説明

コンソールボックス

【課題】コンソールリッドの開閉操作を簡易化すると共に、適宜位置に停止させて姿勢保持させ得るようにする。
【解決手段】正転方向へのみ自在回転可能な第1状態および逆転方向へのみ自在回転可能な第2状態に切換え可能で、第1状態から第2状態への切換えおよび第2状態から第1状態への切換えが、コンソールリッド12を介して与えた回転力が所定値を上回る場合に可能となる可逆的回転体62を、該コンソールリッド12とコンソール本体10との間に介在させる。また、コンソールリッド12を閉成方向へ付勢する捻りバネ54を、コンソールリッド12とコンソール本体10との間に介在させる。これによりコンソールリッド12を、開放時には開放途中の適宜位置に停止させて姿勢保持させ得ると共に、閉成時には閉成位置まで自動的に移動させ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンソールボックスに関し、更に詳細には、上方に開口する物品収納部を画成したコンソール本体と、このコンソール本体の上部に姿勢変位可能に配設されて前記物品収納部の開口部を開閉するコンソールリッドとからなるコンソールボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
セダンタイプやステーションワゴンタイプ等の自動車では、車内における前部座席間(運転席と助手席との間)のフロアに、図11に例示するようなコンソールボックスが設置されている。このコンソールボックスCB1は、インジェクション成形部材である合成樹脂製のコンソール本体10を主体とし、このコンソール本体10には上方へ開口する物品収納部Sが設けられており、身辺小間物を出し入れ可能に収納し得るようになっている。そしてコンソール本体10の上部には、物品収納部Sの上部開口部14を開閉するコンソールリッド12が配設されており、このコンソールリッド12を姿勢変位させることで物品収納部Sに対する物品の出し入れが可能となっている。なお、コンソールリッド12の姿勢変位(開閉)態様は、(a)コンソール本体10に枢支されて揺動するタイプ、(b)適宜のリンク機構等により支持されてコンソール本体10の後方側へスライドしながら揺動するタイプ、(c)コンソール本体10の前後方向へスライド移動するタイプ、等が実用化されている。
【0003】
そして、前述した(a)または(b)のようにコンソールリッド12が揺動するタイプのコンソールボックスCB1では、該コンソールリッド12が全閉位置と全開位置との間を姿勢変位する途中で傾斜状態となるが、この開閉途中の適宜位置で任意に停止させて物品収納部Sに対する物品の出し入れを行ない得るようにすることが希求されている。そこで最近では、前述したコンソールリッド12を開閉途中の適宜位置で停止保持させ得る所謂「フリーストップ開閉構造」を採用したコンソールボックスCB1が提案されている。このフリーストップ開閉構造は、例えば、(1)摩擦ヒンジ部材や摩擦軸の摩擦力を利用するようにした摩擦式、(2)ラチェット機構を利用するようにした機械式、等が提案されており、コンソールリッド12を適宜位置で停止させて姿勢保持することを可能とする。このようなコンソールボックスに関しては、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平09−267852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した(1)の摩擦式では、コンソールリッド12の姿勢保持力および開閉操作性が、摩擦ヒンジ部材や摩擦軸の摩擦力の強弱に左右されてしまう問題があった。すなわち摩擦力が弱い場合には、コンソールリッド12の開閉操作力が小さくなる利点はあるものの、適宜位置での姿勢保持が適切になされなくなる虞れがある。また摩擦力が強い場合には、コンソールリッド12を適宜位置で適切かつ確実に姿勢保持し得る利点はあるものの、開閉操作力が大きくなって開閉を行ない難くなる問題がある。また、長期の使用により摩擦力が経時的に弱くなる場合があり、耐久性の問題も指摘される。
