説明

コンクリート製品の製造方法およびコンクリート製品

【課題】内周面に合成樹脂、外周面に鋼材が具備された、コンクリート管等のようなコンクリート製品において、生産性が高く、作業環境が良好で、スラッジの発生もなく、且つ製品の密実性に優れたコンクリート製品を製造し得るコンクリート製品の製造方法を提供する。
【解決手段】内周面に合成樹脂、外周面に鋼材が具備されたコンクリート製品の製造方法であって、二酸化ケイ素を主成分とし且つ酸化ジルコニウムを含有するシリカフュームと、膨張材とを添加して水/結合材比が30%以下のコンクリートを調製し、コンクリート打設後に取り外すことなくコンクリート製品の内面側を構成させる合成樹脂からなる内側の枠と、コンクリート打設後に取り外すことなくコンクリート製品の外面側を構成させる鋼材からなる外側の枠との間に、前記調製されたコンクリートを打設し、前記内側の枠及び外側の枠を静置させたまま前記コンクリートを成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製品の製造方法およびコンクリート製品に関し、特に、防食機能を付与させるべく内周面に合成樹脂管が設けられたコンクリート管のようなコンクリート製品の製造方法及びコンクリート製品であって、従来の遠心成形や振圧成形を要しないコンクリート製品の製造方法とその製造方法により得られるコンクリート製品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリート製品を製造する場合には、型枠内にコンクリートを打設するという基本的な工程が含まれるが、コンクリート製品の種類によっては、それに応じた種々の方法が採用されている。たとえば、コンクリート管の製造方法としては、従来では、型枠内に打設したコンクリートを、高速回転によって生じる大きな遠心力を利用して締め固める方法(遠心成形法ともいう)や、コンクリートを充填する際に型枠に強力な振動を加えることによって締め固める方法(振圧成形法ともいう)などが知られている。
【0003】
しかしながら、前記遠心成形法においては、一回の遠心成形に約1時間を要し、一般的に使用されている三連式の遠心成形装置を用いた場合でも、一時間当たり3本しか製造できないという生産性の低さの問題を有している。また、遠心成形装置によって生じる騒音は極めて大きく、作業環境が著しく悪いという問題もある。さらに、遠心成形によって管の周面から余剰水、セメントの微粒子および骨材中の泥分等が混ざったノロと称されるスラッジが多量に発生し、該ノロの処理に費用がかかるという問題もある。
【0004】
一方、振圧成形法においては、水セメント比の小さい固練りのコンクリートを使用することができるため、型枠からの即時脱型が可能であり、前記遠心成形法と比べて生産性が高く、スラッジの発生もないという利点がある。
しかしながら、成形後の型崩れや変形、ダレ等を起こさないようにセメントペースト量を少なくし、また、水セメント比の小さい固練りのコンクリートを使用しているため、強力な振動下においても充填不足を招きやすく、その結果として振圧成形法によって得られるコンクリート管の表面には、角欠けや豆板等の空隙が生じやすいという問題を有している。また、振圧成形法では上述のように型枠に振動を与えるので、内型枠である合成樹脂管がずれないように、固定具等を取り付けることが必要となり、そのような固定具等の取り付け、取り外しの作業が必要となって、手間がかかることになる。
【0005】
ところで、上記のようなコンクリート管の内周面には、防食機能を具備させるために合成樹脂管が設けられることがあり、また、コンクリート管の外周面には、推進管として使用する場合に曲げ荷重への抵抗性を高め外圧強度を向上させるという機能を具備させるために鋼管が設けられることがあり、このような構成のコンクリート管の製造方法には、また別の製造工程が必要となる。しかし、このような構成のコンクリート管の製造方法としても、基本的には上記のような遠心成形法や振圧成形法が採用されており、上述のような問題点が同様に生じることとなる。
【0006】
また、合成樹脂管が内周面に設けられたことによる固有の問題点も生じることとなる。すなわち遠心成形法の場合には、上述のように遠心力を利用して締め固めることでコンクリート管を成形した後、そのコンクリート管の内面側に合成樹脂管が取り付けられることとなるが、後付けで合成樹脂管が内管として取り付けられるので、手間がかかるという問題がある。
【0007】
また、鋼管が外周面に設けられたことによる固有の問題点として、鋼とコンクリートとの一体性が保たれない場合、豆板や空隙の影響により鋼とコンクリートが荷重に対して同じ変形挙動を示さなくなり、その結果として、外圧強度が低下するという問題も生じることとなる。
【0008】
