コンクリート製品の搬送敷設装置
【課題】操縦性と取扱性を大幅に改善するコンクリート製品搬送敷設装置を提供する。
【解決手段】一対の後輪12を具備した運転走行部10と、該運転走行部の前部に接続し、伸縮フレーム22を有する主フレーム21及び該主フレームに搭載した上下動自在のテーブル24を有するコンクリート製品荷役部20と、荷役部の前端で昇降可能に設け、前輪41を具備した乗越え機構30とを具備し、前記主フレームを運転走行部の前部に回動不能に接続し、前記一対の後輪及び前輪が自走可能でかつ操舵可能とする。
【解決手段】一対の後輪12を具備した運転走行部10と、該運転走行部の前部に接続し、伸縮フレーム22を有する主フレーム21及び該主フレームに搭載した上下動自在のテーブル24を有するコンクリート製品荷役部20と、荷役部の前端で昇降可能に設け、前輪41を具備した乗越え機構30とを具備し、前記主フレームを運転走行部の前部に回動不能に接続し、前記一対の後輪及び前輪が自走可能でかつ操舵可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えばボックスカルバート、大型ヒューム管、推進管、分割式コンクリート管等のコンクリート製品を運搬して敷設する搬送敷設装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の搬送敷設装置はコンクリート製品を搭載する荷役部と、荷役部を走行させる走行部とを具備していて、コンクリート製品を正確な位置に据付ける際、或いは蛇行した搬送経路に沿って走行する際に、搬送敷設装置の最小旋回半径が大きく影響する。
【0003】
図12,図13に示すように最小旋回半径を小さくするため、荷役部80と走行部90との間を鉛直のピン92で連結したピンヒンジ構造の搬送敷設装置が特許文献1に開示されている。
荷役部80はその両端部に昇降自在で左右一対の前輪81及び後輪82を具備し、走行部90は自走用の左右一対の駆動輪91を具備している。
荷役部80は保持部89を具備していて、保持部89が据付け予定のコンクリート製品Aの底面を保持することで荷役部80に搭載し得るようになっている。
さらに荷役部80と走行部90との間には平面ハ字形に左右一対の操舵用シリンダ93が配設してあって、駆動輪91の操舵に合わせた一対の操舵用シリンダ93の伸縮操作により荷役部80の旋回半径を制御する。
【0004】
またコンクリート製品Aの据付けに対応するため、荷役部80の前端部にはコンクリート製品の底部を乗り降りするための乗越え機構が設けてある。
特許文献1に記載の乗越え機構は、荷役部80の前端部に鉛直に設けた複数のシリンダ81a,83aと、各シリンダ81a,83aの下端に設けた前輪81及び補助前輪83とからなり、コンクリート製品の底部を乗り降りする際に各シリンダ81a,83aが交互に伸縮して前輪81と補助前輪83が昇降する。
【0005】
また鉛直のシリンダによらない他の乗越え機構が特許文献2,3に開示されている。
図14に示すように特許文献2に記載の乗越え機構は、荷役部80の前端部に支軸85を介して回転可能に枢支した三叉状の車輪保持板84と、車輪保持板84の一部に設けた前輪81及び補助前輪83とよりなり、荷役部80と車輪保持板84の間に設けたシリンダS1の伸縮により前輪81と補助前輪83が昇降する。
【0006】
図15に示すように特許文献3に記載の乗越え機構は、荷役部80の前端に共通の支軸85を介して回転可能に枢支した二つの車輪保持板86,87と、各車輪保持板86,87の自由端に設けた左右一対の前輪81及び左右一対の補助前輪83とよりなり、荷役部80と各車輪保持板86,87の間に設けた各シリンダS2,S3の伸縮により前輪81と補助前輪83が個別に昇降する。
【0007】
一般に一台の搬送敷設装置で複数サイズのコンクリート製品Aに対応することが望ましく、これを実現するためには、乗越え機構の全高を低く抑えて乗越え機構がコンクリート製品Aの上部に衝突しないようにする必要がある。
その一方で、乗越え機構がコンクリート製品Aの底部を乗り降りするためには、前輪81及び補助前輪83をコンクリート製品Aの底部厚以上の高さまで昇降させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−132331号公報
【特許文献2】特開2002−293496号公報
【特許文献3】特開2003−182987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の搬送敷設装置にはつぎのような問題点があった。
(1)特許文献1に記載された搬送敷設装置は、走行部90と荷役部80の間がピンヒンジで連結されているため、荷役部80の安定性を確保するために前輪81、後輪82及び補助前輪83が、それぞれ左右二輪で合計6輪を有するため、装置コストが高くなる。
(2)特許文献1に記載された搬送敷設装置は、走行部90と荷役部80がピンヒンジ構造で連結されているため、走行部90で前進操縦をするには進行方向に対してハンドルを逆に切らなければならない。
例えていえば、大型トレラー車両を後進運転するときと同じように、荷役部80を右に進行させたいときは走行部90を左向きに操舵しなければならず、熟練した高度の操縦能力が求められ、誰でも簡単に運転することができない。
(3)特許文献1に記載の搬送敷設装置は、ピンヒンジ構造でない装置と比べて旋回半径を小さくできるものの、例えば進行方向に対して直角方向へ向けた横移動ができない。
そのため、据え付けの際、コンクリート製品の左右方向の位置を調整するために、搬送敷設装置の前後進とハンドルの切り返しを繰り返し行う必要があり、左右方向に向けた敷設位置の微調整も難しい。
(4)荷役部80の前端部にシリンダを鉛直に配置した特許文献1に記載の乗越え機構は、両前輪81,83の昇降距離を確保するために、シリンダ81a,83aの最低全長が長くなって乗越え機構の全高が高くなる。
コンクリート製品のサイズによっては、荷役部80の上方へ突出したシリンダ81a,83aの上部が衝突するため、一台の搬送敷設装置で搬送できるコンクリート製品のサイズ数が少数に限られる。
(5)特許文献2,3に記載された乗越え機構は、シリンダS1〜S3を斜めに配置することで、シリンダS1〜S3の全長が乗越え機構の全高に及ぼす影響を小さく抑えられる利点がある。
その一方で、車輪保持板84,86,87及び前輪81の支軸85を中心とした昇降半径は、機構上、支軸85からの直線距離よりも小さくすることができない。
そのため、支軸85を中心に昇降する車輪保持板84,86,87の一部、又は前輪81が荷役部80の上方へ向けて飛び出すために、乗越え機構の全高が高くなる。
