コンクリート養生部材ならびにそれを用いたコンクリート養生装置および養生方法
【課題】鋼製型枠への着脱操作性を簡便にしたコンクリート養生部材ならびにそれを用いたコンクリート養生装置および養生方法を提供する。
【解決手段】鋼製型枠2の内側に打設されるコンクリート6を養生するためのコンクリート養生部材であって、側面養生部材10と、上面養生部材20と、防滴養生部材30とを備える。側面養生部材10の断熱材12の着脱側14aには、断熱材12を鋼製型枠2に磁気的に吸着するためのマグネットシート22が設けられるようにする。また、鋼製型枠2の外側に形成されるリブ40に係合可能な係合部18を設けるようにする。
【解決手段】鋼製型枠2の内側に打設されるコンクリート6を養生するためのコンクリート養生部材であって、側面養生部材10と、上面養生部材20と、防滴養生部材30とを備える。側面養生部材10の断熱材12の着脱側14aには、断熱材12を鋼製型枠2に磁気的に吸着するためのマグネットシート22が設けられるようにする。また、鋼製型枠2の外側に形成されるリブ40に係合可能な係合部18を設けるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠内に打設されたコンクリートを養生するために用いるコンクリート養生部材、その部材を用いたコンクリート養生装置およびコンクリート養生方法に関するものであり、特に、コンクリートブロックなどのコンクリート二次製品(プレキャストコンクリート)を成形する型枠に外装することによって養生を行うコンクリート養生部材ならびにそれを用いたコンクリート養生装置および養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートを打設した後に養生処理を行うことが知られている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。コンクリートの養生は、硬化したコンクリートが所定の材齢において必要な強度を発現するための有効な処置であるとともに、温度ひび割れの発生を抑制するための必要な処置である。養生方法としては、コンクリート硬化反応に伴う水和発熱を逃がさないようにコンクリート表面にシート等を被覆して行う断熱養生と、ヒーター等によってコンクリートを加熱して行う加熱養生とがある。
【0003】
ところで、コンクリートブロック製品などのプレキャストコンクリート(以下、「PCaコンクリート」という。)は、例えば、図14に示すように、鋼製型枠2を側面として有底箱状に組み立てられた型枠本体4内に打設充填されたフレッシュコンクリート6が硬化することにより製造される。硬化中のPCaコンクリートを断熱養生する場合、例えば軽量な断熱材からなるシート状のコンクリート養生部材を、鋼製型枠2の外側に被覆するように装着して養生を行うことが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−129095号公報
【特許文献2】特開2007−205054号公報
【特許文献3】特開2001−317204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の従来のシート状のコンクリート養生部材は、鋼製型枠2への着脱作業における操作性が必ずしも良好ではなかった。特に、養生対象のPCaコンクリートが多数あると、装着および脱着の手間が増えることによって、労務コストの上昇、ひいてはコンクリート製作コストの上昇を招く。
【0006】
また、養生対象のPCaコンクリートが多数ある場合に、上記着脱作業の手間を低減するために、複数のPCaコンクリートの型枠本体4を集合配置させ、これらを跨ぐように、複数枚のシート状のコンクリート養生部材を用いて被覆すると、シート間にできた隙間からシート内部の暖気が漏れることにより養生性能が低下してしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、鋼製型枠への着脱操作性が簡便なコンクリート養生部材ならびにそれを用いたコンクリート養生装置および養生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係るコンクリート養生部材は、鋼製型枠の内側に打設されるコンクリートを養生するためのコンクリート養生部材であって、前記鋼製型枠の外側に対しマグネットにより着脱可能に取り付けられる断熱材を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係るコンクリート養生部材は、上述した請求項1において、前記鋼製型枠の外側に形成されるリブに係合可能な係合部をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係るコンクリート養生部材は、上述した請求項1または請求項2において、前記断熱材の着脱側には、前記断熱材を前記鋼製型枠に磁気的に吸着するためのマグネットシートが設けられることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に係るコンクリート養生部材は、上述した請求項2または請求項3において、前記断熱材は、補強板により形成されたシート状の中空体の内部と、前記中空体の一方の面に突設された前記係合部としての中空凸部の内部とに設けられ、前記中空凸部は、平面形状が矩形に形成されるとともに、前記中空凸部の先端部は前記中空体の面と平行な平坦面に形成され、この平坦面には前記鋼製型枠の型面外側に対して着脱可能なマグネットシートが設けられることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5に係るコンクリート養生部材は、上述した請求項4において、前記中空凸部は前記リブの配置形状に対応して複数個形成されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6に係るコンクリート養生部材は、上述した請求項1から請求項5のいずれか一つにおいて、前記鋼製型枠に対する着脱操作時に操作者が把持するための握り部をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項7に係るコンクリート養生装置は、上述した請求項1から請求項6のいずれか一つに記載のコンクリート養生部材を有し、このコンクリート養生部材を前記鋼製型枠に取り付けた態様で前記コンクリートの断熱養生を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項8に係るコンクリート養生装置は、上述した請求項7において、鋼製型枠で囲まれ上部が開口した有底箱状の型枠本体の内部に打設されるコンクリートを養生するコンクリート養生装置であって、請求項1から請求項6のいずれか一つに記載のコンクリート養生部材を前記鋼製型枠の外側に装着される側面養生部材として用いるとともに、前記型枠本体の内部に打設されるコンクリートの上面側に設けられ、補強板により形成されたシート状の中空体の内部に断熱材を有する上面養生部材とを含んで構成され、前記上面養生部材は、その周縁から下向きに設けられた鍔片を備え、前記鍔片によって前記鋼製型枠の外側に装着された状態の前記側面養生部材の上端を外嵌するように構成されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項9に係るコンクリート養生装置は、上述した請求項8において、前記上面養生部材は、前記コンクリート上面から上方に延びる鉄筋を通すための鉄