したゴムあるいは金属の可撓帯で接続一体化し、折り曲げ自在に形成した擁壁ブロックが開示されている。この擁壁ブロックは、現場の曲がり角度に合わせることができ、直線部分との接続も容易である。しかしながら、ゴムあるいは金属の可撓帯でコーナーが構成されるので、コンクリート製の他の壁部分と同程度の強度および信頼性が確保できない、あるいはコンクリートと同程度の信頼感が得られないなどの理由により実際に用いられているケースは殆どない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、擁壁のコーナー部分を施工するためのコンクリート製品であって、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、第1の壁体および第2の壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材であって、第1の壁体および第2の壁体の間に隙間が形成されるように埋設された接続部材とを有するコンクリート製品である。このコンクリート製品は、ゴムあるいは金属の帯状の部材によりコーナーを形成する代わりに、第1の壁体および第2の壁体の成すコーナーの角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材により、第1の壁体および第2の壁体の間に隙間が形成されるようにしている。したがって、第1の壁体および第2の壁体により構成されるコーナーの角度を現場で変えることができ、その後、第1の壁体および第2の壁体の間の隙間を介して、コーナーの外側および内側が一体となるようにコンクリートを打ち込み、コーナー部分をコンクリートによりシールできる。このため、コンクリート壁のコーナー部分の角度を現場に合わせて変えられると共に、そのコーナーをコンクリートでシールあるいは目地止めし、コンクリート製の他の壁部分と同程度の強度および信頼性が確保できる。したがって、第1の壁体および第2の壁体の間の隙間は、モルタルが流通する程度の隙間であることが望ましい。
【0006】
本発明は、他の一態様として、擁壁の施工方法を含み、この擁壁の施工方法は、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、第1および第2の壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材であって、第1の壁体および第2の壁体の間に隙間が形成されるように埋設された接続部材とを有するコンクリート製品を、擁壁の曲がり角度に合わせて設置する工程と、第1の壁体および第2の壁体の間の隙間を介して、第1および第2の壁体の成すコーナーの外側および内側が一体となるようにコンクリートを打ち込む工程とを有する。
【0007】
第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、第1および第2の壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材であって、第1の壁体および第2の壁体の間に隙間が形成されるように埋設される接続部材の好適なものは、ワイヤーメッシュまたは、これらの壁体の隣接する側の上下方向に断続的に埋設された鉄筋である。したがって、本発明の他の一態様は、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、これらの壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材とを有し、接続部材は、ワイヤーメッシュまたは断続的に埋設された複数の鉄筋である、コンクリート製品である。
【0008】
さらに、本発明においては、第1の壁体および第2の壁体を一体で成形し、第1および第2の壁体の境界部分が割れるようにして製造されたコンクリート製品を提供する。すなわち、本発明の他の一態様は、擁壁のコーナー部分を施工するためのコンクリート製品であって、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、これらの壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材とを有し、第1の壁体および第2の壁体の厚みは隣接する側が薄くなり、第1および第2の壁体の境界部分が割れて接続部材が表れているコンクリート製品である。第1の壁体および第2の壁体の間に隙間ができることが許容されるので、壁と壁の境界部分を割って分離するという製造方法を採用できる。工場などにおいて型枠から脱型するときに、境界部分が割れるようにすることにより、脱型後の保管も容易になる。さらに、第1および第2の壁体のコーナー側は製造するときなどにおいて割った面となるために、現場において打設されるコンクリートの付着力が高い。したがって、コーナー部分の耐久性、特に、コーナーの隅の部分の目地を施工するために打設されるコンクリートの耐久性を向上できる。
【0009】
したがって、本発明の他の一態様として擁壁の施工方法を含み、この擁壁の施工方法は、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、これらの壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材とを有し、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側が薄くなり、脱型するときに、これらの壁体の境界部分が割れて接続部材が表れているコンクリート製品を、擁壁の曲がり角度に合わせて設置する工程と、第1の壁体および第2の壁体の成すコーナーの外側および内側にコンクリートを打ち込む工程とを有する。
【0010】
また、本発明の他の一態様は、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、これらの壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材とを有するコンクリート製品の製造方法であって、型枠により第1の壁体および第2の壁体を一体で成形する工程と、これらの壁体の境界部分が割れて接続部材が表れるように脱型する工程とを有する製造方法である。
【0011】
成形する工程では、第1の壁体および第2の壁体は、隣接する側が薄くなるように成形することが望ましい。脱型する工程において、コーナーの部分を割れ易くすると共に、コーナーの左右に位置する第1および第2の壁体の干渉を防止できる。
【0012】
さらに、成形する工程では、第1の壁体および第2の壁体の少なくとも外側の面を規定し、第1の壁体および第2の壁体を一体のほぼ平板として成形する外型枠と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側が凹むように成形する補助型枠とを用い、脱型する工程では、第1の壁体および第2の壁体の内側の面を吊り下げて脱型することが望ましい。さらに、外型枠は、これらの壁体の境界部分の外側を凹ませる突条を備えていることが望ましい。外側の面とは、第1および第2の壁体でコーナーを形成したときにコーナーの外側に表れる面を指し、内側の面とは、コーナーの内側、すなわち、擁壁であれば土圧を受ける面を示す。
【0013】
このため、本発明は、他の一態様として型枠を含み、この型枠は、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、これらの壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材とを有するコンクリート製品を製造するための型枠であって、第1の壁体および第2の壁体の少なくとも外側の面を規定し、第1の壁体および第2の壁体を一体のほぼ平板として成形する外型枠と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側が凹むように成形する補助型枠とを有する。外型枠は、これらの壁体の境界部分の外側を凹ませる突条を備えていることが望ましい。
【0014】
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材を有するコンクリート製品においては、接続部材をほぼ中心として第1および第2の壁体が相互に旋回する。この旋回の中心は、第1および第2の壁体が成すコーナーの外側に近いことが望ましい。これらの第1および第2の壁体は、擁壁のコーナー部分を形成し、擁壁の寸法は、ほとんどのケースで擁壁の外側に表れる面を基準として規定される。接続部材をコーナーの外側に近づけることにより、第1および第2の壁体の成す角度による、コーナー外側の開きの大きさの変動は小さくなり、第1および第2の壁体のなす角度に関わらず、第1および第2の壁体の外面の幅方向の長さは一定になる。このため、角度に関わらず、第1および第2の壁体の外面の幅方向の長さが、このコンクリート製品により施工される擁壁のコーナー部分の長さとほぼ一致するので、擁壁の施工がさらに容易になる。
【0015】
したがって、本発明の他の一態様のコンクリート製品は、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、これらの壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材であって、第1の壁体および第2の壁体の成すコーナーの外側に片寄った位置に埋設された接続部材とを有する。このコンクリート製品においては、第1および第2の壁体の旋回の中心となる接続部材がコーナーの外側に近づくので、コーナーの角度による壁体の幅方向の長さの変更は小さい。さらに、これら第1および第2の壁体により構成されるコーナー外側の目地幅が小さくなるので、モルタルなどの現地コンクリートの剥がれ落ちも防止できる。すなわち、これらの壁体の成すコーナーの外側に打設されるコンクリートは、擁壁の外側を構成し、これが剥がれ落ちることは、擁壁の見栄えが悪くなると共に、擁壁の強度が低下していることを想像させるので好ましくない。第1の壁体および第2の壁体の成すコーナーの外側に片寄った位置に埋設することにより、接続部材から外側に付着するコンクリートの量を低減することができる。このため、コーナーの外側に打設されるコンクリートの剥がれ落ちを防止できる。
【0016】
さらに、本発明に含まれるコンクリート製品の第1および第2の壁体は、フーチングと称される底から水平方向に突き出た基礎部も含めた断面がL字型のものであっても良いが、左右に位置する第1の壁体および第2の壁体が接続部材により接続された状態なので、水平方向に突き出た基礎部がなくても安定して自立する。したがって、水平方向に突き出た基礎部分は非常に小さくても良い。
【0017】
