コンクリート製品製造用型枠およびコンクリート製品の製造方法
【課題】 側面に開口し奥部側に向かって下方に傾斜した凹部を有するコンクリート製品の製造時において、煩雑な手作業を不要化し生産性の向上をはかる。
【解決手段】 台枠6上に支持した底板2と、底板2の左右両側縁にそれぞれ立設した側板3,4と、台枠6に下部を枢支され前後方向に傾動自在な一対の妻板とを具備してなる型枠本体10と、型枠本体10内に着脱自在に配置される凹部形成用の中子であって、凹部の開口面形成用の基端面部21に続く上方に傾斜した傾斜面状の上側面部22と下側面部23を頂面部を介して接続してなる傾斜山形状の断面を有する中子20とをそなえ、型枠本体10内の凹部形成位置に位置する中子20の両端部の下側面部23を支持して該中子を位置決めする支持片(ピン30)を、各妻板の内面に突設し、下側面部23を前記支持片により支持することにより、中子20を所定の凹部形成位置に保持するようにした。
【解決手段】 台枠6上に支持した底板2と、底板2の左右両側縁にそれぞれ立設した側板3,4と、台枠6に下部を枢支され前後方向に傾動自在な一対の妻板とを具備してなる型枠本体10と、型枠本体10内に着脱自在に配置される凹部形成用の中子であって、凹部の開口面形成用の基端面部21に続く上方に傾斜した傾斜面状の上側面部22と下側面部23を頂面部を介して接続してなる傾斜山形状の断面を有する中子20とをそなえ、型枠本体10内の凹部形成位置に位置する中子20の両端部の下側面部23を支持して該中子を位置決めする支持片(ピン30)を、各妻板の内面に突設し、下側面部23を前記支持片により支持することにより、中子20を所定の凹部形成位置に保持するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート製品製造用の型枠と、この型枠を用いたコンクリート製品の製造方法に関し、さらに詳しくは、側面に全長にわたって開口し奥部側に向かって下方に傾斜した凹部を有するコンクリート製品の製造用の型枠およびこの型枠を用いたコンクリート製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路において、車道と歩道の間や、車道と中央分離帯との間を仕切るコンクリート製の境界ブロックを設置後、この境界ブロックとアスファルトやコンクリートなどの舗装材との間に発生した隙間部に侵入した種子の発芽等により、雑草が繁殖するのを阻止するコンクリートブロックとして、ブロック側面(壁面)に開口する種々の断面形状の凹部を設けたコンクリートブロックが提案されている。(たとえば特許文献1,2参照。)
【0003】
上記の凹部を設けたコンクリートブロックは、この凹部の形状によって、雑草の種子の発芽した芽が屈光性により上方へ伸び、根が向地性により下方へ伸びるのとは逆向きに、芽や根を誘導することにより、芽や根の成長を防止して防草性を得るものであり、図10に示すのは、上記特許文献1に例示されたものと近似した、中央分離帯形成用に好適に用いられる境界ブロック(防草ブロックとも称される。)である。図10はこの境界ブロック50の断面を示し、道路への設置時に車道側とは反対側となる側面51に開口する凹部52をブロック全長にわたって設けてあり、凹部52の上側内面および下側内面は、いずれも凹部の奥部側に向かって下方に傾斜しており、凹部52は全体として奥端53を頂面とする下方に傾斜した傾斜山形状の断面を有するものである。なおこの境界ブロック50は、後述するこの発明の実施の形態の例において、成形・製造対象としているものである。
【0004】
図11は上記の境界ブロック50の従来の製造方法を示すものであり、図示のように境界ブロック50は道路への設置時とは天地逆にした状態で成形されるものであり、この発明において型枠および成形時に関する上下方向は、この成形時における上下方向を称するものとする。図示のように従来の型枠60は、台枠61上に固設した底板62と側板63,64と、一対の開閉式の妻板とをそなえ、成形品(境界ブロック50)の側面51に開口し奥部側に向かって下方に傾斜した凹部52形成用に、凹部52と同じ断面形状(但し天地逆のため頂部に向かって上方に傾斜した傾斜山形状)の中子65の基端部を、複数本のボルト66によって側板63に締付固定してある。そして、型枠60内へコンクリートを打設し、この打設コンクリートの硬化後に作業員がボルト66を取外したのち、中子65を成形品と共に上方に取出し、この成形品から中子65を抜き出して、次の成形工程のために中子65を再度ボルト66により側板63に取付けるという工程を採用していた。
【0005】
このため、1回の成形ごとにボルト66による中子65の側板63に対する着脱という煩雑な手作業を必要とし、人手と労力を要し生産性も劣るうえ、型枠を図において左右に複数個並列配置した一体型の多数個取り型枠を用いようとしても、上記の側板63部の外側でのボルトによる中子着脱作業のためのスペースが必要なため、図11の型枠60を一対、左右対称配置した2個取りの型枠構成以上の、多数個取りの型枠の構成は不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3698265号公報
【特許文献2】特開2006−52626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は上記従来の問題点にかんがみてなされたもので、側面に開口し奥部側に向かって下方に傾斜した凹部を有するコンクリート製品の製造時において、煩雑な手作業を必要とせず生産性の向上をはかることができるとともに、多数個取りの型枠を構成して多数個取りをおこなうことができる、コンクリート製品製造用型枠およびコンクリート製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1記載のコンクリート製品製造用型枠は、側面に全長にわたって開口する凹部を有するコンクリート製品の製造用の型枠であって、台枠上に支持した底板と、該底板の左右両側縁にそれぞれ立設した側板と、前記台枠の前後両端部に下部を枢支され前後方向に傾動自在な一対の妻板とを具備してなる開閉式の型枠本体と