説明

コンクリート製管体

【課題】 大型化に対応可能なコンクリート製管体を提供すること。
【解決手段】 少なくとも軸方向両側のうちのいずれか一方の開口端部に、所定の開口部12と連結可能な継手部11を有し、連結時に前記開口部12と前記継手部11との隙間を密封するシール材13を前記継手部11に取り付けたコンクリート製管体1であって、コンクリート製管体1の躯体を、軸方向に沿った接合面を有するように分割した複数の分割体10から構成し、前記シール材13の接合位置を、前記分割体10の接合面位置に対して周方向にずらして構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボックスカルバートやヒューム管、推進管等のコンクリート製管体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボックスカルバートやヒューム管等のコンクリート製管体同士を軸方向に連結する場合には通常、内部流体の漏出を防止するといった目的で、シール材を介在させて管体同士の間を密封する。
このような管体同士の連結構造の一形態を示すものとして、一方の管体の軸方向一端部に設けた雄部を、他方の管体の軸方向他端部に設けた雌部に差し込んで嵌合させる方式のものがある(例えば特許文献1参照)。雄部と雌部との隙間を密封する環状のシール材は、差込み嵌合時に捩れ等が生じないように、雄部の外周(または雌部の内周)にあらかじめ取り付けておくことが好ましい。
【0003】
【特許文献1】特開2003−247677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記したコンクリート製管体にあっては、次のような問題が生じる。
(1)コンクリート製管体が大口径化すると、大型になって重量が過大となるため、運搬取扱い性が悪くなる。したがって、運搬取扱い性を考慮して寸法を制限する必要がある。
(2)運搬取扱いが容易となるように、コンクリート製管体を分割することが考えられるが、この場合には、十分なシール性を確保するためのシール材の設置形態が問題となり、新たに開発する必要がある。
【0005】
本発明は、上記したような従来の問題を解決するためになされたもので、大型化に対応可能なコンクリート製管体の提供を目的とする。
さらに本発明は、シール性に優れたコンクリート製管体の提供を目的とする。
本発明は、上記した目的のうちの少なくとも一つを達成するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような課題を解決するために、本願の第一の発明は、少なくとも軸方向両側のうちのいずれか一方の開口端部に、所定の開口部と連結可能な継手部を有し、連結時に前記開口部と前記継手部との隙間を密封するシール材を前記継手部に取り付けたコンクリート製管体であって、コンクリート製管体の躯体を、軸方向に沿った接合面を有するように分割した複数の分割体から構成し、前記シール材の接合位置を、前記分割体の接合面位置に対して周方向にずらして構成したことを特徴とする。
【0007】
また、本願の第二の発明は、少なくとも軸方向両側のうちのいずれか一方の開口端部に、所定の開口部と連結可能な継手部を有し、連結時に前記開口部と前記継手部との隙間を密封する環状シール材を前記継手部に取り付けたコンクリート製管体であって、コンクリート製管体の躯体を、軸方向に沿った接合面を有するように分割した複数の分割体から構成し、前記環状シール材を、接合可能な複数の分割シール材から構成し、前記分割シール材の接合端位置が前記分割体の接合面位置に対して周方向にずれるように、前記分割シール材をそれぞれ、前記分割体に取り付けたことを特徴とする。
【0008】
さらに、本願の第三の発明は、前記第一または二の発明であって、前記継手部は差込部であるとともに、前記開口部は、別のコンクリート製管体の開口端部に設けた、前記差込部が差込み連結可能な受け部であり、前記環状シール材を前記差込部の外周面に取り付けたことを特徴とする。
【0009】
さらに、本願の第四の発明は、前記第一または二の発明であって、前記開口部は、別のコンクリート製管体の開口端部に設けた差込部であるとともに、前記継手部は、前記差込部が差込み連結可能な受け部であり、前記環状シール材を前記受け部の内周面に取り付けたことを特徴とする。
【0010】
さらに、本願の第五の発明は、前記第二の発明に用いられる分割体であって、前記分割シール材を、前記継手部の周面に形成した取付け溝内に取り付け、分割体同士の接合時に、前記接合面から突出した前記分割シール材の接合端部を、隣接する分割体の前記取付け溝内に嵌め込むように構成したことを特徴とする。
【0011】
さらに、本願の第六の発明は、前記第五の発明であって、突出した前記分割シール材の接合端部が嵌まり込む前記取付け溝の周方向端部を、周方向端に向かって漸次幅が大きくなるように形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコンクリート製管体は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果のうちの少なくとも一つを得ることができる。
(1)躯体を、軸方向に沿った接合面を有するように分割した複数個の分割体から構成するため、運搬取扱い性が向上する。したがって、大型化が可能となる。
(2)環状シールを、周方向に分割した複数個の分割シール材を接合することにより構成するとともに、分割シール材の接合端位置が分割体の接合面位置に対して周方向にずれるように、分割シール材をそれぞれ分割体に取り付け、分割シール材の少なくとも一方の接合端部にあそびを持たせたので、隣り合う分割シール材の接合端部同士の位置を合わせ易い、すなわち接合端部同士を接合しやすい。
