説明

コンジュゲートしたヒドロキシアルキル澱粉アレルゲン化合物

本発明は、ヒドロキシアルキル澱粉およびアレルゲンのコンジュゲートした化合物に関し、少なくとも1つのヒドロキシアルキル澱粉はアレルゲンに共有結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒドロキシアルキル澱粉(HAS)およびアレルゲンのコンジュゲートを含む化合物に関し、HASは直接的な、またはリンカーを介してアレルゲンに共有結合している。本発明は、さらに、対応するコンジュゲートの製法、および医薬としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
外因性物質に対する免疫系の過剰な特異的反応は、今日では、用語アレルギーに含まれる。CoombsおよびGellの分類に従えば、アレルギー反応はI〜IV型に分けることができ、これは、特に反応に関与する抗体のクラス、認識される抗原、および誘導されたエフェクターメカニズムに基づいて分類することができる。
【0003】
従って、アレルゲンといわれる化合物は、アレルギー免疫応答を誘導できるもの、より狭い意味では、皮膚および粘膜に対する即時型アレルギー免疫応答(I型)である。アレルゲンは、通常、約5000〜約80000Daの分子量を有するポリペプチドまたはタンパク質である。ポリペプチドは野菜、動物または微生物起源のものであり得る。ポリペプチドは、加えて、家の埃の成分として存在し得る。
【0004】
アレルゲンは、その定常部分によって、肥満細胞の表面に結合し、従って、肥満細胞の脱顆粒を行うIgE抗体を誘導する。肥満細胞によって放出される物質(ヒスタミン、タンパク質分解酵素および炎症メディエーター)はアレルギー、通常は、鼻炎、結膜炎および/または気管支喘息の徴候を直接的に、および間接的に引き起こす。
【0005】
IgE介在性即時型アレルゲン(I型)は遥かに大きな有病率を有するアレルギー反応の形態である。産業国の人々の20%までがI型アレルギー徴候に悩んでいる。アレルギー罹患者は、現在、医薬療法に加えて、減感作化と呼ばれる特異的免疫療法によって治療されている(Kleine−Tebbe et al.,Pneumologie,Vol.5(2001),438−444)。
【0006】
慣用的減感作化においては、特異的アレルゲン抽出物を、個々に維持用量に到達するまで量を増やしつつ皮下投与される。治療が継続されるにつれ、この用量は反復して投与され、種々の治療プロトコルが使用される(Klimek et al.,Allergologie und Umweltmedizin,Schattauer Verlag,page 150など)。
【0007】
この場合の療法の結果は、維持相の間に使用されるアレルゲンの量と密接に関連しているように見える。しかしながら、もしアレルゲンの投与量が増加すると、アレルギー患者のIgE介在性反応の危険性も常に増加する。換言すれば、該療法の使用は、患者のアレルギー反応、およびアナフィラキシーショックの患者に対するそれに関連する危険性によってやはり制限されている。
【0008】
該療法はもしアレルギー徴候が低下すれば成功しており、医薬の必要性の個々の減少およびアレルゲンの耐性の増加に導かれる。
【0009】
いくらかのアレルギー性ポリペプチドが組換え発現によって作り出され、減感作化で用いられることは既に提案されている(DE 100 41 541)。
【0010】
低下したIgE−結合特性を有するアレルゲンを得るためには、それらをポリエチレングリコール(PEG)で修飾し、減感作化で用いられてきた。従って、非常に多数の刊行物が、アレルゲンのポリエチレングリコールへの共有結合によって作り出されたPEG−アレルゲンコンジュゲートの調製を記載している。Mosbech et al.(Allergy,1990,Vol.45(2):130−141)は、例えば、PEG−ハウスダストコンジュゲートを用いる喘息を有するアレルギー成人の治療、および該治療後における免疫学的応答を報告している。著者らは、アレルゲンの用量が特異的IgEの量を低下させ、および/またはIgG、特にIgG4応答を誘導するのに十分な限り、効果の臨床的改良を見出した。
【0011】
同様に、Schafer et al.(Ann.Allergie,1992,Vol.68(4):334−339)は、PEG−修飾草花粉ミックスのアレルギー性組成物を成人の減感作化で用いる実験につき報告している。該結果を、部分的に精製された草花粉ミックスを用いる減感作化によって得られたものと比較した。該処置は、二重盲検にて行われた。副作用の頻度および程度はPEG修飾によって約50%だけ低下した。過敏性の有意な改良が双方の治療群で見出された。
【0012】
しかしながら、PEGコンジュゲートは、インビボ分解経路がそれについて記載されているいずれの天然に生じる構造も有さない。
【0013】
PEGコンジュゲートの他に、他のアレルゲン誘導体も調製され、調べられている。従って、カルボキシメチルデキストランとのコンジュゲーションによって作り出されたデキストラン−修飾アレルゲンは公知である。β−ラクトグロブリンに関するいくつかの研究は、デキストランコンジュゲートに対する抗体応答が未修飾化合物と比較してかなり減衰することを示している(Kobayashi et al.,J Agric Food Chem 2001 Feb;49(2):823−31;Hattori et al.,Bioconjug Chem 2000 Jan−Feb;11(1):84−93)。
【0014】
加えて、アレルゴイドと呼ばれる架橋された高分子量アレルゲンが作り出されている。例えば、アレルゲンのホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒド修飾によってこれらの生成物を得ることができた。対応する生成物はAllergopharma,Joachim Ganser KG,21462 Reinbek;HAL Allergie GmbH,40554 Duesseldorf;and SmithKline Beecham Pharma GmbH,Benckard,80716 Munichから得ることができる。
【0015】