、前記型枠本体内に着脱自在に配置される前記凹部形成用の中子であって、前記凹部の開口面形成用の基端面部に続く上方に傾斜した傾斜面状の上側面部と下側面部を、頂面部を介して接続してなる傾斜山形状の断面を有する中子とを、そなえ、前記型枠本体内の凹部形成位置に位置する前記中子の両端部の前記下側面部を支持して該中子を位置決めする支持片を、前記各妻板の内面に突設し、前記基端面部を前記側板の内面に沿って当接させた前記中子の両端部の前記下側面部を、前記支持片により支持することにより、前記中子を所定の凹部形成位置に保持するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、コンクリートを打設するに際して凹部形成用の中子はその基端面部を側板の内面に沿って当接させ、中子両端部の下側面部を支持片に当接させた状態で型枠本体内にセットするだけでよく、また型枠本体の成形空間内に打設したコンクリートの硬化後にコンクリート成形品を取出す際に、中子の側板からの取外し作業は全く必要としないので、従来のように1回の成形ごとにボルトによる中子の側板に対する着脱という煩雑な手作業を必要とした型枠に比べて、手作業は容易で短時間で済む。また従来のような側板外側での中子着脱作業のためのスペースは不要なので、長手方向に延びる成形品成形部を左右に複数個配列して、多数個取りの型枠も容易に構成できるのである。
【0010】
この発明において支持片としては、妻板の内面から突出するように溶接やねじ止めなどにより妻板に取付けた種々の形状のものを用いることができるが、請求項2記載の発明のように、前記支持片が、先端部が前記妻板の内面から突出し基部が前記妻板に設けた穴部に嵌合して該妻板に着脱自在に取付けられたピンからなり、前記ピンを前記妻板から取外したときの前記穴部に嵌合して先端面が前記妻板の内面とほぼ面一となる短尺の交換用ピンを具備している構成とすれば、凹部を有しないコンクリート製品を製造する場合に、妻板から前記ピンを取外してその代わりに前記交換用ピンを取付け、中子を内部に配置しない型枠本体を用いて成形をおこなえば、前後両端面が平面状で外観が良好な、凹部を有しないコンクリート製品を得ることができ、凹部有り無しの二種類の型枠を用意する必要がなく経済的である。
【0011】
また請求項3記載のコンクリート製品の製造方法は、請求項1または2に記載のコンクリート製品製造用型枠を用いて、前記基端面部を前記側板の内面に沿って当接させた前記中子の両端部の前記下側面部を、前記支持片により支持することにより、前記中子を所定の凹部形成位置に保持すると共に型閉じ状態にした前記型枠本体の成形空間内に、コンクリートを打設し、打設コンクリートの硬化後に前記両妻板を開いて、前記中子が埋設されたコンクリート成形品を前記型枠本体から取出し、この取出後に前記コンクリート成形品から前記中子を抜き出すことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明について前述したのと同様に、コンクリート製品製造時における中子着脱のための手作業は容易で短時間で済み、生産性を向上でき、さらに多数個取りの型枠を用いることにより生産性を一層向上できる。また打設コンクリートの硬化後に両妻板を開くことにより、各妻板と一体の支持片はコンクリート成形品の両端部から抜け出すので、コンクリート成形品の型枠本体からの取出しは支障なくおこなえる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したようにこの発明によれば、側面に開口し奥部側に向かって下方に傾斜した凹部を有するコンクリート製品の製造時において、煩雑な手作業を必要とせず生産性の向上をはかることができるとともに、多数個取りの型枠を構成して多数個取りをおこなうことができる。
【0014】
また上記の効果に加えて、請求項2記載の発明によれば、前記ピンの代わりに前記交換用ピンを用いることにより凹部を有しない外観良好なコンクリート製品を得ることができ、型枠を凹部有り無しの両製品成形用として兼用でき、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態の一例を示す型枠の平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1の型枠の側面図である。
【図4】図1における中子20の拡大断面図である。
【図5】図2のB部(中子20およびピン30の近傍部)拡大図である。
【図6】図5の中子20を除いた状態のC−C線断面図(a)、および取外した状態のピン30の側面図(b)である。
【図7】図6におけるピン30の代わりに交換用ピン40を用いた場合の図6相当図である。
【図8】図1の矢視D−D部正面図である。
【図9】図8における小開きストッパ11により妻板を小開きにした状態の矢視E−E部一部切欠側面図である。
【図10】図1の型枠により製造する境界ブロックの断面図である。
【図11】従来の境界ブロック製造用の型枠の断面図である。
【図12】この発明の製造対象品の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜図10に示す一例により、この発明の実施の形態を説明する。図1〜図3に全体構成を示す型枠1は、前述した図10に示す境界ブロック50を4個同時に成形できる4個取りの型枠であり、前後方向に延びる底板2の左右両縁部に側板3,4を一体に連設してなる成形品の外面部(長手方向端面を除く)形成用の型部材5を、台枠6上に4組並列に取付けてある。5a〜5cは、型部材5の上端部接続・補強用に溶接した天端板である。そしてこれら4組の型部材5の前端部および後端部を開閉する共通の前側の妻板7Aと後側の妻板7B(以下両者を総称する場合は妻板7と称する。)は、支軸8を有するヒンジ部9を介して下部を台枠6の前端部および後端部に枢支され、前後方向に傾動自在な傾動式の妻板であり、これらの妻板と上記4組の型部材5とによって4個の成形空間が画定された開閉式の型枠本体10が構成されている。20はこの型枠本体10内に着脱自在に配置される中子であり、その構成および支持構造については後述する。なお図2に示すように、4組の型部材5は左右方向を交互に入替えた形で台枠6上に並列に取付けてあるが、4組とも左右方向は同一(たとえば側板3は全て右側)としてもよい。
