説明

コンクリート製品とその製造方法及びその管理方法

【課題】コンクリート製品自体及びコンクリートの打設に関わる製造工程上の履歴等の各種データを、簡易、正確、確実に管理することができ、よって、在庫、出荷管理等においても容易に利用することができ、さらには、後から追跡調査することが可能で、トレーサビリティーへの活用も可能となるコンクリート製品とその製造方法及びその管理方法を提供する。
【解決手段】本発明のコンクリート製品であるL型擁壁は、コンクリート体1の打設面近傍に、薄板状のICタグ3が、そのアンテナ部13のアンテナ面がコンクリート体1の側面1aと平行になるように埋め込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製品とその製造方法及びその管理方法に関し、更に詳しくは、コンクリート製品を管理する際に、人的ミスが生じる虞がなく、簡便、正確かつ確実に、しかも効率良く管理を行うことが可能であり、さらには、このコンクリート製品の打設に用いられた生コンクリートの管理を行うことも可能なコンクリート製品とその製造方法及びその管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、L型擁壁、ボックスカルバート、プレキャストコンクリート板、U字溝、ヒューム管等のコンクリート製品を製造する場合、例えば、コンクリートを打設する際には、打設する型枠に荷札を取り付けたり、あるいは型枠にペンキでロット番号等の各種番号や各種記号等を記載したり等により管理を行っている。また、コンクリート製品を脱型する際には、コンクリート製品にインク等でロット番号等の各種番号や各種記号等を記載する等により管理を行っている。
【0003】
また、コンクリート製品の製造、在庫、出荷等の管理についても、前述したコンクリート製品のロット番号等の各種番号や各種記号等を用いて、コンピューター管理や台帳管理を行っている。
ところで、コンクリート製品を製造する工場においては、製造されるコンクリート製品の品種や生産量が非常に多いために、例えば、コンピューター管理を行っている場合、製造、在庫、出荷等の管理を行う際に、人手によるデータ入力が必要になる。しかしながら、人手によるデータ入力自体、非常に労力の要る作業であることから、誤入力等の人為的なミスが生じ易く、管理の正確性を欠く場合があった。
【0004】
また、従来のコンクリート製品では、記載上のスペースが限られてしまうために、この製品を認識する番号や記号としては、製造日、製品の種類、製造工場に限られてしまい、コンクリートの組成、品質(グレード)、打設条件、養生条件等の詳細なデータは記載されていないのが現状である。
そのために、コンクリート製品が納品された後、経年で劣化、不具合等が生じた場合、劣化や不具合が生じたコンクリート製品に記載されている情報が製造日、製品の種類、製造工場に限られているために、トレースに時間がかかり、場合によってはトレースが困難となり、劣化や不具合に至った原因を解明するが非常に困難であった。
これら製造日、製品の種類、製造工場というコンクリート製品を認識する記号は、コンクリートの組成、品質(グレード)、打設日時、養生条件等、打設に関わる詳細なデータとリンクしておらず、コンクリート製品の品質管理上問題もあった。
【0005】
また、コンクリート製品を設置して長時間経過した場合、製品に記載された記号が消失したり、汚染されたりして、目視で識別することが難しくなるという問題もあった。
このように、コンクリート製品のコンクリートに関する情報の入手は、調査、把握が難しく、現実的には、地震等の天災での被害や、中性化、塩害、凍結融解等による劣化が生じて初めて、本来のコンクリート品質が確保されていなかったことが判明する場合が少なくない。この場合、正規の品質のコンクリートがコンクリート製品に打設されなかったことが考えられるが、上述した管理方法では、コンクリート製品に打設したコンクリートの情報は、後から追跡調査することが困難な場合が多く、場合によっては、都合の良いデータに改ざんすることも可能である。
【0006】
そこで、このような問題点を解消するために、非接触の無線通信システムであるRFID(Radio frequency Identification)システムを適用したコンクリート製品が提案されている(特許文献1)。
このコンクリート製品は、ヒューム管等のコンクリート製の建築資材の外周面よりも内部へ引っ込んだ位置に、アンテナ指向方向を上記外周面に向けてRFIDデータキャリア(いわゆるICタグ)を設置したものであり、このRFIDデータキャリアと、このコンクリート製品の外部に設けられたRFID装置との無線通信により、RFIDデータキャリアのデータの書き込み及び読み取りを行っている。
このコンクリート製品は、RFIDデータキャリアを専用のRFIDデータキャリア設置治具の保持部に取り付け、次いで、すでに流動状コンクリートが流し込まれているコンクリート製品用型枠に、流動状コンクリートの固化前に、RFIDデータキャリアを設置治具毎差し込み、コンクリート内に埋設させて固定し、その後、流動状コンクリートを固化、脱型することで作製される。
【特許文献1】特開2000−91963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来のRFIDシステムを適用したコンクリート製品においても、次のような問題点があった。
(1)RFIDデータキャリアを専用のRFIDデータキャリア設置治具の保持部に取り付けた後に流動状コンクリートに差し込んでいるために、専用のRFIDデータキャリア設置治具が必要となる上に、保持部に取り付けるための手間が必要となり、作業が煩雑になる。
【0008】
(2)RFIDデータキャリアは、専用のRFIDデータキャリア設置治具と共にコンクリート内に埋め込まれるので、RFIDデータキャリア設置治具も異物としてコンクリート製品の中に残ることとなり、これらの異物がコンクリート製品の強度に影響を与える。