したがって、特許文献2,3に記載された乗越え機構を具備した搬送敷設装置においても、搬送できるコンクリート製品のサイズ数が少数に限られる。
【0010】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは少なくともつぎのひとつの搬送敷設装置を提供することにある。
<1>熟練した高度の操縦能力を必要とせずに、誰でも簡単に操縦できること。
<2>コンクリート製品の左右方向の位置合わせを簡単に行えること。
<3>乗越え機構の全高を低く抑えて一台の搬送敷設装置で搬送できるコンクリート製品のサイズ数が増えること。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の第1発明は、一対の後輪を具備した運転走行部と、該運転走行部の前部に接続し、伸縮フレームを有する主フレーム及び該主フレームに搭載した上下動自在のテーブルを有する荷役部と、荷役部の前端で昇降可能に設け、前輪を具備した乗越え機構とを具備し、テーブルに搭載してコンクリート製品を搬送する搬送敷設装置であって、前記主フレームが運転走行部の前部に回動不能に接続し、前記一対の後輪及び前輪が自走可能でかつ操舵可能であることを特徴とする。
本願の第2発明は、前記第1発明において、前記乗越え機構が荷役部のフレームに下向きに設け、伸縮自在の中間支持脚と、前輪を有する前輪走行部と、荷役部のフレーム前端と前記前輪走行部の間に介装し、前記中間支持脚の伸縮に対応して前輪走行部を昇降する昇降部とを具備し、前記昇降部が伸縮フレームの前部と前輪走行部の後部との間に上下に回動可能に連結したリンク機構と、伸縮フレームの前部と前輪走行部の後部との間に揺動可能に枢支した昇降シリンダとを具備することを特徴とする。
本願の第3発明は、前記第1又は第2発明において、一対の後輪及び前輪が最大で左右90度の範囲の操舵が可能であることを特徴とする。
本願の第4発明は、前記第1乃至第3発明の何れかにおいて、コンクリート製品が両端を開放したコンクリート製の筒体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、下記の効果のうち少なくとも何れか一つを得ることができる。
<1>ピンヒンジ構造を採用せずに、荷役部の主フレームを運転走行部に固定したことにより、搬送敷設装置全体の剛性を高めることができる。
そのため、図12,13に示した従来の搬送敷設装置の後輪82を省略することができる。
さらに荷役部の主フレームを運転走行部に固定してあるので、走行する際に逆方向へハンドルを操舵する必要がなくなり、熟練した高度の操縦能力を必要とせずに、誰でも簡単に搬送敷設装置を運転することができる。
<2>従来はコンクリート製品の芯合せのために搬送敷設装置の前後進とハンドルの切り返しを繰り返し行う必要があった。
本発明に係る搬送敷設装置では、後輪と共に前輪を駆動可能で、かつ操舵可能に構成したことにより、その場で搬送敷設装置の横移動が可能となるため、コンクリート製品の芯合せを簡単で正確に行うことができる。
<3>本発明に係る搬送敷設装置は、乗越え機構の全高をコンクリート製品の最小サイズに対応できるように低く抑えている。
そのため、従来と比べて一台の搬送敷設装置で搬送できるコンクリート製品のサイズ数を大幅に増やすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る搬送敷設装置のモデル図
【図2】図1におけるIIの矢視図
【図3】荷役部の一部を破断した乗越え機構の斜視図
【図4】荷役部の一部を破断した乗越え機構の側面図
【図5】搬送敷設装置の作用の説明図
【図6】搬送敷設装置の作用の説明図
【図7】搬送敷設装置の作用の説明図
【図8】搬送敷設装置の作用の説明図
【図9】搬送敷設装置の作用の説明図
【図10】搬送敷設装置の作用の説明図
【図11】搬送敷設装置の作用の説明図
【図12】従来の搬送敷設装置のモデル図
【図13】図12に示した従来の搬送敷設装置の平面図
【図14】従来の搬送敷設装置の乗越え機構のモデル図
【図15】従来の搬送敷設装置の他の乗越え機構のモデル図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に係るコンクリート製品の搬送敷設装置について説明する。
また説明にあたり、搬送敷設装置の前進側を「前」、後進側を「後」、搬送敷設装置の直進に対して交差方向を「左右」と定義して説明する。
搬送対象であるコンクリート製品Aは両端を開放したコンクリート製の筒体で、例えばボックスカルバート、大型ヒューム管、推進管、分割式コンクリート管等を含む。
【0015】
<1>搬送敷設装置
図1,2に示すように、本発明に係る搬送敷設装置はコンクリート製品を搭載して運搬するとともに、据付現場でコンクリート製品Aを敷設するための装置で、運転走行部10と、該運転走行部10に一体に接続した荷役部20と、荷役部20の前端で昇降可能に設けた乗越え機構30とを具備する。
【0016】
本発明に係る搬送敷設装置は、前後の走行輪を個別に自走可能でかつ操舵可能に構成して旋回半径を小さくしたことと、乗越え機構30にリンクを適用して乗越え機構30の全高を低く抑えたことにある。
以降に搬送敷設装置の主要部について詳述する。
【0017】
<2>運転走行部
運転走行部10は搬送敷設装置の走行制御機能と、荷役部20の制御機能と、乗越え機構30の制御機能を併有した部位である。
【0018】
<2.1>運転操作パネル
運転走行部10は運転操作パネル11を具備している。
運転操作パネル11に設けた複数の操作用のハンドル、レバー、ボタン類を操作することで、搬送敷設装置の走行操作(前後進の切換え、変速、停止、操舵等)と、荷役部20におけるコンクリート製品Aの昇降操作と、乗越え機構30による乗越え操作をそれぞれ個別に、又は同時に制御できるように構成されている。これらの制御は周知の電気制御及び/又は油圧制御により行うことが可能である。
【0019】
<2.2>駆動源
また蓄電池、発電機、或いは油圧設備等の駆動源は、運転走行部10に搭載するか、或いは運転走行部10から分離して設置してもよい。
【0020】
<2.3>後輪
さらに運転走行部10は左右一対の後輪12,12を有している。
後輪12,12は図外の電動又は油圧モータ等の駆動源の駆動力を受けて前進走行及び後進走行が可能で、且つ操舵可能な車輪で、例えば最大で左右90度の範囲の操舵が可能である。
【0021】
<3>荷役部
荷役部20はコンクリート製品Aに内挿して搭載する部位で、運転走行部10の前面から水平に延設した主フレーム21と、主フレーム21の伸縮可能に内挿した伸縮フレーム22と、複数の荷役用シリンダ23を介して主フレーム21に昇降可能に搭載したテーブル24と、主フレーム21の前端部で左右両側に伸縮自在に設けた中間支持脚25とを具備する。
