説明

コンクリート部材の強度管理装置及び強度管理方法

【課題】コンクリート部材が所定強度を発現する時期を予測することができるコンクリート部材の強度管理装置を提供する。
【解決手段】コンクリート部材の形状情報、材料の物性情報、部材表面の境界情報、コンクリート部材の初期温度情報及びコンクリート部材の外部温度情報を入力して、温度解析を行うことにより、所定の強度が発現するまでの時間を求める数値解析手段と、通信手段を介して、インターネット上の気温情報提供サービスのサーバから予測気温情報を取得する気温情報取得手段と、通信手段を介して、コンクリート部材の表面温度情報と取得する温度情報取得手段と、気温情報取得手段により取得した予測気温情報を外部温度情報とし、温度情報取得手段により取得した表面温度情報を初期温度情報として、数値解析手段により温度解析を実行し、所定の強度が発現するまでの時間を予測する所定強度発現時間予測手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート部材の強度管理装置及び強度管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、作業員が煩雑な作業をすることなく、偏差が小さい型枠脱型時のコンクリートの若令強度を推定可能にするために、コンクリートの若令強度と有効温度とが良く一致していることを利用し、型枠内へ実際に打設されているコンクリートの有効温度を連続して測定可能として、型枠脱型時のコンクリートの若令強度の偏差が小さくなり且つ実際の若令強度に近い値が推定されて、打設されたコンクリートの強度管理の精度を向上させるコンクリートの若令強度推定方法知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、コンクリートの製造および施工のサイクルタイムを短縮するために、コンクリート部材の温度と、コンクリート部材が置かれている場所の雰囲気温度とを検出し、コンクリート部材の温度が雰囲気温度に達したか否かを判定し、コンクリート部材の温度が雰囲気温度に達したと判定された場合に、検出した雰囲気温度に基づいて、コンクリート部材の硬化強度を推定するコンクリート部材の強度管理方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−339069号公報
【特許文献2】特開2009−161420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コンクリート工事において脱型する際には、十分な強度が得られる養生期間の経過と、所定強度の発現のいずれかを確認する必要がある。特許文献2に記載の強度管理方法を用いることにより、養生期間を短縮することが可能である。
【0006】
しかしながら、従来技術による所定強度の発現を確認する方法では、現時点のコンクリート部材の強度を推定するものであったため、いつ脱型を行うことができるか(いつ所定の強度が発現するか)を知ることができないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、コンクリート部材が所定強度を発現する時期を予測することができるコンクリート部材の強度管理装置及び強度管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、コンクリート部材の形状情報、材料の物性情報、部材表面の境界情報、コンクリート部材の初期温度情報及びコンクリート部材の外部温度情報を入力して、温度解析を行うことにより、所定の強度が発現するまでの時間を求める数値解析手段と、通信手段を介して、インターネット上の気温情報提供サービスのサーバから予測気温情報を取得する気温情報取得手段と、前記通信手段を介して、前記コンクリート部材の表面温度情報と取得する温度情報取得手段と、前記気温情報取得手段により取得した前記予測気温情報を前記外部温度情報とし、前記温度情報取得手段により取得した前記表面温度情報を前記初期温度情報として、前記数値解析手段により温度解析を実行し、所定の強度が発現するまでの時間を予測する所定強度発現時間予測手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明は、コンクリート部材の形状情報、材料の物性情報、部材表面の境界情報、コンクリート部材の初期温度情報及びコンクリート部材の外部温度情報を入力して、温度解析を行うことにより、所定の強度が発現するまでの時間を求める数値解析手段と、通信手段を介して、インターネット上の気温情報提供サービスのサーバから予測気温情報を取得する気温情報取得手段と、前記通信手段を介して、前記コンクリート部材の表面温度情報と取得する温度情報取得手段とを備えたコンクリート部材の強度管理装置における強度管理方法であって、前記気温情報取得手段により取得した前記予測気温情報を前記外部温度情報とし、前記温度情報取得手段により取得した前記表面温度情報を前記初期温度情報として、前記数値解析手段により温度解析を実行し、所定の強度が発現するまでの時間を予測する所定強度発現時間予測ステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、精度良くコンクリートの強度の予測を行うことができるため、所定強度の発現を所定時間内に実現させるための保温養生や加熱養生などの対策を実施することができるようになり、効率よくコンクリート部材の製造を行うことが可能になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す管理装置1の処理動作を示すフローチャートである。