さらには、水平方向に突き出た基礎部分がなく、第1の壁体および第2の壁体が平板状であることが望ましい。特に、第1の壁体および第2の壁体が平板状であるコンクリート製品は、第1の壁体および第2の壁体を一体のほぼ平板状に型枠で成形し、脱型する際にこれらの壁体の境界部分を分断する(割る)製造方法により製造するのに適している。
【0018】
また、平板状の第1の壁体および第2の壁体は、それらの下方に、幅方向に並んで、これらの壁体の成すコーナーの内側に向かって突き出た複数の鉄筋を備えていることが望ましい。第1の壁体および第2の壁体からコーナーの内側に向かって突き出た複数の鉄筋の少なくとも一部を相互に交差させた後、それら複数の鉄筋と一体となるようにコンクリートを打ち込むことにより、現場で第1および第2の壁体を支持するための基礎部分を施工できる。水平方向に突き出た基礎部分の内側に複数の鉄筋を突き出しておくことは可能であるが、コーナーが鋭角になると、複数の鉄筋を処理する空間が基礎部分同士の間に確保できなくなる可能性がある。一方、そのような事態に対応するために鉄筋を短くすると、これらの壁体の成すコーナーが鈍角のときに複数の鉄筋を交差させることができず、充分な強度を備えた基礎部分を施工できない可能性がある。これに対し、平板状の第1および第2の壁体であれば、コーナーが鋭角であっても鉄筋を処理する空間を確保でき、コーナーが鈍角のときでも少なくとも一部が交差するように鉄筋を配置できる。
【0019】
本発明は他の一態様として擁壁の施工方法を含み、この擁壁の施工方法は、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に埋設され、これらの壁体の成す角度を変えられるように第1の壁体および第2の壁体を接続する接続部材とを有し、第1の壁体および第2の壁体は、それらの下方に、幅方向に並んで、これらの壁体の成すコーナーの内側に向かって突き出た複数の鉄筋を備えているコンクリート製品を、擁壁の曲がり角度に合わせて設置する工程と、第1の壁体および第2の壁体から突き出た複数の鉄筋の少なくとも一部を交差させ、それら複数の鉄筋と一体となるようにコンクリートを打ち込む工程とを有する。
【0020】
本発明に含まれるコンクリート製品は、2つの壁体を接続部材により接続されたものに限定されず、3つ以上の壁体を接続したものであっても良い。すなわち、本発明は、第2の壁体に対して左右に隣接して配置され、第1の壁体と同様に第2の壁体に接続された第3の壁体を有するコンクリート製品を含む。これらの壁体は、同じ形態である必要はなく、例えば、3つの壁体を有するコンクリート製品の真ん中の第2の壁体は、両側の第1の壁体および第3の壁体に対して幅が狭く厚いものにすることができる。第2の壁体を、擁壁のコーナーポストとして使用し、擁壁のコーナーを面取りした状態で施工できる。さらに、第2の壁体の外側の面を凸に湾曲したものにすることにより、擁壁のコーナーを曲面に面取りした状態で施工できる。
【0021】
また、本発明に含まれるコンクリート製品は、第1の壁体および第2の壁体の隣接する側に、第1の壁体および第2の壁体の間を挟んで、第1の壁体および第2の壁体の間に沿って並び、第1の壁体および第2の壁体の成すコーナーの内側に向かって突き出し、第1の壁体および第2の壁体がコーナーを形成するように配置されると、少なくとも一部が重なる複数対の鉄筋を備えていることが望ましい。これら複数対の鉄筋は、コンクリート製品の第1の壁体および第2の壁体が立った状態になると、第1の壁体および第2の壁体の間を挟んで、上下に並んでコーナーの内側に突き出す状態になる。第1および第2の壁体が大型になると、コーナー部分の強度を得るために、それらの壁体を接続する接続部材の強度を上げることが要求される場合がある。例えば、接続部材が鉄筋であれば、鉄筋が太くなり、また、数が増える可能性がある。しかしながら、鉄筋が太くなったり、数が増えると、第1の壁体と第2の壁体との角度を調整することが難しくなる。複数対の鉄筋を、第1の壁体および第2の壁体の間に沿って上下に配置し、コーナーを形成するときにそれら複数対の鉄筋が重なるようにしておくと、複数対の鉄筋によりコーナー部分の強度を得ることができる。したがって、接続部材となる鉄筋の径および/または数を低減することが可能となり、第1の壁体と第2の壁体との成す角度を調整しやすいコンクリート製品を提供できる。
【0022】
これら複数対の鉄筋は溶接により接続しても良い。これら複数対の鉄筋を溶接しなくても、ある程度の長さ(例えば、直径の20倍)だけ重なった状態でコンクリートに含めて一体にすることにより、連続した鉄筋として強度が評価される。したがって、上述した擁壁の施工方法において、コンクリート製品を擁壁の曲がり角度に合わせて設置する工程では、さらに、複数対の鉄筋のうち、対を成す鉄筋の少なくとも一部を重ね、コンクリートを打ち込む工程では、複数対の鉄筋を含めてコンクリートを打ち込むことが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1に、擁壁の一般的な構成を示している。図1(a)に断面により示すように、擁壁1は、垂直方向に延びた壁部2と、その壁部2の底から水平方向に延びた基礎部3とがL型に組み合わされた断面がL型のコンクリート製ブロック5を現場で並べて設置して施工される。L型ブロック5は、基礎コンクリート4の上に配置され、擁壁1の壁部2の外側が側溝6および/または道路7となる。擁壁1の壁部2の内側には土8が盛られ、道路7に対して一段高い宅地9などとして利用され、擁壁1は、宅地9の境界および土留めとして機能する。壁部2と、基礎部3との接合部分は、湾曲していたり、リブが付けられていたりするなどの種々の構成が知られている。
【0024】
一般的なL型ブロック5は直線の擁壁1を構成するためのものである。擁壁1は、宅地9のコーナーあるいは湾曲した境界に沿った部分も備えている。擁壁1を構成するためのコーナー1cの多くは、図1(b)に示すように90度であるが、図1(c)に示すように、110度程度あるいはそれ以上の鈍角のコーナー1cが必要となることもある。また、鈍角のコーナー1cを幾つか組み合わせて湾曲した境界を構成することがある。また、道路が鋭角に交わるところでは、図1(d)に示すように、擁壁1を構成するために70度程度の鋭角なコーナー1cが必要となる場合もある。これらのコーナー1cは、現場で適切な型枠を作って施工することが可能である。一方、擁壁1の直線部分を構成するL型ブロック5は工場においてプレハブされているので、それらを繋ぎ合わせることにより直線部分の壁1は短期間で施工できる。したがって、コーナー1cを構成するブロックもプレハブされていることが望ましい。しかしながら、コーナー1cの角度は90度に限定されるものではない。さらに、設計ではコーナーの角度は90度になっていたとしても、種々の都合あるいは要因により、実際のコーナーの角度は90度から数度異なるケースも多く、90度にプレハブされたブロックを用いて擁壁1を施工すると直線部分を構成するブロック5とスムーズに繋がらない。さらに、擁壁1の直線部分を施工するために要するブロックの数に対して、コーナー部分を構成するために要するブロックの数は大幅に少なく、様々な角度のコーナーに対応したブロックをプレハブすることは経済的とは言えない。
【0025】
図2〜図4に、本発明の一実施形態のコンクリート製品の概略構成を示している。このコンクリート製品は、擁壁1のコーナー部分を構成するコンクリート製のコーナーブロック10である。図2は、コーナーブロック10を後方(内側)から見た外観を示す斜視図である。図3は、コーナーブロック10を前方(外側)から見た外観を示す斜視図である。図4(a)は、コーナーブロック10を上から見た平面図であり、底面から見た場合も同一に表れる。図4(b)は、コーナーブロック10の断面図である。図4(c)は、コーナーブロック10の正面図、図4(d)は背面図、図4(e)は右側面図であり、左側面図は対称に表れる。
【0026】
このコーナーブロック10は、コーナーの頂点あるいは稜線13rの左右に隣接して配置されるコンクリート製で平板状の第1の壁体11および第2の壁体12と、第1の壁体11および第2の壁体12が成すコーナー13の稜線13rの側、すなわち、隣接する側に埋設され、壁体11および12が成すコーナー13の角度を変えられるように第1の壁体11および第2の壁体12を接続する接続部材20を備えている。壁体11および12の内面11iおよび12iのコーナーの稜線13rの側は斜めに凹んだあるいは切欠いた面14となっている。したがって、これらの壁体11および12の上面16および底面17は、コーナーの稜線13rの側がほぼ片台形となっている。
【0027】
このコーナーブロック10の接続部材20は、第1の壁体11および第2の壁体12の間に、これらの壁11および12を接続するように、コーナーの稜線13rの上下に沿って断続的に埋設された鉄筋である。そして、第1の壁体11および第2の壁体12の間に、コーナーの稜線13rの上下方向に延びた、モルタルが通る程度の幅の隙間15が形成されている。隙間15の幅は、5〜25mm程度、さらには、10〜15mm程度が好ましい。この稜線13rに沿った隙間15は、後述するように、コーナーブロック10を脱型するときに、壁11および12の境界部分を割る、あるいは境界部分が割れることにより形成される。したがって、隙間15の両側となる、壁体11および12の隣接する側の面18は成形された面ではなく、コンクリートが割れたことによる適度な凹凸を備えた面となっている。
【0028】
平板状の第1の壁体11および第2の壁体12は、それらの下方の底17から若干上の部分に、壁体11および12のそれぞれの幅方向に並んで内側の面11iおよび12iから突き出た複数の鉄筋25を備えている。したがって、これらの鉄筋25は、壁体11および12が適当な角度のコーナー13を形成するときに、そのコーナー13の内側に向かって突き出る。それぞれの壁体11および12から突き出たこれらの鉄筋25は、少なくとも内側の数本は必ず交差する長さとなっている。
【0029】
また、壁体11および12の稜線13rと反対側の縁には、壁体11および12の内面11iおよび12iのほぼ中央には、このコーナーブロック10を擁壁1の直線部分を構成するコンクリートブロック5と仮止めするための金具、例えばインサート19が埋設されている。仮止めするための金具はインサート19に限らず、ボルトあるいは接続板などによりコンクリートブロック同士が仮止めできるものであれば良い。
【0030】
すなわち、コーナーブロック10は、底板なしの直壁状の2つの壁体11および12が鉄筋20により接続され、L型ブロックの基礎部である底板を設けず、ほぼ直壁状の壁体11および12の下側から内側に鉄筋25を伸ばした構成となっている。このようにすれば、左右の直壁11および12から伸びた主筋25を交差させることが可能となるので、擁壁1の現場でコンクリートを打ち込むことにより左右の壁体11および12の底部が一体となり直壁状の壁体11および12が分断され、接続用の鉄筋20により連結された状態であっても強固なコーナー部が形成される。