主フレーム21はコンクリート製品Aの全長以上の長さを有する。
【0022】
<3.1>フレーム
主フレーム21は運転走行部10の前面に回動不能に固定してある。
ピンヒンジ構造を採用せずに、主フレーム21を運転走行部10に固定したのは、搬送敷設装置全体の剛性を高めて車輪数の削減を図るとともに、走行する際に逆方向へハンドルを操舵するのを回避して、熟練した高度の操縦能力を必要とせずに、誰でも簡単に搬送敷設装置を運転できるようにするためである。
【0023】
伸縮フレーム22は主フレーム21内に配備した油圧シリンダや歯車機構等の公知のスライド機構により主フレーム21に対して伸縮を可能としている。
【0024】
<3.2>荷役用シリンダ
テーブル24の下面を支持する複数の荷役用シリンダ23は、所定の間隔を隔てて両フレーム21,22を縦向きに貫挿して立設してあって、テーブル24の上下の高さ調整が可能である。
荷役用シリンダ23が貫挿する伸縮フレーム22には切欠22aを形成していて、荷役用シリンダ23が伸縮フレーム22の伸縮に干渉しないようになっている。
【0025】
荷役用シリンダ23は複数あるコンクリート製品Aの規格サイズのなかで、内部空間高(内高)が最小サイズのコンクリート製品Aに対応できるようにストロークの短いシリンダで十分である。
荷役用シリンダ23の全長を短くするのは、後述するように乗越え機構30の全高を低くすることに対応するためである。
荷役用シリンダ23を最小サイズのコンクリート製品Aに対応可能な寸法に設定しておけば、テーブル24上に嵩上用のスペーサ部材を搭載するだけの簡単な対策で、荷役用シリンダ23のストローク長を超えた大型のコンクリート製品Aでも搭載が可能となる。
【0026】
<3.3>中間支持脚
主フレーム21の前端部の左右両側には、油圧シリンダ等からなる中間支持脚25,25が縦向きに配設してある。
中間支持脚25は走行機能を持たず、通常は収縮状態にあり、乗越え機構30と協働してコンクリート製品Aを乗り越えるときに伸縮作動する。
【0027】
<4>乗越え機構
コンクリート製品の据付けに対応するため、伸縮フレーム22の前端部にはコンクリート製品の底部を乗り降りする乗越え機構30が設けてある。
乗越え機構30は主フレーム21の前端部に設けた上記中間支持脚25と、前輪走行部40と、前輪走行部40を昇降する昇降部50とを具備する。
【0028】
<4.1>前輪走行部
前輪走行部40は前輪41と、電動又は油圧モータ等を内蔵した駆動部42を有している。
前輪41は前進走行及び後進走行が可能で、且つ操舵可能な車輪で、例えば最大で左右90度の範囲の操舵が可能である。
後輪12及び前輪41にエンコーダを組み込むと、より正確な角度の操舵が可能である。
【0029】
後輪12と共に前輪41を操舵可能に構成したのは、搬送敷設装置の旋回半径を非常に小さくすることと運転操作を簡単にするためであり、後輪12と共に前輪41を駆動式に構成したのは、搬送敷設装置の前側及び/又は後側を左右同一方向、又は異方向へ向けて走行させることで、コンクリート製品を敷設するときの位置調整性能を高めるためである。
【0030】
尚、前輪41は単輪で構成することが望ましいが複輪で構成してもよい。
走行時の安定性や旋回半径等を考慮すると、後輪二輪と前輪一輪の三輪構成が望ましい。
【0031】
<4.2>昇降部
図3,4に示すように、伸縮フレーム22の前部と前輪走行部40の後部との間に配設した昇降部50は、複数のリンク51と昇降シリンダ52とを具備している。
【0032】
<4.2.1>リンク機構
伸縮フレーム22の前部の前面板26と、駆動部42の後部に設けた後面板43の対向面にはブラケット27,44が突設してあって、複数のリンク51の両端が水平ピン31,32を介して枢支してある。
複数のリンク51は前面板26側の水平ピン31を中心として上下に回動可能である。
伸縮フレーム22と前輪走行部40との間に連結する複数のリンク51を多段的に配置したのは、前輪走行部40の水平性を維持した状態で昇降させるためである。
【0033】
<4.2.2>昇降シリンダ
前面板26の中央上位と後面板43の中央下位にはそれぞれブラケット28,45が突設してある。
昇降シリンダ52はその本体52aを前面板26のブラケット28に軸支した支軸33で上下に向けて揺動可能に枢支し、ロッド52bの先端と後面板43のブラケット56との間を水平ピン34で連結している。
【0034】
したがって、昇降シリンダ52を収縮操作すると、伸縮フレーム22の前端で前輪走行部40が持ち上げられて浮上し、昇降シリンダ52を伸長操作すると、伸縮フレーム22の前端で前輪走行部40が降下する。
昇降シリンダ52の伸長量は前輪41の着地高さに応じて制御可能である。
【0035】
相対向する伸縮フレーム22と前輪走行部40の対向面に昇降シリンダ52を上下の揺動可能に配設したのは、昇降シリンダ52の本体52aの高さを低く抑えるためである。
乗越え機構30を上昇したときに路床面Bから乗越え機構30の最上端までの高さは、最小サイズのコンクリート製品Aの天井部に衝突しない寸法に設定しておく。
すなわち、昇降部50をリンク機構と傾斜した昇降シリンダ52の組合せで構成したのは、コンクリート製品Aの内空が高さ方向に狭小であっても昇降部50が衝突せずに内部へ進入させるためである。
【0036】
[作用]
次に図5〜図11を参照しながら搬送敷設装置を用いたコンクリート製品A1の敷設方法について説明する。
【0037】
<1>荷役部の進入
図5〜図7は運転走行部10の運転操作パネル11を操作して搬送予定のコンクリート製品A1の後方から搬送敷設装置の走行によって、乗越え機構30及び荷役部20をコンクリート製品A1内に進入させるまでの工程を示す。
【0038】
<1.1>前輪の浮上
詳細に説明すると、搬送敷設装置を路床面Bに載置したコンクリート製品A1へ接近して停止した後、中間支持脚25を伸張して路床面Bに着地させる。
つぎに昇降部50を上昇操作して、前輪41がコンクリート製品A1内の底部に衝突しない高さまで浮上させる。
このとき、搬送敷設装置の重量は床面Bに着地した後輪12及び中間支持脚25で支持する。
【0039】
<1.2>前輪の内部着地
前輪41がコンクリート製品A1内に進入するまで、伸縮フレーム22を伸長し、昇降部50を降下操作して前輪走行部40をコンクリート製品A1内の底部内面に着地させる。
中間支持脚25を収縮して、搬送敷設装置の重量を後輪12と前輪41で支持する。
【0040】
<1.3>内部移動
図6に示すように後輪12及び前輪41を前進駆動して乗越え機構30及び荷役部20をコンクリート製品A1内に進入させる。
