説明

コンジュゲート繊維及び生地

【課題】優れた染色性を有し、かつ、接触冷感及び肌触りが良好な生地を得ることができるコンジュゲート繊維を提供する。また、該コンジュゲート繊維を用いてなる生地を提供する。
【解決手段】ポリアミド系エラストマーを含有する成分1とポリアミド系樹脂を含有する成分2との2成分分割型構造を有するコンジュゲート繊維であって、繊維中の前記ポリアミド系エラストマーの含有率が20〜80重量%であるコンジュゲート繊維。芯部にポリアミド系エラストマーを含有し、鞘部にポリアミド系樹脂を含有する芯鞘構造が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた染色性を有し、かつ、接触冷感及び肌触りが良好な生地を得ることができるコンジュゲート繊維に関する。また、本発明は、該コンジュゲート繊維を用いてなる生地に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、夏季用の肌着として、清涼感に優れた繊維及び該繊維を用いた繊維製品が研究されている。
このような清涼感を与える機能としては、例えば、着用時にヒヤリとした感覚を生じさせる接触冷感が挙げられる。このような接触冷感に優れた繊維として、特許文献1及び特許文献2にはポリアミド系エラストマーを含有する繊維が開示されている。
【0003】
しかしながら、ポリアミド系エラストマーは、染色を行うために必要な染着座席を有さないか、又は、染着座席を有していたとしても非常に少ないため、酸性染料やカチオン染料を用いて染色を行うことは困難であった。また、特許文献3には、分散染料を用いてポリウレタン等のポリアミド系エラストマーを染色する方法が開示されているが、分散染料を用いて染色を行った場合、染色は可能なものの、洗濯や摩擦等を行うと、ポリアミド系エラストマーのソフトセグメントである非晶性部分に入り込んだ染料がポリアミド系エラストマーの内部から容易に抜け落ちてしまうため、洗濯堅牢度や摩擦堅牢度が極めて低く、実用的ではなかった。
【0004】
このような問題に対して、ポリアミド系エラストマー中に染着座席を導入することが行われており、例えば、ポリアミド系エラストマーにスルホン酸基を有する化合物を導入することにより、ポリアミド系エラストマーのカチオン染料に対する染色性を向上させることが行われている。しかし、このような方法は、原料樹脂の重合段階において、スルホン酸基を有するモノマーを重合させることが必要となるため、工程が複雑化していた。
【0005】
また、ポリアミド系エラストマーのペレットに無機系顔料等を含有させ、原着することによる着色化が行われている。しかしながら、この方法では、多色展開が困難であり、また、コストが高くなってしまうという問題があった。
【0006】
更に、染色性を向上させるために、例えば、ポリアミド系エラストマーにポリアミド系樹脂をブレンドすることによる可染化が行われている。しかし、この方法においてもポリアミド系エラストマーの柔軟性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−270075号公報
【特許文献2】特開2005−036361号公報
【特許文献3】特開2003−247177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた染色性を有し、かつ、接触冷感及び肌触りが良好な生地を得ることができるコンジュゲート繊維を提供することを目的とする。また、本発明は、該コンジュゲート繊維を用いてなる生地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリアミド系エラストマーを含有する成分とポリアミド系樹脂を含有する成分との2成分分割型構造を有するコンジュゲート繊維であって、繊維中の上記ポリアミド系エラストマーの含有率が20〜80重量%であるコンジュゲート繊維である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明者らは、接触冷感及び柔軟性に優れるポリアミド系エラストマーを含有する成分と、染色性に優れ、肌触りが良好なポリアミド系樹脂を含有する成分との2成分分割型構造とし、更に、繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率を特定の範囲内とすることにより、優れた染色性を有し、かつ、接触冷感及び肌触りが良好な生地を得ることができるコンジュゲート繊維が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明のコンジュゲート繊維は、ポリアミド系エラストマーを含有する。
上記ポリアミド系エラストマーを含有することにより、本発明のコンジュゲート繊維を用いてなる生地は、接触冷感、及び、柔軟性に優れる。
【0012】
上記ポリアミド系エラストマーは特に限定されず、例えば、ポリエーテルブロックアミド共重合体、ポリエーテルアミド共重合体、ポリエステルアミド共重合体等が挙げられる。
具体的には例えば、ナイロン11又はナイロン12をハードセグメントとし、ポリエチレングリコールをソフトセグメントとして構成するポリアミド系エラストマー等が挙げられる。
これらのうち、市販されているポリアミド系エラストマーとしては、例えば、ペバックス(アルケマ社製)、UBEナイロン(宇部興産社製)、グリロンELX、グリルアミドELY(以上、エムス昭和電工社製)、ダイアミド、ベスタミド(以上、ダイセル・デクサ社製)等が挙げられる。
これらのポリアミド系エラストマーは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0013】
上記ポリアミド系エラストマーのなかでも、極めて優れた帯電防止効果が得られること、紡糸性に優れること、及び、比重が小さく、軽い生地や肌着を作製できることから、下記式(1)で表されるポリエーテルブロックアミド共重合体が好適である。このようなポリエーテルブロックアミド共重合体のうち市販されているものとしては、例えば、ペバックス(アルケマ社製)等が挙げられる。