一般に、バイオコンジュゲートを調製する種々のプロセスの範囲の包括的レビューはG.T.Hermanson(Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego 1996)によって与えられている。この文脈で、タンパク質へのオリゴ−および多糖の結合は、ほとんどの場合、リシン(−NH2)またはシステイン(−SH)側鎖を介して起こり、アスパラギン酸またはグルタミン酸(−COOH)またはそうでなければチロシン(アリール−OH)側鎖を介するのは余り通常ではない。しかしながら、今日まで、澱粉誘導体はアレルゲンを修飾するのに用いられたことがない。
【0016】
例えば、ヒドロキシエチル澱粉は、コーンスターチの95%を構成する炭水化物ポリマーアミロペクチンの置換された誘導体である。HESは有利なレオロジー的特性を有し、現在、容量置換および血液希釈療法につき臨床的に使用されている(Sommermeyer et al.,Krankenhauspharmazie,Vol.8(8),(1987),pp.271−278;and Weidler et al.,Arzneim.−Forschung/Drug Res.,41,(1991)494−498)。
【0017】
アミロペクチンはグルコースユニットよりなり、α−1,4−グリコシド結合が主鎖に存在するが、α−1,6−グリコシド結合は分岐点にある。この分子の物理化学的特性は、グリコシド結合の性質によって実質的に決定される。角のあるα−1,4−グリコシド結合のため、ターン当たり約6グルコースモノマーを有する螺旋構造が形成される。
【0018】
HESポリマーの物理化学的および生物化学的特性は置換によって修飾することができる。ヒドロキシエチル基の導入は、アルカリ性ヒドロキシエチル化によって達成することができる。反応条件を通じて、ヒドロキシエチル化に向けての未置換グルコースモノマーにおける特定のヒドロキシル基の反応性の差を開発することができ、従って、置換パターンに影響させることが可能となる。
【0019】
従って、HESは、分子量分布および置換度によって実質的に特徴付けられる。置換度は、この関係では、全てのグルコースユニットの割合として置換されたグルコースモノマーをいうDS(「置換の程度」)によって、あるいはグルコースユニット当たりのヒドロキシエチル基の数を示すMS(「モル置換」)によって記載することができる。
【0020】
HES溶液は、個々の分子が重合度、分岐点の数および配置、およびその置換パターンが相互に異なる多分散組成物である。従って、HESは、分子量が異なる化合物の混合物である。従って、特定のHES溶液は、統計学的変数に基づく平均分子量によって定義される。この関係で、Mnは分子の数の関数としての単純な代数平均として計算され(数平均)、他方、Mw重量平均は質量−依存性の測定された変数を表す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、本発明は、改良されたアレルゲン誘導体、特に、デポ効果を達成し、従って、頻繁には投与される必要のないアレルゲン誘導体を提供する目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的は、今回、少なくとも1つのヒドロキシアルキル澱粉がアレルゲンに共有結合した、ヒドロキシアルキル澱粉(HAS)およびアレルゲンのコンジュゲートによって達成された。
【0023】
従って、驚くべきことに、HAS−アレルゲン−コンジュゲートを特異的免疫療法で特に有利に用いることができることが本発明により見出された。減感作化の安全性は、本発明のコンジュゲートを用いることによって増加される。同時に、本発明のコンジュゲートはより高いインビボ半減期を有し、従って、HASとのコンジュゲーションは、臨床的効力に対して有利な影響を有するデポ効果を達成する。本発明のコンジュゲートのデポ効果は、特に、水性アレルゲン抽出物と比較して、コンジュゲートが治療効果を達成するのに余り頻繁に投与される必要がないという利点を有する。
【0024】
本発明のHAS−アレルゲンコンジュゲートは、未修飾アレルゲンと比較して、アレルゲン特異的IgEへの低下した結合を示すように調製することができる。HAS−アレルゲンコンジュゲートは、特に好ましい実施形態においては、アレルゲン特異的IgEに対して非常に低い特異的結合を示すに過ぎず、または絶対的に特異的結合を示さない。従って、本発明のコンジュゲートは、より高い用量で投与することができ、今度は、成功した減感作化の確率を増加させる。
【0025】
架橋されたアレルゴイドと比較して、本発明のHAS−アレルゲンコンジュゲートは、それが天然アレルゲンと匹敵するエピトーププロフィールを提供することができるという利点を有する。従って、免疫療法の効果は増加させることができる。対照的に、ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドを用いるアレルゲンの重合は、この効果が個々の場合に調査されなければならないように、非天然エピトープを作成し得る貧弱に規定された高分子量化合物(Crit Rev Ther Drug Carrier Syst 1990;6(4):315−65)に導く。
【0026】
コンジュゲートにおいては、少なくとも1つのヒドロキシアルキル澱粉がアレルゲンにカップリングされる。また、本発明の範囲は、もちろん、複数のヒドロキシアルキル澱粉分子および1つのアレルゲン分子、あるいは複数のアレルゲン分子および1つのヒドロキシアルキル澱粉分子を含むカップリング生成物を含む。
【0027】
ヒドロキシアルキル澱粉は、直接的にアレルゲンに、またはリンカーを介してアレルゲンにカップリングしたコンジュゲートに存在し得る。ヒドロキシアルキル澱粉はポリペプチド鎖、またはアレルゲン性糖タンパク質の糖鎖の一つまたは複数にカップリングさせることもできる。
【0028】
ヒドロキシアルキル澱粉(HAS)
用語「ヒドロキシアルキル澱粉」は、ヒドロキシアルキル基によって置換されている澱粉誘導体をいうために本発明の目的で用いられる。ヒドロキシアルキル基は好ましくは2〜4個のC原子を含む。従って、「ヒドロキシアルキル澱粉」という基は、好ましくは、ヒドロキシエチル澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、およびヒドロキシブチル澱粉を含む。カップリングパートナーとしてのヒドロキシエチル澱粉(HES)の使用は、本発明の全ての実施形態につき特に好ましい。
