コンクリート連続体の養生装置および養生方法
【課題】最適な保温養生、湿潤養生、および連続養生を実現するコンクリート連続体の養生装置および養生方法を提供する。
【解決手段】養生装置10は、縦材2と横材3からなる骨格の外周部に張設された防水シート4と、噴霧管5と、エアバルグ6等で構成され、移動式コンクリート打設型枠装置1の後部に連結されている。前記エアバルグ6を膨張させてコンクリート連続体1に隙間なく密着させて、コンクリート連続体1と防水シート4とが形成する空間を密閉空間12に形成され、前記密閉空間12内の温度を水とセメントの水和反応の最大値と同等値に保持する保温養生が可能な構成とされている。また前記密閉空間12内の湿度を99〜100%に保持する湿潤養生が可能な構成とされている。さらに前記エアバルグ6はコンクリート連続体1との接触・摩耗により損傷しない材質が用いられ、連続養生が可能な構成とされている。
【解決手段】養生装置10は、縦材2と横材3からなる骨格の外周部に張設された防水シート4と、噴霧管5と、エアバルグ6等で構成され、移動式コンクリート打設型枠装置1の後部に連結されている。前記エアバルグ6を膨張させてコンクリート連続体1に隙間なく密着させて、コンクリート連続体1と防水シート4とが形成する空間を密閉空間12に形成され、前記密閉空間12内の温度を水とセメントの水和反応の最大値と同等値に保持する保温養生が可能な構成とされている。また前記密閉空間12内の湿度を99〜100%に保持する湿潤養生が可能な構成とされている。さらに前記エアバルグ6はコンクリート連続体1との接触・摩耗により損傷しない材質が用いられ、連続養生が可能な構成とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トンネル覆工コンクリート等の筒形のコンクリート連続体の養生装置および養生方法の技術分野に属し、更に云えば、初期強度を増大させ、且つコンクリート表面のひび割れ、剥離、剥落を防止して、品質、耐久性、及び美観性に優れたコンクリート連続体を実現するコンクリート連続体の養生装置および養生方法に関する。
ちなみに、前記コンクリート連続体とは、前記トンネル覆工コンクリートのほか、大型のボックスカルバートなどを指す。
【背景技術】
【0002】
筒形のコンクリート連続体(特には、トンネル覆工コンクリート)の養生装置および養生方法に関する発明は種々開示され、実施に供されている。そのなかでも、近年、初期強度を増大させ、且つコンクリート表面のひび割れ、剥離、剥落をできるだけ防止して、コンクリート連続体の品質改善に努めることを目的とする発明が種々開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
ところで、一般に、コンクリートの初期強度を増大させるには保温養生を行うことが最も効果的である。コンクリート表面のひび割れ、剥離、剥落を防止するには湿潤養生を行うことが最も効果的である。よって、前記保温養生と湿潤養生を同時期に行うことが、最も理想的なコンクリートを実現できると当業者に理解されている。
【0004】
特許文献1には、覆工コンクリートの内面に沿って間隔を隔ててトンネル軸方向の両端部が閉塞されたシートを設置して、覆工コンクリートとシートとの間に隔成された空間を形成して保温養生を行い、この空間内に水蒸気を充満させて湿潤養生を行う養生方法が開示されている(請求項1の記載等を参照)。
【0005】
特許文献2には、流体の供給によりアーチ状に膨らんで覆工コンクリート面に対しほぼ一様に外周面が密着する養生バルーンと、この養生バルーンをその内周面で支持して搭載するほぼ門形の移動台車とを備える養生装置が開示されている(請求項1の記載等を参照)。
【0006】
特許文献3には、打設型枠を取り外したコンクリートに対し、所要間隔をあけてコンクリートの表面を被覆するように防水シートを張設し、該防水シートとコンクリートとの間に空間部を形成して湿潤養生を行い、水和反応により経時的に温度変化するコンクリートに対し、その表面温度と略同じ温度に調整した水を前記空間部に噴霧し充満させて湿潤養生を行う養生方法が開示されている(請求項1の記載等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−73696号公報
【特許文献2】特開2005−299323号公報
【特許文献3】特開2008−223372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に係る発明は、保温養生と湿潤養生を同時期に行う技術ではあるが、以下に説明するような種々の問題点がある。
1)水蒸気を発生させる気化式加湿器(超音波加湿器)を用いる場合には、上水の使用が義務づけられている。しかし、上水の現地調達は困難な上に、地下水や河川水等の現地発生水を使用することもできず、実用性に乏しい。
2)覆工コンクリートとシートとの間に形成された空間を例えば湿度90%以上に保つためには、加湿器を多数必要とするか、大型の加湿器を使用しなければならず、コストが嵩む上にトンネル構内の通行スペースの妨げとなる虞が高い。
3)特許文献1の請求項1等の記載によると、トンネル軸方向の両端部が閉塞されたシートを設置し、覆工コンクリートとシートとの間に隔成された空間を形成するとあるが、シートとトンネル構内の地面との取り合いなど、隔成された空間を形成する具体的構成が開示されておらず、覆工コンクリートを高湿度で養生することは困難であると推認される。
現に、この発明内容が発表された2009年1月16日付け日刊建設工業新聞には、「密閉空間内を90%以上の高い湿度に保持できる」との記載がある。しかし、湿度が90%程度では強度増加が小さく、コンクリートそのものがもっているひび割れに抵抗する引張強度が小さくなり、確実にひび割れが生じることが本出願人が行った実験で分かっている(図13の表、B欄参照)。この本出願人による実験結果によると、コンクリート表面にひび割れを一切生じさせないためには、密閉空間内の湿度を99〜100%に保持する必要があることが分かっている(同C欄参照)。
4)特許文献1の段落[0026]によると、「妻材26を撤去して、上記操作を繰り返す」との記載が認められる。これではせっかく形成した密閉状態を養生装置を移動させる度に解除しなければならず、改めて密閉空間を形成するための手間がかかり、不合理、且つ不経済である。
5)近年、覆工コンクリートは、品質改善はもちろんのこと美観の向上も要求されている。具体的には、コンクリート表面に直接水が当たることにより、斑(まだら)模様が現れることを防止することであるが、この点については何ら改善されていない。
【0009】
次に、特許文献2に係る発明は、主として保温養生のみを目的としており、湿潤養生はまったく考慮されていない。よって、密閉空間内の湿度をせいぜい85〜90%程度に保持することはできても、それ以上の高湿度は望めず、やはりコンクリート表面に確実にひび割れが生じてしまう問題がある。
また、この特許文献2の段落[0019]によると、「所定の養生期間経過後は、送風機の運転を停止して養生バルーン20からエアーを排出し、次の養生区間に移動台車11を前進させる。」との記載がある。これでは特許文献1と同様、せっかく形成した密閉状態を移動台車11(養生装置)を移動させる度に解除しなければならず、改めて密閉空間を形成するための手間がかかり、不合理、且つ不経済である。
【0010】
特許文献3に係る発明は、保温養生と湿潤養生を同時期に行う技術ではあるが、湿潤養生は、コンクリートと防水シートの間に密閉空間を形成し、同密閉空間内の湿度を99〜100%に保持しなければコンクリート表面に確実にひび割れが生じるところ、この点を解決する具体的構成が開示されていない。
確かに、この特許文献3の段落[0019]には「略密閉の空間部を形成する」との記載があり、続いて「例えば、湿度100%となるように」と記載されてはいる。
しかし、湿度100%を保持するためには前記空間部は完全に密閉した空間でなければならず、略密閉の空間を形成する程度では湿度100%には及ばない。また、シートとトンネル構内の地面との取り合いなど、略密閉された空間を形成する具体的構成が一切開示されていない。
この点を裏付ける意味で、特許文献3は、請求項1等に「水和反応により経時的に温度変化するコンクリートに対し、その表面温度と略同じ温度に調整した水を前記空間部に噴霧し充満させる」との記載がある。本出願人が行った実物大実験によると、本出願に係る図12に示したように、トンネル覆工コンクリートとの間隔を300〜500mm程度に確保して完全に密閉した空間を形成してさえいれば、17時間(所謂セントル取り外し標準時間)経過後は、密閉空間内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値(本実験では34〜35℃)を恒常的に保持できることが分かっている。すなわち、この点を考慮してみても、特許文献3に係る空間部は、密閉空間を形成していないことに他ならない。
【0011】
本発明の目的は、前記コンクリート連続体と防水シートとが形成する空間を完全な密閉空間に形成して最適な保温養生を実現すると共に、噴霧ノズルの平均粒子径、取付けピッチ、及び噴霧量を適宜調整して前記密閉空間内の湿度を99〜100%に保持して最適な湿潤養生を実現する、コンクリート連続体の養生装置および養生方法を提供することである。
本発明の次の目的は、前記密閉空間を形成することに供するエアバルグの材質の選定、及び取付方法、並びに製造方法に工夫を施すことにより、連続養生を実現する、コンクリート連続体の養生装置および養生方法を提供することである。
本発明の更なる目的は、噴霧ノズルの取付角度、噴霧角度をコンクリート連続体の表面に対して適正な角度に調整して、コンクリート連続体の表面に直接当てることなく噴霧することにより、施工後に現れる斑模様を防止して美観に優れたコンクリート連続体を実現できる、コンクリート連続体の養生装置および養生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記背景技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るコンクリート連続体の養生装置は、移動式コンクリート打設型枠装置を用いて成形したトンネル覆工コンクリート等の筒形のコンクリート連続体の養生装置であって、
前記養生装置は、打設型枠を取り外した前記コンクリート連続体の内側面形状と類似する形状で、前記コンクリート連続体の前後方向へ並設された複数の縦材と、前記複数の縦材に固定された複数の横材と、前記縦材と横材からなる骨格の外周部に張設された防水シートと、前記横材とほぼ平行に設けられた噴霧管と、後端に位置する縦材の周方向に取付けられたエアバルグと、前記縦材を支持する支保部材と、前記支保部材の下端部に設けられた車輪とで構成され、前記移動式コンクリート打設型枠装置の後部に連結されていること、
前記縦材は、前記コンクリート連続体との間隔を300〜450mm確保して並設されていること、
前記噴霧管には、複数の噴霧ノズルが、前記防水シートから突き出して前記コンクリート連続体へ向けた配置で、前記コンクリート連続体と当該噴霧ノズルの先端との間隔を250〜400mm確保して設備されていること、
前記防水シートは、その前端部が前記移動式コンクリート打設型枠装置の後端部へ隙間なく止着され、左右の両端部は地面と重ね代を形成する程度の長さとされ、前記噴霧ノズルを通した開口部はシール部材で閉塞されていること、
前記エアバルグは、その左右の両端部が地面と重ね代を形成する程度の長さとされ、膨張させると前記コンクリート連続体に隙間なく密着するように取付けられていること、
前記エアバルグを膨張させて前記コンクリート連続体に隙間なく密着させて、養生装置の全長にわたり、コンクリート連続体と防水シートとが形成する空間を前端部の移動式コンクリート打設型枠装置と後端部のエアバルグとで密閉する密閉空間が形成され、前記密閉空間内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値に保持する保温養生が可能な構成とされていること、
前記噴霧ノズルは、平均粒子径が30〜65μの微霧を噴霧する性能を有し、当該微霧が前記コンクリート連続体の表面に当たらないような取付角度及び噴霧角度とされ、前記密閉空間内を微霧で充満させるのに適正な取付ピッチおよび噴霧量とされ、当該密閉空間内の湿度を99〜100%に保持する湿潤養生が可能な構成とされていること、
前記エアバルグは、膨張させたままの状態で移動させてもコンクリート連続体との接触・摩耗により損傷しない材質が用いられ、連続養生が可能な構成とされていること、
をそれぞれ特徴とする。
【0013】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載したコンクリート連続体の養生装置において、前記噴霧管は、前記縦材の周方向に、3.5m程度の間隔をあけて複数本設けられ、それぞれ、近傍に位置する横材に同横材とほぼ平行となる配置に固定されていること、
前記噴霧ノズルは、噴霧角度が50度で均等な扇形噴霧ノズルであり、固定式の二股アダプタを介して噴霧管に設備されていること、
