説明

コンクリート製品の成型型枠

【課題】側枠を製品から離脱された位置で姿勢転換して成形面を作業者へ正対させることによって、成形面の掃除、剥離剤の塗布、金具の取り付け等を容易、迅速にしかも確実に行なうことができるコンクリート製品の成型型枠を提供すること。
【解決手段】側面に溝状の凹部が長手方向に形成されるコンクリート製品を成形する型枠であって、この型枠Aの側枠3は、上記溝状の凹部7に適合する溝形に形成されて、内部の空間8に側方より支持腕11を入り込ませ、この支持腕11の先端側へ枢軸12によって取り付けることにで、横向きの型組み姿勢と上向きの準備姿勢に転換ができるようにし、上記支持腕11の下部に設けられる取付部13は底盤2の下側より側方へ延出させたガイド19を進退する移動台17へ定着してあること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面に溝状の凹部を有するコンクリート製品を成形する型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、側面に凹凸のあるコンクリート製品を成型する型枠は、側枠の下部に水平ガイドを取り付け、この水平ガイドをベース1へ軸着したローラーに支持させることにより、型組み時は側枠を定盤側へ当接するように移動させ、型ばらし時は側枠を定盤から離隔するように移動させて、側枠の成形面を掃除したり離型剤を塗布したりする技術を採用している。(例えば特許文献1参照)
【0003】
しかしながら、上記の通り型ばらし時に側枠を定盤から離隔させるだけでは、製品が側面に溝状の凹部を要するH形矢板の場合は、側枠の成形面の上半分側は掃除や剥離材の塗布をし易い状態に置かれるが、下半分は手探りで掃除や剥離材の塗布を行わなければならない状態にあって、手間を掛けて作業しても掃除や塗布が不完全になり易いので、側枠を別の作業場所へ移して下向きにして成形面を作業者へ正対させるようにすることで完全な成形面の掃除や離型剤の塗布ができるようにしている。しかしながら、側枠を移動したり、戻したりするにはかなりの時間がかかって、移動させる装置や側枠の置き場所を確保しなければならないという問題点がある。
【特許文献1】特許第3283776号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記問題点を解消し、側枠を製品から離脱された位置で姿勢転換して成形面を作業者へ正対させることによって、成形面の掃除、剥離剤の塗布、金具の取り付け等を容易、迅速にしかも確実に行なうことができるコンクリート製品の成型型枠を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明に係るコンクリート製品の成型型枠は、下記の構成を採用することを特徴とする。
【0006】
請求項1に係る発明は、側面に溝状の凹部が長手方向に形成されるコンクリート製品を成形する型枠であって、この型枠の側枠は、上記溝状の凹部に適合する溝形に形成されて、内部の空間に側方より支持腕を入り込ませ、この支持腕の先端側へ枢軸によって取り付けることにで、横向きの型組み姿勢と上向きの準備姿勢に転換ができるようにし、上記支持腕の下部に設けられる取付部は定盤の下側より側方へ延出させたガイドを進退する移動台へ定着してあること。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記支持腕の先端側へ側枠を取り付ける枢軸の位置が側枠の重心より下側に設定されていること。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記側枠には空間内において側枠が横向きの型組み姿勢を取るときと、上向きの準備姿勢を取るとき支持腕に係合して側枠を制止する制止部材が取り付けられている。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記側枠を上下に分割形成して、接合部となる溝底の部分に寸法が異なる複数のスペーサーを挟み変えることで側枠の高さを変更できるようにしたこと。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明の効果 製品から側枠が離脱した準備位置で、側枠を姿勢転換してその成形面を作業者へ正対させるから、側枠を別の場所へ移動させたり、戻したりする必要がなくなって、これに要する時間と場所と設備とを省くことができて、しかも、成形面の掃除及び剥離剤の塗布を作業者が楽な姿勢で容易迅速に行えるだけでなく、成形面へインサート金物等を取り付ける場合も、作業をし易いため確実な取り付けを容易迅速に行なうことができる。