【0029】
本発明によると、コンジュゲートを調製するのに使用されるヒドロキシエチル澱粉が1〜300kDaの平均分子量(重量平均)を有するのが好ましく、5〜200kDaの平均分子量が特に好ましい。ヒドロキシエチル澱粉は、さらに、ヒドロキシエチル基に基づき、0.1〜0.8のモル置換度、および2〜20の範囲におけるC2:C6置換比を有することができる。
【0030】
アレルゲン
本発明の目的でのアレルゲンという化合物は、主として、アレルギー性免疫応答を誘導できるもの、より狭い意味では、IgE介在性過敏性反応(I型)を誘導することができるものである。また、例えば、酵素切断に由来する切断産物のようなアレルゲンの配列に由来するペプチドも含まれる。対応するアレルゲンは、特異的免疫療法で用いられ、それは商業的に入手可能である。
【0031】
アレルゲンは天然源から単離することができる。従って、花粉の場合には、アレルゲン、例えば、アレルゲン抽出物は特定の花粉から得られる。加えて、例えば、アレルゲンの組換え調製が可能である。
【0032】
アレルゲンは、好ましくは、ポリペプチド、タンパク質および糖タンパク質よりなる群から選択される化合物である。
【0033】
製法
1つの態様において、本発明は、HASが直接的に、あるいはリンカーを介してアレルゲンに共有結合しているHAS−アレルゲンコンジュゲートの製法に関する。この関係で、カップリングは種々の方法で行うことができる。リンカーを用いるネオ糖タンパク質合成の一般的構造を図1に示す。
【0034】
1つの実施形態において、本発明は、HESが、アレルゲンのε−NH2基に、α−NH2基に、SH基に、COOH基に、または−C(NH22基に連結しているHAS−アレルゲンコンジュゲートの製法に関する。
【0035】
本発明は、HESが還元的アミノ化によってタンパク質のε−NH2にカップリングしている製法も含む。これに対する代替法として、本発明は、アレルゲンがヒドロキシエチル澱粉の還元末端基にカップリングされる製法に関する。
【0036】
さらなる実施形態において、本発明は、活性基がアレルゲンへのカップリングのためにHASに導入される製法に関する。活性基は、例えば、アルデヒド、チオールまたはアミノ機能であり得る。
【0037】
アレルゲンおよびオリゴ−または多糖は直接的に、またはリンカーを使用して一緒にカップリングさせることができる。リンカーとしていずれの架橋剤を用いることも可能である。リンカーは、例えば、二官能性リンカーまたはホモ−もしくはヘテロ二官能性架橋剤であり得る。
【0038】
例えば、SMCC(スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート)のような多数の架橋剤が商業的に入手可能であって、当業者は精通しており(Perbio産物カタログにおける「架橋試薬」のアルファベット順のリストおよびwww.piercenet.com参照)、本発明の目的で用いることができる。
【0039】
本発明は、さらなる実施形態において、記載した製法によって得ることができるHASアレルゲンコンジュゲートに関する。
【0040】
HAS−アレルゲンコンジュゲートを合成するいくつかのプロセスは以下に一般的に記載する。バイオコンジュゲートセクターで活動している当業者であれば、達成すべき目的に関連して特に適当なものを記載されたプロセスから選択するのに問題は有さないであろう(選択されたアレルゲン、選択されたHAS等)。
【0041】
還元的アミノ化による未修飾HASのアレルゲン性タンパク質の直接的カップリング
NaCN/BH3の存在下での還元的アミノ化を介するアレルゲン性タンパク質のε−アミノ基へのHASの直接的カップリングは、HASを修飾することなく行うことができる単純かつ温和なプロセスを表す(G.R.Gray,Arch.Biochem.Biophys.1974,163,426−28)(図2.1a)。
【0042】
やはり使用することができる還元剤はピリジン−ボラン、およびより安定であって、取り扱うのがより容易である他のアミノ−ボラン複合体である(J.C.Cabacungan et al.,Anal.Biochem.1982、124,272−78)。アシル化とは対照的に、タンパク質の修飾されたアミノ基は生理学的条件下で正に荷電したままである。従って、タンパク質の三次構造に対する影響は還元的アミノ化の場合にはより低い。しかしながら、このプロセスでは還元糖の環構造が失われる。
【0043】
修飾されたHASをカップリングさせる方法
還元末端のアルドン酸への酸化
ヨウ素(または臭素)での対応するアルドン酸への希に用いられる酸化では(G.Ashwell,Methods of Enzymol.1972,28,219−22)、還元糖の環構造は失われ(図2.1b)、加えて、反応の注意深い制御が、非特異的酸化を回避するのに必要である。形成されるカルボン酸機能はEDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)の存在下で(J.Loenngren,I.J.Goldstin,Methods.Enzymol.1994、247,116−118)アレルゲン性タンパク質のリシン側鎖のε−アミノ基と、またはヒドラジドリンカーを介してカップリングさせることができる(図3参照)。また、例えば、カップリングのために同様にマンヌロン酸、グルクロン酸またはシアル酸の多糖構造に存在するカルボキシル基を用いることもできる。
【0044】
本発明の特に好ましい実施形態は、アレルゲンがヒドロキシエチル澱粉の還元末端基に特異的に結合したHES−アレルゲンコンジュゲートからなる化合物を提供する。この目的では、還元末端基は、例えば、糖の還元アルデヒド末端基を酸化するために、Hashimoto et al.(Kunststoffe,Kautschuk,Fasern,Vol.9(1992、pp.1271−1279)に記載されたプロセスによって選択的に予め酸化することができる。
【0045】
HASのヒドロキシ機能の活性化
多糖の非特異的活性化に最も有用な方法の1つは、臭化シアン(CNBr)との反応である(C.Chu et al.,Infect.Immun.1983、40,245−56)(図2.1c)。活性化されたヒドロキシ基はタンパク質のリシン、システインおよびヒスチジン側鎖をアシル化する。しかしながら、このカップリングプロセスは、高いpHならびに毒性および貧弱な管理性に帰すことができる不利を有し得る。
