説明

コンクリート製品の緩衝継手

【課題】コンクリート製品どうしの引寄せによって緩衝効果を減少させることがなく、弾性部材周囲にモルタル詰めを行っても弾性部材の機能が損なわれるおそれのないコンクリート製品用緩衝継手を提供する。
【解決手段】相互に連結するコンクリート製品2、3の引寄せ時には、ボルト保持ブラケット7に防護体13の端面を当接させ、頂壁13A外面にナット15を当接させた状態でナット12と防護体13との相対回転を拘束したまま連結ボルト8を回転させてその末端をコンクリート製品3の凹部3A内面に押し当ててコンクリート製品2、3どうしを引寄せる。使用時は、ナット15を防護体13から離間し、地震等でコンクリート製品2、3間に引張力が作用した場合には、防護体に対して連結ボルト8に螺合されたナット12が皿バネ10を圧縮して連結ボルト8とともに軸方向に変位し引張力を緩衝する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルバートや門型ブロック、U字溝型等のコンクリートプレキャスト製品(以下、コンクリート製品という。)の継手であって緩衝作用を有する継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート製品を連結して貯水槽や水路を構築しているが、地震や地盤沈下によって連結部を離反する方向に力が作用する場合、連結部に作用する荷重を緩衝して破損による漏水を防止するものとして、例えば、特許文献1〜4に記載されている技術が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−242594号公報
【特許文献2】特開2000−154583号公報
【特許文献3】特開平9−60100号公報
【特許文献4】特開2005−226359号公報
【0004】
特許文献1に記載された技術は、シールド管路等の構造物において、弾性ワッシャーを使用する継手が設けられた空間にコンクリートが打設された状態において、弾性ワッシャーの圧縮変形を許容するスペースを提供するスポンジ状弾性リングを配設し、継手が設けられた構造物の空間に二次覆工コンクリートが打設された場合でも地震等により継手によって接続された二つの構造物が引き裂かれる方向に力が作用したとき、弾性ワッシャーはスポンジ状弾性リングを圧縮しながら自らが圧縮変形することが可能になり、継手の損傷を防止するようにしたものである。
【0005】
また、特許文献2に記載された技術は、アーチ形カルバートの両開口端近くの側表に間隔を置いて連結方向にボルト孔を有する突起を複数個づつ取付け、該アーチ形カルバートのゴム輪を挟んだ挿し込み嵌合連結により向き合う前記2個の突起に連通するボルト孔にボルトを挿通し、該ボルトの一端を該アーチ形カルバート間の挿し込み嵌合幅のほぼ2分の1の範囲内にて伸縮を可能とするスプリングまたは弾性ワッシャーを挟んでナット止めして、地震または衝撃,衝動による該アーチ形カルバートの挿し込み嵌合部の抜けはずれを防止するようにしたものである。
【0006】
また、特許文献3に記載された技術は、接合される両ボックスカルバートの接合端部にフードを設けた凹凸接合とし、凸形ボックスカルバートの凸部に止水弾性体を取付けた後、この凸部を凹形ボックスカルバートの凹部に嵌合し、両ボックスカルバートのフードに設けられたボルト挿通孔にボルトを挿通し、その両端を弾性ワッシャーを介在させて接合作業用切欠きに固定することで、両ボックスカルバートの衝撃的な大きな相対変位にも対応できるようにしたものである。
【0007】