(3)分割シール材をそれぞれ、分割体の継手部の周面または差込部の外周面あるいは受け部の内周面に形成した取付け溝内に取り付け、分割体同士の接合時に、突出した分割シール材の接合端部を、隣接する分割体の取付け溝内に嵌め込んで分割シール材同士を接合するように構成することにより、隣り合う分割シール材の接合端部同士の位置を確実に合わせることが可能となるため、分割シール材同士の接合作業が容易となる。
(4)突出した分割シール材の接合端部が嵌まり込む取付け溝の周方向端部を、周方向端に向かって漸次幅が大きくなるように形成することにより、分割シール材の接合端部の取付け溝内への嵌め込み作業も容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
<1>コンクリート製管体
コンクリート製管体1は、図1、2に示すように、管軸方向一方側の開口端部に差込部11(継手部)を設け、管軸方向他方側の開口端部に受け部12を設けて構成する。
差込部11は、所定の開口部に連結可能、より具体的にここでは、別のコンクリート製管体1の受け部12内に差込み嵌合可能に構成する。これにより、コンクリート製管体1は、軸方向に複数個連結可能である。
差込部11の外周には、図3に示すように、所定の開口部との連結時、すなわち受け部12への差込み嵌合時に、差込部11と受け部12との隙間を密封する環状シール材13(シール材)を取り付ける。環状シール材13は、例えばゴム弾性材料製とすることができる。
なお、コンクリート製管体1の管軸方向断面形状は、ここでは矩形状であるが、この形状に限定されるものではない。
【0015】
<2>躯体
コンクリート製管体1の躯体は、管軸方向に沿った接合面を有するように分割した、あるいは周方向に分割した複数、ここでは2つの分割体10から構成する。分割体10同士の接合は、ボルトナット等の公知の手段を用いて行うことができる。
なお、ここでは躯体を平面部で分割したが、角部で分割してもよい。
【0016】
<3>環状シール
環状シール材13は、分断した、あるいは躯体の周方向に分割した複数、ここでは2つの分割シール材130を接合することにより構成する。分割シール材130はそれぞれ、分割体10に取り付ける。分割シール材130の取付けにあたっては、分割体10の差込部11の外周にわたって取付け溝111を形成しておき、この取付け溝111内に嵌め込んで例えば接着固定することにより行う。また、分割シール材130の嵌込みにあたっては、分割シール材130の取付け溝111への嵌込み部分に、周方向にわたって、管軸方向両側に突出する係合部132を設けておくとともに、取付け溝111には、この係合部132と管径方向に係合する係合溝部113を設けて構成する。これにより、取付け溝111に嵌め込んだ分割シール材130の脱落が防止される。この際に、分割シール材130の接合端位置が、分割体10の接合面位置に対して異なるように、すなわち周方向にずれるように構成する。
そして、分割体10(例えば10a、10b)同士の接合時に、1つの分割体10(例えば10a)の接合面から突出した分割シール材130(例えば130a)の接合端部131(例えば131a)または長さ方向端部を、隣接する他の分割体130(例えば130b)の取付け溝111(例えば111b)内に、周方向端部112(例えば112b)から嵌め込めるように構成する(図4参照)。
【0017】
突出した分割シール材130の接合端部131が嵌まり込む取付け溝111の周方向端部112は、周方向端に向かって漸次幅が大きくなるように形成しておく。取付け溝111の周方向端部112、または周方向端部112及びその近傍部は、金属製の導入部材114を埋め込んで構成する。導入部材114の表面には、接合端部131の嵌込み時の摩擦抵抗を抑えるために、例えばテフロン(登録商標)加工を施しておく。
【0018】
<4>分割体及び分割シール材の接合
複数個の分割体10からコンクリート製管体1を組み立てるには、まず、突出した分割シール材130の接合端部131を、隣接する分割体10の取付け溝111内に、周方向端部112から嵌め込ませるとともに、接合面同士を合わせて複数個の分割体10を接合する。この際に、隣り合う分割シール材130の接合端同士が突き合わされるため、分割シール材130の接合端にそれぞれ、あらかじめ接着剤を塗布しておくことが好ましい。これにより、分割シール材130同士が接合されて環状シール材13が構成される。
ここで、隣り合う分割体10同士で分割シール材130の寸法や取付け溝111の軸方向位置などに誤差が生じていても、突出した分割シール材130の接合端部131が比較的自由に変位変形できる上、取付け溝111の周方向端部112が、周方向端に向かって漸次拡幅しているので、このような誤差を吸収して、分割シール材130の接合端部131を、周方向端部112から取付け溝111内に容易に嵌め込むことができる。したがって、分割シール材130同士を確実に接合することができ、常に十分なシール性を確保すること可能となる。
分割シール材130の接合端部131の嵌込み後、接合端部131と取付け溝111内の周方向端部112とに隙間が生じている場合には、この隙間に接着剤を流し込んで埋めることが好ましい。
なお、環状シール13は、躯体の軸方向に複数本設けてもよい。
【0019】
<5>環状シールの取付け形態の変更例
環状シール材13は、図5に示すように、分割体10の数よりも多数、ここでは4つに分断した分割シール材130を接合することにより構成してもよい。この場合には、取付け溝111の周方向両端部112、112(一方側のみ図示)がそれぞれ開放されるように、分割シール材130(例えば130a、130b)を分割体10(例えば10a、10bにそれぞれ)にあらかじめ取り付けておく。そして、分割体10同士の接合時に、残りの分割シール材130(例えば130c、130d:130cのみ図示)を、それぞれの分割体130の取付け溝111(例えば111a、111b)内に、周方向端部112(例えば112a、112b)から嵌め込めんで取り付けるように構成することができる。
