説明

コンクリート養生体およびコンクリート養生構造

【課題】施工が容易であり、且つ低コストで効率の良い養生を行うことのできるコンクリート養生構造を提供する。
【解決手段】コンクリート養生体2をトンネル軸方向に連設してコンクリート養生構造1とする。各コンクリート養生体2は、覆工コンクリート23のアーチ状の壁面23aに沿って配置され、複数のコンクリート養生ユニット3をアーチ周方向に連結して構成する。コンクリート養生ユニット3は、上下両端にジョイントパイプ8を備えた枠体4と、下端縁から下方へラップ代9aが延出する態様で枠体4全面に取り付けられた気泡緩衝材からなる養生シート9とを有し、養生シート9のコンクリート壁面23a側における所定の高さ位置に、保水パイプ12と不織布11とからなる保水ユニット10を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル壁面の覆工コンクリートや、建物や立坑などの壁コンクリートに適用することのできるコンクリート養生体およびコンクリート養生構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、打設後に所定期間にわたって養生されることにより、水和反応が促進され、乾燥や外力などによるひび割れの発生も防止される。これまで、山岳トンネルやシールドトンネルでは、トンネル内が高温多湿に保たれるため、一般的に、覆工コンクリートは脱型後に養生されていなかった。ところが、トンネル貫通後や、設備機能の向上などによってトンネル内の換気が十分に行われると、硬化したコンクリートの性質に悪影響を与えるため、近年、様々な覆工コンクリートの養生構造および養生方法が開発されている。
【0003】
例えば、アーチ状の覆工コンクリートを簡単な構造で確実且つ低コストで養生するために、覆工コンクリートの内周面に適合する形状の養生材を発泡スチロールで形成し、各発泡スチロールの端面に隣接する発泡スチロールと互いに係合する凹凸を設けてアーチ状に配置し、エアチューブを支保工材としてアーチ状に保持できるようにした覆工コンクリート養生構造が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、アーチ状の覆工コンクリートの表面をシートで覆う際に、トンネルアーチに沿った曲面を有する複数のアングル材と、シート養生用台車とを支保工として用い、シートの妻側両端部においてクッション材を介してアングル材でコンクリート表面に押し当てることにより、取付け痕を残すことなく覆工コンクリートの表面にシートを配置するようにした覆工コンクリートの養生方法が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−328869号公報
【特許文献2】特開2007−239320公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の覆工コンクリート養生構造では、エアチューブをトンネル内の地盤上の両側に固定することや、養生材が建て込み可能な状態にエアチューブをアーチ形状に沿って膨らませることなど、施工上の困難が予想される。
【0007】
また、特許文献2に記載の覆工コンクリートの養生方法では、アングル材を支持する大型の台車が必要となるため、トンネル工事で長期間の養生を行うためには、必要な台車の数が多くなり、コストが嵩む。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、施工が容易であり、且つ低コストで効率の良いコンクリートの養生を行うことのできるコンクリート養生体およびコンクリート養生構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第1の発明は、コンクリート壁面(23a)に沿って配置され、複数の養生ユニット(3)を上下方向に連結してなるコンクリート養生体(2)であって、養生ユニット(3)は、上下両端に連結部(7,8)を備えた枠体(4)と、少なくとも上下一方からラップ代(9a)が延出する態様で枠体(4)全面に取り付けられた養生シート(9)とを有することを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、養生ユニットを上下方向に連結することにより、所望の高さにコンクリート養生体とすることができるため、施工が容易である。また、各養生ユニットの連結部には、少なくとも一方の養生ユニットから養生シートのラップ代が延出するため、コンクリート壁面の全体が覆われ、露出部の局部的な温度低下などを招くこともない。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明に係るコンクリート養生体(2)において、養生シート(9)が気泡緩衝材であることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、養生シートとして気泡緩衝材を利用することにより、コンクリート養生ユニットの軽量化および低コスト化が実現しつつ、コンクリート壁面の保温効果も高めることができる。