【0046】
CNBrに対する代替物は、シアノ基の増大した反応性を有し、かなり温和な条件下で反応を可能とするCDAP(1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート)によって提供される(A.Lees et al.,Vaccine 1996,14,190−98;D.E.Shafer et al.,Vaccine 2000,18,1273−81)。
【0047】
一般に、多糖の非特異的活性化は複数置換に導き得、従って、多糖およびタンパク質の間の架橋にも導き得る。しかしながら、これは反応条件の適当な選択を介して実質的に抑制することができる。
【0048】
アルデヒドの導入
アルデヒド機能は、隣接ヒドロキシ基をNaIO4で切断することによって非還元多糖に導入することもでき(J.M.Bobbit,Ad.Carbohydr.Chem.1956,11,1−41)(図2.1d)、過ヨウ素酸ナトリウム溶液の濃縮を介して適切な選択性を達成することが可能である。シアル酸は酸化するのが特に容易である(S.M.Chamov et al.,Biol.Chem.1992,267,15916−22)。
【0049】
還元多糖での直接的還元的アミノ化における反応速度は、ヘミアセタールに環化しないアルデヒド基を導入することによって増加させることができる。これは、還元末端を糖アルコールに還元し、続いて、開いた糖アルコール中の隣接ジオールの選択的酸化によって達成することができる(Y.C.Lee,R.T.Lee,Neoglycoproteins:Preparation and Application,Academic Press,San Diego 1994)(図2.1d)。
【0050】
還元的アミノ化によるアルデヒド修飾多糖のタンパク質のアミノ機能への直接的カップリング以外に、このようにして、二官能性ヒドラジドリンカーで多糖を修飾することも可能である(後記参照)。
【0051】
アミノ機能の導入
多糖と比較して、還元的アミノ化によって還元的糖を反応させて、無傷環構造を有するグリカミン、またはグリコシルアミンを得る確率はオリゴ糖(20までの炭水化物モノマーを有する)の場合に良好である。なぜならば、反応性はいくぶんより高いからである(図2.2)。
【0052】
二官能性リンカーの使用は、アミノ修飾多糖をタンパク質の種々の側鎖機能にカップリングさせるのに適当である(後記参照)。
【0053】
還元的アミノ化によるアミノ機能の導入
NH3または脂肪族アミンでの還元的アミノ化によるグリカミン合成(B.Kuberen et al.,Glycoconj.J.1999,16,271−81)とは対照的に、高い収率が、匹敵する条件下で、例えば、ベンジルアミン(T.Yoshide,Methods of Enzymol.1994,247,55−64)、2−(4−アミノフェニル)エチルアミン(APEA)(H.D.Grimmecke,H.Brade,Glycoconj.J.1998,15,555−62)または4−トリフルオロアセトアミドアニリン(E.Kallin,Methods Enzymol.1994,247,119−23)のような芳香族アミンで達成することができる(図2.2a)。
【0054】
APEAの場合には、脂肪族および芳香族アミノ機能の反応性の差は選択的反応のために開発されたが、モノ保護化合物は4−トリフルオロアセトアミドアニリンの形態で利用可能であり(別法として、ベンジルオキシカルボニルアミノアニリンも使用される(M.Barstroem et al.,Carbohydr.Res.2000,328,525−31))、トリフルオロアセチル基の引き続いての脱離は、今度は、芳香族アミノ機能を遊離させる。加えて、TFA保護基の脱離の前に、グリカミンは無水酢酸での単純なN−アセチル化によって安定化させることができることが判明した。
【0055】
N−グリコシル化によるアミノ機能の導入
N−グリコシル化(図2.2b)は、還元糖の環状環構造を保持する確率を提供する。炭酸水素アンモニウムとの反応によって得られた不安定なβ−グリコシルアミン(I.D.Manger et al.,Biochemistry 1992,31,10724−32;I.D.Manger et al.,Biochemistry 1992,31,10733−40;S.Y.C.Wong et al.,Biochem.J.1993,296,817−25,E.Meinjohannes et al.,J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,1998,549−60)は、引き続いてのクロロ酢酸無水物での引続いてのアシル化によって安定化させることができ、アミノリシスによって、遊離アミノ官能性を有する1−N−グリシル化合物に変換することができる。N−グリコシル化を同様にアリルアミンで行うことができ、N−アセチル化による安定化の後に、システアミンを光化学的に二重結合に負荷することができる(D.Ramos et al.,Angew.Chem.2000,112,406−8)。
【0056】
アルドン酸からのアミノ機能の調製
遊離アミノ機能は、還元多糖の酸化によって得ることができるアルドン酸へのジアミンとの反応によって導入することができる。これは、酸とカルボジイミドおよびジアミンとの反応をおそらくは介する。別法として、アルドン酸の脱水によって得ることができるラクトンはジアミンと反応することができる(S.Frie,Diploma Thesis,Fachhochschule Hamburg,1998)。
【0057】
二官能性リンカーを用いる修飾されたHESおよびアレルゲン性タンパク質のカップリング反応
リンカーを介して一緒に連結すべき修飾されたHESおよびタンパク質側鎖の官能基の多様性は、利用可能な反応の確率のそれによって平行化される(図3は共通のリンカー活性化を示す)。
【0058】
反応性基については、アミノ基(NHSエステル、イミドエステルおよびアリールアジド)、アルデヒドおよび(EDCの存在下では)カルボン酸(ヒドラジド)またはSH基(マレイミド、ハロアセテートまたはピリジルジスルフィド)に対する反応性の間で区別をなうことができる。
