説明

コンソールボックス

【課題】 空洞共鳴による車室内の騒音を、より簡素な車室内側の構造の変更によって、より容易にかつ効果的に低減する。
【解決手段】 フロアパネル7上に設置される車両用のコンソールボックス1の側壁2,3に、車室内空間とコンソールボックス内空間とを連通する開口部4,5を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のコンソールボックスに関し、特に、車室内の空洞共鳴による騒音を低減可能なコンソールボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室内空間は、車体パネルやガラス等で仕切られた空洞となっているため、所定の振動源の振動に起因して空洞共鳴が生じることがある。かかる空洞共鳴(特に80Hz以上の空洞共鳴)の共振モードは、車室内空間の大きさや形によって定まるが、一般的には、振動源の振動あるいは当該振動の車室内側への伝搬を抑制することで、空洞共鳴の抑制を図る場合が多い。また、共鳴音を相殺する音波を発生させて騒音を低減する技術も提案されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−254457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、振動源の振動は、これを抑制するのが難しい場合がある。また、振動の伝搬を抑制する対策を施すと、重量が増大したり、製造コストが嵩む場合がある。また、上記特許文献1の技術では、車両に、センサや、スピーカ、制御回路等を搭載する分、車載レイアウト上の問題が生じたり、製造コストが嵩むという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、より簡素な車室内側の構造の変更によって、より容易にかつ効果的に空洞共鳴による騒音を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にあっては、車室内床面上に設置されるコンソールボックスを構成する壁に、コンソールボックスの内面と車室内床面との間に形成されるコンソールボックス内空間と車室内空間とを連通する開口部を形成したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、開口部によって車室内空間をコンソールボックス内空間に連通させることで、音波が反響する空間を変化させ、空洞共鳴の共振周波数を変化させることができる。したがって、所定の振動源の振動数に対して空洞共鳴の共振周波数をずらし、空洞共鳴の発生を抑制して、車室内騒音を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態にかかるコンソールボックスの斜視図、図2は、コンソールボックスを車両前後方向後方側から見た断面図(図1のA−A断面図)、図3は、車室内の所定点を一定振幅で振動させた場合に所定の観測点で観測される音圧レベルの一例を示す図、図4は、所定の観測点における車内騒音の測定結果の一例を示す図である。なお、図1において、FRは車両前後方向前方を示す。
【0008】
コンソールボックス1は、フロアパネル7(車室内床面)上に設置される。具体的には、このコンソールボックス1は、例えば、車室内の前側に設けられる運転席シートと助手席シートとの間に設置され、特に、フロントエンジン−リヤドライブの車両等では、フロアパネル7が隆起した前後方向に伸びるフロアトンネル部7a上を被覆するように設けられている。
【0009】
また、このコンソールボックス1は、樹脂等を一面開口を有する箱状に形成し、当該一面開口をフロアパネル7上に伏せるようにして設置されている。そして、車両前後方向後方の側壁2および車幅方向両側の側壁3には、開口部4,5が形成されており、当該開口部4,5により車室内空間10とコンソールボックス内空間9とが連通されている。なお、コンソールボックス内空間9は、コンソールボックス1の内面とフロアパネル7との間に形成されている。
【0010】
開口部4には、車幅方向に伸びる帯状のスラット6が、複数平行に上下に並べて設けられている。各スラット6は、当該スラット6の幅方向車室内空間10側を下としコンソールボックス内空間9側を上とする姿勢で傾斜させた状態で取り付けられている。すなわち、これら複数のスラット6により、相互に平行な水平方向に長い複数のスリット11を形成し、このスリット11、すなわち開口部4が、フロアパネル7の方向、すなわち斜め下方に向けて開口するようにしてある。
【0011】
同様に、開口部5には、車両前後方向に伸びる帯状のスラット6が、複数平行に上下に並べて設けられている。ここでも、スラット6は、当該スラット6の幅方向車室内空間10側を下としコンソールボックス内空間9側を上とする姿勢で傾斜した状態で取り付けられている。すなわち、これら複数のスラット6により、複数の相互に平行な水平方向に長いスリット11を形成し、このスリット11、すなわち開口部5が、フロアパネル7の方向、すなわち斜め下方に向けて開口するようにしてある。
【0012】
このように、本実施形態では、開口部4,5を、フロアパネル7(車室内床面)に向けて開口させたため、図2に示すように、コンソールボックス内空間9から車室内空間10に出力された音波は、フロアパネル7の方向に伝搬される。
【0013】
さらに、本実施形態では、フロアパネル7上の開口部4,5から出た音波が到達する部分には、表面が繊維等で形成されたフロアカーペット8を敷設してある。よって、開口部4,5から出力された音波は、フロアカーペット8に当たることになる。
【0014】
さて、図3および図4は、上記開口部4,5を設けた場合と設けない場合における、車室内空洞共鳴特性(図3)と、車室内騒音結果(図4)とを例示するものである。なお、ここで、開口部4,5を設けない場合とは、側壁2,3に開口部4,5が形成されていない点以外は本実施形態にかかるコンソールボックス1と同じ外形状のコンソールボックスを、本実施形態と同じ位置に取り付けた場合を意味する。