【0031】
また、擁壁1を施工する前、すなわち、保管時や搬送時には、底板がなくても接続部材20で連結された壁11および12を内側に、曲げておくことにより転倒の恐れはない。底板のない一枚壁は不安定であり、また、底板があってもそれが短い場合は不安定であるが、このコーナーブロック10は、連結用の鉄筋20により接続された壁11および12を、コーナーの頂点13rを中心に内側に曲げておくことで安定して自立する。さらに、施工後は、接続部材20でつながれている二つの壁11および12はその下部から出た主筋同士が重なり合うことにより、網状となるので、そこに投入されたコンクリートによりきわめて強固に一体化される。
【0032】
このコーナーブロック10は、製造後の保管および運搬時は、壁11および12を、約90度程度のコーナー13を成すようにしておくことが好ましい。その状態が、最も安定して自立すると考えられるからである。一方、これらの壁11および12は、接続用の鉄筋20で接続されているだけなので、現場で壁11および12の成すコーナー13の角度を調整する必要があれば、バールなどで壁11および12の位置、向き、角度などを調整することができる。
【0033】
図5に、コーナーブロック10により擁壁1のコーナー部分1cを施工する様子を示している。図5(a)は、コーナーブロック10の壁11および12を90度程度の角度を成すように現場でセットした状態を示し、図5(b)は、コーナーブロック10の壁11および12を110度程度の角度を成すように現場でセットした状態を示し、図5(c)は、コーナーブロック10の壁11および12を70度程度の角度を成すように現場でセットした状態を示している。このコーナーブロック10は、この程度の角度範囲のコーナーを、1種類のコーナーブロック10をプレハブしておくことにより対応できる。したがって、高さの異なるコーナーブロック10をプレハブすることにより、種々の擁壁を経済的に短期間で施工できる。さらに、現場で詳細な角度設定が可能なので、90度、110度あるいは70度などという設計上の角度ではなく、現場に合わせた、実際の擁壁のコーナー部分1cの角度に壁11および12の角度をセットできる。
【0034】
70度以下のコーナーも構成できるようなコンクリートブロックを提供することは可能である。このコーナーブロック10では、図4(a)などに示すように、内側の壁面11iおよび12iの稜線13rの側を斜めにカットした面14を形成して、壁11および12を内側に曲げたときに壁同士が干渉しないようにしている。したがって、この面14によりカットされる壁内面の角度を大きくすると、これらの壁体11および12がより鋭角に交差するコーナーも構成可能なコンクリートブロックを提供できる。しかしながら、逆に、鈍角のコーナーを構成するときに面14の間が広がるので、現場でコーナーの稜線13rの部分を埋めるためのコンクリート量が多くなる。
【0035】
また、基礎用の鉄筋25の点からは、より鋭角に対応できるようにすると、鋭角なコーナーでは壁11および12の間が狭くなるので、それらの間に収まるように基礎用の鉄筋25を配置する必要があり、逆に鈍角のコーナーを構成するときに鉄筋25の交差が少なくなる結果になる。したがって、本例のコーナーブロック10においては、70度以下のコーナーが必要になるケースは非常に稀なので、ある程度鈍角のコーナーも構成できる汎用性を考慮した設計を採用している。90度以下の鋭角用のコーナーブロックと、90度以上の鈍角用のコーナーブロックというような商品群を分けることによりこのような問題を解決することも可能である。
【0036】
一方、コーナーブロック10により110度以上のコーナーを構成することは可能である。以下で示すように、コーナーブロック10の壁11および12は、180度に開いた状態で成形されるので、壁同士が直線になるまで角度を開くことは可能である。しかしながら、角度を大きくすると、現場で施工する際に安定して自立し難くなるので、自立するための一時的な補強を施すことが好ましい。また、基礎用の鉄筋25の交差量が減るので、基礎用の鉄筋25を交差してコンクリートで一体にすることにより左右の壁11および12を一体化するという効果は低減する。しかしながら、現場コンクリートで基礎を施工した後は、直線を構成するL字型のコンクリートブロックに近い構成になるだけなので、擁壁としての強度を確保することは可能である。
【0037】
図6および図7に、このコーナーブロック10により擁壁1を施工する様子を示している。図6(a)および図7(a)は、コーナー部分を上方から見た状態を示し、図6(b)および図7(b)は、コーナー部分を横方向から見た状態を示す。まず、図6(a)および(b)に示したように、基礎コンクリート4の上に、コーナーブロック10の壁11および12を、擁壁1の曲がり角度に合わせて設置する。この段階では、コーナーブロック10は、基礎部を備えていないが、壁11に対し壁12がコーナー13を成すようにすることにより安定して自立する。そして、バールなどにより、壁11および12の成すコーナー13の角度を調整し、それぞれが擁壁1の直線部分を構成するブロック5の壁と一直線になるようにする。そして、インサート19に連結板19aをボルト19bにより止めて、直線部分を構成するブロック5とコーナーブロック10とを仮止めする。壁体11および12の下部からコーナー13の内側に向かって突き出た複数の鉄筋25は、相互に交差した状態になる。
【0038】
次に、図7(a)および(b)に示すように、まず、壁体11および12の下部からコーナー13の内側に向かって突き出た複数の鉄筋25と一体となるようにコンクリートを打ち込み、コーナー部分の基礎26を施工する。これにより、壁体11および12が一体になり、断面がL字型の擁壁1が構成される。
【0039】
さらに、第1の壁体11および第2の壁体12の間の隙間15を介して、コーナー13の稜線13rの外側および内側に、一体となるコンクリート21を打ち込む。コーナーの稜線13rには、多段で壁体11および12を連結する鉄筋20が埋設されているので、目地材となるコンクリート(モルタル)を鉄筋20に引っ掛けるように打ち込みあるいは注入することができ、現場で施工する目地材がすべり落ちることを防止できる。特に、連結材である鉄筋同士の間には細い隙間15が開いているので、コーナー13の背面、すなわち、内側から現場で生コンクリートを投入することにより、その生コンクリートが充分にコーナー13の表側に回り、コーナー13の内側と外側の稜線13rの目地部分が一体となるようにコンクリートで埋めることができ、直線部分と同様の強度を備えたコーナー13を施工できる。現場打ちコンクリート21で施工される、コーナー13の稜線13rの目地止めの部分は、コーナー13の内側が広いので、コーナー13の内側に生コンクリートを注入するための型枠を組んで、生コンクリートを注入し、隙間15を介してコーナー13の外側に漏れ出したコンクリートによりコーナー13の稜線13rの外側の目地の部分を施工することができる。
【0040】
さらに、コーナー13の稜線13rの外側の面18は、脱型するときに破断させた面になっているので、現場打ちコンクリートとの密着性が高く、その点でも、目地用のコンクリートが剥がれ落ちることを防止できる。すなわち、接続部材の鉄筋20の現場でコンクリートを注入する面18は、プレハブコンクリートが破断されることにより形成されているので、破断面にはノコギリの歯のような凹凸ができる。これにより、さらに目地材の付着力が増す。
【0041】
コーナーの左右を構成する壁を、コーナーの上下に沿って延びた帯状のゴム板あるいはステンレスの鋼板により接続することも可能であるが、帯状の部材には目地用のコンクリートを引っ掛けることができず、また、帯状の部材は目地用のコンクリートを遮断するのでコーナーの前後で一体化することもできない。
【0042】
コーナー13の稜線13rに沿って隙間15を設けるためには、鉄筋20の代わりに、ワイヤーメッシュを接続部材として埋設しても良く、ワイヤーメッシュを介してコーナー13の隙間を埋めることにより、コーナーの稜線13rの前後が一体となるように施工できる。隙間15から目地材となるコンクリート21がコーナーの稜線13rの表と裏とに貫通あるいは流通するので、表と裏のコンクリートは一体化される。さらに、目地材は、稜線13rの隙間15を横切るように配置された多段の鉄筋20あるいはワイヤーメッシュに引っかかる。このため、施工段階では、目地材21を挿入したとき、垂れ落ちにくくなる。さらに、目地材21が硬化した後、剥離し難くなる。
【0043】
図8に、コーナーブロック10を製造する過程を示している。図8に示した製造方法では、型枠30により第1の壁体11および第2の壁体12を一体で成形する工程(図8(c))と、コーナーの稜線13rとなる壁体11および12の境界部分が割れて接続部材である鉄筋20が表れるように脱型する工程(図8(d))とを有する。まず、この製造方法において使用する型枠30は、図8(a)に断面で示すように、第1の壁体11および第2の壁体12の外側の面11oおよび12oを規定し、第1の壁体11および第2の壁体12を一体のほぼ平板として成形する外型枠31と、第1の壁体11および第2の壁体12の内側11iおよび12iを、それらの隣接する側が薄くなるように逆三角形の凹み14を成形する、断面が逆三角形の補助型枠32とを有する。さらに、外型枠31は、これらの壁体11および12の境界部分で、これらの壁体11および12によりコーナー13を構成したときに稜線13rとなる部分を凹ませるように外型枠31の内側に向けて突き出た一筋の凸条(突条)33を備えている。
【0044】
図8(b)に示すように、壁体11および12の境界となる、外型枠31の中央を前後に横切る線に沿って、接続用の複数の鉄筋20を断続的に配置する。これらの接続用の複数の鉄筋20は、凸条33と補助型枠32とで挟みこむようにすることで安定する。図8(c)に示すように、さらに壁体11および12の構造用の鉄筋24と、基礎用の鉄筋25とを配置してから、外型枠31の内部にコンクリート39を注入する。そして、図8(d)に示すように、壁体11および12の内面11iおよび12iの適当な位置に脱型用の吊り具38を埋設し、補助型枠32を外した後に、ロープ37などを用いて壁体11および12を含むコーナーブロック10を外型枠31から脱型させる。このとき、壁体11および12はそれらの間で折り曲げられ、コーナーブロック10は、薄く形成された境界部分13bで分断あるいは破断される。
【0045】