【0059】
アミン反応性を有する試薬
最も有用なカップリング試薬はアミン反応性架橋剤である。さらに、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル(図3.1a)は、活性化の最も共通する形態を表す。この場合、アシル化化合物はNHSの脱離によって形成される。第一級アミンを修飾するためのさらなる確率はイミドエステルによって提供され(F.C.Hartman,F.Wold,Biochemistry 1967,6,2439−48)(図3.1b)、ヨードアミド(アミジン)が形成される。イミドエステルは、しばしば、タンパク質架橋剤として用いられて、他の求核試薬に対する最小反応性によって区別される。加えて、種々のアリールアジドリンカーが利用可能であり(保護反応性架橋剤)、それに関して短い寿命のナイトレンが光分解によって形成される。デヒドロアゼピンは、環拡張(非特異的挿入の代わりに)によってそれから生じ、好ましくは、求核試薬、特にアミンと反応する(図3.1c)。
【0060】
アミノ活性を有する非常に多数の商業的に入手可能なカップリング試薬および可変リンカーのため、例えば、イソシアネートおよびイソチオシアネートとの反応のような他の反応の可能性はますます重要性を失った。
【0061】
カルボニルまたはカルボキシル基に対する反応性を有する試薬
ヒドラジドリンカーを用いて、カルボニルまたはカルボキシ基を有する化合物をカップリングさせる(D.J.O’Shanessy,M.Wilchek,Anal.Biochem.1990,1991,1−8)(図3.2)。アルデヒドをヒドラゾンまで変換し、これはNaCN/BH3での還元によって安定化させることができるが、カルボキシル基はEDCの存在下で反応してイミド結合を形成する。ヒドラジド活性化リンカーは、還元的アミノ化に対する、およびカルボニルジイミダゾール(CDI)のような0長架橋剤でのカルボキシル活性化に対する多様な代替物を表す。
【0062】
スルフヒドリル反応性を有する試薬
SH反応性を有するカップリング試薬は第二に大きなクラスの架橋剤を表す。カップリング反応は、第一に、2つの反応経路:アルキル化(図3.3a−b)またはジスルフィド交換(図3.3c)を含む。α−ハロアセテートとのアルキル化とは別に、マレイミドの二重結合をSH基でのミカエリス付加によって選択的に反応させて、安定なチオエーテル結合を形成することができる。チオール−ジスルフィド交換はさらなるスルフヒドリル特異的反応を表す。この場合、ピリジルジスルフィドとの反応(J.Carlsson et al.,Biochem.J.1978,173,723−37)は、特に有利なことが判明する。なぜならば、混合ジスルフィドへの完全な変換は2−ピリドンの脱離によって達成することができるからである。
【0063】
架橋剤
多様なホモ−およびヘテロ二官能性架橋剤による前記カップリング反応を用いて、本発明のHAS−アレルゲンバイオコンジュゲートを合成する。
【0064】
ホモ二官能性架橋剤
対称ホモ二官能性リンカー(例えば、図4.1に記載したもの参照)は両端部に同一の反応性基を有し、同一の官能基を有する化合物を一緒に連結するのに適している。利用可能なカップリング反応によると、例えば、ビスイミドエステル、ビススクシンイミド、ビスヒドラジドおよびビスマレイミド官能性を有する対応する二官能性リンカーは商業的に入手可能である。
【0065】
ホモ二官能性リンカーの使用の1つの不利な点は、過剰の架橋剤の使用に際してさえ第一の化合物の活性化において架橋が完全に妨げることができないことである(S.Bystrick et al.,Glycoconj.J.1999,16,691−95)。第二の化合物へのカップリング前のその完全な除去が必要であり、もし活性化された中間生成物が不安定であれば困難であろう(例えば、加水分解に対するNHS−活性化化合物の感度)。アミン反応性およびNHSエステルの加水分解は共にpHを増大させるにつれ増加し、これは反応が緩衝化溶液中で生理学的条件(pH7)下で行われるからである(0℃およびpH7におけるNHSエステルDSPの半減期は4〜5時間であるが、pH8.6においては10分に過ぎない;A.J.Lomant,G.Fairbanks,J.Mol.Biol.1976,104,243−261)。
【0066】
ヘテロ二官能性架橋剤
ヘテロ二官能性カップリング試薬(例えば、図4.2に記載されたもの参照)を用いて、異なる官能基を有する化合物を一緒に連結することができる。リンカーには2つの異なる反応性基を設け、異なるカップリング反応を組み合わせることによって、架橋剤の一端で選択的に反応することができる。従って、例えば、リンカーの片側はアミノ活性を有し、他方側はスルフヒドリル活性を有し、その結果、ホモ二官能性リンカーと比較して反応制御の良好な確率が得られる。
【0067】
ヘテロ二官能性リンカーのより反応性またはより不安定側がまず反応する。NHSエステルはアミノ基と反応して安定なアミド結合を形成することができるのみならず、スルフヒドリルおよびヒドロキシル基とも反応することができるので、ヘテロ二官能性リンカーがアミノ化合物と最初に反応する。それに関連して、マレイミド基は、活性化された中間体が精製でき、引続いて、スルフヒドリル活性を有する化合物と選択的に反応できるように、より大きな選択性のみならず水溶液に対するより大きな安定性を示す。
【0068】
架橋剤の選択はカップリングで用いられる官能基の性質のみならず、スペーサーの架橋ブリッジと呼ばれる所望の長さおよび組成に依存する。従って、いくつかのスペーサー、特に例えばSMCCまたはMBSのような剛直な環構造を有するものは特異的抗体応答を誘導し(J.M.Peeters et al.,J.Immunol.Methods 1989,120,133−43)、従って、ハプテン担体免疫原およびインビボ使用では余り適当でないであろう。
【0069】
図4におけるリンカーの編集は切断可能リンカーを特異的に省略し、これはジスルフィド開裂(例えば、DSP、DTMEまたはDTBP)または過ヨウ素酸塩開裂(BMDBまたはDETのようなジオール)によって開くことができ、バイオ特異的相互作用を調べ、または未知の標的構造を精製するのに用いられる。
【0070】