前記二股アダプタは、前記噴霧管に3m程度のピッチで複数設けられていること、 前記二股アダプタに装着した2個の噴霧ノズルは、コンクリート連続体の表面に対して直角となる姿勢から、同コンクリート連続体の前後方向に互いに80度ずつ外向きに傾斜させた取付角度とされ、1個当たり1〜2リットル/時間の噴霧量で微霧を噴霧する構成とされていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載したコンクリート連続体の養生装置において、前記防水シートは、透明又は半透明の積層シートであり、その左右の両端部がそれぞれ、地面と70〜100cm程度の重ね代を形成する寸法とされていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載したコンクリート連続体の養生装置において、前記エアバルグは、厚さが250デニールで、膨張時の径が600mm程度であり、その左右の両端部がそれぞれ、地面と70〜100cm程度の重ね代を形成する長さとされていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載した発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載したコンクリート連続体の養生装置において、前記エアバルグは、後端に位置する縦材の周方向に取付けられた状態で膨張させると前記コンクリート連続体の表面に隙間なく密着するように、1体当たりの長さが10〜30cm程度の筒状で、前記コンクリート連続体の表面に当接する部位が該当接する表面とほぼ一致する曲率で形成され、前記縦材に当接する部位が該当接する縦材とほぼ一致する曲率で形成された複数のエアバルグ片を、前記コンクリート連続体の周方向に沿って一連に繋ぎ合わせ、且つ両端部は閉塞して製造されていることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載した発明は、請求項1〜5のいずれか一に記載したコンクリート連続体の養生装置において、前記エアバルグは、後端に位置する縦材の周方向に張設された防水シートの上面に前記縦材と一致する曲率で湾曲された幅40cm程度の鋼製板材を介して設けられ、前記防水シートと鋼製板材、及び前記鋼製板材とエアバルグは互いに両面接着テープで貼着されていることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載した発明に係るコンクリート連続体の養生方法は、請求項1〜6のいずれか一に記載の養生装置を、移動式コンクリート打設型枠装置の移動に伴い前進させて、打設型枠を取り外して露出させた前記コンクリート連続体を養生する養生区間で停止させた後、前記養生装置のエアバルグを前記コンクリート連続体へ隙間なく密着するように膨張させ、養生装置の全長にわたり、コンクリート連続体と防水シートとが形成する空間を、前端部の移動式コンクリート打設型枠装置と後端部のエアバルグとで密閉する密閉空間を形成し、前記密閉空間内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値に保持する保温養生を行うと共に、前記密閉空間内に、噴霧管に設備した複数の噴霧ノズルから平均粒子径が30〜65μの微霧をコンクリート連続体の表面に当たらないように噴霧することにより当該密閉空間内の湿度を99〜100%に保持する湿潤養生を行う段階と、
前記保温養生と湿潤養生を前記養生区間で24〜72時間行った後に、移動式コンクリート打設型枠装置を用いて成形したコンクリート連続体の施工に応じて、前記エアバルグを膨張させたまま、継続して前記保温養生と湿潤養生を行いつつコンクリート連続体の軸方向へ前進させて、養生区間毎に連続養生を行う段階とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るコンクリート連続体の養生装置および養生方法によれば、以下の効果を奏する。
1)エアバルグ6を膨張させて前記コンクリート連続体1に隙間なく密着させると、養生装置10の全長にわたり、コンクリート連続体1と防水シート4とが形成する空間12が、前端部の移動式コンクリート打設型枠装置11の後端の型枠部と後端部のエアバルグ6とで外気と遮断され、防水シート4の両端部が、重ね代効果により外気と遮断され、噴霧ノズル9が突き出した開口部はシール部材で閉塞されるので、前記空間12を完全な密閉空間12に形成することができる。
また、前記コンクリート連続体1と防水シート4との間隔は300〜450mm程度(本実施例では370mm)で実施するので、前記密閉空間12内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値(通常15〜40℃の範囲内)を恒常的に保持することができる(一例として、図12参照)。
したがって、最適な保温養生を実現することができる。
2)噴霧ノズル9の平均粒子径、取付角度、噴霧角度、取付ピッチ、および噴霧量を実物大実験に基づき設定することにより、前記密閉空間12内の湿度を99〜100%に保持することができる。
よって、施工後にひび割れを生じさせないで、品質および耐久性に非常に優れたトンネル覆工コンクリート1を実現できる。また、噴霧ノズル9から噴霧する微霧がトンネル覆工コンクリート1に直接当たることがないので、施工後に斑模様が生じないから、美観に優れたトンネル覆工コンクリート1を実現できる。
3)変化追従性と耐久性に優れた材質を選定し、且つ取付方法、及び製造方法に工夫を施したエアバルグ6を用いて実施するので、トンネル覆工コンクリート1の曲率に沿ってぴったり密着して密閉空間12を確実に実現でき、十分に膨張させたままの状態で移動式コンクリート打設型枠装置1の移動時にもぴったり密着したままの状態を保ち、密閉空間12を維持しつつ、トンネル覆工コンクリート1との接触・摩耗で損傷する虞もない。
よって、エアバルグ6を十分に膨張させたままの状態で密閉空間を確保し、最適な保温養生と湿潤養生を保持しつつ、連続養生を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るコンクリート連続体(トンネル覆工コンクリート)の養生装置を概略的に示した側面図である。
【図2】図1のX−X線矢視端面図である。
【図3】図1のY−Y線矢視端面図である。
【図4】図2の部分拡大図である。
【図5】図3の部分拡大図である。
【図6】Aは、噴霧管が横材に取付けられている態様を示した斜視図であり、Bは、同正面図である。
【図7】Aは、二股アダプタに装着された噴霧ノズルの噴霧形状に示した詳細図であり、Bは、同噴霧ノズルの取付状態を示した立面図である。
【図8】噴霧管と噴霧ノズルの取付状態を概略的に示した斜視図である。
【図9】Aは、噴霧ノズルの取付角度、噴霧角度等の具体的構成を特定するにあたり、実物大実験結果に基づく表であり、B〜Dはそれぞれ、表Aに係る補足図である。
【図10】Aは、ナイロンタフタ製のエアバルグの材質の厚さ(デニール)に応じて、膨張したエアバルグの耐久性、変化追従性が変化することを示した実物大実験結果に基づく表であり、BとDはそれぞれ、表Aに係る補足図である。
【図11】電動送風機の最大風量に応じて、膨張したエアバルグの変化追従性が変化することを示した実物大実験結果に基づく表である。
【図12】コンクリート連続体(トンネル覆工コンクリート)と防水シートとの間隔に応じて、密閉空間内のコンクリート連続体の表面温度が経時的に変化することを示した実物大実験結果に基づくグラフである。
【図13】トンネル覆工コンクリートのひび割れ試験結果を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係るコンクリート連続体の養生装置および養生方法の実施例を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1〜図6は、移動式コンクリート打設型枠装置(所謂セントル)11を用いて成形したトンネル覆工コンクリート(筒形のコンクリート連続体)1の養生装置10の概要を示している。
【0023】
前記養生装置10は、打設型枠を取り外した前記コンクリート連続体1の内側面形状と類似する形状で、前記コンクリート連続体1の前後方向へ並設された複数の縦材2と、前記複数の縦材2に固定された複数の横材3と、前記縦材2と横材3からなる骨格の外周部に張設された防水シート4と、前記横材3とほぼ平行に設けられた噴霧管5と、後端に位置する縦材2の周方向に取付けられたエアバルグ6と、前記縦材2を支持する支保部材7と、前記支保部材7の下端部に設けられた車輪8とで構成され、前記移動式コンクリート打設型枠装置11の後部に連結されている。ちなみに、図中の符号16は、送風管を示し、符号21は、トンネル構内の地面に敷設されたレールを示している。
すなわち、前記構成の養生装置10は、前記移動式コンクリート打設型枠装置11の移動に伴い、前記レール21に沿って追従可能な構成で実施されている。
なお、前記養生装置10を走行させる手段は、前記レール21に沿って走行させるレール方式に限らず、溝形鋼のフランジ上面を走行させる溝形鋼方式でも同様に実施できる。
【0024】
また、前記養生装置10は、前記縦材2が、前記コンクリート連続体1との間隔を300〜450mm確保して並設されている。
前記噴霧管5には、複数の噴霧ノズル9が、前記防水シート4から突き出して前記コンクリート連続体1へ向けた配置で、前記コンクリート連続体1と当該噴霧ノズル9の先端との間隔を250〜400mm確保して設備されている。
前記防水シート4は、その前端部が前記移動式コンクリート打設型枠装置11の後端部へ隙間なく止着され、左右の両端部は地面と重ね代を形成する程度の長さとされ、前記噴霧ノズル9を通した開口部はシール部材(図示省略)で閉塞されている。
前記エアバルグ6は、その左右の両端部が地面と重ね代を形成する程度の長さとされ、膨張させると前記コンクリート連続体1に隙間なく密着するように取付けられている。
【0025】
したがって、前記養生装置10は、前記エアバルグ6を膨張させて前記コンクリート連続体1に隙間なく密着させると、養生装置10の全長にわたり、コンクリート連続体1と防水シート4とが形成する空間12を前端部の移動式コンクリート打設型枠装置11と後端部のエアバルグ6とで密閉する密閉空間12が形成され、前記密閉空間12内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値(通常15〜40℃の範囲内)に保持する保温養生が可能な構成とされている。
また、前記噴霧ノズル9は、平均粒子径が30〜65μの微霧を噴霧する性能を有し、当該微霧が前記コンクリート連続体1の表面に当たらないような取付角度及び噴霧角度とされ、さらに前記密閉空間12内を微霧で充満させるのに適正な取付ピッチおよび噴霧量とされ、当該密閉空間12内の湿度を99〜100%に保持する湿潤養生が可能な構成とされている。
さらに、前記エアバルグ6は、膨張させたままの状態で移動させてもコンクリート連続体1との接触・摩耗により損傷しない材質が用いられ、連続養生が可能な構成とされている(以上、請求項1記載の発明)。
【0026】
ちなみに、図示例に係る養生装置10は、トンネル覆工コンクリート1が、通常10.5mの長さを1スパン(図1中の符号Sを参照)として施工されることを踏まえ、図1に示したように、3スパン分の長さ(30m程度)で実施されており、脱型した移動式コンクリート打設型枠装置11の区間毎に養生装置10を1スパン分前進させながら養生する構成で実施している。
なお、養生装置10の全長は図示例に限定されるものではなく、1乃至2スパン分の長さで実施することもできるし、4スパン以上の長さで実施することもできる。また、1スパンの長さも前記10.5mのほか、6m、9m、12mで実施する場合もある。
【0027】
要するに、本発明に係る養生装置10は、コンクリート連続体1と防水シート4とが形成する空間を完全な密閉空間12とすることにより、最適な保温養生、すなわち密閉空間12内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値(通常15〜40℃の範囲内)に保持する保温養生を実現することを第1の特徴とする。
また、実物大実験に基づき、噴霧ノズル9の平均粒子径、取付角度、噴霧角度、取付けピッチ、及び噴霧量を適宜調整することにより、最適な湿潤養生、すなわち前記密閉空間12内の湿度を、99〜100%に保持する湿潤養生を実現することを第2の特徴とする。
さらに、エアバルグ6の材質の選定、取付手法、及び製造方法に工夫を施すことにより、エアバルグを膨張させたままの状態で前記密閉空間12を確保し、最適な保温養生と湿潤養生を継続して保持しつつ養生装置を前進させる連続養生を実現することを第3の特徴とする。
以下、前記第1〜第3の各特徴を実現するための具体的構成を順に説明する。
【0028】
(最適な保温養生を実現するための構成(第一の特徴))
本実施例に係る縦材2は、径が60mmの中空の丸形鋼管(又は角形鋼管)を用い、打設型枠を取り外した前記コンクリート連続体1の内側面形状と類似するアーチ状に形成され、1スパン毎に5本ずつ計15本の縦材2を、トンネル覆工コンクリート1の軸方向へ170又は350mm程度の間隔をあけて並設している(図1参照)。
前記縦材2…は、前記コンクリート連続体1との間隔G(図4参照)を300〜450mm確保して並設されている。
前記間隔を300〜450mm確保する理由は、密閉空間12内の温度を水とセメントの水和反応の最大値と同等値に保持するには、図12に実物大実験結果を示したように、間隔を300〜500mmとする必要があること、及び450mmより間隔が大きいとトンネル掘削車の走行スペースを確保しづらいことを考慮したからである。
ちなみに、本実施例に係るコンクリート連続体1と防水シート4との間隔Gは、400mmで実施している。
前記縦材2…を支持する支保部材7は、複数の鋼材を溶接、ボルト等の接合手段で組み合わせてなり、前記縦材2と横材3から成る骨格を支持するのに十分な剛性で実施される。