(3)RFIDデータキャリアを、単にコンクリート製品内に埋め込んだ場合、このRFIDデータキャリアの埋め込まれた位置を特定することが難しく、したがって、信号が検出できなかったり、信号が検出できても感度が低すぎたり等の問題がある。このため、上述した従来のRFIDシステムでは、RFIDデータキャリア設置治具の一端をコンクリート製品の表面に出すことが提案されているが、このような構造では、治具を使用することによる上記の(1)、(2)の問題点に加えて、外観上の問題点も発生する。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、コンクリート製品自体及びコンクリートの打設に関わる製造工程上の履歴等の各種データを、簡易、正確、確実に管理することができ、よって、在庫、出荷管理等においても容易に利用することができ、さらには、後から追跡調査することが可能で、トレーサビリティーへの活用も可能となるコンクリート製品とその製造方法及びその管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、従来のような非接触通信媒体専用の設置治具を用いることなく、薄板状の非接触通信媒体のみを、このコンクリート体の1つの面の近傍に埋め込むようにすれば、コンクリート体における非接触通信媒体の位置が常に一定となり、したがって、コンクリート製品の管理を簡便、正確かつ確実に行うことができ、しかも管理作業の効率化に寄与することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のコンクリート製品は、コンクリート体の1つの面の近傍に、薄板状の非接触通信媒体が埋め込まれてなることを特徴とする。
このコンクリート製品では、コンクリート体の1つの面の近傍に、薄板状の非接触通信媒体を埋め込んだことにより、コンクリート体に埋め込まれた非接触通信媒体の位置を特定することが容易になる。これにより、非接触通信媒体からの信号を感度良く容易に検出することが可能になり、コンクリート製品の管理を簡便、正確かつ確実に行うことが可能になる。
また、このコンクリート体には、薄板状の非接触通信媒体のみが埋め込まれているので、非接触通信媒体を固定するための治具等がコンクリート体の中に残ることも無くなり、よって、非接触通信媒体がコンクリート製品の強度に影響を及ぼす虞も無い。
【0012】
また、この非接触通信媒体は、コンクリート製品の製造日、種類、製造工場、製造ロットの他、コンクリートのロット番号、組成、品質(グレード)、打設日時、養生条件等、打設に関わる詳細なデータも含めたコンクリート製品に関する情報を読み取り/書き込み可能であるから、コンクリート製品が納品された後、経年で劣化、不具合等が生じた場合であっても、劣化や不具合に至った原因を容易に解明することが可能である。
また、これらの情報は、設置して長時間経過した場合であっても、情報の消失、劣化等の虞もない。
【0013】
本発明のコンクリート製品は、前記非接触通信媒体が、前記コンクリート体の打設面近傍、かつ、このコンクリート体の前記打設面以外の1つの面の近傍に埋め込まれていることを特徴とする。
【0014】
本発明のコンクリート製品は、前記非接触通信媒体の一端部の位置が、前記コンクリート体の打設面と略一致していることを特徴とする。
このコンクリート製品では、非接触通信媒体の一端部の位置を、コンクリート体の打設面と略一致させたことにより、このコンクリートにおける非接触通信媒体の位置が一定となる。これにより、この非接触通信媒体から情報を読み取る際に、非接触通信媒体の位置を特定するのが極めて容易となり、コンクリート製品の管理をさらに簡便、正確かつ確実に行うことが可能になる。
【0015】
本発明のコンクリート製品は、前記非接触通信媒体が、前記コンクリート体の内部に設けられた鉄筋の位置決め用部材に取り付けられていることを特徴とする。
このコンクリート製品では、非接触通信媒体を、コンクリート体の内部に設けられた鉄筋の位置決め用部材に取り付けたことにより、このコンクリート体における非接触通信媒体の位置が一定となり、この非接触通信媒体から情報を読み取る際に、非接触通信媒体の位置を特定するのが極めて容易となる。よって、コンクリート製品の管理をさらに簡便、正確かつ確実に行うことが可能になる。
【0016】
本発明のコンクリート製品は、前記非接触通信媒体のアンテナ部と前記1つの面との距離が3cm以内であることを特徴とする。
このコンクリート製品では、アンテナ部と前記1つの面との距離を3cm以内としたことにより、情報を読み取る際のアンテナの感度がより高くなり、信頼性により優れたものとなる。よって、非接触通信媒体からの信号をさらに感度良く、さらに容易に検出することが可能になり、コンクリート製品の管理をさらに簡便、正確かつ確実に行うことが可能になる。
【0017】
本発明のコンクリート製品は、前記非接触通信媒体は、長さが150mm以内、幅が100mm以内であることを特徴とする。
このコンクリート製品では、非接触通信媒体の形状を上記の数値の範囲内とすることで、非接触通信媒体がコンクリート体の強度に影響を及ぼす虞がなくなる。また、非接触通信媒体を埋め込む際に、生コンクリート中の骨材と接触する機会が少なくなり、埋め込み作業が簡単になる。
【0018】
本発明のコンクリート製品は、前記非接触通信媒体は、可撓性を有する有機高分子からなる基板上に、情報の書き込み/読み取りが可能な集積回路及び前記アンテナ部が設けられていることを特徴とする。
このコンクリート製品では、可撓性を有する有機高分子からなる基板を用いたことにより、生コンクリートが硬化する際においても、生コンクリートの変形に非接触通信媒体の形状が追随し、生コンクリートと非接触通信媒体との間に亀裂や空隙が生じる虞がなくなる。これにより、コンクリート体の強度が低下する虞もなくなり、所望の機械的強度を有するものとなる。