【0005】
一方、後者のラチェット機構を採用した機械式では、適宜位置で停止させた際の姿勢保持が確実になされると共に、開閉操作も比較的に小さな力で行ない得る利点はあるものの、例えば開放途中位置で姿勢保持させてあったコンソールリッド12を全閉位置へ姿勢変位させるには、図11に一点鎖線で図示した全開位置まで一旦姿勢変位させなければならず、開閉操作が面倒で煩雑となる欠点を内在していた。殊に、シートに着座した状態でコンソールリッド12を全開位置まで開放させるには上半身を大きく捻る必要があり、無理な姿勢を強要されることとなっていた。
【0006】
そこで本発明では、コンソールリッドを適宜位置に停止させて姿勢保持し得ると共に、開閉操作を簡易化したコンソールボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため本発明は、
上方に開口する物品収納部を画成したコンソール本体と、このコンソール本体の上部に姿勢変位可能に配設され、前記物品収納部の開口部を開閉するコンソールリッドとからなるコンソールボックスにおいて、
正転方向へのみ自在回転可能な第1状態および逆転方向へのみ自在回転可能な第2状態に切換え可能で、前記第1状態から第2状態への切換えおよび前記第2状態から第1状態への切換えが、前記コンソールリッドを介して与えた回転力が所定値を上回る場合に可能となる可逆的回転体を、該コンソールリッドと前記コンソール本体との間に介在させ、
前記可逆的回転体には、前記コンソールリッドに開放方向へ力を加えると正転方向への回転力が付与され、該コンソールリッドに閉成方向へ力を加えると逆転方向への回転力が付与されるよう構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るコンソールボックスによれば、正転方向へのみ自在回転可能な第1状態および逆転方向へのみ自在回転可能な第2状態に切換え可能で、前記第1状態から第2状態への切換えおよび前記第2状態から第1状態への切換えが、前記コンソールリッドを介して与えた回転力が所定値を上回る場合に可能となる可逆的回転体を、このコンソールリッドとコンソール本体との間に介在させたことにより、該コンソールリッドを開放方向または閉成方向の何れか一方向への姿勢変位を許容すると共に他方向への姿勢変位を規制することができる利点がある。
そして、前述した可逆的回転体と共に、更に付勢手段をコンソールリッドとコンソール本体との間に介在させたことにより、コンソールリッドを、全閉位置および全開位置で姿勢保持させることが可能であることは勿論、開放操作時にはその途中の適宜位置で停止させて姿勢保持させることが可能であり、かつ閉成操作時には最初だけ力を加えれば後は全閉位置まで自動的に姿勢変位させることが可能となる。従って、コンソールリッドを全開位置まで開放させなくても開閉途中で姿勢保持させ、物品収納部に対する物品の出し入れを行なうことができる有益な効果を奏する。また、開閉途中に姿勢保持させた状態から全閉位置へ閉成させる場合には、コンソールリッドをやや強めに引張るだけでよく、全開位置まで一旦開放させた後に閉める動作が必要ないと共に開閉操作に無理な姿勢を強要されることがない等の利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明に係るコンソールボックスにつき、最適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例】
【0010】
図1は、本実施例に係るコンソールボックスを、コンソールリッドを全閉位置へ閉成した状態で示した斜視図、図2は、図1に例示したコンソールボックスを、コンソールリッドを全開位置へ開放させた状態で示した斜視図、図3は、図1のIII−III線断面図、図4は、図3のIV−IV線断面図である。本実施例のコンソールボックスCBは、上方に開口する物品収納部Sを画成したコンソール本体10と、このコンソール本体10の上部に姿勢変位可能に配設されて前記物品収納部Sの上部開口部14を開閉するコンソールリッド12とを主体構成部品としている。
