コンジュゲート化された向精神性薬物およびその使用
【課題】向精神性薬物により誘導される副作用を軽減し、その向精神性薬物の治療活性を高めるように、および/または、抗増殖活性を発揮するように選択された新規な化学的コンジュゲートの提供。
【解決手段】第2の化学的成分に共有結合的に連結された第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートであって、前記第1の化学的成分は向精神性薬物残基であり、前記第2の化学的成分は、前記向精神性薬物がそれ自体で投与されたときに前記向精神性薬物により誘導される副作用を軽減するように、および/または、前記向精神性薬物の治療活性を強化するように、および/または、抗増殖活性を発揮させるように選択される有機酸残基であり、ただし前記向精神性薬物は抗精神病薬ではなく、前記有機酸は脂肪酸または脂質酸ではない化学的コンジュゲート。
【解決手段】第2の化学的成分に共有結合的に連結された第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートであって、前記第1の化学的成分は向精神性薬物残基であり、前記第2の化学的成分は、前記向精神性薬物がそれ自体で投与されたときに前記向精神性薬物により誘導される副作用を軽減するように、および/または、前記向精神性薬物の治療活性を強化するように、および/または、抗増殖活性を発揮させるように選択される有機酸残基であり、ただし前記向精神性薬物は抗精神病薬ではなく、前記有機酸は脂肪酸または脂質酸ではない化学的コンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は向精神性薬物と有機酸との新規な化学的コンジュゲートおよびその使用に関連する。より具体的には、本発明は、向精神性薬物(これはまた、抗増殖活性および/または化学感作活性を有し得る)と、その向精神性薬物により誘導される副作用を軽減し、その向精神性薬物の治療活性を高めるように、および/または、抗増殖活性を発揮するように選択された有機酸との新規な化学的コンジュゲート、ならびに、向精神性および/または増殖性の障害および疾患の治療におけるその使用、ならびに、化学感作におけるその使用に関連する。本発明の新規な化学的コンジュゲートは、先行技術の向精神性薬物と比較した場合、より大きい治療活性と、さらに最小限に抑えられた有害な副作用とによって特徴づけられる。
【背景技術】
【0002】
向精神性薬物は、ニューロンのシグナル伝達を調節することによって主に中枢神経系(CNS)において作用する薬理学的作用剤である。従って、向精神性薬物は、CNSにおいて活性を発揮し、それによりCNS関連の障害を治療する薬理学的作用剤として知られており、本明細書中では、そのような薬理学的作用剤として示され、向精神性薬物には、例えば、抗精神病薬、抗うつ剤、抗痙攣剤、不安緩解剤、および、脳由来酵素の阻害剤などが含まれる。
【0003】
残念なことに、向精神性薬物の投与には、典型的には、様々な有害な副作用(例えば、発作、頭痛、疲労、活動過多およびめまいなど)が伴い、これらはその使用をひどく制限している。そのような副作用の広範囲にわたる列挙が、例えば、「The Merck Manual of Medical Information」(Merck&Co.Inc.)に見出され得る。
【0004】
神経遮断性薬物(これは、例えば、神経遮断性薬剤または神経遮断剤としても知られている)は、中枢神経系の精神病的な疾患および障害(例えば、統合失調症など)の治療において広く使用されている古典的な抗精神病薬である。神経遮断剤の抗精神病効力は、中枢神経のドーパミン受容体を中和/阻止するその能力に起因すると考えられる。神経遮断性薬物は定型抗精神病薬として知られており、これには、例えば、フェノチアジン系(脂肪族系(例えば、クロルプロマジン)、ピペリジン系(例えば、チオリダジン)およびピペラジン系(例えば、フルフェナジン)が含まれる);ブチロフェノン系(例えば、ハロペリドール);チオキサンテン系(例えば、フルペンチキソール);オキソインドール系(例えば、モリンドン);ジベンゾキサゼピン系(例えば、ロキサピン)およびジフェニルピペリジン系(例えば、ピモジド)が含まれる。
【0005】
しかしながら、現在利用可能な神経遮断性薬物の投与には、様々な有害な副作用がしばしば伴う。神経遮断性薬物は、固縮、震え、運動緩慢(遅い動き)および発話緩慢(遅い思考)、ならびに、遅発性ジスキネシア、急性ジストニー反応および静座不能を含む錐体外路症状を誘導することがこの分野では広く知られている。実際、1年以上にわたる神経遮断性薬物の長期療法により治療されている患者の約5%が遅発性ジスキネシアの病状を発症する。
【0006】
異なる種類の抗精神病薬には、非定型抗精神病剤が含まれる。非定型抗精神病薬は、ドーパミンD2受容体に加えて中枢神経のセロトニン2受容体(5−HT2)に結合することを含む受容体結合プロフィルを有する。非定型抗精神病薬には、例えば、クロザピン、オランザピンおよびリスペリドンが含まれ、非定型抗精神病薬は一般には、大きい抗セロトニン活性と、ドーパミンD2受容体に対する比較的低い親和性とによって特徴づけられる。いくつかの非定型抗精神病薬(例えば、クロザピンなど)は、アドレナリン作動性受容体、コリン作動性受容体およびヒスタミン作動性受容体をさらに中和することが知られている。
【0007】
神経遮断剤とは異なり、非定型抗精神病剤は最小限の錐体外路症状を引き起こし、従って、遅発性ジスキネシア、静座不能または急性ジストニー反応をまれにしか引き起こさない。しかしながら、その投与は他の副作用(例えば、体重の増大、気分障害、性的機能不全、鎮静、起立性低血圧、唾液分泌亢進、低下した発作閾値、および、特に、無顆粒球症など)を伴う。
【0008】
定型抗精神病薬および非定型抗精神病薬の両方(これらはまた、本明細書中では抗精神病剤として示される)に関連づけられる重篤な副作用がそれらの使用に対する大きな制限となっており、広範囲の努力が、これらの副作用を有しない抗精神病薬を開発するために行われている。
【0009】
米国特許第6197764号は、クロザピン(非定型抗精神病薬)と、12個〜26個の炭素原子(好ましくは、16個〜22個の炭素原子)を有する脂肪酸との化学的コンジュゲートを開示する。このコンジュゲートは、抗精神病治療効果をもたらすためのそのより低い用量の投与を可能にし、かつ、それにより、重大な副作用を発症する可能性を低下させる長期間にわたる治療的有効性によって特徴づけられる。従って、このコンジュゲートは、コンジュゲート化されていない非定型抗精神病薬よりも有益かつ好都合である。しかしながら、米国特許第6197764号は、他の抗精神病薬剤を含むそのような好都合なコンジュゲートを開示しておらず、また、さらに、長鎖脂肪酸を含むコンジュゲートに限定されている。他の抗精神病剤(主として、神経遮断剤)と長鎖脂肪酸とのエステルコンジュゲートがこの分野では広く知られていることを述べておかなければならない。それにもかかわらず、そのようなコンジュゲートは、脳内への浸透を容易にすること、ならびに、体内における薬物の存続時間を延ばすことを主に目指しており、副作用を積極的に軽減または防止するためには設計されていない。
【0010】
米国特許第3966930号は、顕著な神経遮断特性と、比較的低い程度の望ましくない副作用とを有するフルオロ置換されたフェノチアジン誘導体を開示する。しかしながら、米国特許第3966930号の特許請求されているフルオロ置換されたフェノチアジン誘導体のいくつかは、1個〜17個の炭素原子をその鎖に有するアシル基を含むが、実験データは、シュウ酸またはマレイン酸(すなわち、2個の炭素原子および4個の炭素原子をそれぞれ含む有機酸)のいずれかに由来するアシル基のみを含むフェノチアジン誘導体に限定されている。開示されたフェノチアジン誘導体は、他の知られている神経遮断剤と比較した場合、より長い治療効果を有しており、従って、比較的低い程度の誘導された副作用によって特徴づけられる。これらの化合物の長くなった治療効果は、主としてフェノチアジン置換基(例えば、フルオロおよびトリフルオロメチル)に起因すると考えられ、その一方で、有機酸とのそのそれらのコンジュゲート化は、それらの医薬配合を容易にすることを主に目指している。
【0011】
向精神性薬物(主として、神経遮断剤)による治療の結果としての錐体外路症状の発症に関する近年の研究では、脳におけるγ−アミノ酪酸(GABA)系の低下した活性がさらに伴う、ドーパミン作動性受容体のD1およびD2における不均衡を伴う機構が示唆されている。
【0012】
GABAは脳における重要な阻害性の神経伝達物質であり、これは、精神安定化活性、不安緩解活性および筋肉弛緩活性に影響を及ぼすことが知られており、また、中枢神経系のいくつかの障害および疾患に関連づけられることがさらに知られている。錐体外路症状に関する近年の研究では、GABAアゴニストが、神経遮断剤により誘導される副作用を軽減するためにさらに使用することができ、従って、さらなる治療的可能性を有し得ることが示唆される。
【0013】
以前の研究では、GABAアゴニストが、脳の他の神経伝達物質を、特に、ドーパミン系を妨げ得ることが既に示唆されている。従って、GABAアゴニストはドーパミン受容体の感受性の神経遮断剤誘導による増大を中和することができ、従って、神経遮断剤により誘導されるジスキネシアを改善することができることが見出されていた[1]。さらに、いくつかの知られている直接的なGABAアゴニスト(例えば、ムスシモールおよびSL76002)は、低用量のアゴニストが常同的なカタレプシー行動を阻害する一方で、高用量のアゴニストがハロペリドール誘導のカタレプシーを強めるように、ハロペリドール誘導のカタレプシーに対する二相性作用を引き起こすことが見出されていた。他の研究では、GABAアゴニストが抗痙攣活性をさらに誘導することが報告されている[2]。
【0014】
GABAアゴニストの使用は、GABAアゴニストが親水性の官能基(例えば、遊離カルボン酸基および遊離アミノ基)を含み、従って、血液脳関門(BBB)を容易に越えないので制限される。しかしながら、脂肪アミノ酸またはペプチドとのそのような化合物の化学的コンジュゲート化は血液脳関門(BBB)のその通過を実質的に容易にし得ることが見出されていた[3]。
【0015】
実際、米国特許第3947579号、同第3978216号、同第4084000号、同第4129652号および同第4138484号は、血液脳関門を越えることが知られているGABA様化合物(GABAに薬理学的に関連づけられる化合物)、例えば、γ−ヒドロキシブチロラクトン、γ−ヒドロキシブチラート、アミノオキシ酢酸、5−エチル−5−フェニル−2−ピロリドン、1−ヒドロキシ−3−アミノ−2−ピロリドンおよびβ−(4−クロロフェニル)−γ−アミノ酪酸などは、神経遮断薬と同時投与されたとき、若干低い用量の神経遮断薬の使用により、これらのGABA様化合物を投与することなく、より高用量の神経遮断薬を用いて得られるのと同じ抗精神病効果が得られ、かつ、同時に、錐体外路副作用がいくらか軽減されることを可能にすることを開示する。GABA様化合物は、同時投与された抗精神病薬の抗精神病活性を強めると言われるので、より低い用量の神経遮断薬が使用されるが、同じ抗精神病効果が得られると言われる。
【0016】
近年の研究は、いくつかの向精神性薬物(特に、フェノチアジン系)がさらに、強力な抗増殖活性を、種々の細胞株において、例えば、ニューロン細胞、グリア細胞、メラノーマ細胞、乳細胞、結腸細胞、前立腺細胞、リンパ腫および白血病などにおいて、同様にまた、初代ヒト角膜実質細胞において発揮することを明らかにした[4]。「新しいハーフマスタード型フェノチアジン系」(これは、カルモジュリンに対する特異的な阻害作用を発揮することが知られている)が、National Cancer Institute(NCI)によって調べられた。このフェノチアジン系の抗増殖活性が、60の異なるヒトガン細胞株のインビトロスクリーニングにおいて観測された。いくつかのフェノチジン系はさらに、動物モデルにおいて腫瘍成長の著しい阻害を示した。これらの発見は、一般的な集団と比較した場合、神経遮断剤の薬物療法での統合失調症患者における低いガン発生頻度と一致している。
【0017】
国際特許出願公開WO02/43652(これは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)は増殖性疾患の治療における様々な定型向精神性薬剤および非定型向精神性薬剤の使用を教示する。具体的には、国際特許出願公開WO02/43652は、環状の向精神性薬剤(例えば、三環、二環および単環の薬剤)が、神経膠腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、結腸ガン、肺ガンおよび前立腺ガンをはじめとする数多くの腫瘍の治療、ならびに、多剤耐性(MDR)ガン細胞(例えば、B16メラノーマ細胞(これはドキソルビシンおよびコルヒチンに対して抵抗性であることが知られている)および神経芽細胞腫(SH−SY5T、これは5−FUおよびドキソルビシンに対して抵抗性である)など)の治療において効果的な薬剤として役立ち得ることを教示する。そのうえ、MDRガンの治療における向精神性薬剤の活性を教示することのほかに、国際特許出願公開WO02/43652はさらに、化学感作剤としての、すなわち、ガン細胞(特に、MDRガン細胞)を細胞毒性薬物に対して効果的に感受性にする化合物としての向精神性薬物の使用を教示する。
【0018】
しかしながら、国際特許出願公開WO02/43652の教示は、特に、MDRガンの治療における向精神性薬剤の抗増殖活性および化学感作活性に関しては、非常に好都合であるが、このような向精神性薬剤の使用は、それにより誘導される有害な副作用によって非常に制限される。
【0019】
バルプロ酸は、抗痙攣活性を有し、従って、現在、てんかんのための承認薬物として知られ、かつ使用されている向精神性薬物である。近年、バルプロ酸が抗増殖作用をいくつかの細胞株に対してインビトロおよびインビボの両方で発揮することが見出され、また、予備的な報告では、ヒトの血液学的腫瘍および充実性腫瘍を治療するためのその使用が提案されている。様々な研究により、バルプロ酸の抗増殖活性はそのヒストンデアセチラーゼ阻害(HDACI)活性に由来することが示唆されている[16〜22]。しかしながら、さらなる研究では、抗てんかん薬(例えば、抗痙攣剤)と抗ガン活性との間での一般的な関係性が示される。
【0020】
酪酸(BA)および4−フェニル酪酸(PBA)(GABAはそれらの誘導体である)もまた、広範囲の様々な新生物細胞における分化剤および抗増殖剤としてインビトロで作用することが知られている[5]。酪酸および4−フェニル酪酸はともに、多形質発現性の薬剤として知られており、それらの最も注目すべき活性な1つが、クロマチンの弛緩および転写活性の変化をもたらす、核ヒストンにおけるアセチル化レベルの可逆的な増大である[6]。この作用機構は酪酸および4−フェニル酪酸の抗ガン活性にさらに関連づけられることが主張されている。
【0021】
従って、先行技術では、中枢神経系の障害および疾患の治療、ならびに、増殖性の障害および疾患(例えば、悪性および良性の腫瘍ならびにMDRガンなど)の治療における向精神性薬物の使用、また、抗増殖剤および化学感作剤としての向精神性薬物の使用が教示される。先行技術ではさらに、神経遮断剤により誘導される副作用を軽減するための潜在的な薬剤としてのGABAアゴニスト(GABAそのものを含む)の使用、ならびに、抗増殖剤としての酪酸およびその誘導体の使用が教示される。
【0022】
それにもかかわらず、依然として、抗増殖性薬物および化学感作剤としてもまた役立ち得る、改善された治療活性およびさらに軽減された副作用によって特徴づけられる向精神性薬物が必要であることが広く認められており、従って、そのような向精神性薬物を有することは非常に好都合である。
【発明の概要】
【0023】
本発明によれば、(i)向精神性薬物と、その向精神性薬物により誘導される副作用を軽減するために、および/または、その向精神性薬物の治療活性を強化するために、および/または、抗増殖活性を発揮させるために選択された有機酸との化学的コンジュゲート;(ii)向精神性薬物と、GABAアゴニスト(GABAそのものを含む)との化学的コンジュゲート;(iii)向精神性薬物と抗増殖剤との化学的コンジュゲート;(iv)向精神性薬物と鎮痛剤との化学的コンジュゲート;(v)それらを合成するための方法;(vi)従来の向精神性薬物に特徴的な副作用を軽減し、および/または、その向精神性効力を高めながら、向精神性の障害および疾患を治療および/または防止することにおけるその使用;(vii)増殖性の障害および疾患を治療および/または防止することにおけるその使用;および(viii)化学感作性薬剤としてのその使用を提供する。
【0024】
向精神性薬物のそのような化学的コンジュゲートは、最小限に抑えられた有害な副作用、強化された向精神的治療活性および抗増殖活性、ならびに、化学感作活性によって特徴づけられることが本明細書中に示される。そのような化学的コンジュゲートは、予想外にも、その治療効果および副作用の最小化の両方に関してその母体化合物と比較した場合、相乗作用をもたらすことがさらに本明細書中に示される。
【0025】
従って、本発明の1つの局面によれば、第2の化学的成分に共有結合的に連結された第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートが提供される。この場合、第1の化学的成分は向精神性薬物残基であり、さらに、第2の化学的成分は、その向精神性薬物がそれ自体で投与されたときに向精神性薬物により誘導される副作用を軽減するように、および/または、向精神性薬物の治療活性を強化するように、および/または、抗増殖活性を発揮させるように選択される有機酸残基である。
【0026】
本発明の1つの実施形態において、向精神性薬物残基には、抗精神病薬を除いて向精神性薬物の任意の残基が含まれる。
【0027】
本発明の別の実施形態において、第2の化学的成分は鎮痛剤残基であり、かつ、向精神性薬物は本明細書中下記で定義される通りである。
【0028】
本発明の別の局面によれば、本発明の化学的コンジュゲートを有効成分として含み、かつ、医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物が提供される。
【0029】
本発明の医薬組成物は好ましくは、化学療法剤との組合せで、および/または、化学感作が有益である医学的状態で、中枢神経系(CNS)の障害または疾患の治療において使用するために、および/または、増殖性の障害または疾患の治療において使用するために、および/または、化学感作において使用するために、包装物に包装され、かつ、包装物上または包装物内において活字で特定される。
【0030】
本発明のさらに別の局面によれば、対象におけるCNSの障害または疾患を治療または防止する方法が提供され、この場合、この方法は、対象に治療有効量の本発明の化学的コンジュゲートを投与することを含む。
【0031】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、CNSの障害または疾患は、精神病的な障害または疾患、不安障害、解離型障害、人格障害、気分障害、情動障害、神経変性性の疾患または障害、痙攣性障害、境界性障害、および、精神的な疾患または障害からなる群から選択される。
【0032】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、CNSの障害または疾患は、統合失調症、偏執症、児童精神病、ハンチングトン病、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、うつ病、躁うつ病、不安、パーキンソン病、アルツハイマー病およびてんかんからなる群から選択される。
【0033】
本発明のさらに別の局面によれば、対象における増殖性の障害または疾患を治療または防止する方法が提供され、この場合、この方法は、対象に治療有効量の本発明の化学的コンジュゲートを投与することを含む。
【0034】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、増殖性の障害または疾患は、脳腫瘍、脳転移物および末梢腫瘍からなる群から選択される。
【0035】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、増殖性障害はガン(例えば、多剤耐性ガンなど)である。
【0036】
本発明のさらなる局面によれば、化学感作の方法が提供される。この方法は、その必要性のある対象に化学療法有効量の1つまたは複数の化学療法剤および化学感作有効量の本発明の化学的コンジュゲートを投与することを含む。
【0037】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、対象はガン(例えば、多剤耐性ガンなど)を有する。
【0038】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、第2の化学的成分は、カルボン酸エステル結合、アルキルオキシカルボン酸エステル結合、アミド結合、イミン結合およびチオエステル結合からなる群から選択される結合を介して第1の化学的成分に共有結合的に連結される。
【0039】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第2の化学的成分は、抗増殖剤残基、鎮痛剤残基およびGABAアゴニスト残基からなる群から選択される。
【0040】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、向精神性薬物は抗増殖活性を有する。
【0041】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、向精神性薬物は化学感作活性を有する。
【0042】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、向精神性薬物残基は、フェノチアジン残基、フェノチアジン誘導体残基およびバルプロ酸残基からなる群から選択される。
【0043】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、向精神性薬物残基は抗精神病薬残基である。
【0044】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、抗精神病薬残基は、定型抗精神病薬残基および非定型抗精神病薬残基からなる群から選択される。
【0045】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、向精神性薬物残基は抗うつ剤残基であり、例えば、フルオキセチン残基およびノルトリプチリン残基などである。
【0046】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、向精神性薬物残基は、不安緩解薬残基、抗うつ剤残基、抗痙攣薬残基、抗パーキンソン症候群薬残基、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤残基、MAO阻害剤残基、三環向精神性薬物残基、二環向精神性薬物残基、単環向精神性薬物残基、フェノチアジン系残基、ベンゾジアゼピン系残基およびブチロフェノン系残基からなる群から選択される。
【0047】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、向精神性薬物残基は、クロルプロマジン残基、ペルフェナジン残基、フルフェナジン残基、ズクロペンチキソール残基、チオプロパザート残基、ハロペリドール残基、ベンペリドール残基、ブロムペリドール残基、ドロペリドール残基、スピペロン残基、ピモジド残基、ピペラセタジン残基、アミルスルプリド残基、スルピリド残基、クロチアピン残基、ジプラシドン残基、レモキシプリド残基、スルトプリド残基、アリザプリド残基、ネモナプリド残基、クロザピン残基、オランザピン残基、ジプラシドン残基、セルチンドール残基、クエチアピン残基、フルオキセチン残基、フルボキサミン残基、デシプラミン残基、パロキセチン残基、セルトラリン残基、バルプロ酸残基、テマザゼパム残基、フルテマゼパム残基、ドキセファゼパム残基、オキサゼパム残基、ロラゼパム残基、ロルメタゼパム残基、シノラゼパム残基、フルタゾラム残基、ロピラゼパム残基、メプロバマート残基、カリソプロドール残基、アセトフェナジン残基、カルフェナジン残基、ジキシラジン残基、プリシアジン残基、ピポチアジン残基、ホモフェナジン残基、ペリメタジン残基、ペルチペンチル残基、フルペンチキソール残基、ピフルチキソール残基、テフルチキソール残基、オキシペテピン残基、トリフルペリドール残基、ペンフルリドール残基、メクロベミド残基、ノルクロミプラミン残基、アモキサピン残基、ノルトリプチリン残基、プロトリプチリン残基、レボキセチン残基、タクリン残基、ラサギリン残基、アマンチジン残基、ズロキセチン残基、フェノバルビタール残基およびフェニトイン残基からなる群から選択される。
【0048】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、GABAアゴニスト残基は、(±)−バクロフェン残基、γ−アミノ酪酸(GABA)残基、γ−ヒドロキシ酪酸残基、アミノオキシ酢酸残基、β−(4−クロロフェニル)−γ−アミノ酪酸残基、イソニペコチン酸残基、ピペリジン−4−スルホン酸残基、3−アミノプロピル亜ホスホン酸残基、3−アミノプロピルホスフィン酸残基、3−(アミノプロピル)メチルホスフィン酸残基、1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸残基(ガバペンチン)、4−アミノ−5−ヘキセン酸(γ−ビニルGABA、ビガバトリン)残基、および3−(2−イミダゾリル)−4−アミノブタン酸残基からなる群から選択される。
【0049】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、抗増殖剤残基は、酪酸残基および4−フェニル酪酸残基からなる群から選択される。
【0050】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、鎮痛剤残基は非ステロイド系抗炎症薬残基である。
【0051】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、有機酸残基は一般式−R−C(=O)−を有し、この場合、Rは、1個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の炭化水素残基、1個〜20個の炭素原子と、酸素、窒素およびイオウからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とを有する置換または非置換の炭化水素残基、ならびに、R1からなる群から選択され、ただし、R1は一般式−Z−C(=O)O−CHR2−R3の残基であり、式中、Zは、単結合、1個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の炭化水素残基、ならびに、1個〜20個の炭素原子と、酸素、窒素およびイオウからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とを有する置換または非置換の炭化水素残基からなる群から選択される;R2は、水素、および、1個〜10個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択される;かつ、R3は、水素、1個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の炭化水素残基、ならびに、1個〜20個の炭素原子と、酸素、窒素およびイオウからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とを有する置換または非置換のアルキルからなる群から選択される。
【0052】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、Rは、3個〜5個の炭素原子を有する置換または非置換のアルキルである。
【0053】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、有機酸残基は、酪酸残基、吉草酸残基、4−フェニル酪酸残基、4−アミノ酪酸残基、レチノイン酸残基、スリンダク酸残基、アセチルサリチル酸残基、イブプロフェン残基、マロン酸残基、コハク酸残基、グルタル酸残基、フマル酸残基およびフタル酸残基からなる群から選択される。
【0054】
本発明のさらなる局面によれば、本発明の化学的コンジュゲートを合成する方法が提供される。この方法は、有機酸および向精神性薬物を反応して、その結果、向精神性薬物の残基に共有結合的に連結された有機酸の残基を得るようにすることを含む。
【0055】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、有機酸の残基はカルボン酸エステル結合を介して向精神性薬物の残基に共有結合的に連結され、この場合、本発明の方法はさらに、反応の前に、有機酸をそのアシルクロリド誘導体に変換することを含む。
【0056】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、有機酸の残基はチオエステル結合を介して向精神性薬物の残基に共有結合的に連結され、この場合、本発明の方法はさらに、反応の前に、有機酸をそのアシルクロリド誘導体に変換すること、および、向精神性薬物をそのチオール誘導体に変換することを含む。
【0057】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、有機酸の残基はアミド結合を介して向精神性薬物の残基に共有結合的に連結され、この場合、本発明の方法はさらに、反応の前に、有機酸をそのアシルクロリド誘導体に変換すること、および、向精神性薬物をそのアミン誘導体に変換することを含む。
【0058】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、有機酸の残基はアルキルオキシカルボン酸エステル結合を介して向精神性薬物の残基に共有結合的に連結され、この場合、本発明の方法はさらに、反応の前に、向精神性薬物をそのクロロアルキルエステル誘導体に変換することを含む。
【0059】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、有機酸の残基はイミン結合を介して向精神性薬物の残基に共有結合的に連結され、この場合、本発明の方法はさらに、反応の前に、有機酸をそのアルデヒド誘導体に変換すること、および、向精神性薬物をそのアミン誘導体に変換することを含む。この方法で使用される有機酸および向精神性薬物は、好ましくは、本明細書中上記で記載された本発明の有機酸残基および向精神性薬物残基に由来する。
【0060】
有機酸が、遊離アミノ基を含むGABAアゴニストである場合、本発明の方法はさらに、遊離アミノ基を反応の前に保護基で保護し、その結果、その反応によって、向精神性薬物の残基に共有結合的に連結された有機酸のアミノ保護残基を得るようにすること、および、向精神性薬物の残基に共有結合的に連結された有機酸のアミノ保護残基を得た後、保護基を除くことを含む。好ましくは、本発明の方法はさらに、保護の後、および、反応の前に、有機酸をそのアシルイミダゾール誘導体に変換することを含む。
【0061】
本発明は、最小限に抑えられた有害な副作用を誘導し、かつ、より大きい治療活性を発揮する、向精神性薬物の新規かつ強力な化学的コンジュゲートを、向精神性および/または増殖性の障害および疾患を治療および防止するために、また、化学感作剤として使用するために提供することによって、現在知られている形態の欠点に対処することに成功している。
【図面の簡単な説明】
【0062】
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図1】図1は、5mg/kg体重のペルフェナジンおよび等モル用量のその化学的コンジュゲートが腹腔内注射されたラットにおける総カタレプシー(図1a)およびプロラクチン血中レベル(図1b)に対するペルフェナジンおよび本発明によるその化学的コンジュゲート(AN167、AN168およびAN130)の影響を明らかにする、構造活性相関(SAR)研究により得られた棒グラフおよびプロットを示す。
【図2】図2は、5mg/kgのペルフェナジンおよび等モル用量の本発明によるその化学的コンジュゲートによる治療の後でのラットにおける総カタレプシーを明らかにする棒グラフである(SAR研究)。
【図3a】図3aは、ラットにおける総カタレプシーに対するペルフェナジン(5mg/Kg)、フルフェナジン(7.5mg/Kg)および本発明によるそれらの化学的コンジュゲート(AN167、AN168、AN180およびAN187)の影響を明らかにする棒グラフおよびプロットを示す。
【図3b】図3bは、ラットにおけるプロラクチン血中レベルに対する、ペルフェナジン、フルフェナジンおよびそれらのGABA化学的コンジュゲート(AN168およびAN187)の影響を明らかにする棒グラフおよびプロットを示す。
【図4】図4は、ペルフェナジンおよび本発明によるその化学的コンジュゲート(図4a)、ならびに、フルフェナジンおよび本発明によるその化学的コンジュゲート(図4b)により誘導された、ラットにおけるカタレプシーの経時変化を明らかにする比較プロットである。
【図5】図5aおよび図5bは、ラットにおけるカタレプシーに対する、ペルフェナジンとGABAとの本発明の化学的コンジュゲート(化合物AN168)、および、等モル用量の、ペルフェナジンとGABAとの混合物の影響を明らかにする棒グラフおよび比較プロットを示す。
【図6】図6は、ラットにおける総カタレプシーに対する本発明の化学的コンジュゲート(AN167およびAN168)の影響を明らかにする棒グラフである(4つの独立した実験の平均)。
【図7a】図7aは、2分以内に目標に到達する動物の割合に関して測定された、マウスにおけるカタレプシーに対する、化学的コンジュゲートAN168、等モル用量のペルフェナジン、および、等モル用量の、ペルフェナジンとGABAとの混合物の影響を明らかにする棒グラフを示す。
【図7b】図7bは、動物が目標に到達するために要した時間に関して測定された、マウスにおけるカタレプシーに対する、化学的コンジュゲートAN168、等モル用量のペルフェナジン、および、等モル用量の、ペルフェナジンとGABAとの混合物の影響を明らかにする棒グラフを示す。
【図8】図8は、「ピアノ」試験によって測定されたときの、ラットにおけるカタレプシーに対する、経口投与されたペルフェナジンおよびその化学的コンジュゲートAN168の影響を明らかにする比較プロットを示す(図8bは、図8aに示される実験の3ヶ月後に行われた実験で得られたデータを示す)。
【図9】図9は、「ピアノ」試験によって測定されたときの、経口投与されたペルフェナジンおよびその化学的コンジュゲートAN168によって様々な濃度でラットにおいて誘導された総カタレプシーを明らかにする棒グラフを示す(図9bは、図9aに示される実験の3ヶ月後に行われた実験で得られたデータを示す)。
【図10a】図10aは、24時間の期間中に「ピアノ」試験によって測定されたときの、ラットにおけるカタレプシーの経時変化に対する、様々な濃度の経口投与されたペルフェナジンおよびその化学的コンジュゲートAN168の影響を明らかにする比較プロットおよび棒グラフである。
【図10b】図10bは、24時間の期間中に「ピアノ」試験によって測定されたときの、ラットにおける総カタレプシーに対する、様々な濃度の経口投与されたペルフェナジンおよびその化学的コンジュゲートAN168の影響を明らかにする比較プロットおよび棒グラフである。
【図11】図11は、「壁」試験よって測定されたときの、ラットにおける総カタレプシーに対する、様々な濃度で経口投与されたペルフェナジンおよびAN168の影響を明らかにする棒グラフである。
【図12】図12は、ラットにおけるプロラクチン血中レベルに対する経口投与されたペルフェナジンおよびAN168の影響を明らかにする比較プロットを示す。
【図13】図13は、B16マウスメラノーマ細胞の増殖に対するペルフェナジンおよび本発明のその化学的コンジュゲート(AN130、AN167およびAN168)の影響を明らかにする比較プロットを示す。
【図14】図14は、C6ラット神経膠腫細胞の生存性に対する、増大する濃度のペルフェナジン、AN168、GABA、ビンクリスチンおよびシスプラチンの影響を明らかにする比較プロットを示す。
【図15】図15は、JurkatTリンパ腫細胞の生存性に対する、増大する濃度のペルフェナジン、AN168およびデキサメタゾンの影響を明らかにする比較プロットを示す。
【図16】図16は、30μMのビンクリスチンにより治療されたC6ラット神経膠腫細胞の生存性に対する様々な濃度のペルフェナジンおよびAN168の影響を明らかにする棒グラフである。
【図17】図17は、C6ラット神経膠腫細胞の生存性に対するシスプラチン(5μM〜50μM)およびシスプラチン(5μM〜50μM)とAN168(10μMおよび15μM)との組合せの影響を明らかにする棒グラフである。
【図18】図18は、C6ラット神経膠腫細胞におけるDNA断片化に対する、ペルフェナジン、AN168およびシスプラチンの影響を明らかにする棒グラフである。
【図19】図19は、正常な脳細胞に対するペルフェナジンおよびその化学的コンジュゲート(AN130、AN167およびAN168)の影響(IC50値)を明らかにする棒グラフである。
【図20】図20は、ラット筋細胞の生存性に対する等モル用量のペルフェナジンおよびAN168の影響を明らかにする棒グラフである。
【図21】図21は、ペルフェナジン(per)および本発明の化合物AN167が腹腔内注射されたラットにおける死亡数の経時変化を明らかにする比較プロットを示す。
【図22】図22は、各試験群において2時間の期間中に記録されたよじ登り試みの総数による、ラットにおけるD−アンフェタミン誘導のよじ登り行動に対する様々な濃度のペルフェナジンおよび/またはGABAならびに等モル用量の化学的コンジュゲートAN−168の腹腔内投与の影響を明らかにする棒グラフである(各点は平均+/−SEMおよび治療動物数を表す)。
【図23】図23は、2時間の期間中でのラットにおけるD−アンフェタミン誘導のよじ登り行動に対する様々な濃度のペルフェナジンおよび/またはGABAならびに等モル用量の化学的コンジュゲートAN−168の腹腔内投与の影響の経時変化を明らかにする比較プロットを示す。
【図24】図24は、各試験群において2時間の期間中に記録された、ラットにおけるD−アンフェタミン誘導の頭部運動に対する様々な濃度のペルフェナジンおよび等モル用量の化学的コンジュゲートAN−168の腹腔内投与の影響を明らかにする棒グラフである(各点は平均+/−SEMおよび治療動物数を表す)。
【図25】図25は、2時間の期間中でのラットにおけるD−アンフェタミン誘導の頭部運動に対する様々な濃度のペルフェナジンおよび等モル用量の化学的コンジュゲートAN−168の腹腔内投与の影響の経時変化を明らかにする比較プロットを示す。
【図26】図26は、2時間の期間中に各試験群において記録されたよじ登り試みの総数による、ラットにおけるD−アンフェタミン誘導のよじ登り行動に対する2.5mg/kgのペルフェナジン(5mg/kgのGABAとともに、または、GABAを伴わずに)および等モル用量の化学的コンジュゲートAN−168の経口投与の影響を明らかにする棒グラフである(各点は平均+/−SEMおよび治療動物数を表す)。
【図27】図27は、2時間の期間中の各試験群でのラットにおけるD−アンフェタミン誘導の頭部運動に対する2.5mg/kgのペルフェナジン(5mg/kgのGABAとともに、または、GABAを伴わずに)および等モル用量の化学的コンジュゲートAN−168の経口投与の影響を明らかにする棒グラフである(各点は平均+/−SEMを表す)。
【図28】図28は、2時間の期間中のラットにおけるD−アンフェタミン誘導の頭部運動に対する2.5mg/kgのペルフェナジン(5mg/kgのGABAとともに、または、GABAを伴わずに)および等モル用量の化学的コンジュゲートAN−168の経口投与の影響の経時変化を明らかにする比較プロットを示す。
【図29】図29は、ラットにおけるD−アンフェタミン誘導のよじ登り行動に対する様々な濃度のオランザピンの経口投与の影響を明らかにする棒グラフである。
【図30】図30は、ラットにおけるD−アンフェタミン誘導のよじ登り行動に対する様々な濃度のオランザピンの経口投与の影響の経時変化を明らかにする比較プロットを示す。
【図31】図31は、ラットにおけるD−アンフェタミン誘導の頭部運動に対する様々な濃度のオランザピンの経口投与の影響を明らかにする棒グラフである。
【図32】図32は、ヒトU−251神経膠芽細胞腫細胞の生存性に対する、増大する濃度のAN−216の影響を明らかにするプロット(図32a)、ならびに、増大する濃度のAN−216、GABA、バルプロ酸、および、GABAとバルプロ酸との1:1の等モル混合物の影響を明らかにする比較プロット(図32b)を示す。
【図33】図33は、ヒトU−251神経膠芽細胞腫細胞の生存性に対するその影響を測定しながら、AN−216、AN−138、AN−223、バルプロ酸(バルプロエートとして示される)、および、GABAとバルプロ酸との等モル混合物について得られたIC50値を明らかにする棒グラフである。
【図34】図34は、ヒトU−87神経膠腫細胞の生存性に対する、増大する濃度のAN−216、AN−138、AN−148およびAN−223の影響を明らかにする比較プロットを示す。
【図35】図35は、ヒトU−251神経膠腫細胞の生存性に対する、増大する濃度のAN−216、AN−138、AN−148およびAN−223の影響を明らかにする比較プロットを示す。
【図36】図36は、ヒトのU−251神経膠腫細胞およびU−87神経膠腫細胞の生存性に対するその影響を測定しながら、AN−216、AN−138、AN−148およびAN−223について得られたIC50値を明らかにする棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明は、有機酸に共有結合的に連結された向精神性薬物の化学的コンジュゲート、その調製方法、CNSの障害および疾患、ならびに、増殖性の障害および疾患(例えば、脳腫瘍、脳転移物、末梢腫瘍、MDRガンおよび他の増殖性疾患など、これらに限定されない)の治療におけるその使用、また、化学感作剤としてのその使用に関する。
【0064】
本発明による化学的コンジュゲートの原理および操作は、図面および添付された説明を参照してより良く理解することができる。
【0065】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるまたは実施例によって例示される構成要素の配置および構造の細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施することができ、または様々な方法で実施される。また、本明細書中で用いられる表現および用語は説明のためであり、従って限定として見なされるべきではないことを理解しなければならない。