【0013】
また、第3の発明は、第1の発明に係るコンクリート養生体(2)において、養生シート(9)のコンクリート壁面(23a)側における所定の高さ位置に設けられた保水手段(10)をさらに備えたことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、所定の高さ位置に保水手段を設けることにより、コンクリートから蒸発した水蒸気が、養生シートのコンクリート壁面側の表面に結露してコンクリート養生体の下端まで流れ落ちることなく保水手段に保水されるため、コンクリート壁面全体を高湿度に保つことができる。
【0015】
また、第4の発明は、第3の発明に係るコンクリート養生体(2)において、保水手段(10)は、略水平に設けられ、その上面にスリット(12a)が形成されたパイプ部材(12)と、その下端がスリット(12a)を介してパイプ部材(12)に挿入された不織布(11)とを有することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、養生シートの表面に結露して流れ落ちる水は不織布に吸水され、不織布の保水量を超える量の水が流れ落ちてきても、スリットを介してからパイプ部材内に導入され、貯留される。そして、養生シートとコンクリート壁面とによる空間の湿度が下がったときにも、パイプ部材内の水が毛細管現象によって不織布に吸い上げられて気化することにより、コンクリート壁面と養生シートとによる空間が常時高湿度に保たれる。
【0017】
また、第5の発明は、第1〜第4の発明に係るコンクリート養生体(2)において、トンネル(21)におけるアーチ状の覆工コンクリート壁面(23a)に沿って配置され、枠体(4)が塩化ビニルパイプからなり、養生ユニット(3)は、覆工コンクリート壁面(23a)の曲率半径よりも大きな曲率半径をもって予め曲げ加工されたことを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、コンクリート壁面がアーチ状である場合、弾性を有する塩化ビニルパイプを枠体として用いるとともに、枠体の曲率半径を覆工コンクリート壁面の曲率半径よりも大きくすることにより、自立した枠体自体を、養生シートをアーチ面に当接させる支保工として機能させ、コンクリート壁面と養生シートとの空隙を小さくし、保温性および保湿性を高めることができる。
【0019】
また、第6の発明は、第1〜第5の発明に係るコンクリート養生体(2)を水平方向に複数隣接して配置したコンクリート養生構造(1)であって、養生シート(9)は、枠体(4)の少なくとも水平方向の一方からラップ代(9b)が延出する態様で枠体(4)に取り付けられたことを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、例えば、コンクリート壁面の水平方向長さが大きな共同溝の側壁やトンネルの覆工コンクリートなどに適用する場合でも、コンクリート養生体(養生ユニット)の幅を取り扱い易い大きさにし、適宜延長することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、容易に施工でき、且つ低コストで効率の良いコンクリートの養生を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】トンネル用コンクリート養生構造の斜視図である。
【図2】図1に示すトンネル用コンクリート養生体の要部斜視図である。
【図3】コンクリート養生ユニットの斜視図である。
【図4】コンクリート養生ユニットの接続部の断面図である。
【図5】効果確認試験の測定位置を示す説明図である。
【図6】効果確認試験における各材齢の温度を示すグラフである。
【図7】効果確認試験における各測点の温度変化を示すグラフである。
【図8】効果確認試験における養生シート内および坑内の温度および湿度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1に示すように、実施形態に係るトンネル用のコンクリート養生構造1は、地山20に掘削された山岳トンネル等のアーチ状断面を呈するトンネル21における覆工コンクリート23用の養生構造として利用される。覆工コンクリート23は、地山20に吹き付けられた吹き付けコンクリート22の内側に構築される。コンクリート養生構造1は、覆工コンクリート23のアーチ状の壁面23aに沿って配置される。コンクリート養生構造1は、トンネル軸方向に分割され、覆工コンクリート23のアーチ状の壁面23aに沿うアーチ状のコンクリート養生体2が複数連結されたものであり、覆工コンクリート23の1スパン程度のトンネル軸方向長さとされている。コンクリート養生構造1は複数用意され、覆工コンクリート23の脱型に合わせて順次切羽方向へ延長される。そして、所定の養生期間が経過すると、コンクリート養生構造1は、坑口側のものから順次取外され、再度切羽側に設置されるべく、再利用される。