【0011】
コンソール本体10は、例えばポリプロピレン(PP)等の合成樹脂素材からインジェクション成形された合成樹脂製の成形部材であって、外部意匠面を形成するアウター部材16と、このアウター部材16の後側部分の内部に設置されて前述した物品収納部Sを画成すると共に、後述するリッド支持機構40およびリッド開閉規制機構60を配設するインナー部材18とから構成され、該アウター部材16の前端部分が図示しないインストルメントパネルの中央下部に連結されるようになっている。そして、前側部分がチェンジレバー20やドリンクホルダ22等の設置部とされると共に、後側部分が種々物品を収納する前述の物品収納部Sとリッド格納部24とされている。また、物品収納部Sの更に後側には、前述したリッド支持機構40およびリッド開閉規制機構60を収容する後部空間26と、これらリッド格納部24と後部空間26とを連通する開口部28とが画成されている。なおアウター部材16は、デザイン性や成形技術等の規制により複数の構成部品16A,16B,16Cを組み合わせて形成されており、このうち構成部品16Cは装飾を兼ねたオーナメント部材である。
【0012】
コンソールリッド12は、例えばポリプロピレン(PP)等の合成樹脂素材からインジェクション成形され、前述したコンソール本体10の上面であるリッド配設部位に整合し得る形状・サイズとされたリッドアウター部材30と、同じくポリプロピレン(PP)等の合成樹脂素材からインジェクション成形され、リッドアウター部材30の内側に装着されるリッドインナー部材32とから構成されている。そしてリッドアウター部材30の外面には、適宜の弾力性を有する発泡層34と、この発泡層34を被覆する表皮材36が配設されて触感向上および質感向上が図られ、全閉位置に保持されている状態で前部座席を利用する乗員のアームレストとして機能するようになっている。また、リッドアウター部材30の後端部には、リッド支持機構40を構成する揺動支持部材46との連結を図る第2支軸44を挿通可能な枢支部38,38が幅方向へ所要間隔をおいて立設されていると共に、前端部には開閉操作時に指先を掛ける指掛部39が形成されている。
【0013】
このようなコンソールリッド12は、前述したように、コンソール本体10の後部空間26内に配設されたリッド支持機構40によりインナー部材18へ取付支持されている。このリッド支持機構40は、物品収納部Sの後壁部に隣接位置してインナー部材18の両側壁18A,18Aに水平に架設された第1支軸42に一端が枢着されると共に、コンソールリッド12の枢支部38,38に挿通された第2支軸44に他端が枢支された揺動支持部材46と、インナー部材18の両側壁18A,18Aにおいて開口部28から対向的に突出して、コンソールリッド12の両側面に形成されたガイドレール48,48に夫々嵌合する支持ピン50,50とから構成されている。これによりコンソールリッド12は、リッド格納部24へ倒伏した状態で格納されて物品収納部Sの上部開口部14を覆蓋する全閉位置(図1、図3および図4)と、垂直近くまで起立した状態で後部空間26内へ収容されて該上部開口部14を開放した全開位置(図2、図6)とに姿勢変位可能となっている。なおコンソールリッド12は、全閉位置ではリッド格納部24へ格納されて上面がアウター部材16と同一レベルとなると共に、全開位置では半分以上が後部空間26内へ引込まれて突出高さが最小となる。
【0014】
揺動支持部材46は、図3および図4に例示するように、コンソール本体10の幅方向へ離間して位置する支持レバー部46A,46Aと、両支持レバー部46A,46Aを連結する連結部46Bとから一体成形部材であり、これら支持レバー部46A,46Aの両端部に、前述した第1支軸42および第2支軸44の挿通を許容する通孔が夫々穿設されている。そして、各支持レバー部46Aの先端側には、リッド開閉規制機構60を構成する可逆的回転体62を取付けるための設置部46Cが設けられている。なお第1支軸42は、インナー部材18の両側壁18A,18Aに配設した軸受部材52に対して回転自在に配設されると共に、支持レバー部46A,46Aに対しては回動不能に軸止されており、揺動支持部材46の揺動と共に軸受部材52に対して回転するようになっている。また第2支軸44は、枢支部38,38および支持レバー部46A,46Aに対して夫々回転可能となっており、図示しない適宜の抜止手段を利用して抜止めが図られている。