【0017】
図1〜図3において11は、妻板7を少量開いた状態に保持する小開きストッパで、型枠本体10の四隅部に設けられ、L字形のレバー12の基軸部12aを、側板3のリブ3b部に固設した円筒状の支持筒13により回転自在に支持し、不使用時には自重により先端部12bは実線図示のように垂下状態となるレバー12と、妻板7に基部を固設された前後方向に延びる支持板14とからなる。この小開きストッパ11の操作等については後述する。なお型枠本体10の図1における四隅部には、型閉じ時に妻板7を閉鎖状態に締付ける公知のトグル式のクランプ(型締具)を設けてあるが、その図示は省略してある。
【0018】
図1〜図3は中子20を所定の凹部形成位置に保持した型閉じ状態を示し、先ず中子20は、側板3の前後方向の長さより少量(たとえば0.5〜1mm)短い全長を有し、図4の断面図に示すように、境界ブロック50(図10参照)の凹部52の形状に対応して、凹部52の開口面54(側面51に開口する凹部52の上下各開口縁部間を結ぶ平面)を形成するための側板3の内面3a(図5参照)に沿う基端面部21に続く上方に傾斜した傾斜面状の上側面部22と、同じく基端面部21に続く上方に傾斜した傾斜面状の下側面部23とを、凹部52の奥端53の形状に対応する(この例では円弧状の)頂面部24を介して接続し、全体として基端面部21を底辺部とし頂部に向かって上方に傾斜した傾斜山形状の断面を有するものである。そして基端面部21の上縁に接続された上側面部22は上記凹部52(図10参照)の下側内面を、基端面部21の下縁に接続された下側面部23は上記凹部52の上側内面を、それぞれ形成するためのものであり、下側面部23は上側面部22より上方に大きく傾斜している。すなわち図4に示すように、基端面部21に直交する直交平面Hに対する下側面部23の傾斜角θ2は、上側面部22の傾斜角θ1より大である構成となっている。なお25は、打設コンクリート硬化後に中子20を成形品から抜き出す際に、凹部52開口縁部が欠けないように上側面部22の下端部に凹面を形成する逃げ部であり、この例では基端面部21の上縁に向かって上方に小角度傾斜した傾斜面で構成してあるが、この傾斜面の中央部を下方に向かって少量湾曲させた湾曲面などで構成してもよい。そしてこの逃げ部25を設けることにより、コンクリートの打設時にコンクリートのスムーズな流れが形成されて、精緻なコンクリート製品を成形することができるのである。
【0019】
そして型枠本体10内において中子20の両端部を支持して位置決めする支持片として、各妻板7A,7Bには、妻板内面側に先端部が突出するピン30を取付けてある。このピン30は、図5に示すように、中子20の下側面部23を支持する位置に設けられ、図6(中子20は図示せず)に示すように、妻板7Bに設けた穴7a部に基部31が着脱自在に嵌合し、この基部31に続く先端部32が妻板7Bの内面7bから突出し、その基端部に一体に設けたおねじ部33を穴7aの底板部を貫通させてナット34により締付固定してある。なおピン30の先端部32は、妻板7Bの開放時に支軸8(図3参照)の中心のまわりに妻板7Bと共に回動する先端部32によって、硬化後のコンクリート成形品に割れが生じないように、先細状の形状としてある。またおねじ部33に続いて角形断面の角棒部35を連設してあり、ナット34の回動操作時にピン30が回転しないように把持するための把持部としてある。なお妻板7Aにおいても、上記と同構成のピン30を設けてある。
【0020】
また図7は、前記ピン30を取外したときに用いられる交換用ピン40を示し、凹部52を有しない境界ブロックの成形時に用いられ、前記穴7a部に着脱自在に嵌合する丸棒部41が、穴7aの深さLとほぼ同一長さを有する他は、前記ピン30と同構成を有するものであり、妻板7B(および7A)への取付状態でその先端面42は妻板7B(および7A)の内面7bとほぼ面一となるものである。
【0021】
上記構成の型枠1により境界ブロック50を成形するには、型開き状態の型枠本体10(注:ピン30は妻板7に取付けられている。)と、4本の中子20を用意し、妻板7A,7Bを閉じる方向に回動させ、ピン30の先端部32の一部が側板3の端面より内側に位置するように、上端部が少量開いた小開き状態とする。このためこの例では、4個所に設けた小開きストッパ11を用いて、図8に示すようにレバー12の先端部12bを矢印R方向に回動させて、鎖線で示すように支持板14上に載った状態とする。この状態を図1にも鎖線で図示してある。すると自重により開方向に傾動する妻板7は、図9に妻板7Aの例で示すように、レバー12の先端部12bに妻板のリブ7c部外縁が当接する迄傾動して、上端部が少量P(たとえば10mm)だけ開いた小開き状態となる。
【0022】
そこで中子20を手で把持して上方から型枠本体10内へ挿入し、その基端面部21を側板3の内面(成形空間面)3a(図5参照)に沿わせて下降させ両端部において下側面部23をピンの先端部32に当接させて支持させ、同様にして4本の中子20を上記の支持状態とする。
【0023】
その後、図示しないクランプにより妻板7を閉鎖させて型閉じ状態とすれば、中子20は所定の凹部形成位置に位置決めされ、型枠本体10内に保持された状態となる。そこでこの型閉じ状態の型枠本体10の成形空間内にコンクリートの打設をおこなう。このとき中子20は図5に示すように、側板3の内面3aとピン30の間に、自重によりくさび状に挿入された状態となっているので、コンクリートの打設や、打設中に必要に応じておこなわれる型枠加振時においても、中子20は確実に凹部形成位置に保持されるのである。
【0024】