筋通し穴を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項10に係るコンクリート養生装置は、上述した請求項9において、前記上面養生部材および前記鉄筋を覆うように上方に設けられ、前記上面養生部材および前記鉄筋への雨滴の付着を防止する防滴養生部材を備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項11に係るコンクリート養生装置は、上述した請求項10において、前記防滴養生部材は、前記鉄筋の上端部を被覆する鞘管をさらに備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項12に係るコンクリート養生装置は、上述した請求項9から請求項11のいずれか一つにおいて、前記鉄筋通し穴には、前記鉄筋通し穴から前記コンクリート上面への雨滴の侵入を防止する防滴用弁部材が設けられることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項13に係るコンクリート養生方法は、請求項1から請求項6のいずれか一つに記載のコンクリート養生部材を前記鋼製型枠に装着する部材装着工程と、前記コンクリート養生部材が前記鋼製型枠に装着された状態で前記コンクリートの断熱養生を行う養生工程と、前記コンクリート養生部材を前記鋼製型枠から脱着する部材脱着工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、断熱養生に用いられる断熱材が鋼製型枠の外側に対しマグネットにより着脱可能に取り付けられるので、鋼製型枠への着脱操作性を簡便にすることができる。これにより、コンクリート養生部材の着脱作業に係る手間が低減され、作業コストを縮減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明に係るコンクリート養生部材ならびにそれを用いたコンクリート養生装置および養生方法の好適な実施の形態をPCaコンクリートの断熱養生に適用される場合について詳細に説明する。図1は、本発明に係るコンクリート養生装置の概略側断面図であり、図2は、図1のA−A線に沿った概略側断面図である。図3は、図1のB−B線に沿った概略横断面図である。
【0023】
図1、図2および図3に示すように、本発明に係るコンクリート養生装置100は、本発明のコンクリート養生部材としての側面養生部材10と、上面養生部材20と、防滴養生部材30とを備える。
【0024】
側面養生部材10および上面養生部材20は、断熱材を含んだパネル状の部材であり、PCaコンクリート6内部の水和発熱を逃がすことがないように、それぞれPCaコンクリート6の側面の鋼製型枠2の外側およびコンクリート上面側8に配置される。防滴養生部材30は、上面養生部材20の上方に設けられる三角屋根状の部材であり、降雨時の雨滴がコンクリート6側へ侵入するのを防止するためのものである。
【0025】
図4は、図3のA−A線に沿った概略側断面図であり、図5は、側面養生部材10が鋼製型枠2に装着された状態を示す概略側断面図である。また、図6は側面養生部材10の正面図であり、図7は、側面養生部材10の背面図であり、操作者による着脱操作の状況を示す図である。
【0026】
側面養生部材10は、図3、図4および図5に示すように、断熱材12と、この断熱材12を保護し、略矩形板状の中空パネル体14を構成する補強板16とを備える。また、側面養生部材10は、図6に示すように、パネル体14の正面14a(着脱面)に外方に突設された係合部としての複数の凸部18と、各凸部18の先端面18aおよび下面18bに貼着されたマグネットシート22とを備える。このようにすることで、図4および図5に示すように、マグネットシート22の磁力を利用して断熱材12を鋼製型枠2のリブ40に保持させることができる。
【0027】
また、側面養生部材10は、図7に示すように、パネル体14の背面14b(操作面)に設けられた握り部としての把持ハンドル24を備える。ハンドル24を握って断熱材12を運搬することで鋼製型枠2に容易に着脱することができる。
【0028】
断熱材12は、PCaコンクリート6の水和熱を保温することを目的として用いられる。断熱材12は熱伝導率が低く、かつ、断熱材12の着脱操作性を考慮して軽量の材質であることが好ましい。この断熱材12としては、例えば、ビーズ法ポリスチレンフォームや硬質ウレタンフォームなどのプラスチック系材料、セルロースファイバーなどの自然系材料あるいはグラスウールなどの鉱物系材料を用いることができる。
【0029】
補強板16は、断熱材12の割れや欠損を防止するために用いられる。例えば、断熱材12としてビーズ法ポリスチレンフォームを使用した場合、これに過大な力が作用したり突起物が接触すると、割れたり、穴が開いたりするおそれがある。このため、補強板16を設けることによりこれを未然に防止する。補強板16の材質としては、例えば塩化ビニル製のパネルを用いることができる。これは安価で入手できるため好適である。
【0030】
凸部18は、鋼製型枠2の外側に形成される補強リブ40に断熱材12の重量を伝達することを主な目的として用いられる。凸部18の形状は、PCaコンクリート6の水和熱を保温するのに好適なように、図14に示すように、上下左右に延びた格子状のリブ40と型面42とによって画成される凹陥部44に適合するように平面形状が矩形の略箱状に突出形成される。この凸部18は複数の凹陥部44に対応するように複数個形成される。また、凸部18の先端部は、パネル面と平行な平坦な面18aとなっており、マグネットシート22が貼着される。側面養生部材10を鋼製型枠2に装着する場合には、この凸部18の面18aのマグネットシート22が鋼製型枠2の型面42の外側に対して当接する一方で、マグネットシート22を通じてパネル体14は鋼製型枠2に吸着される。
【0031】
また、凸部18の下側面18bには、鋼製型枠2の外側の格子状の補強リブ40の上側面40aに対して着脱可能なマグネットシート22が貼着される。側面養生部材10を鋼製型枠2に装着した場合には、凸部18の下側面18bがリブ40の上側面40aに当接載置された状態となり、側面養生部材10の重量は、凸部18先端面18aのマグネットシート22による磁気的な力だけでなく、凸部18下側面18bを介してもリブ40に支持される。なお、凸部18の材質は特に限定するものではないが、例えば、上記断熱材12と同じ材質で構成するようにしてもよい。また、図3等に示すように、凸部18を補強板16により中空構造にして内部に断熱材を装備するようにしてもよい。凸部18を中空パネル体14の補強板16に貼着する方法としては、接着剤等により直接貼り付ける方法等を利用することができる。
【0032】
マグネットシート22は、断熱材12を鋼製型枠2の型面42の外側に吸着させることを目的として用いられるものであり、その材質としては磁石を用いることができる。このようにシート状とすることで、磁力による吸着面を広く確保することができる。この場合、マグネットシート22は、鋼製型枠2への側面養生部材10の吸着状態を維持できるものであれば、例えば単位面積当たりの磁力が低いもので構成しても構わない。
【0033】