脱型するときにロープ37により、それぞれの壁体11および12を中心方向に引っ張ることにより、壁体11および12に折れ曲がる力が加わり、壁体11および12の自重も作用することにより、境界部分13bには応力が集中して、壁体11および12の境界部分13bは自発的に割れて稜線13rとなる。すなわち、2枚の壁体11および12をそれぞれクレーンで吊り上げるとき、その中心部にはコンクリートの自重により大きな力が加えられる。このときであれば、自然に曲がるか、あるいは真ん中に少しの力を加えるだけで、壁体11および12の境界部分13bの薄いコンクリートは簡単に破断され、接続部材である鉄筋20も曲がる。特に、脱型する時点では、コンクリート39は所定の強度を保持していないので、境界部分13bは破断されやすい。境界部分13bの厚みによっては、単に脱型するときにコーナーブロック10を持ち上げるだけでは破断しないこともある。そのような場合は、境界部分13bを折るような適当な力を加えることにより、簡単に壁体11および12を折り曲げて、これらの壁体11および12を分断し、稜線13rとなる部分を形成できる。壁体11および12を折り曲げて配置できれば、上述したように、壁体11および12の底面17が下になるように壁体11および12を立てて保管することができ、安全である。
【0046】
通常の断面がL型の擁壁用のブロック5は、縦打ちと呼ばれる方法で製造されている。すなわち、L字を逆さにした空間を型枠で構成し、その空間に底板の側からコンクリートを打ち込み、脱型するときは、底板の側から引っ張り出す。コーナーブロック10は、この方法で製造することも可能である。しかしながら、脱型するときに壁体同士を折り曲げることはできない。そこで、壁体を平板とすると共に、平面打ちとすることにより、脱型時に、吊り上げれば、自重で曲がるか、わずかな力を上から加えれば、曲がり、このとき所望の部分が簡単に破断されるようにしている。
【0047】
接続部材として鉄筋20を用いて平面打ちにより製造する方法は、さらに幾つかのメリットを備えている。まず、接続部材の鉄筋20を平に配列できるので、余分な鉄筋が不要であり、配列する作業も極めて容易である。縦打ちの場合は、接続用の鉄筋20が垂直方向に並ぶので、構造用の鉄筋24などに接続用の鉄筋20を結びつけるなどの作業が発生する。
【0048】
接続部材として帯状の部材を用いると、コーナーの外側の面を形成するために接続部材の外側にコンクリートを回し込むことが難しくなる。例えば、帯状の接続部材の前、すなわち、帯状の部材と型枠の内面との隙間が2センチ程度であると、25ミリの砂利を使用したコンクリートは入りにくい。これに対し、帯状の部材の代わりに鉄筋20を連結材とし、断続的に配置すると、鉄筋20のない部分は外型枠に沿った外面を確実に成形できる。また、生コンクリートは鉄筋20の周囲から回りこむので、鉄筋20の前面に入りやすく、コーナーの稜線13rの部分も含めて、コーナーブロック10の外面を綺麗に仕上げることができる。
【0049】
縦打ちでも、接続部材として鉄筋20を採用することにより、外側へ生コンクリートを回しこみやすくする問題は解決する。しかしながら、縦打ちの場合、鉄筋20を縦に断続的に配置するために縦筋が必要になり、生コンクリートの流動性を阻害しやすい。したがって、平面打ちが適している。
【0050】
また、このコーナーブロック10には、錆あるいは土圧に対する安全性を考慮すると、接続用の鉄筋20としては直径が9mm程度あるいはそれ以上が好ましく、これらを直径の15倍程度のピッチで配列したとすると、いったんコンクリートの強度が確保できた状態になると、いくら薄くてもその部分を破断するときにかなりの力が必要となる。したがって、コンクリートの強度があまり出ていないうちに折り曲げて、破断することが好ましい。それには、平面的な型枠により成形して、脱型時にほぼ90度程度に曲げてしまうことが好ましい。
【0051】
脱型時に壁体11および12の境界部分13bを割り、コーナーの稜線13rを形成する製造方法においては、境界部分13bが精度良く割れないと、歩留まりが低下する。さらに、割れたときに、稜線13rとなる部分に所望の隙間15が形成されるようにする必要がある。一方、コーナー13の目地、特に稜線13rの外側の目地を構成する面18が割れた面であることは現場でのコンクリートとの付着力を増すために有用である。コーナー部分の外側の面を精度良く成形するためには、型枠でブロックを製造するときにコンクリートが、コーナーの外側になる部分に回りこむスペースが確保できていることが望ましい。本例では、2つの壁11および12を1つの型枠30で形成し、それらの壁11および12が連絡する部分13bは鉄筋が断続的に埋まっているだけなので、鉄筋の間を通って稜線13rとなる境界部分13bもコンクリートが流通し易い。したがって、精度の高い形状を備えたコーナーブロック10を提供できる。
【0052】
図9(a)に拡大して示すように、二枚の壁体11および12を、ほぼ水平な一つの外型枠31により製造し、それと共に、凸条33と補助型枠32により、コーナーの稜線13rを薄く形成する。さらに、接続部材である鉄筋20を、第1の壁体11および第2の壁体12が成すコーナー13の外側、すなわち、外面11oおよび12oに片寄った位置に埋設している。鉄筋20をコーナー13の外側に片寄った位置、例えば、外側から壁厚の1/3あるいはそれ以下の位置に埋設する。このような構成を採用することにより、境界部分13bを形成するための、外型枠31の内側の凸条33は小さくなる。脱型される状態では、コーナー13の外側には、境界部分13bである、ごく浅い溝18aが形成され、コーナー13の内側は、凹んだ面14により大きく切りかかれている状態となる。したがって、脱型するときは、図9(b)に示すように、壁体11および12は、簡単に外型枠31から外れ、境界部分13bの浅い溝18aに沿って亀裂が入り、コーナー13の外側が割れ、稜線13rが形成される。そして、鉄筋20は、コーナー13の外側が伸びるように曲がるので、鉄筋20の直径前後の隙間15が、稜線13rに沿って、壁体11および12の間に形成される。
【0053】
第1の壁体11および第2の壁体12を仕切る板となる凸条の幅は約15mmであり、この程度の隙間があると、鉄筋20が境界部分13bで曲がりやすくなる。すなわち、鉄筋20は曲げるとアール形状となり、そのような変化する部分がコンクリートで埋まっていると曲がりにくいのに対し、凸条33により溝18aのような逃げ部が形成されていると、脱型するときに鉄筋20が曲がりやすく、壁11および12が折れ曲がり、境界部分13bが割れやすくなる。
【0054】
図10(a)および(b)に示すように、接続用の鉄筋20を、壁厚のほぼ中央に配置することも可能である。この場合、境界部分13bの厚みを同程度にしようとすると、外型枠31の凸条33は高くなり、コンクリートとの付着面積が増えるので脱型するときに離型し難くなる可能性がある。一方、凸条33を低くすると、境界部分13bが厚くなるので、割れ難く、また、割れたときにその形状が歪んだり、幅広く割れてしまう可能性があるので、稜線13rの形状が不安定になり、また、それに沿って予定より大きな隙間が形成されてしまう可能性がある。したがって、鉄筋20をコーナー13の外側に片寄った位置、例えば、外側から壁厚の1/3あるいはそれ以下の位置に埋設することが望ましい。ワイヤーメッシュを接続部材として採用する場合も同様である。
【0055】
さらに、このコーナーブロック10において、鉄筋20は、第1の壁体11と第2の壁体12とが相互あるいは相対的に旋回するときの中心となる。したがって、鉄筋20をコーナー13の外側に片寄った位置に設定することにより、図9(b)に示すように、第1の壁体11および第2の壁体12は、鉄筋20が埋設されたコーナー13の外側を中心に旋回する。一方、鉄筋20が壁厚の中央付近にあると、図10(b)に示すように、第1の壁体11および第2の壁体12は、図9(b)の場合よりコーナー13の内側を中心に旋回する。このため、コーナー13の角度が変わると、壁体11および12の外面11oおよび12oのコーナーから離れた縁の位置はコーナー13から離れる(延びる)ようになる。擁壁1の寸法は、擁壁1の外面を基準に設定されるので、外面に近い位置を中心に壁体を旋回する構造を採用することにより、擁壁の設計、製造、施工における手間を省くことができる。
【0056】
例えば、L型擁壁を施工するためのコンクリートブロックは、一般的に長さが2メートルを単位として標準化されているが、現場の測量によって、所望の延長の擁壁を施工するために、2メートル以下の端数の寸法を埋めるためのコンクリートブロックを製造する。擁壁1のコーナー部分を施工するコーナーブロック10の長さがコーナー部分の角度によって変わるようであると、その長さも見込んだ設計を行い、現場の測量結果に加えて、コーナーブロックの長さ変動も見込んだ特注の製造を行なう必要があり面倒である。この実施例では、壁体11および12の外面11oおよび12oから3cm程度内側に入ったところに鉄筋20を埋設している。この構成であると、壁体11および12の角度を変えたときに、それらの外面11oおよび12oのコーナーと反対側の縁の位置の変動は4cm程度あるいはそれ以下に収まり、長さ調整用の特注の直線部分のコンクリートブロックは、この4cm程度の延びを考慮したものであれば良い。この程度であれば、隙間が開いたとしてもモルタルなどを用いて現場で目地仕上げすることで対応できる。
【0057】
さらに、鉄筋20をコーナー13の外側に片寄った位置に設定することにより、図9(b)に示すように、コーナー13の稜線13rの外側の目地コンクリート21で埋める部分22の広がりを小さくできるというメリットがある。鉄筋20が壁厚の中央付近にあると、図10(b)に示すように、コーナー13の稜線13rの外側が大きく開くので、目地コンクリート(目地モルタル)21で埋める部分22が広くなる。そのため、目地モルタル21を押し付けても垂れ落ちてくる可能性が高くなる。また、逆に、コーナーの稜線13rの内側の部分23が狭くなり、隙間15を介してコーナーの稜線13rの内側23と外側22とが一体となるように目地コンクリート21を施工しても、内側23の部分で外側22の部分を安定して保持することが難しくなる。また、コーナーの稜線13rの外側の部分22は、外に広がるテーパー状であるので、壁に衝撃が加わると目地コンクリート21が外れやすい。鉄筋20を、壁厚のコーナー13の外側に片寄った位置に設定することにより、これらの問題が発生する可能性を抑制できる。
【0058】