このとき、テーブル24がコンクリート製品A1に衝突しないよう、荷役用シリンダ23は収縮状態にある。
【0041】
路床面Bに着地した後輪12とコンクリート製品A1の底面に着地した前輪41を前進駆動するにあたり、前輪41を停止し、後輪12の前進駆動に合わせて伸縮フレーム22を収縮させ、伸縮フレーム22が収縮を完了した時点で後輪12とともに前輪41を前進駆動するとよい。
【0042】
<1.4>前輪の外部着地
前輪41がコンクリート製品A1の図面右方の端部近くに達したら、搬送敷設装置の走行を停止する。
つぎに図7に示すように、荷役部20の中間支持脚25を伸張してコンクリート製品A1内の底部内面に着地させた後、昇降部50を上昇操作して前輪走行部40を床面から浮上させる。
伸縮フレーム22を伸長して前輪走行部40をコンクリート製品A1の図面左方の端部から外方へ突出した後、昇降部50を降下操作して前輪41を路床面Bに着地させる。
中間支持脚25を収縮した後、前輪41を停止し、後輪12の前進駆動に合わせて伸縮フレーム22を収縮させる。
【0043】
<2>コンクリート製品の持ち上げ
つぎに図8に示すように荷役用シリンダ23を伸張してテーブル24を上昇させてコンクリート製品A1の天井面に当接する荷役部20によってコンクリート製品A1を内方から持ち上げる。
搬送敷設装置とコンクリート製品A1の重量は後輪12と前輪41の三輪で支持する。
【0044】
<3>搬入走行
搬送敷設装置はコンクリート製品A1を搭載したまま敷設位置まで走行する。
搬送敷設装置は後輪12及び前輪41の操舵が可能であるため、走行経路が蛇行していたり、蛇行半径が小さくとも、逆方向にハンドルをきることもなく円滑に運転することができる。
【0045】
さらに軸方向の長さが長いコンクリート製品A1に対応するため、荷役部20の主フレーム21の全長を長くしても、後輪12及び前輪41による前後両輪での駆動及び操舵が可能であるため、後輪12及び前輪41の車輪間距離の影響を受けずに小さな曲率半径で操舵することができる。
【0046】
<4>芯合せ
コンクリート製品A1を据付位置まで搬送したら既設のコンクリート製品A2に対してコンクリート製品A1の芯合せを行う。
【0047】
従来の搬送敷設装置の前後進とハンドルの切り返しを繰り返し行う必要があったが、本発明は搬送敷設装置の前後進を繰り返す必要がない。
【0048】
本発明に係る搬送敷設装置は、図2に示すように後輪12と共に前輪41が駆動可能でかつ各輪12,41を最大で左右90度の操舵が可能である。
そのため、その場で搬送敷設装置の前側又は/及び後側を左右同一方向、又は異方向へ向けて横移動するだけで、コンクリート製品A1の芯合せを簡単で正確に行うことができる。
このように搬送敷設装置はその場での横移動や旋回等が可能であるから、据付け現場が狭小であっても小回りがきいて便利である。
【0049】
<5>据付セット
コンクリート製品A1の芯合せを完了したら、図9に示すように中間支持脚25を伸張して両コンクリート製品A1,A2間の路床面Bに着地させる。
つぎに昇降部50を上昇操作して前輪41を路床面Bから離す。
前輪41を上げたまま伸縮フレーム22を伸長して既設のコンクリート製品A2内へ前輪41を進入させる。
昇降部50を降下操作して前輪41を既設のコンクリート製品A2内に着地させる。
【0050】
この時点で既設のコンクリート製品A2に対するコンクリート製品A1の中心が左右にずれている場合は、必要に応じて後輪12と前輪41を駆動して芯合せの微調整を行う。
併せて荷役用シリンダ23を操作してコンクリート製品A1の高さ調整を行う。
【0051】
つぎに中間支持脚25を収縮した後、後輪12及び前輪41を低速で前進駆動してコンクリート製品A1の右方の接合部を既設のコンクリート製品A2の左方の接合部へ接合して据付を完了する。
【0052】
<6>後退走行
コンクリート製品A1の接合を完了したら、荷役用シリンダ23を収縮して、テーブル24をコンクリート製品A1の天井面から離隔し、後輪12と前輪41を後退駆動する。
図11に示すように、中間支持脚25の伸縮操作と前輪41の昇降操作等を行い、コンクリート製品A1の底部面に位置する前輪41を路床面Bへ移動する。
以上の工程を繰り返し行うことで、順次コンクリート製品を搬送して据付ける。
【0053】
本発明に係る搬送敷設装置は、乗越え機構30の全高をコンクリート製品の最小サイズに対応できるように低く抑えている。
乗越え機構30の全高を小さくできれば、内高の小さなコンクリート製品は勿論のこと、内高の大きなコンクリート製品でも衝突せずに乗越え機構30をコンクリート製品内に進入させることが可能である
そのため、従来と比べて一台の搬送敷設装置で搬送できるコンクリート製品のサイズ数を大幅に増やすことが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
A,A1,A2・・・・コンクリート製品
B・・・・・・路床面
10・・・・・運転走行部
12・・・・・後輪
20・・・・・荷役部
24・・・・・テーブル
25・・・・・中間支持脚
30・・・・・乗越え機構
40・・・・・前輪走行部
41・・・・・前輪
50・・・・・昇降部
51・・・・・リンク
52・・・・・昇降シリンダ
【技術分野】
【0001】
本発明は例えばボックスカルバート、大型ヒューム管、推進管、分割式コンクリート管等のコンクリート製品を運搬して敷設する搬送敷設装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の搬送敷設装置はコンクリート製品を搭載する荷役部と、荷役部を走行させる走行部とを具備していて、コンクリート製品を正確な位置に据付ける際、或いは蛇行した搬送経路に沿って走行する際に、搬送敷設装置の最小旋回半径が大きく影響する。
【0003】
図12,図13に示すように最小旋回半径を小さくするため、荷役部80と走行部90との間を鉛直のピン92で連結したピンヒンジ構造の搬送敷設装置が特許文献1に開示されている。
荷役部80はその両端部に昇降自在で左右一対の前輪81及び後輪82を具備し、走行部90は自走用の左右一対の駆動輪91を具備している。
荷役部80は保持部89を具備していて、保持部89が据付け予定のコンクリート製品Aの底面を保持することで荷役部80に搭載し得るようになっている。
さらに荷役部80と走行部90との間には平面ハ字形に左右一対の操舵用シリンダ93が配設してあって、駆動輪91の操舵に合わせた一対の操舵用シリンダ93の伸縮操作により荷役部80の旋回半径を制御する。
【0004】
またコンクリート製品Aの据付けに対応するため、荷役部80の前端部にはコンクリート製品の底部を乗り降りするための乗越え機構が設けてある。