また、後付けではなく、内型枠として合成樹脂管を予め設置して遠心成形を行った場合には、高速回転による型枠のずれや歪みの危険性が生じる。しかも、遠心成形によりコンクリートは外型枠側へ締まるため、内型枠とコンクリートの間に隙間が生じる可能性が高い。その結果、合成樹脂管とコンクリートを一体に保つことができず、内管としての合成樹脂管の機能を果たすことができないという問題が生じることとなる。
【0009】
一方、合成樹脂管が内周面に設けられたコンクリート管の製造方法であって、振圧成形法を採用したものとして、下記特許文献1のような技術がある。この当該特許文献1には、コンクリート管の内面となるように合成樹脂管を長手方向に立設して内型枠を形成するとともに、その合成樹脂管の外周面に接着剤を塗布し、さらに、内型枠の外側に所定間隔で内型枠と平行に外型枠を立設し、その後、内型枠と外型枠の間にコンクリートを打設する方法が開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開2001−260124号公報
【0011】
しかし、上記特許文献1に開示された方法においては、コンクリート管との接着のために、合成樹脂管の外周面に特殊な接着剤を塗布しており、このような接着剤の塗布工程が必要となることも製造工程を煩雑化する結果となる。
【0012】
さらに、特許文献1に開示された方法では、汎用のコンクリートを打設することしか想定していないが、特許文献1に開示されたような汎用のコンクリートは自己充填性に乏しいものであり、このような自己充填性に乏しいコンクリートを用いて振圧成形法を行う場合、上述のような角欠けや豆板等の空隙が生じるという振圧成形法の問題が生じ、コンクリート管に必要な強度が得られない場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記のような従来の遠心成形法や振圧成形法によって生じていた問題点を解決するためになされたもので、生産性が高く、作業環境が良好で、スラッジの発生もなく、且つ強度及び密実性に優れたコンクリート製品を製造し得るコンクリート製品の製造方法を提供することを一の目的とする。また、本発明は、内周面に合成樹脂が具備され、外周面に鋼材が具備された、例えばコンクリート管等のようなコンクリート製品における固有の問題点を解決することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、内周面に合成樹脂が具備され、外周面に鋼材が具備されたコンクリート製品の製造方法であって、二酸化ケイ素を主成分とし且つ酸化ジルコニウムを含有するシリカフュームと、膨張材とを添加して水/結合材比が30%以下のコンクリートを調製し、コンクリート打設後に取り外すことなくコンクリート製品の内面側を構成させる合成樹脂からなる内側の枠と、コンクリート打設後に取り外すことなくコンクリート製品の外面側を構成させる鋼材からなる外側の枠との間に、前記調製されたコンクリートを打設し、前記内側の枠及び外側の枠を静置させたまま前記コンクリートを成形することを特徴とするコンクリート製品の製造方法を提供する。
【0015】
本発明に係るコンクリート製品の製造方法に於いては、好ましくは、前記前記シリカフュームと膨張材の合計量に対し、シリカフュームが60〜70重量%、膨張材が30〜40重量%であるものとする。また、好ましくは前記シリカフュームが、比表面積10m2/g以下であり、且つ平均粒径0.5〜1.5μmであるものとする。また、好ましくは、前記シリカフュームのpHが2.5〜6.5であるものとする。
【0016】
また、本発明は、上記のようなコンクリート製品の製造方法により製造されたことを特徴とするコンクリート製品を提供する。
【発明の効果】
【0017】
二酸化ケイ素を主成分とし且つ酸化ジルコニウムを含有するシリカフュームは、主としてジルコニアの製造工程において副生するシリカフュームとして得られ、従来の一般的なシリカフュームと比較して平均粒径が大きく、pHの小さいものである。よって、本発明におけるシリカフュームは、その殆どの粒子が一次粒子の状態で存在し、凝集しにくいという特性を有するとともに、コンクリートの凝結遅延作用が適度に発揮され、流動性が低下しにくいという効果を有している。
【0018】
このようなシリカフュームを使用することにより、材料分離を起こさず、しかも自己充填が可能な高流動性のコンクリートとなる。そして、該コンクリートを水/結合材比30%以下で調製し、内側の枠と外側の枠との間に打設し、該内側の枠と外側の枠を静置させたままコンクリートを成形することにより、遠心成形や振動成形等の従来の製造方法と同等か、又はそれ以上の強度および密実性を有するコンクリート製品を製造することが可能となる。