コーナー13の内側の部分23は、土に埋もれる部分なので、目地コンクリートを壁よりも厚く施工することは可能であり、コーナー13の外側のように見栄えが求められることはほとんどなく、施工は容易である。例えば、下側を目地仕上げしていったん土砂で埋めて壁を安定させ、さらに、上側を目地仕上げして固まったら更に埋め戻すといった施工方法が可能である。あるいは、目地部分に板を押し当てて土砂を埋め、その後に目地23の上から比較的柔らかいモルタルを落とすこともできる。コーナー13の裏側は見えなくなるので、外側の表面に型枠を当てるよりも簡単な施工で良く、しかも土砂を埋めることにより、型枠を固定する面倒な手間を省くことができる。しかも、コーナー13の内側の目地材は土砂で押されているので剥離して落ちることはない。
【0059】
接続部材として帯状のゴムあるいは金属板を用いる場合でも、接続部材を外側に片寄った位置にセットすることにより、目地コンクリートが外れる問題をある程度解決できる。特に、脱型するときに割れてのこぎり状の断面18がコーナーの稜線13rの外側に表れるようにすることにより、目地コンクリートが外れて落ちるようなトラブルをある程度防止できる。したがって、接続部材は、極力、コーナー13の表側、すなわち、壁の外面11oおよび12oに近い位置に埋設することが好ましいが、鉄筋20に対するコンクリートの被りを考慮すれば、表面11oおよび12oから少なくとも2cm程度の被りを確保できる位置に埋設することが好ましい。
【0060】
図11に、本発明の異なる実施形態のコーナーブロック40を用いて擁壁1を施工する様子を示している。このコーナーブロック40は、コーナー13の左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体11および第2の壁体12と、これらの壁体11および12を接続するためにこれらの壁体11および12の隣接する側に埋設された鉄筋20とを備えており、コーナーの稜線13rに沿って適当な隙間15が形成されている点では上記のコーナーブロック10と共通である。それぞれの壁体11および12は、基礎部となる底板41および42を備えており、その底板41および42の内側に基礎用の複数の鉄筋25が突き出ている。したがって、コーナーブロック40の断面はL字型になっている。底板41および42は、上方から見た形状がコーナー13を頂点とする三角形であり、壁体11および12を折り曲げたときに底板同士が干渉しないようになっている。
【0061】
このコーナーブロック40は、底板41および42を予め備えているので、擁壁のコーナーを施工する際に、基礎を形成するために現場で打ち込むコンクリート量を少なくできる。その一方で、底板41および42から基礎用の鉄筋25が突き出ているので、それらを交差させて基礎コンクリートを打ち込むことにより、壁体11および12を固定できる。また、図11(b)に示すように、鈍角のコーナーを構成したときに基礎用の鉄筋25を用いて基礎部分を拡張できるので、底板の面積の不足を補うことも容易である。
【0062】
しかしながら、図11(c)のように、鋭角なコーナーを形成するときに底板41および42の間のスペースが殆どなくなってしまうために、基礎用の鉄筋25を処理する空間がなくなる。したがって、施工する際に、基礎用の鉄筋25を切断するような作業が発生する可能性がある。さらに、底板41および42の間のスペースが殆どなくなってしまうと、その領域に現場で施工されるコンクリートは細長い三角形となってしまい、曲げ荷重に弱いので、底板あるいは基礎としては安定計算上の問題がある。さらに、底板41および42をプレハブするために、上記のコーナーブロック10のように、平面打ちにより製造することが難しい。したがって、本発明の実施形態としては、コーナーブロック10のように底板を設けず、ほぼ直壁の下側から内側に基礎用の鉄筋25を伸ばすことが望ましい。
【0063】
なお、上記のコーナーブロックは、現場にて、角度調整させることを主たる目的としているが、現場の測量が間違いなく打ち合わせできている場合などは、現場でなく二次製品として工場で底板を施工し、左右のブロックを一体化して現場に搬入することも可能である。
【0064】
また、コーナーブロックの壁体11および12の形状は上記に限定されない。例えば、図12に示すように、壁体11および12の上面16に沿った内面11iおよび12iを欠いて段差51を形成し、上面16の幅を薄くすることが可能である。このような段差51は、コーナーブロック10を平面打ちするときに、適当な厚みの板材を補助型枠としてセットすることにより形成できる。そして、擁壁1の直線部分を施工するL型ブロックの壁厚と、コーナーブロック10の壁厚が異なるときに、地面に見える擁壁1の上面の厚みを簡単に揃えることが可能となる。図13(a)は、このコーナーブロック10を上から見た平面図であり、底面から見た場合も同一に表れる。図13(b)は、コーナーブロック10の断面図である。図13(c)は、コーナーブロック10の正面図、図13(d)は背面図、図13(e)は右側面図であり、左側面図は対称に表れる。
【0065】
図14に、本発明の異なる実施形態のコーナーブロック60を示している。このコーナーブロック60は、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体11、第2の壁体12および第3の壁体61を備えている。さらに、コーナーブロック60は、これらの壁体11、12および61を接続するために、それぞれの壁体の隣接する側に埋設された鉄筋20を備えている。そして、それぞれの壁体11、12および61により形成されるコーナーの稜線13rに沿って適当な隙間15が形成されている。また、それぞれの壁体11、12および61からは、基礎を施工するための鉄筋25が突き出ている。
【0066】
このコーナーブロック60は、上記の2枚構成のコーナーブロック10を3枚構成にしたものであり、図15に示すように、2枚構成のコーナーブロック10とほぼ同様の製造方法により製造することができる。また、3枚構成に限らず、4枚以上の壁体を備えたコーナーブロックであっても製造し、提供することができる。すなわち、脱型するときに、それぞれの壁体の内面11i、12iおよび61iを吊り上げることにより、それぞれの壁体11、12および61の境界部分13bを割って、それぞれの壁体11、12および61の成すコーナーの稜線となる部分を製造できる。
【0067】
図16から図18に、コーナーブロック60によりコーナーを構成する幾つかの例を示している。2枚構成のコーナーブロック10と同様に、現場の状況に合わせて種々の角度のコーナーを施工することができる。さらに、3枚構成のコーナーブロック60により擁壁のコーナーを構成することにより、面取りされた形状のコーナーを簡単に施工できる。このような面取りされたコーナーを備えた擁壁1により区切られた道路は、見通しが良いなど車両の通行に適している。複数のコーナーブロック60を用いることにより、道路の曲率半径の大きなカーブに沿って、湾曲した擁壁を施工することも可能となる。
【0068】
図19に、本発明のさらに異なる実施形態のコーナーブロック65を示している。このコーナーブロック65も、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体11、第2の壁体12および第3の壁体61を備えている。さらに、コーナーブロック65は、これらの壁体11、12および61を接続するために埋設された鉄筋20を備えている。また、それぞれの壁体11、12および61からは、基礎を施工するための鉄筋25が突き出ている。
【0069】
このコーナーブロック65においては、3つの壁体11、12および61の真ん中となる第2の壁体12の断面形状を、両側の第1の壁体11および第3の壁体61に対して幅を狭くし、厚みを大きくしている。さらに、第2の壁体12の外側の面12oを凸に湾曲させている。第2の壁体12は、擁壁のコーナーポストとして使用することが可能であり、コーナーの稜線部分が曲面に面取りされた形状の擁壁を施工できる。
【0070】
このコーナーブロック65も、図20に示すように、2枚構成のコーナーブロック10とほぼ同様の製造方法により製造することができる。また、図21に、コーナーブロック65によりコーナーを構成する幾つかの例を示すように、2枚構成のコーナーブロック10と同様に、現場の状況に合わせて種々の角度のコーナーを施工することができる。
【0071】
図22に、本発明のさらに異なる実施形態のコーナーブロック70を示している。このコーナーブロック70は、左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体11および第2の壁体12を備えている。さらに、コーナーブロック70は、これらの壁体11および12を接続するために埋設された鉄筋20を備えている。また、それぞれの壁体11および12からは、基礎を施工するための鉄筋25が突き出ている。さらに、コーナーブロック70は、第1の壁体11および第2の壁体12の間(隙間)15を挟み、第1の壁体11および第2の壁体12の間15に沿って並び、第1の壁体11および第2の壁体12の内面11iおよび12iから、これらの壁体11および12が成すコーナーの内側に向かって突き出した複数対の鉄筋75を備えている。これら複数対の鉄筋75は、第1の壁体11および第2の壁体12がコーナーを形成するように配置されると、第1の壁体11および第2の壁体12の間15に沿って上下に並び、それぞれの鉄筋75は、対を成す鉄筋75と少なくとも一部が重なる長さを備えている。
【0072】
図23に、コーナーブロック70の構成を断面により示している。コーナーブロック70は、これらの壁体11および12を接続するために、それぞれの壁体の隣接する側に埋設された鉄筋20を備えている。そして、それぞれの壁体11および12により形成されるコーナーの稜線13rに沿って適当な隙間15が形成されている。また、隙間15を挟んで、それぞれの壁体の隣接する側の斜面14の近傍には、L字状に曲げられた鉄筋75が埋設されており、それらの鉄筋75の一部が内面11iおよび12iから突き出ている。
【0073】
図24から図28に、このコーナーブロック70により擁壁1を施工する様子を示している。図24は、コーナー部分を上方から見た状態を示しており、基礎コンクリートの上に、コーナーブロック70の壁11および12を、擁壁1の曲がり角度に合わせて設置する。この段階では、コーナーブロック70は、基礎部を備えていないが、壁11に対し壁12がコーナー13を成すようにすることにより安定して自立する。そして、バールなどにより、壁11および12の成すコーナー13の角度を調整し、それぞれが擁壁1の直線部分を構成するブロック5の壁と一直線になるようにする。壁体11および12の下部からコーナー13の内側に向かって突き出た複数の鉄筋25は、相互に交差した状態になる。さらに、コーナー13の内側に、コーナー13が折れ曲がる付近で、稜線13rに沿って上下に並んで突き出た複数対の鉄筋75も、相互に交差した状態になる。この状態で、交差した鉄筋75を結束したり、溶接することにより壁体11および12を鉄筋75により連結することができる。すなわち、壁体11および12が、接続部材(連結部材)である鉄筋20に加え、鉄筋75によっても実質的に連結され、強度が向上する。