【0066】
本発明を着想しているとき、向精神性薬物(これはまた、抗増殖活性および/または化学感作活性を有し得る)と、GABAアゴニスト、鎮痛剤または抗増殖剤とを共有結合的にカップリングする化学的コンジュゲートは、大きい向精神性および/または抗増殖性の治療活性、ならびに、化学感作活性を、最小限に抑えられた有害な副作用を伴って発揮し得ることが仮定された。
【0067】
この仮説に対する基礎となる根拠は下記の通りである:CNSの障害または疾患は数タイプの向精神性薬物によって治療可能である。しかしながら、そのような向精神性薬物の投与は、典型的には、短期間および長期間の有害な副作用が伴い、また、さらには、不良な薬物動態学によってしばしば制限される。これらの有害な副作用の発症は、多くの場合、脳内のドーパミン作動性のD1受容体およびD2受容体における誘導された不均衡、ならびに、脳におけるGABA系の低下した活性に起因すると考えられる。
【0068】
従って、向精神性薬物をGABAアゴニストと共有結合的にカップリングすることにより、最小限に抑えられた副作用とともに、改善された向精神活性を発揮する化学的コンジュゲートがもたらされることが仮定された。
【0069】
具体的には、向精神性薬物とGABAアゴニストとのそのようなカップリングは、向精神活性およびGABAにより増大した活性を同時に発揮する化合物をもたらすので、この点で非常に有益であることが推定された。
【0070】
GABA系活性の増大は、現在、鎮痛剤、GABAアゴニストまたはGABA様化合物の投与によって達成されるが、向精神性薬物により誘導される副作用を軽減し、かつ、GABA系に関連づけられる他の治療的利益(例えば、精神安定化および緩和)をさらに提供することが知られている。GABAアゴニストはさらに、向精神性薬物により誘導されるドーパミン作動性受容体の増大した感受性を中和することが知られている。しかしながら、ある種のGABAアゴニストおよび鎮痛剤の投与はそれらの親水性的性質によって制限される。
【0071】
従って、向精神性薬物およびGABAアゴニストを共有結合的にカップリングすることによって得られる化学的コンジュゲートは、(i)向精神性薬物成分およびGABAアゴニスト成分の両方によって誘導される相乗的な向精神活性およびGABAにより増大する活性;(ii)低下した向精神剤誘導の副作用;(iii)その母体化合物と比較した場合、カップリングされた向精神性薬物およびGABAアゴニストの血液脳関門を越えることに関して改善された薬物動態学;および(iv)改善された向精神活性をもたらす、脳における神経伝達物質の改善されたバランスによって特徴づけられることがさらに仮定された。
【0072】
そのうえ、いくつかの向精神性薬物、特に、神経遮断薬(例えば、フェノチアジン系など)および抗痙攣剤(例えば、バルプロ酸など)は強力な抗増殖剤であることがこの分野では知られている。加えて、いくつかの向精神性薬物はさらに、化学療法薬物との組合せで使用されたとき、化学感作剤として役立ち得る。従って、向精神性薬物と、抗増殖活性を有する化学的成分とを共有結合的にカップリングする化学的コンジュゲートは、一層より大きい抗増殖活性および/または化学感作活性を発揮することがなおさらに仮定された。そのような化学的コンジュゲートは、脳内受容体に対する向精神性残基の親和性およびその改善された脳内薬物動態学のために、特に脳における増殖性の障害および疾患の治療において非常に有益であり得る。
【0073】
本発明を実施に移しているとき、下記の実施例の節においてさらに例示されるように、向精神性薬物と、その向精神性薬物により誘導される副作用を軽減し、および/または、強化された治療活性もしくは他の加わった価値をその向精神性薬物に提供するように選択された化学的成分(例えば、GABAアゴニスト)、あるいは、抗増殖活性を発揮するように選択された化学的成分とを共有結合的にカプリングすることは、(i)最小限に抑えられた有害な副作用;(ii)高い向精神活性;(iii)高い抗増殖活性;(vi)高い化学感作活性;および(v)低下した毒性(これらはすべてが、知られている向精神性薬物と比較した場合である)によって相乗的に特徴づけられる化学的コンジュゲートをもたらすことが見出された。GABAアゴニストを含む本発明の化学的コンジュゲートはさらに、相乗的な向精神活性およびGABA誘導による活性によって特徴づけられた。
【0074】
従って、本発明の化学的コンジュゲートは、抗増殖剤および/または化学感作剤として、CNSの障害および疾患ならびに増殖性の障害および疾患を治療するために本発明に従って使用される。CNSおよび/または増殖性の障害および疾患を本発明に従って治療するために使用される化学的コンジュゲートのそれぞれが、第2の化学的成分に共有結合的に連結される第1の化学的成分を含む。第1の化学的成分は向精神性薬物残基であり、これに対して、第2の化学的成分は、向精神性薬物がそれ自体で投与されたときの向精神性薬物により誘導される副作用を軽減し、および/または、向精神性薬物の治療活性を増強し、および/または、抗増殖活性を発揮するように選択される有機酸である。
【0075】
本明細書中で使用される用語「化学的成分」は、化学的化合物に由来する残基で、その機能性を保持する残基を示す。
【0076】
用語「残基」は、本明細書中では、この分野で広く受け入れられているように、別の分子に共有結合的に連結される分子の主要な部分を示す。
【0077】
従って、表現「向精神性薬物残基」は、別の化学的成分(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)に共有結合的に連結される向精神性薬物の主要な部分を示す。
【0078】
本明細書中上記で記載されるように、表現「向精神性薬物」は、中枢神経系において活性を発揮し、かつ、それにより、中枢神経系の様々な疾患または障害の治療において使用することができる任意の作用剤または薬物を包含する。
【0079】
第2の成分がGABAアゴニストまたは抗増殖剤である場合、本明細書中で使用される表現「向精神性薬物」は、抗精神病薬を除いて、本明細書中に記載されるような作用剤または薬物のいずれをも包含する。
【0080】
第2の成分が鎮痛剤残基である場合、表現「向精神性薬物」は、本明細書中で定義されるような作用剤または薬物のいずれをも包含する。
【0081】
従って、向精神性薬物残基には、本発明によれば、例えば、不安緩解薬(例えば、ベンゾジアゼピン系など、これに限定されない)に由来する残基、抗精神病薬(例えば、フェノチアジン系およびブチロフェノン系、MAO阻害剤、抗うつ剤、抗痙攣性薬物(これはまた本明細書中およびこの分野では抗痙攣剤と呼ばれる)、抗パーキンソン症候群薬、ならびに、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤など、これらに限定されない)に由来する残基が含まれる。向精神性薬物は、三環性、二環性または単環性であり得る。
【0082】
特に好ましい向精神性薬物は、本発明によれば、有機酸またはその反応性誘導体と反応することができるアミン基、チオール基またはヒドロキシル基(これらの用語は本明細書中下記で定義される通りである)を有するものである。そのような基は、遊離官能基または別の官能基(例えば、アミド基およびカルボン酸基など)の一部(これらの用語は本明細書中下記で定義される通りである)のいずれかとして向精神性薬物に存在させることができる。
【0083】
そのような向精神性薬物残基の残基の代表的な例には、限定されないが、定型抗精神病剤および非定型抗精神病剤の残基、例えば、クロルプロマジン残基、ペルフェナジン残基、フルフェナジン残基、ズクロペンチキソール残基、チオプロパザート残基、ハロペリドール残基、ベンペリドール残基、ブロムペリドール残基、ドロペリドール残基、スピペロン残基、ピモジド残基、ピペラセタジン残基、アミルスルプリド残基、スルピリド残基、クロチアピン残基、ジプラシドン残基、レモキシプリド残基、スルトプリド残基、アリザプリド残基、ネモナプリド残基、クロザピン残基、オランザピン残基、ジプラシドン残基、セルチンドール残基、クエチアピン残基、アセトフェナジン残基、カルフェナジン残基、ジキシラジン残基、ピリシアジン残基、ピポチアジン残基、ホモフェナジン残基、ペリメタジン残基、ペルチペンチル残基、フルペンチキソール残基、ピフルチキソール残基、テフルチキソール残基、オキシペテピン残基、トリフルペリドール残基およびペンフルリドール残基などが含まれる。
【0084】
そのような向精神性薬物残基のさらなる代表的な例には、限定されないが、抗うつ剤の残基、例えば、フルオキセチン残基、フルボキサミン残基、デシプラミン残基、パロキセチン残基、セルトラリン残基、メクロベミド残基、ノルクロミプラミン残基、アモキサピン残基、ノルトリプチリン残基、プロトリプチリン残基、レボキセチン残基およびズロキセチン残基など;抗痙攣剤の残基、例えば、バルプロ酸残基、フェノバルビタール残基およびフェニトイン残基など;不安緩解剤の残基、例えば、テマザゼパム残基、フルテマゼパム残基、ドキセファゼパム残基、オキサゼパム残基、ロラゼパム残基、ロルメタゼパム残基、シノラゼパム残基、フルタゾラム残基、ロピラゼパム残基、メプロバマート残基、カリソプロドール残基など;抗パーキンソン症候群剤の残基、例えば、ラサギリン残基およびアマンタジン残基など;および、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の残基、例えば、タクリン残基などが含まれる。
【0085】
本発明の好ましい実施形態によれば、向精神性薬物残基はさらに抗増殖活性を発揮する。そのような二重活性の向精神性薬物には、例えば、フェノチアジン系およびその誘導体、ならびに、抗痙攣剤、例えば、バルプロ酸およびその誘導体などが含まれる。
【0086】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、向精神性薬物残基はさらに化学感作活性を発揮する。そのような二重活性の向精神性薬物には、例えば、フェノチアジン系およびその誘導体、チオキサンテン系およびその誘導体、クロザピン、クロミプラミンおよびパロキセチンが含まれる。
【0087】
本明細書中で使用される用語「化学感作」は、化学感作作用剤の非存在下で化学療法剤により発揮される細胞毒性のレベルと比較されるとき、化学感作作用剤の存在下でのガン細胞(特に、多剤耐性ガン細胞)に対する化学療法剤の測定された細胞毒性の増大または強化を意味する。
【0088】
用語「化学感作作用剤」および用語「化学感作剤」(これらは本明細書中では交換可能に使用される)は、ガン細胞を化学療法に対してより感受性にする化合物を記載する。
【0089】
本明細書中上記で述べられたように、向精神性薬物残基は、本発明によれば、有機酸残基である第2の化学的成分に共有結合的にカップリングされる。
【0090】
表現「有機酸残基」は、遊離カルボン酸基を含む、有機酸に由来する本明細書中で定義されるような残基を示す。
【0091】
用語「遊離カルボン酸基」は、そのまま、そのプロトン化状態、または、そのイオン化状態もしくは塩状態のいずれかで「−C(=O)OH」基を包含する。
【0092】
有機酸残基は、本発明によれば、向精神性薬物が単独で投与されたならば、向精神性薬物により誘導され得る副作用を軽減するように、および/または、向精神性薬物の治療活性を強化するように、および/または、さらなる加わった価値を向精神性薬物に提供する(例えば、GABA活性を増大する)ように、および/または、抗増殖活性を発揮するように選択される。有機酸残基は、本発明によれば、一般式−R−C(=O)−(式中、Rは、例えば、1個〜20個の炭素原子を有する炭化水素残基であり得る)を有する残基であり得る。
【0093】
本明細書中で使用される用語「炭化水素」は、共有結合的に連結される炭素原子および水素原子からなる鎖をその基本骨格として含む有機化合物を示す。
【0094】
従って、本発明による炭化水素残基はアルキルまたはシクロアルキルであり得る。
【0095】
本明細書中で使用される用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を示す。好ましくは、アルキル基は1個〜20個の炭素原子を有する。
【0096】
数値範囲、例えば「1個〜20個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの20個までの炭素原子を含むということを意味する。さらに好ましくは、アルキル基は、1個〜10個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルである。最も好ましくは、アルキルは3個〜5個の炭素原子を有する。
【0097】
本明細書中で使用される用語「シクロアルキル」基は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有しない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を含む。シクロアルキル基の非限定な例は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエンおよびアダマンタンを含む。
【0098】
本発明によれば、炭化水素残基は直鎖構造または枝分かれ構造であり得る。炭化水素残基はさらに飽和または非飽和であり得る。非飽和であるとき、炭化水素残基はその炭素鎖に二重結合または三重結合を含むことができる。非飽和の炭化水素残基はアリールをさらに含むことができる。
【0099】
本明細書中で使用されるように、「アリール」基は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。アリール基の非限定的な例は、フェニル、ナフタレニルおよびアントラセニルを含む。
【0100】
炭化水素残基はさらに置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えばアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、シアノ、ハロ、オキソ、アミドおよびアミノであり得る。
【0101】
「ヘテロアリール」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有し、さらには完全共役のπ電子系を有する単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが含まれる。ヘテロアルキル基は置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えばアルキル、シクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、シアノ、ハロ、オキソ、アミドおよびアミノであり得る。
【0102】
「複素脂環」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有する単環基または縮合環基を示す。環はまた、1つまたは複数の二重結合を有することができる。しかしながら、環は完全共役のπ電子系を有しない。複素脂環基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えばアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、シアノ、オキソ、アミドおよびアミノであり得る。
【0103】
「ヒドロキシ」基は−OH基を示す。
【0104】
「アルコキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−O−アルキル基および−O−シクロアルキル基の両方を示す。
【0105】
「アリールオキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−O−アリール基および−O−ヘテロアリール基の両方を示す。
【0106】
「オキソ」基は−C(=O)−R′基を示し、ここでR′は例えば、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり得る。
【0107】
「ハロ」基は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示す。
【0108】
「トリハロメチル」基は、本明細書中で定義されるように、−CX3−基を示し、ここでXはハロ基である。
【0109】
「アミノ」または「アミン」基は−NH2基を示す。
【0110】
「アミド」基は−C(=O)−NRaRb基を示し、ここでRaおよびRbは、例えば、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールであり得る。
【0111】
有機酸残基は、本発明によれば、その鎖の内部に点在させた1つまたは複数のヘテロ原子をさらに含むことができる。ヘテロ原子は、例えば、酸素、窒素および/またはイオウが可能である。
【0112】
炭化水素残基はさらに、一般式−Z−C(=O)O−CHR2−R3−(式中、Zは、例えば、単結合、あるいは、本明細書中上記で記載されたような置換または非置換の炭化水素残基であり得る;R2は、例えば、水素、または、1個〜10個の炭素原子を有するアルキル基であり得る;R3は、例えば、水素、または、本明細書中上記で定義されるような炭化水素残基であり得る)を有する残基が可能である。
【0113】
従って、本発明による有機酸残基が由来し得る有機酸の代表的な例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、酪酸、4−フェニル酪酸、4−アミノ酪酸(GABA)、吉草酸、プロピオン酸、レチノイン酸、アセチルサリチル酸およびイブプロフェンが含まれる。
【0114】
本発明の現時点で最も好ましい実施形態によれば、化学的コンジュゲートの第2の化学的成分はGABAアゴニスト残基である。
【0115】
本明細書中で使用される表現「GABAアゴニスト残基」は、GABAアゴニストの、(この用語が本明細書中上記で定義されるような)残基を示し、一方、用語「GABAアゴニスト」は、脳におけるGABA系を活性化することができ、従って、GABAに薬理学的に関連づけられる化合物を記載する。用語「GABAアゴニスト」は、従って、GABA自体を包含することが理解され、これに対して、用語「GABAアゴニスト残基」は、従って、GABAアゴニスト自体の残基を包含することが理解される。
【0116】
従って、GABAアゴニスト残基には、本発明によれば、GABA(γ−アミノ酪酸)残基自体に加えて、向精神性薬物に対して共有結合的にカップリングすることができる他のGABAアゴニストの残基が含まれる。
【0117】
そのようなGABAアゴニスト残基の例には、(±)バクロフェン残基、イソニペコチン酸残基、γ−ヒドロキシ酪酸残基、アミノオキシ酢酸残基、β−(4−クロロフェニル)−γ−アミノ酪酸残基、ピペリジン−4−スルホン酸残基、3−アミノプロピル亜ホスホン酸残基、3−アミノプロピルホスフィン酸残基、3−(アミノプロピル)メチルホスフィン酸残基、1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸残基(ガバペンチン)、4−アミノ−5−ヘキセン酸(γ−ビニルGABA、ビガバトリン)残基、および3−(2−イミダゾリル)−4−アミノブタン酸残基が含まれる。
【0118】
本発明の別の現在好ましい実施形態によれば、本発明の化学的コンジュゲートにおける第2の化学的成分は抗増殖剤残基である。
【0119】
本明細書中で使用される用語「抗増殖剤残基」は、抗増殖活性によって特徴づけられる化合物の本明細書中で定義されるような残基を示す。
【0120】
本発明の好ましい実施形態によれば、抗増殖剤は酪酸または4−フェニル酪酸である。これらの化合物は、抗ガン活性を発揮することが知られており、また、GABAがその誘導体である化合物としてさらに特徴づけられ、従って、GABAミメティック剤としてさらに作用し得る。
【0121】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、本発明の化学的コンジュゲートにおける第2の化学的成分は鎮痛剤である。
【0122】
鎮痛剤を本発明の化学的コンジュゲートに取り込むことによりまた、二重の薬理学的活性、すなわち、向精神活性および痛み緩和が提供され得る。さらに、現在知られている鎮痛剤は、典型的には、その全身投与にしばしば伴う多くの欠点、例えば、不良な薬物動態学および有害な副作用(例えば、著しい痙攣作用)などを受ける。従って、鎮痛剤と向精神性薬剤とのコンジュゲート化はそれらの薬物動態学を改善し、かつ、これらの副作用を軽減する。そのうえ、いくつかの鎮痛剤がGABA活性を伴うことがこの分野では広く受け入れている。
【0123】
本発明の関連での使用のために好適である鎮痛剤の代表的な例には、限定されないが、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えば、アスピリン、イブプロフェン、フェンプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、ジクロフェナク、ジフルニサール、スリンダク、および、遊離カルボン酸基またはカルボン酸誘導体を有する任意の他のNSAIDが含まれる。好適な鎮痛剤のさらなる例には、そのような遊離カルボン酸基またはカルボン酸誘導体を有する他の非麻薬性鎮痛剤が含まれる。
【0124】
従って、本発明の化学的コンジュゲートの第2の化学的成分には、有機酸残基(これは好ましくはGABAアゴニスト残基である)、鎮痛剤残基および/または抗増殖剤残基が含まれる(これらの用語は本明細書中上記で定義および例示される通りである)。
【0125】
本発明の化学的コンジュゲートにおける第2の化学的成分は、好ましくはエステル結合を介して第1の化学的成分に共有結合的に連結される。エステル結合は、カルボン酸エステル結合、オキシアルキルカルボン酸エステル結合、アミド結合またはチオエステル結合が可能である。
【0126】
本明細書中で使用される表現「カルボン酸エステル結合」は「−O−C(=O)−」結合を含む。
【0127】
本明細書中で使用される表現「オキシアルキルカルボン酸エステル結合」は「O−R−−O−C(=O)−」結合(式中、Rは本明細書中上記で定義されるようなアルキルである)を含む。好ましくは、Rはメチルである。
【0128】
表現「アミド結合」は「−NH−C(=O)−」結合を含む。
【0129】
表現「チオエステル結合」は「−SH−C(=O)−」結合を含む。
【0130】
そのようなエステル結合は、脳由来酵素(例えば、エステラーゼおよびアミダーゼなど)により加水分解可能であることが知られており、従って、本発明の化学的コンジュゲートが、脳において代謝され、かつ、それにより、向精神性薬物および有機酸を同時に放出し、従って、向精神性薬物および有機酸についての好都合な同時薬物動態学を提供するプロドラッグとして作用することが推定され、また、本明細書中に記載される実験結果(例えば、図5a〜図5bを参照のこと)によってさらに明らかにされる。
【0131】
このプロセスは、(i)向精神性薬物および有機酸の同時作用、これは、薬物により誘導される低下した副作用、および、両方の成分の二重の活性を相乗的にもたらす;(ii)ドーパミン作動性受容体に対するプロドラッグのより高い親和性、これは、相乗的により高い向精神活性、および、脳の増殖性障害に対する相乗的により高い抗増殖活性をもたらす;および(iii)両方の化学的成分の改善された脳透過性をもたらすので、非常に好都合である。
【0132】
あるいは、本発明の化学的コンジュゲートにおける第2の化学的成分は、イミン結合を介して第1の化学的成分に共有結合的に連結される。
【0133】
本明細書中で使用される用語「イミン結合」は−C=NH−結合を記載する。イミン結合はまた、「シッフ塩基」としてこの分野では知られている。
【0134】
別の局面において、本発明はさらに、本明細書中上記で記載された化学的コンジュゲートを合成する方法を提供する。この方法は、一般には、向精神性薬物の残基に共有結合的に連結された有機酸の残基を得るように、有機酸を向精神性薬物と反応することによって行われる。
【0135】
本明細書中、用語「有機酸の残基」および用語「向精神性薬物の残基」は用語「有機酸残基」および用語「向精神性薬物残基」とそれぞれ等価である(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)。有機酸および向精神性薬物を反応させ、それにより、それらの間に共有結合による連結を形成することによって、有機酸および向精神性薬物の残基を含む最終的な生成物が作製されることが当業者には明らかであるはずである。
【0136】
本明細書中、本発明のこの局面の方法に従って反応させられる有機酸には、本明細書中上記で記載された有機酸残基に対応する任意の化合物が含まれ、従って、本明細書中上記で記載された有機酸残基が由来する有機酸のすべてが含まれ得る。
【0137】
例えば、本発明のこの局面に関連して使用可能である有機酸には、本明細書中上記で記載された好ましいGABAアゴニスト残基に対応するGABAアゴニストが含まれる。同様に、有機酸には、本明細書中上記で記載された抗増殖剤に対応する、酪酸および4−フェニル酪酸などの抗増殖剤が含まれ得る。
【0138】
同じように、本発明のこの局面による方法において反応させられる向精神性薬物は、本明細書中上記で記載された向精神性薬物残基のいずれかに対応する。
【0139】
本発明の化学的コンジュゲートを合成する本明細書中上記で記載された方法は、使用された有機酸のタイプ、および/または、有機酸残基と向精神性薬物残基との間での共有結合による連結のタイプに従ってさらに操作することができる。
【0140】
本明細書中上記で詳しく議論されるように、本発明による好ましい有機酸には、例えば、抗増殖剤(例えば、酪酸およびその誘導体など)、一般式R−C(=O)−OH(これは有機酸残基R−C(C=O)−Oに対応する)を有する有機酸などが含まれる。これらの好ましい有機酸のほとんどが遊離アミノ基を含まず、従って、それらは、さらなる操作を用いることなく、本発明の合成において使用することができる。
【0141】
本明細書中上記で詳しくさらに議論されるように、本発明の化学的コンジュゲートにおいて、有機酸残基および向精神性薬物残基は、カルボン酸エステル結合、アルキルオキシカルボン酸エステル結合、チオエステル結合、イミン結合またはアミド結合(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)のいずれかであり得る結合によって共有結合的に連結される。
【0142】
残基がカルボン酸エステル結合を介して共有結合的に連結される場合、本発明の化学的コンジュゲートを合成する方法は、好ましくは、最初に、有機酸を活性化するように、有機酸をその対応するアシルクロリド誘導体または任意の他のアシルハリド誘導体に変換することによって行われる。アシルクロリド誘導体は、その後、カルボン酸エステル結合を介して向精神性薬物残基に共有結合的に連結された有機酸残基を有する所望の化学的コンジュゲートを得るように、広く知られている求核付加反応で、遊離ヒドロキシル基を典型的には含む向精神性薬物と反応させられる。この反応は、好ましくは、向精神性薬物を活性化し、および/または、その塩酸塩として存在する化合物を中和するように塩基性条件下で行われる。しかしながら、有機酸および/または向精神性薬物は他の任意の知られている方法によって活性化することができる。
【0143】
残基がチオエステル結合を介して共有結合的に連結される場合、本発明の化学的コンジュゲートを合成する方法は、好ましくは、向精神性薬物をその対応するチオール誘導体に変換すること、および、有機酸をその対応するアシルクロリド誘導体またはその任意の他の活性化された誘導体に変換することによって行われる。チオール誘導体は、その後、チオエステル結合を介して向精神性薬物残基に共有結合的に連結された有機酸残基を有する所望の化学的コンジュゲートを得るように、広く知られている手順によって、活性化された有機酸と反応させられる。現在知られている向精神性薬物のいくつかは遊離チオール基を含み、従って、そのような薬物は有機酸のアシルクロリド誘導体と直接に反応させることができることに留意しなければならない。遊離チオール基を含まない向精神性薬物は、この分野で広く知られている方法によって、そのチオール誘導体を得るように容易に反応することができる。
【0144】
残基がアミド結合を介して共有結合的に連結される場合、本発明の化学的コンジュゲートを合成する方法は、好ましくは、最初に、有機酸を活性化するように、有機酸をその対応するアシルクロリド誘導体に変換すること、および、さらに、向精神性薬物をそのアミン誘導体に変換することによって行われる。アシルクロリド誘導体は、その後、アミド結合を介して向精神性薬物残基に共有結合的に連結された有機酸残基を有する所望の化学的コンジュゲートを得るように、広く知られている求核付加反応で、または、アミド結合を生じさせるための知られている手順の任意の他の手順によって向精神性薬物のアミノ基と反応させられる。現在知られている向精神性薬物のいくつかは遊離アミン基を含み、従って、そのような薬物は有機酸のアシルクロリド誘導体と直接に反応させることができることに留意しなければならない。遊離アミン基を含まない向精神性薬物は、この分野で広く知られている方法によって、そのアミン誘導体を得るように容易に反応することができる。
【0145】
残基がイミン結合を介して共有結合的に連結される場合、本発明の化学的コンジュゲートを合成する方法は、好ましくは、最初に、有機酸を活性化するように、有機酸をその対応するアルデヒド誘導体に変換すること、および、さらに、向精神性薬物をそのアミン誘導体に変換することによって行われる。アルデヒド誘導体は、その後、イミン結合を介して向精神性薬物残基に共有結合的に連結された有機酸残基を有する所望の化学的コンジュゲートを得るように、広く知られている付加−脱離反応で、または、イミン結合を生じさせるための知られている手順の任意の他の手順によって向精神性薬物のアミノ基と反応させられる。現在知られている向精神性薬物のいくつかは遊離アミン基を含み、従って、そのような薬物は有機酸のアルデヒド誘導体と直接に反応させることができることに留意しなければならない。遊離アミン基を含まない向精神性薬物は、この分野で広く知られている方法によって、そのアミン誘導体を得るように容易に反応することができる。
【0146】
残基がアルキルオキシカルボン酸エステル結合を介して共有結合的に連結される場合、本発明の化学的コンジュゲートを合成する方法は、好ましくは、向精神性薬物をそのクロロアルキルエステル誘導体(好ましくは、そのクロロメチルエステル誘導体)に変換することによって行われる。クロロメチルエステル誘導体は、その後、アルキルオキシカルボン酸エステル結合を介して向精神性薬物残基に共有結合的に連結された有機酸残基を有する所望の化学的コンジュゲートを得るように、広く知られている求核付加反応で、または、アルキルオキシカルボン酸エステル結合を生じさせるための知られている手順の任意の他の手順によって有機酸と反応させられる。有機酸および向精神性薬物を、アルキルオキシカルボン酸エステル結合を介して共有結合的に連結することは、典型的に不安定な無水物コンジュゲートの形成が避けられるので、向精神性薬物が遊離カルボン酸基を含む場合には特に好ましいことに留意しなければならない。
【0147】
上記で記載された方法は、典型的には、有機酸が遊離アミノ基を有しないときに効果的である。しかしながら、有機酸が遊離アミノ基を含む場合、例えば、GABAアゴニストの場合はそうであるように、アミノ基を、向精神性薬物との記載された反応の期間中において保護しなければならない。遊離アミノ基は比較的化学的に活性な基であり、従って、反応に望ましくないほどに加わり得るので、遊離アミノ基を保護することが要求される。
【0148】
従って、遊離アミノ基を有するGABAアゴニスト残基を含む化学的コンジュゲートを合成する好ましい方法は、好ましくは、最初に遊離アミノ基を保護することによって行われる。そのようなアミノ基を保護することは、有機酸を知られている保護基(例えば、tert−ブトキシカルボニル(Boc)およびベンジルオキシカルボニル(Cbz)など)と反応することによって行うことができる。アミノ保護された有機酸が、その後、向精神性薬物残基に共有結合的に連結されたアミノ保護の有機酸を得るように、向精神性薬物と反応させられる。その後、保護基が除かれる。さらに好ましくは、アミノ保護された有機酸は、有機酸を向精神性薬物との反応の前に活性化するように、そのアシルイミダゾール誘導体に変換される。
【0149】
さらに、本発明によれば、本発明の化学的コンジュゲートを有効成分として含む医薬組成物が提供される。
【0150】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される化学的コンジュゲートの1つまたは複数と、他の化学的成分(例えば、医薬的に好適なキャリアおよび賦形剤)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、対象に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0151】
以降、用語「医薬的に許容され得るキャリア」は、対象に対する著しい刺激を生じさせず、かつ、投与された調合物の生物学的活性および生物学的性質を阻害しないキャリアまたは希釈剤を示す。キャリアの非限定的な例には、プロピレングリコール、生理食塩水、有機溶媒と水の混合物およびエマルジョンがある。
【0152】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0153】
本発明の好ましい実施形態によれば、医薬用キャリアは乳酸の水溶液である。
【0154】
この関連において、本発明の化学的コンジュゲートのいくつかは、好ましい実施形態によれば、水性媒体において容易に可溶性であり、従って、容易に配合されることを指摘しなければならない。そのような好都合な配合は、長鎖脂肪酸を典型的には含み、従って、水性媒体に不溶性であり、油状の配合物として投与される、向精神性薬物の知られているエステルコンジュゲートを上回る、本発明の化学的コンジュゲートのさらなる利点を提供する。
【0155】
薬物の配合および投与のための様々な技術が“Remington’s Pharmaceutical Sciences”(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)(これは参考として本明細書中に組み込まれる)に見出され得る。
【0156】
好適な投与経路には、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、経皮送達、腸管送達または非経口送達(これには、筋肉内注射、皮下注射および髄内注射、ならびに、クモ膜下注射、直接的な脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻内注射または眼内注射が含まれる)が含まれ得る。本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られている様々なプロセスによって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来のプロセスによって製造することができる。
【0157】
本発明に従って使用するための医薬組成物は活性な化合物を医薬として使用可能な製剤にする加工を容易にする賦形剤及び補助剤を含む一つ以上の医薬的に許容され得るキャリアを使用して従来のように配合されてもよい。適切な配合は選択された投与経路に依存する。
【0158】
注射の場合、本発明の化学的コンジュゲートは、水溶液において、好ましくは生理学的に適合し得る、緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な食塩水緩衝液など)であって、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールの如き有機溶媒を含むまたは含まない緩衝液において配合することができる。経粘膜投与の場合、浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0159】
経口投与の場合、化学的コンジュゲートは、活性な化合物を、この分野で十分に知られている薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせることによって容易に配合することができる。そのようなキャリアにより、本発明のコンジュゲートは、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤、懸濁物などとして配合することが可能になる。経口使用される薬学的調製物は、錠剤または糖衣錠コアを得るために、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、そして所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤は、具体的には、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に受容可能なポリマーである。所望する場合には、架橋型ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
【0160】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料が、活性な化合物の量を明らかにするために、または活性な化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加され得る。
【0161】
経口使用され得る医薬組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟密閉カプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(ラクトースなど)、結合剤(デンプンなど)、滑剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤と混合された有効成分を含有し得る。軟カプセルでは、活性な化合物を好適な液体(脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。さらに、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路に好適な投薬形態でなければならない。
【0162】
口内投与の場合、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0163】
鼻腔吸入による投与の場合、本発明に従って使用される化学的コンジュゲートは、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。吸入器または吹き入れ器で使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジで、化合物と好適な粉末基剤(ラクトースまたはデンプンなど)との粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジを配合することができる。
【0164】
本明細書で記述される化学的コンジュゲートは非経口投与、例えばボーラス注射または連続点滴のために配合されることができる。注射のための配合は、単位用量形態(例えばアンプルまたは多用量コンテナ)で提供されることができ、これらには所望により保存剤が添加されている。組成物は懸濁物、溶液または油性もしくは水性ビヒクル中のエマルションであることができ、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤の如き配合剤を含むことができる。
【0165】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態における活性な化合物の水溶液が含まれる。さらに、活性な化合物の懸濁物を、適切なオイル状のまたは水ベースの注射用懸濁物として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油(ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有し得る。場合により、懸濁物はまた、高濃度の溶液の調製を可能にするためにコンジュゲートの溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有し得る。
【0166】
あるいは、有効成分は、使用前に好適なビヒクル(例えば、滅菌されたパイロジェン非含有水)を用いて構成される粉末形態にする。
【0167】
本発明の化学的コンジュゲートはまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合することができる。
【0168】
本明細書中に記載される医薬組成物はまた、固相またはゲル相の好適なキャリアまたは賦形剤を含むことができる。そのようなキャリアまたは賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチンおよびポリマー(例えば、ポリエチレングリコールなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0169】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物には、有効成分が、意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療効果がある量は、処置されている対象の疾患の症状を防止、軽減または改善するために、あるいは、処置されている対象の生存を延ばすために効果的な化学的コンジュゲートの量を意味する。
【0170】
治療効果がある量の決定は十分に当業者の範囲内であり、特に本願明細書で与えられる詳細な開示に鑑みればそうである。
【0171】
本発明の方法に使用される化学的コンジュゲートに対して、治療的に有効な量又は用量は最初に細胞培養および/または動物における活性アッセイから推定されることができる。例えば、活性アッセイによって測定されるようなIC50を含む循環濃度範囲(例えば増殖活性の半最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を達成するために、用量は動物モデルで配合されることができ、かかる情報は人間に有用な用量をより正確に決定するために使用されることができる。
【0172】
本明細書中に記載される化学的コンジュゲートの毒性および治療効力は、実験動物における標準的な薬学的手法によって、例えば対象化合物についてIC50およびLD50(試験された動物の50%の死を生ずる致死量)を測定することによって明らかにすることができる。これらの活性アッセイおよび細胞培養アッセイならびに動物研究から得られたデータは、ヒトへの使用のための投薬量範囲を定める際に使用することができる。
【0173】