ハンドル24は、側面養生部材10の着脱時の操作性を向上させるために用いられる。図7に示すように、ハンドル24は、着脱操作者1人が両手で抱え持ち易いように、パネル体14の背面14bの左上および右下の2箇所に設けられている。着脱操作者はこのハンドル24を握って側面養生部材10を資材置き場等から運搬し、鋼製型枠2の外側へ接触させるようにするだけで、側面養生部材10をマグネットシート22により鋼製型枠2に容易に装着することができる。また、鋼製型枠2から脱着する場合には、操作者は、このハンドル24を握って鋼製型枠2から引き離す方向に、マグネットシート22の吸着力をわずかに上回る力を加えるだけで側面養生部材10を鋼製型枠2から容易に取り外すことができる。そして、取り外した側面養生部材10を資材置き場に戻したり、他のPCaコンクリートの鋼製型枠2に装着するために用いるような運用を行うこともできる。
【0034】
ハンドル24の固定方法としては、例えば、図8に示すような方法を用いてもよい。この場合、ハンドル24は、U字状のアーム部材であり、U字の両端部26はネジ山が切られており、中空パネル体14を貫通して正面14aから突き出るように配置される。そして、補強板16に平行な板状のプレート28aが両端部26に通され、各端部26にはプレート28aの上からワッシャ28bが入って、各ネジ山にナット28cが締結されることによって、ハンドル24は中空パネル体14に固定される。このようにすることで、例えば、断熱材12としてビーズ法ポリスチレンフォーム等の材料を採用する場合であっても、ハンドル24を中空パネル体14に簡便に取り付けることができる。
【0035】
次に、上面養生部材20について説明する。図9は、上面養生部材20の概略平面図であり、図10は、図9のA−A線に沿った概略側断面図である。図11は、上面養生部材20の装着状態を示した概略側断面図である。
上面養生部材20は、図9および図10に示すように、コンクリート6の上面8に設けられる略矩形板状のシート状部材であり、補強板56により形成された中空パネル体54の内部には、断熱材52が内装されている。上面養生部材20の周縁には下向きの板状の鍔片58が設けられる。上面養生部材20の内方には上下を貫通する鉄筋通し穴50が複数設けられている。
【0036】
鍔片58は、図11に示すように、鋼製型枠2に装着された側面養生部材10が誤って外れることを防止するために用いられるものである。上面養生部材20をコンクリート上面8に配置した場合には、鋼製型枠2に装着された各側面養生部材10の上端10aは鍔片58に内嵌固定されるので、各側面養生部材10は鋼製型枠2から離れないようになっている。
【0037】
鉄筋通し穴50は、コンクリート上面8から上方に延びる鉄筋9を通し、上面養生部材20のコンクリート上面8への装着作業を容易にするために鉄筋9の位置および本数に応じて設けられるものである。鉄筋通し穴50の直径は、鉄筋9の径と比較して若干大きい径に形成されてある。鉄筋通し穴50の上縁には、図12の部分拡大図に示すように、防滴弁部材62やリング64が設けられており、鉄筋9が通されないときには鉄筋通し穴50を閉塞させる一方で、鉄筋9が通されるときには変形して鉄筋9を通すようにすることで、この鉄筋通し穴50を通して上面養生部材20の下側のコンクリート6の暖気が漏れることや、外部から雨滴が侵入することを防止するようにしている。
【0038】
防滴弁部材62は、図13の概略平面図に示すように、ゴム等の弾性材からなる円盤状の弁であり、中心から径方向に4本の切れ込み62aが入っており、鉄筋通し穴50に鉄筋9が通った状態には弾性変形することによって隙間が発生することを抑制し、鉄筋通し穴50からの雨滴の侵入を防止するようになっている。リング64は、防滴弁部材62を固定するために防滴弁部材62の外周縁に設けられるO状の部材であり、防滴弁部材62が設けられる上面養生部材20の上面と防滴弁部材62との間に隙間が生じないようにしており、鉄筋通し穴50からの雨滴等の侵入を防止している。
【0039】
次に、防滴養生部材30について説明する。
防滴養生部材30は、図1および図2に示すように、降雨時における雨滴が上面養生部材20、側面養生部材10およびコンクリート6側に付着することを防止するために、これらの上方に設けられる。防滴養生部材30は、低コストで製造可能なように二枚の板32を三角屋根状に接合した単純な構成とされている。防滴養生部材30の下面側の隅部の鉄筋9に対向する4箇所には、下端が開口した鞘管34が設けられており、鞘管34を鉄筋9の上端に被せることによって防滴養生部材30がずれ落ちることを防止するようになっている。
【0040】
上記構成の動作および作用について説明する。
まず、図14に示すように、PCaコンクリート6を成形するための型枠本体4は、鋼製底板1と4枚の同寸法の鋼製型枠2による側板とによって囲まれ、上部が開口した有底の直方体箱状とされる。鋼製型枠2は、鉛直に立てられた型面42を有し、型面42の周縁には外側に延びる枠部46が形成され、型面42の外面には格子状の補強リブ40が突出形成されている。そして、型枠本体4の箱の内部にコンクリート6が打ち込まれた後、所定強度を発現するように硬化するまでの所定の期間、各養生部材10、20、30が型枠本体4の周囲に装着されることにより断熱養生が行われる。
【0041】
まず、各養生部材10、20、30を鋼製型枠2に装着する場合について説明する。操作者は、図7に示すように、ハンドル24を握って側面養生部材10を鋼製型枠2の近傍まで運搬し、図3に示すように、各凸部18を各凹陥部44に挿入して、凸部18下側面18bを水平方向に延びるリブ40の上側面40aに載せるように配置する。そうすると、図5に示すように、凸部18の先端面18aのマグネットシート22の磁気力によって断熱材12が型面42の外側に吸着される。これと同時に、凸部18の下側面18bのマグネットシート22の磁気力によって凸部18がリブ40の上側面40aに吸着されるとともに、側面養生部材10の重量は凸部18を介してリブ40に支持される。これにより側面養生部材10が鋼製型枠2に操作者によって容易に装着される。この装着作業を別の側面養生部材10を用いて残り3面の鋼製型枠2に対しても行うことにより、型枠本体4の4つの側面における側面養生部材10の装着が完了する。このようにすることで、コンクリート6を側面側から保温し、断熱養生をすることが可能となる。
【0042】
ついで、上面養生部材20を型枠本体4の開口側からコンクリート上面8に配置する。この場合、コンクリート上面8からは、図3に示すように、口の字状に略等スパンに配置された複数本の鉄筋9が上方に延びているので、各鉄筋9を予め形成された各鉄筋通し穴に通しながら上面養生部材20を上から下へ移動させ、図11に示すように、コンクリート上面8に配置する。これによりコンクリート6を上面側から保温し、断熱養生をすることが可能となる。そして、既に装着されている4枚の側面養生部材10の上端10aに対して鍔片58を外嵌装着する。この鍔片58が各上端10aの外側に配置されることにより各上端10aの外側への移動を拘束して固定する。こうすることにより、側面養生部材10が鋼製型枠2から脱落することを防止する。
【0043】
ついで、図1および図2に示すように、防滴養生部材30を上面養生部材20の上方に配置する。これにより養生期間中における雨滴のコンクリート6側への侵入を防止する。この場合、4つの鞘管34を隅部の鉄筋9の上端に挿入して、防滴養生部材30のずれ落ちを防止する。以上により、コンクリート養生装置100の構成部材である側面養生部材10、上面養生部材20および防滴養生部材30のコンクリート6側への装着が完了し、所定期間、断熱養生が行われることになる。
【0044】