商業的に入手可能なカップリング試薬で用いられる略語は、例えば、DMA(ジメチルアジピミデート(ethyl dipimidate))、DMS(ジメチルスベリミデート(ethyl uberimidate))、GMBS(N−(γ−マレイミドブチルオキシ)スクシンイミドエステル(N−(γaleimidoutyryloxy)uccinimide ester))のような化合物の系統的名称に由来する。
【0071】
例えば、スルフヒドリルカップリングで用いることができる種々のヘテロ二官能性架橋剤の概観は図5に示される。
【0072】
最大の多様性は、ここでは、通常NHSエステル活性化と組み合わせたマレイミド活性化リンカーによって提供される。スルフヒドリルおよびアミノ反応性を有するこれらのリンカーは、例えば、AMAS、GMBSおよびEMCSのような水不溶性の直鎖上アルキル架橋リンカーであるか、あるいはSMCC、SMPBまたはMBSのように、剛直な環構造を有する。2つのUV活性リンカーSMPBおよびMBSは、通常、ELISAアッセイのような免疫化学方法で用いられる。
【0073】
加えて、M22Hは、SMCCにおけるのと同一な剛直ブリッジングを有するが、スルフヒドリルおよびカルボニルを有する化合物の結合用のヒドラジド活性化またはカルボキシル活性を有するリンカーである。
【0074】
反応前にDMFまたはDMSOのような有機溶媒にまず溶解させる必要がある水不溶性リンカーとは対照的に、いくつかのリンカーの水溶性変種は、加えて、例えば、スルホ−GMBS、スルホ−EMCSおよびスルホ−SMCCのような親水性スルホ−NHSエステルとして入手できる(J.V.Staros,Biochemistry 1982,21,3950−55)。
【0075】
マレイミド活性化へテロ二官能性リンカー以外に、一旦アミノカップリングのためにNHSエステル活性化と組み合わせると、例えば、SIA(およびブロモアナログ)、SIABおよびSBAP(図5.2)、のような種々のハロアセテート、およびSPDPおよびLC−SPDPおよびスルホ−LC−SPDP(図5.3)のようなピリジルジスルフィドをスルフヒドリルカップリングで用いることもできる。ハロアセテートは、遊離酸および水溶性カルボジイミドとの(N.J.Davies,S.L.Flitsch,Tetrahedron Lett.1991,32,6793−6796)または対応する無水物との(I.D.Manger et al.,Biochemistry 1992,31,10733−40;S.Y.C.Wong et al.,Biochem.J.1994,300,843−850)(図2.2b参照)反応によってもアミノ化多糖に導入することができる。
【0076】
ヘテロ二官能性マレイミドリンカーを介するタンパク質のSH側鎖への合成オリゴ糖のカップリングの種々の例は文献で見出される(V.Fernandez−Santana et al.,Glycoconj.J.1998,15,549−53;G.Ragupathi et al.,Glycoconj.J.1998,15,217−21;W.Zou et al.,Glycoconj.J.1999,16,507−15;R.Gonzalez−Lio,J.Thiem,Carbohydr.Res.1999;317,180−90)。加えて、オリゴ糖のヨードアセトアミド誘導体の直接的カップリングもまたタンパク質の特異的グリコシル化で用いられる(N.J.Davies,S.L.Flitsch,Tetrahedron Lett.1991,32,6793−679645;S.Y.C.Wong et al.,Biochem.J.1994,300,843−850)。
【0077】
多糖およびオリゴ糖での糖部位の糖タンパク質の修飾
糖タンパク質の場合には、結合オリゴ糖は、タンパク質のアミノ酸側鎖に対する代替としての本発明のコンジュゲートを形成するためのさらなる結合点を提供する(J.J.Zara et al.,Anal.Biochem.1991,194,156−62)。
【0078】
過ヨウ素酸ナトリウムでの酸化によるアルデヒドの導入
アルデヒドは、過ヨウ素酸ナトリウムでの酸化によって非還元性オリゴ糖に導入することができる。選択された酸化条件に応じて、存在するシアル酸の選択的酸化、またはフコース、マンノース、ガラクトースおよびN−アセチルグルコサミン残基のより低い選択的酸化があり得る(S.M.Chamov et al.,J.Biol.Chem.1992,267,15916−22)。可能な副反応は、N−末端セリン、システインまたはスレオニンからのアルデヒドの形成である(D.J.O’Shanessy,M.Wilchek,Anal.Biochem.1990,191,1−8)。
【0079】
アルデヒドの酵素導入
ガラクトースオキシダーゼでの糖タンパク質の酸化は、末端ガラクトースまたはN−アセチルガラクトサミンにおけるC6アルデヒドの形成に導く。しかしながら、これらの糖は、それらがまず先の工程で利用可能にならなければならないように、特に動物細胞からの糖タンパク質において末端ではない(D.J.O’Shanessy、M.Wilchek、Anal.Biochem.1990,191,1−8)。
【0080】
医薬組成物
本発明は、最後に、本発明のHAS−アレルゲンコンジュゲートを含む医薬組成物に関する。本発明のコンジュゲートは、アレルギー罹患者の減感作化で使用することができる医薬組成物を製造するのに特に有利に適している。医薬組成物は、IgE介在性感作が検出され、対応する臨床的徴候が観察されているアレルギー罹患者の治療に特に適当である。
【0081】
従って、本発明のコンジュゲートは、例えば、花粉、ダニ、哺乳動物毛髪(唾液)、真菌、昆虫、食物および天然ゴム/ラテックスに対してアレルギーの人々のような即時型アレルゲンに対する臨床的に関連する反応を有する患者の特異的免疫療法に適している医薬組成物を製造するのに特に用いることができる。従って、免疫療法は、喘息患者および花粉症患者の治療で特に適当である。
【0082】
本発明の組成物は、特異的免疫療法、特に減感作化の種々の形態で使用することができる。従って、減感作化は、本発明のHESコンジュゲートの皮下、粘膜、経口、口腔または舌下投与によって行うことができる。また、減感作化は種々の治療プロトコルの形態で行うこともできる(流行前/一年中)。
【0083】