投薬量は、用いられる投薬形態物および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(例えば、Fingl他、1975、“The Pharmacological Basis of Therapeutics”(第1章、1頁)を参照のこと)。
【0174】
投薬量および投薬間隔を、向精神作用および/または抗増殖作用を維持するために十分である活性な成分の血漿中レベル(これは最小有効濃度(MEC)と呼ばれる)を提供するために個々に調節することができる。MECはそれぞれの調製物について変化するが、インビトロデータおよび/またはインビボデータから推定することができ、例えば、特定の細胞の増殖の50%〜90%の阻害を達成するために必要な濃度を、本明細書中に記載されるアッセイを使用して求めることができる。MECを達成するために必要な投薬量は個々の特性および投与経路に依存する。HPLCアッセイまたはバイオアッセイを使用して、血漿中濃度を求めることができる。
【0175】
投薬間隔もまた、MEC値を使用して決定することができる。調製物は、時間の10%〜90%について、好ましくは30%〜90%の間、最も好ましくは50%〜90%の間、MECを越える血漿中レベルを維持する治療法を使用して投与されなければならない。
【0176】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は上述の徐放性組成物の単回投与であることも可能であり、処置の経過が、数日から数週間まで、あるいは、治癒が達成されるまで、または、疾患状態の縮小が達成されるまで続く。
【0177】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている対象、苦痛の重篤度、投与様式、主治医の判断などに依存する。
【0178】
本発明の組成物は、所望される場合には、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔を含むことができ、例えば、ブリスターパックなどである。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が添付され得る。パックまたはディスペンサーにはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局により定められた形式で容器に付けられた通知が伴うことがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態またはヒトもしくは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物についての米国食品医薬品局により承認されたラベル書きであり得るか、または承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用キャリアに配合された本発明の化学的コンジュゲートを含む組成物はまた、適応される状態を治療するために、調製され、適切な容器に入れられ、かつ表示され得る。ラベルに示される好適な状態には、例えば、向精神性の疾患または障害(例えば、統合失調症、偏執症、児童精神病、ハンチングトン病、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、うつ病、躁うつ病、不安、パーキンソン病、アルツハイマー病およびてんかん、脳の増殖性障害およびMDRガンなど)、および、化学感作(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)を含まれ得る。
【0179】
従って、本発明の好ましい実施形態によれば、医薬組成物は包装物に包装され、下記の使用の1つまたは複数のために包装物上または包装物内において活字で特定される:CNSの障害または疾患の治療における使用のために、脳または末梢の増殖性障害または増殖性疾患の治療における使用のために、ガン(MDRガンなど)の治療における使用のために、また、化学療法剤との組合せでの、および/または、化学感作が有益である医学的状態での化学感作における使用のために。
【0180】
さらに、本発明によれば、対象(例えば、ヒト)におけるCNSの障害または疾患を治療または防止するための方法が提供される。この方法は、治療有効量の本発明の化学的コンジュゲートの1つまたは複数を治療される対象に投与することによって行われる。
【0181】
本明細書中で使用される用語「方法」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0182】
従って、用語「治療する」は、疾患の進行を妨げること、実質的に阻害すること、遅くすること、または逆戻りさせること、あるいは、疾患の臨床的症状を実質的に緩和すること、あるいは、疾患の臨床的症状の出現を実質的に防止することを包含する。
【0183】
本明細書中で使用される表現「CNSの障害または疾患」は、中枢神経系(CNS)における障害(例えば、神経学的障害)によって特徴づけられる障害または疾患を示す。本発明の化学的コンジュゲートを使用して治療可能であるCNSの障害および疾患の例には、限定されないが、精神病的な障害または疾患、不安障害、解離型障害、人格障害、気分障害、情動障害、神経変性性の疾患または障害、痙攣性障害、境界性障害、および、精神的な疾患または障害が含まれる。
【0184】
CNSのそのような障害または疾患の代表的な例には、限定されないが、統合失調症、偏執症、児童精神病、ハンチングトン病、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、うつ病、躁うつ病、不安、パーキンソン病、アルツハイマー病およびてんかんが含まれる。
【0185】
本明細書中で使用される用語「投与する」は、本発明の化学的コンジュゲートを、向精神性の障害または疾患により冒されている脳内の領域または部位にもたらすための方法を示す。
【0186】
本発明の化学的コンジュゲートは腹腔内投与することができる。より好ましくは、本発明の化学的コンジュゲートは経口投与される。
【0187】
用語「対象」は、ヒトを含む、血液脳関門を有する動物(典型的には、哺乳動物)を示す。
【0188】
用語「治療有効量」は、治療されているCNSの障害または疾患の症状の1つまたは複数をある程度緩和する投与されている化学的コンジュゲートのそのような量を示す。
【0189】
本発明のこの方法による治療有効量は、好ましくは、0.5mg/kg体重〜50mg/kg体重の範囲であり、より好ましくは、0.5mg/kg体重〜30mg/kg体重の範囲であり、より好ましくは、0.5mg/kg体重〜20mg/kg体重の範囲であり、最も好ましくは、1mg/kg体重〜10mg/kg体重の範囲である。
【0190】
このように、本発明は、向精神活性を発揮する化学的コンジュゲートに関する。本発明の化学的コンジュゲートは、強化された治療活性を発揮し、かつ、最小限に抑えられた、それにより誘導される有害な副作用によってさらに特徴づけられるので非常に好都合である。
【0191】
本明細書中で使用される表現「副作用」は、ある種の薬物、具体的には、向精神性薬物を対象に投与することの結果として発症し得る有害な症状を示す。
【0192】
本明細書中で使用される表現「強化された治療活性」は、コンジュゲートを形成する向精神性薬剤および/または有機酸の、それ自体で投与されたときの向精神活性または抗増殖活性よりも大きい、本発明のコンジュゲートの向精神活性または抗増殖活性(これらの表現は本明細書中で定義される通りである)を記載する。下記の実施例の節において明らかにされるように、そのような強化された治療活性は、典型的には、コンジュゲート化されていない向精神性薬剤および/または有機酸の効果的な濃度と比較した場合、特定の治療活性を達成するために要求される薬物の低下した効果的な濃度によって特徴づけられる。
【0193】
本明細書中で使用される表現「強化された治療活性」はさらに、さらなる治療活性、従って、付加された治療的価値、例えば、GABA活性の増大、痛みの緩和などが伴う、本発明のコンジュゲートによって発揮される向精神活性および/または抗増殖活性を記載する。何らかの特定の理論に拘束されることはないが、本発明の化学的コンジュゲートの強化された治療活性は、少なくとも部分的には、脳における神経伝達物質の改善されたバランスから生じることが推定される。
【0194】
本明細書中で使用される表現「向精神活性」は、CNSに関連した障害を治療することを目指す、CNSにおいて発揮される薬理学的活性を記載する。そのような薬理学的活性には、典型的には、ニューロンのシグナル伝達の調節が含まれる。
【0195】
さらに、本発明によれば、対象(例えば、ヒト)における増殖性の障害または疾患を治療または防止するための方法が提供される。この方法は、治療有効量の本発明の化学的コンジュゲートの1つまたは複数を治療される対象に投与することによって行われる。
【0196】
本明細書中で使用される用語「増殖性の障害または疾患」は、細胞増殖によって特徴づけられる障害または疾患を示す。本発明によって防止または治療され得る細胞増殖状態には、例えば、悪性の腫瘍(例えば、ガンなど)および良性の腫瘍が含まれる。
【0197】
本明細書中で使用される用語「ガン」は、Stedman’s medical Dictionary(第25版)(Hensyl編、1990)によって定義されるように様々なタイプの悪性の新生物(そのほとんどが周りの組織に侵入することができ、また、異なる部位に転移し得る)を示す。本発明の化学的コンジュゲートによって治療され得るガンの例には、脳および皮膚のガンが含まれるが、これらに限定されない。これらのガンはさらに分類することができる。例えば、脳のガンには、多形性神経膠芽細胞腫、未分化星状膠細胞腫、星状膠細胞腫、上衣細胞腫、乏突起膠腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、肉腫、血管芽細胞腫および松果体実質が含まれる。同様に、皮膚のガンには、メラノーマおよびカポジ肉腫が含まれる。本発明の化学的コンジュゲートを使用して治療可能な他のガン性疾患には、乳頭腫、ブラストグリオーマ、卵巣ガン、前立腺ガン、扁平上皮ガン、星状膠細胞腫、頭部ガン、頸部ガン、膀胱ガン、乳ガン、肺ガン、結腸直腸ガン、甲状腺ガン、膵臓ガン、胃ガン、肝細胞ガン、白血病、リンパ腫、ホジキンリンパ腫およびバーキットリンパ腫が含まれる。
【0198】
他の非ガン性増殖性障害もまた、本発明の化学的コンジュゲートを使用して治療可能である。そのような非ガン性増殖性障害には、例えば、狭窄症、再狭窄、ステント内狭窄、血管移植片再狭窄、関節炎、リウマチ様関節炎、糖尿病網膜症、血管形成、肺線維症、肝硬変、アテローム性動脈硬化、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、血栓性細小血管障害症候群および移植拒絶が含まれる。
【0199】
下記の実施例の節において明らかにされるように、本発明の化学的コンジュゲートは、MDRガン細胞を含む広範囲の様々なガン細胞に対する大きく、かつ、強力な抗増殖活性を発揮する。
【0200】
下記の実施例の節においてさらに明らかにされるように、本発明の化学的コンジュゲートは、様々な化学療法薬物との組合せで使用されたとき、化学感作活性をさらに発揮する。
【0201】
従って、さらに、本発明によれば、化学感作の方法が提供される(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)。この方法は、治療有効量の1つまたは複数の化学療法剤と、化学感作有効量の本発明の化学的コンジュゲートとを対象に投与することによって行われる。
【0202】
本明細書中で使用される表現「化学感作有効量」は、治療量の化学療法剤の存在下での測定可能な化学感作のために十分な量を記載する。
【0203】
この方法は、対象がMDRガン(例えば、白血病、リンパ腫、ガン腫または肉腫など、これらに限定されない)を有する場合に特に有用である。本発明によれば、化学療法剤は、例えば、下記のいずれかであり得る:アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード系、エチレンイミン系およびメチルメラミン系、アルキルスルホナート系、ニトロソウレア系、ならびにトリアゼン系など;代謝拮抗剤、例えば、葉酸アナログ、ピリミジンアナログおよびプリンアナログなど;天然物、例えば、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキオシン系、抗生物質、酵素、タキサン系、および生物学的応答修飾剤など;その他の薬剤、例えば、白金配位錯体、アントラセンジオン系、アントラサイクリン系、置換ウレア、メチルヒドラジン誘導体または副腎皮質抑制剤など;あるいは、ホルモンまたはアンタゴニスト、例えば、副腎皮質ステロイド、プロゲスチン系、エストロゲン系、抗エストロゲン剤、アンドロゲン系、抗アンドロゲン剤、または、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログなど。好ましくは、化学療法剤は、ナイトロジェンマスタード系、エピポドフィロトキオシン系、抗生物質または白金配位錯体である。より好ましい化学療法剤はシスプラチンまたはビンクリスチンである。
【0204】
従って、本発明は、対応するコンジュゲート化されていない向精神性薬物よりも大きい向精神活性、実質的に低い副作用および低い毒性を発揮する、向精神性薬物の新規な化学的コンジュゲートを教示する。このような新規なコンジュゲートは、抗増殖活性および化学感作活性をさらに発揮し、従って、低下した副作用、低い毒性、および、脳細胞に対する大きい親和性によって特徴づけられるプロドラッグとして、または、化学療法薬物との組合せで使用される化学感作剤としてのいずれかで、増殖性障害の治療において有益に使用することができる。
【0205】
本発明の追加の目的、利点及び新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なおこれら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0206】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なおこれら実施例によって本発明は限定されない。
【0207】
化学合成および分析
本発明の例示的な化学的コンジュゲートを、向精神性薬剤のペルフェナジン、フルフェナジンおよびバルプロ酸を、短鎖脂肪酸のプロピオン酸、酪酸および吉草酸、ならびに/または、4−フェニル酪酸およびγ−アミノ酪酸(GABA)と反応することによって合成した。化合物は高収率で合成され、1%乳酸水溶液に可溶性である結晶性固体として単離された。
【0208】
ペルフェナジンまたはフルフェナジンおよび有機酸から調製される化学的コンジュゲートの合成−一般的手順:5ml〜10mlのジメチルホルムアミド(DMF)における、神経遮断性薬剤のペルフェナジンまたはフルフェナジン(1当量)と、短鎖脂肪酸のアシルクロリド誘導体(1.1当量)と、場合により、Et3N(2当量)(これは、そのHCl塩として見出される出発物質を遊離状態にするために使用される)との混合物を窒素雰囲気下において室温で24時間撹拌した。その後、混合物を酢酸エチルと水との間で分配した。その後、有機層を5%NaHCO3およびブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、エバポレーションして、所望する生成物を得た。
【0209】
4−フェニル酪酸ペルフェナジン(AN130)の合成:ペルフェナジンおよび4−フェニルブチルリルクロリド(4−フェニル酪酸のアシルクロリド誘導体)を上記のように反応させた。得られた粗残渣を、1:10のメタノール:酢酸エチルの混合物を溶出液として使用してシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。生成物を黄色のオイルとして得た(78%の収率)。
【0210】
酪酸ペルフェナジン(AN167)の合成:ペルフェナジンおよびブチルリルクロリド(酪酸のアシルクロリド誘導体)を上記のように反応させた。生成物が黄色のオイルとして得られ(74%の収率)、これを、さらに精製することなく使用した。
【0211】
プロピオン酸ペルフェナジン(AN177)の合成:ペルフェナジンおよびプロピオニルクロリド(プロピオン酸のアシルクロリド誘導体)を上記のように反応させた。生成物が黄色のオイルとして得られ(85%の収率)、これを、さらに精製することなく使用した。
【0212】
吉草酸ペルフェナジン(AN178)の合成:ペルフェナジンおよびバレリルクロリド(吉草酸のアシルクロリド誘導体)を上記のように反応させた。得られた粗残渣を、7:4の酢酸エチル:ヘキサンの混合物を溶出液として使用してシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。生成物を黄色がかったオイルとして得た(75%の収率)。
【0213】
プロピオン酸フルフェナジン(AN179)の合成:フルフェナジンおよびプロピオニルクロリド(プロピオン酸のアシルクロリド誘導体)を上記のように反応させた。生成物が黄色がかったオイルとして得られ(95%の収率)、これを、さらに精製することなく使用した。
【0214】
酪酸フルフェナジン(AN180)の合成:フルフェナジンおよびブチルリルクロリドを上記のように反応させた。生成物が黄色がかったオイルとして得られ(97%の収率)、これを、さらに精製することなく使用した。
【0215】
吉草酸フルフェナジン(AN181)の合成:フルフェナジンおよびバレリルクロリド(吉草酸のアシルクロリド誘導体)を上記のように反応させた。得られた粗残渣を、7:4の酢酸エチル:ヘキサンの混合物を溶出液として使用してシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。生成物を黄色がかったオイルとして得た(75%の収率)。
【0216】
ペルフェナジンまたはフルフェナジンおよびアミノ有機酸から調製される化学的コンジュゲートの合成−一般的手順:5ml〜10mlのDMFにおける、N−保護のアミノ酸(1当量)と、カルボニルジイミダゾール(CDI)(1.1当量)との混合物を窒素雰囲気下において1時間撹拌した。その後、ペルフェナジンまたはフルフェナジン(1当量)を加え、混合物を窒素雰囲気下において90℃で24時間撹拌した。得られたスラリーをエバポレーションし、酢酸エチルと水との間で分配した。水相を酢酸エチルで2回抽出し、有機層を一緒にしてNaHCO3により2回洗浄し、次いで、ブラインにより2回洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、エバポレーションした。N−保護の生成物を黄色がかったオイルとして得た。
【0217】
N−保護基を生成物から下記のように除いた:N−保護の生成物を含む酢酸エチルにおける溶液に、4NのHClを含む酢酸エチルにおける溶液を滴下して加えた。混合物を室温で2時間撹拌した。その後、溶媒をエバポレーションし、残渣を高真空下でさらに乾燥した。得られた生成物(三塩酸塩として)をメタノール/エーテルの混合物から再結晶し、ろ過し、乾燥した。
【0218】
N−boc−4−アミノ酪酸ペルフェナジンの合成:ペルフェナジンおよびN−t−boc−GABA(N−t−bocにより保護された4−アミノ酪酸)を上記のように反応させた。粗残渣を、20:1の酢酸エチル:エタノールの混合物を溶出液として使用してシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。生成物を黄色がかったオイルとして得た(63%の収率)。
【0219】
N−boc−4−アミノ酪酸フルフェナジンの合成:フルフェナジンおよびN−t−boc−GABA(N−t−bocにより保護された4−アミノ酪酸)を上記のように反応させた。粗残渣を、20:1の酢酸エチル:エタノールの混合物を溶出液として使用してシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。生成物を黄色がかったオイルとして得た(75%の収率)。
【0220】
4−アミノ酪酸ペルフェナジン三塩酸塩(AN168)の合成:上記のように調製されたN−boc−4−アミノ酪酸ペルフェナジンを、上記のようにHClと反応させた。三塩酸塩生成物が粘性の半固体オイルとして得られた(定量的収率)。
【0221】
4−アミノ酪酸フルフェナジン三塩酸塩(AN187)の合成:N−boc−4−アミノ酪酸フルフェナジンを、上記のようにHClと反応させた。生成物が白色の固体として得られた(75%の収率)
【0222】
バルプロ酸および有機酸またはアミノ有機酸から調製される化学的コンジュゲートの合成−一般的手順:
バルプロ酸を、NaHCO3、Bu4N+HSO4−、水およびCH2Cl2の存在下、室温でクロロメチル=クロロスルファート(1.2当量)と反応させる。その後、水相を分離し、CH2Cl2により洗浄する。有機相をNaHCO3の飽和水溶液およびブラインにより洗浄し、乾燥(MgSO4)し、エバポレーションして、バルプロ酸のクロロメチルエステルを残渣オイルとして得る。オイルを蒸留によって精製する。その後、バルプロ酸クロロメチルエステルを、上記の一般的手順と同様に、有機酸またはN−保護のアミノ有機酸と反応させて、それにより、所望する生成物を得る。
【0223】
2−プロピルペンタン酸(バルプロ酸)クロロメチルエステル(AN−215)の合成:バルプロ酸(2.76グラム、19mmol)、NaHCO3(5.75グラム、68.4mmol)、Bu4N+HSO4−(0.5グラム)、水(25ml)およびCH2Cl2(25mL)の混合物に、クロロメチル=クロロスルファート(3.79グラム、23mmol、1.2当量)を加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。その後、水層を分離し、CH2Cl2により洗浄した。有機層をNaHCO3の飽和水溶液およびブラインにより順次洗浄し、乾燥(MgSO4)し、エバポレーションして、残渣オイルとして得た。オイルを蒸留(沸点、70℃/4mmHg)によって精製して、2.05グラム(56%の収率)のAN−215を得た。
【0224】
2−プロピルペンタン酸(バルプロ酸)N−boc−4−アミノブチリルオキシメチルエステル(AN−217)の合成:乾燥エチルメチルケトンにおけるN−t−boc−GABA(N−t−bocにより保護された4−アミノ酪酸)(1.78グラム、8.8mmol)および2−プロピルペンタン酸クロロメチルエステル(1.8グラム、8.27mmol)の混合物を窒素雰囲気下において撹拌した。Et3N(1グラム、9.5mmol)を滴下して加え、反応混合物を60時間加熱した。得られた白色沈殿物をろ過し、ろ液をエバポレーションした。残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和NaHCO3水溶液およびブラインにより順次洗浄し、乾燥(MgSO4)し、ろ過し、エバポレーションし、さらに高真空下で乾燥して、生成物をオイルとして得た(1.7グラム、57%の収率)。これを、さらに精製することなく続いて使用した。
【0225】
2−プロピルペンタン酸(バルプロ酸)4−アミノブチリルオキシメチルエステル塩酸塩(AN−216)の合成:2−プロピルペンタン酸N−t−boc−4−アミノブチリルオキシメチルエステル(AN−217、これは本明細書中上記のように調製される)(1.7グラム、4.7mmol)を含む酢酸エチルにおける溶液に、4NのHClを含む酢酸エチルの溶液を加えた。得られた混合物を室温で4時間撹拌し、その後、溶媒をエバポレーションし、残渣を高真空下でさらに乾燥した。残渣をエーテルに溶解し、ヘキサンを加えて、所望する生成物AN−216(0.75グラム、62%)を、35〜37℃の融点を有する非晶質固体として沈殿させた。
【0226】
抗うつ剤(例えば、フルオキセチンまたはノルトリプチリン)および有機酸またはアミノ有機酸から調製される化学的コンジュゲートの合成−一般的手順:
遊離アミノ基を有する抗うつ剤を、塩化メチレン(CH2Cl2)中で、トリエチルアミンおよび1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)の存在下、有機酸またはN−保護のアミノ有機酸(1.2mol当量〜1.3mol当量)と反応させる。その後、溶媒をエバポレーションし、残渣をCH2Cl2に溶解し、HCl(1N)、飽和NaHCO3およびブラインにより洗浄し、有機相を乾燥(MgSO4)し、エバポレーションして、生成物を得る。生成物は、場合により、必要ならば、カラムクロマトグラフィーによって精製することができる。N−保護の有機酸が使用される場合、脱保護がEtOAc溶液においてHClの存在下で定量的に行われる。
【0227】
3−(N−(3−(4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)−3−フェニルプロピル)−N−メチルカルバモイル)プロピルカルバミン酸tert−ブチル(AN−229)の合成:
CH2Cl2(5ml)における、フルオキセチン(0.9mmol)、トリエチルアミン(1mmol)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(1.2mmol)の乾燥混合物に、4−tert−ブトキシカルボニルアミノ酪酸(N−Boc−GABA)(1.2mmol)を加えた。得られた混合物を24時間撹拌し、その後、溶媒をエバポレーションした。残渣をCH2Cl2に溶解し、得られた溶液を、HCl(1N)、飽和NaHCO3およびブラインにより洗浄し、有機相をMgSO4で乾燥した。その後、溶液をろ過し、溶媒をエバポレーションし、残渣を、EtOAc:ヘキサン(4:1)の混合物を溶出液として使用してシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、生成物を34%の収率で無色のオイルとして2つの回転異性体(主成分および微量成分)の形態で得た。
【0228】
N−(3−(4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)−3−フェニルプロピル)−4−アミノ−N−メチルブタンアミド塩酸塩(AN−227)の合成:
AN−229(0.5mmol)をEtOAc(35ml)におけるHClの溶液に加え、得られた混合物を3時間撹拌した。その後、溶媒をエバポレーションし、生成物AN−227を定量的収率で得た。
【0229】
3−(10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプタン−5−イリデン−N−メチル−1−プロパンアミン−3−メチルカルバモイル)プロピルカルバミン酸tert−ブチル(AN−230)の合成:
CH2Cl2(15ml)における、ノルトリプチリン(1mmol)、トリエチルアミン(1.2mmol)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(1.3mmol)およびCH2Cl2(15ml)の乾燥混合物に、4−tert−ブトキシカルボニルアミノ酪酸(N−Boc−GABA)(1.3mmol)を加えた。得られた混合物を室温で48時間撹拌し、その後、溶媒をエバポレーションした。残渣をCH2Cl2に溶解し、得られた溶液を、HCl(1N)、飽和NaHCO3およびブラインにより抽出した。有機相をMgSO4で乾燥し、溶液をろ過し、エバポレーションし、生成物を34%の収率で固体として分離した。
【0230】
10,11−ジヒドロ−5−(3−メチルアミノプロビリデン)−5H−ジベンゾ[a,d][1,4]シクロヘプテン−4−アミノ−N−ブタンアミド塩酸塩(AN−228)の合成:
AN−230(0.5mmol)をEtOAc(35ml)におけるHClの溶液に加え、得られた混合物を3時間撹拌した。その後、溶媒をエバポレーションし、生成物を2つの回転異性体の形態で定量的収率で得た。
【0231】
下記の表1は、本明細書中上記で記載された方法によって合成される化学的コンジュゲートを示す。
【表1】
【0232】
活性アッセイ
材料および実験方法
細胞株:ヒト前立腺ガン腫(PC−3)、ヒト結腸ガン腫(HT−29)、マウスメラノーマ(B−16)およびその薬物耐性サブクローン(B−16MDR)、マウス繊維芽細胞(3T3)、骨髄性白血病(HL60)およびその薬物耐性サブクローン(HL60MX2)、子宮内膜細胞株(MES SA)およびその薬物耐性サブクローン(MES DX5)、JurkatTリンパ腫、単球白血病(U−937)、ならびに神経膠腫細胞株のU87MGおよびU251MGをこの研究では使用した。
【0233】
ラット繊維芽細胞の初代培養物を、知られている手順[7]を使用して新生児ラットから得た。
【0234】
ニューロン細胞およびグリア細胞を妊娠(14日目〜15日目)ICRマウスの胎児の脳から調製した。脳を解剖し、Leibowitch L−15培地(Beth Aemek)、75μg/mlのゲンタマイシンおよび0.2mMのグルタミンの混合物においてホモジネートした。細胞(300K/ウエル〜500K/ウエル)をポリ−D−リシン処理された96ウエルマイクロプレートに播種した。選択されたニューロン培養物を、その48時間後に5−フルオロデオキシウリジン(FUDR)およびウリジンをプレートの半分に加えることによって得た。非処理の培養物はニューロン細胞およびグリア細胞の混合物を含んでいた。細胞を、10%のFCS(ウシ胎児血清)および2mMグルタミンが補充されたRPMI培地またはDMEM培地において成長させ、加湿された5%CO2インキュベーターにおいて37℃でインキュベーションした。
【0235】
ラット筋細胞培養物を1日齢〜2日齢のWistar新生児ラット(Harlan)から調製した。30匹の新生児ラットを、約25百万個〜30百万個の細胞を得るために使用した。この目的のために、心臓を解剖し、RDB(商標)(イチジクの木の抽出物から単離されたプロテアーゼ)を使用して室温で酵素により組織解離した。このプロトコルを、細胞が完全に分散されるまで5回繰り返した。分散された細胞を、45分間、組織培養フラスコ(DMEM培地において3×106個/ml)に予備的に置床し、その後、筋細胞以外の細胞を減少させるために、ゼラチン被覆されたマイクロタイタープレートに24時間移した。その後、細胞毒性剤ARO−Cを培養物に加えて、それにより、分裂中の細胞を除き、分裂中でない筋細胞のみを培養物に残した。細胞を4日間インキュベーションし、その後、顕微鏡検査を行った。
【0236】
神経膠腫細胞株(U87MG、U251MG)を、10%のウシ胎児血清(Beth Aemek)およびペニシリン(100ユニット/ml)−ストレプトマイシン(100μg/ml)が補充されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で、37℃および8%CO2での加湿インキュベーターにおいて成長させた。
【0237】
ガン細胞および正常細胞の増殖:増殖を、ニュートラルレッドアッセイ[8]によって、または、DNA含有量を定量する蛍光光度法アッセイ[9]によって測定した。ニュートラルレッドアッセイでは、ニュートラルレッドがリソソームによって吸収され、従って、これにより、生細胞の着色が生じる。定量分析を比色測定アッセイ(550nmにおけるELISA読み取り装置)によって行う。蛍光測定アッセイでは、アラマーブルーがレドックス指示薬として使用される。アラマーブルーの蛍光を544nmの励起波長および590nmの放射波長で測定した(FLUOstar BMG Lab Technologies、Offenburg、ドイツ)。
【0238】
アポトーシスおよびDNA断片化:細胞核の断片化をヨウ化プロピジウム染色された細胞のフローサイトメトリー分析によって調べた。この分析を、480nmの励起波長に調節されたアルゴンイオンレーザーと、Doublet Discrimination Module(DDM)とを備えるFACScan(Becton Dickinson、Mountain View、CA)を使用して行った。LysisII(Becton Dickinson)ソフトウエアをデータ取得のために使用した。アポトーシスの核変化をNicolletti他[13]の基準に従って評価した。
【0239】
化学感作:ペルフェナジンおよびその化学的コンジュゲートAN168の化学感作作用をインビトロで測定した。様々な濃度のペルフェナジンまたはAN168をC6ラット神経膠腫細胞またはJurkatTリンパ腫細胞のいずれかに化学療法剤と一緒に同時投与した。化学療法剤、ペルフェナジン、AN168、化学療法剤とペルフェナジンとの組合せ、または、化学療法剤とAN168との組合せのいずれかによる治療の後における細胞生存性および/またはDNA断片化を本明細書中上記に記載されるように測定した。
【0240】
動物:若い成体オスラット(150グラム〜230グラム)をHarlan(イスラエル)から購入した。動物をケージあたり2匹〜5匹で分け、制御された条件で、実験前の1週間、動物室において飼育した。実験を、実験未使用の動物を用いて二重盲検手順で行った。各実験において、様々な治療群(それぞれ約5匹〜10匹の動物)が試験された。
【0241】
若い成体のオスマウスおよびメスマウスをHarlan(イスラエル)から購入した。動物を、実験の前に、制御された条件のもとで4日間〜7日間飼育した。実験を二重盲検手順で行った。各実験において、様々な治療群(それぞれ約10匹の動物)が試験された。
【0242】
ラットにおけるカタレプシー:定型神経遮断剤により誘導される錐体外路の有害な作用の発現を神経遮断治療後のラットにおける常同的なカタレプシー行動の出現によって評価した。カタレプシーを2つの方法によって決定した:(i)動物がケージの壁にしがみついてその後肢を動かし、平坦な表面に到達するために要した時間を測定すること「壁」試験)によって、および、(ii)ラットを、その前肢を平坦な棒(5.5cmの高さ)にもたれさせながら平坦な表面に置いた(これはピアノ演奏姿勢に類似する)。カタレプシーを、動物が降りて、平坦な表面に到達するために要した時間によって決定した(「ピアノ」試験)。最大追跡時間は2分であり、これらの測定を各動物について1時間毎に個々に行った。これらの試験は中枢神経ドーパミン(DA)遮断活性の評価をもたらし、抗精神病薬により誘導される錐体外路症状についての許容され得る基準である[10]。全体的な誘導されたカタレプシーおよびその経時変化を、ペルフェナジン、フルフェナジン、ならびに、AN167、AN168、AN177、AN178、AN180およびAN187の化合物(本明細書中上記の表1を参照のこと)について測定し、これにより、種々の一組の化合物および種々の条件を比較した。一般には、5mg/Kgの母体薬物(ペルフェナジン)および7.5mg/Kgのフルフェナジンおよび等モル用量の本発明のそれらの関連した化学的コンジュゲートを1%の乳酸に溶解して、動物に腹腔内注射した。異なる一組の測定では、AN168およびペルフェナジンを1%の乳酸に溶解して、動物に経口投与した。
【0243】
マウスにおけるカタレプシー:神経遮断剤治療後のマウスにおける常同的なカタレプシー行動の出現を2つの異なる実験組で測定した。
【0244】
第1の一組では、成体のオスを群に分け、各群を、ペルフェナジン(1.5mg/kg、9匹)、ペルフェナジンおよび等モル用量のGABAの混合物(7匹)、等モル用量のAN−168(8匹)、または治療なし(コントロール群、6匹)のいずれかによって治療した。カタレプシーを、2つのケージおよびそれらの間の棒からなる系を使用して決定した。マウスを棒の中央部にしがみつかせ、2分以内に目標に到達する動物の割合を、治療後の1時間、2時間および3時間でモニターした。
【0245】
第2の一組では、若いメスを群に分け、各群を、2.5mg/kgのペルフェナジン(6匹)、ペルフェナジンおよび等モル用量のGABAの混合物(6匹)、等モル用量のAN−168(7匹)、または治療なし(コントロール群、7匹)のいずれかによって治療した。カタレプシーを、本明細書中上記で記載された系を使用して決定した。マウスを棒の中央部にしがみつかせ、動物が目標に到達するために要した時間を測定した。
【0246】
プロラクチン分泌:定型神経遮断剤は、乳汁漏出ならびに損なわれた生殖腺機能および性機能にしばしば関連づけられる過プロラクチン血症を誘導する[11]。従って、循環している血漿中プロラクチンレベルの測定を、既知の神経遮断剤および本発明の化学的コンジュゲートの、その腹腔内投与後または経口投与後の向精神活性についての高感度な生化学的マーカーとして使用した。従って、血液をエーテル麻酔下のラットの穿刺された眼窩から集め、アッセイを、Millenniaラットプロラクチン酵素免疫測定アッセイキット(DPC、米国)を使用して行った。
【0247】
行動基準:本発明の化学的コンジュゲートによって治療された動物の鎮静を観察し、下記に記載されようにスコア化した(表2)。様々な治療群における動物の鎮静および可動性の程度を、0〜3のスコアを使用して評価した。0のスコアは活発かつ可動性の動物を表し、1のスコアは、落ち着き、かつ、可動性の動物を表し、2のスコアは、落ち着き、かつ、動かない動物を表し、3のスコアは、完全に運動失調性で、かつ、無警戒な動物を表す。治療された動物の行動により、試験された既知の神経遮断剤および化学的コンジュゲートの神経遮断効力、ならびに、それに誘導される錐体外路症状の重篤度が推定された。
【0248】
毒性:インビトロ毒性を、新生児マウスの脳から得られたニューロンの初代培養物、ならびに、全脳のニューロン細胞およびグリア細胞の初代培養物に対する試験された化合物(既知の神経遮断剤および本発明の化学的コンジュゲートのいずれか)の影響を測定することによって明らかにした。ペルフェナジンおよびその化学的コンジュゲートAN168のインビトロ毒性はまた、ラット筋細胞を用いて明らかにされた。LD50により明らかにされるようなインビボでの急性毒性を、2ヶ月齢のICRマウスに対して、単回腹腔内ボーラス用量の薬物の投与の後で評価した。
【0249】
ラットにおけるD−アンフェタミン誘導による活動過多:本発明の化学的コンジュゲートの効力を、統合失調症についての最も確立された動物モデルの1つ[14]として知られている、D−アンフェタミン誘導による活動過多および可動性のモデルを使用して調べた。
【0250】
実験未使用のWistarオスラットを個々の箱に入れた。各実験において、4匹のラットを調べた。ペルフェナジンまたは等モル用量のその化学的コンジュゲートAN−168を、アンフェタミン(2.5mg/kg)の腹腔内投与の30分前に、または、アンフェタミン(2.5mg/kg)の経口投与の90分前にラットに腹腔内(ip)投与した。動物の運動活性を、(樽の壁における動物のよじ登り試み(大きな運動として)、および、動物の頭部運動(小さい運動として)の2つのパラメーターを使用して評価した。評価を2時間にわたって15分毎に記録した。各動物を各時点で120秒間調べた。
【0251】
神経膠腫細胞に対する抗増殖活性:本発明によるバルプロ酸の様々なコンジュゲート(AN−138、AN−148、AN−216およびAN−223)の抗増殖活性を、下記のように、Hoechstアッセイをわずかに改変して使用して細胞成長を測定することによって調べた:1.5×104細胞/mlの密度での細胞を組織培養用の96ウエルプレートに24時間播種し、その後、異なる濃度の試験された化合物またはコンジュゲートに72時間さらした。その後、治療された細胞をPBSにより洗浄し、エタノール(70%)により30分間固定処理した。その後、エタノールを捨て、PBSに可溶化された10mg/mlの蛍光性プローブのビス−ベンズイミド(Hoechst試薬、B2261、Sigmam、米国)の200mlを加えた。蛍光を、FluoStar蛍光計を用いて390nm〜460nmで測定した。各実験を少なくとも3回行い、各用量を四連で調べた。化合物の力価測定の後でのIC50値を生存割合の線形回帰によって求めた。
【0252】
実験結果
ペルフェナジン、および、ペルフェナジンを含有する化学的コンジュゲートの誘導されたカタレプシーおよび精神医学的活性:
5mg/kgのペルフェナジンおよび等モル用量のその化学的コンジュゲート(AN130、AN167およびAN168(本明細書中上記の表1を参照のこと))の誘導されたカタレプシーおよび精神医学的活性を、ケージあたり5匹で分けられた若い成体Wistarオスラット(150グラム〜200グラムの体重)にこれらの化合物を1%乳酸に溶解して腹腔内投与することによって測定し、本明細書中上記に記載される「壁」によって求めた。コントロールの動物群はビヒクル(乳酸)のみにより治療された。カタレプシーおよびプロラクチン分泌の両方に対する治療の影響を2時間の期間にわたって追跡した。その結果を図1aおよび図1bに示す。
【0253】
図1aは、治療後0分、60分および120分で二連で行われた3回の測定の結果としての、誘導されたカタレプシーについて得られたデータを示す。各柱は5匹の動物の平均を表す。総時間をペルフェナジン(例えば、100%)に対して正規化した。得られたデータは、カタレプシーがペルフェナジンおよびAN130の治療によって誘導され、その一方で、AN167およびAN168では、カタレプシーが全く誘導されなかったことを示している。
【0254】
図1bは、治療後0分、60分および120分で測定されたプロラクチン血中レベルを示し、それぞれの示された時間での3回の測定の和を表す。プロラクチン血中レベルは化合物の向精神活性についての生化学的マーカーとして役立つ。得られたデータは、動物におけるプロラクチン血中レベルのプロフィルが、ペルフェナジン、AN130、AN167またはAN168により治療されたとき、60分でピークに達し、その後は低下して、類似することを示している。プロラクチン血中レベルは、AN130、AN167およびAN168の化学的コンジュゲートにより治療された動物において、各時点で、ペルフェナジンの場合と類似していた。このことは、化学的コンジュゲートの向精神活性が母体薬物の向精神活性と類似することを示している。ビヒクル(1%乳酸)のみにより治療されたコントロール動物では、プロラクチンのレベルは変化していなかった。
【0255】
SAR(構造活性相関)研究:SAR研究を、ペルフェナジン、および、ペルフェナジンを含む化学的コンジュゲートについて行った。誘導されたカタレプシーを本明細書中上記に記載されるように測定し、「壁」試験によって求めた。結果が図2に示される。ペルフェナジンとGABAとのコンジュゲートであるAN168が最も効果的であり、誘導されたカタレプシーのほぼ最大の低下をもたらし、吉草酸含有コンジュゲートAN178、プロピオン酸含有コンジュゲートAN177、および、酪酸含有コンジュゲートAN167がそれに続くことが見出された。この実験は、ペルフェナジンそれ自体による治療によって誘導されるカタレプシーと比較した場合、化学的コンジュゲートによる治療の後における誘導されたカタレプシーの著しい低下を示している。
【0256】