しかも、該コンクリートには膨張材が含まれているため、充填されたコンクリートは比較的初期の段階で膨張し、内側の合成樹脂と外側の鋼材との両方に圧力がかかり、合成樹脂とコンクリートと鋼材とが互いに圧接されズレが生じにくい状態となる。従って、接着剤の塗布等によるズレ防止対策を施さなくとも、外側の鋼材と内側の合成樹脂とその間に充填されたコンクリートとが良好に一体化されたものとなる。
【0019】
このように、本発明に係るコンクリート製品の製造方法によれば、特別な装置を必要としないために生産性が高く且つ作業環境が良好であり、また、遠心成形時のノロのようなスラッジの発生もなく、しかも、コンクリートの自己充填によって製品の密実性に優れるコンクリート製品を製造することが可能となる。
さらに本発明の製造方法によると、コンクリートが初期の段階で膨張し、内側の合成樹脂と外側の鋼材との両方に圧力がかかり、合成樹脂とコンクリートと鋼材とのズレが生じないため、接着剤の塗布等によるズレ防止対策を必要としない。また、本発明に係るコンクリート製品は、密実性に優れるとともに、製造コストの安価なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係るコンクリート製品の製造方法は、上述のように、二酸化ケイ素を主成分とし且つ酸化ジルコニウムを含有するシリカフュームと、膨張材とを添加して水/結合材比が30%以下のコンクリートを調製し、コンクリート打設後に取り外すことなくコンクリート製品の内面側を構成させる合成樹脂からなる内側の枠と、鋼材からなる外側の枠との間に、前記調製されたコンクリートを打設し、前記内側の枠及び外側の枠を静置させたまま前記コンクリートを成形することにより、内周面に合成樹脂が具備され、外周面に鋼材が具備されたコンクリート製品を製造するものである。
【0021】
本発明において用いるシリカフュームは、二酸化ケイ素を主成分とし且つ酸化ジルコニウムを含有するものであればよく、製法や原料物質等については特に限定されるものではないが、主に、ジルコニアの製造工程に於いて副生するものを使用しうる。また、前記シリカフュームは、JIS A 6207「コンクリート用シリカフューム」に規定された品質を満足する必要はない。
【0022】
ここで、前記シリカフュームの主成分である二酸化ケイ素の量は、好ましくは85重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上である。また、前記シリカフュームの一成分である酸化ジルコニウムの含有量は、好ましくは、1〜10重量%であり、より好ましくは3〜5重量%である。
【0023】
また、該シリカフュームは、好ましくは、比表面積が10m2/g以下、より好ましくは9m2/g以下である。従来、セメント用混和材として一般的に使用されているシリカフュームは、比表面積が15m2/g以上のものであるのに対し、本発明で用いるシリカフュームは、上記のような比較的小さい比表面積を有するものである。
【0024】
また、前記シリカフュームは、好ましくは、平均粒径が0.5〜1.5μmであり、より好ましくは、0.8〜1.2μmである。シリカフュームの平均粒径が上記のような範囲であれば、シリカフュームの凝集が抑制されてコンクリート中への分散性が良好となり、膨張材との併用においても所定の流動性を発揮し易いという効果があり、しかも従来のシリカフュームと同様、マイクロフィラー効果とポゾラン反応によって緻密で強度の高いコンクリートを製造することが可能となる。
【0025】
尚、シリカフュームの平均粒径は、セメント協会「標準試験方法(CAJS K−03−1982/エア・ジェット式ふるい装置による粉末度試験方法)」に基づいて測定したものである。
【0026】
また、前記シリカフュームは、好ましくは、pHが2.5〜6.5であり、より好ましくは4.0〜5.0である。シリカフュームのpHが上記のような範囲であれば、コンクリートの凝結遅延作用が適度に発揮されるため、フローロスが少なくなり、施工時における作業性が改善されるとともに、より一層緻密で高強度のコンクリートを製造できるという効果がある。尚、シリカフュームのpHは、JIS Z 8802−1986「pH測定法」に基づいて測定されるものである。
【0027】
一方、本発明において用いる膨張材の種類は特に限定されず、従来公知の膨張材を使用することができるが、中でも、JIS A 6202「コンクリート用膨張材」に規定される品質の膨張材を好適に使用することができる。具体的には、該膨張材として、カルシウムサルフォアルミネート系、生石灰系の膨張材のうち、何れか1種又は2種以上の混合物を使用することができる。
具体的には、該膨張材として、カルシウムサルホアルミネート系、生石灰系の膨張材を1種又は2種以上混合して使用することができる。
【0028】