打設コンクリートが硬化したら、妻板7A,7Bを開いて、中子20が埋設されたコンクリート成形品を型枠本体10から取出し、続いて上記埋設されている中子20を打撃を与えるなどしてコンクリート成形品から抜き出せば、目的とする側面51に開口する凹部52を有する境界ブロック50を得ることができる。そして上記の妻板7A,7Bを開くことにより、各妻板と一体のピン30は上記コンクリート成形品の両端部から抜け出すので、コンクリート成形品の型枠本体10からの取出しは支障なくおこなえ、この取出し前には従来の型枠60(図11参照)のようなボルト(の取外し)による中子の側板からの取外し作業は全く不要である。なお得られた製品の長手方向両端部には、ピン30の先端部32に相当する凹穴が形成されるが、境界ブロック50としてはなんら支障をきたすものではない。そしてこの凹穴を、境界ブロック50の吊上げ時、及び/又は移動時に、引掛け孔として利用し、確実な吊上げと移動を確保することもできる。
【0025】
そしてコンクリート成形品から抜き出した中子20は、型開き状態の型枠本体10内へ上記の手順で挿入し保持させれば、直ちに次のロットの成形に供することができ、従って全工程を通して前記従来の型枠60のようなボルトによる中子の側板に対する着脱という煩雑な手作業は全く不要であり、また上記の手順による中子20の型枠本体10内への取付作業は容易で短時間で済むのである。また側板3の外側には、従来のようなボルトによる中子着脱作業のためのスペースは不要なので、例示したような4個取り、あるいはこれ以上の6個取り、8個取りなどの型枠を構成して、生産性向上をはかることができるのである。
【0026】
また上記の型枠1を用いて、凹部52を有しない境界ブロックを製造する場合は、妻板7に取付けてあるピン30を取外して、代わりに交換用ピン40を図7に示すように妻板7B(および7A)に取付け、中子20を除去した状態で型閉じした型枠本体10の成形空間内にコンクリートを打設すればよい。交換用ピン40の先端面42は妻板7B(および7A)の内面7bとほぼ面一なので、長手方向両端面が平面状で外観良好な、凹部52を有しない境界ブロックを得ることができる。
【0027】
そしてこのように型枠1は、凹部52の有り無しの二種類の製品の成形に用いることができ、凹部52の有り無しによって二種類の型枠を用意するのに比べて設備費が少なくて済み経済的であり、型枠保管スペースも少なくて済むのである。
【0028】
この発明は上記の例に限定されるものではなく、たとえば、ピン30および交換用ピン40としては、フランジ板に基部を固着したピンを妻板7に設けた貫通穴からなる穴部に貫通させて、該フランジ板部を妻板7の外側にねじ止めする構成のものを用いるなど、各部の具体的構造や形状などは上記以外のものとしてもよい。
【0029】
また中子20の下側面部23支持用に妻板の内面に突設する支持片としては、上記の妻板に着脱自在なピン30は用いずに、ピン状あるいは上記下側面部に沿う形で上面を傾斜配置した角片状の支持片などを、妻板に溶接やねじ止めなどにより固定取付けした構成としてもよい。
【0030】
また上記の例の型枠本体10は、小開きストッパ11をそなえているので、中子20の型枠本体10内への取付作業を迅速容易におこなえるが、この代わりにフック形式の引掛具などからなる小開きストッパを用いたり、型閉じ用のクランプを利用して小開き状態を保持したり、あるいは型閉じ後に中子20を型枠本体10内へ挿入して取付けるなどしてもよい。また上記の例においては、中子20の上側面部22の下端部に凹面を形成する逃げ部25を設けたが、この逃げ部25は設けなくてもよい。
【0031】
また上記の例は、片側の側面に凹部をそなえた境界ブロックを製造対象とした場合について述べたが、この発明は、中子の個数や配置位置、側板の断面形状等を変えることにより、傾斜山形状断面の凹部を成形品の両側面部に有するものや、図12に例示するようにL字状断面を有し凹部56,57をそなえた歩車道境界ブロック55や、U字溝の側面部に上記凹部をそなえたものなど、各種のコンクリート製品の製造用の型枠および製造方法に適用できるものである。また型枠は上記の例の4個取り以外のものとしてもよく、たとえば大型のコンクリート製品の場合などは、型枠は1個取りのものとしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…型枠、2…底板、3…側板、3a…内面、4…側板、6…台枠、7A…妻板、7B…妻板、7a…穴、7b…内面、9…ヒンジ部、10…型枠本体、20…中子、21…基端面部、22…上側面部、23…下側面部、24…頂面部、30…ピン、31…基部、32…先端部、40…交換用ピン、42…先端面、50…境界ブロック、51…側面、52…凹部、54…開口面、55…歩車道境界ブロック、56…凹部、57…凹部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート製品製造用の型枠と、この型枠を用いたコンクリート製品の製造方法に関し、さらに詳しくは、側面に全長にわたって開口し奥部側に向かって下方に傾斜した凹部を有するコンクリート製品の製造用の型枠およびこの型枠を用いたコンクリート製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路において、車道と歩道の間や、車道と中央分離帯との間を仕切るコンクリート製の境界ブロックを設置後、この境界ブロックとアスファルトやコンクリートなどの舗装材との間に発生した隙間部に侵入した種子の発芽等により、雑草が繁殖するのを阻止するコンクリートブロックとして、ブロック側面(壁面)に開口する種々の断面形状の凹部を設けたコンクリートブロックが提案されている。(たとえば特許文献1,2参照。)
【0003】
上記の凹部を設けたコンクリートブロックは、この凹部の形状によって、雑草の種子の発芽した芽が屈光性により上方へ伸び、根が向地性により下方へ伸びるのとは逆向きに、芽や根を誘導することにより、芽や根の成長を防止して防草性を得るものであり、図10に示すのは、上記特許文献1に例示されたものと近似した、中央分離帯形成用に好適に用いられる境界ブロック(防草ブロックとも称される。)である。図10はこの境界ブロック50の断面を示し、道路への設置時に車道側とは反対側となる側面51に開口する凹部52をブロック全長にわたって設けてあり、凹部52の上側内面および下側内面は、いずれも凹部の奥部側に向かって下方に傾斜しており、凹部52は全体として奥端53を頂面とする下方に傾斜した傾斜山形状の断面を有するものである。なおこの境界ブロック50は、後述するこの発明の実施の形態の例において、成形・製造対象としているものである。