次に、脱着する場合について説明する。操作者は、防滴養生部材30を取り外してから上面養生部材20をコンクリート上面8から取り外す。そして、側面養生部材10のハンドル24を握り、鋼製型枠2から引き離す方向に力を加え、これを取り外す。残り3枚の側面養生部材10についても同様の操作を行って鋼製型枠2から取り外す。このように、本発明によれば、側面養生部材10を鋼製型枠2に対しマグネット22により容易に着脱できるので、着脱操作性は従来よりも簡便である。
【0045】
以上、本発明に係るコンクリート養生部材ならびにそれを用いたコンクリート養生装置および養生方法の実施形態について、PCaコンクリートの断熱養生に対して適用する場合について説明した。以上のように、本発明によれば、断熱養生に用いられる断熱材12が鋼製型枠2の外側に対しマグネットシート22により着脱可能に取り付けられるので、鋼製型枠2への着脱操作性を簡便にすることができる。このため、コンクリート養生部材の着脱作業に係る手間が低減され、作業コストを縮減することができる。また、必要なときにのみ利用するような部材あるいは装置の運用方法を採用することが可能である。
【0046】
また、上記の実施形態において、コンクリート養生部材は、断熱材12と、補強材16と、マグネットシート22と、凸部18と、ハンドル24等とを備える簡素な構成であることから、低コストにて製造可能である。また、本構成は他の建設資材にも流用することが可能であり、リサイクルが容易な構成であることから、使用後の廃棄量を抑制することができる。
【0047】
さらに、本発明のコンクリート養生装置および養生方法によれば、コンクリートが硬化する際に発生する水和熱を保温する断熱養生をより適切に行うことができるので、コンクリートの所定の強度が出現する材齢を従来よりも短縮することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るコンクリート養生装置の構成の一例を示す概略側断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った概略側断面図である。
【図3】図1のB−B線に沿った概略横断面図であり、装着状況の一例を示す図である。
【図4】図3のA−A線に沿った概略側断面図である。
【図5】側面養生部材が鋼製型枠に装着された状態を示す概略側断面図である。
【図6】側面養生部材の正面図である。
【図7】側面養生部材の背面図であり、操作者による着脱操作の状況の一例を示す図である。
【図8】本発明に係るハンドルの固定方法の一例を説明する概略側断面図である。
【図9】本発明に係る上面養生部材の概略平面図である。
【図10】図9のA−A線に沿った概略側断面図である。
【図11】本発明に係る上面養生部材の装着状態の一例を示した概略側断面図である。
【図12】本発明に係る鉄筋通し穴の断面図であり、鉄筋を通した状況の一例を示す部分拡大図である。
【図13】本発明に係る防滴弁部材およびリングの一例を示す概略平面図である。
【図14】PCaコンクリートが打設された鋼製型枠の一例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
2 鋼製型枠
4 型枠本体
6 コンクリート
9 鉄筋
10 側面養生部材(コンクリート養生部材)
12,52 断熱材
14,54 中空パネル体
16,56 補強材
18 凸部(係合部)
20 上面養生部材
22 マグネットシート
24 ハンドル
30 防滴養生部材
34 鞘管
50 鉄筋通し穴
58 鍔片
62 防滴弁部材
64 リング
100 コンクリート養生装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠内に打設されたコンクリートを養生するために用いるコンクリート養生部材、その部材を用いたコンクリート養生装置およびコンクリート養生方法に関するものであり、特に、コンクリートブロックなどのコンクリート二次製品(プレキャストコンクリート)を成形する型枠に外装することによって養生を行うコンクリート養生部材ならびにそれを用いたコンクリート養生装置および養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートを打設した後に養生処理を行うことが知られている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。コンクリートの養生は、硬化したコンクリートが所定の材齢において必要な強度を発現するための有効な処置であるとともに、温度ひび割れの発生を抑制するための必要な処置である。養生方法としては、コンクリート硬化反応に伴う水和発熱を逃がさないようにコンクリート表面にシート等を被覆して行う断熱養生と、ヒーター等によってコンクリートを加熱して行う加熱養生とがある。
【0003】
ところで、コンクリートブロック製品などのプレキャストコンクリート(以下、「PCaコンクリート」という。)は、例えば、図14に示すように、鋼製型枠2を側面として有底箱状に組み立てられた型枠本体4内に打設充填されたフレッシュコンクリート6が硬化することにより製造される。硬化中のPCaコンクリートを断熱養生する場合、例えば軽量な断熱材からなるシート状のコンクリート養生部材を、鋼製型枠2の外側に被覆するように装着して養生を行うことが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−129095号公報
【特許文献2】特開2007−205054号公報
【特許文献3】特開2001−317204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の従来のシート状のコンクリート養生部材は、鋼製型枠2への着脱作業における操作性が必ずしも良好ではなかった。特に、養生対象のPCaコンクリートが多数あると、装着および脱着の手間が増えることによって、労務コストの上昇、ひいてはコンクリート製作コストの上昇を招く。
【0006】
また、養生対象のPCaコンクリートが多数ある場合に、上記着脱作業の手間を低減するために、複数のPCaコンクリートの型枠本体4を集合配置させ、これらを跨ぐように、複数枚のシート状のコンクリート養生部材を用いて被覆すると、シート間にできた隙間からシート内部の暖気が漏れることにより養生性能が低下してしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、鋼製型枠への着脱操作性が簡便なコンクリート養生部材ならびにそれを用いたコンクリート養生装置および養生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係るコンクリート養生部材は、鋼製型枠の内側に打設されるコンクリートを養生するためのコンクリート養生部材であって、前記鋼製型枠の外側に対しマグネットにより着脱可能に取り付けられる断熱材を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係るコンクリート養生部材は、上述した請求項1において、前記鋼製型枠の外側に形成されるリブに係合可能な係合部をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係るコンクリート養生部材は、上述した請求項1または請求項2において、前記断熱材の着脱側には、前記断熱材を前記鋼製型枠に磁気的に吸着するためのマグネットシートが設けられることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に係るコンクリート養生部材は、上述した請求項2または請求項3において、前記断熱材は、補