【0011】
請求項2に係る発明の効果 側枠を支持腕へ取り付ける枢軸の位置を側枠の重心よりも下側へずらすと、枢軸を中心とした側枠の回動が軽快に行われるため、区分形成される側枠の所要数を連動回動させて、一挙に型組み姿勢から準備姿勢へ、または準備姿勢から型組み姿勢へと姿勢変換することができるだけでなく、枢軸を側枠の重心位置より下側にずらして設けると、側枠が準備位置にあるとき側枠と製品との間隔が広く取れて、ここに作業し易いスペースを確保することができる。
【0012】
請求項3に係る発明の効果 側枠を横向きに転換する時は、制止部材が支持腕の先端横側に係合し、下向きに転換する時は、制止部材が支持腕の上側へ係合して側枠を制止するため、側枠を無造作に回動しても型組み位置と準備位置へ正確に位置付けしてこの位置に安定させて置くことができる。
【0013】
請求項4係る発明の効果 側枠を上下に分割形成して、溝底の部分設けた接合部に寸法が異なる複数のスペーサーを挟み変えるようにすれば、同じ側枠によって高さが異なる幾種類もの側枠を形成して、異高製品を経済的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明に係るコンクリート製品の成形型枠の実施形態を図面について説明する。
【実施例1】
【0015】
以下に本発明に係るコンクリート製品の成型型枠の実施形態を図面に付いて説明する。
【0016】
図1〜図4において符号Aは、コンクリート製品の成型型枠を示す。この成形型枠Aは、上記各図に示す通り台部1の上に設けた底盤2と、この底盤1の両側に配設した側枠3、3と、側枠3、3の両端末を閉塞するように配置した妻枠4、4とで図1に示す通りの成形空間5を形成させ、この成形空間5へ図2に示す通りコンクリートを打設して製品6を成型する。
【0017】
上記側枠3、3は、製品6が図1、図8に示す通りH形矢板である場合は、製品6の両側に図8に示す通り溝状の凹部7、7を形成するものであるから、この凹部7、7に適合する溝形に形成して内部には空間8、8を存在させ、この空間8、8の開口部の上側及び下側にそれぞれ縁部9、9を設け、これら縁部9、9の外側には補強枠10、10を付設してある。なお、この側枠3、3は図5に示す区分線イ−イで例えば1区分3mに分割形成して、移動や姿勢の転換を個別または連動して行えるようにする。
【0018】
図1〜図4において符号11、11は、側枠3、3を支持する支持腕を示す。この支持腕11、11は、側枠3、3の空間8、8へ開口側から先端が空間8、8の中間付近へ達するように入り込ませて、先端には長手方向に延びる枢軸12、12を支持させ、下側には後記する進退台へ取り付ける取付部13、13を連設してある。
【0019】
同図において符号14、14は、上記側枠3、3の空間8、8内に所定の間隔で取り付けられた補強リブを示す。この補強リブ14、14は、側枠3、3の重心位置より下側へずらした位置に回動中心となる軸受15、15を図6、図7に示す通り取り付け、この軸受15、15へ支持腕11、11に支持される枢軸12、12を嵌合することで、側枠3、3が枢軸12、12を中心に回動して、図2に示す横向きの型組み姿勢と図3に示す下向きの準備姿勢とを採ることができるようにしてある。
【0020】
同図において符号16、16は、測枠3、3が枢軸12、12を中心とする回動で型組み姿勢または準備姿勢を採るとき、側枠3、3の回動を制止してこの状態に保持させる制止部材を示す。この制止部材16、16は、図1〜図3、図6、図7に示す通りのコ字形材を用いて、側枠3、3が型組み姿勢を採るときは、背面の下端部が図1、図2に示す通り支持腕11、11の先端へ当接し、準備姿勢を取るときは、背面全体が図3に示す通り支持腕11、11の上面へ乗るように補強リブ14、14へ固定されている。
【0021】
同図において符号17、17は、上記支持腕11、11を取り付けて進退作動させる移動台を示す。この移動台17、17は外端の上側へ支持腕11、11の取付部13、13を定着し、側面には一対の車輪18、18を適当な間隔で取り付けて、これら車輪18、18を上記台部1から側枠3、3の準備位置側へ延出させたガイド19