【0004】
図11は上記の境界ブロック50の従来の製造方法を示すものであり、図示のように境界ブロック50は道路への設置時とは天地逆にした状態で成形されるものであり、この発明において型枠および成形時に関する上下方向は、この成形時における上下方向を称するものとする。図示のように従来の型枠60は、台枠61上に固設した底板62と側板63,64と、一対の開閉式の妻板とをそなえ、成形品(境界ブロック50)の側面51に開口し奥部側に向かって下方に傾斜した凹部52形成用に、凹部52と同じ断面形状(但し天地逆のため頂部に向かって上方に傾斜した傾斜山形状)の中子65の基端部を、複数本のボルト66によって側板63に締付固定してある。そして、型枠60内へコンクリートを打設し、この打設コンクリートの硬化後に作業員がボルト66を取外したのち、中子65を成形品と共に上方に取出し、この成形品から中子65を抜き出して、次の成形工程のために中子65を再度ボルト66により側板63に取付けるという工程を採用していた。
【0005】
このため、1回の成形ごとにボルト66による中子65の側板63に対する着脱という煩雑な手作業を必要とし、人手と労力を要し生産性も劣るうえ、型枠を図において左右に複数個並列配置した一体型の多数個取り型枠を用いようとしても、上記の側板63部の外側でのボルトによる中子着脱作業のためのスペースが必要なため、図11の型枠60を一対、左右対称配置した2個取りの型枠構成以上の、多数個取りの型枠の構成は不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3698265号公報
【特許文献2】特開2006−52626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は上記従来の問題点にかんがみてなされたもので、側面に開口し奥部側に向かって下方に傾斜した凹部を有するコンクリート製品の製造時において、煩雑な手作業を必要とせず生産性の向上をはかることができるとともに、多数個取りの型枠を構成して多数個取りをおこなうことができる、コンクリート製品製造用型枠およびコンクリート製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1記載のコンクリート製品製造用型枠は、側面に全長にわたって開口する凹部を有するコンクリート製品の製造用の型枠であって、台枠上に支持した底板と、該底板の左右両側縁にそれぞれ立設した側板と、前記台枠の前後両端部に下部を枢支され前後方向に傾動自在な一対の妻板とを具備してなる開閉式の型枠本体と、前記型枠本体内に着脱自在に配置される前記凹部形成用の中子であって、前記凹部の開口面形成用の基端面部に続く上方に傾斜した傾斜面状の上側面部と下側面部を、頂面部を介して接続してなる傾斜山形状の断面を有する中子とを、そなえ、前記型枠本体内の凹部形成位置に位置する前記中子の両端部の前記下側面部を支持して該中子を位置決めする支持片を、前記各妻板の内面に突設し、前記基端面部を前記側板の内面に沿って当接させた前記中子の両端部の前記下側面部を、前記支持片により支持することにより、前記中子を所定の凹部形成位置に保持するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、コンクリートを打設するに際して凹部形成用の中子はその基端面部を側板の内面に沿って当接させ、中子両端部の下側面部を支持片に当接させた状態で型枠本体内にセットするだけでよく、また型枠本体の成形空間内に打設したコンクリートの硬化後にコンクリート成形品を取出す際に、中子の側板からの取外し作業は全く必要としないので、従来のように1回の成形ごとにボルトによる中子の側板に対する着脱という煩雑な手作業を必要とした型枠に比べて、手作業は容易で短時間で済む。また従来のような側板外側での中子着脱作業のためのスペースは不要なので、長手方向に延びる成形品成形部を左右に複数個配列して、多数個取りの型枠も容易に構成できるのである。
【0010】
この発明において支持片としては、妻板の内面から突出するように溶接やねじ止めなどにより妻板に取付けた種々の形状のものを用いることができるが、請求項2記載の発明のように、前記支持片が、先端部が前記妻板の内面から突出し基部が前記妻板に設けた穴部に嵌合して該妻板に着脱自在に取付けられたピンからなり、前記ピンを前記妻板から取外したときの前記穴部に嵌合して先端面が前記妻板の内面とほぼ面一となる短尺の交換用ピンを具備している構成とすれば、凹部を有しないコンクリート製品を製造する場合に、妻板から前記ピンを取外してその代わりに前記交換用ピンを取付け、中子を内部に配置しない型枠本体を用いて成形をおこなえば、前後両端面が平面状で外観が良好な、凹部を有しないコンクリート製品を得ることができ、凹部有り無しの二種類の型枠を用意する必要がなく経済的である。
【0011】
また請求項3記載のコンクリート製品の製造方法は、請求項1または2に記載のコンクリート製品製造用型枠を用いて、前記基端面部を前記側板の内面に沿って当接させた前記中子の両端部の前記下側面部を、前記支持片により支持することにより、前記中子を所定の凹部形成位置に保持すると共に型閉じ状態にした前記型枠本体の成形空間内に、コンクリートを打設し、打設コンクリートの硬化後に前記両妻板を開いて、前記中子が埋設されたコンクリート成形品を前記型枠本体から取出し、この取出後に前記コンクリート成形品から前記中子を抜き出すことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明について前述したのと同様に、コンクリート製品製造時における中子着脱のための手作業は容易で短時間で済み、生産性を向上でき、さらに多数個取りの型枠を用いることにより生産性を一層向上できる。また打設コンクリートの硬化後に両妻板を開くことにより、各妻板と一体の支持片はコンクリート成形品の両端部から抜け出すので、コンクリート成形品の型枠本体からの取出しは支障なくおこなえる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したようにこの発明によれば、側面に開口し奥部側に向かって下方に傾斜した凹部を有するコンクリート製品の製造時において、煩雑な手作業を必要とせず生産性の向上をはかることができるとともに、多数個取りの型枠を構成して多数個取りをおこなうことができる。