強板により形成されたシート状の中空体の内部と、前記中空体の一方の面に突設された前記係合部としての中空凸部の内部とに設けられ、前記中空凸部は、平面形状が矩形に形成されるとともに、前記中空凸部の先端部は前記中空体の面と平行な平坦面に形成され、この平坦面には前記鋼製型枠の型面外側に対して着脱可能なマグネットシートが設けられることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5に係るコンクリート養生部材は、上述した請求項4において、前記中空凸部は前記リブの配置形状に対応して複数個形成されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6に係るコンクリート養生部材は、上述した請求項1から請求項5のいずれか一つにおいて、前記鋼製型枠に対する着脱操作時に操作者が把持するための握り部をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項7に係るコンクリート養生装置は、上述した請求項1から請求項6のいずれか一つに記載のコンクリート養生部材を有し、このコンクリート養生部材を前記鋼製型枠に取り付けた態様で前記コンクリートの断熱養生を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項8に係るコンクリート養生装置は、上述した請求項7において、鋼製型枠で囲まれ上部が開口した有底箱状の型枠本体の内部に打設されるコンクリートを養生するコンクリート養生装置であって、請求項1から請求項6のいずれか一つに記載のコンクリート養生部材を前記鋼製型枠の外側に装着される側面養生部材として用いるとともに、前記型枠本体の内部に打設されるコンクリートの上面側に設けられ、補強板により形成されたシート状の中空体の内部に断熱材を有する上面養生部材とを含んで構成され、前記上面養生部材は、その周縁から下向きに設けられた鍔片を備え、前記鍔片によって前記鋼製型枠の外側に装着された状態の前記側面養生部材の上端を外嵌するように構成されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項9に係るコンクリート養生装置は、上述した請求項8において、前記上面養生部材は、前記コンクリート上面から上方に延びる鉄筋を通すための鉄筋通し穴を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項10に係るコンクリート養生装置は、上述した請求項9において、前記上面養生部材および前記鉄筋を覆うように上方に設けられ、前記上面養生部材および前記鉄筋への雨滴の付着を防止する防滴養生部材を備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項11に係るコンクリート養生装置は、上述した請求項10において、前記防滴養生部材は、前記鉄筋の上端部を被覆する鞘管をさらに備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項12に係るコンクリート養生装置は、上述した請求項9から請求項11のいずれか一つにおいて、前記鉄筋通し穴には、前記鉄筋通し穴から前記コンクリート上面への雨滴の侵入を防止する防滴用弁部材が設けられることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項13に係るコンクリート養生方法は、請求項1から請求項6のいずれか一つに記載のコンクリート養生部材を前記鋼製型枠に装着する部材装着工程と、前記コンクリート養生部材が前記鋼製型枠に装着された状態で前記コンクリートの断熱養生を行う養生工程と、前記コンクリート養生部材を前記鋼製型枠から脱着する部材脱着工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、断熱養生に用いられる断熱材が鋼製型枠の外側に対しマグネットにより着脱可能に取り付けられるので、鋼製型枠への着脱操作性を簡便にすることができる。これにより、コンクリート養生部材の着脱作業に係る手間が低減され、作業コストを縮減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明に係るコンクリート養生部材ならびにそれを用いたコンクリート養生装置および養生方法の好適な実施の形態をPCaコンクリートの断熱養生に適用される場合について詳細に説明する。図1は、本発明に係るコンクリート養生装置の概略側断面図であり、図2は、図1のA−A線に沿った概略側断面図である。図3は、図1のB−B線に沿った概略横断面図である。
【0023】
図1、図2および図3に示すように、本発明に係るコンクリート養生装置100は、本発明のコンクリート養生部材としての側面養生部材10と、上面養生部材20と、防滴養生部材30とを備える。
【0024】
側面養生部材10および上面養生部材20は、断熱材を含んだパネル状の部材であり、PCaコンクリート6内部の水和発熱を逃がすことがないように、それぞれPCaコンクリート6の側面の鋼製型枠2の外側およびコンクリート上面側8に配置される。防滴養生部材30は、上面養生部材20の上方に設けられる三角屋根状の部材であり、降雨時の雨滴がコンクリート6側へ侵入するのを防止するためのものである。
【0025】
図4は、図3のA−A線に沿った概略側断面図であり、図5は、側面養生部材10が鋼製型枠2に装着された状態を示す概略側断面図である。また、図6は側面養生部材10の正面図であり、図7は、側面養生部材10の背面図であり、操作者による着脱操作の状況を示す図である。
【0026】
側面養生部材10は、図3、図4および図5に示すように、断熱材12と、この断熱材12を保護し、略矩形板状の中空パネル体14を構成する補強板16とを備える。また、側面養生部材10は、図6に示すように、パネル体14の正面14a(着脱面)に外方に突設された係合部としての複数の凸部18と、各凸部18の先端面18aおよび下面18bに貼着されたマグネットシート22とを備える。このようにすることで、図4および図5に示すように、マグネットシート22の磁力を利用して断熱材12を鋼製型枠2のリブ40に保持させることができる。
【0027】
また、側面養生部材10は、図7に示すように、パネル体14の背面14b(操作面)に設けられた握り部としての把持ハンドル24を備える。ハンドル24を握って断熱材12を運搬することで鋼製型枠2に容易に着脱することができる。
【0028】
断熱材12は、PCaコンクリート6の水和熱を保温することを目的として用いられる。断熱材12は熱伝導率が低く、かつ、断熱材12の着脱操作性を考慮して軽量の材質であることが好ましい。この断熱材12としては、例えば、ビーズ法ポリスチレンフォームや硬質ウレタンフォームなどのプラスチック系材料、セルロースファイバーなどの自然系材料あるいはグラスウールなどの鉱物系材料を用いることができる。
【0029】
補強板16は、断熱材12の割れや欠損を防止するために用いられる。例えば、断熱材12としてビーズ法ポリスチレンフォームを使用した場合、これに過大な力が作用したり突起物が接触すると、割れたり、穴が開いたりするおそれがある。このため、補強板16を設けることによりこれを未然に防止する。補強板16の材質としては、例えば塩化ビニル製のパネルを用いることができる。これは安価で入手できるため好適である。
【0030】