また、特許文献4に記載された技術は、一方のセグメント内部に形成されている挿通孔内側の係止段部に、他方のセグメント突設された雄部材に装着されている皿バネを係止させて2体のセグメントを連結し、これらのセグメントの周辺地盤にひずみが発生してセグメントどうしを離間させようとする引張力が作用した際に、皿バネの弾性変形により2体のセグメントに発生する応力を減少するようにしたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したような従来技術は、何れもコンクリート製品の連結部に弾性部材を介して、地震や地盤沈下等でコンクリート構造物間を離間させようとする引張力が作用したときに、弾性部材の弾性変形によって連結部に作用する力を緩衝するものであるが、コンクリート製品を連結する引寄せ作業時において、引寄せ力が弾性部材に作用するため、弾性部材が圧縮変形してしまい、設置後の使用時に、地震等によって相互に連結されているコンクリート構造物間に両者を離間させようとする外力が作用した場合に、弾性部材の弾性変形可能量が減少していて十分な緩衝効果が得られなくなる問題があった。
【0009】
また、コンクリート構造物の設置後に、弾性部材の周囲に雨水が浸入しないようにモルタル詰めが行われるような場合、弾性部材の変形が周囲のモルタルによって拘束されて緩衝機能が損なわれる虞があった。
【0010】
そこで、本発明は、コンクリート製品の連結時の引寄せ作業時に弾性部材に引寄せ力を作用させず、弾性部材の変形量をゼロとし、また、弾性部材周囲にモルタル充填しても弾性部材の機能が損なわれないようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的のために提供される本発明のコンクリート製品用緩衝継手の第1のものは、相互に連結されるコンクリート製品の一方のコンクリート製品の側面に固定されるとともに、他方のコンクリート製品の側面に形成された凹部内に配置されるボルト保持ブラケットを有する連結金具と、前記ボルト保持ブラケットに形成されたボルト孔に、軸部末端を前記一方のコンクリート製品側に向けて挿通される連結ボルトと、前記ボルト保持ブラケットから前記一方のコンクリート製品側に向けて突出する前記連結ボルトの軸部に摺動自在に外嵌される複数枚の皿バネと、前記ボルト保持ブラケットとの間に前記複数枚の皿バネを介在させて前記連結ボルトに螺合される第1のナットと、一端が開放され他端が頂壁で閉塞された筒部から構成され、前記頂壁中心部に形成された貫通孔に前記連結ボルトの軸部を摺動自在に貫通させて、少なくとも前記複数枚の皿バネと第1のナットとを内側に収容し、当該頂壁に隣接して第1のナットを包囲する前記筒部の少なくとも一部の内周面が、当該筒部に対して第1のナットの回転を拘束し、且つ軸方向変位のみを許容する非円形断面形状に形成された防護体と、前記連結ボルトの防護体外側へ突出する部分に螺合される第2のナットとを備えている。
【0012】
前記第1の発明に係るコンクリート製品用緩衝継手においては、コンクリート製品どうしの引寄せ時には、ボルト保持ブラケットに防護体の開放された端面が当接し、且つ頂壁外面に第2のナットが当接した状態で、第2のナットと防護体との相対回転を拘束したまま連結ボルトを回転させ、その軸部末端を前記他方のコンクリート製品の凹部内壁面に押し当てて、前記複数枚の皿バネに負荷をかけることなくコンクリート製品どうしを引寄せ、また、連結されたコンクリート製品の使用時には、第2のナットを防護体から離間させて、コンクリート製品間に引き離す向きの外力が作用した場合に、防護体に対して連結ボルトに螺合された第1のナットが前記複数枚の皿バネを圧縮して連結ボルトとともに軸方向に変位できるようにしている。
【0013】
また、本発明のコンクリート製品用緩衝継手の第2のものは、相互に連結されるコンクリート製品どうしの互いに対向する位置にそれぞれ形成された凹部の開口に各々固定される一対の連結金具と、これらの連結金具のそれぞれに形成されたボルト孔に挿通され、一方のコンクリート製品の凹部内に軸部が突出し、他方のコンクリート製品の凹部内に頭部が突出するように配置された連結ボルトと、前記一方のコンクリート製品に固定される連結金具の裏面から当該コンクリート製品の凹部内に突出する前記連結ボルトの軸部に摺動自在に外嵌される複数枚の皿バネと、前記一方のコンクリート製品に固定される連