コンクリートに膨張材を添加する際には、該コンクリートの膨張量が150×10-6〜1000×10-6となるように膨張材を添加することが好ましく、該コンクリートの膨張量が500×10-6〜800×10-6となるように膨張材を添加することが好ましい。コンクリートの膨張量が上記範囲であれば、コンクリートが該膨張材に作用によって適度に膨張し、内側の合成樹脂とコンクリートと外側の鋼材とがより一層良好に一体化されたものとなる。特に、硬化後のコンクリートの長さ変化が、三ヶ月後においても収縮ではなく膨張側にあることが、特に効果的となる。
尚、コンクリートの膨張量は、前記JIS A 6202 附属書2「膨張コンクリートの拘束膨張及び収縮試験方法」のB法に基づいて得られた「長さ変化率Lr(%)」を割合に換算した値、即ち、該「長さ変化率Lr(%)」を更に100で除した値をいう。
【0029】
前記膨張材がカルシウムサルホアルミネート系膨張材である場合には、該膨張材の添加量は、コンクリート1m3当り20〜50kgが好ましく、30〜40kgがより好ましい。添加量の上限値を上記のような値とすることにより、未反応の膨張材が遅れ膨張してコンクリートを破壊する危険性を低減することができる。
【0030】
また、シリカフュームと膨張材とを併用する場合、シリカフュームと膨張材の混合比率(重量比)を、シリカフューム:膨張材=60:40〜70:30とすることが好ましく、シリカフューム:膨張材=60:40〜65:35とすることがより好ましい。
【0031】
また、本発明に係るコンクリート製品の製造方法では、上記のようなシリカフューム及び膨張材を、結合材の概ね30重量%を上限として、置換して用いることができる。従って、単位結合材量(B)が900kg/m3である場合、単位混和材量は、概ね270kg/m3が上限となる。
【0032】
さらに、本発明のコンクリート製品の製造方法においては、他の成分として、従来のフェロシリコン起源のシリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末等を適宜配合することも可能である。
【0033】
また、本発明において用いるセメントとしては、特に限定されるものではなく、セメントとしては、普通、早強、超早強、白色、耐流酸塩、中庸熱、低熱などの各種ポルトランドセメント、該ポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュ等を混合してなる混合セメント、ジェットセメント、アルミナセメントなどの特殊セメントを挙げることができる。
【0034】
また、コンクリートを調製する際の水の量は、水/結合材比が30%以下となる量が好ましく、10〜20%となる量がより好ましい。斯かる範囲の水/結合材比とすることにより、型枠への充填時においては優れた自己充填性を維持しつつ、充填した後には短時間での脱型が可能となり、しかも製造されたコンクリート製品は圧縮強度及び外圧強度の高いものとなる。
特に、水/結合材比を10〜20%として高強度のコンクリート管を製造することにより、製造されたコンクリート管は、推進管工法を採用して地中に敷設することが可能なものとなる。
尚、本発明では脱型する必要がないため、脱型可能な強度が発現した後には、養生工程等の次工程へと移行させることができる。
【0035】
さらに、コンクリートを調製する際には、各種混和剤を添加してもよい。該混和剤としては、高性能AE減水剤等を挙げることができる。コンクリートを調製するに際しては、上記のような各種材料を、従来公知の各種コンクリートミキサを用いて混練りする。
【0036】
調製されたコンクリートの自己充填性としては、例えば、スランプフローにより測定した場合、65cm以上であるものが好ましく、68cm以上であるものがより好ましい。スランプフローが68cm以上である場合には、自己充填性が極めて良好となり、振動等を加えなくとも表面美観の良好なコンクリート製品を製造することが可能となる。
尚、スランプフローが65cm以上である高流動コンクリートとは、フレッシュ状態のコンクリートをJIS A 1150の「コンクリートのスランプフロー試験方法」に規定された方法でスランプフローを測定し、得られた測定結果の数値を平均した値が、65cm以上となるコンクリートである。
従って、例えば、上記JIS記載の試験方法で得られた測定結果が、70.0×69.0(cm×cm)のスランプフローであった場合には、その平均値である69.5(cm)が本発明におけるスランプフローとなる。
【0037】
上記のようにして調製したコンクリートを内側の枠と外側の枠との間に打設し、該枠を静置させたまま該コンクリートを成形し、養生することにより、コンクリート製品を得ることができる。本発明では、内側の枠として合成樹脂管等の各種合成樹脂成形品が使用され、外側の枠として鋼管等の各種鋼材が使用される。