凸部18は、鋼製型枠2の外側に形成される補強リブ40に断熱材12の重量を伝達することを主な目的として用いられる。凸部18の形状は、PCaコンクリート6の水和熱を保温するのに好適なように、図14に示すように、上下左右に延びた格子状のリブ40と型面42とによって画成される凹陥部44に適合するように平面形状が矩形の略箱状に突出形成される。この凸部18は複数の凹陥部44に対応するように複数個形成される。また、凸部18の先端部は、パネル面と平行な平坦な面18aとなっており、マグネットシート22が貼着される。側面養生部材10を鋼製型枠2に装着する場合には、この凸部18の面18aのマグネットシート22が鋼製型枠2の型面42の外側に対して当接する一方で、マグネットシート22を通じてパネル体14は鋼製型枠2に吸着される。
【0031】
また、凸部18の下側面18bには、鋼製型枠2の外側の格子状の補強リブ40の上側面40aに対して着脱可能なマグネットシート22が貼着される。側面養生部材10を鋼製型枠2に装着した場合には、凸部18の下側面18bがリブ40の上側面40aに当接載置された状態となり、側面養生部材10の重量は、凸部18先端面18aのマグネットシート22による磁気的な力だけでなく、凸部18下側面18bを介してもリブ40に支持される。なお、凸部18の材質は特に限定するものではないが、例えば、上記断熱材12と同じ材質で構成するようにしてもよい。また、図3等に示すように、凸部18を補強板16により中空構造にして内部に断熱材を装備するようにしてもよい。凸部18を中空パネル体14の補強板16に貼着する方法としては、接着剤等により直接貼り付ける方法等を利用することができる。
【0032】
マグネットシート22は、断熱材12を鋼製型枠2の型面42の外側に吸着させることを目的として用いられるものであり、その材質としては磁石を用いることができる。このようにシート状とすることで、磁力による吸着面を広く確保することができる。この場合、マグネットシート22は、鋼製型枠2への側面養生部材10の吸着状態を維持できるものであれば、例えば単位面積当たりの磁力が低いもので構成しても構わない。
【0033】
ハンドル24は、側面養生部材10の着脱時の操作性を向上させるために用いられる。図7に示すように、ハンドル24は、着脱操作者1人が両手で抱え持ち易いように、パネル体14の背面14bの左上および右下の2箇所に設けられている。着脱操作者はこのハンドル24を握って側面養生部材10を資材置き場等から運搬し、鋼製型枠2の外側へ接触させるようにするだけで、側面養生部材10をマグネットシート22により鋼製型枠2に容易に装着することができる。また、鋼製型枠2から脱着する場合には、操作者は、このハンドル24を握って鋼製型枠2から引き離す方向に、マグネットシート22の吸着力をわずかに上回る力を加えるだけで側面養生部材10を鋼製型枠2から容易に取り外すことができる。そして、取り外した側面養生部材10を資材置き場に戻したり、他のPCaコンクリートの鋼製型枠2に装着するために用いるような運用を行うこともできる。
【0034】
ハンドル24の固定方法としては、例えば、図8に示すような方法を用いてもよい。この場合、ハンドル24は、U字状のアーム部材であり、U字の両端部26はネジ山が切られており、中空パネル体14を貫通して正面14aから突き出るように配置される。そして、補強板16に平行な板状のプレート28aが両端部26に通され、各端部26にはプレート28aの上からワッシャ28bが入って、各ネジ山にナット28cが締結されることによって、ハンドル24は中空パネル体14に固定される。このようにすることで、例えば、断熱材12としてビーズ法ポリスチレンフォーム等の材料を採用する場合であっても、ハンドル24を中空パネル体14に簡便に取り付けることができる。
【0035】
次に、上面養生部材20について説明する。図9は、上面養生部材20の概略平面図であり、図10は、図9のA−A線に沿った概略側断面図である。図11は、上面養生部材20の装着状態を示した概略側断面図である。
上面養生部材20は、図9および図10に示すように、コンクリート6の上面8に設けられる略矩形板状のシート状部材であり、補強板56により形成された中空パネル体54の内部には、断熱材52が内装されている。上面養生部材20の周縁には下向きの板状の鍔片58が設けられる。上面養生部材20の内方には上下を貫通する鉄筋通し穴50が複数設けられている。
【0036】
鍔片58は、図11に示すように、鋼製型枠2に装着された側面養生部材10が誤って外れることを防止するために用いられるものである。上面養生部材20をコンクリート上面8に配置した場合には、鋼製型枠2に装着された各側面養生部材10の上端10aは鍔片58に内嵌固定されるので、各側面養生部材10は鋼製型枠2から離れないようになっている。
【0037】
鉄筋通し穴50は、コンクリート上面8から上方に延びる鉄筋9を通し、上面養生部材20のコンクリート上面8への装着作業を容易にするために鉄筋9の位置および本数に応じて設けられるものである。鉄筋通し穴50の直径は、鉄筋9の径と比較して若干大きい径に形成されてある。鉄筋通し穴50の上縁には、図12の部分拡大図に示すように、防滴弁部材62やリング64が設けられており、鉄筋9が通されないときには鉄筋通し穴50を閉塞させる一方で、鉄筋9が通されるときには変形して鉄筋9を通すようにすることで、この鉄筋通し穴50を通して上面養生部材20の下側のコンクリート6の暖気が漏れることや、外部から雨滴が侵入することを防止するようにしている。
【0038】
防滴弁部材62は、図13の概略平面図に示すように、ゴム等の弾性材からなる円盤状の弁であり、中心から径方向に4本の切れ込み62aが入っており、鉄筋通し穴50に鉄筋9が通った状態には弾性変形することによって隙間が発生することを抑制し、鉄筋通し穴50からの雨滴の侵入を防止するようになっている。リング64は、防滴弁部材62を固定するために防滴弁部材62の外周縁に設けられるO状の部材であり、防滴弁部材62が設けられる上面養生部材20の上面と防滴弁部材62との間に隙間が生じないようにしており、鉄筋通し穴50からの雨滴等の侵入を防止している。
【0039】
次に、防滴養生部材30について説明する。
防滴養生部材30は、図1および図2に示すように、降雨時における雨滴が上面養生部材20、側面養生部材10およびコンクリート6側に付着することを防止するために、これらの上方に設けられる。防滴養生部材30は、低コストで製造可能なように二枚の板32を三角屋根状に接合した単純な構成とされている。防滴養生部材30の下面側の隅部の鉄筋9に対向する4箇所には、下端が開口した鞘管34が設けられており、鞘管34を鉄筋9の上端に被せることによって防滴養生部材30がずれ落ちることを防止するようになっている。
【0040】
上記構成の動作および作用について説明する。
まず、図14に示すように、PCaコンクリート6を成形するための型枠本体4は、鋼製底板1と4枚の同寸法の鋼製型枠2による側板とによって囲まれ、上部が開口した有底の直方体箱状とされる。鋼製型枠2は、鉛直に立てられた型面42を有し、型面42の周縁には外側に延びる枠部46が形成され、型面42の外面には格子状の補強リブ40が突出形成されている。そして、型枠本体4の箱の内部にコンクリート6が打ち込まれた後、所定強度を発現するように硬化するまでの所定の期間、各養生部材10、20、30が型枠本体4の周囲に装着されることにより断熱養生が行われる。
【0041】