結金具との間にこれらの皿バネを介在させて前記連結ボルトの軸部に螺合される第1のナットと、一端が開放され他端が頂壁で閉塞された筒部から構成され、前記頂壁中心部に形成された貫通孔に前記連結ボルトの軸部を摺動自在に貫通させて、少なくとも前記複数枚の皿バネと第1のナットとを内側に収容し、当該頂壁に隣接して第1のナットを包囲する前記筒部の少なくとも一部の内周面が、当該筒部に対して第1のナットの回転を拘束し、且つ軸方向変位のみを許容する非円形断面形状に形成された防護体と、前記連結ボルトの軸部の前記頂壁から外部へ突出した部分に螺合される第2のナットとを備えている。
【0014】
前記第2の発明に係るコンクリート製品用緩衝継手においては、コンクリート製品どうしの引寄せ時には、一方の連結金具の裏面に防護体の開放された端面が当接し、且つ頂壁外面に第2のナットが当接した状態で、第2のナットと防護体との相対回転を拘束したまま連結ボルトを回転させて、前記複数枚の皿バネに負荷をかけることなくコンクリート製品どうしを引寄せ、また、連結されたコンクリート製品の使用時には、第2のナットを防護体から離間させ、または、連結ボルトから取り外して、コンクリート製品間に引き離す向きの外力が作用した際に、防護体に対して連結ボルトに螺合された第1のナットが前記複数枚の皿バネを圧縮して連結ボルトとともに軸方向に変位できるようにしている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るコンクリート製品用緩衝継手によれば、コンクリート製品を連結する際の引寄せ時に、防護体の内部に収容された皿バネには引寄せ力が作用しないので皿バネが変形せず、十分な変形可能量を残して引寄せが完了するので、コンクリート製品の連結完了後において緩衝作用のための変形量を十分とることができる。
【0016】
また、皿バネは防護体内部に収容されているため、コンクリート製品の設置後に凹部内にモルタルを充填しても、皿バネの弾性変位がモルタルによって拘束されず、皿バネの緩衝機能を確実に保つことができる。
【0017】
さらに、コンクリート製品間に作用する外力を緩衝するための弾性部材として複数枚の皿バネを用いているため、コンクリート製品の種類や使用条件に応じて、使用する皿バネの枚数を適宜増減できるので、コイルバネのように使用条件に応じて種々の長さのものを用意する必要がなく、部品コストを安くできる。
【0018】
そして、特に請求項1記載の発明においては、連結金具を相互に連結するコンクリート製品の何れか一方の外側面にのみ固定する構造であるため、緩衝継手を取り付けるためのコンクリート製品の加工が容易になる利点がある。
【0019】
また、特に請求項2記載の発明においては、相互に連結するコンクリート製品の対向面のそれぞれに連結金具を固定する構造であるため、コンクリート製品に対して連結金具を強固に固定することができ、相互に連結されているコンクリート製品間に、地震等によって大きな引張力が作用した場合に、連結金具の変形や脱落が生じ難い構造とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、実施例の図面を参照して本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明に係るコンクリート製品用緩衝継手(以下、単に緩衝継手という。)の1実施例の平面図、図2は、そのA−A断面図であって、カルバート2、3に適用したものである。
【0021】
緩衝継手1は、カルバート2、3の上面間に亘って配置される板状の連結金具4を有していて、この連結金具4はその長手方向の一方の端部近傍で、カルバート2のコンクリートに埋設したナット部材5に、ボルト6によって締結固定されている。
【0022】
また、カルバート3の、連結金具4に覆われている部分の下方には、凹部3Aが形成されており、この凹部3A内に連結金具4の裏面に突設されたボルト保持ブラケット7が配置されている。
【0023】