【0015】
そして本実施例のコンソールボックスCBでは、前述した揺動支持部材46の揺動変位に連動するリッド開閉規制機構60により、コンソールリッド12を、全閉位置(図3)および全開位置(図6)で姿勢保持させることが可能であることは勿論、開放操作時にはその途中の適宜位置(図5)で停止させて姿勢保持させることが可能であり、かつ閉成操作時には最初だけ力を加えれば後は全閉位置まで自動的に姿勢変位させることが可能となっている。このリッド開閉規制機構60は、前述した揺動支持部材46の各設置部46Cに取付けた可逆的回転体62,62をコンソールリッド12とコンソール本体10との間に介在させると共に、更に前述した第1支軸42に装着した3個の捻りバネ(付勢部材)54を更にコンソールリッド12とコンソール本体10との間に介在させた構造を呈しており、これら可逆的回転体62と捻りバネ54との協働によって前述したコンソールリッド12の開閉態様が実現される。
【0016】
可逆的回転体62は、図7〜図9に例示すると共に後述するような一種のロータリーダンパであって、回転軸66が正転方向および逆転方向への回転が可能で、逆転方向への回転が規制されて正転方向へのみ自在回転可能な正転フリー状態(第1状態)と、正転方向への回転が規制されて逆転方向へのみ自在回転可能な逆転フリー状態(第2状態)とに切換えが可能な構造となっている。そして、正転フリー状態から逆転フリー状態への切換えおよび逆転フリー状態から正転フリー状態への切換えが、コンソールリッド12を介して与えた回転力が所定値を上回る場合に可能となっている。
【0017】
ここで、本願が定義する「所定値」とは、可逆的回転体62の回転方向を切換える際に回転規制状態を解除するのに必要な最低限の回転力である。より具体的には、(1)乗員の身体がコンソールリッド12に軽く触れた場合、(2)走行中の急加速または急減速によりコンソールリッド12に慣性力が作用した場合、(3)コンソールリッド12が半開き状態の傾斜姿勢にある場合に、該コンソールリッド12を介して可逆的回転体62に付与される回転力よりは大きく、かつ(4)コンソールリッド12を開放方向(後方)または閉成方向(前方)へ若干強めの力で意識的に押すかまたは引張った場合に、該コンソールリッド12を介して可逆的回転体62に付与される回転力よりも小さい値である。すなわち、前述した(1)〜(3)の場合には、所定値以下の回転力しか付与されないために可逆的回転体62の回転軸66の回転方向の切換えがなされず、前述した(4)の場合には、所定値以上の回転力が付与されるために該回転軸66の回転方向の切換えがなされる。
【0018】
具体的に可逆的回転体62は、回転動作する蓋や扉等において既に実用化されているロータリーダンパに回転規制機構を付加した構造を呈しており、例えば図7〜図9に例示するように、取付片部を備えた円筒状のダンパケース64と、このダンパケース64に回転自在に嵌入された回転軸66と、ダンパケース64に形成されたスリット68に遊嵌されると共にリングバネ70で常に径方向内側へ弾力付勢される当接体72と、該ダンパケース64の内壁面において前述した当接体72を挟んだ両側に形成された凹部74,74に収容される球状移動体76とから基本的に構成されている。そして前述した当接体72は、その先端が先細形状に形成されて各凹部74に臨んだ端縁部がテーパ状に面取りされており、かつその先端部と回転軸66の外周面との間隔Wは、通常では球状移動体76の直径より小さく設定されている。なお、実施例の可逆的回転体62では、一対の当接体72,72および球状移動体76,76が、回転軸66の回転中心を挟んで対角的に配設した構造となっている。