【0025】
図2に示すように、各コンクリート養生体2は、複数のコンクリート養生ユニット3がアーチの周方向(壁部において上下方向)に連結されて構成されており、トンネル軸方向視の左右両下端には、高さ調整用の棒ジャッキ13が連結されている。なお、棒ジャッキ13は、高さ調整の用の他、コンクリート養生体2をコンクリート壁面23aに対して押圧するための押圧手段としても機能する。コンクリート養生体2は、組み立てられた状態で自立し得る程度の幅(トンネル軸方向の長さ)とされ、本実施形態では1.5mとされている。したがって、覆工コンクリート23の1スパン分を一度に組立または解体しなくても、適宜必要な長さにコンクリート養生体2を延長または取外し可能となっている。
【0026】
図3に示すように、各コンクリート養生ユニット3は、2m程度の高さ(アーチ周方向の長さ)とされている。コンクリート養生ユニット3は、塩化ビニルパイプからなる矩形状の枠体4と、枠体4よりも大きな矩形状を呈する養生シート9とを有している。枠体4は、覆工コンクリート23の内周面(壁面23a)の曲率半径よりも大きな曲率半径をもって曲げ加工された2本のアーチ部材6と、2本のアーチ部材6の上下端を連結する直線状の2本の幅止め部材と5u,5lとから構成されている。各部材同士はチーズ7によって連結され、下側のチーズ7には下方へ延出するジョイントパイプ8が取り付けられている。
【0027】
養生シート9は、多数の気泡をシートに設けたビニル製の気泡緩衝材であり、衝撃吸収性に優れるだけでなく、軽量で加工性に優れ、優れた耐水性、保湿性、断熱性を有するという特徴を持つとともに、一般的な養生シートと比較して廉価で入手可能である。なお、気泡緩衝材としては、プチプチ(登録商標)、エアキャップ(登録商標)、エアセルマット(登録商標)など、市販の各製品を使用可能である。また、気泡の両面にシートが設けられた気泡緩衝材を使用したり、気泡緩衝材を複数枚重ね合わせたりすれば、コンクリート養生性能、取り扱い性、耐久性を更に高めることができる。
【0028】
図3および図4に示すように、養生シート9は、ビニルテープや接着剤によって枠体4に貼り付けられ、左右方向(トンネル軸方向)の一端縁からは、横方向に隣接するコンクリート養生体2に対するラップ代9bが延出するとともに、下端縁からは、下方に隣接するコンクリート養生ユニット3に対するラップ代9aが延出する態様で、枠体4の全面を覆っている。
【0029】
養生シート9の下端付近のコンクリート壁面23a側には、養生シート9を伝って流れ落ちる水を保持するための保水ユニット10が設けられている。保水ユニット10は、下側幅止め部材5lに沿って配置された吸水体11と、その上面にスリット12aが形成されてC字状断面を呈する保水パイプ12とから構成され、ビニルテープや接着剤によって養生シート9に一体接合されている。吸水体11は、吸水性を有する素材であればよく、本実施形態では不織布を用いており、その下端がスリット12aに挿入される態様で保水パイプ12に取り付けられる。
【0030】
したがって、養生シート9のコンクリート壁面23a側の表面を伝って流れ落ちた水は、吸水体11によって吸水されて保水パイプ12内に誘導される。保水パイプ12の両端はキャップ12bによって塞がれており、吸水体11によって誘導された水が保水パイプ12内に貯留されるようになっている。なお、本実施形態では、各コンクリート養生ユニット3に保水ユニット10が設置されているが、コンクリート養生ユニット3に対して1つおきに保水ユニット10を設けたり、1つのコンクリート養生ユニット3に複数の保水ユニット10を設けたりしてもよい。
【0031】
各コンクリート養生体2を設置するに際しては、トンネル地盤上の左右両端に棒ジャッキ13を配置し、高所作業車や移動式型枠の足場などを用いてコンクリート養生ユニット3を順次建て込んでゆき、最上部で左右のコンクリート養生ユニット3を連結した後、棒ジャッキ13でコンクリート養生体2を持ち上げてアーチ状のコンクリート壁面23aに全面的に当接させればよい。このように、コンクリート養生ユニット3が軽量であり、専用の台車を要することもないため、施工が容易であり、且つ、材料費および設置解体費も低廉である。
【0032】
そして、枠体4が所定の幅をもって形成されることにより、コンクリート養生体2の自立が可能となり、枠体4が弾性を有する塩化ビニルパイプで構成されるとともに、アーチ部材6の曲率半径が覆工コンクリート23の壁面23aの曲率半径よりも大きくされていることにより、枠体4自体が養生シート9をアーチ面に当接させる支保工として機能し、コンクリート壁面23aと養生シート9との空隙が小さくなる。これにより、コンクリート養生体2の保温性能および保湿性能が高まっている。そして、覆工コンクリート23の打設スパンに合わせて適宜な長さにコンクリート養生構造1を延長することもできる。