【0019】
本発明のコンクリート製品は、前記集積回路及び前記アンテナ部は、有機高分子からなるフィルムにより被覆されていることを特徴とする。
このコンクリート製品では、少なくとも集積回路及びアンテナ部を、有機高分子からなるフィルムにより被覆したことにより、コンクリートが硬化する際においても、集積回路及びアンテナ部は有機高分子により保護され、コンクリートの硬化に起因する損傷が生じる虞もない。
【0020】
本発明のコンクリート製品は、前記非接触通信媒体に記録された情報は、前記コンクリート体の識別情報であることを特徴とする。
このコンクリート製品では、非接触通信媒体に記録された情報を、コンクリート体の識別情報とすることにより、これらの情報を非接触通信媒体読み取り装置を用いて非接触で読み取ることで、コンクリートの組成、特性、履歴等を、簡単に知ることが可能になる。
【0021】
本発明のコンクリート製品の製造方法は、コンクリート製品の型枠内に生コンクリートを打設し、次いで、この生コンクリートの打設面から、薄板状の非接触通信媒体を、この生コンクリート内に埋め込み、次いで、この生コンクリートを硬化し、次いで脱型してコンクリート製品とすることを特徴とする。
【0022】
このコンクリート製品の製造方法では、非接触通信媒体からの信号を感度良く容易に検出することができ、管理を簡便、正確かつ確実に行うことができ、しかもコンクリート強度が低下する虞もないコンクリート製品を、容易かつ安価に製造することが可能になる。
【0023】
本発明のコンクリート製品の製造方法は、鉄筋に設けられた位置決め用部材に非接触通信媒体を取り付け、次いで、この非接触通信媒体が取り付けられた鉄筋をコンクリート製品の型枠内に配置し、次いで、この型枠内に生コンクリートを打設し、次いで、この生コンクリートを硬化し、次いで脱型してコンクリート製品とすることを特徴とする。
【0024】
このコンクリート製品の製造方法では、非接触通信媒体からの信号を感度良く容易に検出することができ、管理を簡便、正確かつ確実に行うことができ、しかもコンクリート強度が低下する虞もない鉄筋コンクリートの製品を、容易かつ安価に製造することが可能になる。
【0025】
本発明のコンクリート製品の管理方法は、前記コンクリート製品の非接触通信媒体に記録された情報を非接触通信媒体読み取り装置を用いて非接触にて読み取り、この読み取った情報を基に前記コンクリート製品の管理を行うことを特徴とする。
【0026】
このコンクリート製品の管理方法では、非接触通信媒体読み取り装置を用いて、コンクリート製品の非接触通信媒体に記録された情報を非接触にて読み取り、この読み取った情報を基に管理を行うことにより、コンクリート製品に関する広範な情報を速やかに入手することが可能となり、コンクリート製品の管理を簡便、正確かつ確実に行うことが可能になる。
【0027】
本発明のコンクリート製品の管理方法は、前記非接触通信媒体読み取り装置は、前記非接触通信媒体からの情報の読み取り、前記非接触通信媒体への情報の書き込み、の双方を行う携帯可能な非接触通信媒体読み取り/書き込み装置であることを特徴とする。
【0028】
このコンクリート製品の管理方法では、非接触通信媒体読み取り装置を、前記非接触通信媒体からの情報の読み取り、前記非接触通信媒体への情報の書き込み、の双方を行う携帯可能な非接触通信媒体読み取り/書き込み装置とすることにより、コンクリート製品に関する広範な情報を、その場で、しかもリアルタイムで知ることが可能になる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のコンクリート製品によれば、コンクリート体の1つの面の近傍に、薄板状の非接触通信媒体を埋め込んだので、非接触通信媒体の位置を特定することが容易となり、したがって、非接触通信媒体からの信号を感度良く容易に検出することができ、コンクリート製品の管理を簡便、正確かつ確実に行うことができる。
また、非接触通信媒体を固定するための治具等がコンクリート体の中に残ることも無いので、非接触通信媒体がコンクリート製品の強度に影響を及ぼす虞も無い。
【0030】
また、この非接触通信媒体は、コンクリート製品の製造日、種類、製造工場、製造ロットの他、コンクリートのロット番号、組成、品質(グレード)、打設日時、養生条件等、打設に関わる詳細なデータも含めたコンクリート製品に関する情報を読み取り/書き込み可能であるから、コンクリート製品が納品された後、経年で劣化、不具合等が生じた場合であっても、劣化や不具合に至った原因を容易に解明することができ、情報の消失、劣化等の虞もない。
【0031】
本発明のコンクリート製品の製造方法によれば、コンクリート製品の型枠内に生コンクリートを打設し、次いで、この生コンクリートの打設面から、薄板状の非接触通信媒体を、この生コンクリート内に埋め込み、次いで、この生コンクリートを硬化し、次いで脱型するので、本発明のコンクリート製品を従来のコンクリート製品と同様の製造方法により製造することができる。
【0032】
本発明の他のコンクリート製品の製造方法によれば、鉄筋に設けられた位置決め用部材に非接触通信媒体を取り付け、次いで、この非接触通信媒体が取り付けられた鉄筋をコンクリート製品の型枠内に配置し、次いで、この型枠内に生コンクリートを打設し、次いで、この生コンクリートを硬化し、次いで脱型するので、本発明の鉄筋コンクリート製品を従来の鉄筋コンクリート製品と同様の製造方法により製造することができる。
【0033】
本発明のコンクリート製品の管理方法によれば、コンクリート製品の非接触通信媒体に記録された情報を非接触通信媒体読み取り装置を用いて非接触にて読み取り、この読み取った情報を基にコンクリート製品の管理を行うので、コンクリート製品に関する広範な情報を速やかに入手することができ、コンクリート製品の管理を簡便、正確かつ確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明のコンクリート製品とその製造方法及びその管理方法を実施するための最良の形態について説明する。