【0014】
【化1】

【0015】
本発明のコンジュゲート繊維中の上記ポリアミド系エラストマーの含有率の下限は20重量%、上限は80重量%である。上記ポリアミド系エラストマーの含有率が20重量%未満であると、得られる繊維を用いてなる生地が接触冷感に劣るものとなる。上記ポリアミド系エラストマーの含有率が80重量%を超えると、得られる繊維の熱水収縮率が大きくなりすぎる。上記ポリアミド系エラストマーの含有率の好ましい下限は25重量%、より好ましい下限は30重量%である。
【0016】
繊維の長さ方向に対して垂直に切断した場合の本発明のコンジュゲート繊維中の上記ポリアミド系エラストマーを含有する成分の繊維断面における占有率は特に限定されないが、好ましい下限は20%、好ましい上限は80%である。上記ポリアミド系エラストマーを含有する成分の繊維断面における占有率が20%未満であると、得られる繊維を用いてなる生地が接触冷感に劣るものとなることがある。上記ポリアミド系エラストマーを含有する成分の繊維断面における占有率が80%を超えると、得られる繊維の熱水収縮率が大きくなりすぎることがある。上記ポリアミド系エラストマーを含有する成分の繊維断面における占有率のより好ましい下限は25%、更に好ましい下限は30%である。
【0017】
本発明のコンジュゲート繊維は、ポリアミド系樹脂を含有する。
上記ポリアミド系樹脂を含有することにより、本発明のコンジュゲート繊維を用いる生地は、染色性に優れ、かつ、べたつきがなく良好な肌触りを有する。
なお、本明細書において上記ポリアミド系樹脂には、上記ポリアミド系エラストマーは含まれない。
【0018】
上記ポリアミド系樹脂は特に限定されず、例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。
これらのポリアミド系樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、UBEナイロン1011FB(宇部興産社製)、リルサン BESN TL(アルケマ社製)、UBESTA 3014B(宇部興産社製)等が挙げられる。
これらのポリアミド系樹脂は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0019】
本発明のコンジュゲート繊維中の上記ポリアミド系樹脂の含有率は特に限定されないが、好ましい下限は20重量%、好ましい上限は75重量%である。上記ポリアミド系樹脂の含有率が20重量%未満であると、得られる繊維が染色性に劣るものとなり、更に、得られる繊維を用いてなる生地の肌触りが悪くなることがある。上記ポリアミド系樹脂の含有率が75重量%を超えると、上記ポリアミド系エラストマーの含有率が小さくなるため、得られる繊維を用いてなる生地が接触冷感に劣るものとなることがある。上記ポリアミド系樹脂の含有率のより好ましい上限は70重量%である。
【0020】
繊維の長さ方向に対して垂直に切断した場合の本発明のコンジュゲート繊維中の上記ポリアミド系樹脂を含有する成分の繊維断面における占有率は特に限定されないが、好ましい下限は20%、好ましい上限は75%である。上記ポリアミド系樹脂を含有する成分の繊維断面における占有率が20%未満であると、得られる繊維が染色性に劣るものとなり、更に、得られる繊維を用いてなる生地の肌触りが悪くなることがある。上記ポリアミド系樹脂を含有する成分の繊維断面における占有率が75%を超えると、上記ポリアミド系エラストマーを含有する成分の繊維断面における占有率が小さくなるため、得られる繊維を用いてなる生地が接触冷感に劣るものとなることがある。上記ポリアミド系樹脂を含有する成分の繊維断面における占有率のより好ましい上限は70%である。
【0021】
また、上記ポリアミド系エラストマー及び上記ポリアミド系樹脂は、必要に応じて、抗酸化剤、防腐剤、帯電防止剤、安定剤、酸化防止剤、艶消剤、耐光剤、滑剤、香料、可塑剤、界面活性剤、難燃剤等の公知の各種添加剤を含有してもよい。
【0022】
本発明のコンジュゲート繊維は、上記ポリアミド系エラストマーを含有する成分と上記ポリアミド系樹脂を含有する成分との2成分分割型構造を有する。上記分割型構造は特に限定されず、芯鞘型構造、サイドバイサイド型構造、放射型構造等が挙げられる。なかでも、芯部に上記ポリアミド系エラストマーを含有し、鞘部に上記ポリアミド系樹脂を含有する芯鞘型構造であることが好適である。
【0023】
上記芯鞘型構造は特に限定されず、例えば、繊維の長さ方向に対して垂直に切断した場合の断面形状が真円のものであってもよいし、楕円等であってもよい。また、芯部と鞘部とが同心円状に形成された同心芯鞘型構造であってもよいし、芯部と鞘部とが偏心的に形成された偏心芯鞘型構造であってもよい。更に、鞘部の一部が開口した部分開口型構造であってもよい。加えて、繊維の長さ方向に対して垂直に切断した場合に芯部が複数存在するような構造であってもよい。
【0024】
本発明のコンジュゲート繊維が上記部分開口型の芯鞘型構造を有する場合において、鞘部の開口率は特に限定されないが、好ましい下限は5%、好ましい上限は30%である。上記開口率が30%を超えると、得られる繊維を用いてなる生地の肌触りが悪くなることがある。上記開口率のより好ましい下限は10%である。
なお、本明細書において上記開口率とは、繊維の長さ方向に対して垂直に切断した場合の繊維断面外周において、芯部を構成する樹脂が外周部に露出する割合を表す。
【0025】
本発明のコンジュゲート繊維は、qmax値が0.20J/sec/cm以上であることが好ましい。
上記qmax値は、着衣したときに試料に奪われる体温をシミュレートしていると考えられ、上記qmax値が大きいほど着衣時に奪われる体温が大きく、接触冷感が高いと考えられる。上記qmax値が0.20J/sec/cm未満であると、官能試験を行っても大半の人が接触冷感を感じないことがある。上記qmax値のより好ましい下限は0.21J/sec/cm、更に好ましい下限は0.22J/sec/cmである。