【0074】
壁体11および12が大型になると、例えば、壁体11および12の高さが高いとき(基礎が深いとき)、壁が厚いときは、壁体11および12を連結する部分にも高い強度が要求される。例えば、予め埋設されている鉄筋20のみにより、壁体11および12により構成されるコーナー13の強度を得ようとする場合は、鉄筋20を太くしたり、鉄筋20の数を多くする必要がある。上述した実施形態のコーナーブロックにおいて、鉄筋20を太くしたり、数を多くすることは可能であり、対応できることである。しかしながら、壁体11および12の連結部分の強度が高くなるので、壁体11および12の角度を変えるために大きな力が必要になる。したがって、壁11および12により成すコーナー13の角度を微調整することが難しくなる。一方、コーナー13の角度を微調整し易いように鉄筋20の強度を下げたり、数を少なくすると、コーナーブロックにより構成されるコーナー部分の強度を確保することが難しい。
【0075】
これに対し、この実施形態のコーナーブロック70においては、接続部材である鉄筋20に加えて、コーナー13を構成したときに連結できる鉄筋であって、角度を調整するときには曲げなくても良い鉄筋75を設けている。基礎を構成するように壁11および12の下側からコーナー13の内側に突き出た鉄筋25も、壁11および12の連結強度を高める機能を備えている。鉄筋75は、壁体11および12のコーナーの稜線13rに沿って上下方向に設けられているので、これらの鉄筋75を接続することにより、コーナー13の基礎部分に限らず、コーナー13の全体の強度を向上できる。したがって、接続部材である鉄筋20を細くしたり、数を減らしたりすることが可能となる。このため、施工現場において、壁11および12の成すコーナー13の角度を微調整することが容易になる。
【0076】
本例のコーナーブロック70では、5組の鉄筋75が、壁体11および12から突き出ている。これらの鉄筋75は、対峙あるいは対向する鉄筋同士を重ねて生コンクリートで覆うことによっても一体あるいは一本の鉄筋としての強度を得ることができる。例えば、土木学会などにおいては、鉄筋径の20倍の長さで重なった、あるいは交差させた状態でコンクリートに埋設されている場合は、それらの鉄筋は強度的に一体であると認められている。
【0077】
このため、図25に示すように、壁体11および12の隙間15に沿って上下に並んだ5対の鉄筋75を曲げて重ね、さらに、図26に示すように、上下に並んで重ねられた5対の鉄筋75の内側に上下に延びるように型枠79をセットし、図27に示すように、コンクリート21を注入する(打ち込む)ことが望ましい。これにより、図28に示すように、コーナー13の稜線13rの内側に沿って、壁体11および12を接続する、断面が略三角形で上下に延びた補強部分78を現場打ちのコンクリート21により施工できる。このコンクリート21による補強部分78は、上下に並んだ鉄筋75を巻き込んで一体にしているだけではなく、第1の壁体11および第2の壁体12の間の隙間15を介して、コーナー13の稜線13rの外側および内側に繋がっている。したがって、コンクリート21による補強部分78は、鉄筋75を一体化して強度を確保するとともに、鉄筋75により、コーナーの稜線13rに沿って壁体11および12に密着している。このため、稜線13rの目地部分も含めて、補強部分78が、コーナーブロック70からすべり落ちたり、剥がれたりすることを防止できる。複数の鉄筋75は、2枚構成のコーナーブロックに限らず、図14または図19に示した3枚構成のコーナーブロック、さらには4枚以上の構成のコーナーブロックにも適用できる。
【0078】
これらの実施形態に示すように、本発明に含まれるコーナーブロックは、壁体部分の内側が土に埋まるタイプの擁壁を施工するのに適している。防火壁などのように、土留めとなる部分に加えて壁体の一部が地上に立ち上がるようなタイプの擁壁を施工するためのコーナーブロックも本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】擁壁の概要を示す図であり、(a)は擁壁が施工された状態を断面図で示し、(b)は90度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示し、(c)は110度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示し、(d)は70度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示している。
【図2】本発明の一実施形態のコーナーブロックを後方(背面)から見た斜視図である。
【図3】コーナーブロックを前方(正面)から見た斜視図である。
【図4】コーナーブロックの外観を示す図であり、(a)は平面図(底面図と同一)、(b)は断面図、(c)は正面図、(d)は背面図、(e)は右側面図(左側面図は対称)である。
【図5】コーナーブロックを用いて擁壁を施工する様子を示す図であり、(a)は90度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示し、(b)は110度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示し、(c)は70度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示している。
【図6】コーナーブロックを擁壁のコーナーに設置した状態を示す図であり、(a)は上方から見た様子を示し、(b)は側方から見た様子を示す。
【図7】コーナーブロックに現場コンクリートを打ち込んだ様子を示す図であり、(a)は上方から見た様子を示し、(b)は側方から見た様子を示す。
【図8】コーナーブロックを製造する過程を示す図であり、(a)は型枠の断面を示し、(b)は型枠を組み立てた状態を断面で示し、(c)はコーナーブロックが成形された状態を断面で示し、(d)は脱型する様子を示している。
【図9】脱型する様子を拡大して示す図であり、(a)は壁体の境界部分が折り曲げられる前、(b)は壁体の境界部分が折り曲げられた後を示している。
【図10】異なる実施形態のコーナーブロックを脱型する様子を拡大して示す図であり、(a)は壁体の境界部分が折り曲げられる前、(b)は壁体の境界部分が折り曲げられた後を示している。
【図11】さらに異なるコーナーブロックを用いて擁壁を施工する状態を示す図であり、(a)は90度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示し、(b)は110度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示し、(c)は70度のコーナーを備えた擁壁を施工する様子を示している。
【図12】さらに異なるコーナーブロックを背面から見た斜視図である。
【図13】図12に示すコーナーブロックの外観を示す図であり、(a)は平面図(底面図と同一)、(b)は断面図、(c)は正面図、(d)は背面図、(e)は右側面図(左側面図は対称)である。
【図14】さらに異なる、3枚構成のコーナーブロックを背面から見た斜視図であり、壁体を直線状にセットした状態を示す図である。
【図15】図14に示すコーナーブロックを型枠により製造する様子を示す図である。
【図16】図14に示すコーナーブロックの壁体により120度のコーナーを構成した状態を示す図であり、(a)は断面図であり、(b)はその斜視図である。
【図17】図14に示すコーナーブロックの壁体により90度のコーナーを構成した状態を示す図であり、(a)は断面図であり、(b)はその斜視図である。
【図18】図14に示すコーナーブロックの壁体により60度のコーナーを構成した状態を示す図であり、(a)は断面図であり、(b)はその斜視図である。
【図19】さらに異なる、3枚構成のコーナーブロックを正面から見た斜視図であり、(a)は120度のコーナーを構成した状態、(b)は70度のコーナーを構成した状態を示す図である。
【図20】図19に示すコーナーブロックを型枠により製造する様子を示す図である。
【図21】図19に示すコーナーブロックの壁体によりコーナーを構成した状態を示す図であり、(a)は3枚の壁体により120度のコーナーを構成した状態を示し、(b)は3枚の壁体により90度のコーナーを構成した状態を示し、(c)は3枚の壁体により70度のコーナーを構成した状態を示す。
【図22】さらに異なるコーナーブロックの概要を、コーナーブロックが開いた状態で示す図である。
【図23】図22に示すコーナーブロックの横方向の断面図である。
【図24】図22に示すコーナーブロックによりコーナーを施工する様子を示す図であり、コーナーブロックをコーナーに沿って並べた状態を示す。
【図25】図24に続き、コーナーブロックの内側に突き出た鉄筋を曲げて重ねた状態を示す。
【図26】図25に続き、曲げた鉄筋の内側に型枠をセットした状態を示す。
【図27】図26に続き、型枠の内側にコンクリートを注入した状態を示す。
【図28】上記の施工方法により、コーナーに沿って配置されたコーナーブロックの壁体の内側に補強部分を形成した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1 擁壁、 5 L字型のブロック
10、40、60、65、70 コーナーブロック
11、12、61 壁体
13 コーナー、 13b 壁体の境界部分
13r コーナーの稜線、 15 隙間、 18 割れた面
20 接続用の鉄筋、 25 基礎用の鉄筋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
擁壁のコーナー部分を施工するためのコンクリート製品であって、
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、
前記第1の壁体および前記第2の壁体の隣接する側に埋設され、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成す角度を変えられるように前記第1の壁体および前記第2の壁体を接続する接続部材であって、前記第1の壁体および前記第2の壁体の間に隙間が形成されるように埋設された接続部材とを有するコンクリート製品。
【請求項2】
請求項1において、前記第1の壁体および前記第2の壁体の間の前記隙間は、モルタルが流通する程度の隙間である、コンクリート製品。
【請求項3】
擁壁のコーナー部分を施工するためのコンクリート製品であって、