、19へ転動させるようにしてある。従って、車輪18、18の転動によって移動台17、17を軽快に進退させて、側枠3、3を型組み位置及び準備位置へ位置付けすることができる。
【0022】
図8において符号20、20は、製品5の左側端と右側端とに互い違いに形成した接合切欠を示す。この接合切欠20、20は、製品6を並列接合する際に図8の円内に一部分を示す通り、相互の端部を噛み合せて正確で強固な接合が行われるようにするものであって、この接合切欠20、20にはその形状に適合するL形金具21、21をインサートすることによって接合の際の損壊の防止等を図る。
【0023】
上記L形金具等21、21は、製品の成型時には位置ずれや離脱を生じないように側枠3に設けた接合切欠の成形部22、22に支持されるが、製品が成形されて側枠3、3を離脱する時は、接合切欠の形成部22、22より容易に離脱しなければならない。このため、L形金具等21、21の取り付けは、図5に示す通り側枠3に設けた接合切欠の形成部22にL形金具等21を添え付けて、L形金具等21と接合切欠の形成部22とにあけた通孔23へ、図5に示す変形脚ピン24または図5の円内に示す割りピン25を挿すことで製品の脱型で離脱するように取り付ける。
【0024】
図1〜図4、図6、図7において符号26、26は、側枠3、3を上下に2分割形成した場合の接合部を示す。この接合部26、26は側枠3、3の溝底の部分に長手方向の軸心と平行するように形成してあり、これら接合部26、26の間へ高さが異なるスペーサー26を挟んで接合部26、26とボルト28で接合することで、同じ側枠3、3で高さが異なる幾種類もの側枠3、3が得られるようにしたものである。このように側枠3の高さを変化させる場合は、これに応じて妻枠4の高さも変化させなければならないが、妻枠4の高さをスペーサー26で設定される側枠3の最大寸法に合わせて置けば、妻枠4を変更する必要がなくなり便利である。
【0025】
図1〜図3、図6、図7において符号29、29は、測枠3、3をクレーン等で動かすための操作金具を示す。この操作金具29、29は、コ字形に形成して下側片29a、29aを補強材9と側枠3とに跨って取り付け、上側片29b、29bを側枠3の中央部の上方まで延出させて、先端に孔30、30をあける。そして、孔30、30へクレーン等の曳行索に取り付けた鉤(図面省略)を掛け、底盤2へ接近する方向または離隔する方向へ曳行することで、測枠3、3の進退移動と型組み姿勢と準備姿勢との変換が行なわれるようにする。
【0026】
図6、図7において符号31は、測枠3を人力で動かすための操作握りを示す。この操作握り31は、測枠3に取り付けた補強リブ13へ取付材32で取り付けられて側枠3の開口部に存在するので、この操作握り31を持って側枠3を底盤2へ接近する方向または離隔する方向へ移動させることができる。
【0027】
上記構成のコンクリート製品の成型型枠Aは、図1に示す通り側枠3、3を横向きの型組み姿勢として底盤2側へ移動させ、下側の補強材9が底盤2の側面へ当接した状態において固定して、側枠3、3の両端末を図5に示す通り妻枠4、4によって閉塞する型組みを行えば、型枠A内には図1に示す通りの成形空間5が形成される。そこで、この成形空間5へコンクリートを打設すると図2に示す通りの製品6が成形される。
【0028】
上記の通り形成された製品6がコンクリートの硬化で脱型できるようになれば、側枠3、側3の固定を解いて操作金具29に図面には示してないクレーン等の曳行索の鉤を掛けて、側枠3、3の準備位置へ向かって曳行させれば、車輪18の転動により移動台17が移動して、側枠3を図3に示す通り準備位置に位置付けする。
【0029】
側枠3が準備位置に位置付けされたら、操作金具29を更に矢印や方向へ引くと、側枠3は枢軸12を中心とする回動を起して、開口部が下側を向くように転換されたとき、制止部材16が図4に示す通り支持腕11の上面へ乗って側枠3をこの状態に保持して準備姿勢を採らせる。
【0030】