【0019】
このような可逆的回転体62は、例えば図9(a)に例示した状態となっていると、図示時計方向(「正転」方向とする)の回転軸66の回転が許容され、反時計方向(「逆転」方向とする)の該回転軸66の回転が規制される(正転フリー状態)。すなわち、時計方向への適宜の回転力が付与されて回転軸66が正転方向へ回転しようとすると、各球状移動体76,76は現在収容されている凹部74,74内において当接体72から離間する方向へ移動しようとするため、該回転軸66の連続的な正転が許容される。
【0020】
一方、図9(a)の状態において、反時計方向への適宜の回転力が付与されて回転軸66が逆転方向へ回転しようとすると、図9(b)に例示するように、各球状移動体76,76は、現在収容されている凹部74,74内において当接体72に近接する方向へ移動しようとするため、該当接体72のテーパ面と回転軸66との間へ楔状に食い込んでテーパ面により回転軸66の外面へ押し付けられるようになる。このとき、回転軸66に付与される回転力が前述した所定値を下回る場合には、球状移動体76の食い込みによる当接体72への押圧力が小さいため、リングバネ70の付勢力に抗した該当接体72の径方向外方への移動量が微小となり、前述した間隔Wが球状移動体76の直径と同一寸法まで拡大しない。従って、当接体72を介したリングバネ70の付勢力により、各球状移動体76,76は径方向内方へ押圧されて回転軸66に強く押し付けられるようになり、該回転軸66の逆転が規制されるようになる。
【0021】
また、回転軸66に付与される反時計方向への回転力が前述した所定値を上回る場合には、球状移動体76の食い込みによる当接体72への押圧力が大きくなるため、リングバネ70の付勢力に抗して該当接体72の径方向外方への移動量が増大し、前述した間隔Wが球状移動体76の直径と同一寸法まで拡大するようになる。従って各球状移動体76,76は、図9(c)に例示するように、間隔Wが球状移動体76の直径と同一となると同時に、当接体72と回転軸66との間を通過して反対側の凹部74,74へ夫々移動するようになる。そして、各球状移動体76,76が反対側の凹部74,74へ夫々移動すると、図9(d)に例示するように、各当接体72,72はリングバネ70の付勢力により元の突出状態へ復帰する。
【0022】
そして図9(d)に例示した状態となると、逆転方向への回転軸66の回転が許容され、正転方向への該回転軸66の回転が規制される(逆転フリー状態)。すなわち、反時計方向への適宜の回転力が付与されて回転軸66が逆転方向へ回転しようとすると、各球状移動体76,76は現在収容されている凹部74,74内において当接体72から離間する方向へ移動しようとするため、該回転軸66の連続的な逆転が許容される。一方、時計方向への適宜の回転力が付与されて回転軸66が正転方向へ回転しようとすると、各球状移動体76,76は現在収容されている凹部74,74内において当接体72に近接する方向へ移動しようとするため、該当接体72のテーパ面と回転軸66との間へ楔状に食い込んで回転軸66の外面へ押し付けられるようになる。このとき、回転軸66に付与される回転力が前述した所定値を下回る場合には、各球状移動体76,76が径方向内方へ押圧されて回転軸66に強く押し付けられるので、該回転軸66の正転が規制される。また、回転力が前述した所定値を上回る場合には、当接体72,72の径方向外方への変位により各球状移動体76,76が反対の凹部74,74へ移動するため、再び図9(a)に例示した正転フリー状態となる。
【0023】
このような可逆的回転体62は、揺動支持部材46の各支持レバー部46Aに設けた設置部46Cへ夫々固定されており、前述したコンソールリッド12の後端部に隣接して配設されている。そして、回転軸66の先端部に固定したピニオンギヤである第3ギヤ78が、インナー部材18に形成した円弧状のラックギヤである第4ギヤ80に噛合しており、例えばコンソールリッド12に開放方向へ力を加えると可逆的回転体62の回転軸66には正転方向への回転力が付与され、また該コンソールリッド12に閉成方向へ力を加えると該可逆的回転体62の回転軸66には逆転方向への回転力が付与される。