【0020】
<6>環状シールの取付け位置の変更例
環状シール13は、図6に示すように、差込部11の外周に変えて、受け部12(継手部)の内周に取り付けてもよい。ここでは、受け部12は、所定の開口に連結可能、より具体的には、別のコンクリート製管体1の差込部11が差込み嵌合可能に構成する。
環状シール13を構成する分割シール材130はそれぞれ、分割体10の受け部12の内周にわたって形成した取付け溝111内に取り付けることができる。
【0021】
<7>開口端部の変更例
コンクリート製管体1は、図7(a)に示すように、管軸方向両側の開口端部にそれぞれ、差込部11(継手部)を設けて構成してもよい。この場合には、例えば、管軸方向両側の開口端部にそれぞれ受け部12(開口部)を設けた、別のコンクリート製管体(図示せず)に差込み嵌合可能に構成することができる。
それぞれの差込部11の外周には、受け部12への差込み嵌合時に、差込部11と受け部12との隙間を密封する環状シール材13を取り付ける。
あるいは、コンクリート製管体1は、図7(b)に示すように、管軸方向両側の開口端部にそれぞれ、受け部12(継手部)を設けて構成してもよい。この場合には、例えば、管軸方向両側の開口端部にそれぞれ差込部11(開口部)を設けた、別のコンクリート製管体(図示せず)を差込み嵌合可能に構成することができる。それぞれの受け部12の内周には、差込部11の差込み嵌合時に、差込部11と受け部12との隙間を密封する環状シール材13を取り付ける。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のコンクリート製管体を示す斜視図。
【図2】コンクリート製管体を示す断面図。
【図3】差込部及び受け部の嵌合状態を示す図。
【図4】分割体同士及び分割シール材同士の接合を説明するための図。
【図5】環状シールの取付け形態の変更例を示す図。
【図6】環状シールの取付け位置の変更例を示す図。
【図7】開口端部の変更例を示す図。
【符号の説明】
【0023】
1・・・・コンクリート製管体
10・・・分割体
11・・・差込部(継手部:開口部)
12・・・受け部(開口部:継手部)
13・・・環状シール材(シール材)
130・・分割シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも軸方向両側のうちのいずれか一方の開口端部に、所定の開口部と連結可能な継手部を有し、連結時に前記開口部と前記継手部との隙間を密封するシール材を前記継手部に取り付けたコンクリート製管体であって、
コンクリート製管体の躯体を、軸方向に沿った接合面を有するように分割した複数の分割体から構成し、
前記シール材の接合位置を、前記分割体の接合面位置に対して周方向にずらして構成したことを特徴とする、
コンクリート製管体。
【請求項2】
少なくとも軸方向両側のうちのいずれか一方の開口端部に、所定の開口部と連結可能な継手部を有し、連結時に前記開口部と前記継手部との隙間を密封する環状シール材を前記継手部に取り付けたコンクリート製管体であって、
コンクリート製管体の躯体を、軸方向に沿った接合面を有するように分割した複数の分割体から構成し、
前記環状シール材を、接合可能な複数の分割シール材から構成し、
前記分割シール材の接合端位置が前記分割体の接合面位置に対して周方向にずれるように、前記分割シール材をそれぞれ、前記分割体に取り付けたことを特徴とする、
コンクリート製管体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコンクリート製管体であって、
前記継手部は差込部であるとともに、前記開口部は、別のコンクリート製管体の開口端部に設けた、前記差込部が差込み連結可能な受け部であり、
前記環状シール材を前記差込部の外周面に取り付けたことを特徴とする、
コンクリート製管体。
【請求項4】
請求項1または2に記載のコンクリート製管体であって、
前記開口部は、別のコンクリート製管体の開口端部に設けた差込部であるとともに、前記継手部は、前記差込部が差込み連結可能な受け部であり、
前記環状シール材を前記受け部の内周面に取り付けたことを特徴とする、
コンクリート製管体。
【請求項5】
請求項2に記載のコンクリート製管体を構成する分割体であって、
前記分割シール材を、前記継手部の周面に形成した取付け溝内に取り付け、
分割体同士の接合時に、前記接合面から突出した前記分割シール材の接合端部を、隣接する分割体の前記取付け溝内に嵌め込むように構成したことを特徴とする、
分割体。
【請求項6】
請求項5に記載の分割体であって、
突出した前記分割シール材の接合端部が嵌まり込む前記取付け溝の周方向端部を、周方向端に向かって漸次幅が大きくなるように形成したことを特徴とする、
分割体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−118266(P2006−118266A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308589(P2004−308589)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000229128)日本ゼニスパイプ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】