特許文献1に記載の乗越え機構は、荷役部80の前端部に鉛直に設けた複数のシリンダ81a,83aと、各シリンダ81a,83aの下端に設けた前輪81及び補助前輪83とからなり、コンクリート製品の底部を乗り降りする際に各シリンダ81a,83aが交互に伸縮して前輪81と補助前輪83が昇降する。
【0005】
また鉛直のシリンダによらない他の乗越え機構が特許文献2,3に開示されている。
図14に示すように特許文献2に記載の乗越え機構は、荷役部80の前端部に支軸85を介して回転可能に枢支した三叉状の車輪保持板84と、車輪保持板84の一部に設けた前輪81及び補助前輪83とよりなり、荷役部80と車輪保持板84の間に設けたシリンダS1の伸縮により前輪81と補助前輪83が昇降する。
【0006】
図15に示すように特許文献3に記載の乗越え機構は、荷役部80の前端に共通の支軸85を介して回転可能に枢支した二つの車輪保持板86,87と、各車輪保持板86,87の自由端に設けた左右一対の前輪81及び左右一対の補助前輪83とよりなり、荷役部80と各車輪保持板86,87の間に設けた各シリンダS2,S3の伸縮により前輪81と補助前輪83が個別に昇降する。
【0007】
一般に一台の搬送敷設装置で複数サイズのコンクリート製品Aに対応することが望ましく、これを実現するためには、乗越え機構の全高を低く抑えて乗越え機構がコンクリート製品Aの上部に衝突しないようにする必要がある。
その一方で、乗越え機構がコンクリート製品Aの底部を乗り降りするためには、前輪81及び補助前輪83をコンクリート製品Aの底部厚以上の高さまで昇降させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−132331号公報
【特許文献2】特開2002−293496号公報
【特許文献3】特開2003−182987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の搬送敷設装置にはつぎのような問題点があった。
(1)特許文献1に記載された搬送敷設装置は、走行部90と荷役部80の間がピンヒンジで連結されているため、荷役部80の安定性を確保するために前輪81、後輪82及び補助前輪83が、それぞれ左右二輪で合計6輪を有するため、装置コストが高くなる。
(2)特許文献1に記載された搬送敷設装置は、走行部90と荷役部80がピンヒンジ構造で連結されているため、走行部90で前進操縦をするには進行方向に対してハンドルを逆に切らなければならない。
例えていえば、大型トレラー車両を後進運転するときと同じように、荷役部80を右に進行させたいときは走行部90を左向きに操舵しなければならず、熟練した高度の操縦能力が求められ、誰でも簡単に運転することができない。
(3)特許文献1に記載の搬送敷設装置は、ピンヒンジ構造でない装置と比べて旋回半径を小さくできるものの、例えば進行方向に対して直角方向へ向けた横移動ができない。
そのため、据え付けの際、コンクリート製品の左右方向の位置を調整するために、搬送敷設装置の前後進とハンドルの切り返しを繰り返し行う必要があり、左右方向に向けた敷設位置の微調整も難しい。
(4)荷役部80の前端部にシリンダを鉛直に配置した特許文献1に記載の乗越え機構は、両前輪81,83の昇降距離を確保するために、シリンダ81a,83aの最低全長が長くなって乗越え機構の全高が高くなる。
コンクリート製品のサイズによっては、荷役部80の上方へ突出したシリンダ81a,83aの上部が衝突するため、一台の搬送敷設装置で搬送できるコンクリート製品のサイズ数が少数に限られる。
(5)特許文献2,3に記載された乗越え機構は、シリンダS1〜S3を斜めに配置することで、シリンダS1〜S3の全長が乗越え機構の全高に及ぼす影響を小さく抑えられる利点がある。
その一方で、車輪保持板84,86,87及び前輪81の支軸85を中心とした昇降半径は、機構上、支軸85からの直線距離よりも小さくすることができない。
そのため、支軸85を中心に昇降する車輪保持板84,86,87の一部、又は前輪81が荷役部80の上方へ向けて飛び出すために、乗越え機構の全高が高くなる。
したがって、特許文献2,3に記載された乗越え機構を具備した搬送敷設装置においても、搬送できるコンクリート製品のサイズ数が少数に限られる。
【0010】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは少なくともつぎのひとつの搬送敷設装置を提供することにある。
<1>熟練した高度の操縦能力を必要とせずに、誰でも簡単に操縦できること。
<2>コンクリート製品の左右方向の位置合わせを簡単に行えること。
<3>乗越え機構の全高を低く抑えて一台の搬送敷設装置で搬送できるコンクリート製品のサイズ数が増えること。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の第1発明は、一対の後輪を具備した運転走行部と、該運転走行部の前部に接続し、伸縮フレームを有する主フレーム及び該主フレームに搭載した上下動自在のテーブルを有する荷役部と、荷役部の前端で昇降可能に設け、前輪を具備した乗越え機構とを具備し、テーブルに搭載してコンクリート製品を搬送する搬送敷設装置であって、前記主フレームが運転走行部の前部に回動不能に接続し、前記一対の後輪及び前輪が自走可能でかつ操舵可能であることを特徴とする。
本願の第2発明は、前記第1発明において、前記乗越え機構が荷役部のフレームに下向きに設け、伸縮自在の中間支持脚と、前輪を有する前輪走行部と、荷役部のフレーム前端と前記前輪走行部の間に介装し、前記中間支持脚の伸縮に対応して前輪走行部を昇降する昇降部とを具備し、前記昇降部が伸縮フレームの前部と前輪走行部の後部との間に上下に回動可能に連結したリンク機構と、伸縮フレームの前部と前輪走行部の後部との間に揺動可能に枢支した昇降シリンダとを具備することを特徴とする。
本願の第3発明は、前記第1又は第2発明において、一対の後輪及び前輪が最大で左右90度の範囲の操舵が可能であることを特徴とする。
本願の第4発明は、前記第1乃至第3発明の何れかにおいて、コンクリート製品が両端を開放したコンクリート製の筒体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、下記の効果のうち少なくとも何れか一つを得ることができる。
<1>ピンヒンジ構造を採用せずに、荷役部の主フレームを運転走行部に固定したことにより、搬送敷設装置全体の剛性を高めることができる。
そのため、図12,13に示した従来の搬送敷設装置の後輪82を省略することができる。