なお、本明細書において上記qmax値は、一定面積、一定質量の熱板に所定の熱を蓄え、これが試料表面に接触した直後、蓄えられた熱量が低温側の試料に移動する熱流量のピーク値を表す。
【0026】
本発明のコンジュゲート繊維における、100℃の熱水を用いてJIS L1015(1999)に準拠した方法により測定した熱水収縮率は特に限定されないが、好ましい上限は20%である。上記熱水収縮率が20%を超えると、得られる繊維を用いてなる生地が重くなり、軽量感が損なわれることがある。
【0027】
本発明のコンジュゲート繊維を製造する方法は特に限定されず、上記ポリアミド系エラストマーを含有するペレット、及び、上記ポリアミド系樹脂を含有するペレットを複合紡糸装置に投入し、溶融紡糸することにより、コンジュゲート繊維を得る方法等が挙げられる。
【0028】
本発明のコンジュゲート繊維を用いてなる生地もまた、本発明の1つである。
本明細書において、生地には、編物、織物、不織布等が含まれる。
本発明の生地は、本発明のコンジュゲート繊維のみからなるものであってもよいが、本発明の目的を阻害しない範囲で、肌触り等の肌着に必要な要件を更に良好にする目的で、他の繊維と交編してもよい。上記他の繊維は特に限定されず、例えば、ナイロン6、ナイロン12、ポリエステル、綿、レーヨン等が挙げられる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、優れた染色性を有し、かつ、接触冷感及び肌触りが良好な生地を得ることができるコンジュゲート繊維を提供することができる。また、本発明によれば、該コンジュゲート繊維を用いてなる生地を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例及び比較例において得られた繊維の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0032】
(実施例1)
芯部用樹脂としてポリアミド系エラストマーであるポリエーテルブロックアミド共重合体(アルケマ社製、「ペバックス 1074SA01」)と、鞘部用樹脂としてポリアミド系樹脂であるナイロン6(宇部興産社製、「UBEナイロン1011FB」)とを用い、これらの芯部用樹脂及び鞘部用樹脂をそれぞれ単軸押出機により加熱溶融し、繊維の長さ方向に対して垂直に切断した場合の芯部の断面が円形、鞘部の断面が開口率30%の略C形、かつ、繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が80重量%となるように複合紡糸し、部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0033】
(実施例2)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が50重量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0034】
(実施例3)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が20重量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0035】
(実施例4)
鞘部の断面が開口率20%の略C形となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0036】
(実施例5)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が50重量%となるようにし、鞘部用樹脂としてナイロン11(アルケマ社製、「リルサン BESN TL」)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0037】
(実施例6)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が20重量%となるようにしたこと以外は、実施例4と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0038】
(実施例7)
鞘部の断面が開口率10%の略C形となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0039】
(実施例8)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が50重量%となるようにしたこと以外は、実施例7と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0040】
(実施例9)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が20重量%となるようにしたこと以外は、実施例7と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0041】
(実施例10)
鞘部の断面が開口率5%の略C形となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0042】
(実施例11)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が50重量%となるようにし、鞘部用樹脂としてナイロン12(宇部興産社製、「UBESTA 3014B」)を用いたこと以外は、実施例10と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0043】
(実施例12)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が20重量%となるようにしたこと以外は、実施例10と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0044】
(実施例13)