図1に示すように、連結金具4には、前記凹部3Aに重なる位置に、当該凹部3Aよりもやや幅の狭い矩形状の開口部4Aが形成されており、この開口部4Aの裏側の左右両側縁部に沿って、ボルト保持ブラケット7に形成された左右一対の三角形のヒレ状部7Aの底辺がそれぞれ固定されている。
【0024】
ボルト保持ブラケット7のこれらのヒレ状部7A間を連結している垂直なボルト保持部7Bの中央部には、ボルト孔7Cが形成されていて、このボルト孔7Cには、軸部8Aの末端をカルバート2側へ向けて連結ボルト8が挿通されている。
【0025】
連結ボルト8の軸部8Aの、ボルト保持ブラケット7のボルト保持部7Bからカルバート2側に突出した部分には、ボルト保持部7B側から順に、ワッシャー9、複数枚の皿バネ10、ワッシャー11がそれぞれ摺動自在に外嵌されており、さらに、ワッシャー11の軸部8Aの末端側に隣接して、ナット12(第1のナット)が軸部8Aの外周に形成された雄ねじに螺合させて装着されている。
【0026】
これらのワッシャー9、皿バネ10、ワッシャー11、及びナット12は、カップ状の防護体13内部に収容されている。前記防護体13は、ボルト保持ブラケット7のボルト保持部7Bに面する側が開放され、反対側が頂壁13Aによって閉塞された筒部13Bから構成されていて、頂壁13Aの中心部に形成されている貫通孔13Cに連結ボルト8の軸部8Aが摺動自在に貫通している。
【0027】
防護体13の筒部13Bの内周面は、図3に示すように、ナット12を包囲している頂壁13Aに隣接する部分が、ナット12の外形輪郭に適合する横断面6角形に形成されていて、前記内周面とナット12外周面が係合することによって、ナット12は防護体13の筒部13Bに相対的に回転が拘束されており、軸方向への変位のみが許容される。
【0028】
なお、筒部13Bの内周面のナット12を包囲している部分の横断面形状は、ナット12の回転を拘束でき且つ軸方向変位を許容できる形状であれば、6角形以外の非円形断面形状であってもよく、また、ナット12も6角形以外の非円形断面形状のものを用いてもよい。
【0029】
一方、筒部13Bの内周面の、2枚のワッシャー9、11とこれらの間に挟まれた複数枚の皿バネ10を包囲している部分は、図4に示すように円形の横断面に形成されていて、この部分は、これらのワッシャー9、11や皿バネ10の外周縁との間に僅かに隙間Sが設けてある。
【0030】
防護体13の頂壁13Aの外側に突出する連結ボルト8の軸部8A末端近傍には、さらに、ワッシャー14を介してナット15が螺合されている。一方、ボルト保持ブラケット7のボルト保持部7Bから反対側に突出する軸部8Aと頭部8Bとの間には、ワッシャー16が介装されている。
【0031】
なお、本実施例の緩衝継手1において、ボルト8の軸部8Aに装着されているワッシャー9、11、14、16は、本発明の緩衝継手1を機能させるための必須の構成部品ではなく、防護体13の頂壁13Aやボルト保持ブラケット7のボルト保持部7B等の表面の仕上精度が良好な場合には、これらの部品を省いて緩衝継手1の部品点数を減らすことも可能である。
【0032】
前述したように構成されている緩衝継手1によってカルバート2、3どうしを連結する作業について説明する。相互に連結するカルバート2、3どうしは、互いに対向する端面に形成されている環状の溝Gに止水用のゴム環17を介在させた状態で設置され、引寄せ作業が行われる。
【0033】
引寄せ作業では、図1及び図2に示すように、防護体13の筒部13Bの開放された端面に、これと対向するボルト保持ブラケット7のボルト保持部7Bの垂直面を当接させるとともに、頂壁13Aの外面にナット15を当接させた状態で、ナット15と防護体13との相対回転を拘束したまま連結ボルト8の頭部8Bを回転させて、軸部8Aの末端をカルバート3の凹部3Aのカルバート2側の垂直な内壁面Wに当接させる。なお、この作業は、連結金具4に形成されている開口部4Aから凹部3A内にスパナ等の工具を差し込んで行う。