【0038】
即ち、本発明によってコンクリート管等の所望形状のコンクリート製品を製造する場合には、合成樹脂管からなる内側の枠と、鋼管からなる外側の枠とを予め設置し、その内側の枠と外側の枠との間に、上記のようにして調製したコンクリートを打設し、該型枠を静置させたまま前記コンクリートを成形し、さらにコンクリートを養生することにより、所定形状のコンクリート製品が得られる。
【0039】
ここで、前記合成樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂である、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等からなるものを使用することができる。該合成樹脂は、製造するコンクリート製品の用途に応じて選択される。
【0040】
一方、前記鋼材としては、例えば、ステンレス鋼、鉄等からなるものを使用することができる。
【0041】
これら内側及び外側の枠は、目的とするコンクリート製品に応じて任意の構成のものを使用することができる。特に、本発明において用いる高流動コンクリートは上述の如く自己充填性が高く、充填に際して遠心成形や強力な振動を加える必要がないものであるため、これらの枠についても、遠心成形や強力な振動に耐えるような高い剛性のものを使用する必要はない。また、該枠の形状についても、任意の形状のものを使用することができ、コンクリート製品の種類も上記コンクリート管に限定されるものではなく、種々の形状の製品となりうる。
【0042】
本発明において使用する高流動コンクリートは、上述の如く自己充填性が高いものであるため、該コンクリートを枠内に充填する際には、遠心成形や強力な振動を加える必要がない。但し、コンクリート表面に角欠けや豆板、す等が生じるのを確実に防止する観点から、材料分離が生じない範囲で振動を加えても良い。
【0043】
また、前記枠内に予め鉄筋を配しておくことにより、鉄筋コンクリート管等の鉄筋入りのコンクリート製品として成形することも可能である。
【0044】
枠内に自己充填されたコンクリートは、具体的には、少なくとも24時間で該製品をハンドリングすることが可能な強度を有するものとなる。
【0045】
このように、本発明に係るコンクリート製品の製造方法によれば、従来の製造方法で使用していたような高剛性の枠を使用する必要がないため、該枠の補強材を省くことができ、製造コストを大幅に削減することができる。
また、本発明に係るコンクリート製品の製造方法によれば、成形時に大きな騒音が発生しないために作業環境が良好となり、スラッジも発生しないためにその処理費用が必要となることもない。
さらに、遠心成形装置や振動成形装置のような大型の装置を必要としないため、設備投資に要する費用が従来よりも安価になるという利点もある。
加えて、本発明によれば、外側に具備される鋼材と、内側に具備される合成樹脂と、これらの間に充填されるコンクリートとの一体性に優れ、しかも遠心成形や振動成形等の従来の製造方法と同等か、又はそれ以上の強度および密実性を有するコンクリート製品が提供されるという利点がある。
【実施例】
【0046】
下記表1に示した材料を用い、下記表2に示す配合で、容量55リットルの二軸強制練りミキサを用いて練り混ぜ、調製例1〜調製例5のコンクリートを調製した。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
調製例1〜5のコンクリートの性状について、フレッシュ状態におけるスランプフロー、硬化後の圧縮強度、及び充填した際の表面美観について以下の試験を行った。
【0050】
(スランプフロー)
調製例1〜5のコンクリートのフレッシュ状態における性状として、JIS A 1150「コンクリートのスランプフロー試験方法」に規定されたスランプフローを測定した。測定結果を下記表3に示す。
【0051】
(圧縮強度試験)
調製例1〜5のコンクリートについて、JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に規定された試験方法に基づき、供試体(φ10×20cm)の材齢14日における圧縮強度を測定した。測定結果を下記表3に示す。
【0052】
(充填性の評価)
合成樹脂管(外径114mm、管厚3.1mm、有効長300mm)を内枠として設置するとともに外側の型枠(外径200mm、管厚2.3mm、有効長300mm)を設置し、その間に調整例1〜5のコンクリートを打設した。打設に際しては、前記合成樹脂管及び外側の型枠の有効長方向が鉛直となるように両者を載置し、これらの上方から前記コンクリートを100mm/secの速度で流し込む方法により行った。次いで、打設後24時間で脱型し、材齢14日となるまで標準養生(20℃、水中)を行い、それぞれコンクリート管を作製した。得られたコンクリート管の外周面を目視により観察し、充填性の評価を行った。結果を下記表3に示す。