【0029】
前記横材3は、前記縦材2を拘束するために設けられ、前記縦材2との交差部を、溶接、ボルト等の接合手段で縦材2に固定されている。
本実施例に係る横材3は、径が30mmの中空の丸形鋼管(又は角形鋼管)を用い、前記縦材2の周方向に沿って、その外側にバランスよく計17本設けているが、本数は勿論この限りではなく、使用する縦材2を安定した状態で拘束することを条件に、適宜増減して実施される。
よって、本実施例に係るコンクリート連続体1と防水シート4との間隔H(図4参照)は、防水シート4のシート厚を無視できるものとして、370mmで実施している。
【0030】
前記防水シート4は、非通気性のシートを用いることはもとより、保温性、耐久性、変化追従性に優れた材質を採用する。ちなみに、本実施例に係る防水シート4は、軽量で、耐久性に非常に優れたポリプロピレンシート層にポリエチレンクロスやポリプロピレンクロス等の樹脂クロスよりなる樹脂クロス層を積層した積層シートで実施されている。
前記防水シート4の大きさについては、前記縦材2と横材3からなる骨格の外周部をすべて覆うように弛みなく張設された状態で、その左右の両端部がそれぞれ、外気と遮断するべく、トンネル構内の地面と70〜100cm程度の重ね代T(図2参照)を形成する寸法とされている。さらにその端縁部は、養生装置10の走行等に起因する跳ね上がりを確実に防止するべく、20cm程度折り返されている。一方、前記防水シート4の前端部は、移動式コンクリート打設型枠装置11の後端の型枠部に沿ってテープ材で止着可能な寸法とされている。
また、本実施例に係る防水シート4は、前記防水シート4を透明、又は半透明の積層シートで実施することにより、作業員の目視により、噴霧ノズル9の噴霧状況を逐一チェックできる工夫が施されている。
かくして、前記防水シート4は、前記縦材2と横材3からなる骨格の外周部をすべて覆うように弛みなく張設された状態で、その前端部が、移動式コンクリート打設型枠装置11の後端の型枠部に沿ってテープ材で隙間なく止着されて外気と遮断され、その両端部が、トンネル構内の地面と70〜100cm程度の重ね代Tを形成して外気と遮断される。
【0031】
前記エアバルグ6は、変化追従性と耐久性に優れたナイロンタフタ製を用いている。
前記エアバルグ6は、図5に示したように、前記横材3の上面に弛みなく張設された防水シート4の上面に、後端に位置する縦材2と一致する曲率で湾曲された幅40cm程度の鋼製板材13を介して設けられ、前記防水シート4と鋼製板材13、及び前記鋼製板材13とエアバルグ6は互いに両面接着テープ(図示省略)で貼着されている。ちなみに、図中の符号14は、膨張時のエアバルグ6の形状を安定させる拘束部材(アングル材等)を示し、前記横材3に溶接、ボルト等の接合手段で取付けられている。
また、前記エアバルグ6は、前記防水シート4と同様に、外気と遮断するべく、その左右の両端部がそれぞれ、トンネル構内の地面と70〜100cm程度の重ね代T(図3参照)を形成する長さとされている。
【0032】
本実施例に係るエアバルグ6は、さらに、後端に位置する縦材2の周方向に取付けられた状態で膨張させると前記コンクリート連続体1の表面に隙間なく密着するように、1体当たりの長さが10〜30cm程度の筒状で、前記コンクリート連続体1の表面に当接する部位が該表面とほぼ一致する曲率で形成され、前記縦材2に当接する部位が該縦材2とほぼ一致する曲率で形成された複数のエアバルグ片(図示省略)を、前記コンクリート連続体1の周方向に沿って一連に繋ぎ合わせ(縫い合わせ)、且つ両端部は閉塞して製造されている。ちなみに、個々のエアバルグ片は、図3に示したトンネル正面方向から見ると、コンクリート連続体1に当接する部位を上辺とし、縦材2に当接する部位を下辺とするほぼ倒立台形状(又はバームクーヘン形状)に近似する形状に形成されている。
このように、前記エアバルグ6を複数のエアバルグ片を一連につなぎ合わせて製造する意義は、スプリングラインを境界線として上半と下半に区別され、3心円または2心円等で施工されるトンネル独特の特殊な中空断面形状にエアバルグ6の形状を適宜対応させて製造することにより、該エアバルグ6をトンネル(コンクリート連続体1)表面に確実に隙間なく密着させるためである。
なお、本実施例に係るエアバルグ6は、膨張時の径が600mm程度、全長が22m程度で実施している。また、前記エアバルグ6は、250デニールの厚さが好適であるが、この選定理由については後述する。
【0033】
上述した構成の養生装置10によれば、前記エアバルグ6を膨張させて前記コンクリート連続体1に隙間なく密着させると、養生装置10の全長にわたり、コンクリート連続体1と防水シート4とが形成する空間12が、前端部の移動式コンクリート打設型枠装置11の後端の型枠部と後端部のエアバルグ6とで外気と遮断され、防水シート4の両端部が、重ね代効果により外気と遮断され、噴霧ノズル9が突き出した開口部はシール部材で閉塞されるので、前記空間12を完全な密閉空間12に形成することができる。
また、前記コンクリート連続体1と防水シート4との間隔Hは370mmであるから、図12を参照すると、前記密閉空間12内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値(34〜35℃)を恒常的に保持できると云える。
したがって、最適な保温養生を実現することができる。
【0034】
(最適な湿潤養生を実現するための構成(第二の特徴))
本実施例に係る噴霧管5は、図2に示したように、前記縦材2のトンネル周方向に、噴霧管5を設けるのに適正な位置にバランスよく複数(図示例では4カ所)配置され、それぞれ、図6Aに示したように、その近傍に位置する横材3の軸線に沿ってほぼ平行に設けられている。また、各噴霧管5には、所定の間隔をあけて複数(図示例では3カ所)の噴霧ノズル9が設備されている。
前記噴霧管5を横材3に取付ける手法は種々あるが、本実施例では、図6Bに示したように、横材3と噴霧管5とを包持する重ね合わせ継手15を用いて取付けている。
【0035】
具体的に、前記噴霧管5は、管径が10mm程度、1本あたりの長さが7m程度で実施され、前記縦材2の周方向に3.5〜4.0m程度の等間隔をあけてバランスよく左右対称の配置に計4本設けられ、各箇所に設けた噴霧管5はそれぞれ、図2の紙面に垂直方向に、1スパンの区間毎に1本ずつ、計3本断続的に設けられている(図8参照)。すなわち、本実施例に係る噴霧管5は、1スパン毎に4本ずつ、計12本用いて実施している。
【0036】
前記噴霧ノズル9は、図6〜図8に示したように、固定式の二股アダプタ9aを介して噴霧管5に設備されている。
前記二股アダプタ9aは、前記噴霧管5に3m程度のピッチLで3カ所設けられ、各二股アダプタ9aには、2個の噴霧ノズル9が設けられている。要するに、本実施例に係る噴霧ノズル9は、1本の噴霧管5に6個ずつの計72個用いて実施している。
前記二股アダプタ9aに装着される2個の噴霧ノズル9は、図7A、Bに示したように、コンクリート連続体1の表面に対して、直角となる姿勢から、同コンクリート連続体の軸方向(Z)に互いに80度ずつ外向きに傾斜させた取付角度で実施されている。
なお、前記二股アダプタ9aは、回転式の二股アダプタでも実施可能ではあるが、トンネル覆工コンクリートの養生は一般に長期間にわたり行われるため、故障する虞のない固定式の二股アダプタ9aが好適に用いられる。
【0037】
前記した噴霧ノズル9の取付角度、二股アダプタ9a(噴霧ノズル9)の取付ピッチL等は、図9Aに示したように、本出願人が行った実物大実験結果に基づいて定められている。
ちなみに、図9A中、ノズル角度(θ)は、図9Bに示したように、トンネル覆工コンクリート1に対して直角となる姿勢から外向きに傾斜させた角度を示している。噴霧角度(θ)は、図9Cに示したように、噴霧ノズル9から噴霧する微霧の広がり角を示している。間隔(m)は、前記した7m程度の噴霧管5に取付ける二股アダプタ9a(噴霧ノズル9)の設置間隔Lを示している。湿度(%)は、この実物大実験を行った結果の前記密閉空間12内の湿度を示している。水温(℃)は、噴霧ノズル9から噴霧する微霧の水温を示している。噴霧形状高さ(h)は、図9Dに示したように、噴霧ノズル9から噴霧した微霧の最高到達点を示している。
ちなみに、実物大実験に係るトンネル覆工コンクリート(コンクリート連続体)1と噴霧ノズル9(防水シート4)との距離H(図9B参照)は、本実施例の高さと同じ370mmとしている。
【0038】
本出願人は、種々の組み合わせで実物大実験を行っている。図9A中のNo.(1)〜(4)は、種々の組み合わせで行った実物大実験のなかで、主要な実験結果のみ抜粋して表している。
なお、この実物大実験では、共通して、噴霧管5を、図2に示したように、左右対称配置に4箇所配設している。隣接する噴霧管5、5の間隔は、平面方向から見て3.5m程度としている。噴霧ノズル9は、微霧の噴霧平均粒子径が35〜60μm、ノズル径が11mmで、ノズル1個当たりの噴霧量が1〜2リットル/時間で噴霧している。
前記微霧の噴霧平均粒子径を35〜60μmの範囲内とする意義は、35μm未満とすると、前記密閉空間12内の湿度を99〜100%に保持するには噴霧ノズル9の設置ピッチを狭くして個数を増やす必要があるなど不経済であること、60μmを超えると、トンネル構内の地盤に水(養生水)が垂れ落ちて泥濘化する虞がありこれを防止する必要があること、を考慮した結果である。
【0039】
実物大実験の結果、図9A中、(1)は、湿度100%を保持できるものの、噴霧形状高さ(h)が520mmにも達し、これでは微霧がトンネル覆工コンクリート1に直接当たり、施工後のトンネル覆工コンクリート1の表面に斑模様が現れるのが明らかなので採用できないことが分かった。
(2)も、湿度100%を保持できるものの、噴霧形状高さ(h)が400mmに達し、これでは前記(1)と同様に、微霧がトンネル覆工コンクリート1に直接当たり、施工後のトンネル覆工コンクリート1の表面に斑模様が現れるのが明らかなので採用できないことが分かった。
(3)は、噴霧形状高さ(h)が290mmで、微霧がトンネル覆工コンクリート1に直接当たることはないが、噴霧管5に設置する間隔が4.5mと長く、前記密閉空間12内の湿度が95%に止まり、施工後のトンネル覆工コンクリート1の表面にひび割れを生じさせる虞が非常に高いので採用できないことが分かった。
これに対し、(4)は、噴霧形状高さ(h)が290mmで、微霧がトンネル覆工コンクリート1に直接当たることはない。また、前記(3)と比して噴霧管5に設置する間隔が3.0mと狭く、前記密閉空間12内の湿度を100%に保持できることが分かった。よって、斑模様が一切現れることなく美観に優れ、且つひび割れを生じさせる虞のないトンネル覆工コンクリート1を実現できることが分かった。
【0040】
したがって、本実施例では、前記実物大実験に基づき、平均粒子径が35〜60μmの微霧を噴霧できるチェックバルブ付き(作動圧0.3MPa)で、ノズル径が11mmの噴霧ノズル9を、1本が7m程度で径が10mmの噴霧管5に、3.0m程度の間隔で3個設置して、ノズル1個当たりの噴霧量を1〜2リットル/時間で噴霧している。
また、噴霧角度が50度の均等な扇形噴霧ノズル9で、トンネル覆工コンクリート1に対して直角となる姿勢から互いに80度傾けた状態で取付けて実施している。その他、本実施例で用いる噴霧ノズル9の形態に関する実寸は、図7A、Bに記載した通りである。
【0041】
前記噴霧ノズル9に水を供給する圧力ポンプ17(図1参照)は、噴霧ノズル9の粒径(性能)および設置数量に応じて適正な能力を選定する。前記実物大実験によると、通常のトンネル断面積(60〜94m2)の範囲内で、前記噴霧ノズル9を用い、移動式コンクリート打設型枠装置1の移動速度を2.1m/分に設定した場合に、前記噴霧量1〜2リットル/時間を実現するには、三相200V・750Wの圧力ポンプ(高圧ポンプ)17が好適である。この高圧ポンプ17を発電機18で作動させて貯水タンク(図示省略)から水を供給するのである。
なお、前記実物大実験によると、1台の高圧ポンプ17で、3スパン分にわたる噴霧ノズル9を噴霧量1〜2リットル/時間で実現できることが分かっている。なお、本実施例に係る高圧ポンプ17は、1スパン毎に個別に制御可能な構成で実施されている。
また、施工場所により、上水が使用できず、現地発生水や河川水を用いる場合には、噴霧ノズル9の目詰まりを防止し、連続噴霧を可能ならしめるべく、特殊なフィルターを2枚程装着した圧力ポンプ17を用いて実施することが好ましい。
【0042】
ここで、ノズル1個当たりの噴霧量1〜2リットル/時間を恒常的に維持するために用いる貯水タンクの構成について説明する。
例えば、3スパン分にわたる噴霧ノズル9をノズル1個あたり噴霧量1リットル/時間で噴霧する場合、容量が600リットルの貯水タンクを好適に用いる。噴霧ノズル9は計72個なので、1時間あたり72リットルの水(上水)を消費する。そうすると、8時間で576リットルの水を消費し、この時点で貯水タンクの水の残りは24リットルとなる。本発明では、連続養生の実現も大きな特徴としており、そのため、本実施例では、例えば貯水タンク内の水が少なくなる毎に自動的に貯水タンク内に水を供給して補給する、水洗トイレ等に用いられる所謂フロート方式を採用している。
【0043】
かくして、上記構成の噴霧ノズル9を設備した噴霧管5を有する養生装置10は、前記密閉空間12内の湿度を100%に保持することができる(図9A参照)。