【0034】
そして、頭部8Bをさらに同方向に回転して、連結ボルト8の軸部8Aの末端を前記内壁面Wに押し付けていくと、内壁面Wから連結ボルト8に作用する反力は、ナット15から防護体13を介してボルト保持ブラケット7に伝達され、さらに、これが固定された連結金具4を介して、対向するカルバート2に伝達され、その結果、カルバート2がカルバート3に引寄せられる。
【0035】
この際、ナット15とボルト保持部7Bとの間に防護体13が介在しているため、防護体13の内部に収容されている複数枚の皿バネ10には、負荷が作用しないので弾性変形は生じない。
【0036】
こうして、カルバート2、3どうしの隙間が設定した間隔Dに引寄せられて、引寄せ作業が完了したら、図5及び図6に示すように、ナット15を緩めて防護体13の頂壁13Aの外面から少なくとも複数枚の皿バネ10全体の最大圧縮変形量だけ離間させて使用時の状態にする。
【0037】
なお、ナット15を使用時の状態にセットした後に、凹部3A内への異物や雨水の浸入を防止するため、凹部3Aにモルタルを充填して塞いでおくことが望ましい。この際、皿バネ10は防護体13内に収容されて保護されているため、凹部3A内に侵入したモルタルによって皿バネ10の機能が損なわれるおそれはない。
【0038】
図7及び図8は、地震などによって、相互に連結されたカルバート2、3間に引き離す方向に外力が作用したときの状態を示しており、一方のカルバート2に対して他方のカルバート3を引き離そうとする外力の反力は、カルバート3の凹部3Aの内壁面Wからこれに軸部8Aの末端が当接している連結ボルト8に作用する。
【0039】
そうすると、前述したように使用時には、ナット15は防護体13の頂壁13Aの外面から離間されていて、連結ボルト8は防護体13ならびにボルト保持ブラケット7に対して軸方向に変位できる状態となっているため、前記外力によって連結ボルト8は、図7、8に示すように、防護体13内のナット12やワッシャー11を伴って、皿バネ10を弾性圧縮変形させながらこれらの図の右方に変位する。
【0040】
この連結ボルト8の変位によって、カルバート2、3間の隙間が一時的に外力を受けていないときの間隔Dから間隔D1に拡がり、両者を連結している連結金具4に作用する引張力が緩衝されて、カルバート2、3や連結金具4の破損や変形が回避される。そして、外力が作用しなくなれば、カルバート2、3間の隙間は、皿バネ10の弾性復元力によって直ちに元の間隔Dに戻るため、連結部からの漏水等を防止することができる。
【0041】
図9は、本発明に係るコンクリート製品用緩衝継手の他の実施例を示す平面図であって、この実施例において用いられる緩衝継手1’は、前述した緩衝継手1と同様な機能を有するが、本実施例の緩衝継手1’は、カルバート2’、3’の対向する端面間を連結するものである。
【0042】
なお、同図に示す緩衝継手1’の主要部分を構成する部品には、前述した実施例における緩衝継手1の主要部分を構成している部品と共通のものを用いており、これらの共通部品に関しては、前述した緩衝継手1に使用している番号と同一番号を図面中で用いている。
【0043】
図9に示すように、本実施例の緩衝継手1’は、相互に連結されるカルバート2’、3’どうしの対向位置にそれぞれ形成されている凹部2’A3’Aの開口に固定される一対の連結金具18、19を備えている。
【0044】
前記凹部2’A、3’Aは、何れもカルバート2’、3’の対向面と外側面の2つの方向に開口されている。また、これらの凹部2’A、3’Aは、カルバート2’、3’の外側面全周にわたって所定間隔で複数箇所形成されていて、それぞれに緩衝継手1’が配置されている。
【0045】
連結金具18、19はそれぞれ、凹部2’、3’の開口の対向面側をカバーするボルト保持部18A、19Aと、その左右両側に直角に連続した脚部18B、19Bから横断面コ字状に形成されていて、これらの脚部18B、19Bはそれぞれ、凹部2’、3’の左右両側の内壁を構成しているコンクリート層内にインサートされて固定されている。