【0053】
(コンクリートの膨張量の測定)
更に、調製例4及び5のコンクリートを用い、JIS A 6202 附属書2「膨張コンクリートの拘束膨張及び収縮試験方法」のB法に基づいてコンクリートの膨張量を測定した。結果を下記表3に示す。
【0054】
【表3】

【0055】
次に、調製例4及び5のコンクリートを用いてコンクリート管を作成し、コンクリートと合成樹脂管及び鋼管の一体性について評価した。
【0056】
(実施例1)
合成樹脂管(外径114mm、管厚3.1mm、有効長300mm)を内側とし、鋼管(外径200mm、管厚2.3mm、有効長300mm)を外側として設置し、これらの間に前記調整例5のコンクリートを打設した。打設に際しては、前記合成樹脂管及び鋼管の有効長方向が鉛直となるように両者を載置し、これらの上方から前記コンクリートを100mm/secの速度で流し込む方法により行った。次いで、打設してから24時間経過した後、ビニールシートで封緘し、封緘後13日間20℃の恒温室で養生することにより、実施例1のコンクリート管を作製した。
【0057】
(比較例1)
調製例5のコンクリートに代えて調製例4のコンクリートを使用する点を除き、他は実施例1と同様にしてコンクリート管を作製した。
【0058】
(コンクリートと合成樹脂管及び鋼管との一体性評価)
得られた実施例1及び比較例1のコンクリート管の径方向に荷重が加わるように耐圧試験機に設置し、載荷速度0.5mm/minで荷重を加えた際において、前記コンクリート管にひび割れが確認された時点での荷重を測定した。結果を下記表4に示す。
【0059】
【表4】

【0060】
表4に示した結果によれば、膨張材を添加していないコンクリートを用いた比較例1のコンクリート管と比べ、膨張材を添加したコンクリートを用いた実施例1のコンクリート管は、径方向の強度が顕著に向上していることが認められる。即ち、実施例1のコンクリート管では、コンクリートが膨張することによって内側の合成樹脂管と外側の鋼管とその間に充填されたコンクリートとが一体となり、これによって径方向における強度を顕著に向上させたものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係るコンクリート製品の製造方法は、従来、遠心成形によって製造されていた鉄筋又は無筋コンクリート管などの製品のみならず、ボックスカルバート、擁壁、水槽、側溝、RCセグメントなどの各種セメント2次製品の製造にも適用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に合成樹脂が具備され、外周面に鋼材が具備されたコンクリート製品の製造方法であって、二酸化ケイ素を主成分とし且つ酸化ジルコニウムを含有するシリカフュームと、膨張材とを添加して水/結合材比が30%以下のコンクリートを調製し、コンクリート打設後に取り外すことなくコンクリート製品の内面側を構成させる合成樹脂からなる内側の枠と、コンクリート打設後に取り外すことなくコンクリート製品の外面側を構成させる鋼材からなる外側の枠との間に、前記調製されたコンクリートを打設し、前記内側の枠及び外側の枠を静置させたまま前記コンクリートを成形することを特徴とするコンクリート製品の製造方法。
【請求項2】
前記シリカフュームと膨張材との配合比率(重量比)を、シリカフューム:膨張材=60:40〜70:30とすることを特徴とする請求項1記載のコンクリート製品の製造方法。
【請求項3】
前記シリカフュームが、比表面積10m2/g以下であり、且つ平均粒径0.5〜1.5μmであることを特徴とする請求項1又は2記載のコンクリート製品の製造方法。
【請求項4】
前記シリカフュームのpHが2.5〜6.5であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンクリート製品の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のコンクリート製品の製造方法により製造されたことを特徴とするコンクリート製品。

【公開番号】特開2008−194881(P2008−194881A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30379(P2007−30379)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【出願人】(390000332)栗本コンクリート工業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】