【0033】
そして、養生シート9に気泡緩衝材を用い、適宜な高さ位置に保水ユニット10を設けているため、コンクリートから蒸発した水蒸気が結露して養生シート9の表面に沿って流れ落ちても、コンクリート養生体2の下端まで流れ落ちることなく保水ユニット10によって保水される。そして、養生シート9とコンクリート壁面23aとによる空間の湿度が下がったときにも、保水パイプ12内に貯留された水が毛細管現象によって不織布に吸い上げられて気化することにより、全域にわたってコンクリート壁面23aと養生シート9との空間が常時高湿度に保たれる。
【0034】
また、各コンクリート養生ユニット3には、下方および左右方向(トンネル軸方向)の一方に養生シート9のラップ代9a,9bが設けられているため、コンクリート養生ユニット3同士の連結部や、コンクリート養生体2同士の連結部においても、コンクリート壁面23aが養生シート9によって覆われ、局部的な温度低下や湿度低下が防止される。
【0035】
さらに、このような構成のコンクリート養生構造1によれば、覆工コンクリート23の壁面23a全体が養生シート9によって覆われるため、資機材などによるコンクリートへの衝撃も緩和され、良質なコンクリートを得ることができる。
【0036】
次に、コンクリート養生構造1の効果について説明する。本発明者らは、図5に示すトンネル21において、覆工コンクリート23の脱型後、直ちにコンクリート養生構造1を組み立ててコンクリート養生を行った場合と、コンクリート養生を行わない場合とで、各種測定を行った。その結果を図6〜図8に示す。なお、この効果確認試験では、保水体10および不織布11を取り付けない形態のコンクリート養生構造1を用いている。
【0037】
測定部は覆工コンクリート23の脚部とし、測定用の各計器は、図5のA部拡大図に示す位置に配置した。具体的には、温度計31は、トンネル21の坑内、養生シート内、すなわち養生シート9と覆工コンクリート23の壁面23a(以下、コンクリート表面と略称する)との間、コンクリート表面から80mm、230mm、380mm、530mm、730mmの7箇所に設置した。また湿度計32は、トンネル21の坑内、養生シート内の2箇所に設置した。なお、コンクリート表面から80mm、230mm、380mmの各測点は、覆工コンクリート23の内部であり、コンクリート表面から530mmの測点は、吹き付けコンクリート22の内部であり、コンクリート表面から730mmの測点は、地山20の内部である。
【0038】
図6は、材齢毎に各測点の温度を示すグラフであり、(A)はコンクリート養生ありの測定結果を示し、(B)はコンクリート養生なしの測定結果を示している。同図に示すように、(A)の養生を行っているものでは、材齢が若いほど、シート内から吹き付けコンクリート22までの全ての測点の温度が、(B)の養生を行っていないものに比べて高いことがわかる。すなわち、アーチ脚部の覆工コンクリート23がコンクリート養生構造1によって保温されていることがわかる。また、(A)の養生を行っているものは、(B)の養生を行っていないものに比べてコンクリート表面と内部との温度差が小さくなっており、温度応力が低減されていることがわかる。
【0039】
図7は、測定点毎の温度変化を示すグラフであり、(A)はコンクリート養生ありの測定結果を示し、(B)はコンクリート養生なしの測定結果を示している。同図に示すように、(A)の養生を行っているものでは、坑内温度を除く全ての測点の温度が、(B)の養生を行っていないものに比べて常に高く保持されている。特に、(B)の養生を行っていない場合のコンクリート表面温度(0mm)は、坑内温度と同程度に低く、坑内温度の変化に伴って乱高下しているが、(A)の養生を行っている場合のコンクリート表面温度(0mm)は、坑内温度に比べて非常に高く、(B)のように乱高下することなく材齢の増加に伴って緩やかに変化していることがわかる。これは、覆工コンクリート23の壁面23aが坑内温度の変化の影響を最も受け易く、(A)ではコンクリート養生構造1によってその影響が緩和されていることを意味する。このことからも、アーチ脚部の覆工コンクリート23がコンクリート養生構造1によって保温されていることがわかる。
【0040】
図8は、坑内およびシート内における温度および湿度の変化を示すグラフである。シート内温度は、覆工コンクリート23の材齢が若いほど坑内温度に比べて高く、材齢の増加に伴って徐々に坑内温度に近づいている。これは、覆工コンクリート23の水和反応による熱をコンクリート養生構造1が養生シート9内に封じ込め、坑内への放熱を抑制して覆工コンクリート23を保温していることを意味する。一方、シート内湿度は、常に坑内湿度よりも高く、材齢7日以降では略100%に維持されている。他方、坑内湿度は、覆工コンクリート23の材齢に関係なく、約50%〜80%の間で推移している。この効果確認試験では、コンクリート養生構造1が保水体10および不織布11を備えずとも、少なくとも測定部においては覆工コンクリート23を効果的に保湿していることがわかる。