まず、各養生部材10、20、30を鋼製型枠2に装着する場合について説明する。操作者は、図7に示すように、ハンドル24を握って側面養生部材10を鋼製型枠2の近傍まで運搬し、図3に示すように、各凸部18を各凹陥部44に挿入して、凸部18下側面18bを水平方向に延びるリブ40の上側面40aに載せるように配置する。そうすると、図5に示すように、凸部18の先端面18aのマグネットシート22の磁気力によって断熱材12が型面42の外側に吸着される。これと同時に、凸部18の下側面18bのマグネットシート22の磁気力によって凸部18がリブ40の上側面40aに吸着されるとともに、側面養生部材10の重量は凸部18を介してリブ40に支持される。これにより側面養生部材10が鋼製型枠2に操作者によって容易に装着される。この装着作業を別の側面養生部材10を用いて残り3面の鋼製型枠2に対しても行うことにより、型枠本体4の4つの側面における側面養生部材10の装着が完了する。このようにすることで、コンクリート6を側面側から保温し、断熱養生をすることが可能となる。
【0042】
ついで、上面養生部材20を型枠本体4の開口側からコンクリート上面8に配置する。この場合、コンクリート上面8からは、図3に示すように、口の字状に略等スパンに配置された複数本の鉄筋9が上方に延びているので、各鉄筋9を予め形成された各鉄筋通し穴に通しながら上面養生部材20を上から下へ移動させ、図11に示すように、コンクリート上面8に配置する。これによりコンクリート6を上面側から保温し、断熱養生をすることが可能となる。そして、既に装着されている4枚の側面養生部材10の上端10aに対して鍔片58を外嵌装着する。この鍔片58が各上端10aの外側に配置されることにより各上端10aの外側への移動を拘束して固定する。こうすることにより、側面養生部材10が鋼製型枠2から脱落することを防止する。
【0043】
ついで、図1および図2に示すように、防滴養生部材30を上面養生部材20の上方に配置する。これにより養生期間中における雨滴のコンクリート6側への侵入を防止する。この場合、4つの鞘管34を隅部の鉄筋9の上端に挿入して、防滴養生部材30のずれ落ちを防止する。以上により、コンクリート養生装置100の構成部材である側面養生部材10、上面養生部材20および防滴養生部材30のコンクリート6側への装着が完了し、所定期間、断熱養生が行われることになる。
【0044】
次に、脱着する場合について説明する。操作者は、防滴養生部材30を取り外してから上面養生部材20をコンクリート上面8から取り外す。そして、側面養生部材10のハンドル24を握り、鋼製型枠2から引き離す方向に力を加え、これを取り外す。残り3枚の側面養生部材10についても同様の操作を行って鋼製型枠2から取り外す。このように、本発明によれば、側面養生部材10を鋼製型枠2に対しマグネット22により容易に着脱できるので、着脱操作性は従来よりも簡便である。
【0045】
以上、本発明に係るコンクリート養生部材ならびにそれを用いたコンクリート養生装置および養生方法の実施形態について、PCaコンクリートの断熱養生に対して適用する場合について説明した。以上のように、本発明によれば、断熱養生に用いられる断熱材12が鋼製型枠2の外側に対しマグネットシート22により着脱可能に取り付けられるので、鋼製型枠2への着脱操作性を簡便にすることができる。このため、コンクリート養生部材の着脱作業に係る手間が低減され、作業コストを縮減することができる。また、必要なときにのみ利用するような部材あるいは装置の運用方法を採用することが可能である。
【0046】
また、上記の実施形態において、コンクリート養生部材は、断熱材12と、補強材16と、マグネットシート22と、凸部18と、ハンドル24等とを備える簡素な構成であることから、低コストにて製造可能である。また、本構成は他の建設資材にも流用することが可能であり、リサイクルが容易な構成であることから、使用後の廃棄量を抑制することができる。
【0047】
さらに、本発明のコンクリート養生装置および養生方法によれば、コンクリートが硬化する際に発生する水和熱を保温する断熱養生をより適切に行うことができるので、コンクリートの所定の強度が出現する材齢を従来よりも短縮することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るコンクリート養生装置の構成の一例を示す概略側断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った概略側断面図である。
【図3】図1のB−B線に沿った概略横断面図であり、装着状況の一例を示す図である。
【図4】図3のA−A線に沿った概略側断面図である。
【図5】側面養生部材が鋼製型枠に装着された状態を示す概略側断面図である。
【図6】側面養生部材の正面図である。
【図7】側面養生部材の背面図であり、操作者による着脱操作の状況の一例を示す図である。
【図8】本発明に係るハンドルの固定方法の一例を説明する概略側断面図である。
【図9】本発明に係る上面養生部材の概略平面図である。
【図10】図9のA−A線に沿った概略側断面図である。
【図11】本発明に係る上面養生部材の装着状態の一例を示した概略側断面図である。
【図12】本発明に係る鉄筋通し穴の断面図であり、鉄筋を通した状況の一例を示す部分拡大図である。
【図13】本発明に係る防滴弁部材およびリングの一例を示す概略平面図である。
【図14】PCaコンクリートが打設された鋼製型枠の一例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
2 鋼製型枠
4 型枠本体
6 コンクリート
9 鉄筋
10 側面養生部材(コンクリート養生部材)
12,52 断熱材
14,54 中空パネル体
16,56 補強材
18 凸部(係合部)
20 上面養生部材
22 マグネットシート
24 ハンドル
30 防滴養生部材
34 鞘管
50 鉄筋通し穴
58 鍔片
62 防滴弁部材
64 リング
100 コンクリート養生装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製型枠の内側に打設されるコンクリートを養生するためのコンクリート養生部材であって、前記鋼製型枠の外側に対しマグネットにより着脱可能に取り付けられる断熱材を備えることを特徴とするコンクリート養生部材。
【請求項2】
前記鋼製型枠の外側に形成されるリブに係合可能な係合部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート養生部材。
【請求項3】
前記断熱材の着脱側には、前記断熱材を前記鋼製型枠に磁気的に吸着するためのマグネットシートが設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンクリート養生部材。
【請求項4】
前記断熱材は、補強板により形成されたシート状の中空体の内部と、
前記中空体の一方の面に突設された前記係合部としての中空凸部の内部とに設けられ、
前記中空凸部は、平面形状が矩形に形成されるとともに、前記中空凸部の先端部は前記中空体の面と平行な平坦面に形成され、この平坦面には前記鋼製型枠の型面外側に対して着脱可能なマグネットシートが設けられることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のコンクリート養生部材。
【請求項5】
前記中空凸部は前記リブの配置形状に対応して複数個形成されることを特徴とする請求項4に記載のコンクリート養生部材。
【請求項6】