【0046】
また、これらの連結金具18、19のボルト保持部18A、19Aの中央部にはそれぞれ、ボルト孔18C、19Cが形成されていて、これらのボルト孔18C、19Cに連結ボルト8が軸部8Aの末端を凹部3’側に向けて挿通されている。
【0047】
連結金具19のボルト保持部19Aから凹部3’A内に突出する軸部8Aには、ボルト保持部19A側から順に、ワッシャー9、複数枚の皿バネ10、ワッシャー11、ナット12(第1のナット)が装着され、これらの外側に防護体13が被嵌されている。また、防護体13の頂壁13Aの外側突出している連結ボルト8の軸部8Aには、ワッシャー14とナット15(第2のナット)が装着されている。
【0048】
前述したように構成されている緩衝継手1’によってカルバート2’、3’どうしを連結する作業について説明する。
本実施例の緩衝継手1’による引寄せ作業においては、図9に示すように、防護体13を、頂壁13Aの外面にワッシャー14を介して当接させたナット15とボルト保持部19Aとの間に挟みこんで、ナット15と防護体13との相対的な回転を拘束した状態で連結ボルト8の頭部8Bを回転させて連結金具18、19どうしを引き寄せ、カルバート2’3’間の隙間を所定の間隔dに設定する。
【0049】
引寄せ作業が完了した後、図10に示すように、防護体13の外側に装着されているワッシャー14とナット15とをボルト8の軸部8Aから取り外して使用時の状態にする。
【0050】
なお、ワッシャー14やナット15は、カルバート2’3’設置後の使用時において、軸部8Aから取り外さず、ナット15を緩めて防護体13が軸部8に対して軸方向に変位できるように、防護体13から少なくとも複数枚の皿バネ10全体の最大圧縮変形量だけ離間させておいてもよい。
【0051】
また、前述した実施例の場合と同様に、カルバート2’3’に形成されているそれぞれの凹部2’A、3’A内にモルタルを充填して、これらの凹部2’A、3’A内に雨水等が侵入しないようにしておくことが望ましい。
【0052】
図11は、地震などによって、相互に連結されたカルバート2’、3’間に引き離す方向に外力が作用したときの状態を示しており、前記外力により、カルバート2’側では、連結金具18のボルト保持部18Aを介して頭部18Bが同図左方に引っ張られ、一方、カルバート3’側では、連結金具19のボルト保持部19Aを介してこれに当接しているワッシャー9が同図右方に押される。
【0053】
そうすると、防護体13内の皿バネ10は、ボルト8の軸部8Aに螺合しているナット12とボルト保持部19Aとの間で弾性圧縮変形を受けて、連結金具18に対して連結金具19が離間してカルバート2’3’間の隙間が間隔d1に拡がり、その結果、これらのカルバート2’3’に固定されている連結金具18、19に作用する引張力が緩衝されてカルバート2’、3’や連結金具18、19の破損や変形が回避される。
【0054】
実施例における緩衝継手1と同様に、カルバート2’3’間の隙間は、外力が作用しなくなれば、皿バネ10の弾性復元力によって直ちに元の間隔dに戻るため、連結部からの漏水等が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の緩衝継手は、カルバートや門型・U型製品等のコンクリート製品どうし相互に連結するため緩衝継手として、幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】コンクリート製品用緩衝継手の1実施例における、コンクリート製品引寄せ時の一部断面を含む平面図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】図2中に示す防護材のB−B断面図。
【図4】図2中に示す防護材のC−C断面図。
【図5】緩衝継手の1実施例における、連結状態の一部断面を含む平面図。