特に、昆虫に対してアレルギーの人々にとっては、該療法が急激または超急激方法によって行われるのが適切であり得る(Kleine−Tebbe et al.,Pneumologie,Vol.5(2001)、438−444参照)。
【0084】
医薬組成物は、本発明のコンジュゲートを減感作化に適した担体および/または賦形剤と混合することによって製造される。
【0085】
HESおよびアレルゲン性糖タンパク質のコンジュゲート
HES−糖タンパク質コンジュゲートを調製するためのカップリングで用いることができる糖タンパク質の化学的官能性のタイプの例は以下のとおりである。
A:システイン側鎖のチオール基
B:酸化されたガラクトース残基のアルデヒド基。
【0086】
従って、代替法Bはグリコール化されていないタンパク質に適用されない。HESは単一の還元性末端によって区別される。この構造的特徴のため、HESは、本発明の目的で標的化された位置選択的結合に特に適している。
【0087】
HES−タンパク質コンジュゲート合成で使用することができる化学的連結のアプローチは、未保護ペプチド断片からより大きなタンパク質を構築するために開発されたものである。これらのアプローチは、相互に選択的に反応して、天然タンパク質における非常に多数の他の機能の存在下で安定な末端生成物を与える、連結すべき断片における独特な反応機能の各場合における選択に基づく。
【0088】
HES調製は、一般に、まず規定され、高度に精製され、かつ十分特徴付けられた中間体(反応性HES)に変換し、これは、次いで、アレルゲンの標的機能と生理的条件下で自然発生的にかつ位置選択的に反応することができる。
【0089】
HESの還元性末端の第一級アミノ機能(1−アミノ−HES)への選択的変換が好ましい。次いで、この「1−アミノ−HES」をタンパク質との結合反応に柔軟に適合させることができ、種々の合成経路に従い、反応工程をプレ製造試薬(リンカー)を介する1つの工程に組み合わせることが可能である。
【0090】
HS−反応性HES
HS−反応性HESを調製する代替プロセスは模式的に記載され、以下で評価される。
1. HS−反応性HES(A)を得るためのHESの二官能性リンカーM22Hでの還元的アミノ化(図5.1.b);
透析および凍結乾燥による精製;
ミカエリス付加によるHS−タンパク質のカップリング。
この合成は特別な利点を有する。なぜならば、それは非常に単純であり(1工程)、標的タンパク質との反応は非常に選択的に起こるからである。もしヒドラジン誘導体の毒性を通じて問題が起これば、それは、引続いて、当分野で既知の精製プロセルによって精製されなければならない。
【0091】
2. HS−反応性HES(B)を得るためのHESラクトン(酸化されたHES)と二官能性リンカーM22H(図5.1.b)との反応;
透析および凍結乾燥による精製;
ミカエリス付加によるHS−タンパク質のカップリング。
この反応は、HESラクトンを調製するさらなる努力を通じて1.下に前記したのと異なる。
【0092】
3. 1−アミノ−HES(C)を得るためのHESと炭酸水素アンモニウムとの反応;
凍結乾燥による精製;
ブロモ/ヨードアセトアミド(HS−反応性HES D)を得るための塩基触媒無しの1−アミナールのブロモ/ヨード酢酸無水物でのアシル化;
透析および凍結乾燥による精製;アルキル化によるHS−タンパク質でのカップリング。
このプロセルは有利でもある;それは2工程のみよりなり、非常に単純な試薬のみを用いる。従って、該プロセルは非常にコスト的に効果的である。合成の規模は容易に拡大することができる。標的タンパク質との反応は非常に選択的である。
【0093】
4. アミノ−HES(E)を得るためのFrie(S.Frie,Diplomarbeit,Fachhochschule Hamburg,1998)によって記載されているHESラクトン(酸化されたHES)とジアミン(1,4−ジアミノブタン)との反応;
ブロモ/ヨードアセトアミド(HS−反応性HES F)を得るための塩基触媒無しのブロモ/ヨード酢酸無水物でのアミノ−HESのアシル化;
透析および凍結乾燥による精製;アルキル化によるHS−タンパク質とのカップリング。
【0094】
この合成経路は、HESラクトンを調製するためのさらなる試みを介しての3.で前記したのと異なる。
【0095】
CHO−反応性HES
CHO−反応性HESを調製するための代替プロセスを模式的に記載し、以下のように評価する。
【0096】
1. CHO−反応性HES Gとしてのアミノ−HES(E)の使用;
還元的アミノ化によるCHO−タンパク質とのカップリング。
この合成は非常に単純であって、コスト的に効果的である。内部リシンからの競合は、適切には、反応条件の選択を通じて制御することができる問題を引き起こし得る。
【0097】
2. ヒドラジド(CHO−反応性HES H)を得るためのHASラクトン(酸化されたHES)とヒドラジンとの反応;
透析および凍結乾燥による精製;
pH5〜6におけるヒドラゾン形成によるCHO−タンパク質とのカップリング;カップリング反応は、好ましくは、ガラクトース残基からの酸化的形成(酵素的または化学的)の間にインサイチューで行うべきである;引続いてのNaCN/BH3での還元的安定化は所望により行われる;
ガラクトースの酵素的酸化は、好ましくは、ポリマー結合酵素で行って、酵素の除去を容易にすべきである。
この合成は非常に単純であって、選択的である(内部リシンからの競合はない)。ヒドラジン誘導体の毒性のため問題が起こり得る。
【0098】
3. グリシンアミド(CHO−反応性HES HおよびI)を得るためのDまたはFの炭酸水素アンモニウムとのさらなる反応;
透析および凍結乾燥による精製;
還元的アミノ化によるCHO−タンパク質とのカップリング。
このプロセルは3工程で行われるが、非常に簡単な試薬を用い、従って、コスト的に効果的である。合成の規模は容易に拡大することができる。しかしながら、内部リシンからの競合が起こるであろう(前記参照)。
【0099】
4. アミノ−HES CまたはEのcBz−アミノオキシ酢酸でのアシル化、引続いてのアミノオキシ−HES(CHO−反応性HES K)への水素化;
pH5〜6におけるオキシム形成によるCHO−タンパク質とのカップリング;該カップリング反応は、好ましくは、ガラクトース残基からの酸化的形成(酵素的または化学的)の間にインサイチューで起こる;