よって、施工後にひび割れを生じさせない(図13のC欄を参照)、品質および耐久性に非常に優れたトンネル覆工コンクリート1を実現できるのである。また、噴霧ノズル9から噴霧する微霧がトンネル覆工コンクリート1に直接当たることがないので、施工後に斑模様が生じない、美観に優れたトンネル覆工コンクリート1を実現できるのである。
【0044】
(最適な連続養生を実現するための構成(第三の特徴))
前記エアバルグ6は、前記密閉空間12を恒常的に確保し、前記した最適な保温養生と湿潤養生を保持しつつ養生(所謂連続養生)することを確実に実現するため、単にナイロンタフタ製を採用するだけで止まらず、その中でも連続養生に優れたエアバルグ6を採用する必要がある。
図10Aは、ナイロンタフタの厚さ(単位:デニール)に関する実物大実験結果を示している。図10A中、空気圧による変位高さ(mm)は、図10Bに示したように、エアバルグを十分に膨張させた状態(H=600mm)でその上に幅50mmの平板19を載せ、人力で所定の力で押圧した場合に変化した高さ(h)を指す。破損判定は、図10Cに示したように、エアバルグを十分に膨張させた状態でその上に厚さ2mmのへら20を載せ、人力で軽く指圧した状態で左右にへら20を動かして摩擦を生じさせる工程を20往復行った結果を示している。
また、実物大実験に用いたエアバルグ6の寸法は、上記したように、膨張時の径が600mm、全長が22mであり、60Hzで5.5m3/分に調整した電動送風機で連続運転を行っている。
【0045】
実物大実験の結果、図10A中、No.(1)の厚さ50デニールのエアバルグ6は、空気圧による変化高さが600mmから300mmに変化し、変化追従性に優れていることは認められるものの、破損判定で破損が認められるので、トンネル覆工コンクリート1との摩擦で破損する虞が高く、連続養生には不向きであることが分かった。
また、(3)の厚さ500デニールのエアバルグ6は、破損判定で破損は認められないものの、空気圧による変化高さが600mmから410mmに止まり、変化追従性に劣るので、トンネル覆工コンクリート1にぴったり密着して密閉空間12を形成しづらく、不向きであることが分かった。
これに対し、(2)の厚さ250デニールのエアバルグ6は、空気圧による変化高さが600mmから350mmに変化し、変化追従性にも優れて、破損判定で破損も認められないので、トンネル覆工コンクリート1にぴったり密着して密閉空間12を形成することができ、且つ、確実に連続養生を行い得ることが分かった。
【0046】
また、前記エアバルグ6の実物大実験に密接に関連する前記電動送風機の連続運転について、最大風量を前記5.5m3/分で実施したことも実物大実験に基づいている。
図11は、厚さが250デニール、膨張時の径が600mm、全長が22mのエアバルグ6を用いた実験結果を示している。
図11中の空気圧による変位高さは、前記図10Bに示したように、エアバルグを十分に膨張させた状態(H=600mm)でその上に幅50mmの平板19を載せ、人力で所定の力で押圧した場合に変化した高さ(h)を指す。この値が、前記図10に係る250デニールの空気圧による変位高さ350mmと一致するのが、No.(2)の最大風量が5.5m3/分であることに基づいている。
【0047】
かくして、上記構成の養生装置10は、厚さが250デニールのエアバルグ6は、変化追従性に優れているので、トンネル覆工コンクリート1の曲率に沿ってぴったり密着して密閉空間12を確実に実現できる。また、耐久性にも優れているので、十分に膨張させたままの状態で移動式コンクリート打設型枠装置1の移動時にもぴったり密着したままの状態を保ち、密閉空間12を維持しつつ、トンネル覆工コンクリート1との接触・摩耗で損傷する虞もない。よって、エアバルグ6を十分に膨張させたままの状態で密閉空間12を確保し、最適な保温養生と湿潤養生を保持しつつ、連続養生を実現することができるのである。
【0048】
上述した構成の養生装置10を用いて行う養生方法は、以下のような手順で行われる。
【0049】
移動式コンクリート打設型枠装置1の移動に伴い前進させて、打設型枠を取り外して露出させたトンネル覆工コンクリート(コンクリート連続体)1を養生する養生区間で停止させた後、上記構成のエアバルグ6を、電動送風機を最大風量5.5m3/分で作動させる。
そうすると、前記エアバルグ6は、前記コンクリート連続体1に隙間なく密着するように十分に膨張する。また、養生装置10の全長にわたり、コンクリート連続体1と防水シート4とが形成する空間12が、前端部の移動式コンクリート打設型枠装置11の後端の型枠部と後端部のエアバルグ6とで外気と遮断され、防水シート4の両端部が、重ね代効果により外気と遮断され、噴霧ノズル9が突き出した開口部はシール部材で閉塞されるので、前記空間12を完全な密閉空間12に形成することができる。さらに、前記コンクリート連続体1と防水シート4との間隔Hは370mmであるから、図12を参照すると、前記密閉空間12内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値を恒常的に保持でき、最適な保温養生を行うことができる。
【0050】
前記保温養生と同時期に、前記高圧ポンプ17を発電機18で作動させて、噴霧管5に設備した上記構成の複数の噴霧ノズル9から平均粒子径が30〜65μの微霧をコンクリート連続体1の表面に当たらないように前記密閉空間12内に充満するように噴霧する。そうすると、当該密閉空間12内の湿度を99〜100%(本実施例では100%)に保持する最適な湿潤養生を行うことができる。
【0051】
かくして、前記保温養生と湿潤養生を前記養生区間で24〜72時間行う。そうすると、十分な保温養生と湿潤養生を行うことができる。その間に、移動式コンクリート打設型枠装置1により、次スパンSのコンクリート連続体1の施工を十分に完了させておくことができる。
【0052】
続いて、前記エアバルグ6を膨張させたまま、且つ前記噴霧ノズル9から微霧を噴霧させたままの状態で、施工が完了した次スパンSを養生する養生区間へ、養生台車10を前進させる。
次スパンSへ到達した養生台車10は、上記したように、最適な保温養生と湿潤養生を行うことができる。
一方、前記養生装置10が前進することにより、前記養生装置10の後端から順に露出するコンクリート連続体は、十分な保温養生と湿潤養生が行われているので、施工後にひび割れが一切生じることもなく、斑模様が現れる虞もなく、品質および美観に優れている。
【0053】
以上の工程を継続して繰り返し行うことにより、全長にわたり、ひび割れが生じることも一切なく(図13のC欄参照)、斑模様のない、高品質で美観に優れたトンネル覆工コンクリートを実現することができるのである。
【0054】
以上に実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
例えば、本実施例では、筒形のコンクリート連続体1としてトンネル覆工コンクリートを想定して説明しているがこれに限定されず、横材2を門形に形成する等の形式的な設計変更は伴うものの、大型のボックスカルバートの養生にも本発明は同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 トンネル覆工コンクリート(コンクリート連続体)
2 縦材
3 横材
4 防水シート
5 噴霧管
6 エアバルグ
7 支保部材
8 車輪
9 噴霧ノズル
9a 二股アダプタ
10 養生装置
11 移動式コンクリート打設型枠装置(セントル)
12 密閉空間
13 鋼製板材
14 拘束部材
15 重ね合わせ継手
16 送風管
17 圧力ポンプ(高圧ポンプ)
18 発電機
19 平板
20 へら
21 レール
【技術分野】
【0001】
この発明は、トンネル覆工コンクリート等の筒形のコンクリート連続体の養生装置および養生方法の技術分野に属し、更に云えば、初期強度を増大させ、且つコンクリート表面のひび割れ、剥離、剥落を防止して、品質、耐久性、及び美観性に優れたコンクリート連続体を実現するコンクリート連続体の養生装置および養生方法に関する。
ちなみに、前記コンクリート連続体とは、前記トンネル覆工コンクリートのほか、大型のボックスカルバートなどを指す。
【背景技術】
【0002】
筒形のコンクリート連続体(特には、トンネル覆工コンクリート)の養生装置および養生方法に関する発明は種々開示され、実施に供されている。そのなかでも、近年、初期強度を増大させ、且つコンクリート表面のひび割れ、剥離、剥落をできるだけ防止して、コンクリート連続体の品質改善に努めることを目的とする発明が種々開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
ところで、一般に、コンクリートの初期強度を増大させるには保温養生を行うことが最も効果的である。コンクリート表面のひび割れ、剥離、剥落を防止するには湿潤養生を行うことが最も効果的である。よって、前記保温養生と湿潤養生を同時期に行うことが、最も理想的なコンクリートを実現できると当業者に理解されている。
【0004】
特許文献1には、覆工コンクリートの内面に沿って間隔を隔ててトンネル軸方向の両端部が閉塞されたシートを設置して、覆工コンクリートとシートとの間に隔成された空間を形成して保温養生を行い、この空間内に水蒸気を充満させて湿潤養生を行う養生方法が開示されている(請求項1の記載等を参照)。
【0005】
特許文献2には、流体の供給によりアーチ状に膨らんで覆工コンクリート面に対しほぼ一様に外周面が密着する養生バルーンと、この養生バルーンをその内周面で支持して搭載するほぼ門形の移動台車とを備える養生装置が開示されている(請求項1の記載等を参照)。
【0006】
特許文献3には、打設型枠を取り外したコンクリートに対し、所要間隔をあけてコンクリートの表面を被覆するように防水シートを張設し、該防水シートとコンクリートとの間に空間部を形成して湿潤養生を行い、水和反応により経時的に温度変化するコンクリートに対し、その表面温度と略同じ温度に調整した水を前記空間部に噴霧し充満させて湿潤養生を行う養生方法が開示されている(請求項1の記載等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−73696号公報
【特許文献2】特開2005−299323号公報
【特許文献3】特開2008−223372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に係る発明は、保温養生と湿潤養生を同時期に行う技術ではあるが、以下に説明するような種々の問題点がある。
1)水蒸気を発生させる気化式加湿器(超音波加湿器)を用いる場合には、上水の使用が義務づけられている。しかし、上水の現地調達は困難な上に、地下水や河川水等の現地発生水を使用することもできず、実用性に乏しい。
2)覆工コンクリートとシートとの間に形成された空間を例えば湿度90%以上に保つためには、加湿器を多数必要とするか、大型の加湿器を使用しなければならず、コストが嵩む上にトンネル構内の通行スペースの妨げとなる虞が高い。
3)特許文献1の請求項1等の記載によると、トンネル軸方向の両端部が閉塞されたシートを設置し、覆工コンクリートとシートとの間に隔成された空間を形成するとあるが、シートとトンネル構内の地面との取り合いなど、隔成された空間を形成する具体的構成が開示されておらず、覆工コンクリートを高湿度で養生することは困難であると推認される。
現に、この発明内容が発表された2009年1月16日付け日刊建設工業新聞には、「密閉空間内を90%以上の高い湿度に保持できる」との記載がある。しかし、湿度が90%程度では強度増加が小さく、コンクリートそのものがもっているひび割れに抵抗する引張強度が小さくなり、確実にひび割れが生じることが本出願人が行った実験で分かっている(図13の表、B欄参照)。この本出願人による実験結果によると、コンクリート表面にひび割れを一切生じさせないためには、密閉空間内の湿度を99〜100%に保持する必要があることが分かっている(同C欄参照)。
4)特許文献1の段落[0026]によると、「妻材26を撤去して、上記操作を繰り返す」との記載が認められる。これではせっかく形成した密閉状態を養生装置を移動させる度に解除しなければならず、改めて密閉空間を形成するための手間がかかり、不合理、且つ不経済である。
5)近年、覆工コンクリートは、品質改善はもちろんのこと美観の向上も要求されている。具体的には、コンクリート表面に直接水が当たることにより、斑(まだら)模様が現れることを防止することであるが、この点については何ら改善されていない。
【0009】
次に、特許文献2に係る発明は、主として保温養生のみを目的としており、湿潤養生はまったく考慮されていない。よって、密閉空間内の湿度をせいぜい85〜90%程度に保持することはできても、それ以上の高湿度は望めず、やはりコンクリート表面に確実にひび割れが生じてしまう問題がある。
また、この特許文献2の段落[0019]によると、「所定の養生期間経過後は、送風機の運転を停止して養生バルーン20からエアーを排出し、次の養生区間に移動台車11を前進させる。」との記載がある。これでは特許文献1と同様、せっかく形成した密閉状態を移動台車11(養生装置)を移動させる度に解除しなければならず、改めて密閉空間を形成するための手間がかかり、不合理、且つ不経済である。
【0010】
特許文献3に係る発明は、保温養生と湿潤養生を同時期に行う技術ではあるが、湿潤養生は、コンクリートと防水シートの間に密閉空間を形成し、同密閉空間内の湿度を99〜100%に保持しなければコンクリート表面に確実にひび割れが生じるところ、この点を解決する具体的構成が開示されていない。