さらに荷役部の主フレームを運転走行部に固定してあるので、走行する際に逆方向へハンドルを操舵する必要がなくなり、熟練した高度の操縦能力を必要とせずに、誰でも簡単に搬送敷設装置を運転することができる。
<2>従来はコンクリート製品の芯合せのために搬送敷設装置の前後進とハンドルの切り返しを繰り返し行う必要があった。
本発明に係る搬送敷設装置では、後輪と共に前輪を駆動可能で、かつ操舵可能に構成したことにより、その場で搬送敷設装置の横移動が可能となるため、コンクリート製品の芯合せを簡単で正確に行うことができる。
<3>本発明に係る搬送敷設装置は、乗越え機構の全高をコンクリート製品の最小サイズに対応できるように低く抑えている。
そのため、従来と比べて一台の搬送敷設装置で搬送できるコンクリート製品のサイズ数を大幅に増やすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る搬送敷設装置のモデル図
【図2】図1におけるIIの矢視図
【図3】荷役部の一部を破断した乗越え機構の斜視図
【図4】荷役部の一部を破断した乗越え機構の側面図
【図5】搬送敷設装置の作用の説明図
【図6】搬送敷設装置の作用の説明図
【図7】搬送敷設装置の作用の説明図
【図8】搬送敷設装置の作用の説明図
【図9】搬送敷設装置の作用の説明図
【図10】搬送敷設装置の作用の説明図
【図11】搬送敷設装置の作用の説明図
【図12】従来の搬送敷設装置のモデル図
【図13】図12に示した従来の搬送敷設装置の平面図
【図14】従来の搬送敷設装置の乗越え機構のモデル図
【図15】従来の搬送敷設装置の他の乗越え機構のモデル図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に係るコンクリート製品の搬送敷設装置について説明する。
また説明にあたり、搬送敷設装置の前進側を「前」、後進側を「後」、搬送敷設装置の直進に対して交差方向を「左右」と定義して説明する。
搬送対象であるコンクリート製品Aは両端を開放したコンクリート製の筒体で、例えばボックスカルバート、大型ヒューム管、推進管、分割式コンクリート管等を含む。
【0015】
<1>搬送敷設装置
図1,2に示すように、本発明に係る搬送敷設装置はコンクリート製品を搭載して運搬するとともに、据付現場でコンクリート製品Aを敷設するための装置で、運転走行部10と、該運転走行部10に一体に接続した荷役部20と、荷役部20の前端で昇降可能に設けた乗越え機構30とを具備する。
【0016】
本発明に係る搬送敷設装置は、前後の走行輪を個別に自走可能でかつ操舵可能に構成して旋回半径を小さくしたことと、乗越え機構30にリンクを適用して乗越え機構30の全高を低く抑えたことにある。
以降に搬送敷設装置の主要部について詳述する。
【0017】
<2>運転走行部
運転走行部10は搬送敷設装置の走行制御機能と、荷役部20の制御機能と、乗越え機構30の制御機能を併有した部位である。
【0018】
<2.1>運転操作パネル
運転走行部10は運転操作パネル11を具備している。
運転操作パネル11に設けた複数の操作用のハンドル、レバー、ボタン類を操作することで、搬送敷設装置の走行操作(前後進の切換え、変速、停止、操舵等)と、荷役部20におけるコンクリート製品Aの昇降操作と、乗越え機構30による乗越え操作をそれぞれ個別に、又は同時に制御できるように構成されている。これらの制御は周知の電気制御及び/又は油圧制御により行うことが可能である。
【0019】
<2.2>駆動源
また蓄電池、発電機、或いは油圧設備等の駆動源は、運転走行部10に搭載するか、或いは運転走行部10から分離して設置してもよい。
【0020】
<2.3>後輪
さらに運転走行部10は左右一対の後輪12,12を有している。
後輪12,12は図外の電動又は油圧モータ等の駆動源の駆動力を受けて前進走行及び後進走行が可能で、且つ操舵可能な車輪で、例えば最大で左右90度の範囲の操舵が可能である。
【0021】
<3>荷役部
荷役部20はコンクリート製品Aに内挿して搭載する部位で、運転走行部10の前面から水平に延設した主フレーム21と、主フレーム21の伸縮可能に内挿した伸縮フレーム22と、複数の荷役用シリンダ23を介して主フレーム21に昇降可能に搭載したテーブル24と、主フレーム21の前端部で左右両側に伸縮自在に設けた中間支持脚25とを具備する。
主フレーム21はコンクリート製品Aの全長以上の長さを有する。
【0022】
<3.1>フレーム
主フレーム21は運転走行部10の前面に回動不能に固定してある。
ピンヒンジ構造を採用せずに、主フレーム21を運転走行部10に固定したのは、搬送敷設装置全体の剛性を高めて車輪数の削減を図るとともに、走行する際に逆方向へハンドルを操舵するのを回避して、熟練した高度の操縦能力を必要とせずに、誰でも簡単に搬送敷設装置を運転できるようにするためである。
【0023】
伸縮フレーム22は主フレーム21内に配備した油圧シリンダや歯車機構等の公知のスライド機構により主フレーム21に対して伸縮を可能としている。
【0024】
<3.2>荷役用シリンダ
テーブル24の下面を支持する複数の荷役用シリンダ23は、所定の間隔を隔てて両フレーム21,22を縦向きに貫挿して立設してあって、テーブル24の上下の高さ調整が可能である。
荷役用シリンダ23が貫挿する伸縮フレーム22には切欠22aを形成していて、荷役用シリンダ23が伸縮フレーム22の伸縮に干渉しないようになっている。
【0025】
荷役用シリンダ23は複数あるコンクリート製品Aの規格サイズのなかで、内部空間高(内高)が最小サイズのコンクリート製品Aに対応できるようにストロークの短いシリンダで十分である。
荷役用シリンダ23の全長を短くするのは、後述するように乗越え機構30の全高を低くすることに対応するためである。
荷役用シリンダ23を最小サイズのコンクリート製品Aに対応可能な寸法に設定しておけば、テーブル24上に嵩上用のスペーサ部材を搭載するだけの簡単な対策で、荷役用シリンダ23のストローク長を超えた大型のコンクリート製品Aでも搭載が可能となる。
【0026】
<3.3>中間支持脚
主フレーム21の前端部の左右両側には、油圧シリンダ等からなる中間支持脚25,25が縦向きに配設してある。
中間支持脚25は走行機能を持たず、通常は収縮状態にあり、乗越え機構30と協働してコンクリート製品Aを乗り越えるときに伸縮作動する。
【0027】
<4>乗越え機構
コンクリート製品の据付けに対応するため、伸縮フレーム22の前端部にはコンクリート製品の底部を乗り降りする乗越え機構30が設けてある。
乗越え機構30は主フレーム21の前端部に設けた上記中間支持脚25と、前輪走行部40と、前輪走行部40を昇降する昇降部50とを具備する。
【0028】
<4.1>前輪走行部
前輪走行部40は前輪41と、電動又は油圧モータ等を内蔵した駆動部42を有している。