【図6】図5のA−A断面図。
【図7】緩衝継手の1実施例における、変位発生時の一部断面を含む平面図。
【図8】図7のA−A断面図。
【図9】緩衝継手の他の実施例における、引寄せ時の状態の平面図。
【図10】他の実施例の連結状態の一部断面を含む平面図。
【図11】他の実施例の変位が発生状態の一部断面を含む平面図。
【符号の説明】
【0057】
1、1’ 緩衝継手
2、2’3、3’ カルバート
3A、2’A、3’A 凹部
4 連結金具
4A 開口部
5 ナット部材
6 ボルト
7 ボルト保持ブラケット
7A ヒレ状部
7B ボルト保持部
7C ボルト孔
8 連結ボルト
8A 軸部
8B 頭部
9、11、14、16 ワッシャー
10 皿バネ
12 ナット(第1のナット)
13 防護体
13A 頂壁
13B 筒部
13C 貫通孔
15 ナット(第2のナット)
17 ゴム環
18、19 連結金具
18A、19A ボルト保持部
18B、19B 脚部
18C、19C ボルト孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製品の継手であって、端部側面に固定され、他方のコンクリート製品の端部側面に形成された凹部内に配置されるボルト保持ブラケットを有する連結金具と、
前記ボルト保持ブラケットに形成されたボルト孔に、軸部末端を前記一方のコンクリート製品側に向けて挿通される連結ボルトと、
前記ボルト保持ブラケットから前記一方のコンクリート製品側に向けて突出する前記連結ボルトの軸部に摺動自在に外嵌される複数枚の皿バネと、
前記ボルト保持ブラケットとの間に前記複数枚の皿バネを介在させて前記連結ボルトに螺合される第1のナットと、
一端が開放され他端が頂壁で閉塞された筒部から構成され、前記頂壁中心部に形成された貫通孔に前記連結ボルトの軸部を摺動自在に貫通させて、少なくとも前記複数枚の皿バネと第1のナットとを内側に収容し、当該頂壁に隣接して第1のナットを包囲する前記筒部の少なくとも一部の内周面が、当該筒部に対して第1のナットの回転を拘束し、且つ軸方向変位のみを許容する非円形断面形状に形成された防護体と、
前記連結ボルトの防護体外側へ突出する部分に螺合される第2のナットとを備えたコンクリート製品用緩衝継手。
【請求項2】
コンクリート製品の連結端部の対向位置に形成された凹部に各々固定される一対の連結金具と、
これらの連結金具のそれぞれに形成されたボルト孔に挿通され、一方のコンクリート製品の凹部内に軸部が突出し、他方のコンクリート製品の凹部内に頭部が突出するように配置された連結ボルトと、
前記一方のコンクリート製品に固定される連結金具の裏面から当該コンクリート製品の凹部内に突出する前記連結ボルトの軸部に摺動自在に外嵌される複数枚の皿バネと、
前記一方のコンクリート製品に固定される連結金具との間にこれらの皿バネを介在させて前記連結ボルトの軸部に螺合される第1のナットと、一端が開放され他端が頂壁で閉塞された筒部から構成され、前記頂壁中心部に形成された貫通孔に前記連結ボルトの軸部を摺動自在に貫通させて、少なくとも前記複数枚の皿バネと第1のナットとを内側に収容し、当該頂壁に隣接して第1のナットを包囲する前記筒部の少なくとも一部の内周面が、当該筒部に対して第1のナットの回転を拘束し、且つ軸方向変位のみを許容する非円形断面形状に形成された防護体と、
前記連結ボルトの軸部の前記頂壁から外部へ突出した部分に螺合される第2のナットとを備えたコンクリート製品用緩衝継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−257470(P2009−257470A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107189(P2008−107189)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000137074)株式会社ホクコン (40)
【Fターム(参考)】