ペルフェナジン、フルフェナジン、および、それらを含有する化学的コンジュゲートにより誘導されるカタレプシーおよび動物行動:ペルフェナジン、フルフェナジン、ならびに、その酪酸含有化学的コンジュゲートおよびGABA含有化学的コンジュゲート(AN167、AN168、AN180およびAN187、表1を参照のこと)を、それらにより誘導される総カタレプシー、その投与後における誘導されたカタレプシーの経時変化および動物行動について調べた。測定を、5mg/Kgのペルフェナジン、等モル濃度のAN167およびAN168、7.5mg/Kgのフルフェナジン、ならびに、等モル濃度のAN180およびAN187の腹腔内注射後に行った。カタレプシーを「壁」試験によって求めた。
【0257】
図3aは、試験された化合物により誘導された総カタレプシーを明らかにする。得られたデータは、ペルフェナジンおよびフルフェナジン(=100%)に対する総時間の正規化による、投与後0分、30分、60分、90分、120分、180分、240分および420分で行われた測定の和である。酪酸含有化学的コンジュゲートのAN167およびAN180はともにカタレプシーを著しく低下させた。ペルフェナジンのGABA含有コンジュゲートAN168はカタレプシーを止め、一方、フルフェナジンのGABA含有コンジュゲートAN168はカタレプシーをかなり低下させた。
【0258】
図3bは、ペルフェナジン、そのGABAコンジュゲートAN168、フルフェナジンおよびそのGABAコンジュゲートAN187による治療の後の0分、60分および120分で測定されたプロラクチン血中レベルを示す。得られたデータは、動物におけるプロラクチン血中レベルのプロフィルが、ペルフェナジン、フルフェナジンまたはそれらのGABA化学的コンジュゲートにより治療されたとき、60分でピークに達し、その後は低下して、類似することを示している。プロラクチン血中レベルは、AN168およびAN187により治療された動物において、各時点で、ペルフェナジンおよびフルフェナジンの場合とそれぞれ類似していた。
【0259】
図4aは、ペルフェナジン、および、ペルフェナジンを含有する化学的コンジュゲートにより誘導されるカタレプシーの、7時間の期間にわたる経時変化を明らかにする。ペルフェナジンにより誘導されるカタレプシーは2時間後にピークに達し、その後は低下した。酪酸含有コンジュゲートAN167は、ペルフェナジンとして比較して、低下したカタレプシーを誘導し、その一方で、GABA含有コンジュゲートAN168により治療された動物はこの研究の全7時間の期間を通してカタレプシーを有しなかった。
【0260】
図4bは、フルフェナジン、および、ペルフェナジンを含有する化学的コンジュゲートにより誘導されるカタレプシーの、7時間の期間にわたる経時変化を明らかにする。フルフェナジンにより治療された動物は、測定された7時間の期間中にカタレプシーを示し、その一方で、AN180およびAN187により治療された動物はより低いカタレプシーを示した。AN180により治療されたカタレプシーは測定期間中変動しており、その一方で、AN187により治療されたカタレプシーは7時間の期間の終了時にはなくなっていた。この研究における動物はどれも24時間後にカタレプシーを有していなかった。
【0261】
動物の行動に対する試験化合物の投与の影響を、本明細書中上記に記載される治療の後における動物の鎮静および可動性の程度を、0〜3のスコアを使用して評価することによって測定した。0のスコアは活発かつ可動性の動物を表し、1は、落ち着き、かつ、可動性の動物を表し、2は、落ち着き、かつ、動かない動物を表し、3は、完全に運動失調性で、かつ、無警戒な動物を表す。得られたスコアが下記の表2にまとめられる。得られたスコアは、既知の薬物の動物行動と比較されるような動物行動に対する化学的コンジュゲートの低下した影響を明らかにしている。
【表2】
【0262】
AN168と、ペルフェナジンおよびGABAの混合物とによるラットにおける誘導されたカタレプシー:ラットにおいて誘導されたカタレプシーに対するAN168(ペルフェナジンのGABAコンジュゲート)の影響を、その母体薬物(すなわち、コンジュゲート化されていないペルフェナジンおよびGABA)の混合物により誘導されるカタレプシーと比較した。カタレプシーを、コンジュゲートまたは記載された混合物の腹腔内投与の後60分、90分および120分で測定し、「壁」試験によって求めた。
【0263】
図5aは、様々な治療により誘導された総カタレプシーについて得られたデータを示す。AN168により治療された群における動物は非常に低いカタレプシーを示し、その一方で、ペルフェナジンおよびGABAの混合物により治療された群におけるカタレプシーは高かった。
【0264】
図5bは両方の治療の後におけるカタレプシーの経時変化を示しており、カタレプシーが、AN168により治療された動物では低下し、120分後にはなくなっていることを明らかにしている。
【0265】
AN167およびAN168によりラットにおいて誘導されるカタレプシー:4つの独立した実験でAN167およびAN168により誘導される総カタレプシーを調べ、同じ実験条件のもとでのペルフェナジンにより誘導されるカタレプシーと比較した。
【0266】
等モル用量のAN167およびAN168の後での総カタレプシーの平均が、ペルフェナジンにより誘導されるカタレプシーの百分率として、図6に示される。AN167は、ペルフェナジンと比較した場合、より低いカタレプシーを誘導したが、AN168は、誘導されたカタレプシーをほぼ0の値に低下させた。
【0267】
ペルフェナジン、ペルフェナジンとGABAとの混合物、およびAN168によるマウスにおける誘導されたカタレプシー:マウスにおいて誘導されるカタレプシーに対するAN168(ペルフェナジンのGABAコンジュゲート)の影響を、ペルフェナジン単独により誘導されるカタレプシーと比較し、また、母体薬物(すなわち、コンジュゲート化されていないペルフェナジンおよびGABA)の混合物により誘導されるカタレプシーと比較した。カタレプシーを、治療の腹腔内注射の後60分、90分および120分で測定し、本明細書中上記に記載されるように求めた。
【0268】
図7aは、2分以内に目標に到達する動物の百分率に関して、様々な治療により誘導されたカタレプシーについて得られたデータを示す。AN168により治療された群における動物は実質的により低い能力障害を示し、その一方で、ペルフェナジン単独により治療された群、および、ペルフェナジンとGABAとの混合物により治療された群における動物はより大きいカタレプシーを示した。
【0269】
図7bは、動物が目標に到達するために要した時間に関して、上記治療の2時間後および3時間後での、様々な治療により誘導されたカタレプシーについて得られたデータを示す。N168により治療された群における動物は、ペルフェナジン単独により治療された動物、および、ペルフェナジンとGABAとの混合物により治療された動物よりもはるかに俊敏であった。
【0270】
経口投与されたペルフェナジンおよびそのGABAコンジュゲートAN168の誘導されたカタレプシー、誘導された動物行動、および向精神活性:AN168(ペルフェナジンおよびGABAの化学的コンジュゲート)は、腹腔内投与されたとき、現在最も効果的な化学的コンジュゲートであることが見出されたので、さらなる比較実験を、ペルフェナジンと比較して、この化学的コンジュゲートの経口効力を明らかにするために行った。この目的のために、誘導されたカタレプシー、プロラクチン血中レベルおよび動物行動を、ラットへのAN168またはペルフェナジン単独の経口投与の後、本明細書中上記に記載されるように測定した。動物をケージあたり5匹で分け、1%の乳酸に溶解されたペルフェナジンまたはAN−168を経口投与によって治療した。コントロール動物には、ビヒクル(乳酸)のみが与えられた。
【0271】
様々な濃度のAN168およびペルフェナジンの経口投与により誘導されるカタレプシーを、本明細書中上記に記載される「壁」試験および「ピアノ」試験によって測定した。カタレプシーの経時変化を、2.5mg/kg、5mg/kg、10mg/kgおよび20mg/kgのペルフェナジン、ならびに、それぞれの等モル用量の3.5mg/kg、7mg/kg、14mg/kgおよび28mg/kgのAN−168の経口投与の4時間後〜24時間後で測定した。総カタレプシーは4時間〜24時間の追跡期間中における治療群あたりの平均カタレプシーの和を表す。
【0272】
図8aは、4時間〜6時間の期間中における「ピアノ」試験により測定されたときの、様々な治療の後でのカタレプシーの経時変化を示しており、AN168のすべての濃度でのカタレプシー行動における一貫した低下を明らかにしている。統計学的分析により、低下が、AN168の低い用量および中間の用量(7mg/kgおよび14mg/kg)で、それらのそれぞれの等モル用量のペルフェナジンと比較して、より著しかったこと(p<0.05)が明らかにされた。より高用量の化学的コンジュゲート(14mg/kgおよび28mg/kg)では、検出されたカタレプシー症状が、違いはそれほど実質的ではなかったが、ペルフェナジンのカタレプシー症状よりも一貫して低かった。より大きい用量で薬物および化学的コンジュゲートにより誘導されるカタレプシーの間でのこれらのより小さい違いは評価手法から生じていることが推定される。実際的な検討のために、測定された最大カタレプシーシグナルは120秒に制限された。しかしながら、実際には、ペルフェナジンにより誘導される最大のカタレプシーシグナルの方が、化学的コンジュゲートにより誘発される最大のカタレプシーシグナルよりも大きいことが推定される。この推定は、AN−168とペルフェナジンとの間でのより大きく、かつ実質的な違いが、「壁」試験および鎮静スコア(これらは本明細書中上記に記載される)によって求められるカタレプシーの両方について、大きい用量において観測されたことによってさらに裏付けられる。そのうえ、行われた実験では、筋肉固縮および頻呼吸が、中間の用量および高い用量のペルフェナジン(10mg/kgおよび20mg/kg)により治療された動物においてだけ観測され、それぞれの等モル用量の化学的コンジュゲートにより治療された動物では観測されなかったことが示された。
【0273】
図8bは、図8aに示される実験の3ヶ月後に行われた別個の実験で、4時間〜6時間の期間中における「ピアノ」試験により測定されたときの、様々な治療の後でのカタレプシーの経時変化を示す。得られたデータは、高用量のAN168(14mg/kgおよび28mg/kg)で、より大きいカタレプシーが、前回の実験と比較して誘導されたことを示している。NMR分光学では、遅い分解(これはおそらくは加水分解のためである)が生じ、従って、化学的コンジュゲートの特有な性質が影響を受けたことが明らかにされた。これらの発見は、この化合物は密封バイアルに保存し、かつ、使用前にだけ暴露されなければならないことを示唆する。この点において、フルフェナジンの類似する化学的コンジュゲートAN187は吸湿性がないようであり、従って、長期間の貯蔵を行ったとき、分解する傾向がないことに留意しなければならない。
【0274】
図9aおよび図9bは、4時間〜6時間の期間中に観測された、5mg/kg、10mg/kgおよび20mg/kgのペルフェナジン、ならびに、それぞれの等モル用量の7mg/kg、14mg/kgおよび28mg/kgのAN−168の経口投与により誘導される総カタレプシーを示す。図9bは、図9aに示される実験の3ヶ月後に行われた実験で得られたデータを示す。AN168により誘導されるカタレプシー行動における低下が、ペルフェナジンと比較した場合、図9bに示されるデータではあまり著しくないが、AN168により誘導されるカタレプシーは、ペルフェナジンにより誘導されるカタレプシーよりも一貫して低いことが明瞭に示される。
【0275】
図10aおよび図10bは、様々な治療の後の24時間の期間中に「ピアノ」試験によって測定されたときのカタレプシーの経時変化(図10a)および総カタレプシー(図10b)を示す。得られたデータは、ペルフェナジンおよびAN−168の両方の最大カタレプシー作用が治療後5時間〜6時間で達成されたこと、および、治療後24時間で、カタレプシーがすべての治療群において低下したことを明らかにしている。これらのデータは、患者に(1日に1回)投与されたペルフェナジンについて観測された臨床的な経時変化と一致している。
【0276】
図11は、「壁」試験によって測定されたときの様々な治療の後での総カタレプシーを示しており、カタレプシー症状がAN168の治療された用量のすべてによる治療の後ではほとんどなくなったことを明瞭に明らかにしている。
【0277】
動物行動に対する化学的コンジュゲートAN168の経口投与の影響を、本明細書中上記に記載されるように、0〜3のスコアを使用して、様々な濃度のAN168およびペルフェナジンによる経口治療の後4時間〜6時間で動物の鎮静および可動性の程度を評価することによって測定した。得られたスコアが下記の表3にまとめられる。得られたスコアは、ペルフェナジン治療と比較した場合、動物行動に対する化学的コンジュゲートの低下した影響を明らかにしている。
【表3】
【0278】
経口投与された化合物のドーパミン作動活性についてのマーカーとして、プロラクチン血中レベルを、本明細書中上記に記載される様々な治療の後0分、90分および180分で測定した。得られたデータが図12にまとめられ、得られたデータは、ペルフェナジンおよびAN168により治療された動物におけるプロラクチン血中レベルのプロフィルが類似することを明らかにする。プロラクチン血中レベルは、AN168により治療された動物において、各時点で、低い用量および中間の用量でペルフェナジンの場合と類似しており、一方、より大きい用量では、AN168により治療された動物におけるプロラクチン血中レベルは、ペルフェナジンにより治療された動物と比較してはるかに高かった。
【0279】
これらの結果は、AN168が、経口投与されるとき、低い用量(例えば、3.5mg/kgおよび7mg/kg)で、非常に有効であり、従って、診療的使用に適切であることを明らかにしている。これらの低い用量で、AN168は最小限の錐体外路症状を引き起こし、従って、黒質−線条体経路でのアンタゴニスト活性をほとんど有しないことがこの例ではさらに示される。
【0280】
抗増殖活性:ペルフェナジン、その化学的コンジュゲート(AN167、AN168およびAN177)、フルフェナジン、その化学的コンジュゲート(AN179、AN180、AN181およびAN187)、ならびに、酪酸(BA)、4−フェニル酪酸(PBA)およびGABAの抗増殖活性を、正常な細胞および形質転換された細胞を用いて(通常、2つ以上の独立した実験で)行われた増殖試験によって測定した。細胞を継代培養し、試験化合物を増大する濃度でそれに加えた。IC50値を細胞の生存割合の線形回帰によって求めた。様々な試験された細胞株を用いて試験化合物について得られたIC50値が下記の表4および表5にまとめられる。
【表4】
【表5】
【0281】
これらの結果は、GABAはそれ自身では著しい抗増殖活性を明らかにすることができず(IC50が20mMを越える)、また、BA(1mM〜8mMのIC50範囲)およびPBA(2mM〜12mMのIC50範囲、データは示されず)は、顕著ではあるが、比較的低い抗増殖活性を示したが、それらのそれぞれのペルフェナジンコンジュゲートおよびフルフェナジンコンジュゲートは著しくより大きい活性(8μM〜60μMのIC50範囲)を有したことを示している。
【0282】
これらの結果はさらに、多剤耐性(MDR)細胞(例えば、HL60MX2、B16MDRサブクローンおよびMES SA DX5など)を含む広範囲の様々な細胞株における本発明の化学的コンジュゲートの万能的な抗増殖活性を明らかにする。
【0283】
図13は、B16マウスメラノーマ細胞の増殖に対するペルフェナジンおよびその化学的コンジュゲートの影響が測定された代表的な実験で得られた結果を示す。AN167およびAN168が抗増殖性薬物として比較的活性であることが見出された。
【0284】
ペルフェナジン、GABAおよびその化学的コンジュゲートAN168の細胞毒性作用をC6ラット神経膠腫細胞に対して測定し、知られている化学療法薬物(シスプラチンおよびビンクリスチン)のC6ラット神経膠腫細胞に対する細胞毒性作用と比較した。細胞を継代培養し、試験化合物を100μMまでの増大する濃度でそれに加えた。これらの治療の後(24時間後)での細胞の生存性を、本明細書中上記に記載されるニュートラルレッド法によって求めた。結果が図14に示される。ペルフェナジンおよびAN168のIC50値が本明細書中上記のように求められ、それぞれ19.2μMおよび24.2μMであることが見出された。
【0285】
図14に示されるように、得られたデータは、本発明の化学的コンジュゲートの抗増殖活性が、代表的な知られている化学療法薬物と比較して優れていることを明らかにする。C6神経膠腫細胞はMDR細胞として知られており、実際、これらの知られている化学療法薬物の抗増殖活性が実質的に低いことが見出された。対照的に、AN168は、大きい抗増殖活性を発揮し、これにより、実質的な細胞死を比較的低い濃度(約20μM)で生じさせていることが見出された。
【0286】
図15は、増大する濃度のペルフェナジン、AN168およびデキサメタゾンを用いたJurkatTリンパ腫細胞の治療の後で得られたデータを示す。結果が、アラマーブルー法によって求められた細胞生存性に関して示され、デキサメタゾンと比較して、AN168およびペルフェナジンの優れた細胞毒性作用を明らかにしている。ペルフェナジンおよびAN168のIC50値はそれぞれ16μMおよび19μMであった。
【0287】
ペルフェナジン、フルフェナジンおよびそれらの化学的コンジュゲートはほぼ同じ程度に抗増殖活性を発揮しているが、化学的コンジュゲートの投与は有害な副作用をほぼ完全に有していないので、本発明の化学的コンジュゲートの臨床的使用はこれらの神経遮断性薬物の臨床的使用よりも非常に優れていることはさらに留意しなければならない。
【0288】
ペルフェナジンまたはAN168と化学療法薬物との同時投与による化学感作作用:5μM、10μMおよび15μMのペルフェナジンならびに等モル用量のその化学コンジュゲートAN168の化学感作作用を、これらの化合物を様々な濃度の知られている化学療法薬物(例えば、ビンクリスチン、シスプラチンおよびデキサメタゾンなど)と同時投与することによって測定した。これらの混合治療の後での細胞生存性および/またはDNA断片化(これらは、本明細書中上記で方法の節に記載されるように求められた)を、化学療法薬物単独による治療の後で得られた結果と比較した。
【0289】
図16は、ビンクリスチン(30μM)、ペルフェナジン、AN168、および、それらの組合せによるラットC6神経膠腫細胞株(MDR細胞)の24時間の治療の後で得られたデータを示す。結果は、化学療法薬物と同時投与されたときには、単独で投与されたときの薬物の細胞毒性作用と比較して、化学的コンジュゲートの低い濃度(例えば、5μM)でさえ、その細胞毒性作用を実質的に高めるAN168の化学感作作用を明瞭に明らかにしている。
【0290】
図17は、5μM〜50μMの範囲にある様々な濃度でのシスプラチン、ならびに、シスプラチンと、10μMおよび15μMのAN168との組合せによるラットC6神経膠腫細胞株(MDR細胞)の治療の後で得られたデータを示す。結果が、ニュートラルレッド法によって測定された細胞生存性に関して示され、細胞が、すべての試験された濃度でシスプラチンに対して完全に抵抗性であったが、シスプラチンおよびAN168の混合治療は細胞を化学療法薬物に対して感受性にしたことを明瞭に明らかにしている。
【0291】
図18は、シスプラチン(30μM)、ペルフェナジン(25μMおよび50μM)、AN168(25μM、50μM)、シスプラチン(30μM)とAN168(50μM)との組合せを用いたラットC6神経膠腫細胞の治療の後で得られたDNA断片化のデータを、治療されていない細胞と比較して示す。DNA断片化を、本明細書中上記に記載されるヨウ化プロピジウムフローサイトメトリー法によって求めた。結果は、シスプラチンは単独ではDNA断片化の作用を全く有しないが、ペルフェナジンおよびAN168はともにDNA断片化の劇的な増大を誘導したことを明らかにしている。これらの結果は、本発明の化学的コンジュゲートの化学感作作用がそのこの活性から生じていることを示唆している。
【0292】
毒性:ペルフェナジン、AN167およびAN168のインビトロ毒性を、新生児マウスの脳から得られたニューロン細胞の初代培養物、ならびに、ニューロン細胞およびグリア細胞の混合物の初代培養物に対して測定した。細胞培養物を試験化合物で24時間治療し、その後、その生存性をニュートラルレッド比色測定法試験によって求めた。これらの試験で得られたIC50値は、図19に示されるように、ペルフェナジンおよびAN167が類似する毒性を有し、その一方で、AN168は正常な脳細胞に対して著しいより低い毒性を示したことを明らかにしている。ペルフェナジンおよびAN168のインビトロ毒性をさらに、培養されたラット筋細胞に対して測定した。図20は、様々な濃度のペルフェナジンまたはAN168による治療の後での本明細書中上記のように求められた細胞生存性を示す。得られたデータは、AN168はすべての濃度で細胞生存性における低下を何ら生じさせず、その一方で、ペルフェナジンは高い濃度で細胞生存性における20%の低下を生じさせたことを示している。
【0293】
ペルフェナジンおよびAN167のインビボ毒性をマウスへのその単回用量の腹腔内投与の後で評価した。LD50値が、治療後2週間で測定されたとき、ペルフェナジンについては109mg/kgであり、AN167については120mg/kgであった。AN167の毒性がペルフェナジン(per)と比較してより低いことに加えて、コンジュゲート化されている化合物によって引き起こされる死亡が、図21に示されるように遅くなった。
【0294】
ラットにおけるD−アンフェタミン誘導による活動過多:本発明の化学的コンジュゲートの効力を、D−アンフェタミン誘導による活動過多および可動性のモデルを使用して調べた。このモデルは、アンフェタミンに関連づけられる障害(例えば、統合失調症など)において抗精神病活性を有する化合物を選択するための予測可能かつ再現可能なモデルであるという利点を有する[14]。このモデルを使用して、ペルフェナジンとGABAとの化学的コンジュゲートAN−168の効力を調べ、単独で投与された母体化合物(ペルフェナジンおよびGABA)の効力と比較した。
【0295】
例えば、実験未使用のWistarオスラットを数群に分け、各群を、2.5mg/kgのアンフェタミンの腹腔内投与の90分前に、特定濃度のペルフェナジン(0.5mg/kg、1.5mg/kgまたは3mg/kg)、特定濃度のAN−168(0.5mg/kgまたは1.5mg/kg)、5mg/kgのGABA、または、1.5mg/kgのペルフェナジンおよび5mg/kgのGABAの腹腔内投与によって治療した。各群におけるラットのよじ登り行動を本明細書中上記に記載されるように測定した。
【0296】
図22および図23に示されるように、AN−168は、低い用量でさえ、アンフェタミンにより誘導されるよじ登り行動を完全に打ち消しており、それにより、その母体薬物のペルフェナジンおよびGABAと比較して、その高く、かつ、優れた向精神性効力を明らかにした。
【0297】
しかしながら、図24および図25に示されるように、頭部運動および他の小さい身体運動を低下させることにおけるAN−168の効果はペルフェナジンの効果よりも劣っていた。この劣った作用は、母体のペルフェナジンと比較した場合、コンジュゲートAN−168により誘導される低下した錐体外路副作用(すなわち、カタレプシー症状および鎮静)から生じていることが考えられる。図22〜図25においてさらに示されるように、GABAの単独での投与はアンフェタミンの作用を変化させず、また、ペルフェナジンの作用を変化させなかった。従って、高まった効力および低下した有害な副作用はコンジュゲートAN−168の投与から生じていることが示唆される。
【0298】
図26〜図28に示されるように、類似する結果が、2.5mg/kgのペルフェナジン(単独で、または、5mg/kgのGABAとの組合せで)、および、3.5mg/kgのAN−168をアンフェタミンの腹腔内投与の90分前にラットに経口投与したときに得られ、様々な投与経路におけるコンジュゲートの優れた効力を明らかにしていた。
【0299】
AN−168の効力をオランザピン(知られている非定型抗精神病薬)の効力とさらに比較した。様々な濃度のオランザピン(2.5mg/kg、5mg/kgまたは10mg/kg)をラットに経口投与し、その後、アンフェタミンを腹腔内投与した。図29〜図31に示されるように、オランザピンはアンフェタミン誘導によるよじ登り行動を高い用量(10mg/kg)でのみ実質的に打ち消すことができたが、その効果は頭部運動に関してはほとんど観測されなかった。
【0300】
これらの結果は、アンフェタミンモデルにおけるオランザピンの以前に報告されたより低い効力[15]と一致している。しかしながら、これらの研究で得られたデータはさらに、本発明の化学的コンジュゲートが、神経遮断性薬物と比較した場合、より低い抗ドーパミン作動活性を発揮し、従って、非定型薬物との類似点をいくつか示し得ることを示唆している。
【0301】
このモデルで得られたデータはさらに、母体の向精神性薬物により誘導される有害な副作用を軽減しながら、向精神活性を発揮することにおける本発明コンジュゲートの高い効力を裏付けている。
【0302】
本明細書中上記に示された全体的な実験結果は、向精神活性、抗増殖活性および化学感作活性を、正常な細胞に対する最小限に抑えられた毒性、および、最小限に抑えられた有害副作用とともに発揮することにおける本発明の新規な化学的コンジュゲートの大きく、かつ、好都合な効力を明らかにしている。
【0303】
神経膠腫細胞に対する抗増殖活性:神経膠腫細胞株(U87およびU251)の増殖に対する本発明によるバルプロ酸の様々なコンジュゲートの影響を、本明細書中上記に記載されるようなHoechst増殖アッセイを使用して調べた。
【0304】
最初に、神経膠芽細胞腫細胞(U251)の生存性に対する様々な濃度のバルプロ酸−GABAコンジュゲート(AN−216)の影響を調べ、その母体化合物(GABAおよびバルプロ酸)およびその1:1等モル混合物の影響と比較した。得られた結果を図32a〜図32bおよび図33に示す。
【0305】
図32aは、AN−216を用いて得られたデータを示し、神経膠腫細胞に対するその強力な抗増殖活性を明瞭に示している。図32bは、AN−216を用いて得られたデータを、その母体化合物を用いて得られたデータと比較して示しており、そのより高い効力を明瞭に明らかにしている。図32bにおいて明瞭に認められるように、GABAは単独では神経膠腫細胞の生存性に対する作用を全く有していないが、バルプロ酸、ならびに、GABAおよびバルプロ酸の等モル混合物はこの細胞の生存性に対する作用を有する。しかしながら、図32aにおいてさらに認められるように、AN−216の効果的な濃度は、バルプロ酸の効果的な濃度、および、GABAとのその混合物の効果的な濃度と比較した場合、約1/100である。従って、このことは神経膠腫細胞に対するその高い抗増殖効力を明らかにしている。
【0306】
図33は、本発明によるさらなるバルプロ酸コンジュゲートのAN−138およびAN−223を用いて得られた値と比較されるこの研究で得られたIC50値を示しており、GABAの存在下および非存在下でのバルプロ酸の効力と比較した場合、本発明のコンジュゲートの効力がより高いことを明瞭にさらに明らかにしている。
【0307】
バルプロ酸の様々なコンジュゲートの抗増殖効力を評価および比較するために行われた構造活性相関研究では、2つの神経膠腫細胞株(U−87およびU−251)の生存性に対するバルプロ酸−GABAコンジュゲートAN−216の影響を調べ、バルプロ酸−カルボン酸コンジュゲートのAN−138、AN−148およびAN−223(上記の表1を参照のこと)の効力と比較した。
【0308】
得られたデータが図34〜図36にまとめら、示される。得られたデータは、驚くべきことに、AN−216がこれまでにないほど活性な化合物であったことを示している。何らかの特定の理論にとらわれないが、神経膠腫細胞に対するこのバルプロ酸−GABAコンジュゲートの優れた抗増殖活性は、細胞内への化合物の効率的な送達を高めるGABA成分に起因することが示唆される。
【0309】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0310】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更及び変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更及び変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許及び特許願はすべて、個々の刊行物、特許及び特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用又は確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【0311】
【技術分野】
【0001】
本発明は向精神性薬物と有機酸との新規な化学的コンジュゲートおよびその使用に関連する。より具体的には、本発明は、向精神性薬物(これはまた、抗増殖活性および/または化学感作活性を有し得る)と、その向精神性薬物により誘導される副作用を軽減し、その向精神性薬物の治療活性を高めるように、および/または、抗増殖活性を発揮するように選択された有機酸との新規な化学的コンジュゲート、ならびに、向精神性および/または増殖性の障害および疾患の治療におけるその使用、ならびに、化学感作におけるその使用に関連する。本発明の新規な化学的コンジュゲートは、先行技術の向精神性薬物と比較した場合、より大きい治療活性と、さらに最小限に抑えられた有害な副作用とによって特徴づけられる。
【背景技術】
【0002】
向精神性薬物は、ニューロンのシグナル伝達を調節することによって主に中枢神経系(CNS)において作用する薬理学的作用剤である。従って、向精神性薬物は、CNSにおいて活性を発揮し、それによりCNS関連の障害を治療する薬理学的作用剤として知られており、本明細書中では、そのような薬理学的作用剤として示され、向精神性薬物には、例えば、抗精神病薬、抗うつ剤、抗痙攣剤、不安緩解剤、および、脳由来酵素の阻害剤などが含まれる。
【0003】
残念なことに、向精神性薬物の投与には、典型的には、様々な有害な副作用(例えば、発作、頭痛、疲労、活動過多およびめまいなど)が伴い、これらはその使用をひどく制限している。そのような副作用の広範囲にわたる列挙が、例えば、「The Merck Manual of Medical Information」(Merck&Co.Inc.)に見出され得る。
【0004】
神経遮断性薬物(これは、例えば、神経遮断性薬剤または神経遮断剤としても知られている)は、中枢神経系の精神病的な疾患および障害(例えば、統合失調症など)の治療において広く使用されている古典的な抗精神病薬である。神経遮断剤の抗精神病効力は、中枢神経のドーパミン受容体を中和/阻止するその能力に起因すると考えられる。神経遮断性薬物は定型抗精神病薬として知られており、これには、例えば、フェノチアジン系(脂肪族系(例えば、クロルプロマジン)、ピペリジン系(例えば、チオリダジン)およびピペラジン系(例えば、フルフェナジン)が含まれる);ブチロフェノン系(例えば、ハロペリドール);チオキサンテン系(例えば、フルペンチキソール);オキソインドール系(例えば、モリンドン);ジベンゾキサゼピン系(例えば、ロキサピン)およびジフェニルピペリジン系(例えば、ピモジド)が含まれる。
【0005】
しかしながら、現在利用可能な神経遮断性薬物の投与には、様々な有害な副作用がしばしば伴う。神経遮断性薬物は、固縮、震え、運動緩慢(遅い動き)および発話緩慢(遅い思考)、ならびに、遅発性ジスキネシア、急性ジストニー反応および静座不能を含む錐体外路症状を誘導することがこの分野では広く知られている。実際、1年以上にわたる神経遮断性薬物の長期療法により治療されている患者の約5%が遅発性ジスキネシアの病状を発症する。
【0006】
異なる種類の抗精神病薬には、非定型抗精神病剤が含まれる。非定型抗精神病薬は、ドーパミンD2受容体に加えて中枢神経のセロトニン2受容体(5−HT2)に結合することを含む受容体結合プロフィルを有する。非定型抗精神病薬には、例えば、クロザピン、オランザピンおよびリスペリドンが含まれ、非定型抗精神病薬は一般には、大きい抗セロトニン活性と、ドーパミンD2受容体に対する比較的低い親和性とによって特徴づけられる。いくつかの非定型抗精神病薬(例えば、クロザピンなど)は、アドレナリン作動性受容体、コリン作動性受容体およびヒスタミン作動性受容体をさらに中和することが知られている。
【0007】
神経遮断剤とは異なり、非定型抗精神病剤は最小限の錐体外路症状を引き起こし、従って、遅発性ジスキネシア、静座不能または急性ジストニー反応をまれにしか引き起こさない。しかしながら、その投与は他の副作用(例えば、体重の増大、気分障害、性的機能不全、鎮静、起立性低血圧、唾液分泌亢進、低下した発作閾値、および、特に、無顆粒球症など)を伴う。
【0008】
定型抗精神病薬および非定型抗精神病薬の両方(これらはまた、本明細書中では抗精神病剤として示される)に関連づけられる重篤な副作用がそれらの使用に対する大きな制限となっており、広範囲の努力が、これらの副作用を有しない抗精神病薬を開発するために行われている。
【0009】
米国特許第6197764号は、クロザピン(非定型抗精神病薬)と、12個〜26個の炭素原子(好ましくは、16個〜22個の炭素原子)を有する脂肪酸との化学的コンジュゲートを開示する。このコンジュゲートは、抗精神病治療効果をもたらすためのそのより低い用量の投与を可能にし、かつ、それにより、重大な副作用を発症する可能性を低下させる長期間にわたる治療的有効性によって特徴づけられる。従って、このコンジュゲートは、コンジュゲート化されていない非定型抗精神病薬よりも有益かつ好都合である。しかしながら、米国特許第6197764号は、他の抗精神病薬剤を含むそのような好都合なコンジュゲートを開示しておらず、また、さらに、長鎖脂肪酸を含むコンジュゲートに限定されている。他の抗精神病剤(主として、神経遮断剤)と長鎖脂肪酸とのエステルコンジュゲートがこの分野では広く知られていることを述べておかなければならない。それにもかかわらず、そのようなコンジュゲートは、脳内への浸透を容易にすること、ならびに、体内における薬物の存続時間を延ばすことを主に目指しており、副作用を積極的に軽減または防止するためには設計されていない。
【0010】
米国特許第3966930号は、顕著な神経遮断特性と、比較的低い程度の望ましくない副作用とを有するフルオロ置換されたフェノチアジン誘導体を開示する。しかしながら、米国特許第3966930号の特許請求されているフルオロ置換されたフェノチアジン誘導体のいくつかは、1個〜17個の炭素原子をその鎖に有するアシル基を含むが、実験データは、シュウ酸またはマレイン酸(すなわち、2個の炭素原子および4個の炭素原子をそれぞれ含む有機酸)のいずれかに由来するアシル基のみを含むフェノチアジン誘導体に限定されている。開示されたフェノチアジン誘導体は、他の知られている神経遮断剤と比較した場合、より長い治療効果を有しており、従って、比較的低い程度の誘導された副作用によって特徴づけられる。これらの化合物の長くなった治療効果は、主としてフェノチアジン置換基(例えば、フルオロおよびトリフルオロメチル)に起因すると考えられ、その一方で、有機酸とのそのそれらのコンジュゲート化は、それらの医薬配合を容易にすることを主に目指している。
【0011】
向精神性薬物(主として、神経遮断剤)による治療の結果としての錐体外路症状の発症に関する近年の研究では、脳におけるγ−アミノ酪酸(GABA)系の低下した活性がさらに伴う、ドーパミン作動性受容体のD1およびD2における不均衡を伴う機構が示唆されている。
【0012】
GABAは脳における重要な阻害性の神経伝達物質であり、これは、精神安定化活性、不安緩解活性および筋肉弛緩活性に影響を及ぼすことが知られており、また、中枢神経系のいくつかの障害および疾患に関連づけられることがさらに知られている。錐体外路症状に関する近年の研究では、GABAアゴニストが、神経遮断剤により誘導される副作用を軽減するためにさらに使用することができ、従って、さらなる治療的可能性を有し得ることが示唆される。
【0013】
以前の研究では、GABAアゴニストが、脳の他の神経伝達物質を、特に、ドーパミン系を妨げ得ることが既に示唆されている。従って、GABAアゴニストはドーパミン受容体の感受性の神経遮断剤誘導による増大を中和することができ、従って、神経遮断剤により誘導されるジスキネシアを改善することができることが見出されていた[1]。さらに、いくつかの知られている直接的なGABAアゴニスト(例えば、ムスシモールおよびSL76002)は、低用量のアゴニストが常同的なカタレプシー行動を阻害する一方で、高用量のアゴニストがハロペリドール誘導のカタレプシーを強めるように、ハロペリドール誘導のカタレプシーに対する二相性作用を引き起こすことが見出されていた。他の研究では、GABAアゴニストが抗痙攣活性をさらに誘導することが報告されている[2]。
【0014】
GABAアゴニストの使用は、GABAアゴニストが親水性の官能基(例えば、遊離カルボン酸基および遊離アミノ基)を含み、従って、血液脳関門(BBB)を容易に越えないので制限される。しかしながら、脂肪アミノ酸またはペプチドとのそのような化合物の化学的コンジュゲート化は血液脳関門(BBB)のその通過を実質的に容易にし得ることが見出されていた[3]。
【0015】
実際、米国特許第3947579号、同第3978216号、同第4084000号、同第4129652号および同第4138484号は、血液脳関門を越えることが知られているGABA様化合物(GABAに薬理学的に関連づけられる化合物)、例えば、γ−ヒドロキシブチロラクトン、γ−ヒドロキシブチラート、アミノオキシ酢酸、5−エチル−5−フェニル−2−ピロリドン、1−ヒドロキシ−3−アミノ−2−ピロリドンおよびβ−(4−クロロフェニル)−γ−アミノ酪酸などは、神経遮断薬と同時投与されたとき、若干低い用量の神経遮断薬の使用により、これらのGABA様化合物を投与することなく、より高用量の神経遮断薬を用いて得られるのと同じ抗精神病効果が得られ、かつ、同時に、錐体外路副作用がいくらか軽減されることを可能にすることを開示する。GABA様化合物は、同時投与された抗精神病薬の抗精神病活性を強めると言われるので、より低い用量の神経遮断薬が使用されるが、同じ抗精神病効果が得られると言われる。
【0016】
近年の研究は、いくつかの向精神性薬物(特に、フェノチアジン系)がさらに、強力な抗増殖活性を、種々の細胞株において、例えば、ニューロン細胞、グリア細胞、メラノーマ細胞、乳細胞、結腸細胞、前立腺細胞、リンパ腫および白血病などにおいて、同様にまた、初代ヒト角膜実質細胞において発揮することを明らかにした[4]。「新しいハーフマスタード型フェノチアジン系」(これは、カルモジュリンに対する特異的な阻害作用を発揮することが知られている)が、National Cancer Institute(NCI)によって調べられた。このフェノチアジン系の抗増殖活性が、60の異なるヒトガン細胞株のインビトロスクリーニングにおいて観測された。いくつかのフェノチジン系はさらに、動物モデルにおいて腫瘍成長の著しい阻害を示した。これらの発見は、一般的な集団と比較した場合、神経遮断剤の薬物療法での統合失調症患者における低いガン発生頻度と一致している。
【0017】
国際特許出願公開WO02/43652(これは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)は増殖性疾患の治療における様々な定型向精神性薬剤および非定型向精神性薬剤の使用を教示する。具体的には、国際特許出願公開WO02/43652は、環状の向精神性薬剤(例えば、三環、二環および単環の薬剤)が、神経膠腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、結腸ガン、肺ガンおよび前立腺ガンをはじめとする数多くの腫瘍の治療、ならびに、多剤耐性(MDR)ガン細胞(例えば、B16メラノーマ細胞(これはドキソルビシンおよびコルヒチンに対して抵抗性であることが知られている)および神経芽細胞腫(SH−SY5T、これは5−FUおよびドキソルビシンに対して抵抗性である)など)の治療において効果的な薬剤として役立ち得ることを教示する。そのうえ、MDRガンの治療における向精神性薬剤の活性を教示することのほかに、国際特許出願公開WO02/43652はさらに、化学感作剤としての、すなわち、ガン細胞(特に、MDRガン細胞)を細胞毒性薬物に対して効果的に感受性にする化合物としての向精神性薬物の使用を教示する。
【0018】
しかしながら、国際特許出願公開WO02/43652の教示は、特に、MDRガンの治療における向精神性薬剤の抗増殖活性および化学感作活性に関しては、非常に好都合であるが、このような向精神性薬剤の使用は、それにより誘導される有害な副作用によって非常に制限される。
【0019】
バルプロ酸は、抗痙攣活性を有し、従って、現在、てんかんのための承認薬物として知られ、かつ使用されている向精神性薬物である。近年、バルプロ酸が抗増殖作用をいくつかの細胞株に対してインビトロおよびインビボの両方で発揮することが見出され、また、予備的な報告では、ヒトの血液学的腫瘍および充実性腫瘍を治療するためのその使用が提案されている。様々な研究により、バルプロ酸の抗増殖活性はそのヒストンデアセチラーゼ阻害(HDACI)活性に由来することが示唆されている[16〜22]。しかしながら、さらなる研究では、抗てんかん薬(例えば、抗痙攣剤)と抗ガン活性との間での一般的な関係性が示される。
【0020】
酪酸(BA)および4−フェニル酪酸(PBA)(GABAはそれらの誘導体である)もまた、広範囲の様々な新生物細胞における分化剤および抗増殖剤としてインビトロで作用することが知られている[5]。酪酸および4−フェニル酪酸はともに、多形質発現性の薬剤として知られており、それらの最も注目すべき活性な1つが、クロマチンの弛緩および転写活性の変化をもたらす、核ヒストンにおけるアセチル化レベルの可逆的な増大である[6]。この作用機構は酪酸および4−フェニル酪酸の抗ガン活性にさらに関連づけられることが主張されている。
【0021】
従って、先行技術では、中枢神経系の障害および疾患の治療、ならびに、増殖性の障害および疾患(例えば、悪性および良性の腫瘍ならびにMDRガンなど)の治療における向精神性薬物の使用、また、抗増殖剤および化学感作剤としての向精神性薬物の使用が教示される。先行技術ではさらに、神経遮断剤により誘導される副作用を軽減するための潜在的な薬剤としてのGABAアゴニスト(GABAそのものを含む)の使用、ならびに、抗増殖剤としての酪酸およびその誘導体の使用が教示される。
【0022】
それにもかかわらず、依然として、抗増殖性薬物および化学感作剤としてもまた役立ち得る、改善された治療活性およびさらに軽減された副作用によって特徴づけられる向精神性薬物が必要であることが広く認められており、従って、そのような向精神性薬物を有することは非常に好都合である。
【発明の概要】
【0023】