確かに、この特許文献3の段落[0019]には「略密閉の空間部を形成する」との記載があり、続いて「例えば、湿度100%となるように」と記載されてはいる。
しかし、湿度100%を保持するためには前記空間部は完全に密閉した空間でなければならず、略密閉の空間を形成する程度では湿度100%には及ばない。また、シートとトンネル構内の地面との取り合いなど、略密閉された空間を形成する具体的構成が一切開示されていない。
この点を裏付ける意味で、特許文献3は、請求項1等に「水和反応により経時的に温度変化するコンクリートに対し、その表面温度と略同じ温度に調整した水を前記空間部に噴霧し充満させる」との記載がある。本出願人が行った実物大実験によると、本出願に係る図12に示したように、トンネル覆工コンクリートとの間隔を300〜500mm程度に確保して完全に密閉した空間を形成してさえいれば、17時間(所謂セントル取り外し標準時間)経過後は、密閉空間内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値(本実験では34〜35℃)を恒常的に保持できることが分かっている。すなわち、この点を考慮してみても、特許文献3に係る空間部は、密閉空間を形成していないことに他ならない。
【0011】
本発明の目的は、前記コンクリート連続体と防水シートとが形成する空間を完全な密閉空間に形成して最適な保温養生を実現すると共に、噴霧ノズルの平均粒子径、取付けピッチ、及び噴霧量を適宜調整して前記密閉空間内の湿度を99〜100%に保持して最適な湿潤養生を実現する、コンクリート連続体の養生装置および養生方法を提供することである。
本発明の次の目的は、前記密閉空間を形成することに供するエアバルグの材質の選定、及び取付方法、並びに製造方法に工夫を施すことにより、連続養生を実現する、コンクリート連続体の養生装置および養生方法を提供することである。
本発明の更なる目的は、噴霧ノズルの取付角度、噴霧角度をコンクリート連続体の表面に対して適正な角度に調整して、コンクリート連続体の表面に直接当てることなく噴霧することにより、施工後に現れる斑模様を防止して美観に優れたコンクリート連続体を実現できる、コンクリート連続体の養生装置および養生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記背景技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るコンクリート連続体の養生装置は、移動式コンクリート打設型枠装置を用いて成形したトンネル覆工コンクリート等の筒形のコンクリート連続体の養生装置であって、
前記養生装置は、打設型枠を取り外した前記コンクリート連続体の内側面形状と類似する形状で、前記コンクリート連続体の前後方向へ並設された複数の縦材と、前記複数の縦材に固定された複数の横材と、前記縦材と横材からなる骨格の外周部に張設された防水シートと、前記横材とほぼ平行に設けられた噴霧管と、後端に位置する縦材の周方向に取付けられたエアバルグと、前記縦材を支持する支保部材と、前記支保部材の下端部に設けられた車輪とで構成され、前記移動式コンクリート打設型枠装置の後部に連結されていること、
前記縦材は、前記コンクリート連続体との間隔を300〜450mm確保して並設されていること、
前記噴霧管には、複数の噴霧ノズルが、前記防水シートから突き出して前記コンクリート連続体へ向けた配置で、前記コンクリート連続体と当該噴霧ノズルの先端との間隔を250〜400mm確保して設備されていること、
前記防水シートは、その前端部が前記移動式コンクリート打設型枠装置の後端部へ隙間なく止着され、左右の両端部は地面と重ね代を形成する程度の長さとされ、前記噴霧ノズルを通した開口部はシール部材で閉塞されていること、
前記エアバルグは、その左右の両端部が地面と重ね代を形成する程度の長さとされ、膨張させると前記コンクリート連続体に隙間なく密着するように取付けられていること、
前記エアバルグを膨張させて前記コンクリート連続体に隙間なく密着させて、養生装置の全長にわたり、コンクリート連続体と防水シートとが形成する空間を前端部の移動式コンクリート打設型枠装置と後端部のエアバルグとで密閉する密閉空間が形成され、前記密閉空間内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値に保持する保温養生が可能な構成とされていること、
前記噴霧ノズルは、平均粒子径が30〜65μの微霧を噴霧する性能を有し、当該微霧が前記コンクリート連続体の表面に当たらないような取付角度及び噴霧角度とされ、前記密閉空間内を微霧で充満させるのに適正な取付ピッチおよび噴霧量とされ、当該密閉空間内の湿度を99〜100%に保持する湿潤養生が可能な構成とされていること、
前記エアバルグは、膨張させたままの状態で移動させてもコンクリート連続体との接触・摩耗により損傷しない材質が用いられ、連続養生が可能な構成とされていること、
をそれぞれ特徴とする。
【0013】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載したコンクリート連続体の養生装置において、前記噴霧管は、前記縦材の周方向に、3.5m程度の間隔をあけて複数本設けられ、それぞれ、近傍に位置する横材に同横材とほぼ平行となる配置に固定されていること、
前記噴霧ノズルは、噴霧角度が50度で均等な扇形噴霧ノズルであり、固定式の二股アダプタを介して噴霧管に設備されていること、
前記二股アダプタは、前記噴霧管に3m程度のピッチで複数設けられていること、 前記二股アダプタに装着した2個の噴霧ノズルは、コンクリート連続体の表面に対して直角となる姿勢から、同コンクリート連続体の前後方向に互いに80度ずつ外向きに傾斜させた取付角度とされ、1個当たり1〜2リットル/時間の噴霧量で微霧を噴霧する構成とされていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載したコンクリート連続体の養生装置において、前記防水シートは、透明又は半透明の積層シートであり、その左右の両端部がそれぞれ、地面と70〜100cm程度の重ね代を形成する寸法とされていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載したコンクリート連続体の養生装置において、前記エアバルグは、厚さが250デニールで、膨張時の径が600mm程度であり、その左右の両端部がそれぞれ、地面と70〜100cm程度の重ね代を形成する長さとされていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載した発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載したコンクリート連続体の養生装置において、前記エアバルグは、後端に位置する縦材の周方向に取付けられた状態で膨張させると前記コンクリート連続体の表面に隙間なく密着するように、1体当たりの長さが10〜30cm程度の筒状で、前記コンクリート連続体の表面に当接する部位が該当接する表面とほぼ一致する曲率で形成され、前記縦材に当接する部位が該当接する縦材とほぼ一致する曲率で形成された複数のエアバルグ片を、前記コンクリート連続体の周方向に沿って一連に繋ぎ合わせ、且つ両端部は閉塞して製造されていることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載した発明は、請求項1〜5のいずれか一に記載したコンクリート連続体の養生装置において、前記エアバルグは、後端に位置する縦材の周方向に張設された防水シートの上面に前記縦材と一致する曲率で湾曲された幅40cm程度の鋼製板材を介して設けられ、前記防水シートと鋼製板材、及び前記鋼製板材とエアバルグは互いに両面接着テープで貼着されていることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載した発明に係るコンクリート連続体の養生方法は、請求項1〜6のいずれか一に記載の養生装置を、移動式コンクリート打設型枠装置の移動に伴い前進させて、打設型枠を取り外して露出させた前記コンクリート連続体を養生する養生区間で停止させた後、前記養生装置のエアバルグを前記コンクリート連続体へ隙間なく密着するように膨張させ、養生装置の全長にわたり、コンクリート連続体と防水シートとが形成する空間を、前端部の移動式コンクリート打設型枠装置と後端部のエアバルグとで密閉する密閉空間を形成し、前記密閉空間内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値に保持する保温養生を行うと共に、前記密閉空間内に、噴霧管に設備した複数の噴霧ノズルから平均粒子径が30〜65μの微霧をコンクリート連続体の表面に当たらないように噴霧することにより当該密閉空間内の湿度を99〜100%に保持する湿潤養生を行う段階と、
前記保温養生と湿潤養生を前記養生区間で24〜72時間行った後に、移動式コンクリート打設型枠装置を用いて成形したコンクリート連続体の施工に応じて、前記エアバルグを膨張させたまま、継続して前記保温養生と湿潤養生を行いつつコンクリート連続体の軸方向へ前進させて、養生区間毎に連続養生を行う段階とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るコンクリート連続体の養生装置および養生方法によれば、以下の効果を奏する。
1)エアバルグ6を膨張させて前記コンクリート連続体1に隙間なく密着させると、養生装置10の全長にわたり、コンクリート連続体1と防水シート4とが形成する空間12が、前端部の移動式コンクリート打設型枠装置11の後端の型枠部と後端部のエアバルグ6とで外気と遮断され、防水シート4の両端部が、重ね代効果により外気と遮断され、噴霧ノズル9が突き出した開口部はシール部材で閉塞されるので、前記空間12を完全な密閉空間12に形成することができる。
また、前記コンクリート連続体1と防水シート4との間隔は300〜450mm程度(本実施例では370mm)で実施するので、前記密閉空間12内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値(通常15〜40℃の範囲内)を恒常的に保持することができる(一例として、図12参照)。
したがって、最適な保温養生を実現することができる。
2)噴霧ノズル9の平均粒子径、取付角度、噴霧角度、取付ピッチ、および噴霧量を実物大実験に基づき設定することにより、前記密閉空間12内の湿度を99〜100%に保持することができる。
よって、施工後にひび割れを生じさせないで、品質および耐久性に非常に優れたトンネル覆工コンクリート1を実現できる。また、噴霧ノズル9から噴霧する微霧がトンネル覆工コンクリート1に直接当たることがないので、施工後に斑模様が生じないから、美観に優れたトンネル覆工コンクリート1を実現できる。
3)変化追従性と耐久性に優れた材質を選定し、且つ取付方法、及び製造方法に工夫を施したエアバルグ6を用いて実施するので、トンネル覆工コンクリート1の曲率に沿ってぴったり密着して密閉空間12を確実に実現でき、十分に膨張させたままの状態で移動式コンクリート打設型枠装置1の移動時にもぴったり密着したままの状態を保ち、密閉空間12を維持しつつ、トンネル覆工コンクリート1との接触・摩耗で損傷する虞もない。
よって、エアバルグ6を十分に膨張させたままの状態で密閉空間を確保し、最適な保温養生と湿潤養生を保持しつつ、連続養生を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るコンクリート連続体(トンネル覆工コンクリート)の養生装置を概略的に示した側面図である。
【図2】図1のX−X線矢視端面図である。
【図3】図1のY−Y線矢視端面図である。
【図4】図2の部分拡大図である。
【図5】図3の部分拡大図である。
【図6】Aは、噴霧管が横材に取付けられている態様を示した斜視図であり、Bは、同正面図である。
【図7】Aは、二股アダプタに装着された噴霧ノズルの噴霧形状に示した詳細図であり、Bは、同噴霧ノズルの取付状態を示した立面図である。
【図8】噴霧管と噴霧ノズルの取付状態を概略的に示した斜視図である。
【図9】Aは、噴霧ノズルの取付角度、噴霧角度等の具体的構成を特定するにあたり、実物大実験結果に基づく表であり、B〜Dはそれぞれ、表Aに係る補足図である。
【図10】Aは、ナイロンタフタ製のエアバルグの材質の厚さ(デニール)に応じて、膨張したエアバルグの耐久性、変化追従性が変化することを示した実物大実験結果に基づく表であり、BとDはそれぞれ、表Aに係る補足図である。
【図11】電動送風機の最大風量に応じて、膨張したエアバルグの変化追従性が変化することを示した実物大実験結果に基づく表である。
【図12】コンクリート連続体(トンネル覆工コンクリート)と防水シートとの間隔に応じて、密閉空間内のコンクリート連続体の表面温度が経時的に変化することを示した実物大実験結果に基づくグラフである。
【図13】トンネル覆工コンクリートのひび割れ試験結果を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係るコンクリート連続体の養生装置および養生方法の実施例を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1〜図6は、移動式コンクリート打設型枠装置(所謂セントル)11を用いて成形したトンネル覆工コンクリート(筒形のコンクリート連続体)1の養生装置10の概要を示している。
【0023】