なお、これらの形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0035】
「第1の実施の形態」
図1は、本発明の第1の実施形態のコンクリート製品であるL型擁壁を示す斜視図、図2は図1のA領域の断面図であり、図において、1はコンクリート体、2はコンクリート体1の内部かつその外側の側面1aに沿って配置された格子状の鉄筋、3はコンクリート体1の打設面1b近傍、かつ、このコンクリート体1の打設面1b以外の面の近傍に埋め込まれた薄板状のICタグ(非接触通信媒体)である。このICタグ3は、そのアンテナ部のアンテナ面がコンクリート体1の外側の側面(1つの面)1aと平行、または側面1aに対して傾斜した状態で埋め込まれている。
【0036】
ICタグ3の書き込み/読み取り時の感度及び安定性を考慮すると、ICタグ3のアンテナ部のアンテナ面をコンクリート体1の外側の側面1aと平行とすることが好ましい。また、ICタグ3が側面1aに対して傾斜した状態で埋め込まれている場合、ICタグ3の書き込み/読み取り時の感度及び安定性を考慮すると、アンテナ面と側面1aとの角度は、45°以内が好ましく、30°以内がより好ましい。
【0037】
図3は、ICタグ3を示す斜視図、図4は図3のB−B線に沿う断面図であり、これらの図では、説明が容易なように、個々の厚みや縦横の比等を実際のものと変えてある。
このICタグ3は、薄板状のもので、可撓性を有する有機高分子からなる基板11上に、情報の書き込み/読み取りが可能なIC(集積回路)12、及び、このIC12の周囲に、これを囲むように、長円かつ渦巻き状のアンテナ部13が設けられ、これら基板11、IC12及びアンテナ部13は、全体が、例えば、ラミネートフィルム等のような有機高分子からなるフィルム14により被覆されている。
このICタグ3は、薄板状であれば、アクティブ型、パッシブ型のいずれでも構わないが、所定の薄板状にし易いこと、長期間コンクリート体1の内部に放置される等の点からは電源の不要なパッシブ型が好ましい。
【0038】
基板11としては、IC12及びアンテナ部13支持する支持体としての機能を有するものであればよく、適度の可撓性を有し、しかも取り扱いが容易という点で有機高分子フィルムが好ましい。この有機高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)等のプラスチックフィルムが好適に用いられ、特に、機械的強度及び熱安定性に優れている点でポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。
この基板11の形状は、IC12及びアンテナ部13の形状に合わせて設定すればよいが、コンクリートへ埋め込む際に取り扱い易いという点で、長方形が好ましい。
【0039】
IC12は、このL型擁壁に関する情報の書き込み/読み取りが可能なものであればよいが、情報の改ざん等を防止するためには、既に書き込まれた情報の消去や上書きができず、情報の追加部分を書き込むのみとしたものが好ましい。
【0040】
このL型擁壁に関する情報としては、次のような項目が挙げられる。
(1)L型擁壁の種類、作製日、作製場所(工場のライン等)、製造ロット番号、納入先、納入日、その他仕様等
(2)コンクリートの種類、作製日、作製場所(工場のライン等)、製造ロット番号、
(3)コンクリートの品質(スランプ、空気量、塩化物イオン量、練りあがり温度等)
(4)コンクリートの原材料(骨材の産地、種類、密度等)
(5)コンクリートの組成
(6)圧縮強度(試験日、試験データ等)
(7)その他、仕様等で定められた項目
【0041】
アンテナ部13は、金属薄膜あるいは金属箔をエッチング加工して所定の大きさの長円かつ渦巻き状としたものである。
フィルム14は、基板11、IC12及びアンテナ部13全体を覆って、外部環境から保護するもので、コンクリートとの密着性の良いものが、L型擁壁の機械的強度等の特性に影響を及ぼさないので好ましく、例えば、ラミネートフィルムが好ましい。特に、複数層からなる積層構造のラミネートフィルムが強度が高い点で好ましい。
このラミネートフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)等のプラスチックフィルムが好適に用いられ、特に、機械的強度及び熱安定性に優れている点でポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。
【0042】
このICタグ3は、長さが150mm以内、幅が100mm以内が好ましく、より好ましくは、長さが100mm以内、幅が70mm以内であり、さらに好ましくは、長さが90mm以内、幅が60mm以内である。また、その厚みは、3mm以内が好ましく、より好ましくは2mm以内、さらに好ましくは1mm以内である。
ICタグ3の大きさが上記の範囲内であれば、L型擁壁の機械的強度等の特性に影響を及ぼすことがない。さらに、ICタグ3を差し込む際に、コンクリート中の骨材と接触する機会が少なくなり、埋め込み作業が簡単になる。
ここで、ICタグ3の大きさとは、フィルム14の被覆がない場合には、フィルム14を除いた大きさであり、フィルム14の被覆がある場合には、フィルム14を含めたコンクリート体1の内部に埋め込まれる部分の大きさである。
【0043】
このICタグ3は、型枠に打設される生コンクリートが水分を含み、しかもアルカリ性であるため、使用期間中、コンクリートに含まれる水分やアルカリにより劣化しないものを用いる必要がある。そのため、必要に応じて、防水、防アルカリ処理を行うことが必要である。
さらに、コンクリート製品を製造する工場では、コンクリート打設後蒸気養生を行うため、耐水性だけでなく、耐熱性に優れていることが好ましい。
【0044】