【図3】プレキャストコンクリート工事の時間スケジュールの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による強度管理装置を説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、符号1は、コンクリート部材の温度管理を行って、コンクリート部材が所定の強度を発現する時期を予測する管理装置であり、パソコン等から構成する。符号2は、強度管理対象のプレキャストコンクリート部材(以下、コンクリート部材と称する)である。符号3は、強度管理対象のコンクリート部材2に装着された温度センサであり、コンクリート部材2の表面近傍の温度を検出する。符号4は、温度センサ3の検出値を読み取る温度データ取得部であり、所定時間間隔でセンサ3の検出値を読み取る。
【0013】
符号5は、コンクリート部材2に取り付けられている型の表面温度を計測する赤外線カメラである。符号6は、温度データ取得部4及び赤外線カメラ5から出力する温度データを収集するデータ収集部である。符号7は、地域ごとに、当日と翌日の3時間ごとの気温情報を提供するサービスを実施するインターネット上の気温情報提供サーバである。管理装置1、データ収集部7、気温情報提供サーバ7は、ネットワーク8に接続されており、管理装置1は、データ収集部6と、気温情報提供サーバ7のそれぞれと情報通信を行うことが可能である。
【0014】
符号11は、ネットワーク8を介して、他の装置との間で情報通信を行う通信部である。符号12は、データ収集部6から送信された温度データを通信部11を介して受信することにより、コンクリート部材2の温度データを取得する温度データ取得部である。符号13は、温度データ取得部12が取得した温度データを記憶する温度データ記憶部である。符号14は、気温情報提供サーバ7に接続し、当日と翌日の3時間ごとの気温情報を取得する気温情報取得部である。符号16は、温度データ記憶部13に記憶されているコンクリート部材2の温度データと、気温情報記憶部15に記憶されているコンクリート部材2が置かれている場所の予測気温データとに基づき、数値解析を実施することによりコンクリート部材2の強度を推定する数値解析部である。
【0015】
符号17は、数値解析部16における数値解析により推定された強度が脱型可能な強度に達しているか否かを判定する判定部である。符号18は、数値解析部16が数値解析することにより得られた解析情報を記憶する解析情報記憶部である。符号19は、作業者が情報入力操作を行うための入力部であり、例えば、キーボード等によって構成する。符号20は、数値解析部16から出力する解析結果の情報や判定部17から出力する判定結果の情報を表示する表示部であり、ディスプレイ装置から構成する。
【0016】
次に、図2を参照して、コンクリート工事中にコンクリート部材の強度を数値解析で求めながらコンクリート部材2の強度管理を行う動作を説明する。図2は、コンクリート部材2の強度管理を行う動作を示すフローチャートである。まず、現場Aのコンクリート工事が開始される(ステップS1)と、作業者は、入力部19を操作して、解析モデルの設定と入力データの作成を行う(ステップS2)。ここで作成する解析モデルは、公知の解析モデルを用いるため、詳細な説明を省略する。熱伝導の数値解析を行うための入力データは、作業者が初期値として入力操作を行う。非定常熱伝導解析による温度解析では入力データとして、(1)部材の大きさや形状の情報、(2)材料の物性(熱伝導率、比熱、密度)情報、(3)部材表面の境界(熱伝達係数)情報、(4)部材の初期温度情報、(5)外部温度(気温)情報を入力する必要がある。これらのうち、部材の初期温度情報は、センサ3で検出した検出値または赤外線カメラ5へ計測した計測値を用い、外部温度情報は、気温情報提供サーバ7から提供された予測気温情報を用いる。
【0017】
次に、作業者は、入力部19から数値解析の実行を指示する操作を行う。これを受けて、数値解析部16は、設定された解析モデルデータと、入力された初期値を用いて温度解析を実行する(ステップS3)。そして、数値解析部16は、温度解析結果の情報を解析情報記憶部18に記憶する。判定部17は、解析情報記憶部18に記憶されている温度解析結果情報から、コンクリート強度を推定し(ステップS4)、推定したコンクリート強度の情報の中から所定の強度が発現するまでの時間を抽出する(ステップS5)。続いて、温度データ取得部12は、温度データ取得部4が測定し、データ収集部6が収集した初期温度データを通信部11を介して取得する(ステップS6)。
【0018】
次に、コンクリートの打ち込みを行い(ステップS7)、コンクリートを養生する(ステップS8)。そして、数値解析部16は、解析更新時刻になったか否かを判定し(ステップS9)。この判定の結果、解析更新時刻になった場合、気温情報取得部14は、気温情報提供サーバ7から予測気温データを取得し、気温情報記憶部15に記憶する。数値解析部16は、新たな入力データに更新して(ステップS10)、再度温度解析を実行する(ステップS11)。この温度解析は、外部温度に予測気温データを使用して行うことにより、非測定点の推定強度と脱型可能予測時刻とを得ることができる。脱型可能予測時刻は、コンクリートを打った時刻に対して、数値解析によって得られた所定の強度に達するまでの時間を加算することによって求める。数値解析部16は、温度解析結果の情報を解析情報記憶部18に記憶する。判定部17は、解析情報記憶部18に記憶されている温度解析結果情報から、コンクリート強度を推定し(ステップS12)、推定したコンクリート強度の情報の中から所定の強度が発現するまでの時間を抽出する(ステップS13)。