上記の通り、側枠3が準備姿勢を採るときは、側枠3の成形面の総てが作業者に正対することになって、しかも、側枠3に設けた枢軸12の軸受15を側枠3の重心よりも下側にずらしてあれば、側枠3と製品との間隔が広く取れてこの間隔へ入っての作業ができる。従って、側枠3の成形面の掃除及び離型薬の塗布をむらなく確実に行うことが容易にできるし、また、側枠3に設けた接合切欠21へ図6に示す通り弾性脚ピン24または割りピン25等によってL形金具21を取り付ける作業も容易に確実に行なうことができる。
【0031】
上記の通り側枠3の成形準備でできたら、操作金具29の孔30に図面には示してないクレーン等の曳行索の鉤を掛けて上方へ引き上げると、側枠3は枢軸12を中心に回動して横向きの型組み姿勢に転換され、これと同時に制止部材16が支持腕11の先端面に係合して回動を止めるため型組み姿勢に保持する。従って、この状態で操作金具29を型組み位置へ向かって曳行させれば、車輪18の回動による移動台17の移動で、側枠3は図1に示す通り型組み位置へ達して底盤2に接合されるから、その両端末を妻枠4で閉塞させれば、成形空間5を有する型枠Aの形成が簡単に行なわれる。
【0032】
なお、本発明の型枠Aは、側枠3の高さを変化させる必要があるときは、接合部26、26を分離させて、この接合部26、26の間へ図7に示す寸法のスぺーサー27か、図8に示す寸法のスペーサー27を挟んで接合部26、26とボルト27で結合すれば、図7、図8に一例を示す通り同じ側枠3で高さが異なる幾種類もの側枠3を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係るコンクリート製品の成型型枠は、護岸、土留等を行うH形コンクリート矢板等の製造に適する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るコンクリート製品の成型型枠のコンクリートを打設する前の断面図。
【図2】同上のコンクリート打設後の断面図。
【図3】製品から側枠を離脱した状態の説明図。
【図4】側枠を準備位置へ移動させて準備姿勢に転換した説明図。
【図5】成形型枠の全体の平面図。
【図6】側枠の接合切欠の形成部へL形金具を取り付けた状態の説明図。
【図7】(a)(b)は、側枠の高さをスペーサーで変更する場合の説明図。
【図8】(a)(b)は、型枠で成形した製品と、この製品の接合部の一部分とを示す説明図。
【符号の説明】
【0035】
A 型枠
3 側枠
7 凹部
8 空間
11 支持腕
12 枢軸
13 取付部
17 移動台
19 ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に溝状の凹部が長手方向に形成されるコンクリート製品を成形する型枠であって、
この型枠の側枠は、上記溝状の凹部に適合する溝形に形成されて、内部の空間に側方より支持腕を入り込ませ、この支持腕の先端側へ枢軸によって取り付けることで、横向きの型組み姿勢と上向きの準備姿勢に転換ができるようにし、
上記支持腕の下部に設けられる取付部は定盤の下側より側方へ延出させたガイドを進退する移動台へ定着してある
ことを特徴とするコンクリート製品の成型型枠。
【請求項2】
上記支持腕の先端側へ側枠を取り付ける枢軸の位置が側枠の重心より下側に設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート製品の成型型枠。
【請求項3】
上記側枠には、空間内において側枠が横向きの型組み姿勢を取るときと、上向きの準備姿勢を取るときに、支持腕に係合して側枠を制止する規制部材が取り付けられている
ことを特徴とする請求項1及び請求項2に記載のコンクリート製品の成型型枠。
【請求項4】
上記側枠を上下に分割形成して、接合部となる溝底の部分に寸法が異なる複数のスペーサーを挟み変えることで側枠の高さを変更できるようにした
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のコンクリート製品の成型型枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−196546(P2007−196546A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18597(P2006−18597)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000143765)株式会社佐藤工業所 (12)
【Fターム(参考)】