前記鋼製型枠に対する着脱操作時に操作者が把持するための握り部をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載のコンクリート養生部材。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載のコンクリート養生部材を有し、このコンクリート養生部材を前記鋼製型枠に取り付けた態様で前記コンクリートの断熱養生を行うことを特徴とするコンクリート養生装置。
【請求項8】
鋼製型枠で囲まれ上部が開口した有底箱状の型枠本体の内部に打設されるコンクリートを養生するコンクリート養生装置であって、
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載のコンクリート養生部材を前記鋼製型枠の外側に装着される側面養生部材として用いるとともに、
前記型枠本体の内部に打設されるコンクリートの上面側に設けられ、補強板により形成されたシート状の中空体の内部に断熱材を有する上面養生部材とを含んで構成され、
前記上面養生部材は、その周縁から下向きに設けられた鍔片を備え、前記鍔片によって前記鋼製型枠の外側に装着された状態の前記側面養生部材の上端を外嵌するように構成されることを特徴とする請求項7に記載のコンクリート養生装置。
【請求項9】
前記上面養生部材は、前記コンクリート上面から上方に延びる鉄筋を通すための鉄筋通し穴を有することを特徴とする請求項8に記載のコンクリート養生装置。
【請求項10】
前記上面養生部材および前記鉄筋を覆うように上方に設けられ、前記上面養生部材および前記鉄筋への雨滴の付着を防止する防滴養生部材を備えることを特徴とする請求項9に記載のコンクリート養生装置。
【請求項11】
前記防滴養生部材は、前記鉄筋の上端部を被覆する鞘管をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載のコンクリート養生装置。
【請求項12】
前記鉄筋通し穴には、前記鉄筋通し穴から前記コンクリート上面への雨滴の侵入を防止する防滴用弁部材が設けられることを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか一つに記載のコンクリート養生装置。
【請求項13】
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載のコンクリート養生部材を前記鋼製型枠に装着する部材装着工程と、前記コンクリート養生部材が前記鋼製型枠に装着された状態で前記コンクリートの断熱養生を行う養生工程と、前記コンクリート養生部材を前記鋼製型枠から脱着する部材脱着工程とを含むことを特徴とするコンクリート養生方法。
【請求項1】
鋼製型枠の内側に打設されるコンクリートを養生するためのコンクリート養生部材であって、前記鋼製型枠の外側に対しマグネットにより着脱可能に取り付けられる断熱材を備えることを特徴とするコンクリート養生部材。
【請求項2】
前記鋼製型枠の外側に形成されるリブに係合可能な係合部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート養生部材。
【請求項3】
前記断熱材の着脱側には、前記断熱材を前記鋼製型枠に磁気的に吸着するためのマグネットシートが設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンクリート養生部材。
【請求項4】
前記断熱材は、補強板により形成されたシート状の中空体の内部と、
前記中空体の一方の面に突設された前記係合部としての中空凸部の内部とに設けられ、
前記中空凸部は、平面形状が矩形に形成されるとともに、前記中空凸部の先端部は前記中空体の面と平行な平坦面に形成され、この平坦面には前記鋼製型枠の型面外側に対して着脱可能なマグネットシートが設けられることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のコンクリート養生部材。
【請求項5】
前記中空凸部は前記リブの配置形状に対応して複数個形成されることを特徴とする請求項4に記載のコンクリート養生部材。
【請求項6】
前記鋼製型枠に対する着脱操作時に操作者が把持するための握り部をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載のコンクリート養生部材。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載のコンクリート養生部材を有し、このコンクリート養生部材を前記鋼製型枠に取り付けた態様で前記コンクリートの断熱養生を行うことを特徴とするコンクリート養生装置。
【請求項8】
鋼製型枠で囲まれ上部が開口した有底箱状の型枠本体の内部に打設されるコンクリートを養生するコンクリート養生装置であって、
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載のコンクリート養生部材を前記鋼製型枠の外側に装着される側面養生部材として用いるとともに、
前記型枠本体の内部に打設されるコンクリートの上面側に設けられ、補強板により形成されたシート状の中空体の内部に断熱材を有する上面養生部材とを含んで構成され、
前記上面養生部材は、その周縁から下向きに設けられた鍔片を備え、前記鍔片によって前記鋼製型枠の外側に装着された状態の前記側面養生部材の上端を外嵌するように構成されることを特徴とする請求項7に記載のコンクリート養生装置。
【請求項9】
前記上面養生部材は、前記コンクリート上面から上方に延びる鉄筋を通すための鉄筋通し穴を有することを特徴とする請求項8に記載のコンクリート養生装置。
【請求項10】
前記上面養生部材および前記鉄筋を覆うように上方に設けられ、前記上面養生部材および前記鉄筋への雨滴の付着を防止する防滴養生部材を備えることを特徴とする請求項9に記載のコンクリート養生装置。
【請求項11】
前記防滴養生部材は、前記鉄筋の上端部を被覆する鞘管をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載のコンクリート養生装置。
【請求項12】
前記鉄筋通し穴には、前記鉄筋通し穴から前記コンクリート上面への雨滴の侵入を防止する防滴用弁部材が設けられることを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか一つに記載のコンクリート養生装置。
【請求項13】
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載のコンクリート養生部材を前記鋼製型枠に装着する部材装着工程と、前記コンクリート養生部材が前記鋼製型枠に装着された状態で前記コンクリートの断熱養生を行う養生工程と、前記コンクリート養生部材を前記鋼製型枠から脱着する部材脱着工程とを含むことを特徴とするコンクリート養生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図11】
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【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−208425(P2009−208425A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55994(P2008−55994)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
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