本発明によれば、(i)向精神性薬物と、その向精神性薬物により誘導される副作用を軽減するために、および/または、その向精神性薬物の治療活性を強化するために、および/または、抗増殖活性を発揮させるために選択された有機酸との化学的コンジュゲート;(ii)向精神性薬物と、GABAアゴニスト(GABAそのものを含む)との化学的コンジュゲート;(iii)向精神性薬物と抗増殖剤との化学的コンジュゲート;(iv)向精神性薬物と鎮痛剤との化学的コンジュゲート;(v)それらを合成するための方法;(vi)従来の向精神性薬物に特徴的な副作用を軽減し、および/または、その向精神性効力を高めながら、向精神性の障害および疾患を治療および/または防止することにおけるその使用;(vii)増殖性の障害および疾患を治療および/または防止することにおけるその使用;および(viii)化学感作性薬剤としてのその使用を提供する。
【0024】
向精神性薬物のそのような化学的コンジュゲートは、最小限に抑えられた有害な副作用、強化された向精神的治療活性および抗増殖活性、ならびに、化学感作活性によって特徴づけられることが本明細書中に示される。そのような化学的コンジュゲートは、予想外にも、その治療効果および副作用の最小化の両方に関してその母体化合物と比較した場合、相乗作用をもたらすことがさらに本明細書中に示される。
【0025】
従って、本発明の1つの局面によれば、第2の化学的成分に共有結合的に連結された第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートが提供される。この場合、第1の化学的成分は向精神性薬物残基であり、さらに、第2の化学的成分は、その向精神性薬物がそれ自体で投与されたときに向精神性薬物により誘導される副作用を軽減するように、および/または、向精神性薬物の治療活性を強化するように、および/または、抗増殖活性を発揮させるように選択される有機酸残基である。
【0026】
本発明の1つの実施形態において、向精神性薬物残基には、抗精神病薬を除いて向精神性薬物の任意の残基が含まれる。
【0027】
本発明の別の実施形態において、第2の化学的成分は鎮痛剤残基であり、かつ、向精神性薬物は本明細書中下記で定義される通りである。
【0028】
本発明の別の局面によれば、本発明の化学的コンジュゲートを有効成分として含み、かつ、医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物が提供される。
【0029】
本発明の医薬組成物は好ましくは、化学療法剤との組合せで、および/または、化学感作が有益である医学的状態で、中枢神経系(CNS)の障害または疾患の治療において使用するために、および/または、増殖性の障害または疾患の治療において使用するために、および/または、化学感作において使用するために、包装物に包装され、かつ、包装物上または包装物内において活字で特定される。
【0030】
本発明のさらに別の局面によれば、対象におけるCNSの障害または疾患を治療または防止する方法が提供され、この場合、この方法は、対象に治療有効量の本発明の化学的コンジュゲートを投与することを含む。
【0031】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、CNSの障害または疾患は、精神病的な障害または疾患、不安障害、解離型障害、人格障害、気分障害、情動障害、神経変性性の疾患または障害、痙攣性障害、境界性障害、および、精神的な疾患または障害からなる群から選択される。
【0032】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、CNSの障害または疾患は、統合失調症、偏執症、児童精神病、ハンチングトン病、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、うつ病、躁うつ病、不安、パーキンソン病、アルツハイマー病およびてんかんからなる群から選択される。
【0033】
本発明のさらに別の局面によれば、対象における増殖性の障害または疾患を治療または防止する方法が提供され、この場合、この方法は、対象に治療有効量の本発明の化学的コンジュゲートを投与することを含む。
【0034】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、増殖性の障害または疾患は、脳腫瘍、脳転移物および末梢腫瘍からなる群から選択される。
【0035】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、増殖性障害はガン(例えば、多剤耐性ガンなど)である。
【0036】
本発明のさらなる局面によれば、化学感作の方法が提供される。この方法は、その必要性のある対象に化学療法有効量の1つまたは複数の化学療法剤および化学感作有効量の本発明の化学的コンジュゲートを投与することを含む。
【0037】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、対象はガン(例えば、多剤耐性ガンなど)を有する。
【0038】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、第2の化学的成分は、カルボン酸エステル結合、アルキルオキシカルボン酸エステル結合、アミド結合、イミン結合およびチオエステル結合からなる群から選択される結合を介して第1の化学的成分に共有結合的に連結される。
【0039】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第2の化学的成分は、抗増殖剤残基、鎮痛剤残基およびGABAアゴニスト残基からなる群から選択される。
【0040】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、向精神性薬物は抗増殖活性を有する。
【0041】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、向精神性薬物は化学感作活性を有する。
【0042】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、向精神性薬物残基は、フェノチアジン残基、フェノチアジン誘導体残基およびバルプロ酸残基からなる群から選択される。
【0043】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、向精神性薬物残基は抗精神病薬残基である。
【0044】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、抗精神病薬残基は、定型抗精神病薬残基および非定型抗精神病薬残基からなる群から選択される。
【0045】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、向精神性薬物残基は抗うつ剤残基であり、例えば、フルオキセチン残基およびノルトリプチリン残基などである。
【0046】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、向精神性薬物残基は、不安緩解薬残基、抗うつ剤残基、抗痙攣薬残基、抗パーキンソン症候群薬残基、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤残基、MAO阻害剤残基、三環向精神性薬物残基、二環向精神性薬物残基、単環向精神性薬物残基、フェノチアジン系残基、ベンゾジアゼピン系残基およびブチロフェノン系残基からなる群から選択される。
【0047】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、向精神性薬物残基は、クロルプロマジン残基、ペルフェナジン残基、フルフェナジン残基、ズクロペンチキソール残基、チオプロパザート残基、ハロペリドール残基、ベンペリドール残基、ブロムペリドール残基、ドロペリドール残基、スピペロン残基、ピモジド残基、ピペラセタジン残基、アミルスルプリド残基、スルピリド残基、クロチアピン残基、ジプラシドン残基、レモキシプリド残基、スルトプリド残基、アリザプリド残基、ネモナプリド残基、クロザピン残基、オランザピン残基、ジプラシドン残基、セルチンドール残基、クエチアピン残基、フルオキセチン残基、フルボキサミン残基、デシプラミン残基、パロキセチン残基、セルトラリン残基、バルプロ酸残基、テマザゼパム残基、フルテマゼパム残基、ドキセファゼパム残基、オキサゼパム残基、ロラゼパム残基、ロルメタゼパム残基、シノラゼパム残基、フルタゾラム残基、ロピラゼパム残基、メプロバマート残基、カリソプロドール残基、アセトフェナジン残基、カルフェナジン残基、ジキシラジン残基、プリシアジン残基、ピポチアジン残基、ホモフェナジン残基、ペリメタジン残基、ペルチペンチル残基、フルペンチキソール残基、ピフルチキソール残基、テフルチキソール残基、オキシペテピン残基、トリフルペリドール残基、ペンフルリドール残基、メクロベミド残基、ノルクロミプラミン残基、アモキサピン残基、ノルトリプチリン残基、プロトリプチリン残基、レボキセチン残基、タクリン残基、ラサギリン残基、アマンチジン残基、ズロキセチン残基、フェノバルビタール残基およびフェニトイン残基からなる群から選択される。
【0048】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、GABAアゴニスト残基は、(±)−バクロフェン残基、γ−アミノ酪酸(GABA)残基、γ−ヒドロキシ酪酸残基、アミノオキシ酢酸残基、β−(4−クロロフェニル)−γ−アミノ酪酸残基、イソニペコチン酸残基、ピペリジン−4−スルホン酸残基、3−アミノプロピル亜ホスホン酸残基、3−アミノプロピルホスフィン酸残基、3−(アミノプロピル)メチルホスフィン酸残基、1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸残基(ガバペンチン)、4−アミノ−5−ヘキセン酸(γ−ビニルGABA、ビガバトリン)残基、および3−(2−イミダゾリル)−4−アミノブタン酸残基からなる群から選択される。
【0049】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、抗増殖剤残基は、酪酸残基および4−フェニル酪酸残基からなる群から選択される。
【0050】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、鎮痛剤残基は非ステロイド系抗炎症薬残基である。
【0051】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、有機酸残基は一般式−R−C(=O)−を有し、この場合、Rは、1個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の炭化水素残基、1個〜20個の炭素原子と、酸素、窒素およびイオウからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とを有する置換または非置換の炭化水素残基、ならびに、R1からなる群から選択され、ただし、R1は一般式−Z−C(=O)O−CHR2−R3の残基であり、式中、Zは、単結合、1個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の炭化水素残基、ならびに、1個〜20個の炭素原子と、酸素、窒素およびイオウからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とを有する置換または非置換の炭化水素残基からなる群から選択される;R2は、水素、および、1個〜10個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択される;かつ、R3は、水素、1個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の炭化水素残基、ならびに、1個〜20個の炭素原子と、酸素、窒素およびイオウからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とを有する置換または非置換のアルキルからなる群から選択される。
【0052】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、Rは、3個〜5個の炭素原子を有する置換または非置換のアルキルである。
【0053】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、有機酸残基は、酪酸残基、吉草酸残基、4−フェニル酪酸残基、4−アミノ酪酸残基、レチノイン酸残基、スリンダク酸残基、アセチルサリチル酸残基、イブプロフェン残基、マロン酸残基、コハク酸残基、グルタル酸残基、フマル酸残基およびフタル酸残基からなる群から選択される。
【0054】
本発明のさらなる局面によれば、本発明の化学的コンジュゲートを合成する方法が提供される。この方法は、有機酸および向精神性薬物を反応して、その結果、向精神性薬物の残基に共有結合的に連結された有機酸の残基を得るようにすることを含む。
【0055】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、有機酸の残基はカルボン酸エステル結合を介して向精神性薬物の残基に共有結合的に連結され、この場合、本発明の方法はさらに、反応の前に、有機酸をそのアシルクロリド誘導体に変換することを含む。
【0056】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、有機酸の残基はチオエステル結合を介して向精神性薬物の残基に共有結合的に連結され、この場合、本発明の方法はさらに、反応の前に、有機酸をそのアシルクロリド誘導体に変換すること、および、向精神性薬物をそのチオール誘導体に変換することを含む。
【0057】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、有機酸の残基はアミド結合を介して向精神性薬物の残基に共有結合的に連結され、この場合、本発明の方法はさらに、反応の前に、有機酸をそのアシルクロリド誘導体に変換すること、および、向精神性薬物をそのアミン誘導体に変換することを含む。
【0058】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、有機酸の残基はアルキルオキシカルボン酸エステル結合を介して向精神性薬物の残基に共有結合的に連結され、この場合、本発明の方法はさらに、反応の前に、向精神性薬物をそのクロロアルキルエステル誘導体に変換することを含む。
【0059】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、有機酸の残基はイミン結合を介して向精神性薬物の残基に共有結合的に連結され、この場合、本発明の方法はさらに、反応の前に、有機酸をそのアルデヒド誘導体に変換すること、および、向精神性薬物をそのアミン誘導体に変換することを含む。この方法で使用される有機酸および向精神性薬物は、好ましくは、本明細書中上記で記載された本発明の有機酸残基および向精神性薬物残基に由来する。
【0060】
有機酸が、遊離アミノ基を含むGABAアゴニストである場合、本発明の方法はさらに、遊離アミノ基を反応の前に保護基で保護し、その結果、その反応によって、向精神性薬物の残基に共有結合的に連結された有機酸のアミノ保護残基を得るようにすること、および、向精神性薬物の残基に共有結合的に連結された有機酸のアミノ保護残基を得た後、保護基を除くことを含む。好ましくは、本発明の方法はさらに、保護の後、および、反応の前に、有機酸をそのアシルイミダゾール誘導体に変換することを含む。
【0061】
本発明は、最小限に抑えられた有害な副作用を誘導し、かつ、より大きい治療活性を発揮する、向精神性薬物の新規かつ強力な化学的コンジュゲートを、向精神性および/または増殖性の障害および疾患を治療および防止するために、また、化学感作剤として使用するために提供することによって、現在知られている形態の欠点に対処することに成功している。
【図面の簡単な説明】
【0062】
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図1】図1は、5mg/kg体重のペルフェナジンおよび等モル用量のその化学的コンジュゲートが腹腔内注射されたラットにおける総カタレプシー(図1a)およびプロラクチン血中レベル(図1b)に対するペルフェナジンおよび本発明によるその化学的コンジュゲート(AN167、AN168およびAN130)の影響を明らかにする、構造活性相関(SAR)研究により得られた棒グラフおよびプロットを示す。
【図2】図2は、5mg/kgのペルフェナジンおよび等モル用量の本発明によるその化学的コンジュゲートによる治療の後でのラットにおける総カタレプシーを明らかにする棒グラフである(SAR研究)。
【図3a】図3aは、ラットにおける総カタレプシーに対するペルフェナジン(5mg/Kg)、フルフェナジン(7.5mg/Kg)および本発明によるそれらの化学的コンジュゲート(AN167、AN168、AN180およびAN187)の影響を明らかにする棒グラフおよびプロットを示す。
【図3b】図3bは、ラットにおけるプロラクチン血中レベルに対する、ペルフェナジン、フルフェナジンおよびそれらのGABA化学的コンジュゲート(AN168およびAN187)の影響を明らかにする棒グラフおよびプロットを示す。
【図4】図4は、ペルフェナジンおよび本発明によるその化学的コンジュゲート(図4a)、ならびに、フルフェナジンおよび本発明によるその化学的コンジュゲート(図4b)により誘導された、ラットにおけるカタレプシーの経時変化を明らかにする比較プロットである。
【図5】図5aおよび図5bは、ラットにおけるカタレプシーに対する、ペルフェナジンとGABAとの本発明の化学的コンジュゲート(化合物AN168)、および、等モル用量の、ペルフェナジンとGABAとの混合物の影響を明らかにする棒グラフおよび比較プロットを示す。
【図6】図6は、ラットにおける総カタレプシーに対する本発明の化学的コンジュゲート(AN167およびAN168)の影響を明らかにする棒グラフである(4つの独立した実験の平均)。
【図7a】図7aは、2分以内に目標に到達する動物の割合に関して測定された、マウスにおけるカタレプシーに対する、化学的コンジュゲートAN168、等モル用量のペルフェナジン、および、等モル用量の、ペルフェナジンとGABAとの混合物の影響を明らかにする棒グラフを示す。
【図7b】図7bは、動物が目標に到達するために要した時間に関して測定された、マウスにおけるカタレプシーに対する、化学的コンジュゲートAN168、等モル用量のペルフェナジン、および、等モル用量の、ペルフェナジンとGABAとの混合物の影響を明らかにする棒グラフを示す。
【図8】図8は、「ピアノ」試験によって測定されたときの、ラットにおけるカタレプシーに対する、経口投与されたペルフェナジンおよびその化学的コンジュゲートAN168の影響を明らかにする比較プロットを示す(図8bは、図8aに示される実験の3ヶ月後に行われた実験で得られたデータを示す)。
【図9】図9は、「ピアノ」試験によって測定されたときの、経口投与されたペルフェナジンおよびその化学的コンジュゲートAN168によって様々な濃度でラットにおいて誘導された総カタレプシーを明らかにする棒グラフを示す(図9bは、図9aに示される実験の3ヶ月後に行われた実験で得られたデータを示す)。
【図10a】図10aは、24時間の期間中に「ピアノ」試験によって測定されたときの、ラットにおけるカタレプシーの経時変化に対する、様々な濃度の経口投与されたペルフェナジンおよびその化学的コンジュゲートAN168の影響を明らかにする比較プロットおよび棒グラフである。
【図10b】図10bは、24時間の期間中に「ピアノ」試験によって測定されたときの、ラットにおける総カタレプシーに対する、様々な濃度の経口投与されたペルフェナジンおよびその化学的コンジュゲートAN168の影響を明らかにする比較プロットおよび棒グラフである。
【図11】図11は、「壁」試験よって測定されたときの、ラットにおける総カタレプシーに対する、様々な濃度で経口投与されたペルフェナジンおよびAN168の影響を明らかにする棒グラフである。
【図12】図12は、ラットにおけるプロラクチン血中レベルに対する経口投与されたペルフェナジンおよびAN168の影響を明らかにする比較プロットを示す。
【図13】図13は、B16マウスメラノーマ細胞の増殖に対するペルフェナジンおよび本発明のその化学的コンジュゲート(AN130、AN167およびAN168)の影響を明らかにする比較プロットを示す。
【図14】図14は、C6ラット神経膠腫細胞の生存性に対する、増大する濃度のペルフェナジン、AN168、GABA、ビンクリスチンおよびシスプラチンの影響を明らかにする比較プロットを示す。
【図15】図15は、JurkatTリンパ腫細胞の生存性に対する、増大する濃度のペルフェナジン、AN168およびデキサメタゾンの影響を明らかにする比較プロットを示す。
【図16】図16は、30μMのビンクリスチンにより治療されたC6ラット神経膠腫細胞の生存性に対する様々な濃度のペルフェナジンおよびAN168の影響を明らかにする棒グラフである。
【図17】図17は、C6ラット神経膠腫細胞の生存性に対するシスプラチン(5μM〜50μM)およびシスプラチン(5μM〜50μM)とAN168(10μMおよび15μM)との組合せの影響を明らかにする棒グラフである。
【図18】図18は、C6ラット神経膠腫細胞におけるDNA断片化に対する、ペルフェナジン、AN168およびシスプラチンの影響を明らかにする棒グラフである。
【図19】図19は、正常な脳細胞に対するペルフェナジンおよびその化学的コンジュゲート(AN130、AN167およびAN168)の影響(IC50値)を明らかにする棒グラフである。
【図20】図20は、ラット筋細胞の生存性に対する等モル用量のペルフェナジンおよびAN168の影響を明らかにする棒グラフである。
【図21】図21は、ペルフェナジン(per)および本発明の化合物AN167が腹腔内注射されたラットにおける死亡数の経時変化を明らかにする比較プロットを示す。
【図22】図22は、各試験群において2時間の期間中に記録されたよじ登り試みの総数による、ラットにおけるD−アンフェタミン誘導のよじ登り行動に対する様々な濃度のペルフェナジンおよび/またはGABAならびに等モル用量の化学的コンジュゲートAN−168の腹腔内投与の影響を明らかにする棒グラフである(各点は平均+/−SEMおよび治療動物数を表す)。
【図23】図23は、2時間の期間中でのラットにおけるD−アンフェタミン誘導のよじ登り行動に対する様々な濃度のペルフェナジンおよび/またはGABAならびに等モル用量の化学的コンジュゲートAN−168の腹腔内投与の影響の経時変化を明らかにする比較プロットを示す。
【図24】図24は、各試験群において2時間の期間中に記録された、ラットにおけるD−アンフェタミン誘導の頭部運動に対する様々な濃度のペルフェナジンおよび等モル用量の化学的コンジュゲートAN−168の腹腔内投与の影響を明らかにする棒グラフである(各点は平均+/−SEMおよび治療動物数を表す)。
【図25】図25は、2時間の期間中でのラットにおけるD−アンフェタミン誘導の頭部運動に対する様々な濃度のペルフェナジンおよび等モル用量の化学的コンジュゲートAN−168の腹腔内投与の影響の経時変化を明らかにする比較プロットを示す。
【図26】図26は、2時間の期間中に各試験群において記録されたよじ登り試みの総数による、ラットにおけるD−アンフェタミン誘導のよじ登り行動に対する2.5mg/kgのペルフェナジン(5mg/kgのGABAとともに、または、GABAを伴わずに)および等モル用量の化学的コンジュゲートAN−168の経口投与の影響を明らかにする棒グラフである(各点は平均+/−SEMおよび治療動物数を表す)。
【図27】図27は、2時間の期間中の各試験群でのラットにおけるD−アンフェタミン誘導の頭部運動に対する2.5mg/kgのペルフェナジン(5mg/kgのGABAとともに、または、GABAを伴わずに)および等モル用量の化学的コンジュゲートAN−168の経口投与の影響を明らかにする棒グラフである(各点は平均+/−SEMを表す)。
【図28】図28は、2時間の期間中のラットにおけるD−アンフェタミン誘導の頭部運動に対する2.5mg/kgのペルフェナジン(5mg/kgのGABAとともに、または、GABAを伴わずに)および等モル用量の化学的コンジュゲートAN−168の経口投与の影響の経時変化を明らかにする比較プロットを示す。
【図29】図29は、ラットにおけるD−アンフェタミン誘導のよじ登り行動に対する様々な濃度のオランザピンの経口投与の影響を明らかにする棒グラフである。
【図30】図30は、ラットにおけるD−アンフェタミン誘導のよじ登り行動に対する様々な濃度のオランザピンの経口投与の影響の経時変化を明らかにする比較プロットを示す。
【図31】図31は、ラットにおけるD−アンフェタミン誘導の頭部運動に対する様々な濃度のオランザピンの経口投与の影響を明らかにする棒グラフである。
【図32】図32は、ヒトU−251神経膠芽細胞腫細胞の生存性に対する、増大する濃度のAN−216の影響を明らかにするプロット(図32a)、ならびに、増大する濃度のAN−216、GABA、バルプロ酸、および、GABAとバルプロ酸との1:1の等モル混合物の影響を明らかにする比較プロット(図32b)を示す。
【図33】図33は、ヒトU−251神経膠芽細胞腫細胞の生存性に対するその影響を測定しながら、AN−216、AN−138、AN−223、バルプロ酸(バルプロエートとして示される)、および、GABAとバルプロ酸との等モル混合物について得られたIC50値を明らかにする棒グラフである。
【図34】図34は、ヒトU−87神経膠腫細胞の生存性に対する、増大する濃度のAN−216、AN−138、AN−148およびAN−223の影響を明らかにする比較プロットを示す。
【図35】図35は、ヒトU−251神経膠腫細胞の生存性に対する、増大する濃度のAN−216、AN−138、AN−148およびAN−223の影響を明らかにする比較プロットを示す。
【図36】図36は、ヒトのU−251神経膠腫細胞およびU−87神経膠腫細胞の生存性に対するその影響を測定しながら、AN−216、AN−138、AN−148およびAN−223について得られたIC50値を明らかにする棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明は、有機酸に共有結合的に連結された向精神性薬物の化学的コンジュゲート、その調製方法、CNSの障害および疾患、ならびに、増殖性の障害および疾患(例えば、脳腫瘍、脳転移物、末梢腫瘍、MDRガンおよび他の増殖性疾患など、これらに限定されない)の治療におけるその使用、また、化学感作剤としてのその使用に関する。
【0064】
本発明による化学的コンジュゲートの原理および操作は、図面および添付された説明を参照してより良く理解することができる。
【0065】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるまたは実施例によって例示される構成要素の配置および構造の細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施することができ、または様々な方法で実施される。また、本明細書中で用いられる表現および用語は説明のためであり、従って限定として見なされるべきではないことを理解しなければならない。
【0066】
本発明を着想しているとき、向精神性薬物(これはまた、抗増殖活性および/または化学感作活性を有し得る)と、GABAアゴニスト、鎮痛剤または抗増殖剤とを共有結合的にカップリングする化学的コンジュゲートは、大きい向精神性および/または抗増殖性の治療活性、ならびに、化学感作活性を、最小限に抑えられた有害な副作用を伴って発揮し得ることが仮定された。
【0067】
この仮説に対する基礎となる根拠は下記の通りである:CNSの障害または疾患は数タイプの向精神性薬物によって治療可能である。しかしながら、そのような向精神性薬物の投与は、典型的には、短期間および長期間の有害な副作用が伴い、また、さらには、不良な薬物動態学によってしばしば制限される。これらの有害な副作用の発症は、多くの場合、脳内のドーパミン作動性のD1受容体およびD2受容体における誘導された不均衡、ならびに、脳におけるGABA系の低下した活性に起因すると考えられる。
【0068】
従って、向精神性薬物をGABAアゴニストと共有結合的にカップリングすることにより、最小限に抑えられた副作用とともに、改善された向精神活性を発揮する化学的コンジュゲートがもたらされることが仮定された。
【0069】
具体的には、向精神性薬物とGABAアゴニストとのそのようなカップリングは、向精神活性およびGABAにより増大した活性を同時に発揮する化合物をもたらすので、この点で非常に有益であることが推定された。
【0070】
GABA系活性の増大は、現在、鎮痛剤、GABAアゴニストまたはGABA様化合物の投与によって達成されるが、向精神性薬物により誘導される副作用を軽減し、かつ、GABA系に関連づけられる他の治療的利益(例えば、精神安定化および緩和)をさらに提供することが知られている。GABAアゴニストはさらに、向精神性薬物により誘導されるドーパミン作動性受容体の増大した感受性を中和することが知られている。しかしながら、ある種のGABAアゴニストおよび鎮痛剤の投与はそれらの親水性的性質によって制限される。
【0071】
従って、向精神性薬物およびGABAアゴニストを共有結合的にカップリングすることによって得られる化学的コンジュゲートは、(i)向精神性薬物成分およびGABAアゴニスト成分の両方によって誘導される相乗的な向精神活性およびGABAにより増大する活性;(ii)低下した向精神剤誘導の副作用;(iii)その母体化合物と比較した場合、カップリングされた向精神性薬物およびGABAアゴニストの血液脳関門を越えることに関して改善された薬物動態学;および(iv)改善された向精神活性をもたらす、脳における神経伝達物質の改善されたバランスによって特徴づけられることがさらに仮定された。
【0072】
そのうえ、いくつかの向精神性薬物、特に、神経遮断薬(例えば、フェノチアジン系など)および抗痙攣剤(例えば、バルプロ酸など)は強力な抗増殖剤であることがこの分野では知られている。加えて、いくつかの向精神性薬物はさらに、化学療法薬物との組合せで使用されたとき、化学感作剤として役立ち得る。従って、向精神性薬物と、抗増殖活性を有する化学的成分とを共有結合的にカップリングする化学的コンジュゲートは、一層より大きい抗増殖活性および/または化学感作活性を発揮することがなおさらに仮定された。そのような化学的コンジュゲートは、脳内受容体に対する向精神性残基の親和性およびその改善された脳内薬物動態学のために、特に脳における増殖性の障害および疾患の治療において非常に有益であり得る。
【0073】
本発明を実施に移しているとき、下記の実施例の節においてさらに例示されるように、向精神性薬物と、その向精神性薬物により誘導される副作用を軽減し、および/または、強化された治療活性もしくは他の加わった価値をその向精神性薬物に提供するように選択された化学的成分(例えば、GABAアゴニスト)、あるいは、抗増殖活性を発揮するように選択された化学的成分とを共有結合的にカプリングすることは、(i)最小限に抑えられた有害な副作用;(ii)高い向精神活性;(iii)高い抗増殖活性;(vi)高い化学感作活性;および(v)低下した毒性(これらはすべてが、知られている向精神性薬物と比較した場合である)によって相乗的に特徴づけられる化学的コンジュゲートをもたらすことが見出された。GABAアゴニストを含む本発明の化学的コンジュゲートはさらに、相乗的な向精神活性およびGABA誘導による活性によって特徴づけられた。
【0074】
従って、本発明の化学的コンジュゲートは、抗増殖剤および/または化学感作剤として、CNSの障害および疾患ならびに増殖性の障害および疾患を治療するために本発明に従って使用される。CNSおよび/または増殖性の障害および疾患を本発明に従って治療するために使用される化学的コンジュゲートのそれぞれが、第2の化学的成分に共有結合的に連結される第1の化学的成分を含む。第1の化学的成分は向精神性薬物残基であり、これに対して、第2の化学的成分は、向精神性薬物がそれ自体で投与されたときの向精神性薬物により誘導される副作用を軽減し、および/または、向精神性薬物の治療活性を増強し、および/または、抗増殖活性を発揮するように選択される有機酸である。
【0075】
本明細書中で使用される用語「化学的成分」は、化学的化合物に由来する残基で、その機能性を保持する残基を示す。
【0076】
用語「残基」は、本明細書中では、この分野で広く受け入れられているように、別の分子に共有結合的に連結される分子の主要な部分を示す。
【0077】
従って、表現「向精神性薬物残基」は、別の化学的成分(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)に共有結合的に連結される向精神性薬物の主要な部分を示す。
【0078】
本明細書中上記で記載されるように、表現「向精神性薬物」は、中枢神経系において活性を発揮し、かつ、それにより、中枢神経系の様々な疾患または障害の治療において使用することができる任意の作用剤または薬物を包含する。
【0079】
第2の成分がGABAアゴニストまたは抗増殖剤である場合、本明細書中で使用される表現「向精神性薬物」は、抗精神病薬を除いて、本明細書中に記載されるような作用剤または薬物のいずれをも包含する。
【0080】
第2の成分が鎮痛剤残基である場合、表現「向精神性薬物」は、本明細書中で定義されるような作用剤または薬物のいずれをも包含する。
【0081】
従って、向精神性薬物残基には、本発明によれば、例えば、不安緩解薬(例えば、ベンゾジアゼピン系など、これに限定されない)に由来する残基、抗精神病薬(例えば、フェノチアジン系およびブチロフェノン系、MAO阻害剤、抗うつ剤、抗痙攣性薬物(これはまた本明細書中およびこの分野では抗痙攣剤と呼ばれる)、抗パーキンソン症候群薬、ならびに、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤など、これらに限定されない)に由来する残基が含まれる。向精神性薬物は、三環性、二環性または単環性であり得る。
【0082】
特に好ましい向精神性薬物は、本発明によれば、有機酸またはその反応性誘導体と反応することができるアミン基、チオール基またはヒドロキシル基(これらの用語は本明細書中下記で定義される通りである)を有するものである。そのような基は、遊離官能基または別の官能基(例えば、アミド基およびカルボン酸基など)の一部(これらの用語は本明細書中下記で定義される通りである)のいずれかとして向精神性薬物に存在させることができる。
【0083】
そのような向精神性薬物残基の残基の代表的な例には、限定されないが、定型抗精神病剤および非定型抗精神病剤の残基、例えば、クロルプロマジン残基、ペルフェナジン残基、フルフェナジン残基、ズクロペンチキソール残基、チオプロパザート残基、ハロペリドール残基、ベンペリドール残基、ブロムペリドール残基、ドロペリドール残基、スピペロン残基、ピモジド残基、ピペラセタジン残基、アミルスルプリド残基、スルピリド残基、クロチアピン残基、ジプラシドン残基、レモキシプリド残基、スルトプリド残基、アリザプリド残基、ネモナプリド残基、クロザピン残基、オランザピン残基、ジプラシドン残基、セルチンドール残基、クエチアピン残基、アセトフェナジン残基、カルフェナジン残基、ジキシラジン残基、ピリシアジン残基、ピポチアジン残基、ホモフェナジン残基、ペリメタジン残基、ペルチペンチル残基、フルペンチキソール残基、ピフルチキソール残基、テフルチキソール残基、オキシペテピン残基、トリフルペリドール残基およびペンフルリドール残基などが含まれる。
【0084】
そのような向精神性薬物残基のさらなる代表的な例には、限定されないが、抗うつ剤の残基、例えば、フルオキセチン残基、フルボキサミン残基、デシプラミン残基、パロキセチン残基、セルトラリン残基、メクロベミド残基、ノルクロミプラミン残基、アモキサピン残基、ノルトリプチリン残基、プロトリプチリン残基、レボキセチン残基およびズロキセチン残基など;抗痙攣剤の残基、例えば、バルプロ酸残基、フェノバルビタール残基およびフェニトイン残基など;不安緩解剤の残基、例えば、テマザゼパム残基、フルテマゼパム残基、ドキセファゼパム残基、オキサゼパム残基、ロラゼパム残基、ロルメタゼパム残基、シノラゼパム残基、フルタゾラム残基、ロピラゼパム残基、メプロバマート残基、カリソプロドール残基など;抗パーキンソン症候群剤の残基、例えば、ラサギリン残基およびアマンタジン残基など;および、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の残基、例えば、タクリン残基などが含まれる。
【0085】
本発明の好ましい実施形態によれば、向精神性薬物残基はさらに抗増殖活性を発揮する。そのような二重活性の向精神性薬物には、例えば、フェノチアジン系およびその誘導体、ならびに、抗痙攣剤、例えば、バルプロ酸およびその誘導体などが含まれる。
【0086】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、向精神性薬物残基はさらに化学感作活性を発揮する。そのような二重活性の向精神性薬物には、例えば、フェノチアジン系およびその誘導体、チオキサンテン系およびその誘導体、クロザピン、クロミプラミンおよびパロキセチンが含まれる。
【0087】
本明細書中で使用される用語「化学感作」は、化学感作作用剤の非存在下で化学療法剤により発揮される細胞毒性のレベルと比較されるとき、化学感作作用剤の存在下でのガン細胞(特に、多剤耐性ガン細胞)に対する化学療法剤の測定された細胞毒性の増大または強化を意味する。
【0088】
用語「化学感作作用剤」および用語「化学感作剤」(これらは本明細書中では交換可能に使用される)は、ガン細胞を化学療法に対してより感受性にする化合物を記載する。
【0089】
本明細書中上記で述べられたように、向精神性薬物残基は、本発明によれば、有機酸残基である第2の化学的成分に共有結合的にカップリングされる。
【0090】
表現「有機酸残基」は、遊離カルボン酸基を含む、有機酸に由来する本明細書中で定義されるような残基を示す。
【0091】
用語「遊離カルボン酸基」は、そのまま、そのプロトン化状態、または、そのイオン化状態もしくは塩状態のいずれかで「−C(=O)OH」基を包含する。
【0092】
有機酸残基は、本発明によれば、向精神性薬物が単独で投与されたならば、向精神性薬物により誘導され得る副作用を軽減するように、および/または、向精神性薬物の治療活性を強化するように、および/または、さらなる加わった価値を向精神性薬物に提供する(例えば、GABA活性を増大する)ように、および/または、抗増殖活性を発揮するように選択される。有機酸残基は、本発明によれば、一般式−R−C(=O)−(式中、Rは、例えば、1個〜20個の炭素原子を有する炭化水素残基であり得る)を有する残基であり得る。
【0093】
本明細書中で使用される用語「炭化水素」は、共有結合的に連結される炭素原子および水素原子からなる鎖をその基本骨格として含む有機化合物を示す。
【0094】
従って、本発明による炭化水素残基はアルキルまたはシクロアルキルであり得る。
【0095】
本明細書中で使用される用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を示す。好ましくは、アルキル基は1個〜20個の炭素原子を有する。
【0096】
数値範囲、例えば「1個〜20個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの20個までの炭素原子を含むということを意味する。さらに好ましくは、アルキル基は、1個〜10個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルである。最も好ましくは、アルキルは3個〜5個の炭素原子を有する。
【0097】
本明細書中で使用される用語「シクロアルキル」基は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有しない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を含む。シクロアルキル基の非限定な例は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエンおよびアダマンタンを含む。
【0098】
本発明によれば、炭化水素残基は直鎖構造または枝分かれ構造であり得る。炭化水素残基はさらに飽和または非飽和であり得る。非飽和であるとき、炭化水素残基はその炭素鎖に二重結合または三重結合を含むことができる。非飽和の炭化水素残基はアリールをさらに含むことができる。
【0099】
本明細書中で使用されるように、「アリール」基は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。アリール基の非限定的な例は、フェニル、ナフタレニルおよびアントラセニルを含む。
【0100】
炭化水素残基はさらに置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えばアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、シアノ、ハロ、オキソ、アミドおよびアミノであり得る。
【0101】
「ヘテロアリール」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有し、さらには完全共役のπ電子系を有する単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが含まれる。ヘテロアルキル基は置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えばアルキル、シクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、シアノ、ハロ、オキソ、アミドおよびアミノであり得る。
【0102】
「複素脂環」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有する単環基または縮合環基を示す。環はまた、1つまたは複数の二重結合を有することができる。しかしながら、環は完全共役のπ電子系を有しない。複素脂環基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えばアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、シアノ、オキソ、アミドおよびアミノであり得る。
【0103】
「ヒドロキシ」基は−OH基を示す。
【0104】
「アルコキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−O−アルキル基および−O−シクロアルキル基の両方を示す。
【0105】
「アリールオキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−O−アリール基および−O−ヘテロアリール基の両方を示す。
【0106】