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、
前記第1の壁体および前記第2の壁体の隣接する側に埋設され、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成す角度を変えられるように前記第1の壁体および前記第2の壁体を接続する接続部材とを有し、
前記接続部材は、ワイヤーメッシュまたは断続的に埋設された複数の鉄筋である、コンクリート製品。
【請求項4】
擁壁のコーナー部分を施工するためのコンクリート製品であって、
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、
前記第1の壁体および前記第2の壁体の隣接する側に埋設され、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成す角度を変えられるように前記第1の壁体および前記第2の壁体を接続する接続部材とを有し、
前記第1の壁体および前記第2の壁体は前記隣接する側が薄くなり、前記第1の壁体および前記第2の壁体の境界部分が割れて前記接続部材が表れている、コンクリート製品。
【請求項5】
請求項4において、前記第1の壁体および前記第2の壁体を脱型するときに割れた前記境界部分を有する、コンクリート製品。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記接続部材は、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成すコーナーの外側に片寄った位置に埋設されている、コンクリート製品。
【請求項7】
擁壁のコーナー部分を施工するためのコンクリート製品であって、
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、
前記第1の壁体および前記第2の壁体の隣接する側に埋設され、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成す角度を変えられるように前記第1の壁体および前記第2の壁体を接続する接続部材であって、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成すコーナーの外側に片寄った位置に埋設された接続部材とを有するコンクリート製品。
【請求項8】
請求項1、4または7において、前記接続部材は、ワイヤーメッシュまたは断続的に埋設された複数の鉄筋である、コンクリート製品。
【請求項9】
請求項1、4または7において、前記第1の壁体および前記第2の壁体の前記隣接する側に、前記第1の壁体および前記第2の壁体の間を挟んで、前記第1の壁体および前記第2の壁体の間に沿って並び、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成すコーナーの内側に向かって突き出し、前記第1の壁体および前記第2の壁体がコーナーを形成するように配置されると、少なくとも一部が重なる複数対の鉄筋を備えている、コンクリート製品。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、前記第1の壁体および前記第2の壁体は平板状である、コンクリート製品。
【請求項11】
請求項10において、前記第1の壁体および前記第2の壁体は、それらの下方に、幅方向に並んで、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成すコーナーの内側に向かって突き出た複数の鉄筋を備えている、コンクリート製品。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかにおいて、さらに、前記第2の壁体に対して左右に隣接して配置され、前記第1の壁体と同様に前記第2の壁体に接続された第3の壁体を有する、コンクリート製品。
【請求項13】
請求項12において、前記第2の壁体は、前記第1の壁体および前記第3の壁体に対して幅が狭く厚みが大きい、コンクリート製品。
【請求項14】
請求項13において、前記第2の壁体は、外側の面が凸に湾曲している、コンクリート製品。
【請求項15】
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、前記第1の壁体および前記第2の壁体の隣接する側に埋設され、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成す角度を変えられるように前記第1の壁体および前記第2の壁体を接続する接続部材とを有するコンクリート製品の製造方法であって、
型枠により、前記第1の壁体および前記第2の壁体を一体で成形する工程と、
前記第1の壁体および前記第2の壁体の境界部分が割れて前記接続部材が表れるように脱型する工程とを有する製造方法。
【請求項16】
請求項15において、前記成形する工程では、前記第1の壁体および前記第2の壁体の前記隣接する側が薄くなるように成形する、製造方法。
【請求項17】
請求項15において、前記成形する工程では、前記第1の壁体および前記第2の壁体の少なくとも外側の面を規定し、前記第1の壁体および前記第2の壁体を一体のほぼ平板として成形する外型枠と、前記第1の壁体および前記第2の壁体の前記隣接する側が凹むように成形する補助型枠とを用い、
前記脱型する工程では、前記第1の壁体および前記第2の壁体の内側の面を吊り下げて脱型する、製造方法。
【請求項18】
請求項17において、前記外型枠は、前記第1の壁体および前記第2の壁体の境界部分の外側を凹ませる突条を備えている、製造方法。
【請求項19】
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、前記第1の壁体および前記第2の壁体の隣接する側に埋設され、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成す角度を変えられるように前記第1の壁体および前記第2の壁体を接続する接続部材とを有するコンクリート製品を製造するための型枠であって、
前記第1の壁体および前記第2の壁体の少なくとも外側の面を規定し、前記第1の壁体および前記第2の壁体を一体のほぼ平板として成形する外型枠と、
前記第1の壁体および前記第2の壁体の前記隣接する側が凹むように成形する補助型枠とを有する型枠。
【請求項20】
請求項19において、前記外型枠は、前記第1の壁体および前記第2の壁体の境界部分の外側を凹ませる突条を備えている、型枠。
【請求項21】
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、前記第1の壁体および前記第2の壁体の隣接する側に埋設され、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成す角度を変えられるように前記第1の壁体および前記第2の壁体を接続する接続部材であって、前記第1の壁体および前記第2の壁体の間に隙間が形成されるように埋設された接続部材とを有するコンクリート製品を、擁壁の曲がり角度に合わせて設置する工程と、
前記第1の壁体および前記第2の壁体の間の前記隙間を介して、前記第1の壁体および前記第2の壁体が成すコーナーの外側および内側が一体となるようにコンクリートを打ち込む工程とを有する擁壁の施工方法。
【請求項22】
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、前記第1の壁体および前記第2の壁体の隣接する側に埋設され、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成す角度を変えられるように前記第1の壁体および前記第2の壁体を接続する接続部材とを有し、前記第1の壁体および前記第2の壁体は前記隣接する側が薄くなり、脱型するときに前記第1の壁体および前記第2の壁体の境界部分が割れて前記接続部材が表れているコンクリート製品を、擁壁の曲がり角度に合わせて設置する工程と、
前記第1の壁体および前記第2の壁体が成すコーナーの外側および内側にコンクリートを打ち込む工程とを有する擁壁の施工方法。
【請求項23】
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、前記第1の壁体および前記第2の壁体の隣接する側に埋設され、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成す角度を変えられるように前記第1の壁体および前記第2の壁体を接続する接続部材とを有し、前記第1の壁体および前記第2の壁体は、それらの下方に、幅方向に並んで、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成すコーナーの内側に向かって突き出た複数の鉄筋を備えているコンクリート製品を、擁壁の曲がり角度に合わせて設置する工程と、
前記第1の壁体および前記第2の壁体から突き出た前記複数の鉄筋の少なくとも一部を交差させ、それら複数の鉄筋と一体となるようにコンクリートを打ち込む工程とを有する擁壁の施工方法。
【請求項24】
請求項21ないし23のいずれかにおいて、前記コンクリート製品は、前記第1の壁体および前記第2の壁体の前記隣接する側に、前記第1の壁体および前記第2の壁体の間を挟んで上下に並び、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成すコーナーの内側に向かって突き出した複数対の鉄筋を有し、
前記設置する工程では、さらに、前記複数対の鉄筋のうち、対を成す鉄筋の少なくとも一部を重ね、
前記コンクリートを打ち込む工程では、前記複数対の鉄筋を含めてコンクリートを打ち込む、擁壁の施工方法。
【請求項1】
擁壁のコーナー部分を施工するためのコンクリート製品であって、
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、
前記第1の壁体および前記第2の壁体の隣接する側に埋設され、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成す角度を変えられるように前記第1の壁体および前記第2の壁体を接続する接続部材であって、前記第1の壁体および前記第2の壁体の間に隙間が形成されるように埋設された接続部材とを有するコンクリート製品。
【請求項2】
請求項1において、前記第1の壁体および前記第2の壁体の間の前記隙間は、モルタルが流通する程度の隙間である、コンクリート製品。
【請求項3】
擁壁のコーナー部分を施工するためのコンクリート製品であって、
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、