前輪41は前進走行及び後進走行が可能で、且つ操舵可能な車輪で、例えば最大で左右90度の範囲の操舵が可能である。
後輪12及び前輪41にエンコーダを組み込むと、より正確な角度の操舵が可能である。
【0029】
後輪12と共に前輪41を操舵可能に構成したのは、搬送敷設装置の旋回半径を非常に小さくすることと運転操作を簡単にするためであり、後輪12と共に前輪41を駆動式に構成したのは、搬送敷設装置の前側及び/又は後側を左右同一方向、又は異方向へ向けて走行させることで、コンクリート製品を敷設するときの位置調整性能を高めるためである。
【0030】
尚、前輪41は単輪で構成することが望ましいが複輪で構成してもよい。
走行時の安定性や旋回半径等を考慮すると、後輪二輪と前輪一輪の三輪構成が望ましい。
【0031】
<4.2>昇降部
図3,4に示すように、伸縮フレーム22の前部と前輪走行部40の後部との間に配設した昇降部50は、複数のリンク51と昇降シリンダ52とを具備している。
【0032】
<4.2.1>リンク機構
伸縮フレーム22の前部の前面板26と、駆動部42の後部に設けた後面板43の対向面にはブラケット27,44が突設してあって、複数のリンク51の両端が水平ピン31,32を介して枢支してある。
複数のリンク51は前面板26側の水平ピン31を中心として上下に回動可能である。
伸縮フレーム22と前輪走行部40との間に連結する複数のリンク51を多段的に配置したのは、前輪走行部40の水平性を維持した状態で昇降させるためである。
【0033】
<4.2.2>昇降シリンダ
前面板26の中央上位と後面板43の中央下位にはそれぞれブラケット28,45が突設してある。
昇降シリンダ52はその本体52aを前面板26のブラケット28に軸支した支軸33で上下に向けて揺動可能に枢支し、ロッド52bの先端と後面板43のブラケット56との間を水平ピン34で連結している。
【0034】
したがって、昇降シリンダ52を収縮操作すると、伸縮フレーム22の前端で前輪走行部40が持ち上げられて浮上し、昇降シリンダ52を伸長操作すると、伸縮フレーム22の前端で前輪走行部40が降下する。
昇降シリンダ52の伸長量は前輪41の着地高さに応じて制御可能である。
【0035】
相対向する伸縮フレーム22と前輪走行部40の対向面に昇降シリンダ52を上下の揺動可能に配設したのは、昇降シリンダ52の本体52aの高さを低く抑えるためである。
乗越え機構30を上昇したときに路床面Bから乗越え機構30の最上端までの高さは、最小サイズのコンクリート製品Aの天井部に衝突しない寸法に設定しておく。
すなわち、昇降部50をリンク機構と傾斜した昇降シリンダ52の組合せで構成したのは、コンクリート製品Aの内空が高さ方向に狭小であっても昇降部50が衝突せずに内部へ進入させるためである。
【0036】
[作用]
次に図5〜図11を参照しながら搬送敷設装置を用いたコンクリート製品A1の敷設方法について説明する。
【0037】
<1>荷役部の進入
図5〜図7は運転走行部10の運転操作パネル11を操作して搬送予定のコンクリート製品A1の後方から搬送敷設装置の走行によって、乗越え機構30及び荷役部20をコンクリート製品A1内に進入させるまでの工程を示す。
【0038】
<1.1>前輪の浮上
詳細に説明すると、搬送敷設装置を路床面Bに載置したコンクリート製品A1へ接近して停止した後、中間支持脚25を伸張して路床面Bに着地させる。
つぎに昇降部50を上昇操作して、前輪41がコンクリート製品A1内の底部に衝突しない高さまで浮上させる。
このとき、搬送敷設装置の重量は床面Bに着地した後輪12及び中間支持脚25で支持する。
【0039】
<1.2>前輪の内部着地
前輪41がコンクリート製品A1内に進入するまで、伸縮フレーム22を伸長し、昇降部50を降下操作して前輪走行部40をコンクリート製品A1内の底部内面に着地させる。
中間支持脚25を収縮して、搬送敷設装置の重量を後輪12と前輪41で支持する。
【0040】
<1.3>内部移動
図6に示すように後輪12及び前輪41を前進駆動して乗越え機構30及び荷役部20をコンクリート製品A1内に進入させる。
このとき、テーブル24がコンクリート製品A1に衝突しないよう、荷役用シリンダ23は収縮状態にある。
【0041】
路床面Bに着地した後輪12とコンクリート製品A1の底面に着地した前輪41を前進駆動するにあたり、前輪41を停止し、後輪12の前進駆動に合わせて伸縮フレーム22を収縮させ、伸縮フレーム22が収縮を完了した時点で後輪12とともに前輪41を前進駆動するとよい。
【0042】
<1.4>前輪の外部着地
前輪41がコンクリート製品A1の図面右方の端部近くに達したら、搬送敷設装置の走行を停止する。
つぎに図7に示すように、荷役部20の中間支持脚25を伸張してコンクリート製品A1内の底部内面に着地させた後、昇降部50を上昇操作して前輪走行部40を床面から浮上させる。
伸縮フレーム22を伸長して前輪走行部40をコンクリート製品A1の図面左方の端部から外方へ突出した後、昇降部50を降下操作して前輪41を路床面Bに着地させる。
中間支持脚25を収縮した後、前輪41を停止し、後輪12の前進駆動に合わせて伸縮フレーム22を収縮させる。
【0043】
<2>コンクリート製品の持ち上げ
つぎに図8に示すように荷役用シリンダ23を伸張してテーブル24を上昇させてコンクリート製品A1の天井面に当接する荷役部20によってコンクリート製品A1を内方から持ち上げる。
搬送敷設装置とコンクリート製品A1の重量は後輪12と前輪41の三輪で支持する。
【0044】
<3>搬入走行
搬送敷設装置はコンクリート製品A1を搭載したまま敷設位置まで走行する。
搬送敷設装置は後輪12及び前輪41の操舵が可能であるため、走行経路が蛇行していたり、蛇行半径が小さくとも、逆方向にハンドルをきることもなく円滑に運転することができる。
【0045】
さらに軸方向の長さが長いコンクリート製品A1に対応するため、荷役部20の主フレーム21の全長を長くしても、後輪12及び前輪41による前後両輪での駆動及び操舵が可能であるため、後輪12及び前輪41の車輪間距離の影響を受けずに小さな曲率半径で操舵することができる。
【0046】
<4>芯合せ
コンクリート製品A1を据付位置まで搬送したら既設のコンクリート製品A2に対してコンクリート製品A1の芯合せを行う。
【0047】
従来の搬送敷設装置の前後進とハンドルの切り返しを繰り返し行う必要があったが、本発明は搬送敷設装置の前後進を繰り返す必要がない。
【0048】
本発明に係る搬送敷設装置は、図2に示すように後輪12と共に前輪41が駆動可能でかつ各輪12,41を最大で左右90度の操舵が可能である。