例えば、全体をラミネートフィルム等のような有機高分子からなるフィルム14により被覆してあるのが好ましい。このフィルム14は、コンクリートとの密着性の良いものが、L型擁壁の機械的強度等の特性に影響を及ぼさないためには好ましい。
また、一体となった基板11、IC12及びアンテナ部13を、ビニール袋や密閉容器に収納する等としてもよい。
また、基板11、IC12及びアンテナ部13として、コンクリートに含まれる水分やアルカリ、養生の際に外部からコンクリート内に浸入する水分等に対して耐久性を有するものを用いてもよい。
なお、ICタグ3の替わりに、必要に応じてICカード(非接触通信媒体)等を用いてもよい。
【0045】
次に、本実施形態のL型擁壁の製造方法について図5〜図6に基づき説明する。
まず、型枠21〜24をL型擁壁の形状に組み立て、この型枠21〜24内に所定の生コンクリート25を打設し、この生コンクリート25の打設面25aから、ICタグ3を、このICタグ3のアンテナ部13が打設面25a近傍、かつ、一つの型枠21の内面21aの近傍に位置するように、生コンクリート25内に埋め込む。
ここでは、ICタグ3のアンテナ部13を、型枠21の内面21aに平行、もしくは内面21aに対して傾斜した状態で生コンクリート25内に埋め込む。
【0046】
このICタグ3の書き込み/読み取り時の感度及び安定性を考慮すると、ICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面を、型枠21の内面21aと平行とすることが好ましい。
また、ICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面を内面21aに対して傾斜した状態で埋め込む場合には、ICタグ3の書き込み/読み取り時の感度及び安定性を考慮すると、ICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面を、内面21aに対して45°以内とすることが好ましく、30°以内とすることがより好ましい。
【0047】
このICタグ3は、そのアンテナ部13のアンテナ面全体が、型枠21の内面21a(コンクリート体の表面)から3cm以内の領域に位置していることが好ましく、より好ましくは1cm以内の領域に位置していることである。つまり、このICタグ3のアンテナ部13のアンテナ面全体がコンクリート体1の側面から3cm以内の領域、好ましくは1cm以内の領域に位置していることが好ましい。
このICタグ3のアンテナ面全体の埋め込み位置を、型枠21の内面21aから3cm以内の領域とすることにより、このICタグ3のアンテナ面が型枠21の内面21aに対して3次元のいずれの方向に傾斜した場合であっても、識別情報の書き込み/読み取り時の感度、安定性が良くなる。
【0048】
このICタグ3の埋め込み深さは、型枠21〜24内に打設された生コンクリート25が硬化した時点で固定されていればよい。また、埋め込む深さは、ICタグ3に破損等の影響の無い程度に埋め込まれていればよく、ICタグ3の一端部の位置が打設面と略一致していればよい。
また、あまり深く埋め込むと、ICタグ3の破損、劣化等が生じ、信号の安定性も低下するという不具合が生じる虞があるので、必要により、ICタグ1の上端またはアンテナ部13の上端が打設面25aから5mm〜10mm程度の深さまで埋め込むことが好ましい。
ICタグ3の埋め込み深さを上記の範囲とすることにより、ICタグ3の破損、劣化等を防止し、また、信号の安定性も向上する。
【0049】
このICタグ3は、生コンクリート25の打設面25aに埋め込み易くするために、ICタグ3を所定の深さまで埋め込んだ際、基板11の端部のみが打設面25aから突出するように、基板11のみを長くしておくこともできる。
この際、埋め込み深さに合わせて、伸ばした基板11の端部に印を付けておけば、L型擁壁毎のばらつきもなく、簡易に所定の深さまでICタグ3を埋め込むことができる。
この打設面25aから突出した基板11の端部は、生コンクリート25が硬化した後、必要であれば簡易に切断することができる。
【0050】
また、ICタグ3をラッピングして使用する際は、ICタグ3を打設面25aから所定の深さまで埋め込んだ際、ラッピングのみの部分が打設面25aから突出するように、ラッピングのみの部分を長くしておくこともできる。ここでも、埋め込み深さに合わせて、伸ばしたラッピング部分に印を付けておけば、L型擁壁毎のばらつきもなく、簡易に所定の深さまでICタグ3を埋め込むことができる。
【0051】
この打設面25aから突出したラッピング部分は、生コンクリート25が硬化した後、必要であれば簡易に切断することができ、また、切断し易いように切り込みを形成しておいても良い。
また、袋、その他の容器にICタグを入れて使用する場合もラッピングの場合と同様である。
【0052】
このICタグ3には、打設前に、予め所定の生コンクリートに関する情報が書き込まれてあってもよく、また、ICタグ3を生コンクリート25に埋め込んだ後に所定の生コンクリートに関する情報を書き込んでもよい。また、ICタグ3には、所定のIDが予め書き込まれてあってもよく、またICタグ3を生コンクリート25に埋め込んだ後に所定のIDを書き込んでもよい。この情報とは、ID情報、使用したコンクリートに関する情報、製造するL型擁壁に関する等である。
次いで、この生コンクリート25に所定の温度にて所定の時間蒸気養生を施して硬化させ、次いで脱型し、本実施形態のL型擁壁とする。
【0053】
このL型擁壁のICタグ3に記録された情報をICタグリーダ/ライタ(非接触通信媒体書き込み/読み取り装置)を用いて非接触にて読み取り、この読み取った情報に基づきL型擁壁の管理を行う。
このICタグリーダ/ライタとしては、特に限定されないが、携帯可能なものが好ましい。その理由は、重量物であるL型擁壁を移動させることなく、工場の製造現場等で容易に情報の書き込み/読み取りができるからである。