前記第1の壁体および前記第2の壁体の隣接する側に埋設され、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成す角度を変えられるように前記第1の壁体および前記第2の壁体を接続する接続部材とを有し、
前記接続部材は、ワイヤーメッシュまたは断続的に埋設された複数の鉄筋である、コンクリート製品。
【請求項4】
擁壁のコーナー部分を施工するためのコンクリート製品であって、
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、
前記第1の壁体および前記第2の壁体の隣接する側に埋設され、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成す角度を変えられるように前記第1の壁体および前記第2の壁体を接続する接続部材とを有し、
前記第1の壁体および前記第2の壁体は前記隣接する側が薄くなり、前記第1の壁体および前記第2の壁体の境界部分が割れて前記接続部材が表れている、コンクリート製品。
【請求項5】
請求項4において、前記第1の壁体および前記第2の壁体を脱型するときに割れた前記境界部分を有する、コンクリート製品。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記接続部材は、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成すコーナーの外側に片寄った位置に埋設されている、コンクリート製品。
【請求項7】
擁壁のコーナー部分を施工するためのコンクリート製品であって、
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、
前記第1の壁体および前記第2の壁体の隣接する側に埋設され、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成す角度を変えられるように前記第1の壁体および前記第2の壁体を接続する接続部材であって、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成すコーナーの外側に片寄った位置に埋設された接続部材とを有するコンクリート製品。
【請求項8】
請求項1、4または7において、前記接続部材は、ワイヤーメッシュまたは断続的に埋設された複数の鉄筋である、コンクリート製品。
【請求項9】
請求項1、4または7において、前記第1の壁体および前記第2の壁体の前記隣接する側に、前記第1の壁体および前記第2の壁体の間を挟んで、前記第1の壁体および前記第2の壁体の間に沿って並び、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成すコーナーの内側に向かって突き出し、前記第1の壁体および前記第2の壁体がコーナーを形成するように配置されると、少なくとも一部が重なる複数対の鉄筋を備えている、コンクリート製品。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、前記第1の壁体および前記第2の壁体は平板状である、コンクリート製品。
【請求項11】
請求項10において、前記第1の壁体および前記第2の壁体は、それらの下方に、幅方向に並んで、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成すコーナーの内側に向かって突き出た複数の鉄筋を備えている、コンクリート製品。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかにおいて、さらに、前記第2の壁体に対して左右に隣接して配置され、前記第1の壁体と同様に前記第2の壁体に接続された第3の壁体を有する、コンクリート製品。
【請求項13】
請求項12において、前記第2の壁体は、前記第1の壁体および前記第3の壁体に対して幅が狭く厚みが大きい、コンクリート製品。
【請求項14】
請求項13において、前記第2の壁体は、外側の面が凸に湾曲している、コンクリート製品。
【請求項15】
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、前記第1の壁体および前記第2の壁体の隣接する側に埋設され、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成す角度を変えられるように前記第1の壁体および前記第2の壁体を接続する接続部材とを有するコンクリート製品の製造方法であって、
型枠により、前記第1の壁体および前記第2の壁体を一体で成形する工程と、
前記第1の壁体および前記第2の壁体の境界部分が割れて前記接続部材が表れるように脱型する工程とを有する製造方法。
【請求項16】
請求項15において、前記成形する工程では、前記第1の壁体および前記第2の壁体の前記隣接する側が薄くなるように成形する、製造方法。
【請求項17】
請求項15において、前記成形する工程では、前記第1の壁体および前記第2の壁体の少なくとも外側の面を規定し、前記第1の壁体および前記第2の壁体を一体のほぼ平板として成形する外型枠と、前記第1の壁体および前記第2の壁体の前記隣接する側が凹むように成形する補助型枠とを用い、
前記脱型する工程では、前記第1の壁体および前記第2の壁体の内側の面を吊り下げて脱型する、製造方法。
【請求項18】
請求項17において、前記外型枠は、前記第1の壁体および前記第2の壁体の境界部分の外側を凹ませる突条を備えている、製造方法。
【請求項19】
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、前記第1の壁体および前記第2の壁体の隣接する側に埋設され、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成す角度を変えられるように前記第1の壁体および前記第2の壁体を接続する接続部材とを有するコンクリート製品を製造するための型枠であって、
前記第1の壁体および前記第2の壁体の少なくとも外側の面を規定し、前記第1の壁体および前記第2の壁体を一体のほぼ平板として成形する外型枠と、
前記第1の壁体および前記第2の壁体の前記隣接する側が凹むように成形する補助型枠とを有する型枠。
【請求項20】
請求項19において、前記外型枠は、前記第1の壁体および前記第2の壁体の境界部分の外側を凹ませる突条を備えている、型枠。
【請求項21】
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、前記第1の壁体および前記第2の壁体の隣接する側に埋設され、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成す角度を変えられるように前記第1の壁体および前記第2の壁体を接続する接続部材であって、前記第1の壁体および前記第2の壁体の間に隙間が形成されるように埋設された接続部材とを有するコンクリート製品を、擁壁の曲がり角度に合わせて設置する工程と、
前記第1の壁体および前記第2の壁体の間の前記隙間を介して、前記第1の壁体および前記第2の壁体が成すコーナーの外側および内側が一体となるようにコンクリートを打ち込む工程とを有する擁壁の施工方法。
【請求項22】
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、前記第1の壁体および前記第2の壁体の隣接する側に埋設され、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成す角度を変えられるように前記第1の壁体および前記第2の壁体を接続する接続部材とを有し、前記第1の壁体および前記第2の壁体は前記隣接する側が薄くなり、脱型するときに前記第1の壁体および前記第2の壁体の境界部分が割れて前記接続部材が表れているコンクリート製品を、擁壁の曲がり角度に合わせて設置する工程と、
前記第1の壁体および前記第2の壁体が成すコーナーの外側および内側にコンクリートを打ち込む工程とを有する擁壁の施工方法。
【請求項23】
左右に隣接して配置されるコンクリート製の第1の壁体および第2の壁体と、前記第1の壁体および前記第2の壁体の隣接する側に埋設され、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成す角度を変えられるように前記第1の壁体および前記第2の壁体を接続する接続部材とを有し、前記第1の壁体および前記第2の壁体は、それらの下方に、幅方向に並んで、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成すコーナーの内側に向かって突き出た複数の鉄筋を備えているコンクリート製品を、擁壁の曲がり角度に合わせて設置する工程と、
前記第1の壁体および前記第2の壁体から突き出た前記複数の鉄筋の少なくとも一部を交差させ、それら複数の鉄筋と一体となるようにコンクリートを打ち込む工程とを有する擁壁の施工方法。
【請求項24】
請求項21ないし23のいずれかにおいて、前記コンクリート製品は、前記第1の壁体および前記第2の壁体の前記隣接する側に、前記第1の壁体および前記第2の壁体の間を挟んで上下に並び、前記第1の壁体および前記第2の壁体の成すコーナーの内側に向かって突き出した複数対の鉄筋を有し、
前記設置する工程では、さらに、前記複数対の鉄筋のうち、対を成す鉄筋の少なくとも一部を重ね、
前記コンクリートを打ち込む工程では、前記複数対の鉄筋を含めてコンクリートを打ち込む、擁壁の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
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【図18】
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【図23】
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【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2007−247388(P2007−247388A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34664(P2007−34664)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(592136635)株式会社オーイケ (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(592136635)株式会社オーイケ (28)
【Fターム(参考)】
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