「オキソ」基は−C(=O)−R′基を示し、ここでR′は例えば、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり得る。
【0107】
「ハロ」基は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示す。
【0108】
「トリハロメチル」基は、本明細書中で定義されるように、−CX3−基を示し、ここでXはハロ基である。
【0109】
「アミノ」または「アミン」基は−NH2基を示す。
【0110】
「アミド」基は−C(=O)−NRaRb基を示し、ここでRaおよびRbは、例えば、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールであり得る。
【0111】
有機酸残基は、本発明によれば、その鎖の内部に点在させた1つまたは複数のヘテロ原子をさらに含むことができる。ヘテロ原子は、例えば、酸素、窒素および/またはイオウが可能である。
【0112】
炭化水素残基はさらに、一般式−Z−C(=O)O−CHR2−R3−(式中、Zは、例えば、単結合、あるいは、本明細書中上記で記載されたような置換または非置換の炭化水素残基であり得る;R2は、例えば、水素、または、1個〜10個の炭素原子を有するアルキル基であり得る;R3は、例えば、水素、または、本明細書中上記で定義されるような炭化水素残基であり得る)を有する残基が可能である。
【0113】
従って、本発明による有機酸残基が由来し得る有機酸の代表的な例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、酪酸、4−フェニル酪酸、4−アミノ酪酸(GABA)、吉草酸、プロピオン酸、レチノイン酸、アセチルサリチル酸およびイブプロフェンが含まれる。
【0114】
本発明の現時点で最も好ましい実施形態によれば、化学的コンジュゲートの第2の化学的成分はGABAアゴニスト残基である。
【0115】
本明細書中で使用される表現「GABAアゴニスト残基」は、GABAアゴニストの、(この用語が本明細書中上記で定義されるような)残基を示し、一方、用語「GABAアゴニスト」は、脳におけるGABA系を活性化することができ、従って、GABAに薬理学的に関連づけられる化合物を記載する。用語「GABAアゴニスト」は、従って、GABA自体を包含することが理解され、これに対して、用語「GABAアゴニスト残基」は、従って、GABAアゴニスト自体の残基を包含することが理解される。
【0116】
従って、GABAアゴニスト残基には、本発明によれば、GABA(γ−アミノ酪酸)残基自体に加えて、向精神性薬物に対して共有結合的にカップリングすることができる他のGABAアゴニストの残基が含まれる。
【0117】
そのようなGABAアゴニスト残基の例には、(±)バクロフェン残基、イソニペコチン酸残基、γ−ヒドロキシ酪酸残基、アミノオキシ酢酸残基、β−(4−クロロフェニル)−γ−アミノ酪酸残基、ピペリジン−4−スルホン酸残基、3−アミノプロピル亜ホスホン酸残基、3−アミノプロピルホスフィン酸残基、3−(アミノプロピル)メチルホスフィン酸残基、1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸残基(ガバペンチン)、4−アミノ−5−ヘキセン酸(γ−ビニルGABA、ビガバトリン)残基、および3−(2−イミダゾリル)−4−アミノブタン酸残基が含まれる。
【0118】
本発明の別の現在好ましい実施形態によれば、本発明の化学的コンジュゲートにおける第2の化学的成分は抗増殖剤残基である。
【0119】
本明細書中で使用される用語「抗増殖剤残基」は、抗増殖活性によって特徴づけられる化合物の本明細書中で定義されるような残基を示す。
【0120】
本発明の好ましい実施形態によれば、抗増殖剤は酪酸または4−フェニル酪酸である。これらの化合物は、抗ガン活性を発揮することが知られており、また、GABAがその誘導体である化合物としてさらに特徴づけられ、従って、GABAミメティック剤としてさらに作用し得る。
【0121】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、本発明の化学的コンジュゲートにおける第2の化学的成分は鎮痛剤である。
【0122】
鎮痛剤を本発明の化学的コンジュゲートに取り込むことによりまた、二重の薬理学的活性、すなわち、向精神活性および痛み緩和が提供され得る。さらに、現在知られている鎮痛剤は、典型的には、その全身投与にしばしば伴う多くの欠点、例えば、不良な薬物動態学および有害な副作用(例えば、著しい痙攣作用)などを受ける。従って、鎮痛剤と向精神性薬剤とのコンジュゲート化はそれらの薬物動態学を改善し、かつ、これらの副作用を軽減する。そのうえ、いくつかの鎮痛剤がGABA活性を伴うことがこの分野では広く受け入れている。
【0123】
本発明の関連での使用のために好適である鎮痛剤の代表的な例には、限定されないが、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えば、アスピリン、イブプロフェン、フェンプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、ジクロフェナク、ジフルニサール、スリンダク、および、遊離カルボン酸基またはカルボン酸誘導体を有する任意の他のNSAIDが含まれる。好適な鎮痛剤のさらなる例には、そのような遊離カルボン酸基またはカルボン酸誘導体を有する他の非麻薬性鎮痛剤が含まれる。
【0124】
従って、本発明の化学的コンジュゲートの第2の化学的成分には、有機酸残基(これは好ましくはGABAアゴニスト残基である)、鎮痛剤残基および/または抗増殖剤残基が含まれる(これらの用語は本明細書中上記で定義および例示される通りである)。
【0125】
本発明の化学的コンジュゲートにおける第2の化学的成分は、好ましくはエステル結合を介して第1の化学的成分に共有結合的に連結される。エステル結合は、カルボン酸エステル結合、オキシアルキルカルボン酸エステル結合、アミド結合またはチオエステル結合が可能である。
【0126】
本明細書中で使用される表現「カルボン酸エステル結合」は「−O−C(=O)−」結合を含む。
【0127】
本明細書中で使用される表現「オキシアルキルカルボン酸エステル結合」は「O−R−−O−C(=O)−」結合(式中、Rは本明細書中上記で定義されるようなアルキルである)を含む。好ましくは、Rはメチルである。
【0128】
表現「アミド結合」は「−NH−C(=O)−」結合を含む。
【0129】
表現「チオエステル結合」は「−SH−C(=O)−」結合を含む。
【0130】
そのようなエステル結合は、脳由来酵素(例えば、エステラーゼおよびアミダーゼなど)により加水分解可能であることが知られており、従って、本発明の化学的コンジュゲートが、脳において代謝され、かつ、それにより、向精神性薬物および有機酸を同時に放出し、従って、向精神性薬物および有機酸についての好都合な同時薬物動態学を提供するプロドラッグとして作用することが推定され、また、本明細書中に記載される実験結果(例えば、図5a〜図5bを参照のこと)によってさらに明らかにされる。
【0131】
このプロセスは、(i)向精神性薬物および有機酸の同時作用、これは、薬物により誘導される低下した副作用、および、両方の成分の二重の活性を相乗的にもたらす;(ii)ドーパミン作動性受容体に対するプロドラッグのより高い親和性、これは、相乗的により高い向精神活性、および、脳の増殖性障害に対する相乗的により高い抗増殖活性をもたらす;および(iii)両方の化学的成分の改善された脳透過性をもたらすので、非常に好都合である。
【0132】
あるいは、本発明の化学的コンジュゲートにおける第2の化学的成分は、イミン結合を介して第1の化学的成分に共有結合的に連結される。
【0133】
本明細書中で使用される用語「イミン結合」は−C=NH−結合を記載する。イミン結合はまた、「シッフ塩基」としてこの分野では知られている。
【0134】
別の局面において、本発明はさらに、本明細書中上記で記載された化学的コンジュゲートを合成する方法を提供する。この方法は、一般には、向精神性薬物の残基に共有結合的に連結された有機酸の残基を得るように、有機酸を向精神性薬物と反応することによって行われる。
【0135】
本明細書中、用語「有機酸の残基」および用語「向精神性薬物の残基」は用語「有機酸残基」および用語「向精神性薬物残基」とそれぞれ等価である(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)。有機酸および向精神性薬物を反応させ、それにより、それらの間に共有結合による連結を形成することによって、有機酸および向精神性薬物の残基を含む最終的な生成物が作製されることが当業者には明らかであるはずである。
【0136】
本明細書中、本発明のこの局面の方法に従って反応させられる有機酸には、本明細書中上記で記載された有機酸残基に対応する任意の化合物が含まれ、従って、本明細書中上記で記載された有機酸残基が由来する有機酸のすべてが含まれ得る。
【0137】
例えば、本発明のこの局面に関連して使用可能である有機酸には、本明細書中上記で記載された好ましいGABAアゴニスト残基に対応するGABAアゴニストが含まれる。同様に、有機酸には、本明細書中上記で記載された抗増殖剤に対応する、酪酸および4−フェニル酪酸などの抗増殖剤が含まれ得る。
【0138】
同じように、本発明のこの局面による方法において反応させられる向精神性薬物は、本明細書中上記で記載された向精神性薬物残基のいずれかに対応する。
【0139】
本発明の化学的コンジュゲートを合成する本明細書中上記で記載された方法は、使用された有機酸のタイプ、および/または、有機酸残基と向精神性薬物残基との間での共有結合による連結のタイプに従ってさらに操作することができる。
【0140】
本明細書中上記で詳しく議論されるように、本発明による好ましい有機酸には、例えば、抗増殖剤(例えば、酪酸およびその誘導体など)、一般式R−C(=O)−OH(これは有機酸残基R−C(C=O)−Oに対応する)を有する有機酸などが含まれる。これらの好ましい有機酸のほとんどが遊離アミノ基を含まず、従って、それらは、さらなる操作を用いることなく、本発明の合成において使用することができる。
【0141】
本明細書中上記で詳しくさらに議論されるように、本発明の化学的コンジュゲートにおいて、有機酸残基および向精神性薬物残基は、カルボン酸エステル結合、アルキルオキシカルボン酸エステル結合、チオエステル結合、イミン結合またはアミド結合(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)のいずれかであり得る結合によって共有結合的に連結される。
【0142】
残基がカルボン酸エステル結合を介して共有結合的に連結される場合、本発明の化学的コンジュゲートを合成する方法は、好ましくは、最初に、有機酸を活性化するように、有機酸をその対応するアシルクロリド誘導体または任意の他のアシルハリド誘導体に変換することによって行われる。アシルクロリド誘導体は、その後、カルボン酸エステル結合を介して向精神性薬物残基に共有結合的に連結された有機酸残基を有する所望の化学的コンジュゲートを得るように、広く知られている求核付加反応で、遊離ヒドロキシル基を典型的には含む向精神性薬物と反応させられる。この反応は、好ましくは、向精神性薬物を活性化し、および/または、その塩酸塩として存在する化合物を中和するように塩基性条件下で行われる。しかしながら、有機酸および/または向精神性薬物は他の任意の知られている方法によって活性化することができる。
【0143】
残基がチオエステル結合を介して共有結合的に連結される場合、本発明の化学的コンジュゲートを合成する方法は、好ましくは、向精神性薬物をその対応するチオール誘導体に変換すること、および、有機酸をその対応するアシルクロリド誘導体またはその任意の他の活性化された誘導体に変換することによって行われる。チオール誘導体は、その後、チオエステル結合を介して向精神性薬物残基に共有結合的に連結された有機酸残基を有する所望の化学的コンジュゲートを得るように、広く知られている手順によって、活性化された有機酸と反応させられる。現在知られている向精神性薬物のいくつかは遊離チオール基を含み、従って、そのような薬物は有機酸のアシルクロリド誘導体と直接に反応させることができることに留意しなければならない。遊離チオール基を含まない向精神性薬物は、この分野で広く知られている方法によって、そのチオール誘導体を得るように容易に反応することができる。
【0144】
残基がアミド結合を介して共有結合的に連結される場合、本発明の化学的コンジュゲートを合成する方法は、好ましくは、最初に、有機酸を活性化するように、有機酸をその対応するアシルクロリド誘導体に変換すること、および、さらに、向精神性薬物をそのアミン誘導体に変換することによって行われる。アシルクロリド誘導体は、その後、アミド結合を介して向精神性薬物残基に共有結合的に連結された有機酸残基を有する所望の化学的コンジュゲートを得るように、広く知られている求核付加反応で、または、アミド結合を生じさせるための知られている手順の任意の他の手順によって向精神性薬物のアミノ基と反応させられる。現在知られている向精神性薬物のいくつかは遊離アミン基を含み、従って、そのような薬物は有機酸のアシルクロリド誘導体と直接に反応させることができることに留意しなければならない。遊離アミン基を含まない向精神性薬物は、この分野で広く知られている方法によって、そのアミン誘導体を得るように容易に反応することができる。
【0145】
残基がイミン結合を介して共有結合的に連結される場合、本発明の化学的コンジュゲートを合成する方法は、好ましくは、最初に、有機酸を活性化するように、有機酸をその対応するアルデヒド誘導体に変換すること、および、さらに、向精神性薬物をそのアミン誘導体に変換することによって行われる。アルデヒド誘導体は、その後、イミン結合を介して向精神性薬物残基に共有結合的に連結された有機酸残基を有する所望の化学的コンジュゲートを得るように、広く知られている付加−脱離反応で、または、イミン結合を生じさせるための知られている手順の任意の他の手順によって向精神性薬物のアミノ基と反応させられる。現在知られている向精神性薬物のいくつかは遊離アミン基を含み、従って、そのような薬物は有機酸のアルデヒド誘導体と直接に反応させることができることに留意しなければならない。遊離アミン基を含まない向精神性薬物は、この分野で広く知られている方法によって、そのアミン誘導体を得るように容易に反応することができる。
【0146】
残基がアルキルオキシカルボン酸エステル結合を介して共有結合的に連結される場合、本発明の化学的コンジュゲートを合成する方法は、好ましくは、向精神性薬物をそのクロロアルキルエステル誘導体(好ましくは、そのクロロメチルエステル誘導体)に変換することによって行われる。クロロメチルエステル誘導体は、その後、アルキルオキシカルボン酸エステル結合を介して向精神性薬物残基に共有結合的に連結された有機酸残基を有する所望の化学的コンジュゲートを得るように、広く知られている求核付加反応で、または、アルキルオキシカルボン酸エステル結合を生じさせるための知られている手順の任意の他の手順によって有機酸と反応させられる。有機酸および向精神性薬物を、アルキルオキシカルボン酸エステル結合を介して共有結合的に連結することは、典型的に不安定な無水物コンジュゲートの形成が避けられるので、向精神性薬物が遊離カルボン酸基を含む場合には特に好ましいことに留意しなければならない。
【0147】
上記で記載された方法は、典型的には、有機酸が遊離アミノ基を有しないときに効果的である。しかしながら、有機酸が遊離アミノ基を含む場合、例えば、GABAアゴニストの場合はそうであるように、アミノ基を、向精神性薬物との記載された反応の期間中において保護しなければならない。遊離アミノ基は比較的化学的に活性な基であり、従って、反応に望ましくないほどに加わり得るので、遊離アミノ基を保護することが要求される。
【0148】
従って、遊離アミノ基を有するGABAアゴニスト残基を含む化学的コンジュゲートを合成する好ましい方法は、好ましくは、最初に遊離アミノ基を保護することによって行われる。そのようなアミノ基を保護することは、有機酸を知られている保護基(例えば、tert−ブトキシカルボニル(Boc)およびベンジルオキシカルボニル(Cbz)など)と反応することによって行うことができる。アミノ保護された有機酸が、その後、向精神性薬物残基に共有結合的に連結されたアミノ保護の有機酸を得るように、向精神性薬物と反応させられる。その後、保護基が除かれる。さらに好ましくは、アミノ保護された有機酸は、有機酸を向精神性薬物との反応の前に活性化するように、そのアシルイミダゾール誘導体に変換される。
【0149】
さらに、本発明によれば、本発明の化学的コンジュゲートを有効成分として含む医薬組成物が提供される。
【0150】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される化学的コンジュゲートの1つまたは複数と、他の化学的成分(例えば、医薬的に好適なキャリアおよび賦形剤)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、対象に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0151】
以降、用語「医薬的に許容され得るキャリア」は、対象に対する著しい刺激を生じさせず、かつ、投与された調合物の生物学的活性および生物学的性質を阻害しないキャリアまたは希釈剤を示す。キャリアの非限定的な例には、プロピレングリコール、生理食塩水、有機溶媒と水の混合物およびエマルジョンがある。
【0152】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0153】
本発明の好ましい実施形態によれば、医薬用キャリアは乳酸の水溶液である。
【0154】
この関連において、本発明の化学的コンジュゲートのいくつかは、好ましい実施形態によれば、水性媒体において容易に可溶性であり、従って、容易に配合されることを指摘しなければならない。そのような好都合な配合は、長鎖脂肪酸を典型的には含み、従って、水性媒体に不溶性であり、油状の配合物として投与される、向精神性薬物の知られているエステルコンジュゲートを上回る、本発明の化学的コンジュゲートのさらなる利点を提供する。
【0155】
薬物の配合および投与のための様々な技術が“Remington’s Pharmaceutical Sciences”(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)(これは参考として本明細書中に組み込まれる)に見出され得る。
【0156】
好適な投与経路には、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、経皮送達、腸管送達または非経口送達(これには、筋肉内注射、皮下注射および髄内注射、ならびに、クモ膜下注射、直接的な脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻内注射または眼内注射が含まれる)が含まれ得る。本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られている様々なプロセスによって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来のプロセスによって製造することができる。
【0157】
本発明に従って使用するための医薬組成物は活性な化合物を医薬として使用可能な製剤にする加工を容易にする賦形剤及び補助剤を含む一つ以上の医薬的に許容され得るキャリアを使用して従来のように配合されてもよい。適切な配合は選択された投与経路に依存する。
【0158】
注射の場合、本発明の化学的コンジュゲートは、水溶液において、好ましくは生理学的に適合し得る、緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な食塩水緩衝液など)であって、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールの如き有機溶媒を含むまたは含まない緩衝液において配合することができる。経粘膜投与の場合、浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0159】
経口投与の場合、化学的コンジュゲートは、活性な化合物を、この分野で十分に知られている薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせることによって容易に配合することができる。そのようなキャリアにより、本発明のコンジュゲートは、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤、懸濁物などとして配合することが可能になる。経口使用される薬学的調製物は、錠剤または糖衣錠コアを得るために、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、そして所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤は、具体的には、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に受容可能なポリマーである。所望する場合には、架橋型ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
【0160】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料が、活性な化合物の量を明らかにするために、または活性な化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加され得る。
【0161】
経口使用され得る医薬組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟密閉カプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(ラクトースなど)、結合剤(デンプンなど)、滑剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤と混合された有効成分を含有し得る。軟カプセルでは、活性な化合物を好適な液体(脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。さらに、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路に好適な投薬形態でなければならない。
【0162】
口内投与の場合、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0163】
鼻腔吸入による投与の場合、本発明に従って使用される化学的コンジュゲートは、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。吸入器または吹き入れ器で使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジで、化合物と好適な粉末基剤(ラクトースまたはデンプンなど)との粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジを配合することができる。
【0164】
本明細書で記述される化学的コンジュゲートは非経口投与、例えばボーラス注射または連続点滴のために配合されることができる。注射のための配合は、単位用量形態(例えばアンプルまたは多用量コンテナ)で提供されることができ、これらには所望により保存剤が添加されている。組成物は懸濁物、溶液または油性もしくは水性ビヒクル中のエマルションであることができ、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤の如き配合剤を含むことができる。
【0165】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態における活性な化合物の水溶液が含まれる。さらに、活性な化合物の懸濁物を、適切なオイル状のまたは水ベースの注射用懸濁物として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油(ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有し得る。場合により、懸濁物はまた、高濃度の溶液の調製を可能にするためにコンジュゲートの溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有し得る。
【0166】
あるいは、有効成分は、使用前に好適なビヒクル(例えば、滅菌されたパイロジェン非含有水)を用いて構成される粉末形態にする。
【0167】
本発明の化学的コンジュゲートはまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合することができる。
【0168】
本明細書中に記載される医薬組成物はまた、固相またはゲル相の好適なキャリアまたは賦形剤を含むことができる。そのようなキャリアまたは賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチンおよびポリマー(例えば、ポリエチレングリコールなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0169】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物には、有効成分が、意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療効果がある量は、処置されている対象の疾患の症状を防止、軽減または改善するために、あるいは、処置されている対象の生存を延ばすために効果的な化学的コンジュゲートの量を意味する。
【0170】
治療効果がある量の決定は十分に当業者の範囲内であり、特に本願明細書で与えられる詳細な開示に鑑みればそうである。
【0171】
本発明の方法に使用される化学的コンジュゲートに対して、治療的に有効な量又は用量は最初に細胞培養および/または動物における活性アッセイから推定されることができる。例えば、活性アッセイによって測定されるようなIC50を含む循環濃度範囲(例えば増殖活性の半最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を達成するために、用量は動物モデルで配合されることができ、かかる情報は人間に有用な用量をより正確に決定するために使用されることができる。
【0172】
本明細書中に記載される化学的コンジュゲートの毒性および治療効力は、実験動物における標準的な薬学的手法によって、例えば対象化合物についてIC50およびLD50(試験された動物の50%の死を生ずる致死量)を測定することによって明らかにすることができる。これらの活性アッセイおよび細胞培養アッセイならびに動物研究から得られたデータは、ヒトへの使用のための投薬量範囲を定める際に使用することができる。
【0173】
投薬量は、用いられる投薬形態物および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(例えば、Fingl他、1975、“The Pharmacological Basis of Therapeutics”(第1章、1頁)を参照のこと)。
【0174】
投薬量および投薬間隔を、向精神作用および/または抗増殖作用を維持するために十分である活性な成分の血漿中レベル(これは最小有効濃度(MEC)と呼ばれる)を提供するために個々に調節することができる。MECはそれぞれの調製物について変化するが、インビトロデータおよび/またはインビボデータから推定することができ、例えば、特定の細胞の増殖の50%〜90%の阻害を達成するために必要な濃度を、本明細書中に記載されるアッセイを使用して求めることができる。MECを達成するために必要な投薬量は個々の特性および投与経路に依存する。HPLCアッセイまたはバイオアッセイを使用して、血漿中濃度を求めることができる。
【0175】
投薬間隔もまた、MEC値を使用して決定することができる。調製物は、時間の10%〜90%について、好ましくは30%〜90%の間、最も好ましくは50%〜90%の間、MECを越える血漿中レベルを維持する治療法を使用して投与されなければならない。
【0176】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は上述の徐放性組成物の単回投与であることも可能であり、処置の経過が、数日から数週間まで、あるいは、治癒が達成されるまで、または、疾患状態の縮小が達成されるまで続く。
【0177】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている対象、苦痛の重篤度、投与様式、主治医の判断などに依存する。
【0178】
本発明の組成物は、所望される場合には、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔を含むことができ、例えば、ブリスターパックなどである。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が添付され得る。パックまたはディスペンサーにはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局により定められた形式で容器に付けられた通知が伴うことがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態またはヒトもしくは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物についての米国食品医薬品局により承認されたラベル書きであり得るか、または承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用キャリアに配合された本発明の化学的コンジュゲートを含む組成物はまた、適応される状態を治療するために、調製され、適切な容器に入れられ、かつ表示され得る。ラベルに示される好適な状態には、例えば、向精神性の疾患または障害(例えば、統合失調症、偏執症、児童精神病、ハンチングトン病、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、うつ病、躁うつ病、不安、パーキンソン病、アルツハイマー病およびてんかん、脳の増殖性障害およびMDRガンなど)、および、化学感作(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)を含まれ得る。
【0179】
従って、本発明の好ましい実施形態によれば、医薬組成物は包装物に包装され、下記の使用の1つまたは複数のために包装物上または包装物内において活字で特定される:CNSの障害または疾患の治療における使用のために、脳または末梢の増殖性障害または増殖性疾患の治療における使用のために、ガン(MDRガンなど)の治療における使用のために、また、化学療法剤との組合せでの、および/または、化学感作が有益である医学的状態での化学感作における使用のために。
【0180】
さらに、本発明によれば、対象(例えば、ヒト)におけるCNSの障害または疾患を治療または防止するための方法が提供される。この方法は、治療有効量の本発明の化学的コンジュゲートの1つまたは複数を治療される対象に投与することによって行われる。
【0181】
本明細書中で使用される用語「方法」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0182】
従って、用語「治療する」は、疾患の進行を妨げること、実質的に阻害すること、遅くすること、または逆戻りさせること、あるいは、疾患の臨床的症状を実質的に緩和すること、あるいは、疾患の臨床的症状の出現を実質的に防止することを包含する。
【0183】
本明細書中で使用される表現「CNSの障害または疾患」は、中枢神経系(CNS)における障害(例えば、神経学的障害)によって特徴づけられる障害または疾患を示す。本発明の化学的コンジュゲートを使用して治療可能であるCNSの障害および疾患の例には、限定されないが、精神病的な障害または疾患、不安障害、解離型障害、人格障害、気分障害、情動障害、神経変性性の疾患または障害、痙攣性障害、境界性障害、および、精神的な疾患または障害が含まれる。
【0184】
CNSのそのような障害または疾患の代表的な例には、限定されないが、統合失調症、偏執症、児童精神病、ハンチングトン病、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、うつ病、躁うつ病、不安、パーキンソン病、アルツハイマー病およびてんかんが含まれる。
【0185】
本明細書中で使用される用語「投与する」は、本発明の化学的コンジュゲートを、向精神性の障害または疾患により冒されている脳内の領域または部位にもたらすための方法を示す。
【0186】
本発明の化学的コンジュゲートは腹腔内投与することができる。より好ましくは、本発明の化学的コンジュゲートは経口投与される。
【0187】
用語「対象」は、ヒトを含む、血液脳関門を有する動物(典型的には、哺乳動物)を示す。
【0188】
用語「治療有効量」は、治療されているCNSの障害または疾患の症状の1つまたは複数をある程度緩和する投与されている化学的コンジュゲートのそのような量を示す。
【0189】
本発明のこの方法による治療有効量は、好ましくは、0.5mg/kg体重〜50mg/kg体重の範囲であり、より好ましくは、0.5mg/kg体重〜30mg/kg体重の範囲であり、より好ましくは、0.5mg/kg体重〜20mg/kg体重の範囲であり、最も好ましくは、1mg/kg体重〜10mg/kg体重の範囲である。
【0190】
このように、本発明は、向精神活性を発揮する化学的コンジュゲートに関する。本発明の化学的コンジュゲートは、強化された治療活性を発揮し、かつ、最小限に抑えられた、それにより誘導される有害な副作用によってさらに特徴づけられるので非常に好都合である。
【0191】
本明細書中で使用される表現「副作用」は、ある種の薬物、具体的には、向精神性薬物を対象に投与することの結果として発症し得る有害な症状を示す。
【0192】
本明細書中で使用される表現「強化された治療活性」は、コンジュゲートを形成する向精神性薬剤および/または有機酸の、それ自体で投与されたときの向精神活性または抗増殖活性よりも大きい、本発明のコンジュゲートの向精神活性または抗増殖活性(これらの表現は本明細書中で定義される通りである)を記載する。下記の実施例の節において明らかにされるように、そのような強化された治療活性は、典型的には、コンジュゲート化されていない向精神性薬剤および/または有機酸の効果的な濃度と比較した場合、特定の治療活性を達成するために要求される薬物の低下した効果的な濃度によって特徴づけられる。
【0193】
本明細書中で使用される表現「強化された治療活性」はさらに、さらなる治療活性、従って、付加された治療的価値、例えば、GABA活性の増大、痛みの緩和などが伴う、本発明のコンジュゲートによって発揮される向精神活性および/または抗増殖活性を記載する。何らかの特定の理論に拘束されることはないが、本発明の化学的コンジュゲートの強化された治療活性は、少なくとも部分的には、脳における神経伝達物質の改善されたバランスから生じることが推定される。
【0194】
本明細書中で使用される表現「向精神活性」は、CNSに関連した障害を治療することを目指す、CNSにおいて発揮される薬理学的活性を記載する。そのような薬理学的活性には、典型的には、ニューロンのシグナル伝達の調節が含まれる。
【0195】
さらに、本発明によれば、対象(例えば、ヒト)における増殖性の障害または疾患を治療または防止するための方法が提供される。この方法は、治療有効量の本発明の化学的コンジュゲートの1つまたは複数を治療される対象に投与することによって行われる。
【0196】
本明細書中で使用される用語「増殖性の障害または疾患」は、細胞増殖によって特徴づけられる障害または疾患を示す。本発明によって防止または治療され得る細胞増殖状態には、例えば、悪性の腫瘍(例えば、ガンなど)および良性の腫瘍が含まれる。
【0197】
本明細書中で使用される用語「ガン」は、Stedman’s medical Dictionary(第25版)(Hensyl編、1990)によって定義されるように様々なタイプの悪性の新生物(そのほとんどが周りの組織に侵入することができ、また、異なる部位に転移し得る)を示す。本発明の化学的コンジュゲートによって治療され得るガンの例には、脳および皮膚のガンが含まれるが、これらに限定されない。これらのガンはさらに分類することができる。例えば、脳のガンには、多形性神経膠芽細胞腫、未分化星状膠細胞腫、星状膠細胞腫、上衣細胞腫、乏突起膠腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、肉腫、血管芽細胞腫および松果体実質が含まれる。同様に、皮膚のガンには、メラノーマおよびカポジ肉腫が含まれる。本発明の化学的コンジュゲートを使用して治療可能な他のガン性疾患には、乳頭腫、ブラストグリオーマ、卵巣ガン、前立腺ガン、扁平上皮ガン、星状膠細胞腫、頭部ガン、頸部ガン、膀胱ガン、乳ガン、肺ガン、結腸直腸ガン、甲状腺ガン、膵臓ガン、胃ガン、肝細胞ガン、白血病、リンパ腫、ホジキンリンパ腫およびバーキットリンパ腫が含まれる。
【0198】
他の非ガン性増殖性障害もまた、本発明の化学的コンジュゲートを使用して治療可能である。そのような非ガン性増殖性障害には、例えば、狭窄症、再狭窄、ステント内狭窄、血管移植片再狭窄、関節炎、リウマチ様関節炎、糖尿病網膜症、血管形成、肺線維症、肝硬変、アテローム性動脈硬化、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、血栓性細小血管障害症候群および移植拒絶が含まれる。
【0199】
下記の実施例の節において明らかにされるように、本発明の化学的コンジュゲートは、MDRガン細胞を含む広範囲の様々なガン細胞に対する大きく、かつ、強力な抗増殖活性を発揮する。
【0200】
下記の実施例の節においてさらに明らかにされるように、本発明の化学的コンジュゲートは、様々な化学療法薬物との組合せで使用されたとき、化学感作活性をさらに発揮する。
【0201】
従って、さらに、本発明によれば、化学感作の方法が提供される(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)。この方法は、治療有効量の1つまたは複数の化学療法剤と、化学感作有効量の本発明の化学的コンジュゲートとを対象に投与することによって行われる。
【0202】
本明細書中で使用される表現「化学感作有効量」は、治療量の化学療法剤の存在下での測定可能な化学感作のために十分な量を記載する。
【0203】
この方法は、対象がMDRガン(例えば、白血病、リンパ腫、ガン腫または肉腫など、これらに限定されない)を有する場合に特に有用である。本発明によれば、化学療法剤は、例えば、下記のいずれかであり得る:アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード系、エチレンイミン系およびメチルメラミン系、アルキルスルホナート系、ニトロソウレア系、ならびにトリアゼン系など;代謝拮抗剤、例えば、葉酸アナログ、ピリミジンアナログおよびプリンアナログなど;天然物、例えば、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキオシン系、抗生物質、酵素、タキサン系、および生物学的応答修飾剤など;その他の薬剤、例えば、白金配位錯体、アントラセンジオン系、アントラサイクリン系、置換ウレア、メチルヒドラジン誘導体または副腎皮質抑制剤など;あるいは、ホルモンまたはアンタゴニスト、例えば、副腎皮質ステロイド、プロゲスチン系、エストロゲン系、抗エストロゲン剤、アンドロゲン系、抗アンドロゲン剤、または、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログなど。好ましくは、化学療法剤は、ナイトロジェンマスタード系、エピポドフィロトキオシン系、抗生物質または白金配位錯体である。より好ましい化学療法剤はシスプラチンまたはビンクリスチンである。
【0204】
従って、本発明は、対応するコンジュゲート化されていない向精神性薬物よりも大きい向精神活性、実質的に低い副作用および低い毒性を発揮する、向精神性薬物の新規な化学的コンジュゲートを教示する。このような新規なコンジュゲートは、抗増殖活性および化学感作活性をさらに発揮し、従って、低下した副作用、低い毒性、および、脳細胞に対する大きい親和性によって特徴づけられるプロドラッグとして、または、化学療法薬物との組合せで使用される化学感作剤としてのいずれかで、増殖性障害の治療において有益に使用することができる。
【0205】
本発明の追加の目的、利点及び新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なおこれら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0206】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なおこれら実施例によって本発明は限定されない。
【0207】
化学合成および分析
本発明の例示的な化学的コンジュゲートを、向精神性薬剤のペルフェナジン、フルフェナジンおよびバルプロ酸を、短鎖脂肪酸のプロピオン酸、酪酸および吉草酸、ならびに/または、4−フェニル酪酸およびγ−アミノ酪酸(GABA)と反応することによって合成した。化合物は高収率で合成され、1%乳酸水溶液に可溶性である結晶性固体として単離された。
【0208】
ペルフェナジンまたはフルフェナジンおよび有機酸から調製される化学的コンジュゲートの合成−一般的手順:5ml〜10mlのジメチルホルムアミド(DMF)における、神経遮断性薬剤のペルフェナジンまたはフルフェナジン(1当量)と、短鎖脂肪酸のアシルクロリド誘導体(1.1当量)と、場合により、Et3N(2当量)(これは、そのHCl塩として見出される出発物質を遊離状態にするために使用される)との混合物を窒素雰囲気下において室温で24時間撹拌した。その後、混合物を酢酸エチルと水との間で分配した。その後、有機層を5%NaHCO3およびブラインにより洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、エバポレーションして、所望する生成物を得た。
【0209】
4−フェニル酪酸ペルフェナジン(AN130)の合成:ペルフェナジンおよび4−フェニルブチルリルクロリド(4−フェニル酪酸のアシルクロリド誘導体)を上記のように反応させた。得られた粗残渣を、1:10のメタノール:酢酸エチルの混合物を溶出液として使用してシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。生成物を黄色のオイルとして得た(78%の収率)。
【0210】