【0054】
特に、製造工場では、毎日多数のL型擁壁を製造し、出荷している。このため、重量物であるL型擁壁を製造場所や保管場所から移動させて、ICタグ3の情報を読み取り、L型擁壁を管理することは困難である。このような場合、携帯可能なICタグリーダ/ライタを用いることにより、現場で簡易にL型擁壁を管理することができる。
また、L型擁壁を実際に設置した後には、設置現場にてICタグ3に書き込まれた情報を読み取り、あるいは新たな情報を書き加える必要があるので、携帯可能なICタグリーダ/ライタを設置現場に持ち込んで、非接触にて読み取り/書き込みを行う必要がある。
【0055】
このICタグ3に書き込まれた情報を非接触で読み取ることのできる距離は、ICタグリーダ/ライタのアンテナの大きさに左右される。しかし、携帯可能なICタグリーダ/ライタを用いる場合、あまり大きなアンテナのついたものは使用することができない。そこで、ICタグリーダ/ライタをL型擁壁に埋め込まれたICタグ3の近くに持っていくためには、ICタグ3がL型擁壁のどの位置に埋まっているか、すぐに探せる(分かる)ことが重要である。
【0056】
このL型擁壁では、コンクリート体1の打設面1b近傍にICタグ3が、そのアンテナ部13がコンクリート体1の側面1aと平行になるように埋め込まれているので、コンクリート体1のどの辺りにICタグ3が埋め込まれているかを、容易に推察することができる。
また、ICタグ3へのデータの書き込みは、データの改ざんを防止するために、システム上、書き込んだデータの修正ができず、データの追加のみができることが好ましい。
【0057】
以上により、L型擁壁のICタグ3に記録された情報を、携帯可能なICタグリーダ/ライタを用いて非接触にて読み取り、この読み取った情報を基にL型擁壁の管理を行うので、個々のL型擁壁に関する広範な情報を速やかに入手することができ、個々のL型擁壁の管理を簡便、正確かつ確実に行うことができる。
【0058】
次に、本発明のL型擁壁の管理方法の適用例として、2つの管理方法を挙げ、説明する。
【0059】
(管理方法1)
(1) L型擁壁及び生コンクリートに関する所定の情報を、ICタグリーダ/ライタを介してICタグに書き込む。この情報の書き込みは、生コンクリートへの埋め込み前でも埋め込み後でもよい。
a)L型擁壁及び生コンクリートに関する所定の情報を、ICタグリーダ/ライタに入力し、ICタグに書き込む。
b)L型擁壁及び生コンクリートに関する所定の情報を、サーバ、パソコン等に入力し、それをICタグリーダ/ライタに無線等で送信し、ICタグに書き込む。
(2) ICタグリーダ/ライタでICタグの情報を読み込み、出荷する。
(3) 納入先で、ICタグの情報を読み込み、正しい納入か否かを確認する。
(4) このL型擁壁を所定の位置に設置後、点検、補修時に、ICタグリーダ/ライタでICタグの情報を読み込む。
【0060】
この管理方法1によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)型枠に文字、番号等を記載する等の作業が不要になり、作業の効率化を図ることができる。また、間違いによるコンクリートと型枠番号との不一致等が解消され、管理の信頼性が向上する。
(2)型枠を外した際の、L型擁壁への文字、番号等の転記が不要になり、作業の効率化を図ることができる。また、転記ミスによるL型擁壁とコンクリートとの不一致等が解消され、管理の信頼性が向上する。
【0061】
(3)ICタグリーダ/ライタで、所定のL型擁壁を、簡易、正確、確実に識別することができる。
(4)ICタグリーダ/ライタとサーバ、パソコン等を無線等で接続すれば、IDを介して所定のL型擁壁に打設したコンクリートデータ(品質、材料等)、このL型擁壁のデータ(製造日、製造工場、製造ロット番号等)を簡易に確認することができる。
(5)情報に関するデータの保存、書き込みが簡易にできる。
【0062】
(6)ICタグに必要なデータが全て入っているため、携帯可能なICタグリーダ/ライタで、現場にてL型擁壁に関する情報をICタグから直接読み取ることができる。したがって、サーバ等と情報のやりとりをすることなく、その場で、すぐに必要な情報を把握することができる。
(7)L型擁壁に情報を書き込んだICタグが埋め込まれているので、データの管理に手間や費用をかけることなく、長期間経過後も現場で必要なデータを入手できる。その結果、長期間の品質のトレーサビリティを行うことができる。
【0063】
(管理方法2)
(1) 生コンクリートに関する所定の情報を、サーバ、パソコン等に保存する。
(2) L型擁壁に関する所定の情報を、サーバ、パソコン等に保存する。
(3) 生コンクリートに関する所定の情報、L型擁壁に関する所定の情報、それぞれに対応するID番号を、ICタグリーダ/ライタを介してICタグに書き込む。この情報の書き込みは、生コンクリートへの埋め込み前でも埋め込み後でもよい。
【0064】
(4) ICタグリーダ/ライタでICタグの情報を読み込み、出荷する。
(5) 納入先で、ICタグの情報を読み込み、正しい納入か否かを確認する。
(6) このL型擁壁を所定の位置に設置後、点検、補修時に、ICタグリーダ/ライタでICタグの情報を読み込み、生コンクリート及びL型擁壁に関する情報を保存したサーバ、パソコン等にアクセスすることにより、ID番号をもとに生コンクリート及びL型擁壁に関するそれぞれの情報を知ることができる。
この管理方法2においても、上記の管理方法1と同様の効果を奏することができる。
【0065】
以上説明した通り、本実施形態のL型擁壁によれば、識別する際に、各種データの書き込み/読み取りが可能なICタグ3を、L型擁壁に、所定の埋め込み方向、埋め込み位置、埋め込み深さにて埋め込むこととしたので、L型擁壁の識別に関する人為的ミスを防止することができ、L型擁壁への認識情報の記載等が不要となり作業の効率化を図ることができる。