ガラクトースの酵素的酸化は、好ましくは、酵素の除去を容易にするためにポリマー結合酵素で行われるべきである。
【0100】
この合成は複雑であるが、標的タンパク質とのカップリングは2.に記載した反応におけると同程度に選択的である(内部リシンからの競合はない)。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】ネオ糖タンパク質の合成。
【図2.1】多糖修飾。
【図2.2】オリゴ糖修飾。
【図3.1】NH2およびCHO/COOHカップリング反応。
【図3.2】SHカップリング反応。
【図4】架橋剤。
【図5】SHカップリングのためのリンカー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのヒドロキシアルキル澱粉がアレルゲンに共有結合した、ヒドロキシアルキル澱粉およびアレルゲンのコンジュゲート。
【請求項2】
前記ヒドロキシアルキル澱粉が、直接的に、またはリンカーを介して前記アレルゲンにカップリングした請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
前記ヒドロキシアルキル澱粉が、ヒドロキシエチル澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉またはヒドロキシブチル澱粉である請求項1または2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
前記ヒドロキシエチル澱粉が、1〜300kDaの平均分子量、好ましくは5〜200kDaの平均分子量を有する請求項1〜3のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項5】
前記ヒドロキシエチル澱粉が、ヒドロキシエチル基に基づき、0.1〜0.8のモル置換度、および2〜20の範囲のC2:C6置換比を有する請求項1〜4のいずれかのいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項6】
前記アレルゲンが、ポリペプチドまたはタンパク質よりなる群から選択される請求項1〜5のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項7】
前記アレルゲンが、糖タンパク質である請求項1〜6のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項8】
前記ヒドロキシアルキル澱粉が、前記ポリペプチド鎖に、または前記糖タンパク質の糖鎖の一つ以上にカップリングした請求項1〜7のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のコンジュゲートを含む医薬組成物。
【請求項10】
さらに、医薬上許容される担体を含む請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
特異的免疫療法、特に、減感作化のための請求項1〜8のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項12】
前記臨床的徴候が観察されたIgE介在性感作が検出されるアレルギー罹患者の特異的免疫療法のための請求項11に記載の使用。
【請求項13】
特異的免疫療法が、花粉、ダニ、哺乳動物毛髪(唾液)、真菌、昆虫、食物および天然ゴム/ラテックスに対するアレルギーの療法で使用される請求項11または12に記載の使用。
【請求項14】
前記療法が、喘息患者、花粉症患者、および即時型のアレルゲンに対する他のタイプの臨床的に関連する反応を示す患者の治療で使用される請求項11〜13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
投与が皮下、粘膜、経口、口腔、または舌下で行われる請求項11〜14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
前記免疫療法が、風媒アレルゲンに対して流行前にまたは1年中行われる請求項11〜15のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
前記免疫療法が、急激方法または超急激方法にて昆虫に対するヒトアレルギーに対して行われる請求項11〜16のいずれかに記載の使用。

【図1】
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【図2.1】
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【図2.2】
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【図3.1】
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【図3.2】
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【図4】
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【図5.1】
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【図5.2】
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【公表番号】特表2006−503074(P2006−503074A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−540576(P2004−540576)
【出願日】平成15年9月2日(2003.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2003/009750
【国際公開番号】WO2004/030701
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(505090698)フレセニウス・カビ・ドイッチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (6)
【Fターム(参考)】