【0014】
また上記の効果に加えて、請求項2記載の発明によれば、前記ピンの代わりに前記交換用ピンを用いることにより凹部を有しない外観良好なコンクリート製品を得ることができ、型枠を凹部有り無しの両製品成形用として兼用でき、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態の一例を示す型枠の平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1の型枠の側面図である。
【図4】図1における中子20の拡大断面図である。
【図5】図2のB部(中子20およびピン30の近傍部)拡大図である。
【図6】図5の中子20を除いた状態のC−C線断面図(a)、および取外した状態のピン30の側面図(b)である。
【図7】図6におけるピン30の代わりに交換用ピン40を用いた場合の図6相当図である。
【図8】図1の矢視D−D部正面図である。
【図9】図8における小開きストッパ11により妻板を小開きにした状態の矢視E−E部一部切欠側面図である。
【図10】図1の型枠により製造する境界ブロックの断面図である。
【図11】従来の境界ブロック製造用の型枠の断面図である。
【図12】この発明の製造対象品の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜図10に示す一例により、この発明の実施の形態を説明する。図1〜図3に全体構成を示す型枠1は、前述した図10に示す境界ブロック50を4個同時に成形できる4個取りの型枠であり、前後方向に延びる底板2の左右両縁部に側板3,4を一体に連設してなる成形品の外面部(長手方向端面を除く)形成用の型部材5を、台枠6上に4組並列に取付けてある。5a〜5cは、型部材5の上端部接続・補強用に溶接した天端板である。そしてこれら4組の型部材5の前端部および後端部を開閉する共通の前側の妻板7Aと後側の妻板7B(以下両者を総称する場合は妻板7と称する。)は、支軸8を有するヒンジ部9を介して下部を台枠6の前端部および後端部に枢支され、前後方向に傾動自在な傾動式の妻板であり、これらの妻板と上記4組の型部材5とによって4個の成形空間が画定された開閉式の型枠本体10が構成されている。20はこの型枠本体10内に着脱自在に配置される中子であり、その構成および支持構造については後述する。なお図2に示すように、4組の型部材5は左右方向を交互に入替えた形で台枠6上に並列に取付けてあるが、4組とも左右方向は同一(たとえば側板3は全て右側)としてもよい。
【0017】
図1〜図3において11は、妻板7を少量開いた状態に保持する小開きストッパで、型枠本体10の四隅部に設けられ、L字形のレバー12の基軸部12aを、側板3のリブ3b部に固設した円筒状の支持筒13により回転自在に支持し、不使用時には自重により先端部12bは実線図示のように垂下状態となるレバー12と、妻板7に基部を固設された前後方向に延びる支持板14とからなる。この小開きストッパ11の操作等については後述する。なお型枠本体10の図1における四隅部には、型閉じ時に妻板7を閉鎖状態に締付ける公知のトグル式のクランプ(型締具)を設けてあるが、その図示は省略してある。
【0018】
図1〜図3は中子20を所定の凹部形成位置に保持した型閉じ状態を示し、先ず中子20は、側板3の前後方向の長さより少量(たとえば0.5〜1mm)短い全長を有し、図4の断面図に示すように、境界ブロック50(図10参照)の凹部52の形状に対応して、凹部52の開口面54(側面51に開口する凹部52の上下各開口縁部間を結ぶ平面)を形成するための側板3の内面3a(図5参照)に沿う基端面部21に続く上方に傾斜した傾斜面状の上側面部22と、同じく基端面部21に続く上方に傾斜した傾斜面状の下側面部23とを、凹部52の奥端53の形状に対応する(この例では円弧状の)頂面部24を介して接続し、全体として基端面部21を底辺部とし頂部に向かって上方に傾斜した傾斜山形状の断面を有するものである。そして基端面部21の上縁に接続された上側面部22は上記凹部52(図10参照)の下側内面を、基端面部21の下縁に接続された下側面部23は上記凹部52の上側内面を、それぞれ形成するためのものであり、下側面部23は上側面部22より上方に大きく傾斜している。すなわち図4に示すように、基端面部21に直交する直交平面Hに対する下側面部23の傾斜角θ2は、上側面部22の傾斜角θ1より大である構成となっている。なお25は、打設コンクリート硬化後に中子20を成形品から抜き出す際に、凹部52開口縁部が欠けないように上側面部22の下端部に凹面を形成する逃げ部であり、この例では基端面部21の上縁に向かって上方に小角度傾斜した傾斜面で構成してあるが、この傾斜面の中央部を下方に向かって少量湾曲させた湾曲面などで構成してもよい。そしてこの逃げ部25を設けることにより、コンクリートの打設時にコンクリートのスムーズな流れが形成されて、精緻なコンクリート製品を成形することができるのである。
【0019】
そして型枠本体10内において中子20の両端部を支持して位置決めする支持片として、各妻板7A,7Bには、妻板内面側に先端部が突出するピン30を取付けてある。このピン30は、図5に示すように、中子20の下側面部23を支持する位置に設けられ、図6(中子20は図示せず)に示すように、妻板7Bに設けた穴7a部に基部31が着脱自在に嵌合し、この基部31に続く先端部32が妻板7Bの内面7bから突出し、その基端部に一体に設けたおねじ部33を穴7aの底板部を貫通させてナット34により締付固定してある。なおピン30の先端部32は、妻板7Bの開放時に支軸8(図3参照)の中心のまわりに妻板7Bと共に回動する先端部32によって、硬化後のコンクリート成形品に割れが生じないように、先細状の形状としてある。またおねじ部33に続いて角形断面の角棒部35を連設してあり、ナット34の回動操作時にピン30が回転しないように把持するための把持部としてある。なお妻板7Aにおいても、上記と同構成のピン30を設けてある。