そのため、その場で搬送敷設装置の前側又は/及び後側を左右同一方向、又は異方向へ向けて横移動するだけで、コンクリート製品A1の芯合せを簡単で正確に行うことができる。
このように搬送敷設装置はその場での横移動や旋回等が可能であるから、据付け現場が狭小であっても小回りがきいて便利である。
【0049】
<5>据付セット
コンクリート製品A1の芯合せを完了したら、図9に示すように中間支持脚25を伸張して両コンクリート製品A1,A2間の路床面Bに着地させる。
つぎに昇降部50を上昇操作して前輪41を路床面Bから離す。
前輪41を上げたまま伸縮フレーム22を伸長して既設のコンクリート製品A2内へ前輪41を進入させる。
昇降部50を降下操作して前輪41を既設のコンクリート製品A2内に着地させる。
【0050】
この時点で既設のコンクリート製品A2に対するコンクリート製品A1の中心が左右にずれている場合は、必要に応じて後輪12と前輪41を駆動して芯合せの微調整を行う。
併せて荷役用シリンダ23を操作してコンクリート製品A1の高さ調整を行う。
【0051】
つぎに中間支持脚25を収縮した後、後輪12及び前輪41を低速で前進駆動してコンクリート製品A1の右方の接合部を既設のコンクリート製品A2の左方の接合部へ接合して据付を完了する。
【0052】
<6>後退走行
コンクリート製品A1の接合を完了したら、荷役用シリンダ23を収縮して、テーブル24をコンクリート製品A1の天井面から離隔し、後輪12と前輪41を後退駆動する。
図11に示すように、中間支持脚25の伸縮操作と前輪41の昇降操作等を行い、コンクリート製品A1の底部面に位置する前輪41を路床面Bへ移動する。
以上の工程を繰り返し行うことで、順次コンクリート製品を搬送して据付ける。
【0053】
本発明に係る搬送敷設装置は、乗越え機構30の全高をコンクリート製品の最小サイズに対応できるように低く抑えている。
乗越え機構30の全高を小さくできれば、内高の小さなコンクリート製品は勿論のこと、内高の大きなコンクリート製品でも衝突せずに乗越え機構30をコンクリート製品内に進入させることが可能である
そのため、従来と比べて一台の搬送敷設装置で搬送できるコンクリート製品のサイズ数を大幅に増やすことが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
A,A1,A2・・・・コンクリート製品
B・・・・・・路床面
10・・・・・運転走行部
12・・・・・後輪
20・・・・・荷役部
24・・・・・テーブル
25・・・・・中間支持脚
30・・・・・乗越え機構
40・・・・・前輪走行部
41・・・・・前輪
50・・・・・昇降部
51・・・・・リンク
52・・・・・昇降シリンダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の後輪を具備した運転走行部と、該運転走行部の前部に接続し、伸縮フレームを有する主フレーム及び該主フレームに搭載した上下動自在のテーブルを有する荷役部と、荷役部の前端で昇降可能に設け、前輪を具備した乗越え機構とを具備し、テーブルに搭載してコンクリート製品を搬送する搬送敷設装置であって、
前記主フレームを運転走行部の前部に回動不能に接続し、
前記一対の後輪及び前輪が自走可能でかつ操舵可能であることを特徴とする、
搬送敷設装置。
【請求項2】
請求項1において、前記乗越え機構が荷役部のフレームに下向きに設け、伸縮自在の中間支持脚と、
前輪を有する前輪走行部と、
荷役部のフレーム前端と前記前輪走行部の間に介装し、前記中間支持脚の伸縮に対応して前輪走行部を昇降する昇降部とを具備し、
前記昇降部が伸縮フレームの前部と前輪走行部の後部との間に上下に回動可能に連結したリンク機構と、
伸縮フレームの前部と前輪走行部の後部との間に揺動可能に枢支した昇降シリンダとを具備することを特徴とする、
搬送敷設装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、一対の後輪及び前輪が最大で左右90度の範囲の操舵が可能であることを特徴とする、搬送敷設装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項において、コンクリート製品が両端を開放したコンクリート製の筒体であることを特徴とする、搬送敷設装置。
【請求項1】
一対の後輪を具備した運転走行部と、該運転走行部の前部に接続し、伸縮フレームを有する主フレーム及び該主フレームに搭載した上下動自在のテーブルを有する荷役部と、荷役部の前端で昇降可能に設け、前輪を具備した乗越え機構とを具備し、テーブルに搭載してコンクリート製品を搬送する搬送敷設装置であって、
前記主フレームを運転走行部の前部に回動不能に接続し、
前記一対の後輪及び前輪が自走可能でかつ操舵可能であることを特徴とする、
搬送敷設装置。
【請求項2】
請求項1において、前記乗越え機構が荷役部のフレームに下向きに設け、伸縮自在の中間支持脚と、
前輪を有する前輪走行部と、
荷役部のフレーム前端と前記前輪走行部の間に介装し、前記中間支持脚の伸縮に対応して前輪走行部を昇降する昇降部とを具備し、
前記昇降部が伸縮フレームの前部と前輪走行部の後部との間に上下に回動可能に連結したリンク機構と、
伸縮フレームの前部と前輪走行部の後部との間に揺動可能に枢支した昇降シリンダとを具備することを特徴とする、
搬送敷設装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、一対の後輪及び前輪が最大で左右90度の範囲の操舵が可能であることを特徴とする、搬送敷設装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項において、コンクリート製品が両端を開放したコンクリート製の筒体であることを特徴とする、搬送敷設装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−26069(P2011−26069A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173493(P2009−173493)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000229128)日本ゼニスパイプ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000229128)日本ゼニスパイプ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】
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