前記養生装置10は、打設型枠を取り外した前記コンクリート連続体1の内側面形状と類似する形状で、前記コンクリート連続体1の前後方向へ並設された複数の縦材2と、前記複数の縦材2に固定された複数の横材3と、前記縦材2と横材3からなる骨格の外周部に張設された防水シート4と、前記横材3とほぼ平行に設けられた噴霧管5と、後端に位置する縦材2の周方向に取付けられたエアバルグ6と、前記縦材2を支持する支保部材7と、前記支保部材7の下端部に設けられた車輪8とで構成され、前記移動式コンクリート打設型枠装置11の後部に連結されている。ちなみに、図中の符号16は、送風管を示し、符号21は、トンネル構内の地面に敷設されたレールを示している。
すなわち、前記構成の養生装置10は、前記移動式コンクリート打設型枠装置11の移動に伴い、前記レール21に沿って追従可能な構成で実施されている。
なお、前記養生装置10を走行させる手段は、前記レール21に沿って走行させるレール方式に限らず、溝形鋼のフランジ上面を走行させる溝形鋼方式でも同様に実施できる。
【0024】
また、前記養生装置10は、前記縦材2が、前記コンクリート連続体1との間隔を300〜450mm確保して並設されている。
前記噴霧管5には、複数の噴霧ノズル9が、前記防水シート4から突き出して前記コンクリート連続体1へ向けた配置で、前記コンクリート連続体1と当該噴霧ノズル9の先端との間隔を250〜400mm確保して設備されている。
前記防水シート4は、その前端部が前記移動式コンクリート打設型枠装置11の後端部へ隙間なく止着され、左右の両端部は地面と重ね代を形成する程度の長さとされ、前記噴霧ノズル9を通した開口部はシール部材(図示省略)で閉塞されている。
前記エアバルグ6は、その左右の両端部が地面と重ね代を形成する程度の長さとされ、膨張させると前記コンクリート連続体1に隙間なく密着するように取付けられている。
【0025】
したがって、前記養生装置10は、前記エアバルグ6を膨張させて前記コンクリート連続体1に隙間なく密着させると、養生装置10の全長にわたり、コンクリート連続体1と防水シート4とが形成する空間12を前端部の移動式コンクリート打設型枠装置11と後端部のエアバルグ6とで密閉する密閉空間12が形成され、前記密閉空間12内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値(通常15〜40℃の範囲内)に保持する保温養生が可能な構成とされている。
また、前記噴霧ノズル9は、平均粒子径が30〜65μの微霧を噴霧する性能を有し、当該微霧が前記コンクリート連続体1の表面に当たらないような取付角度及び噴霧角度とされ、さらに前記密閉空間12内を微霧で充満させるのに適正な取付ピッチおよび噴霧量とされ、当該密閉空間12内の湿度を99〜100%に保持する湿潤養生が可能な構成とされている。
さらに、前記エアバルグ6は、膨張させたままの状態で移動させてもコンクリート連続体1との接触・摩耗により損傷しない材質が用いられ、連続養生が可能な構成とされている(以上、請求項1記載の発明)。
【0026】
ちなみに、図示例に係る養生装置10は、トンネル覆工コンクリート1が、通常10.5mの長さを1スパン(図1中の符号Sを参照)として施工されることを踏まえ、図1に示したように、3スパン分の長さ(30m程度)で実施されており、脱型した移動式コンクリート打設型枠装置11の区間毎に養生装置10を1スパン分前進させながら養生する構成で実施している。
なお、養生装置10の全長は図示例に限定されるものではなく、1乃至2スパン分の長さで実施することもできるし、4スパン以上の長さで実施することもできる。また、1スパンの長さも前記10.5mのほか、6m、9m、12mで実施する場合もある。
【0027】
要するに、本発明に係る養生装置10は、コンクリート連続体1と防水シート4とが形成する空間を完全な密閉空間12とすることにより、最適な保温養生、すなわち密閉空間12内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値(通常15〜40℃の範囲内)に保持する保温養生を実現することを第1の特徴とする。
また、実物大実験に基づき、噴霧ノズル9の平均粒子径、取付角度、噴霧角度、取付けピッチ、及び噴霧量を適宜調整することにより、最適な湿潤養生、すなわち前記密閉空間12内の湿度を、99〜100%に保持する湿潤養生を実現することを第2の特徴とする。
さらに、エアバルグ6の材質の選定、取付手法、及び製造方法に工夫を施すことにより、エアバルグを膨張させたままの状態で前記密閉空間12を確保し、最適な保温養生と湿潤養生を継続して保持しつつ養生装置を前進させる連続養生を実現することを第3の特徴とする。
以下、前記第1〜第3の各特徴を実現するための具体的構成を順に説明する。
【0028】
(最適な保温養生を実現するための構成(第一の特徴))
本実施例に係る縦材2は、径が60mmの中空の丸形鋼管(又は角形鋼管)を用い、打設型枠を取り外した前記コンクリート連続体1の内側面形状と類似するアーチ状に形成され、1スパン毎に5本ずつ計15本の縦材2を、トンネル覆工コンクリート1の軸方向へ170又は350mm程度の間隔をあけて並設している(図1参照)。
前記縦材2…は、前記コンクリート連続体1との間隔G(図4参照)を300〜450mm確保して並設されている。
前記間隔を300〜450mm確保する理由は、密閉空間12内の温度を水とセメントの水和反応の最大値と同等値に保持するには、図12に実物大実験結果を示したように、間隔を300〜500mmとする必要があること、及び450mmより間隔が大きいとトンネル掘削車の走行スペースを確保しづらいことを考慮したからである。
ちなみに、本実施例に係るコンクリート連続体1と防水シート4との間隔Gは、400mmで実施している。
前記縦材2…を支持する支保部材7は、複数の鋼材を溶接、ボルト等の接合手段で組み合わせてなり、前記縦材2と横材3から成る骨格を支持するのに十分な剛性で実施される。
【0029】
前記横材3は、前記縦材2を拘束するために設けられ、前記縦材2との交差部を、溶接、ボルト等の接合手段で縦材2に固定されている。
本実施例に係る横材3は、径が30mmの中空の丸形鋼管(又は角形鋼管)を用い、前記縦材2の周方向に沿って、その外側にバランスよく計17本設けているが、本数は勿論この限りではなく、使用する縦材2を安定した状態で拘束することを条件に、適宜増減して実施される。
よって、本実施例に係るコンクリート連続体1と防水シート4との間隔H(図4参照)は、防水シート4のシート厚を無視できるものとして、370mmで実施している。
【0030】
前記防水シート4は、非通気性のシートを用いることはもとより、保温性、耐久性、変化追従性に優れた材質を採用する。ちなみに、本実施例に係る防水シート4は、軽量で、耐久性に非常に優れたポリプロピレンシート層にポリエチレンクロスやポリプロピレンクロス等の樹脂クロスよりなる樹脂クロス層を積層した積層シートで実施されている。
前記防水シート4の大きさについては、前記縦材2と横材3からなる骨格の外周部をすべて覆うように弛みなく張設された状態で、その左右の両端部がそれぞれ、外気と遮断するべく、トンネル構内の地面と70〜100cm程度の重ね代T(図2参照)を形成する寸法とされている。さらにその端縁部は、養生装置10の走行等に起因する跳ね上がりを確実に防止するべく、20cm程度折り返されている。一方、前記防水シート4の前端部は、移動式コンクリート打設型枠装置11の後端の型枠部に沿ってテープ材で止着可能な寸法とされている。
また、本実施例に係る防水シート4は、前記防水シート4を透明、又は半透明の積層シートで実施することにより、作業員の目視により、噴霧ノズル9の噴霧状況を逐一チェックできる工夫が施されている。
かくして、前記防水シート4は、前記縦材2と横材3からなる骨格の外周部をすべて覆うように弛みなく張設された状態で、その前端部が、移動式コンクリート打設型枠装置11の後端の型枠部に沿ってテープ材で隙間なく止着されて外気と遮断され、その両端部が、トンネル構内の地面と70〜100cm程度の重ね代Tを形成して外気と遮断される。
【0031】
前記エアバルグ6は、変化追従性と耐久性に優れたナイロンタフタ製を用いている。
前記エアバルグ6は、図5に示したように、前記横材3の上面に弛みなく張設された防水シート4の上面に、後端に位置する縦材2と一致する曲率で湾曲された幅40cm程度の鋼製板材13を介して設けられ、前記防水シート4と鋼製板材13、及び前記鋼製板材13とエアバルグ6は互いに両面接着テープ(図示省略)で貼着されている。ちなみに、図中の符号14は、膨張時のエアバルグ6の形状を安定させる拘束部材(アングル材等)を示し、前記横材3に溶接、ボルト等の接合手段で取付けられている。
また、前記エアバルグ6は、前記防水シート4と同様に、外気と遮断するべく、その左右の両端部がそれぞれ、トンネル構内の地面と70〜100cm程度の重ね代T(図3参照)を形成する長さとされている。
【0032】
本実施例に係るエアバルグ6は、さらに、後端に位置する縦材2の周方向に取付けられた状態で膨張させると前記コンクリート連続体1の表面に隙間なく密着するように、1体当たりの長さが10〜30cm程度の筒状で、前記コンクリート連続体1の表面に当接する部位が該表面とほぼ一致する曲率で形成され、前記縦材2に当接する部位が該縦材2とほぼ一致する曲率で形成された複数のエアバルグ片(図示省略)を、前記コンクリート連続体1の周方向に沿って一連に繋ぎ合わせ(縫い合わせ)、且つ両端部は閉塞して製造されている。ちなみに、個々のエアバルグ片は、図3に示したトンネル正面方向から見ると、コンクリート連続体1に当接する部位を上辺とし、縦材2に当接する部位を下辺とするほぼ倒立台形状(又はバームクーヘン形状)に近似する形状に形成されている。
このように、前記エアバルグ6を複数のエアバルグ片を一連につなぎ合わせて製造する意義は、スプリングラインを境界線として上半と下半に区別され、3心円または2心円等で施工されるトンネル独特の特殊な中空断面形状にエアバルグ6の形状を適宜対応させて製造することにより、該エアバルグ6をトンネル(コンクリート連続体1)表面に確実に隙間なく密着させるためである。
なお、本実施例に係るエアバルグ6は、膨張時の径が600mm程度、全長が22m程度で実施している。また、前記エアバルグ6は、250デニールの厚さが好適であるが、この選定理由については後述する。
【0033】
上述した構成の養生装置10によれば、前記エアバルグ6を膨張させて前記コンクリート連続体1に隙間なく密着させると、養生装置10の全長にわたり、コンクリート連続体1と防水シート4とが形成する空間12が、前端部の移動式コンクリート打設型枠装置11の後端の型枠部と後端部のエアバルグ6とで外気と遮断され、防水シート4の両端部が、重ね代効果により外気と遮断され、噴霧ノズル9が突き出した開口部はシール部材で閉塞されるので、前記空間12を完全な密閉空間12に形成することができる。
また、前記コンクリート連続体1と防水シート4との間隔Hは370mmであるから、図12を参照すると、前記密閉空間12内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値(34〜35℃)を恒常的に保持できると云える。
したがって、最適な保温養生を実現することができる。
【0034】
(最適な湿潤養生を実現するための構成(第二の特徴))
本実施例に係る噴霧管5は、図2に示したように、前記縦材2のトンネル周方向に、噴霧管5を設けるのに適正な位置にバランスよく複数(図示例では4カ所)配置され、それぞれ、図6Aに示したように、その近傍に位置する横材3の軸線に沿ってほぼ平行に設けられている。また、各噴霧管5には、所定の間隔をあけて複数(図示例では3カ所)の噴霧ノズル9が設備されている。
前記噴霧管5を横材3に取付ける手法は種々あるが、本実施例では、図6Bに示したように、横材3と噴霧管5とを包持する重ね合わせ継手15を用いて取付けている。
【0035】
具体的に、前記噴霧管5は、管径が10mm程度、1本あたりの長さが7m程度で実施され、前記縦材2の周方向に3.5〜4.0m程度の等間隔をあけてバランスよく左右対称の配置に計4本設けられ、各箇所に設けた噴霧管5はそれぞれ、図2の紙面に垂直方向に、1スパンの区間毎に1本ずつ、計3本断続的に設けられている(図8参照)。すなわち、本実施例に係る噴霧管5は、1スパン毎に4本ずつ、計12本用いて実施している。
【0036】
前記噴霧ノズル9は、図6〜図8に示したように、固定式の二股アダプタ9aを介して噴霧管5に設備されている。
前記二股アダプタ9aは、前記噴霧管5に3m程度のピッチLで3カ所設けられ、各二股アダプタ9aには、2個の噴霧ノズル9が設けられている。要するに、本実施例に係る噴霧ノズル9は、1本の噴霧管5に6個ずつの計72個用いて実施している。
前記二股アダプタ9aに装着される2個の噴霧ノズル9は、図7A、Bに示したように、コンクリート連続体1の表面に対して、直角となる姿勢から、同コンクリート連続体の軸方向(Z)に互いに80度ずつ外向きに傾斜させた取付角度で実施されている。
なお、前記二股アダプタ9aは、回転式の二股アダプタでも実施可能ではあるが、トンネル覆工コンクリートの養生は一般に長期間にわたり行われるため、故障する虞のない固定式の二股アダプタ9aが好適に用いられる。
【0037】
前記した噴霧ノズル9の取付角度、二股アダプタ9a(噴霧ノズル9)の取付ピッチL等は、図9Aに示したように、本出願人が行った実物大実験結果に基づいて定められている。