【0020】
また図7は、前記ピン30を取外したときに用いられる交換用ピン40を示し、凹部52を有しない境界ブロックの成形時に用いられ、前記穴7a部に着脱自在に嵌合する丸棒部41が、穴7aの深さLとほぼ同一長さを有する他は、前記ピン30と同構成を有するものであり、妻板7B(および7A)への取付状態でその先端面42は妻板7B(および7A)の内面7bとほぼ面一となるものである。
【0021】
上記構成の型枠1により境界ブロック50を成形するには、型開き状態の型枠本体10(注:ピン30は妻板7に取付けられている。)と、4本の中子20を用意し、妻板7A,7Bを閉じる方向に回動させ、ピン30の先端部32の一部が側板3の端面より内側に位置するように、上端部が少量開いた小開き状態とする。このためこの例では、4個所に設けた小開きストッパ11を用いて、図8に示すようにレバー12の先端部12bを矢印R方向に回動させて、鎖線で示すように支持板14上に載った状態とする。この状態を図1にも鎖線で図示してある。すると自重により開方向に傾動する妻板7は、図9に妻板7Aの例で示すように、レバー12の先端部12bに妻板のリブ7c部外縁が当接する迄傾動して、上端部が少量P(たとえば10mm)だけ開いた小開き状態となる。
【0022】
そこで中子20を手で把持して上方から型枠本体10内へ挿入し、その基端面部21を側板3の内面(成形空間面)3a(図5参照)に沿わせて下降させ両端部において下側面部23をピンの先端部32に当接させて支持させ、同様にして4本の中子20を上記の支持状態とする。
【0023】
その後、図示しないクランプにより妻板7を閉鎖させて型閉じ状態とすれば、中子20は所定の凹部形成位置に位置決めされ、型枠本体10内に保持された状態となる。そこでこの型閉じ状態の型枠本体10の成形空間内にコンクリートの打設をおこなう。このとき中子20は図5に示すように、側板3の内面3aとピン30の間に、自重によりくさび状に挿入された状態となっているので、コンクリートの打設や、打設中に必要に応じておこなわれる型枠加振時においても、中子20は確実に凹部形成位置に保持されるのである。
【0024】
打設コンクリートが硬化したら、妻板7A,7Bを開いて、中子20が埋設されたコンクリート成形品を型枠本体10から取出し、続いて上記埋設されている中子20を打撃を与えるなどしてコンクリート成形品から抜き出せば、目的とする側面51に開口する凹部52を有する境界ブロック50を得ることができる。そして上記の妻板7A,7Bを開くことにより、各妻板と一体のピン30は上記コンクリート成形品の両端部から抜け出すので、コンクリート成形品の型枠本体10からの取出しは支障なくおこなえ、この取出し前には従来の型枠60(図11参照)のようなボルト(の取外し)による中子の側板からの取外し作業は全く不要である。なお得られた製品の長手方向両端部には、ピン30の先端部32に相当する凹穴が形成されるが、境界ブロック50としてはなんら支障をきたすものではない。そしてこの凹穴を、境界ブロック50の吊上げ時、及び/又は移動時に、引掛け孔として利用し、確実な吊上げと移動を確保することもできる。
【0025】
そしてコンクリート成形品から抜き出した中子20は、型開き状態の型枠本体10内へ上記の手順で挿入し保持させれば、直ちに次のロットの成形に供することができ、従って全工程を通して前記従来の型枠60のようなボルトによる中子の側板に対する着脱という煩雑な手作業は全く不要であり、また上記の手順による中子20の型枠本体10内への取付作業は容易で短時間で済むのである。また側板3の外側には、従来のようなボルトによる中子着脱作業のためのスペースは不要なので、例示したような4個取り、あるいはこれ以上の6個取り、8個取りなどの型枠を構成して、生産性向上をはかることができるのである。
【0026】
また上記の型枠1を用いて、凹部52を有しない境界ブロックを製造する場合は、妻板7に取付けてあるピン30を取外して、代わりに交換用ピン40を図7に示すように妻板7B(および7A)に取付け、中子20を除去した状態で型閉じした型枠本体10の成形空間内にコンクリートを打設すればよい。交換用ピン40の先端面42は妻板7B(および7A)の内面7bとほぼ面一なので、長手方向両端面が平面状で外観良好な、凹部52を有しない境界ブロックを得ることができる。
【0027】
そしてこのように型枠1は、凹部52の有り無しの二種類の製品の成形に用いることができ、凹部52の有り無しによって二種類の型枠を用意するのに比べて設備費が少なくて済み経済的であり、型枠保管スペースも少なくて済むのである。
【0028】
この発明は上記の例に限定されるものではなく、たとえば、ピン30および交換用ピン40としては、フランジ板に基部を固着したピンを妻板7に設けた貫通穴からなる穴部に貫通させて、該フランジ板部を妻板7の外側にねじ止めする構成のものを用いるなど、各部の具体的構造や形状などは上記以外のものとしてもよい。
【0029】
また中子20の下側面部23支持用に妻板の内面に突設する支持片としては、上記の妻板に着脱自在なピン30は用いずに、ピン状あるいは上記下側面部に沿う形で上面を傾斜配置した角片状の支持片などを、妻板に溶接やねじ止めなどにより固定取付けした構成としてもよい。
【0030】
また上記の例の型枠本体10は、小開きストッパ11をそなえているので、中子20の型枠本体10内への取付作業を迅速容易におこなえるが、この代わりにフック形式の引掛具などからなる小開きストッパを用いたり、型閉じ用のクランプを利用して小開き状態を保持したり、あるいは型閉じ後に中子20を型枠本体10内へ挿入して取付けるなどしてもよい。また上記の例においては、中子20の上側面部22の下端部に凹面を形成する逃げ部25を設けたが、この逃げ部25は設けなくてもよい。
【0031】