【0019】
次に、判定部17は、f(t)≧fnを満たしているか否かを判定する(ステップS14)。ここで、tは時刻、f(t)は、時刻tのコンクリート強度、fnは、必要圧縮強度である。すなわち、時刻tのコンクリート強度が脱型判定強度を超えているか否かを判定する。この判定の結果、f(t)≧fnを満たしていなければステップS8に戻り、処理を繰り返す。一方、f(t)≧fnを満たしていれば脱型を行う(ステップS15)。そして、現場Aの全てのコンクリート工事が完了するまで、ステップS7〜S15の処理動作を繰り返す(ステップS16)。
【0020】
このように、予測気温情報を用いた非定常温度解析を行い、日々のコンクリート工事における部材の温度変化を予測し、その結果から部材の強度変化を予測することによって、脱型に要する所定強度までの時間を予測し、サイクルエ程の時間内に脱型できるようにする対策等を実施することが可能となる。コンクリート打込み日ごとに予測処理を実行し、かつ各日内に数回繰り返して更新するようにしたため、予測精度を向上させることが可能となる。
【0021】
以上説明したように、予測気温を利用してコンクリート部材温度を予測して、コンクリート打込み前と養生期間中の複数の時点で所定強度の発現時刻を予測するとともに、センサによって検出したコンクリート部材の温度情報をそれ以後の強度変化を予測するために利用するようにしたため、脱型可能な時期の予測精度を向上させることが可能となる。予測気温情報として、一般的な経験値でなく、工事場所に応じて、インターネット上の気温情報提供サービスにより地域ごとの予測気温を利用するため、外部温度の精度を向上させることができる。また、コンクリート打込み前と養生期間中の複数の時点で所定強度の発現時刻を予測することにより、図3に示す1日サイクルで製造するプレキャストコンクリートエ事の時間スケジュールにおいて、t〜tの時点や、予測気温の更新に応じて、部材の強度を予測すれば効率がよく、コンクリート強度の管理を行うことが可能となる。
【0022】
なお、図1における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりコンクリート部材の強度管理処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0023】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
数値解析によって、コンクリート部材の強度を推定することが不可欠な用途に適用できる。
【符号の説明】
【0025】
1・・・管理装置、11・・・通信部、12・・・温度データ取得部、13・・・温度データ記憶部、14・・・気温情報取得部、15・・・気温情報記憶部、16・・・数値解析部、17・・・判定部、18・・・解析情報記憶部、19・・・入力部、20・・・表示部、2・・・コンクリート部材、3・・・センサ、4・・・温度データ取得部、5・・・赤外線カメラ、6・・・データ収集部、7・・・気温情報提供サーバ、8・・・ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート部材の形状情報、材料の物性情報、部材表面の境界情報、コンクリート部材の初期温度情報及びコンクリート部材の外部温度情報を入力して、温度解析を行うことにより、所定の強度が発現するまでの時間を求める数値解析手段と、
通信手段を介して、インターネット上の気温情報提供サービスのサーバから予測気温情報を取得する気温情報取得手段と、
前記通信手段を介して、前記コンクリート部材の表面温度情報と取得する温度情報取得手段と、
前記気温情報取得手段により取得した前記予測気温情報を前記外部温度情報とし、前記温度情報取得手段により取得した前記表面温度情報を前記初期温度情報として、前記数値解析手段により温度解析を実行し、所定の強度が発現するまでの時間を予測する所定強度発現時間予測手段と
を備えたことを特徴とするコンクリート部材の強度管理装置。
【請求項2】
コンクリート部材の形状情報、材料の物性情報、部材表面の境界情報、コンクリート部材の初期温度情報及びコンクリート部材の外部温度情報を入力して、温度解析を行うことにより、所定の強度が発現するまでの時間を求める数値解析手段と、通信手段を介して、インターネット上の気温情報提供サービスのサーバから予測気温情報を取得する気温情報取得手段と、前記通信手段を介して、前記コンクリート部材の表面温度情報と取得する温度情報取得手段とを備えたコンクリート部材の強度管理装置における強度管理方法であって、
前記気温情報取得手段により取得した前記予測気温情報を前記外部温度情報とし、前記温度情報取得手段により取得した前記表面温度情報を前記初期温度情報として、前記数値解析手段により温度解析を実行し、所定の強度が発現するまでの時間を予測する所定強度発現時間予測ステップを有することを特徴とするコンクリート部材の強度管理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−256061(P2011−256061A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130411(P2010−130411)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】