このL型擁壁に埋め込んだICタグ3に、打設したコンクリートの品質データの書き込みを行うことで、L型擁壁の品質管理を更に確実に行うことができる。
【0066】
また、このL型擁壁を長期使用した場合、ICタグ3に記載された各種データを読み取ることで、L型擁壁のトレーサビリティを正確かつ短時間で実施することができる。
さらに、ICタグ3のデータは、携帯可能なICタグリード/ライタで読み取れるので、施工現場や設置位置においても、容易に情報の入手を行うことができる。
以上により、L型擁壁の識別や保守・管理を簡易、正確、確実に行うことができ、製造・在庫・出荷管理、トレーサビリティー等、様々な分野で活用することができ、その効果は非常に大きい。
【0067】
「第2の実施の形態」
図7は、本発明の第2の実施形態のコンクリート製品であるL型擁壁を示す断面図であり、本実施形態のL型擁壁が第1の実施形態のL型擁壁と異なる点は、第1の実施形態のL型擁壁では、薄板状のICタグ3を、コンクリート体1の打設面1b近傍に直接埋め込んだ構成であるのに対し、本実施形態のL型擁壁では、薄板状のICタグ3を、鉄筋2と生コンクリートを打設する型枠21の内面21aとの間隔を一定に保持するためのスペーサ(位置決め用部材)31に取り付けた点である。
【0068】
このスペーサ31は、型枠に生コンクリートを打設する際に、鉄筋2が型枠の内面に触れることの無いように設けられたもので、図7及び図8に示すように、格子状に配置された鉄筋2の接合部に嵌め込まれて固定される固定部32と、この固定部32から水平方向外方へ延びる一対の板状の位置決め部33、33と、位置決め部33、33の先端部近傍同士を接続して位置決め部33、33間の間隔を一定に保持する板状の接続部34とにより構成され、これら位置決め部33、33は、この鉄筋2を型枠21、22内に配置したときに型枠21の内面21aに当接させることで、この鉄筋2と内面21aとの間隔を一定に保持し続けることが可能である。
【0069】
ICタグ3は、接続部34の外側の面に取り付けることにより、そのアンテナ部がコンクリート体1の型枠21、22の1つの内面21aと平行とされている。これにより、ICタグ3の生コンクリートの打設面からの埋め込み位置も一義的に決まってくる。
このL型擁壁は、ICタグ3を鉄筋2の接合部のスペーサ31に取り付け、次いで、このICタグ3が取り付けられた鉄筋2をL型擁壁の型枠21、22内に配置し、次いで、この型枠21、22内に生コンクリートを打設し、硬化後、脱型することにより得られる。
【0070】
本実施形態のL型擁壁においても、第1の実施形態のL型擁壁と同様の効果を奏することができる。
しかも、ICタグ3を、鉄筋2に設けられたスペーサ31の接続部34の外側の面に取り付けたので、ICタグ3の取り付け位置が固定され、生コンクリート打設時に動いたり、アンテナの方向が変わったり等の虞もない。
また、スペーサ31の接続部34にICタグ3を取り付けたので、ICタグを取り付けるための治具等を新たに必要とせず、簡易に人の手でICタグを取り付けることができる。
【0071】
「第3の実施の形態」
図9は、本発明の第3の実施形態のコンクリート製品であるL型擁壁を示す断面図であり、本実施形態のL型擁壁が第2の実施形態のL型擁壁と異なる点は、スペーサの形状が異なる点である。
【0072】
このスペーサ41は、図10に示すように、嵌め込み用の切り込み42が軸線に沿って形成された小リング部43と、小リング部43から外側へ放射状に延びるリブ44、44、…と、リブの先端部近傍に接続され、これらのリブ44、44、…を相互に接続するとともに、嵌め込み用の切り込み45が軸線に沿って形成された大リング部46とにより構成され、これらリブ44、44、…は、この鉄筋2を型枠21、22内に配置したときに型枠21の内面21aに当接させることで、この鉄筋2と内面21aとの間隔を一定に保持し続けることが可能である。
【0073】
ICタグ3は、鉄筋2に嵌め込まれた複数のスペーサ41(図10では4個)それぞれのリブ44、44間の大リング部46の外周面に取り付けることにより、そのアンテナ部がコンクリート体1の型枠21の内面21aと平行とされている。これにより、ICタグ3の生コンクリートの打設面からの埋め込み位置も一義的に決まってくる。
このL型擁壁は、まず、鉄筋2の所定位置、例えば接続部近傍に所定の数のスペーサ41を嵌め込み、これらのスペーサ41、41、…それぞれのリブ44、44間の大リング部46の外周面にICタグ3を取り付け、次いで、このICタグ3が取り付けられた鉄筋2をL型擁壁の型枠21、22内に配置し、次いで、この型枠21、22内に生コンクリートを打設し、その後、硬化、脱型することにより得られる。
【0074】
本実施形態のL型擁壁においても、第2の実施形態のL型擁壁と同様の効果を奏することができる。
しかも、鉄筋2に所定の数のスペーサ41を嵌め込み、これらのスペーサ41、41、…それぞれのリブ44、44間の大リング部46の外周面にICタグ3を取り付けたので、ICタグを取り付けるための治具等を新たに必要とせず、簡易に人の手でICタグを取り付けることができる。
【0075】
「第4の実施の形態」
図11は、本発明の第4の実施形態のコンクリート製品であるボックスカルバートを示す斜視図であり、本実施形態のボックスカルバートにおいても、第1の実施形態のL型擁壁と同様、断面ロの字形の筒状のコンクリート体51の内部かつその外側の一側面51a近傍であり、このコンクリート体51の打設面51bの近傍でもある位置に、薄板状のICタグ3が埋め込まれ、このICタグ3は、そのアンテナ部のアンテナ面がコンクリート体51の外側の一側面51aと平行になるように埋め込まれている。
本実施形態のボックスカルバートにおいても、第1の実施形態のL型擁壁と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施形態のL型擁壁を示す斜視図である。