また上記の例は、片側の側面に凹部をそなえた境界ブロックを製造対象とした場合について述べたが、この発明は、中子の個数や配置位置、側板の断面形状等を変えることにより、傾斜山形状断面の凹部を成形品の両側面部に有するものや、図12に例示するようにL字状断面を有し凹部56,57をそなえた歩車道境界ブロック55や、U字溝の側面部に上記凹部をそなえたものなど、各種のコンクリート製品の製造用の型枠および製造方法に適用できるものである。また型枠は上記の例の4個取り以外のものとしてもよく、たとえば大型のコンクリート製品の場合などは、型枠は1個取りのものとしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…型枠、2…底板、3…側板、3a…内面、4…側板、6…台枠、7A…妻板、7B…妻板、7a…穴、7b…内面、9…ヒンジ部、10…型枠本体、20…中子、21…基端面部、22…上側面部、23…下側面部、24…頂面部、30…ピン、31…基部、32…先端部、40…交換用ピン、42…先端面、50…境界ブロック、51…側面、52…凹部、54…開口面、55…歩車道境界ブロック、56…凹部、57…凹部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に全長にわたって開口する凹部を有するコンクリート製品の製造用の型枠であって、
台枠上に支持した底板と、該底板の左右両側縁にそれぞれ立設した側板と、前記台枠の前後両端部に下部を枢支され前後方向に傾動自在な一対の妻板とを具備してなる開閉式の型枠本体と、
前記型枠本体内に着脱自在に配置される前記凹部形成用の中子であって、前記凹部の開口面形成用の基端面部に続く上方に傾斜した傾斜面状の上側面部と下側面部を、頂面部を介して接続してなる傾斜山形状の断面を有する中子とを、そなえ、
前記型枠本体内の凹部形成位置に位置する前記中子の両端部の前記下側面部を支持して該中子を位置決めする支持片を、前記各妻板の内面に突設し、
前記基端面部を前記側板の内面に沿って当接させた前記中子の両端部の前記下側面部を、前記支持片により支持することにより、前記中子を所定の凹部形成位置に保持するようにしたことを特徴とするコンクリート製品製造用型枠。
【請求項2】
前記支持片が、先端部が前記妻板の内面から突出し基部が前記妻板に設けた穴部に嵌合して該妻板に着脱自在に取付けられたピンからなり、前記ピンを前記妻板から取外したときの前記穴部に嵌合して先端面が前記妻板の内面とほぼ面一となる短尺の交換用ピンを具備していることを特徴とする請求項1記載のコンクリート製品製造用型枠。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコンクリート製品製造用型枠を用いて、
前記基端面部を前記側板の内面に沿って当接させた前記中子の両端部の前記下側面部を、前記支持片により支持することにより、前記中子を所定の凹部形成位置に保持すると共に型閉じ状態にした前記型枠本体の成形空間内に、コンクリートを打設し、
打設コンクリートの硬化後に前記両妻板を開いて、前記中子が埋設されたコンクリート成形品を前記型枠本体から取出し、
この取出後に前記コンクリート成形品から前記中子を抜き出すことを特徴とするコンクリート製品の製造方法。
【請求項1】
側面に全長にわたって開口する凹部を有するコンクリート製品の製造用の型枠であって、
台枠上に支持した底板と、該底板の左右両側縁にそれぞれ立設した側板と、前記台枠の前後両端部に下部を枢支され前後方向に傾動自在な一対の妻板とを具備してなる開閉式の型枠本体と、
前記型枠本体内に着脱自在に配置される前記凹部形成用の中子であって、前記凹部の開口面形成用の基端面部に続く上方に傾斜した傾斜面状の上側面部と下側面部を、頂面部を介して接続してなる傾斜山形状の断面を有する中子とを、そなえ、
前記型枠本体内の凹部形成位置に位置する前記中子の両端部の前記下側面部を支持して該中子を位置決めする支持片を、前記各妻板の内面に突設し、
前記基端面部を前記側板の内面に沿って当接させた前記中子の両端部の前記下側面部を、前記支持片により支持することにより、前記中子を所定の凹部形成位置に保持するようにしたことを特徴とするコンクリート製品製造用型枠。
【請求項2】
前記支持片が、先端部が前記妻板の内面から突出し基部が前記妻板に設けた穴部に嵌合して該妻板に着脱自在に取付けられたピンからなり、前記ピンを前記妻板から取外したときの前記穴部に嵌合して先端面が前記妻板の内面とほぼ面一となる短尺の交換用ピンを具備していることを特徴とする請求項1記載のコンクリート製品製造用型枠。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコンクリート製品製造用型枠を用いて、
前記基端面部を前記側板の内面に沿って当接させた前記中子の両端部の前記下側面部を、前記支持片により支持することにより、前記中子を所定の凹部形成位置に保持すると共に型閉じ状態にした前記型枠本体の成形空間内に、コンクリートを打設し、
打設コンクリートの硬化後に前記両妻板を開いて、前記中子が埋設されたコンクリート成形品を前記型枠本体から取出し、
この取出後に前記コンクリート成形品から前記中子を抜き出すことを特徴とするコンクリート製品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−179522(P2010−179522A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23951(P2009−23951)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(302047396)株式会社セフティシステム (2)
【出願人】(591110012)
【出願人】(509027814)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(302047396)株式会社セフティシステム (2)
【出願人】(591110012)
【出願人】(509027814)
【Fターム(参考)】
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