鞘部を略C形とせず環形としたこと以外は、実施例1と同様にして芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0045】
(実施例14)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が50重量%となるようにしたこと以外は、実施例13と同様にして芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0046】
(実施例15)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が20重量%となるようにしたこと以外は、実施例13と同様にして芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0047】
(比較例1)
ポリアミド系エラストマーであるポリエーテルブロックアミド共重合体(アルケマ社製、「ペバックス 1074SN01」)を用い、溶融紡糸法にて製糸を行って繊維を得た。得られた繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。得られた繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0048】
(比較例2)
ポリアミド系エラストマーであるポリエーテルブロックアミド共重合体(アルケマ社製、「ペバックス 1074SN01」)を用い、溶融紡糸法にて製糸を行って繊維を得た。得られた繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。得られた繊維を用いて編み立てを行い、150℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0049】
(比較例3)
ポリアミド系樹脂であるナイロン6(宇部興産社製、「UBEナイロン1011FB」)を用い、溶融紡糸法にて製糸を行って繊維を得た。得られた繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。得られた繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0050】
(比較例4)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が90重量%となるようにし、ポリエーテルブロックアミド共重合体を、ペバックス 1074SN01(アルケマ社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0051】
(比較例5)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が10重量%となるようにし、ポリエーテルブロックアミド共重合体を、ペバックス 1074SN01(アルケマ社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0052】
(比較例6)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が90重量%となるようにし、ポリエーテルブロックアミド共重合体を、ペバックス 1074SN01(アルケマ社製)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0053】
(比較例7)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が10重量%となるようにし、ポリエーテルブロックアミド共重合体を、ペバックス 1074SN01(アルケマ社製)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0054】
(比較例8)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が90重量%となるようにし、ポリエーテルブロックアミド共重合体を、ペバックス 1074SN01(アルケマ社製)に変更したこと以外は、実施例7と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0055】
(比較例9)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が10重量%となるようにし、ポリエーテルブロックアミド共重合体を、ペバックス 1074SN01(アルケマ社製)に変更したこと以外は、実施例7と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0056】
(比較例10)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が90重量%となるようにし、ポリエーテルブロックアミド共重合体を、ペバックス 1074SN01(アルケマ社製)に変更したこと以外は、実施例10と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0057】
(比較例11)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が10重量%となるようにし、ポリエーテルブロックアミド共重合体を、ペバックス 1074SN01(アルケマ社製)に変更したこと以外は、実施例10と同様にして部分開口型の偏心芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0058】
(比較例12)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が90重量%となるようにし、ポリエーテルブロックアミド共重合体を、ペバックス 1074SN01(アルケマ社製)に変更したこと以外は、実施例13と同様にして芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0059】