【0041】
以上説明したのように、実施形態に係るコンクリート養生構造1を用いて覆工コンクリート23を養生することにより、コンクリートを高温多湿に保持してセメントの水和反応を促進し、高強度且つひび割れの少ない良質なコンクリートを得ることができる。
【0042】
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、コンクリート養生構造1を山岳トンネルの覆工コンクリートに適用しているが、シールドトンネル等の他のトンネルに適用してもよく、また、壁面を有するものであれば、立坑や、共同溝、カルバートなど、他のコンクリート構造物に適用してもよい。
【0043】
例えば、立坑に本発明によるコンクリート養生構造を適用する場合、立坑の平断面が円形であれば、上記実施形態と同様に湾曲させたコンクリート養生ユニットを水平方向に順次連結して円形のコンクリート養生体とし、最終連結部に棒ジャッキを配置して立坑側面に当接させればよい。また、この場合、格別に支保工を設けなくても、コンクリート養生体が軽量であるため、棒ジャッキによる圧縮力(立坑側面との摩擦力)でコンクリート養生体を重力に抗して自立させる(設置位置に留めさせる)ことも可能である。一方、立坑の平断面が矩形であれば、例えば各辺の端部に長さ調整を兼ねた連結部材を設けてコンクリート養生ユニットを平面矩形状に連結したり、辺ごとに棒ジャッキを設けて1側面ごとのコンクリート養生体としたりしてもよい。また、この場合、枠体を一平面形状としても良いが、コンクリート面側へ突出するように水平方向について若干湾曲する形状とすれば、コンクリート養生体の全面をコンクリート表面に確実に当接させることができる。
【0044】
また、上記実施形態では、保水体として、保水パイプと不織布との組み合わせを用いたが、不織布のみの形態としたり、不織布の変わりにスポンジを用いる形態としたりしてもよい。また、枠体を利用して保水体を形成しても良い。これら変更の他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 コンクリート養生構造
2 コンクリート養生体
3 コンクリート養生ユニット
4 枠体
7 チーズ
8 ジョイントパイプ
9 養生シート
9a,9b ラップ代
10 保水ユニット
11 不織布
12 保水パイプ
12a スリット
23 覆工コンクリート
23a 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート壁面に沿って配置され、複数の養生ユニットを上下方向に連結してなるコンクリート養生体であって、
前記養生ユニットは、上下両端に連結部を備えた枠体と、少なくとも上下一方からラップ代が延出する態様で前記枠体全面に取り付けられた養生シートとを有することを特徴とするコンクリート養生体。
【請求項2】
前記養生シートが気泡緩衝材であることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート養生体。
【請求項3】
前記気泡緩衝材の前記コンクリート壁面側における所定の高さ位置に設けられた保水手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンクリート養生体。
【請求項4】
前記保水手段は、
略水平に設けられ、その上面にスリットが形成されたパイプ部材と、
その下端が前記スリットを介して前記パイプ部材に挿入された不織布と
を有することを特徴とする、請求項3に記載のコンクリート養生体。
【請求項5】
トンネルにおけるアーチ状の覆工コンクリート壁面に沿って配置され、
前記枠体が塩化ビニルパイプからなり、前記養生ユニットは、前記覆工コンクリート壁面の曲率半径よりも大きな曲率半径をもって予め曲げ加工されたことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のコンクリート養生体。
【請求項6】
請求項1〜請求項5に記載のコンクリート養生体を水平方向に複数隣接して配置したコンクリート養生構造であって、
前記養生シートは、前記枠体の少なくとも水平方向の一方からラップ代が延出する態様で前記枠体に取り付けられたことを特徴とするコンクリート養生構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−203090(P2010−203090A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47682(P2009−47682)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】