【図2】図1のA領域の断面図である。
【図3】ICタグを示す斜視図である。
【図4】図3のB−B線に沿う断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態のL型擁壁の製造方法を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施形態のL型擁壁の製造方法を示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態のL型擁壁を示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態のL型擁壁のスペーサを示す斜視図である。
【図9】本発明の第3の実施形態のL型擁壁を示す断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態のL型擁壁のスペーサを示す斜視図である。
【図11】本発明の第4の実施形態のボックスカルバートを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0077】
1 コンクリート体
1a 側面
1b 打設面
2 鉄筋
3 薄板状のICタグ
11 基板
12 IC
13 アンテナ部
14 フィルム
21〜24 型枠
21a 内面
25 生コンクリート
25a 打設面
31 スペーサ
32 固定部
33 位置決め部
34 接続部
41 スペーサ
42 切り込み
43 小リング部
44 リブ
45 切り込み
46 大リング部
51 コンクリート体
51a 一側面
51b 打設面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート体の1つの面の近傍に、薄板状の非接触通信媒体が埋め込まれてなることを特徴とするコンクリート製品。
【請求項2】
前記非接触通信媒体は、前記コンクリート体の打設面近傍、かつ、このコンクリート体の前記打設面以外の1つの面の近傍に埋め込まれていることを特徴とする請求項1記載のコンクリート製品。
【請求項3】
前記非接触通信媒体の一端部の位置は、前記コンクリート体の打設面と略一致していることを特徴とする請求項1または2記載のコンクリート製品。
【請求項4】
前記非接触通信媒体は、前記コンクリート体の内部に設けられた鉄筋の位置決め用部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1または2記載のコンクリート製品。
【請求項5】
前記非接触通信媒体のアンテナ部と前記1つの面との距離が3cm以内であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載のコンクリート製品。
【請求項6】
前記非接触通信媒体は、長さが150mm以内、幅が100mm以内であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載のコンクリート製品。
【請求項7】
前記非接触通信媒体は、可撓性を有する有機高分子からなる基板上に、情報の書き込み/読み取りが可能な集積回路及び前記アンテナ部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載のコンクリート製品。
【請求項8】
前記集積回路及び前記アンテナ部は、有機高分子からなるフィルムにより被覆されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項記載のコンクリート製品。
【請求項9】
前記非接触通信媒体に記録された情報は、前記コンクリート体の識別情報であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項記載のコンクリート製品。
【請求項10】
請求項1、2または3記載のコンクリート製品の製造方法であって、
コンクリート製品の型枠内に生コンクリートを打設し、
次いで、この生コンクリートの打設面から、薄板状の非接触通信媒体を、この生コンクリート内に埋め込み、
次いで、この生コンクリートを硬化し、次いで脱型してコンクリート製品とすることを特徴とするコンクリート製品の製造方法。
【請求項11】
請求項4記載のコンクリート製品の製造方法であって、
鉄筋に設けられた位置決め用部材に非接触通信媒体を取り付け、
次いで、この非接触通信媒体が取り付けられた鉄筋をコンクリート製品の型枠内に配置し、
次いで、この型枠内に生コンクリートを打設し、次いで、この生コンクリートを硬化し、次いで脱型してコンクリート製品とすることを特徴とするコンクリート製品の製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし9のいずれか1項記載のコンクリート製品を管理する方法であって、
前記コンクリート製品の非接触通信媒体に記録された情報を非接触通信媒体読み取り装置を用いて非接触にて読み取り、この読み取った情報を基に前記コンクリート製品の管理を行うことを特徴とするコンクリート製品の管理方法。
【請求項13】
前記非接触通信媒体読み取り装置は、前記非接触通信媒体からの情報の読み取り、前記非接触通信媒体への情報の書き込み、の双方を行う携帯可能な非接触通信媒体読み取り/書き込み装置であることを特徴とする請求項12記載のコンクリート製品の管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−137284(P2008−137284A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326131(P2006−326131)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【出願人】(506400812)ユーシーテクノロジ株式会社 (8)
【出願人】(593084797)
【Fターム(参考)】