酪酸ペルフェナジン(AN167)の合成:ペルフェナジンおよびブチルリルクロリド(酪酸のアシルクロリド誘導体)を上記のように反応させた。生成物が黄色のオイルとして得られ(74%の収率)、これを、さらに精製することなく使用した。
【0211】
プロピオン酸ペルフェナジン(AN177)の合成:ペルフェナジンおよびプロピオニルクロリド(プロピオン酸のアシルクロリド誘導体)を上記のように反応させた。生成物が黄色のオイルとして得られ(85%の収率)、これを、さらに精製することなく使用した。
【0212】
吉草酸ペルフェナジン(AN178)の合成:ペルフェナジンおよびバレリルクロリド(吉草酸のアシルクロリド誘導体)を上記のように反応させた。得られた粗残渣を、7:4の酢酸エチル:ヘキサンの混合物を溶出液として使用してシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。生成物を黄色がかったオイルとして得た(75%の収率)。
【0213】
プロピオン酸フルフェナジン(AN179)の合成:フルフェナジンおよびプロピオニルクロリド(プロピオン酸のアシルクロリド誘導体)を上記のように反応させた。生成物が黄色がかったオイルとして得られ(95%の収率)、これを、さらに精製することなく使用した。
【0214】
酪酸フルフェナジン(AN180)の合成:フルフェナジンおよびブチルリルクロリドを上記のように反応させた。生成物が黄色がかったオイルとして得られ(97%の収率)、これを、さらに精製することなく使用した。
【0215】
吉草酸フルフェナジン(AN181)の合成:フルフェナジンおよびバレリルクロリド(吉草酸のアシルクロリド誘導体)を上記のように反応させた。得られた粗残渣を、7:4の酢酸エチル:ヘキサンの混合物を溶出液として使用してシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。生成物を黄色がかったオイルとして得た(75%の収率)。
【0216】
ペルフェナジンまたはフルフェナジンおよびアミノ有機酸から調製される化学的コンジュゲートの合成−一般的手順:5ml〜10mlのDMFにおける、N−保護のアミノ酸(1当量)と、カルボニルジイミダゾール(CDI)(1.1当量)との混合物を窒素雰囲気下において1時間撹拌した。その後、ペルフェナジンまたはフルフェナジン(1当量)を加え、混合物を窒素雰囲気下において90℃で24時間撹拌した。得られたスラリーをエバポレーションし、酢酸エチルと水との間で分配した。水相を酢酸エチルで2回抽出し、有機層を一緒にしてNaHCO3により2回洗浄し、次いで、ブラインにより2回洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、エバポレーションした。N−保護の生成物を黄色がかったオイルとして得た。
【0217】
N−保護基を生成物から下記のように除いた:N−保護の生成物を含む酢酸エチルにおける溶液に、4NのHClを含む酢酸エチルにおける溶液を滴下して加えた。混合物を室温で2時間撹拌した。その後、溶媒をエバポレーションし、残渣を高真空下でさらに乾燥した。得られた生成物(三塩酸塩として)をメタノール/エーテルの混合物から再結晶し、ろ過し、乾燥した。
【0218】
N−boc−4−アミノ酪酸ペルフェナジンの合成:ペルフェナジンおよびN−t−boc−GABA(N−t−bocにより保護された4−アミノ酪酸)を上記のように反応させた。粗残渣を、20:1の酢酸エチル:エタノールの混合物を溶出液として使用してシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。生成物を黄色がかったオイルとして得た(63%の収率)。
【0219】
N−boc−4−アミノ酪酸フルフェナジンの合成:フルフェナジンおよびN−t−boc−GABA(N−t−bocにより保護された4−アミノ酪酸)を上記のように反応させた。粗残渣を、20:1の酢酸エチル:エタノールの混合物を溶出液として使用してシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。生成物を黄色がかったオイルとして得た(75%の収率)。
【0220】
4−アミノ酪酸ペルフェナジン三塩酸塩(AN168)の合成:上記のように調製されたN−boc−4−アミノ酪酸ペルフェナジンを、上記のようにHClと反応させた。三塩酸塩生成物が粘性の半固体オイルとして得られた(定量的収率)。
【0221】
4−アミノ酪酸フルフェナジン三塩酸塩(AN187)の合成:N−boc−4−アミノ酪酸フルフェナジンを、上記のようにHClと反応させた。生成物が白色の固体として得られた(75%の収率)
【0222】
バルプロ酸および有機酸またはアミノ有機酸から調製される化学的コンジュゲートの合成−一般的手順:
バルプロ酸を、NaHCO3、Bu4N+HSO4−、水およびCH2Cl2の存在下、室温でクロロメチル=クロロスルファート(1.2当量)と反応させる。その後、水相を分離し、CH2Cl2により洗浄する。有機相をNaHCO3の飽和水溶液およびブラインにより洗浄し、乾燥(MgSO4)し、エバポレーションして、バルプロ酸のクロロメチルエステルを残渣オイルとして得る。オイルを蒸留によって精製する。その後、バルプロ酸クロロメチルエステルを、上記の一般的手順と同様に、有機酸またはN−保護のアミノ有機酸と反応させて、それにより、所望する生成物を得る。
【0223】
2−プロピルペンタン酸(バルプロ酸)クロロメチルエステル(AN−215)の合成:バルプロ酸(2.76グラム、19mmol)、NaHCO3(5.75グラム、68.4mmol)、Bu4N+HSO4−(0.5グラム)、水(25ml)およびCH2Cl2(25mL)の混合物に、クロロメチル=クロロスルファート(3.79グラム、23mmol、1.2当量)を加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。その後、水層を分離し、CH2Cl2により洗浄した。有機層をNaHCO3の飽和水溶液およびブラインにより順次洗浄し、乾燥(MgSO4)し、エバポレーションして、残渣オイルとして得た。オイルを蒸留(沸点、70℃/4mmHg)によって精製して、2.05グラム(56%の収率)のAN−215を得た。
【0224】
2−プロピルペンタン酸(バルプロ酸)N−boc−4−アミノブチリルオキシメチルエステル(AN−217)の合成:乾燥エチルメチルケトンにおけるN−t−boc−GABA(N−t−bocにより保護された4−アミノ酪酸)(1.78グラム、8.8mmol)および2−プロピルペンタン酸クロロメチルエステル(1.8グラム、8.27mmol)の混合物を窒素雰囲気下において撹拌した。Et3N(1グラム、9.5mmol)を滴下して加え、反応混合物を60時間加熱した。得られた白色沈殿物をろ過し、ろ液をエバポレーションした。残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和NaHCO3水溶液およびブラインにより順次洗浄し、乾燥(MgSO4)し、ろ過し、エバポレーションし、さらに高真空下で乾燥して、生成物をオイルとして得た(1.7グラム、57%の収率)。これを、さらに精製することなく続いて使用した。
【0225】
2−プロピルペンタン酸(バルプロ酸)4−アミノブチリルオキシメチルエステル塩酸塩(AN−216)の合成:2−プロピルペンタン酸N−t−boc−4−アミノブチリルオキシメチルエステル(AN−217、これは本明細書中上記のように調製される)(1.7グラム、4.7mmol)を含む酢酸エチルにおける溶液に、4NのHClを含む酢酸エチルの溶液を加えた。得られた混合物を室温で4時間撹拌し、その後、溶媒をエバポレーションし、残渣を高真空下でさらに乾燥した。残渣をエーテルに溶解し、ヘキサンを加えて、所望する生成物AN−216(0.75グラム、62%)を、35〜37℃の融点を有する非晶質固体として沈殿させた。
【0226】
抗うつ剤(例えば、フルオキセチンまたはノルトリプチリン)および有機酸またはアミノ有機酸から調製される化学的コンジュゲートの合成−一般的手順:
遊離アミノ基を有する抗うつ剤を、塩化メチレン(CH2Cl2)中で、トリエチルアミンおよび1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)の存在下、有機酸またはN−保護のアミノ有機酸(1.2mol当量〜1.3mol当量)と反応させる。その後、溶媒をエバポレーションし、残渣をCH2Cl2に溶解し、HCl(1N)、飽和NaHCO3およびブラインにより洗浄し、有機相を乾燥(MgSO4)し、エバポレーションして、生成物を得る。生成物は、場合により、必要ならば、カラムクロマトグラフィーによって精製することができる。N−保護の有機酸が使用される場合、脱保護がEtOAc溶液においてHClの存在下で定量的に行われる。
【0227】
3−(N−(3−(4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)−3−フェニルプロピル)−N−メチルカルバモイル)プロピルカルバミン酸tert−ブチル(AN−229)の合成:
CH2Cl2(5ml)における、フルオキセチン(0.9mmol)、トリエチルアミン(1mmol)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(1.2mmol)の乾燥混合物に、4−tert−ブトキシカルボニルアミノ酪酸(N−Boc−GABA)(1.2mmol)を加えた。得られた混合物を24時間撹拌し、その後、溶媒をエバポレーションした。残渣をCH2Cl2に溶解し、得られた溶液を、HCl(1N)、飽和NaHCO3およびブラインにより洗浄し、有機相をMgSO4で乾燥した。その後、溶液をろ過し、溶媒をエバポレーションし、残渣を、EtOAc:ヘキサン(4:1)の混合物を溶出液として使用してシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、生成物を34%の収率で無色のオイルとして2つの回転異性体(主成分および微量成分)の形態で得た。
【0228】
N−(3−(4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)−3−フェニルプロピル)−4−アミノ−N−メチルブタンアミド塩酸塩(AN−227)の合成:
AN−229(0.5mmol)をEtOAc(35ml)におけるHClの溶液に加え、得られた混合物を3時間撹拌した。その後、溶媒をエバポレーションし、生成物AN−227を定量的収率で得た。
【0229】
3−(10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプタン−5−イリデン−N−メチル−1−プロパンアミン−3−メチルカルバモイル)プロピルカルバミン酸tert−ブチル(AN−230)の合成:
CH2Cl2(15ml)における、ノルトリプチリン(1mmol)、トリエチルアミン(1.2mmol)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(1.3mmol)およびCH2Cl2(15ml)の乾燥混合物に、4−tert−ブトキシカルボニルアミノ酪酸(N−Boc−GABA)(1.3mmol)を加えた。得られた混合物を室温で48時間撹拌し、その後、溶媒をエバポレーションした。残渣をCH2Cl2に溶解し、得られた溶液を、HCl(1N)、飽和NaHCO3およびブラインにより抽出した。有機相をMgSO4で乾燥し、溶液をろ過し、エバポレーションし、生成物を34%の収率で固体として分離した。
【0230】
10,11−ジヒドロ−5−(3−メチルアミノプロビリデン)−5H−ジベンゾ[a,d][1,4]シクロヘプテン−4−アミノ−N−ブタンアミド塩酸塩(AN−228)の合成:
AN−230(0.5mmol)をEtOAc(35ml)におけるHClの溶液に加え、得られた混合物を3時間撹拌した。その後、溶媒をエバポレーションし、生成物を2つの回転異性体の形態で定量的収率で得た。
【0231】
下記の表1は、本明細書中上記で記載された方法によって合成される化学的コンジュゲートを示す。
【表1】
【0232】
活性アッセイ
材料および実験方法
細胞株:ヒト前立腺ガン腫(PC−3)、ヒト結腸ガン腫(HT−29)、マウスメラノーマ(B−16)およびその薬物耐性サブクローン(B−16MDR)、マウス繊維芽細胞(3T3)、骨髄性白血病(HL60)およびその薬物耐性サブクローン(HL60MX2)、子宮内膜細胞株(MES SA)およびその薬物耐性サブクローン(MES DX5)、JurkatTリンパ腫、単球白血病(U−937)、ならびに神経膠腫細胞株のU87MGおよびU251MGをこの研究では使用した。
【0233】
ラット繊維芽細胞の初代培養物を、知られている手順[7]を使用して新生児ラットから得た。
【0234】
ニューロン細胞およびグリア細胞を妊娠(14日目〜15日目)ICRマウスの胎児の脳から調製した。脳を解剖し、Leibowitch L−15培地(Beth Aemek)、75μg/mlのゲンタマイシンおよび0.2mMのグルタミンの混合物においてホモジネートした。細胞(300K/ウエル〜500K/ウエル)をポリ−D−リシン処理された96ウエルマイクロプレートに播種した。選択されたニューロン培養物を、その48時間後に5−フルオロデオキシウリジン(FUDR)およびウリジンをプレートの半分に加えることによって得た。非処理の培養物はニューロン細胞およびグリア細胞の混合物を含んでいた。細胞を、10%のFCS(ウシ胎児血清)および2mMグルタミンが補充されたRPMI培地またはDMEM培地において成長させ、加湿された5%CO2インキュベーターにおいて37℃でインキュベーションした。
【0235】
ラット筋細胞培養物を1日齢〜2日齢のWistar新生児ラット(Harlan)から調製した。30匹の新生児ラットを、約25百万個〜30百万個の細胞を得るために使用した。この目的のために、心臓を解剖し、RDB(商標)(イチジクの木の抽出物から単離されたプロテアーゼ)を使用して室温で酵素により組織解離した。このプロトコルを、細胞が完全に分散されるまで5回繰り返した。分散された細胞を、45分間、組織培養フラスコ(DMEM培地において3×106個/ml)に予備的に置床し、その後、筋細胞以外の細胞を減少させるために、ゼラチン被覆されたマイクロタイタープレートに24時間移した。その後、細胞毒性剤ARO−Cを培養物に加えて、それにより、分裂中の細胞を除き、分裂中でない筋細胞のみを培養物に残した。細胞を4日間インキュベーションし、その後、顕微鏡検査を行った。
【0236】
神経膠腫細胞株(U87MG、U251MG)を、10%のウシ胎児血清(Beth Aemek)およびペニシリン(100ユニット/ml)−ストレプトマイシン(100μg/ml)が補充されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で、37℃および8%CO2での加湿インキュベーターにおいて成長させた。
【0237】
ガン細胞および正常細胞の増殖:増殖を、ニュートラルレッドアッセイ[8]によって、または、DNA含有量を定量する蛍光光度法アッセイ[9]によって測定した。ニュートラルレッドアッセイでは、ニュートラルレッドがリソソームによって吸収され、従って、これにより、生細胞の着色が生じる。定量分析を比色測定アッセイ(550nmにおけるELISA読み取り装置)によって行う。蛍光測定アッセイでは、アラマーブルーがレドックス指示薬として使用される。アラマーブルーの蛍光を544nmの励起波長および590nmの放射波長で測定した(FLUOstar BMG Lab Technologies、Offenburg、ドイツ)。
【0238】
アポトーシスおよびDNA断片化:細胞核の断片化をヨウ化プロピジウム染色された細胞のフローサイトメトリー分析によって調べた。この分析を、480nmの励起波長に調節されたアルゴンイオンレーザーと、Doublet Discrimination Module(DDM)とを備えるFACScan(Becton Dickinson、Mountain View、CA)を使用して行った。LysisII(Becton Dickinson)ソフトウエアをデータ取得のために使用した。アポトーシスの核変化をNicolletti他[13]の基準に従って評価した。
【0239】
化学感作:ペルフェナジンおよびその化学的コンジュゲートAN168の化学感作作用をインビトロで測定した。様々な濃度のペルフェナジンまたはAN168をC6ラット神経膠腫細胞またはJurkatTリンパ腫細胞のいずれかに化学療法剤と一緒に同時投与した。化学療法剤、ペルフェナジン、AN168、化学療法剤とペルフェナジンとの組合せ、または、化学療法剤とAN168との組合せのいずれかによる治療の後における細胞生存性および/またはDNA断片化を本明細書中上記に記載されるように測定した。
【0240】
動物:若い成体オスラット(150グラム〜230グラム)をHarlan(イスラエル)から購入した。動物をケージあたり2匹〜5匹で分け、制御された条件で、実験前の1週間、動物室において飼育した。実験を、実験未使用の動物を用いて二重盲検手順で行った。各実験において、様々な治療群(それぞれ約5匹〜10匹の動物)が試験された。
【0241】
若い成体のオスマウスおよびメスマウスをHarlan(イスラエル)から購入した。動物を、実験の前に、制御された条件のもとで4日間〜7日間飼育した。実験を二重盲検手順で行った。各実験において、様々な治療群(それぞれ約10匹の動物)が試験された。
【0242】
ラットにおけるカタレプシー:定型神経遮断剤により誘導される錐体外路の有害な作用の発現を神経遮断治療後のラットにおける常同的なカタレプシー行動の出現によって評価した。カタレプシーを2つの方法によって決定した:(i)動物がケージの壁にしがみついてその後肢を動かし、平坦な表面に到達するために要した時間を測定すること「壁」試験)によって、および、(ii)ラットを、その前肢を平坦な棒(5.5cmの高さ)にもたれさせながら平坦な表面に置いた(これはピアノ演奏姿勢に類似する)。カタレプシーを、動物が降りて、平坦な表面に到達するために要した時間によって決定した(「ピアノ」試験)。最大追跡時間は2分であり、これらの測定を各動物について1時間毎に個々に行った。これらの試験は中枢神経ドーパミン(DA)遮断活性の評価をもたらし、抗精神病薬により誘導される錐体外路症状についての許容され得る基準である[10]。全体的な誘導されたカタレプシーおよびその経時変化を、ペルフェナジン、フルフェナジン、ならびに、AN167、AN168、AN177、AN178、AN180およびAN187の化合物(本明細書中上記の表1を参照のこと)について測定し、これにより、種々の一組の化合物および種々の条件を比較した。一般には、5mg/Kgの母体薬物(ペルフェナジン)および7.5mg/Kgのフルフェナジンおよび等モル用量の本発明のそれらの関連した化学的コンジュゲートを1%の乳酸に溶解して、動物に腹腔内注射した。異なる一組の測定では、AN168およびペルフェナジンを1%の乳酸に溶解して、動物に経口投与した。
【0243】
マウスにおけるカタレプシー:神経遮断剤治療後のマウスにおける常同的なカタレプシー行動の出現を2つの異なる実験組で測定した。
【0244】
第1の一組では、成体のオスを群に分け、各群を、ペルフェナジン(1.5mg/kg、9匹)、ペルフェナジンおよび等モル用量のGABAの混合物(7匹)、等モル用量のAN−168(8匹)、または治療なし(コントロール群、6匹)のいずれかによって治療した。カタレプシーを、2つのケージおよびそれらの間の棒からなる系を使用して決定した。マウスを棒の中央部にしがみつかせ、2分以内に目標に到達する動物の割合を、治療後の1時間、2時間および3時間でモニターした。
【0245】
第2の一組では、若いメスを群に分け、各群を、2.5mg/kgのペルフェナジン(6匹)、ペルフェナジンおよび等モル用量のGABAの混合物(6匹)、等モル用量のAN−168(7匹)、または治療なし(コントロール群、7匹)のいずれかによって治療した。カタレプシーを、本明細書中上記で記載された系を使用して決定した。マウスを棒の中央部にしがみつかせ、動物が目標に到達するために要した時間を測定した。
【0246】
プロラクチン分泌:定型神経遮断剤は、乳汁漏出ならびに損なわれた生殖腺機能および性機能にしばしば関連づけられる過プロラクチン血症を誘導する[11]。従って、循環している血漿中プロラクチンレベルの測定を、既知の神経遮断剤および本発明の化学的コンジュゲートの、その腹腔内投与後または経口投与後の向精神活性についての高感度な生化学的マーカーとして使用した。従って、血液をエーテル麻酔下のラットの穿刺された眼窩から集め、アッセイを、Millenniaラットプロラクチン酵素免疫測定アッセイキット(DPC、米国)を使用して行った。
【0247】
行動基準:本発明の化学的コンジュゲートによって治療された動物の鎮静を観察し、下記に記載されようにスコア化した(表2)。様々な治療群における動物の鎮静および可動性の程度を、0〜3のスコアを使用して評価した。0のスコアは活発かつ可動性の動物を表し、1のスコアは、落ち着き、かつ、可動性の動物を表し、2のスコアは、落ち着き、かつ、動かない動物を表し、3のスコアは、完全に運動失調性で、かつ、無警戒な動物を表す。治療された動物の行動により、試験された既知の神経遮断剤および化学的コンジュゲートの神経遮断効力、ならびに、それに誘導される錐体外路症状の重篤度が推定された。
【0248】
毒性:インビトロ毒性を、新生児マウスの脳から得られたニューロンの初代培養物、ならびに、全脳のニューロン細胞およびグリア細胞の初代培養物に対する試験された化合物(既知の神経遮断剤および本発明の化学的コンジュゲートのいずれか)の影響を測定することによって明らかにした。ペルフェナジンおよびその化学的コンジュゲートAN168のインビトロ毒性はまた、ラット筋細胞を用いて明らかにされた。LD50により明らかにされるようなインビボでの急性毒性を、2ヶ月齢のICRマウスに対して、単回腹腔内ボーラス用量の薬物の投与の後で評価した。
【0249】
ラットにおけるD−アンフェタミン誘導による活動過多:本発明の化学的コンジュゲートの効力を、統合失調症についての最も確立された動物モデルの1つ[14]として知られている、D−アンフェタミン誘導による活動過多および可動性のモデルを使用して調べた。
【0250】
実験未使用のWistarオスラットを個々の箱に入れた。各実験において、4匹のラットを調べた。ペルフェナジンまたは等モル用量のその化学的コンジュゲートAN−168を、アンフェタミン(2.5mg/kg)の腹腔内投与の30分前に、または、アンフェタミン(2.5mg/kg)の経口投与の90分前にラットに腹腔内(ip)投与した。動物の運動活性を、(樽の壁における動物のよじ登り試み(大きな運動として)、および、動物の頭部運動(小さい運動として)の2つのパラメーターを使用して評価した。評価を2時間にわたって15分毎に記録した。各動物を各時点で120秒間調べた。
【0251】
神経膠腫細胞に対する抗増殖活性:本発明によるバルプロ酸の様々なコンジュゲート(AN−138、AN−148、AN−216およびAN−223)の抗増殖活性を、下記のように、Hoechstアッセイをわずかに改変して使用して細胞成長を測定することによって調べた:1.5×104細胞/mlの密度での細胞を組織培養用の96ウエルプレートに24時間播種し、その後、異なる濃度の試験された化合物またはコンジュゲートに72時間さらした。その後、治療された細胞をPBSにより洗浄し、エタノール(70%)により30分間固定処理した。その後、エタノールを捨て、PBSに可溶化された10mg/mlの蛍光性プローブのビス−ベンズイミド(Hoechst試薬、B2261、Sigmam、米国)の200mlを加えた。蛍光を、FluoStar蛍光計を用いて390nm〜460nmで測定した。各実験を少なくとも3回行い、各用量を四連で調べた。化合物の力価測定の後でのIC50値を生存割合の線形回帰によって求めた。
【0252】
実験結果
ペルフェナジン、および、ペルフェナジンを含有する化学的コンジュゲートの誘導されたカタレプシーおよび精神医学的活性:
5mg/kgのペルフェナジンおよび等モル用量のその化学的コンジュゲート(AN130、AN167およびAN168(本明細書中上記の表1を参照のこと))の誘導されたカタレプシーおよび精神医学的活性を、ケージあたり5匹で分けられた若い成体Wistarオスラット(150グラム〜200グラムの体重)にこれらの化合物を1%乳酸に溶解して腹腔内投与することによって測定し、本明細書中上記に記載される「壁」によって求めた。コントロールの動物群はビヒクル(乳酸)のみにより治療された。カタレプシーおよびプロラクチン分泌の両方に対する治療の影響を2時間の期間にわたって追跡した。その結果を図1aおよび図1bに示す。
【0253】
図1aは、治療後0分、60分および120分で二連で行われた3回の測定の結果としての、誘導されたカタレプシーについて得られたデータを示す。各柱は5匹の動物の平均を表す。総時間をペルフェナジン(例えば、100%)に対して正規化した。得られたデータは、カタレプシーがペルフェナジンおよびAN130の治療によって誘導され、その一方で、AN167およびAN168では、カタレプシーが全く誘導されなかったことを示している。
【0254】
図1bは、治療後0分、60分および120分で測定されたプロラクチン血中レベルを示し、それぞれの示された時間での3回の測定の和を表す。プロラクチン血中レベルは化合物の向精神活性についての生化学的マーカーとして役立つ。得られたデータは、動物におけるプロラクチン血中レベルのプロフィルが、ペルフェナジン、AN130、AN167またはAN168により治療されたとき、60分でピークに達し、その後は低下して、類似することを示している。プロラクチン血中レベルは、AN130、AN167およびAN168の化学的コンジュゲートにより治療された動物において、各時点で、ペルフェナジンの場合と類似していた。このことは、化学的コンジュゲートの向精神活性が母体薬物の向精神活性と類似することを示している。ビヒクル(1%乳酸)のみにより治療されたコントロール動物では、プロラクチンのレベルは変化していなかった。
【0255】
SAR(構造活性相関)研究:SAR研究を、ペルフェナジン、および、ペルフェナジンを含む化学的コンジュゲートについて行った。誘導されたカタレプシーを本明細書中上記に記載されるように測定し、「壁」試験によって求めた。結果が図2に示される。ペルフェナジンとGABAとのコンジュゲートであるAN168が最も効果的であり、誘導されたカタレプシーのほぼ最大の低下をもたらし、吉草酸含有コンジュゲートAN178、プロピオン酸含有コンジュゲートAN177、および、酪酸含有コンジュゲートAN167がそれに続くことが見出された。この実験は、ペルフェナジンそれ自体による治療によって誘導されるカタレプシーと比較した場合、化学的コンジュゲートによる治療の後における誘導されたカタレプシーの著しい低下を示している。
【0256】
ペルフェナジン、フルフェナジン、および、それらを含有する化学的コンジュゲートにより誘導されるカタレプシーおよび動物行動:ペルフェナジン、フルフェナジン、ならびに、その酪酸含有化学的コンジュゲートおよびGABA含有化学的コンジュゲート(AN167、AN168、AN180およびAN187、表1を参照のこと)を、それらにより誘導される総カタレプシー、その投与後における誘導されたカタレプシーの経時変化および動物行動について調べた。測定を、5mg/Kgのペルフェナジン、等モル濃度のAN167およびAN168、7.5mg/Kgのフルフェナジン、ならびに、等モル濃度のAN180およびAN187の腹腔内注射後に行った。カタレプシーを「壁」試験によって求めた。
【0257】
図3aは、試験された化合物により誘導された総カタレプシーを明らかにする。得られたデータは、ペルフェナジンおよびフルフェナジン(=100%)に対する総時間の正規化による、投与後0分、30分、60分、90分、120分、180分、240分および420分で行われた測定の和である。酪酸含有化学的コンジュゲートのAN167およびAN180はともにカタレプシーを著しく低下させた。ペルフェナジンのGABA含有コンジュゲートAN168はカタレプシーを止め、一方、フルフェナジンのGABA含有コンジュゲートAN168はカタレプシーをかなり低下させた。
【0258】
図3bは、ペルフェナジン、そのGABAコンジュゲートAN168、フルフェナジンおよびそのGABAコンジュゲートAN187による治療の後の0分、60分および120分で測定されたプロラクチン血中レベルを示す。得られたデータは、動物におけるプロラクチン血中レベルのプロフィルが、ペルフェナジン、フルフェナジンまたはそれらのGABA化学的コンジュゲートにより治療されたとき、60分でピークに達し、その後は低下して、類似することを示している。プロラクチン血中レベルは、AN168およびAN187により治療された動物において、各時点で、ペルフェナジンおよびフルフェナジンの場合とそれぞれ類似していた。
【0259】
図4aは、ペルフェナジン、および、ペルフェナジンを含有する化学的コンジュゲートにより誘導されるカタレプシーの、7時間の期間にわたる経時変化を明らかにする。ペルフェナジンにより誘導されるカタレプシーは2時間後にピークに達し、その後は低下した。酪酸含有コンジュゲートAN167は、ペルフェナジンとして比較して、低下したカタレプシーを誘導し、その一方で、GABA含有コンジュゲートAN168により治療された動物はこの研究の全7時間の期間を通してカタレプシーを有しなかった。
【0260】
図4bは、フルフェナジン、および、ペルフェナジンを含有する化学的コンジュゲートにより誘導されるカタレプシーの、7時間の期間にわたる経時変化を明らかにする。フルフェナジンにより治療された動物は、測定された7時間の期間中にカタレプシーを示し、その一方で、AN180およびAN187により治療された動物はより低いカタレプシーを示した。AN180により治療されたカタレプシーは測定期間中変動しており、その一方で、AN187により治療されたカタレプシーは7時間の期間の終了時にはなくなっていた。この研究における動物はどれも24時間後にカタレプシーを有していなかった。
【0261】
動物の行動に対する試験化合物の投与の影響を、本明細書中上記に記載される治療の後における動物の鎮静および可動性の程度を、0〜3のスコアを使用して評価することによって測定した。0のスコアは活発かつ可動性の動物を表し、1は、落ち着き、かつ、可動性の動物を表し、2は、落ち着き、かつ、動かない動物を表し、3は、完全に運動失調性で、かつ、無警戒な動物を表す。得られたスコアが下記の表2にまとめられる。得られたスコアは、既知の薬物の動物行動と比較されるような動物行動に対する化学的コンジュゲートの低下した影響を明らかにしている。
【表2】
【0262】
AN168と、ペルフェナジンおよびGABAの混合物とによるラットにおける誘導されたカタレプシー:ラットにおいて誘導されたカタレプシーに対するAN168(ペルフェナジンのGABAコンジュゲート)の影響を、その母体薬物(すなわち、コンジュゲート化されていないペルフェナジンおよびGABA)の混合物により誘導されるカタレプシーと比較した。カタレプシーを、コンジュゲートまたは記載された混合物の腹腔内投与の後60分、90分および120分で測定し、「壁」試験によって求めた。
【0263】
図5aは、様々な治療により誘導された総カタレプシーについて得られたデータを示す。AN168により治療された群における動物は非常に低いカタレプシーを示し、その一方で、ペルフェナジンおよびGABAの混合物により治療された群におけるカタレプシーは高かった。
【0264】
図5bは両方の治療の後におけるカタレプシーの経時変化を示しており、カタレプシーが、AN168により治療された動物では低下し、120分後にはなくなっていることを明らかにしている。
【0265】
AN167およびAN168によりラットにおいて誘導されるカタレプシー:4つの独立した実験でAN167およびAN168により誘導される総カタレプシーを調べ、同じ実験条件のもとでのペルフェナジンにより誘導されるカタレプシーと比較した。
【0266】
等モル用量のAN167およびAN168の後での総カタレプシーの平均が、ペルフェナジンにより誘導されるカタレプシーの百分率として、図6に示される。AN167は、ペルフェナジンと比較した場合、より低いカタレプシーを誘導したが、AN168は、誘導されたカタレプシーをほぼ0の値に低下させた。
【0267】
ペルフェナジン、ペルフェナジンとGABAとの混合物、およびAN168によるマウスにおける誘導されたカタレプシー:マウスにおいて誘導されるカタレプシーに対するAN168(ペルフェナジンのGABAコンジュゲート)の影響を、ペルフェナジン単独により誘導されるカタレプシーと比較し、また、母体薬物(すなわち、コンジュゲート化されていないペルフェナジンおよびGABA)の混合物により誘導されるカタレプシーと比較した。カタレプシーを、治療の腹腔内注射の後60分、90分および120分で測定し、本明細書中上記に記載されるように求めた。
【0268】
図7aは、2分以内に目標に到達する動物の百分率に関して、様々な治療により誘導されたカタレプシーについて得られたデータを示す。AN168により治療された群における動物は実質的により低い能力障害を示し、その一方で、ペルフェナジン単独により治療された群、および、ペルフェナジンとGABAとの混合物により治療された群における動物はより大きいカタレプシーを示した。
【0269】
図7bは、動物が目標に到達するために要した時間に関して、上記治療の2時間後および3時間後での、様々な治療により誘導されたカタレプシーについて得られたデータを示す。N168により治療された群における動物は、ペルフェナジン単独により治療された動物、および、ペルフェナジンとGABAとの混合物により治療された動物よりもはるかに俊敏であった。
【0270】
経口投与されたペルフェナジンおよびそのGABAコンジュゲートAN168の誘導されたカタレプシー、誘導された動物行動、および向精神活性:AN168(ペルフェナジンおよびGABAの化学的コンジュゲート)は、腹腔内投与されたとき、現在最も効果的な化学的コンジュゲートであることが見出されたので、さらなる比較実験を、ペルフェナジンと比較して、この化学的コンジュゲートの経口効力を明らかにするために行った。この目的のために、誘導されたカタレプシー、プロラクチン血中レベルおよび動物行動を、ラットへのAN168またはペルフェナジン単独の経口投与の後、本明細書中上記に記載されるように測定した。動物をケージあたり5匹で分け、1%の乳酸に溶解されたペルフェナジンまたはAN−168を経口投与によって治療した。コントロール動物には、ビヒクル(乳酸)のみが与えられた。
【0271】
様々な濃度のAN168およびペルフェナジンの経口投与により誘導されるカタレプシーを、本明細書中上記に記載される「壁」試験および「ピアノ」試験によって測定した。カタレプシーの経時変化を、2.5mg/kg、5mg/kg、10mg/kgおよび20mg/kgのペルフェナジン、ならびに、それぞれの等モル用量の3.5mg/kg、7mg/kg、14mg/kgおよび28mg/kgのAN−168の経口投与の4時間後〜24時間後で測定した。総カタレプシーは4時間〜24時間の追跡期間中における治療群あたりの平均カタレプシーの和を表す。
【0272】
図8aは、4時間〜6時間の期間中における「ピアノ」試験により測定されたときの、様々な治療の後でのカタレプシーの経時変化を示しており、AN168のすべての濃度でのカタレプシー行動における一貫した低下を明らかにしている。統計学的分析により、低下が、AN168の低い用量および中間の用量(7mg/kgおよび14mg/kg)で、それらのそれぞれの等モル用量のペルフェナジンと比較して、より著しかったこと(p<0.05)が明らかにされた。より高用量の化学的コンジュゲート(14mg/kgおよび28mg/kg)では、検出されたカタレプシー症状が、違いはそれほど実質的ではなかったが、ペルフェナジンのカタレプシー症状よりも一貫して低かった。より大きい用量で薬物および化学的コンジュゲートにより誘導されるカタレプシーの間でのこれらのより小さい違いは評価手法から生じていることが推定される。実際的な検討のために、測定された最大カタレプシーシグナルは120秒に制限された。しかしながら、実際には、ペルフェナジンにより誘導される最大のカタレプシーシグナルの方が、化学的コンジュゲートにより誘発される最大のカタレプシーシグナルよりも大きいことが推定される。この推定は、AN−168とペルフェナジンとの間でのより大きく、かつ実質的な違いが、「壁」試験および鎮静スコア(これらは本明細書中上記に記載される)によって求められるカタレプシーの両方について、大きい用量において観測されたことによってさらに裏付けられる。そのうえ、行われた実験では、筋肉固縮および頻呼吸が、中間の用量および高い用量のペルフェナジン(10mg/kgおよび20mg/kg)により治療された動物においてだけ観測され、それぞれの等モル用量の化学的コンジュゲートにより治療された動物では観測されなかったことが示された。
【0273】
図8bは、図8aに示される実験の3ヶ月後に行われた別個の実験で、4時間〜6時間の期間中における「ピアノ」試験により測定されたときの、様々な治療の後でのカタレプシーの経時変化を示す。得られたデータは、高用量のAN168(14mg/kgおよび28mg/kg)で、より大きいカタレプシーが、前回の実験と比較して誘導されたことを示している。NMR分光学では、遅い分解(これはおそらくは加水分解のためである)が生じ、従って、化学的コンジュゲートの特有な性質が影響を受けたことが明らかにされた。これらの発見は、この化合物は密封バイアルに保存し、かつ、使用前にだけ暴露されなければならないことを示唆する。この点において、フルフェナジンの類似する化学的コンジュゲートAN187は吸湿性がないようであり、従って、長期間の貯蔵を行ったとき、分解する傾向がないことに留意しなければならない。
【0274】
図9aおよび図9bは、4時間〜6時間の期間中に観測された、5mg/kg、10mg/kgおよび20mg/kgのペルフェナジン、ならびに、それぞれの等モル用量の7mg/kg、14mg/kgおよび28mg/kgのAN−168の経口投与により誘導される総カタレプシーを示す。図9bは、図9aに示される実験の3ヶ月後に行われた実験で得られたデータを示す。AN168により誘導されるカタレプシー行動における低下が、ペルフェナジンと比較した場合、図9bに示されるデータではあまり著しくないが、AN168により誘導されるカタレプシーは、ペルフェナジンにより誘導されるカタレプシーよりも一貫して低いことが明瞭に示される。
【0275】
図10aおよび図10bは、様々な治療の後の24時間の期間中に「ピアノ」試験によって測定されたときのカタレプシーの経時変化(図10a)および総カタレプシー(図10b)を示す。得られたデータは、ペルフェナジンおよびAN−168の両方の最大カタレプシー作用が治療後5時間〜6時間で達成されたこと、および、治療後24時間で、カタレプシーがすべての治療群において低下したことを明らかにしている。これらのデータは、患者に(1日に1回)投与されたペルフェナジンについて観測された臨床的な経時変化と一致している。
【0276】
図11は、「壁」試験によって測定されたときの様々な治療の後での総カタレプシーを示しており、カタレプシー症状がAN168の治療された用量のすべてによる治療の後ではほとんどなくなったことを明瞭に明らかにしている。
【0277】
動物行動に対する化学的コンジュゲートAN168の経口投与の影響を、本明細書中上記に記載されるように、0〜3のスコアを使用して、様々な濃度のAN168およびペルフェナジンによる経口治療の後4時間〜6時間で動物の鎮静および可動性の程度を評価することによって測定した。得られたスコアが下記の表3にまとめられる。得られたスコアは、ペルフェナジン治療と比較した場合、動物行動に対する化学的コンジュゲートの低下した影響を明らかにしている。
【表3】
【0278】
経口投与された化合物のドーパミン作動活性についてのマーカーとして、プロラクチン血中レベルを、本明細書中上記に記載される様々な治療の後0分、90分および180分で測定した。得られたデータが図12にまとめられ、得られたデータは、ペルフェナジンおよびAN168により治療された動物におけるプロラクチン血中レベルのプロフィルが類似することを明らかにする。プロラクチン血中レベルは、AN168により治療された動物において、各時点で、低い用量および中間の用量でペルフェナジンの場合と類似しており、一方、より大きい用量では、AN168により治療された動物におけるプロラクチン血中レベルは、ペルフェナジンにより治療された動物と比較してはるかに高かった。
【0279】
これらの結果は、AN168が、経口投与されるとき、低い用量(例えば、3.5mg/kgおよび7mg/kg)で、非常に有効であり、従って、診療的使用に適切であることを明らかにしている。これらの低い用量で、AN168は最小限の錐体外路症状を引き起こし、従って、黒質−線条体経路でのアンタゴニスト活性をほとんど有しないことがこの例ではさらに示される。
【0280】
抗増殖活性:ペルフェナジン、その化学的コンジュゲート(AN167、AN168およびAN177)、フルフェナジン、その化学的コンジュゲート(AN179、AN180、AN181およびAN187)、ならびに、酪酸(BA)、4−フェニル酪酸(PBA)およびGABAの抗増殖活性を、正常な細胞および形質転換された細胞を用いて(通常、2つ以上の独立した実験で)行われた増殖試験によって測定した。細胞を継代培養し、試験化合物を増大する濃度でそれに加えた。IC50値を細胞の生存割合の線形回帰によって求めた。様々な試験された細胞株を用いて試験化合物について得られたIC50値が下記の表4および表5にまとめられる。
【表4】
【表5】
【0281】
これらの結果は、GABAはそれ自身では著しい抗増殖活性を明らかにすることができず(IC50が20mMを越える)、また、BA(1mM〜8mMのIC50範囲)およびPBA(2mM〜12mMのIC50範囲、データは示されず)は、顕著ではあるが、比較的低い抗増殖活性を示したが、それらのそれぞれのペルフェナジンコンジュゲートおよびフルフェナジンコンジュゲートは著しくより大きい活性(8μM〜60μMのIC50範囲)を有したことを示している。
【0282】
これらの結果はさらに、多剤耐性(MDR)細胞(例えば、HL60MX2、B16MDRサブクローンおよびMES SA DX5など)を含む広範囲の様々な細胞株における本発明の化学的コンジュゲートの万能的な抗増殖活性を明らかにする。
【0283】
図13は、B16マウスメラノーマ細胞の増殖に対するペルフェナジンおよびその化学的コンジュゲートの影響が測定された代表的な実験で得られた結果を示す。AN167およびAN168が抗増殖性薬物として比較的活性であることが見出された。
【0284】