ちなみに、図9A中、ノズル角度(θ)は、図9Bに示したように、トンネル覆工コンクリート1に対して直角となる姿勢から外向きに傾斜させた角度を示している。噴霧角度(θ)は、図9Cに示したように、噴霧ノズル9から噴霧する微霧の広がり角を示している。間隔(m)は、前記した7m程度の噴霧管5に取付ける二股アダプタ9a(噴霧ノズル9)の設置間隔Lを示している。湿度(%)は、この実物大実験を行った結果の前記密閉空間12内の湿度を示している。水温(℃)は、噴霧ノズル9から噴霧する微霧の水温を示している。噴霧形状高さ(h)は、図9Dに示したように、噴霧ノズル9から噴霧した微霧の最高到達点を示している。
ちなみに、実物大実験に係るトンネル覆工コンクリート(コンクリート連続体)1と噴霧ノズル9(防水シート4)との距離H(図9B参照)は、本実施例の高さと同じ370mmとしている。
【0038】
本出願人は、種々の組み合わせで実物大実験を行っている。図9A中のNo.(1)〜(4)は、種々の組み合わせで行った実物大実験のなかで、主要な実験結果のみ抜粋して表している。
なお、この実物大実験では、共通して、噴霧管5を、図2に示したように、左右対称配置に4箇所配設している。隣接する噴霧管5、5の間隔は、平面方向から見て3.5m程度としている。噴霧ノズル9は、微霧の噴霧平均粒子径が35〜60μm、ノズル径が11mmで、ノズル1個当たりの噴霧量が1〜2リットル/時間で噴霧している。
前記微霧の噴霧平均粒子径を35〜60μmの範囲内とする意義は、35μm未満とすると、前記密閉空間12内の湿度を99〜100%に保持するには噴霧ノズル9の設置ピッチを狭くして個数を増やす必要があるなど不経済であること、60μmを超えると、トンネル構内の地盤に水(養生水)が垂れ落ちて泥濘化する虞がありこれを防止する必要があること、を考慮した結果である。
【0039】
実物大実験の結果、図9A中、(1)は、湿度100%を保持できるものの、噴霧形状高さ(h)が520mmにも達し、これでは微霧がトンネル覆工コンクリート1に直接当たり、施工後のトンネル覆工コンクリート1の表面に斑模様が現れるのが明らかなので採用できないことが分かった。
(2)も、湿度100%を保持できるものの、噴霧形状高さ(h)が400mmに達し、これでは前記(1)と同様に、微霧がトンネル覆工コンクリート1に直接当たり、施工後のトンネル覆工コンクリート1の表面に斑模様が現れるのが明らかなので採用できないことが分かった。
(3)は、噴霧形状高さ(h)が290mmで、微霧がトンネル覆工コンクリート1に直接当たることはないが、噴霧管5に設置する間隔が4.5mと長く、前記密閉空間12内の湿度が95%に止まり、施工後のトンネル覆工コンクリート1の表面にひび割れを生じさせる虞が非常に高いので採用できないことが分かった。
これに対し、(4)は、噴霧形状高さ(h)が290mmで、微霧がトンネル覆工コンクリート1に直接当たることはない。また、前記(3)と比して噴霧管5に設置する間隔が3.0mと狭く、前記密閉空間12内の湿度を100%に保持できることが分かった。よって、斑模様が一切現れることなく美観に優れ、且つひび割れを生じさせる虞のないトンネル覆工コンクリート1を実現できることが分かった。
【0040】
したがって、本実施例では、前記実物大実験に基づき、平均粒子径が35〜60μmの微霧を噴霧できるチェックバルブ付き(作動圧0.3MPa)で、ノズル径が11mmの噴霧ノズル9を、1本が7m程度で径が10mmの噴霧管5に、3.0m程度の間隔で3個設置して、ノズル1個当たりの噴霧量を1〜2リットル/時間で噴霧している。
また、噴霧角度が50度の均等な扇形噴霧ノズル9で、トンネル覆工コンクリート1に対して直角となる姿勢から互いに80度傾けた状態で取付けて実施している。その他、本実施例で用いる噴霧ノズル9の形態に関する実寸は、図7A、Bに記載した通りである。
【0041】
前記噴霧ノズル9に水を供給する圧力ポンプ17(図1参照)は、噴霧ノズル9の粒径(性能)および設置数量に応じて適正な能力を選定する。前記実物大実験によると、通常のトンネル断面積(60〜94m2)の範囲内で、前記噴霧ノズル9を用い、移動式コンクリート打設型枠装置1の移動速度を2.1m/分に設定した場合に、前記噴霧量1〜2リットル/時間を実現するには、三相200V・750Wの圧力ポンプ(高圧ポンプ)17が好適である。この高圧ポンプ17を発電機18で作動させて貯水タンク(図示省略)から水を供給するのである。
なお、前記実物大実験によると、1台の高圧ポンプ17で、3スパン分にわたる噴霧ノズル9を噴霧量1〜2リットル/時間で実現できることが分かっている。なお、本実施例に係る高圧ポンプ17は、1スパン毎に個別に制御可能な構成で実施されている。
また、施工場所により、上水が使用できず、現地発生水や河川水を用いる場合には、噴霧ノズル9の目詰まりを防止し、連続噴霧を可能ならしめるべく、特殊なフィルターを2枚程装着した圧力ポンプ17を用いて実施することが好ましい。
【0042】
ここで、ノズル1個当たりの噴霧量1〜2リットル/時間を恒常的に維持するために用いる貯水タンクの構成について説明する。
例えば、3スパン分にわたる噴霧ノズル9をノズル1個あたり噴霧量1リットル/時間で噴霧する場合、容量が600リットルの貯水タンクを好適に用いる。噴霧ノズル9は計72個なので、1時間あたり72リットルの水(上水)を消費する。そうすると、8時間で576リットルの水を消費し、この時点で貯水タンクの水の残りは24リットルとなる。本発明では、連続養生の実現も大きな特徴としており、そのため、本実施例では、例えば貯水タンク内の水が少なくなる毎に自動的に貯水タンク内に水を供給して補給する、水洗トイレ等に用いられる所謂フロート方式を採用している。
【0043】
かくして、上記構成の噴霧ノズル9を設備した噴霧管5を有する養生装置10は、前記密閉空間12内の湿度を100%に保持することができる(図9A参照)。
よって、施工後にひび割れを生じさせない(図13のC欄を参照)、品質および耐久性に非常に優れたトンネル覆工コンクリート1を実現できるのである。また、噴霧ノズル9から噴霧する微霧がトンネル覆工コンクリート1に直接当たることがないので、施工後に斑模様が生じない、美観に優れたトンネル覆工コンクリート1を実現できるのである。
【0044】
(最適な連続養生を実現するための構成(第三の特徴))
前記エアバルグ6は、前記密閉空間12を恒常的に確保し、前記した最適な保温養生と湿潤養生を保持しつつ養生(所謂連続養生)することを確実に実現するため、単にナイロンタフタ製を採用するだけで止まらず、その中でも連続養生に優れたエアバルグ6を採用する必要がある。
図10Aは、ナイロンタフタの厚さ(単位:デニール)に関する実物大実験結果を示している。図10A中、空気圧による変位高さ(mm)は、図10Bに示したように、エアバルグを十分に膨張させた状態(H=600mm)でその上に幅50mmの平板19を載せ、人力で所定の力で押圧した場合に変化した高さ(h)を指す。破損判定は、図10Cに示したように、エアバルグを十分に膨張させた状態でその上に厚さ2mmのへら20を載せ、人力で軽く指圧した状態で左右にへら20を動かして摩擦を生じさせる工程を20往復行った結果を示している。
また、実物大実験に用いたエアバルグ6の寸法は、上記したように、膨張時の径が600mm、全長が22mであり、60Hzで5.5m3/分に調整した電動送風機で連続運転を行っている。
【0045】
実物大実験の結果、図10A中、No.(1)の厚さ50デニールのエアバルグ6は、空気圧による変化高さが600mmから300mmに変化し、変化追従性に優れていることは認められるものの、破損判定で破損が認められるので、トンネル覆工コンクリート1との摩擦で破損する虞が高く、連続養生には不向きであることが分かった。
また、(3)の厚さ500デニールのエアバルグ6は、破損判定で破損は認められないものの、空気圧による変化高さが600mmから410mmに止まり、変化追従性に劣るので、トンネル覆工コンクリート1にぴったり密着して密閉空間12を形成しづらく、不向きであることが分かった。
これに対し、(2)の厚さ250デニールのエアバルグ6は、空気圧による変化高さが600mmから350mmに変化し、変化追従性にも優れて、破損判定で破損も認められないので、トンネル覆工コンクリート1にぴったり密着して密閉空間12を形成することができ、且つ、確実に連続養生を行い得ることが分かった。
【0046】
また、前記エアバルグ6の実物大実験に密接に関連する前記電動送風機の連続運転について、最大風量を前記5.5m3/分で実施したことも実物大実験に基づいている。
図11は、厚さが250デニール、膨張時の径が600mm、全長が22mのエアバルグ6を用いた実験結果を示している。
図11中の空気圧による変位高さは、前記図10Bに示したように、エアバルグを十分に膨張させた状態(H=600mm)でその上に幅50mmの平板19を載せ、人力で所定の力で押圧した場合に変化した高さ(h)を指す。この値が、前記図10に係る250デニールの空気圧による変位高さ350mmと一致するのが、No.(2)の最大風量が5.5m3/分であることに基づいている。
【0047】
かくして、上記構成の養生装置10は、厚さが250デニールのエアバルグ6は、変化追従性に優れているので、トンネル覆工コンクリート1の曲率に沿ってぴったり密着して密閉空間12を確実に実現できる。また、耐久性にも優れているので、十分に膨張させたままの状態で移動式コンクリート打設型枠装置1の移動時にもぴったり密着したままの状態を保ち、密閉空間12を維持しつつ、トンネル覆工コンクリート1との接触・摩耗で損傷する虞もない。よって、エアバルグ6を十分に膨張させたままの状態で密閉空間12を確保し、最適な保温養生と湿潤養生を保持しつつ、連続養生を実現することができるのである。
【0048】
上述した構成の養生装置10を用いて行う養生方法は、以下のような手順で行われる。
【0049】
移動式コンクリート打設型枠装置1の移動に伴い前進させて、打設型枠を取り外して露出させたトンネル覆工コンクリート(コンクリート連続体)1を養生する養生区間で停止させた後、上記構成のエアバルグ6を、電動送風機を最大風量5.5m3/分で作動させる。
そうすると、前記エアバルグ6は、前記コンクリート連続体1に隙間なく密着するように十分に膨張する。また、養生装置10の全長にわたり、コンクリート連続体1と防水シート4とが形成する空間12が、前端部の移動式コンクリート打設型枠装置11の後端の型枠部と後端部のエアバルグ6とで外気と遮断され、防水シート4の両端部が、重ね代効果により外気と遮断され、噴霧ノズル9が突き出した開口部はシール部材で閉塞されるので、前記空間12を完全な密閉空間12に形成することができる。さらに、前記コンクリート連続体1と防水シート4との間隔Hは370mmであるから、図12を参照すると、前記密閉空間12内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値を恒常的に保持でき、最適な保温養生を行うことができる。
【0050】
前記保温養生と同時期に、前記高圧ポンプ17を発電機18で作動させて、噴霧管5に設備した上記構成の複数の噴霧ノズル9から平均粒子径が30〜65μの微霧をコンクリート連続体1の表面に当たらないように前記密閉空間12内に充満するように噴霧する。そうすると、当該密閉空間12内の湿度を99〜100%(本実施例では100%)に保持する最適な湿潤養生を行うことができる。
【0051】
かくして、前記保温養生と湿潤養生を前記養生区間で24〜72時間行う。そうすると、十分な保温養生と湿潤養生を行うことができる。その間に、移動式コンクリート打設型枠装置1により、次スパンSのコンクリート連続体1の施工を十分に完了させておくことができる。
【0052】
続いて、前記エアバルグ6を膨張させたまま、且つ前記噴霧ノズル9から微霧を噴霧させたままの状態で、施工が完了した次スパンSを養生する養生区間へ、養生台車10を前進させる。
次スパンSへ到達した養生台車10は、上記したように、最適な保温養生と湿潤養生を行うことができる。
一方、前記養生装置10が前進することにより、前記養生装置10の後端から順に露出するコンクリート連続体は、十分な保温養生と湿潤養生が行われているので、施工後にひび割れが一切生じることもなく、斑模様が現れる虞もなく、品質および美観に優れている。
【0053】
以上の工程を継続して繰り返し行うことにより、全長にわたり、ひび割れが生じることも一切なく(図13のC欄参照)、斑模様のない、高品質で美観に優れたトンネル覆工コンクリートを実現することができるのである。
【0054】
以上に実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
例えば、本実施例では、筒形のコンクリート連続体1としてトンネル覆工コンクリートを想定して説明しているがこれに限定されず、横材2を門形に形成する等の形式的な設計変更は伴うものの、大型のボックスカルバートの養生にも本発明は同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 トンネル覆工コンクリート(コンクリート連続体)
2 縦材
3 横材
4 防水シート
5 噴霧管
6 エアバルグ
7 支保部材
8 車輪
9 噴霧ノズル
9a 二股アダプタ
10 養生装置
11 移動式コンクリート打設型枠装置(セントル)
12 密閉空間
13 鋼製板材
14 拘束部材
15 重ね合わせ継手
16 送風管
17 圧力ポンプ(高圧ポンプ)
18 発電機
19 平板
20 へら