(比較例13)
繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が10重量%となるようにし、ポリエーテルブロックアミド共重合体を、ペバックス 1074SN01(アルケマ社製)に変更したこと以外は、実施例13と同様にして芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0060】
(比較例14)
芯部用樹脂としてナイロン6(宇部興産社製、「UBEナイロン1011FB」)を用い、鞘部用樹脂としてポリエーテルブロックアミド共重合体(アルケマ社製、「ペバックス 1074SN01」)を用い、繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が10重量%となるようにしたこと以外は、実施例13と同様にして芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0061】
(比較例15)
芯部用樹脂としてナイロン6(宇部興産社製、「UBEナイロン1011FB」)を用い、鞘部用樹脂としてポリエーテルブロックアミド共重合体(アルケマ社製、「ペバックス 1074SN01」)を用い、繊維中のポリアミド系エラストマーの含有率が90重量%となるようにしたこと以外は、実施例13と同様にして芯鞘型コンジュゲート繊維を得た。得られたコンジュゲート繊維の繊度は120デシテックス(36フィラメント構成)、1フィラメントあたりの直径は約20μmであった。
得られたコンジュゲート繊維を用いて編み立てを行い、135℃のセット温度でフライス生地を作製した。
【0062】
実施例及び比較例において得られた繊維の断面を示す模式図を図1に示す。図1中において、1はポリアミド系エラストマーを含有する成分を示し、2はポリアミド系樹脂を含有する成分を示す。また、表1、2に、実施例及び比較例において得られた繊維の断面におけるポリアミド系エラストマーを含有する成分及びポリアミド系樹脂を含有する成分の占有率を示した。
【0063】
<評価>
実施例及び比較例で得られた繊維及び生地について以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0064】
(1)染色性
Nylosan Red N−GZS(クラリアント社製)0.06%owf、及び、Nylosan Navy N−RBL 220(クラリアント社製) 1.4%owfを用い、得られた生地を、浴比1:20、pH4〜5(酢酸及び酢酸ソーダで調整)、95℃の条件で30分間染色した。次いで、Fix剤としてHifix GM(大日本住友製薬社製)5%owfを用い、90℃で40分間Fix処理を行い、染色物を得た。得られた染色物を目視によって観察し、以下の基準により評価を行った。
◎:濃色染色可能
○:中色染色可能
△:淡色染色のみ可能
【0065】
(2)qmax値の測定
20.5℃の温度に設定した試料台の上に各生地を置き、得られた生地の上に32.5℃の温度に温められた貯熱板を接触圧0.098N/cmで重ねた直後、蓄えられた熱量が低温側の試料に移動する熱量のピーク値を測定した。測定には、サーモラボII型精密迅速熱物性測定装置(カトーテック社製)を用いた。
【0066】
(3)湿潤摩擦抵抗
濡れた生地(水分率100%)を肌にあてて滑らせ、肌触り及びべたつき感を官能評価した。
以下の基準により評価を行った。
○:さらっとして、べたつきがない
△:少しべたつく
×:べたつく
【0067】
(4)熱水収縮率の測定
100℃の熱水を用いてJIS L1015(1999)に準拠した方法により、得られた繊維の熱水収縮率を測定し、以下の基準により評価を行った。
◎:熱水収縮率が7%以下
○:熱水収縮率が7%を超え、かつ、20%以下
×:熱水収縮率が20%を超える
【0068】
(5)官能評価
10人の被験者について、生地の冷たさ、肌触り、及び、重さの3項目における官能試験を実施し、以下の基準により評価を行った。
◎:3項目とも非常に良い
○:3項目とも良い
△:3項目のうち、1項目が悪い
×:3項目のうち、2項目以上が悪い
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、優れた染色性を有し、かつ、接触冷感及び肌触りが良好な生地を得ることができるコンジュゲート繊維を提供することができる。また、本発明によれば、該コンジュゲート繊維を用いてなる生地を提供することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 ポリアミド系エラストマーを含有する成分
2 ポリアミド系樹脂を含有する成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系エラストマーを含有する成分とポリアミド系樹脂を含有する成分との2成分分割型構造を有するコンジュゲート繊維であって、
繊維中の前記ポリアミド系エラストマーの含有率が20〜80重量%である
ことを特徴とするコンジュゲート繊維。
【請求項2】
芯部にポリアミド系エラストマーを含有し、鞘部にポリアミド系樹脂を含有する芯鞘型構造を有することを特徴とする請求項1記載のコンジュゲート繊維。
【請求項3】
鞘部の開口率が5〜30%である部分開口型の芯鞘型構造を有することを特徴とする請求項2記載のコンジュゲート繊維。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載のコンジュゲート繊維を用いてなることを特徴とする生地。

【図1】
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【公開番号】特開2010−189772(P2010−189772A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32288(P2009−32288)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】