【0015】
開口部4,5を設けて車室内空間10とコンソールボックス内空間9とを連通した場合(図3の実線)には、音波が反響する空間(空洞)の形状や容積が変化し、空洞共鳴のモードが変化する。この例では、開口部4,5が無く、車室内空間10とコンソールボックス内空間9とがコンソールボックスの側壁によって隔絶されている場合(図3の破線)に比べて、空洞共鳴による共振周波数が低い側にシフトする(p0→p1)。
【0016】
したがって、図4の破線で示すように、開口部4,5が無い場合の空洞共鳴のピーク周波数p0付近の周波数で振動する加振源があった場合には、車室内騒音の音圧レベルが比較的大きくなってしまうが、開口部4,5を設けることによって、加振源の振動数に対して空洞共鳴の共振周波数をずらし、図4の実線で示すように、車室内騒音の音圧レベルを低減することができる。
【0017】
すなわち、以上の本実施形態によれば、コンソールボックス1の側壁2,3に開口部4,5を形成することにより、音波が反響する空間(車室内の空洞)を変化させ、空洞共鳴の共振周波数を変化させることができる。したがって、開口部4,5の有無の調整によって、加振源の周波数に対して空洞共鳴の共振周波数をずらし、空洞共鳴による車室内騒音を低減することができる。
【0018】
また、本実施形態では、開口部4,5を、フロアパネル7(車室内床面)に向けて開口させている。これにより、コンソールボックス内空間9から車室内空間10側に出る音波は、フロアパネル7の方向に向かうようになる。よって、フロアトンネル部7aから伝搬した外部騒音等が開口部4,5を介して車室内空間10に漏れるような状況下でも、車室内空間10内でより上方に位置する乗員の耳には直接的には伝搬されにくくなり、当該乗員の耳の位置における音圧レベルを低減することができる。
【0019】
さらに、本実施形態では、開口部4,5から出た音波が、フロアパネル7上に敷設されたフロアカーペット8に当たって減衰するため、車室内騒音を低減することができる。
【0020】
また、本実施形態では、開口部4,5をスリット11とすることで、車室内側からコンソールボックス内空間9にアクセスしにくくなる。また、スラット6を設けることで、コンソールボックス内空間9が車室内側から見えにくくなるという効果もある。
【0021】
また、本実施形態では、コンソールボックス1の車両前後方向後方の側壁2および車幅方向の側壁3のうち少なくともいずれか一つに、開口部4,5を比較的容易に形成することができる。コンソールボックス1の構造や配置から、開口部4,5は、側壁2および/または側壁3に設けるのが容易であり、かつ上記効果を得やすくなる。特に、側壁3は車両前後方向に長くなるため、開口部5の形状、大きさ、あるいは設置位置等の調整代を確保しやすく、空洞共鳴の共振周波数の調整を行いやすいという利点がある。
【0022】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、側壁に窓を形成し、その窓に、上記実施形態で示したような複数の平行なスラットによってスリットが形成された枠を装着するように構成してもよいし、さらに、その場合、外形や室内側からの外見が同じでスラット間の奥側が閉塞されて開口部(スリットや穴)が無い枠や、スリットや穴の大きさ等が異なる枠を準備しておき、空洞共鳴の発生状況に応じて窓に装着する枠を選択できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態にかかるコンソールボックスの斜視図。
【図2】本発明の実施形態にかかるコンソールボックスを車両前後方向後方側から見た断面図(図1のA−A断面図)。
【図3】車室内の所定点を一定振幅で振動させた場合に所定の観測点で観測される音圧レベルの一例を示す図であって、本発明の実施形態にかかるコンソールボックスの有無による差異を示す図である。
【図4】所定の観測点における車内騒音の測定結果の一例を示す図であって、本発明の実施形態にかかるコンソールボックスの有無による差異を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 コンソールボックス
2,3 側壁(壁)
4,5 開口部
7 フロアパネル(車室内床面)
8 フロアカーペット
9 コンソールボックス内空間
10 車室内空間
11 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内床面上に設置されるコンソールボックスであって、
該コンソールボックスを構成する壁に、コンソールボックスの内面と車室内床面との間に形成されるコンソールボックス内空間と車室内空間とを連通する開口部を形成したことを特徴とするコンソールボックス。
【請求項2】
前記開口部を車室内床面に向けて開口させたことを特徴とする請求項1に記載のコンソールボックス。
【請求項3】
前記車室内床面上にフロアカーペットを敷設したことを特徴とする請求項2に記載のコンソールボックス。
【請求項4】
前記開口部をスリット状に形成したことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一つに記載のコンソールボックス。
【請求項5】
前記開口部を、コンソールボックスの車両前後方向後方の側壁および車幅方向の側壁のうち少なくともいずれか一つに形成したことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一つに記載のコンソールボックス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−160148(P2006−160148A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356941(P2004−356941)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】