21 レール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式コンクリート打設型枠装置を用いて成形したトンネル覆工コンクリート等の筒形のコンクリート連続体の養生装置であって、
前記養生装置は、打設型枠を取り外した前記コンクリート連続体の内側面形状と類似する形状で、前記コンクリート連続体の前後方向へ並設された複数の縦材と、前記複数の縦材に固定された複数の横材と、前記縦材と横材からなる骨格の外周部に張設された防水シートと、前記横材とほぼ平行に設けられた噴霧管と、後端に位置する縦材の周方向に取付けられたエアバルグと、前記縦材を支持する支保部材と、前記支保部材の下端部に設けられた車輪とで構成され、前記移動式コンクリート打設型枠装置の後部に連結されていること、
前記縦材は、前記コンクリート連続体との間隔を300〜450mm確保して並設されていること、
前記噴霧管には、複数の噴霧ノズルが、前記防水シートから突き出して前記コンクリート連続体へ向けた配置で、前記コンクリート連続体と当該噴霧ノズルの先端との間隔を250〜400mm確保して設備されていること、
前記防水シートは、その前端部が前記移動式コンクリート打設型枠装置の後端部へ隙間なく止着され、左右の両端部は地面と重ね代を形成する程度の長さとされ、前記噴霧ノズルを通した開口部はシール部材で閉塞されていること、
前記エアバルグは、その左右の両端部が地面と重ね代を形成する程度の長さとされ、膨張させると前記コンクリート連続体に隙間なく密着するように取付けられていること、
前記エアバルグを膨張させて前記コンクリート連続体に隙間なく密着させて、養生装置の全長にわたり、コンクリート連続体と防水シートとが形成する空間を前端部の移動式コンクリート打設型枠装置と後端部のエアバルグとで密閉する密閉空間が形成され、前記密閉空間内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値に保持する保温養生が可能な構成とされていること、
前記噴霧ノズルは、平均粒子径が30〜65μの微霧を噴霧する性能を有し、当該微霧が前記コンクリート連続体の表面に当たらないような取付角度及び噴霧角度とされ、前記密閉空間内を微霧で充満させるのに適正な取付ピッチおよび噴霧量とされ、当該密閉空間内の湿度を99〜100%に保持する湿潤養生が可能な構成とされていること、
前記エアバルグは、膨張させたままの状態で移動させてもコンクリート連続体との接触・摩耗により損傷しない材質が用いられ、連続養生が可能な構成とされていること、
をそれぞれ特徴とする、コンクリート連続体の養生装置。
【請求項2】
前記噴霧管は、前記縦材の周方向に、3.5m程度の間隔をあけて複数本設けられ、それぞれ、近傍に位置する横材に同横材とほぼ平行となる配置に固定されていること、
前記噴霧ノズルは、噴霧角度が50度で均等な扇形噴霧ノズルであり、固定式の二股アダプタを介して噴霧管に設備されていること、
前記二股アダプタは、前記噴霧管に3m程度のピッチで複数設けられていること、 前記二股アダプタに装着した2個の噴霧ノズルは、コンクリート連続体の表面に対して直角となる姿勢から、同コンクリート連続体の前後方向に互いに80度ずつ外向きに傾斜させた取付角度とされ、1個当たり1〜2リットル/時間の噴霧量で微霧を噴霧する構成とされていることを特徴とする、請求項1に記載したコンクリート連続体の養生装置。
【請求項3】
前記防水シートは、透明又は半透明の積層シートであり、その左右の両端部がそれぞれ、地面と70〜100cm程度の重ね代を形成する寸法とされていることを特徴とする、請求項1又は2に記載したコンクリート連続体の養生装置。
【請求項4】
前記エアバルグは、厚さが250デニールのナイロンタフタ製で、膨張時の径が600mm程度であり、その左右の両端部がそれぞれ、地面と70〜100cm程度の重ね代を形成する長さとされていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載したコンクリート連続体の養生装置。
【請求項5】
前記エアバルグは、後端に位置する縦材の周方向に取付けられた状態で膨張させると前記コンクリート連続体の表面に隙間なく密着するように、1体当たりの長さが10〜30cm程度の筒状で、前記コンクリート連続体の表面に当接する部位が該当接する表面とほぼ一致する曲率で形成され、前記縦材に当接する部位が該当接する縦材とほぼ一致する曲率で形成された複数のエアバルグ片を、前記コンクリート連続体の周方向に沿って一連に繋ぎ合わせ、且つ両端部は閉塞して製造されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載したコンクリート連続体の養生装置。
【請求項6】
前記エアバルグは、後端に位置する縦材の周方向に張設された防水シートの上面に前記縦材と一致する曲率で湾曲された幅40cm程度の鋼製板材を介して設けられ、前記防水シートと鋼製板材、及び前記鋼製板材とエアバルグは互いに両面接着テープで貼着されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載したコンクリート連続体の養生装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一に記載の養生装置を、移動式コンクリート打設型枠装置の移動に伴い前進させて、打設型枠を取り外して露出させた前記コンクリート連続体を養生する養生区間で停止させた後、前記養生装置のエアバルグを前記コンクリート連続体へ隙間なく密着するように膨張させ、養生装置の全長にわたり、コンクリート連続体と防水シートとが形成する空間を、前端部の移動式コンクリート打設型枠装置と後端部のエアバルグとで密閉する密閉空間を形成し、前記密閉空間内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値に保持する保温養生を行うと共に、前記密閉空間内に、噴霧管に設備した複数の噴霧ノズルから平均粒子径が30〜65μの微霧をコンクリート連続体の表面に当たらないように噴霧することにより当該密閉空間内の湿度を99〜100%に保持する湿潤養生を行う段階と、
前記保温養生と湿潤養生を前記養生区間で24〜72時間行った後に、移動式コンクリート打設型枠装置を用いて成形したコンクリート連続体の施工に応じて、前記エアバルグを膨張させたまま、継続して前記保温養生と湿潤養生を行いつつコンクリート連続体の軸方向へ前進させて、養生区間毎に連続養生を行う段階とからなることを特徴とする、コンクリート連続体の養生方法。
【請求項1】
移動式コンクリート打設型枠装置を用いて成形したトンネル覆工コンクリート等の筒形のコンクリート連続体の養生装置であって、
前記養生装置は、打設型枠を取り外した前記コンクリート連続体の内側面形状と類似する形状で、前記コンクリート連続体の前後方向へ並設された複数の縦材と、前記複数の縦材に固定された複数の横材と、前記縦材と横材からなる骨格の外周部に張設された防水シートと、前記横材とほぼ平行に設けられた噴霧管と、後端に位置する縦材の周方向に取付けられたエアバルグと、前記縦材を支持する支保部材と、前記支保部材の下端部に設けられた車輪とで構成され、前記移動式コンクリート打設型枠装置の後部に連結されていること、
前記縦材は、前記コンクリート連続体との間隔を300〜450mm確保して並設されていること、
前記噴霧管には、複数の噴霧ノズルが、前記防水シートから突き出して前記コンクリート連続体へ向けた配置で、前記コンクリート連続体と当該噴霧ノズルの先端との間隔を250〜400mm確保して設備されていること、
前記防水シートは、その前端部が前記移動式コンクリート打設型枠装置の後端部へ隙間なく止着され、左右の両端部は地面と重ね代を形成する程度の長さとされ、前記噴霧ノズルを通した開口部はシール部材で閉塞されていること、
前記エアバルグは、その左右の両端部が地面と重ね代を形成する程度の長さとされ、膨張させると前記コンクリート連続体に隙間なく密着するように取付けられていること、
前記エアバルグを膨張させて前記コンクリート連続体に隙間なく密着させて、養生装置の全長にわたり、コンクリート連続体と防水シートとが形成する空間を前端部の移動式コンクリート打設型枠装置と後端部のエアバルグとで密閉する密閉空間が形成され、前記密閉空間内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値に保持する保温養生が可能な構成とされていること、
前記噴霧ノズルは、平均粒子径が30〜65μの微霧を噴霧する性能を有し、当該微霧が前記コンクリート連続体の表面に当たらないような取付角度及び噴霧角度とされ、前記密閉空間内を微霧で充満させるのに適正な取付ピッチおよび噴霧量とされ、当該密閉空間内の湿度を99〜100%に保持する湿潤養生が可能な構成とされていること、
前記エアバルグは、膨張させたままの状態で移動させてもコンクリート連続体との接触・摩耗により損傷しない材質が用いられ、連続養生が可能な構成とされていること、
をそれぞれ特徴とする、コンクリート連続体の養生装置。
【請求項2】
前記噴霧管は、前記縦材の周方向に、3.5m程度の間隔をあけて複数本設けられ、それぞれ、近傍に位置する横材に同横材とほぼ平行となる配置に固定されていること、
前記噴霧ノズルは、噴霧角度が50度で均等な扇形噴霧ノズルであり、固定式の二股アダプタを介して噴霧管に設備されていること、
前記二股アダプタは、前記噴霧管に3m程度のピッチで複数設けられていること、 前記二股アダプタに装着した2個の噴霧ノズルは、コンクリート連続体の表面に対して直角となる姿勢から、同コンクリート連続体の前後方向に互いに80度ずつ外向きに傾斜させた取付角度とされ、1個当たり1〜2リットル/時間の噴霧量で微霧を噴霧する構成とされていることを特徴とする、請求項1に記載したコンクリート連続体の養生装置。
【請求項3】
前記防水シートは、透明又は半透明の積層シートであり、その左右の両端部がそれぞれ、地面と70〜100cm程度の重ね代を形成する寸法とされていることを特徴とする、請求項1又は2に記載したコンクリート連続体の養生装置。
【請求項4】
前記エアバルグは、厚さが250デニールのナイロンタフタ製で、膨張時の径が600mm程度であり、その左右の両端部がそれぞれ、地面と70〜100cm程度の重ね代を形成する長さとされていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載したコンクリート連続体の養生装置。
【請求項5】
前記エアバルグは、後端に位置する縦材の周方向に取付けられた状態で膨張させると前記コンクリート連続体の表面に隙間なく密着するように、1体当たりの長さが10〜30cm程度の筒状で、前記コンクリート連続体の表面に当接する部位が該当接する表面とほぼ一致する曲率で形成され、前記縦材に当接する部位が該当接する縦材とほぼ一致する曲率で形成された複数のエアバルグ片を、前記コンクリート連続体の周方向に沿って一連に繋ぎ合わせ、且つ両端部は閉塞して製造されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載したコンクリート連続体の養生装置。
【請求項6】
前記エアバルグは、後端に位置する縦材の周方向に張設された防水シートの上面に前記縦材と一致する曲率で湾曲された幅40cm程度の鋼製板材を介して設けられ、前記防水シートと鋼製板材、及び前記鋼製板材とエアバルグは互いに両面接着テープで貼着されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載したコンクリート連続体の養生装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一に記載の養生装置を、移動式コンクリート打設型枠装置の移動に伴い前進させて、打設型枠を取り外して露出させた前記コンクリート連続体を養生する養生区間で停止させた後、前記養生装置のエアバルグを前記コンクリート連続体へ隙間なく密着するように膨張させ、養生装置の全長にわたり、コンクリート連続体と防水シートとが形成する空間を、前端部の移動式コンクリート打設型枠装置と後端部のエアバルグとで密閉する密閉空間を形成し、前記密閉空間内の温度を、水とセメントの水和反応の最大値と同等値に保持する保温養生を行うと共に、前記密閉空間内に、噴霧管に設備した複数の噴霧ノズルから平均粒子径が30〜65μの微霧をコンクリート連続体の表面に当たらないように噴霧することにより当該密閉空間内の湿度を99〜100%に保持する湿潤養生を行う段階と、
前記保温養生と湿潤養生を前記養生区間で24〜72時間行った後に、移動式コンクリート打設型枠装置を用いて成形したコンクリート連続体の施工に応じて、前記エアバルグを膨張させたまま、継続して前記保温養生と湿潤養生を行いつつコンクリート連続体の軸方向へ前進させて、養生区間毎に連続養生を行う段階とからなることを特徴とする、コンクリート連続体の養生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−242310(P2010−242310A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89090(P2009−89090)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(505356491)株式会社マシノ (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(505356491)株式会社マシノ (10)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]