ペルフェナジン、GABAおよびその化学的コンジュゲートAN168の細胞毒性作用をC6ラット神経膠腫細胞に対して測定し、知られている化学療法薬物(シスプラチンおよびビンクリスチン)のC6ラット神経膠腫細胞に対する細胞毒性作用と比較した。細胞を継代培養し、試験化合物を100μMまでの増大する濃度でそれに加えた。これらの治療の後(24時間後)での細胞の生存性を、本明細書中上記に記載されるニュートラルレッド法によって求めた。結果が図14に示される。ペルフェナジンおよびAN168のIC50値が本明細書中上記のように求められ、それぞれ19.2μMおよび24.2μMであることが見出された。
【0285】
図14に示されるように、得られたデータは、本発明の化学的コンジュゲートの抗増殖活性が、代表的な知られている化学療法薬物と比較して優れていることを明らかにする。C6神経膠腫細胞はMDR細胞として知られており、実際、これらの知られている化学療法薬物の抗増殖活性が実質的に低いことが見出された。対照的に、AN168は、大きい抗増殖活性を発揮し、これにより、実質的な細胞死を比較的低い濃度(約20μM)で生じさせていることが見出された。
【0286】
図15は、増大する濃度のペルフェナジン、AN168およびデキサメタゾンを用いたJurkatTリンパ腫細胞の治療の後で得られたデータを示す。結果が、アラマーブルー法によって求められた細胞生存性に関して示され、デキサメタゾンと比較して、AN168およびペルフェナジンの優れた細胞毒性作用を明らかにしている。ペルフェナジンおよびAN168のIC50値はそれぞれ16μMおよび19μMであった。
【0287】
ペルフェナジン、フルフェナジンおよびそれらの化学的コンジュゲートはほぼ同じ程度に抗増殖活性を発揮しているが、化学的コンジュゲートの投与は有害な副作用をほぼ完全に有していないので、本発明の化学的コンジュゲートの臨床的使用はこれらの神経遮断性薬物の臨床的使用よりも非常に優れていることはさらに留意しなければならない。
【0288】
ペルフェナジンまたはAN168と化学療法薬物との同時投与による化学感作作用:5μM、10μMおよび15μMのペルフェナジンならびに等モル用量のその化学コンジュゲートAN168の化学感作作用を、これらの化合物を様々な濃度の知られている化学療法薬物(例えば、ビンクリスチン、シスプラチンおよびデキサメタゾンなど)と同時投与することによって測定した。これらの混合治療の後での細胞生存性および/またはDNA断片化(これらは、本明細書中上記で方法の節に記載されるように求められた)を、化学療法薬物単独による治療の後で得られた結果と比較した。
【0289】
図16は、ビンクリスチン(30μM)、ペルフェナジン、AN168、および、それらの組合せによるラットC6神経膠腫細胞株(MDR細胞)の24時間の治療の後で得られたデータを示す。結果は、化学療法薬物と同時投与されたときには、単独で投与されたときの薬物の細胞毒性作用と比較して、化学的コンジュゲートの低い濃度(例えば、5μM)でさえ、その細胞毒性作用を実質的に高めるAN168の化学感作作用を明瞭に明らかにしている。
【0290】
図17は、5μM〜50μMの範囲にある様々な濃度でのシスプラチン、ならびに、シスプラチンと、10μMおよび15μMのAN168との組合せによるラットC6神経膠腫細胞株(MDR細胞)の治療の後で得られたデータを示す。結果が、ニュートラルレッド法によって測定された細胞生存性に関して示され、細胞が、すべての試験された濃度でシスプラチンに対して完全に抵抗性であったが、シスプラチンおよびAN168の混合治療は細胞を化学療法薬物に対して感受性にしたことを明瞭に明らかにしている。
【0291】
図18は、シスプラチン(30μM)、ペルフェナジン(25μMおよび50μM)、AN168(25μM、50μM)、シスプラチン(30μM)とAN168(50μM)との組合せを用いたラットC6神経膠腫細胞の治療の後で得られたDNA断片化のデータを、治療されていない細胞と比較して示す。DNA断片化を、本明細書中上記に記載されるヨウ化プロピジウムフローサイトメトリー法によって求めた。結果は、シスプラチンは単独ではDNA断片化の作用を全く有しないが、ペルフェナジンおよびAN168はともにDNA断片化の劇的な増大を誘導したことを明らかにしている。これらの結果は、本発明の化学的コンジュゲートの化学感作作用がそのこの活性から生じていることを示唆している。
【0292】
毒性:ペルフェナジン、AN167およびAN168のインビトロ毒性を、新生児マウスの脳から得られたニューロン細胞の初代培養物、ならびに、ニューロン細胞およびグリア細胞の混合物の初代培養物に対して測定した。細胞培養物を試験化合物で24時間治療し、その後、その生存性をニュートラルレッド比色測定法試験によって求めた。これらの試験で得られたIC50値は、図19に示されるように、ペルフェナジンおよびAN167が類似する毒性を有し、その一方で、AN168は正常な脳細胞に対して著しいより低い毒性を示したことを明らかにしている。ペルフェナジンおよびAN168のインビトロ毒性をさらに、培養されたラット筋細胞に対して測定した。図20は、様々な濃度のペルフェナジンまたはAN168による治療の後での本明細書中上記のように求められた細胞生存性を示す。得られたデータは、AN168はすべての濃度で細胞生存性における低下を何ら生じさせず、その一方で、ペルフェナジンは高い濃度で細胞生存性における20%の低下を生じさせたことを示している。
【0293】
ペルフェナジンおよびAN167のインビボ毒性をマウスへのその単回用量の腹腔内投与の後で評価した。LD50値が、治療後2週間で測定されたとき、ペルフェナジンについては109mg/kgであり、AN167については120mg/kgであった。AN167の毒性がペルフェナジン(per)と比較してより低いことに加えて、コンジュゲート化されている化合物によって引き起こされる死亡が、図21に示されるように遅くなった。
【0294】
ラットにおけるD−アンフェタミン誘導による活動過多:本発明の化学的コンジュゲートの効力を、D−アンフェタミン誘導による活動過多および可動性のモデルを使用して調べた。このモデルは、アンフェタミンに関連づけられる障害(例えば、統合失調症など)において抗精神病活性を有する化合物を選択するための予測可能かつ再現可能なモデルであるという利点を有する[14]。このモデルを使用して、ペルフェナジンとGABAとの化学的コンジュゲートAN−168の効力を調べ、単独で投与された母体化合物(ペルフェナジンおよびGABA)の効力と比較した。
【0295】
例えば、実験未使用のWistarオスラットを数群に分け、各群を、2.5mg/kgのアンフェタミンの腹腔内投与の90分前に、特定濃度のペルフェナジン(0.5mg/kg、1.5mg/kgまたは3mg/kg)、特定濃度のAN−168(0.5mg/kgまたは1.5mg/kg)、5mg/kgのGABA、または、1.5mg/kgのペルフェナジンおよび5mg/kgのGABAの腹腔内投与によって治療した。各群におけるラットのよじ登り行動を本明細書中上記に記載されるように測定した。
【0296】
図22および図23に示されるように、AN−168は、低い用量でさえ、アンフェタミンにより誘導されるよじ登り行動を完全に打ち消しており、それにより、その母体薬物のペルフェナジンおよびGABAと比較して、その高く、かつ、優れた向精神性効力を明らかにした。
【0297】
しかしながら、図24および図25に示されるように、頭部運動および他の小さい身体運動を低下させることにおけるAN−168の効果はペルフェナジンの効果よりも劣っていた。この劣った作用は、母体のペルフェナジンと比較した場合、コンジュゲートAN−168により誘導される低下した錐体外路副作用(すなわち、カタレプシー症状および鎮静)から生じていることが考えられる。図22〜図25においてさらに示されるように、GABAの単独での投与はアンフェタミンの作用を変化させず、また、ペルフェナジンの作用を変化させなかった。従って、高まった効力および低下した有害な副作用はコンジュゲートAN−168の投与から生じていることが示唆される。
【0298】
図26〜図28に示されるように、類似する結果が、2.5mg/kgのペルフェナジン(単独で、または、5mg/kgのGABAとの組合せで)、および、3.5mg/kgのAN−168をアンフェタミンの腹腔内投与の90分前にラットに経口投与したときに得られ、様々な投与経路におけるコンジュゲートの優れた効力を明らかにしていた。
【0299】
AN−168の効力をオランザピン(知られている非定型抗精神病薬)の効力とさらに比較した。様々な濃度のオランザピン(2.5mg/kg、5mg/kgまたは10mg/kg)をラットに経口投与し、その後、アンフェタミンを腹腔内投与した。図29〜図31に示されるように、オランザピンはアンフェタミン誘導によるよじ登り行動を高い用量(10mg/kg)でのみ実質的に打ち消すことができたが、その効果は頭部運動に関してはほとんど観測されなかった。
【0300】
これらの結果は、アンフェタミンモデルにおけるオランザピンの以前に報告されたより低い効力[15]と一致している。しかしながら、これらの研究で得られたデータはさらに、本発明の化学的コンジュゲートが、神経遮断性薬物と比較した場合、より低い抗ドーパミン作動活性を発揮し、従って、非定型薬物との類似点をいくつか示し得ることを示唆している。
【0301】
このモデルで得られたデータはさらに、母体の向精神性薬物により誘導される有害な副作用を軽減しながら、向精神活性を発揮することにおける本発明コンジュゲートの高い効力を裏付けている。
【0302】
本明細書中上記に示された全体的な実験結果は、向精神活性、抗増殖活性および化学感作活性を、正常な細胞に対する最小限に抑えられた毒性、および、最小限に抑えられた有害副作用とともに発揮することにおける本発明の新規な化学的コンジュゲートの大きく、かつ、好都合な効力を明らかにしている。
【0303】
神経膠腫細胞に対する抗増殖活性:神経膠腫細胞株(U87およびU251)の増殖に対する本発明によるバルプロ酸の様々なコンジュゲートの影響を、本明細書中上記に記載されるようなHoechst増殖アッセイを使用して調べた。
【0304】
最初に、神経膠芽細胞腫細胞(U251)の生存性に対する様々な濃度のバルプロ酸−GABAコンジュゲート(AN−216)の影響を調べ、その母体化合物(GABAおよびバルプロ酸)およびその1:1等モル混合物の影響と比較した。得られた結果を図32a〜図32bおよび図33に示す。
【0305】
図32aは、AN−216を用いて得られたデータを示し、神経膠腫細胞に対するその強力な抗増殖活性を明瞭に示している。図32bは、AN−216を用いて得られたデータを、その母体化合物を用いて得られたデータと比較して示しており、そのより高い効力を明瞭に明らかにしている。図32bにおいて明瞭に認められるように、GABAは単独では神経膠腫細胞の生存性に対する作用を全く有していないが、バルプロ酸、ならびに、GABAおよびバルプロ酸の等モル混合物はこの細胞の生存性に対する作用を有する。しかしながら、図32aにおいてさらに認められるように、AN−216の効果的な濃度は、バルプロ酸の効果的な濃度、および、GABAとのその混合物の効果的な濃度と比較した場合、約1/100である。従って、このことは神経膠腫細胞に対するその高い抗増殖効力を明らかにしている。
【0306】
図33は、本発明によるさらなるバルプロ酸コンジュゲートのAN−138およびAN−223を用いて得られた値と比較されるこの研究で得られたIC50値を示しており、GABAの存在下および非存在下でのバルプロ酸の効力と比較した場合、本発明のコンジュゲートの効力がより高いことを明瞭にさらに明らかにしている。
【0307】
バルプロ酸の様々なコンジュゲートの抗増殖効力を評価および比較するために行われた構造活性相関研究では、2つの神経膠腫細胞株(U−87およびU−251)の生存性に対するバルプロ酸−GABAコンジュゲートAN−216の影響を調べ、バルプロ酸−カルボン酸コンジュゲートのAN−138、AN−148およびAN−223(上記の表1を参照のこと)の効力と比較した。
【0308】
得られたデータが図34〜図36にまとめら、示される。得られたデータは、驚くべきことに、AN−216がこれまでにないほど活性な化合物であったことを示している。何らかの特定の理論にとらわれないが、神経膠腫細胞に対するこのバルプロ酸−GABAコンジュゲートの優れた抗増殖活性は、細胞内への化合物の効率的な送達を高めるGABA成分に起因することが示唆される。
【0309】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0310】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更及び変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更及び変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許及び特許願はすべて、個々の刊行物、特許及び特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用又は確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【0311】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の化学的成分に共有結合的に連結された第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートであって、前記第1の化学的成分は向精神性薬物残基であり、前記第2の化学的成分は、前記向精神性薬物がそれ自体で投与されたときに前記向精神性薬物により誘導される副作用を軽減するように、および/または、前記向精神性薬物の治療活性を強化するように、および/または、抗増殖活性を発揮させるように選択される有機酸残基であり、ただし前記向精神性薬物は抗精神病薬ではなく、前記有機酸は脂肪酸または脂質酸ではない化学的コンジュゲート。
【請求項2】
前記第2の化学的成分は、GABAアゴニスト残基、鎮痛剤残基および抗増殖剤残基からなる群から選択される請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項3】
前記第2の化学的成分は、カルボン酸エステル結合、アルキルオキシカルボン酸エステル結合、アミド結合、イミン結合およびチオエステル結合からなる群から選択される結合を介して前記第1の化学的成分に共有結合的に連結される請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項4】
前記向精神性薬物は抗痙攣剤である請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項5】
前記向精神性薬物残基は、不安緩解薬残基、抗うつ剤残基、抗痙攣薬残基、抗パーキンソン症候群薬残基、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤残基、MAO阻害剤残基、三環向精神性薬物残基、二環向精神性薬物残基、単環向精神性薬物残基およびベンゾジアゼピン残基からなる群から選択される請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項6】
前記向精神性薬物残基は抗うつ剤残基である請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項7】
前記抗うつ剤残基はノルトリプチリン残基またはその誘導体からなる群から選択される請求項6に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項8】
前記向精神性薬物残基は抗パーキンソン病薬残基である請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項9】
前記向精神性薬物残基は、フルオキセチン残基、フルボキサミン残基、デシプラミン残基、パロキセチン残基、セルトラリン残基、バルプロ酸残基およびフェニトイン残基以外である請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項10】
前記抗増殖剤残基は、酪酸残基および4−フェニル酪酸残基からなる群から選択される請求項2に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項11】
前記有機酸残基は一般式−R−C(=O)−を有し、
式中、Rは、1個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の炭化水素残基、1個〜20個の炭素原子と、酸素、窒素およびイオウからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とを有する置換または非置換の炭化水素残基、ならびに、R1からなる群から選択され、
ただし、R1は一般式−Z−C(=O)O−CHR2−R3の残基であり、
式中、Zは、単結合、1個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の炭化水素残基、ならびに、1個〜20個の炭素原子と、酸素、窒素およびイオウからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とを有する置換または非置換の炭化水素残基からなる群から選択される;
R2は、水素、および、1個〜10個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択される;かつ、
R3は、水素、1個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の炭化水素残基、ならびに、1個〜20個の炭素原子と、酸素、窒素およびイオウからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とを有する置換または非置換のアルキルからなる群から選択される請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項12】
前記Rは、3個〜5個の炭素原子を有する置換または非置換のアルキルである請求項11に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項13】
前記有機酸残基は、酪酸残基、吉草酸残基、4−フェニル酪酸残基、4−アミノ酪酸残基、レチノイン酸残基、スリンダク酸残基、アセチルサリチル酸残基、イブプロフェン残基、マロン酸残基、コハク酸残基、グルタル酸残基、フマル酸残基およびフタル酸残基からなる群から選択される請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の化学的コンジュゲートを有効成分として含み、かつ、医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物。
【請求項15】
CNSの障害または疾患の治療において使用するために、包装物に包装され、かつ、包装物上または包装物内において活字で特定される請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
増殖性の障害または疾患の治療において使用するために、包装物に包装され、かつ、包装物上または包装物内において活字で特定される請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
化学療法剤との組み合わせで、および/または、化学感作が有益である医学的状態で、化学感作において使用するために、包装物に包装され、かつ、包装物上または包装物内において活字で特定される請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
CNSの障害または疾患および増殖性の障害または疾患からなる群から選択される医学的状態を治療または防止するための医薬の製造における、請求項1〜13のいずれか一項に記載の化学的コンジュゲートの使用方法。
【請求項19】
前記CNSの障害または疾患は、不安障害、解離型障害、人格障害、気分障害、情動障害、神経変性性の疾患または障害、痙攣性障害、境界性障害、および、精神的な疾患または障害からなる群から選択される請求項18に記載の使用方法。
【請求項20】
前記増殖性の障害または疾患は、脳腫瘍、脳転移物および末梢腫瘍からなる群から選択される請求項18に記載の使用方法。
【請求項21】
化学感化のための医薬の製造のための請求項1〜13のいずれか一項に記載の化学的コンジュゲートの使用方法であって、前記化学的コンジュゲートは化学療法剤との組み合わせで使用するためのものである使用方法。
【請求項22】
有機酸および向精神性薬物を反応して、その結果、前記向精神性薬物の残基に共有結合的に連結された前記有機酸の残基を得るようにすることを含む請求項1〜13のいずれか一項に記載の化学的コンジュゲートを合成する方法。
【請求項23】
前記有機酸は抗増殖剤であり、前記有機酸の前記残基はカルボン酸エステル結合を介して前記向精神性薬物の前記残基に共有結合的に連結され、前記方法は、前記反応の前に、前記有機酸をそのアシルクロリド誘導体に変換することをさらに含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記有機酸は抗増殖剤であり、前記有機酸の前記残基はチオエステル結合を介して前記向精神性薬物の前記残基に共有結合的に連結され、前記方法は、前記反応の前に、前記向精神性薬物をそのチオール誘導体に変換すること、および、前記有機酸をそのアシルクロリド誘導体に変換することをさらに含む請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記有機酸は抗増殖剤であり、前記有機酸の前記残基はアミド結合を介して前記向精神性薬物の前記残基に共有結合的に連結され、前記方法は、前記反応の前に、前記有機酸をそのアシルクロリド誘導体に変換すること、および、前記向精神性薬物をそのアミン誘導体に変換することをさらに含む請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記有機酸は抗増殖剤であり、前記有機酸の前記残基はアルキルオキシカルボン酸エステル結合を介して前記向精神性薬物の前記残基に共有結合的に連結され、前記方法は、前記反応の前に、前記向精神性薬物をそのクロロアルキルエステル誘導体に変換することをさらに含む請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記有機酸が、遊離アミノ基を含むGABAアゴニストであり、前記方法が以下のことをさらに含む請求項22に記載の方法:
前記アミノ基を前記反応の前に保護基で保護し、その結果、前記反応によって、前記向精神性薬物の前記残基に共有結合的に連結された前記有機酸のアミノ保護残基を得るようにすること;および
前記向精神性薬物の前記残基に共有結合的に連結された前記有機酸の前記アミノ保護残基を得た後、前記保護基を除くこと。
【請求項28】
前記保護の後、および、前記反応の前に、前記有機酸をそのアシルイミダゾール誘導体に変換することをさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項29】
第2の化学的成分に共有結合的に連結された第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートであって、前記第1の化学的成分は向精神性薬物残基であり、前記第2の化学的成分は、前記向精神性薬物がそれ自体で投与されたときに前記向精神性薬物により誘導される副作用を軽減するように、および/または、前記向精神性薬物の活性を強化するように、および/または、抗増殖活性を発揮させるように選択される鎮痛剤残基である有機酸残基である化学的コンジュゲート。
【請求項30】
前記第2の化学的成分は、カルボン酸エステル結合、アルキルオキシカルボン酸エステル結合、アミド結合、イミン結合およびチオエステル結合からなる群から選択される結合を介して前記第1の化学的成分に共有結合的に連結される請求項29に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項31】
前記向精神性薬物残基は抗増殖活性を有する請求項29に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項32】
前記向精神性薬物残基は化学感作活性を有する請求項29に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項33】
前記向精神性薬物残基は、フェノチアジン残基、フェノチアジン誘導体残基およびバルプロ酸残基からなる群から選択される請求項31に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項34】
前記向精神性薬物残基は抗精神病薬残基である請求項29に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項35】
前記向精神性薬物残基は、不安緩解薬残基、抗うつ剤残基、抗痙攣薬残基、抗パーキンソン症候群薬残基、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤残基、MAO阻害剤残基、三環向精神性薬物残基、二環向精神性薬物残基、単環向精神性薬物残基、フェノチアジン残基、ベンゾジアゼピン残基およびブチロフェノン残基からなる群から選択される請求項29に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項36】
請求項29〜35のいずれか一項に記載の化学的コンジュゲートを有効成分として含み、かつ、医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物。
【請求項37】
CNSの障害または疾患の治療において使用するために、包装物に包装され、かつ、包装物上または包装物内において活字で特定される請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
増殖性の障害または疾患の治療において使用するために、包装物に包装され、かつ、包装物上または包装物内において活字で特定される請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項39】
化学療法剤との組み合わせで、および/または、化学感作が有益である医学的状態で、化学感作において使用するために、包装物に包装され、かつ、包装物上または包装物内において活字で特定される請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項40】
CNSの障害または疾患および増殖性の障害または疾患からなる群から選択される医学的状態を治療または防止するための医薬の製造における、請求項29に記載の化学的コンジュゲートの使用方法。
【請求項41】
前記向精神性の障害または疾患は、精神病的な障害または疾患、不安障害、解離型障害、人格障害、気分障害、情動障害、神経変性性の疾患または障害、痙攣性障害、境界性障害、および、精神的な疾患または障害からなる群から選択される請求項40に記載の使用方法。
【請求項42】
化学感化のための医薬の製造における請求項29〜35のいずれか一項に記載の化学的コンジュゲートの使用方法であって、前記化学的コンジュゲートは化学療法剤との組み合わせで使用するためのものである使用方法。
【請求項43】
鎮痛剤および向精神性薬物を反応させて、その結果、前記向精神性薬物の残基に共有結合的に連結された前記鎮痛剤の残基を得るようにすることを含む請求項29〜35のいずれか一項に記載の化学的コンジュゲートを合成する方法。
【請求項1】
第2の化学的成分に共有結合的に連結された第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートであって、前記第1の化学的成分は向精神性薬物残基であり、前記第2の化学的成分は、前記向精神性薬物がそれ自体で投与されたときに前記向精神性薬物により誘導される副作用を軽減するように、および/または、前記向精神性薬物の治療活性を強化するように、および/または、抗増殖活性を発揮させるように選択される有機酸残基であり、ただし前記向精神性薬物は抗精神病薬ではなく、前記有機酸は脂肪酸または脂質酸ではない化学的コンジュゲート。
【請求項2】
前記第2の化学的成分は、GABAアゴニスト残基、鎮痛剤残基および抗増殖剤残基からなる群から選択される請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項3】
前記第2の化学的成分は、カルボン酸エステル結合、アルキルオキシカルボン酸エステル結合、アミド結合、イミン結合およびチオエステル結合からなる群から選択される結合を介して前記第1の化学的成分に共有結合的に連結される請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項4】
前記向精神性薬物は抗痙攣剤である請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項5】
前記向精神性薬物残基は、不安緩解薬残基、抗うつ剤残基、抗痙攣薬残基、抗パーキンソン症候群薬残基、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤残基、MAO阻害剤残基、三環向精神性薬物残基、二環向精神性薬物残基、単環向精神性薬物残基およびベンゾジアゼピン残基からなる群から選択される請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項6】
前記向精神性薬物残基は抗うつ剤残基である請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項7】
前記抗うつ剤残基はノルトリプチリン残基またはその誘導体からなる群から選択される請求項6に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項8】
前記向精神性薬物残基は抗パーキンソン病薬残基である請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項9】
前記向精神性薬物残基は、フルオキセチン残基、フルボキサミン残基、デシプラミン残基、パロキセチン残基、セルトラリン残基、バルプロ酸残基およびフェニトイン残基以外である請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項10】
前記抗増殖剤残基は、酪酸残基および4−フェニル酪酸残基からなる群から選択される請求項2に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項11】
前記有機酸残基は一般式−R−C(=O)−を有し、
式中、Rは、1個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の炭化水素残基、1個〜20個の炭素原子と、酸素、窒素およびイオウからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とを有する置換または非置換の炭化水素残基、ならびに、R1からなる群から選択され、
ただし、R1は一般式−Z−C(=O)O−CHR2−R3の残基であり、
式中、Zは、単結合、1個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の炭化水素残基、ならびに、1個〜20個の炭素原子と、酸素、窒素およびイオウからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とを有する置換または非置換の炭化水素残基からなる群から選択される;
R2は、水素、および、1個〜10個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択される;かつ、
R3は、水素、1個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の炭化水素残基、ならびに、1個〜20個の炭素原子と、酸素、窒素およびイオウからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とを有する置換または非置換のアルキルからなる群から選択される請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項12】
前記Rは、3個〜5個の炭素原子を有する置換または非置換のアルキルである請求項11に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項13】
前記有機酸残基は、酪酸残基、吉草酸残基、4−フェニル酪酸残基、4−アミノ酪酸残基、レチノイン酸残基、スリンダク酸残基、アセチルサリチル酸残基、イブプロフェン残基、マロン酸残基、コハク酸残基、グルタル酸残基、フマル酸残基およびフタル酸残基からなる群から選択される請求項1に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の化学的コンジュゲートを有効成分として含み、かつ、医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物。
【請求項15】
CNSの障害または疾患の治療において使用するために、包装物に包装され、かつ、包装物上または包装物内において活字で特定される請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
増殖性の障害または疾患の治療において使用するために、包装物に包装され、かつ、包装物上または包装物内において活字で特定される請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
化学療法剤との組み合わせで、および/または、化学感作が有益である医学的状態で、化学感作において使用するために、包装物に包装され、かつ、包装物上または包装物内において活字で特定される請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
CNSの障害または疾患および増殖性の障害または疾患からなる群から選択される医学的状態を治療または防止するための医薬の製造における、請求項1〜13のいずれか一項に記載の化学的コンジュゲートの使用方法。
【請求項19】
前記CNSの障害または疾患は、不安障害、解離型障害、人格障害、気分障害、情動障害、神経変性性の疾患または障害、痙攣性障害、境界性障害、および、精神的な疾患または障害からなる群から選択される請求項18に記載の使用方法。
【請求項20】
前記増殖性の障害または疾患は、脳腫瘍、脳転移物および末梢腫瘍からなる群から選択される請求項18に記載の使用方法。
【請求項21】
化学感化のための医薬の製造のための請求項1〜13のいずれか一項に記載の化学的コンジュゲートの使用方法であって、前記化学的コンジュゲートは化学療法剤との組み合わせで使用するためのものである使用方法。
【請求項22】
有機酸および向精神性薬物を反応して、その結果、前記向精神性薬物の残基に共有結合的に連結された前記有機酸の残基を得るようにすることを含む請求項1〜13のいずれか一項に記載の化学的コンジュゲートを合成する方法。
【請求項23】
前記有機酸は抗増殖剤であり、前記有機酸の前記残基はカルボン酸エステル結合を介して前記向精神性薬物の前記残基に共有結合的に連結され、前記方法は、前記反応の前に、前記有機酸をそのアシルクロリド誘導体に変換することをさらに含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記有機酸は抗増殖剤であり、前記有機酸の前記残基はチオエステル結合を介して前記向精神性薬物の前記残基に共有結合的に連結され、前記方法は、前記反応の前に、前記向精神性薬物をそのチオール誘導体に変換すること、および、前記有機酸をそのアシルクロリド誘導体に変換することをさらに含む請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記有機酸は抗増殖剤であり、前記有機酸の前記残基はアミド結合を介して前記向精神性薬物の前記残基に共有結合的に連結され、前記方法は、前記反応の前に、前記有機酸をそのアシルクロリド誘導体に変換すること、および、前記向精神性薬物をそのアミン誘導体に変換することをさらに含む請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記有機酸は抗増殖剤であり、前記有機酸の前記残基はアルキルオキシカルボン酸エステル結合を介して前記向精神性薬物の前記残基に共有結合的に連結され、前記方法は、前記反応の前に、前記向精神性薬物をそのクロロアルキルエステル誘導体に変換することをさらに含む請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記有機酸が、遊離アミノ基を含むGABAアゴニストであり、前記方法が以下のことをさらに含む請求項22に記載の方法:
前記アミノ基を前記反応の前に保護基で保護し、その結果、前記反応によって、前記向精神性薬物の前記残基に共有結合的に連結された前記有機酸のアミノ保護残基を得るようにすること;および
前記向精神性薬物の前記残基に共有結合的に連結された前記有機酸の前記アミノ保護残基を得た後、前記保護基を除くこと。
【請求項28】
前記保護の後、および、前記反応の前に、前記有機酸をそのアシルイミダゾール誘導体に変換することをさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項29】
第2の化学的成分に共有結合的に連結された第1の化学的成分を含む化学的コンジュゲートであって、前記第1の化学的成分は向精神性薬物残基であり、前記第2の化学的成分は、前記向精神性薬物がそれ自体で投与されたときに前記向精神性薬物により誘導される副作用を軽減するように、および/または、前記向精神性薬物の活性を強化するように、および/または、抗増殖活性を発揮させるように選択される鎮痛剤残基である有機酸残基である化学的コンジュゲート。
【請求項30】
前記第2の化学的成分は、カルボン酸エステル結合、アルキルオキシカルボン酸エステル結合、アミド結合、イミン結合およびチオエステル結合からなる群から選択される結合を介して前記第1の化学的成分に共有結合的に連結される請求項29に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項31】
前記向精神性薬物残基は抗増殖活性を有する請求項29に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項32】
前記向精神性薬物残基は化学感作活性を有する請求項29に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項33】
前記向精神性薬物残基は、フェノチアジン残基、フェノチアジン誘導体残基およびバルプロ酸残基からなる群から選択される請求項31に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項34】
前記向精神性薬物残基は抗精神病薬残基である請求項29に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項35】
前記向精神性薬物残基は、不安緩解薬残基、抗うつ剤残基、抗痙攣薬残基、抗パーキンソン症候群薬残基、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤残基、MAO阻害剤残基、三環向精神性薬物残基、二環向精神性薬物残基、単環向精神性薬物残基、フェノチアジン残基、ベンゾジアゼピン残基およびブチロフェノン残基からなる群から選択される請求項29に記載の化学的コンジュゲート。
【請求項36】
請求項29〜35のいずれか一項に記載の化学的コンジュゲートを有効成分として含み、かつ、医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物。
【請求項37】
CNSの障害または疾患の治療において使用するために、包装物に包装され、かつ、包装物上または包装物内において活字で特定される請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
増殖性の障害または疾患の治療において使用するために、包装物に包装され、かつ、包装物上または包装物内において活字で特定される請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項39】
化学療法剤との組み合わせで、および/または、化学感作が有益である医学的状態で、化学感作において使用するために、包装物に包装され、かつ、包装物上または包装物内において活字で特定される請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項40】
CNSの障害または疾患および増殖性の障害または疾患からなる群から選択される医学的状態を治療または防止するための医薬の製造における、請求項29に記載の化学的コンジュゲートの使用方法。
【請求項41】
前記向精神性の障害または疾患は、精神病的な障害または疾患、不安障害、解離型障害、人格障害、気分障害、情動障害、神経変性性の疾患または障害、痙攣性障害、境界性障害、および、精神的な疾患または障害からなる群から選択される請求項40に記載の使用方法。
【請求項42】
化学感化のための医薬の製造における請求項29〜35のいずれか一項に記載の化学的コンジュゲートの使用方法であって、前記化学的コンジュゲートは化学療法剤との組み合わせで使用するためのものである使用方法。
【請求項43】
鎮痛剤および向精神性薬物を反応させて、その結果、前記向精神性薬物の残基に共有結合的に連結された前記鎮痛剤の残基を得るようにすることを含む請求項29〜35のいずれか一項に記載の化学的コンジュゲートを合成する方法。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2011−121971(P2011−121971A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20274(P2011−20274)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【分割の表示】特願2007−504560(P2007−504560)の分割
【原出願日】平成17年3月27日(2005.3.27)
【出願人】(503255958)ラモト アット テル アヴィヴ ユニヴァーシティ リミテッド (14)
【出願人】(503437093)バル−イラン ユニバーシティ (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【分割の表示】特願2007−504560(P2007−504560)の分割
【原出願日】平成17年3月27日(2005.3.27)
【出願人】(503255958)ラモト アット テル アヴィヴ ユニヴァーシティ リミテッド (14)
【出願人】(503437093)バル−イラン ユニバーシティ (6)
【Fターム(参考)】
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