【0024】
第4ギヤ80は、前述した第1支軸42の軸中心を中心とした円弧状を呈し、揺動支持部材46が揺動する際に可逆的回転体62が移動する軌跡に沿って延設されている。従って、コンソールリッド12の姿勢変位に伴って揺動支持部材46が図3の全閉位置と図6の全開位置との間を揺動するに際し、常に第3ギヤ78が第4ギヤ80と噛合して回転することにより、可逆的回転体62の回転軸66に回転力が付与される。また第3ギヤ78は、円筒状を呈するフライホイル82に設けられており、このフライホイル82が回転軸66に固定されている。従って、コンソールリッド12に適宜外力が付与されている間、すなわち可逆的回転体62の回転軸66が連続回転している間は、該回転軸66の安定的な回転が図られてコンソールリッド12のスムーズな開閉姿勢変位を実現するよう考慮されている。
【0025】
一方、前述した各捻りバネ54は、リング部が第1支軸42に外嵌されており、一方端部がインナー部材18の後端面18Bに係止されていると共に、他方端部が揺動支持部材46の連結部46B壁面に係止されており、該揺動支持部材46を図6の反時計方向へ弾力付勢してコンソールリッド12を常に全閉位置の方向(閉成方向)へ付勢する構造となっている。換言すると、各可逆的回転体62の回転軸66には、各捻りバネ54の付勢力により、常に逆転方向への回転力が付与される構造となっている。但し、各捻りバネ54の付勢力による回転力は、前述した所定値以下となるように設定されている。これにより可逆的回転体62は、正転フリー状態においては、各捻りバネ54の付勢力によって実際には正転も規制されて回転力が付与されない場合は停止状態に保持される一方、逆転フリー状態においては、各捻りバネ54の付勢力により連続的に逆転するようになる。
【0026】
更に、インナー部材18の両側壁18A,18Aには、前述した第1支軸42に隣接してロータリーダンパ56,56が配設されている。これらロータリーダンパ56,56は、その回転軸に固定した第1ギヤ58が、第1支軸42に固定された扇型の第2ギヤ59に噛合していることで、該第1支軸42の回動に連動して夫々回転するようになっている。すなわち各ロータリーダンパ56,56は、揺動支持部材46の揺動速度を一定に規制するよう機能して、手動によるコンソールリッド12の開放変位時、また各捻りバネ54の付勢力による該コンソールリッド12の閉成変位時に、ゆっくりと姿勢変位させるようになる。
【0027】
なお可逆的回転体62は、図9に例示した構造のロータリーダンパ形態に限定されるものではなく、前述した所定値を基準とした回転軸66の回転の規制および許容を図り得るものであれば、様々な形態のものが実施可能である。
【0028】
(実施例の作用)
次に、本実施例に係るコンソールボックスCBの作用について説明する。
【0029】
物品収納部Sに対する物品の出し入れを行なわない場合は、図1および図3に例示したように、適宜開放位置に停止しているコンソールリッド12を閉成位置の方向へやや強めに引張ると可逆的回転体62が逆転フリー状態となるので、該コンソールリッド12は、各捻りバネ54の付勢力に基づいて閉成位置へ移動する。この際にコンソールリッド12は、リッド支持機構40の揺動支持部材46が上方向へ揺動変位すると共に、各支持ピン50がガイドレール48の後端部に位置するようになるため、水平状態でコンソール本体10のリッド格納部24へ格納され、揺動支持部材46を介した各捻りバネ54の付勢力により全閉位置に姿勢保持される。従って、乗員の身体が触れたり、車両の急加速や急減速が発生して慣性力が作用しても、コンソールリッド12の不用意な開放が防止される。なおコンソールリッド12は、弾力性がある上面が上方を指向しているため、図示しない乗員席乗員のアームレストとして機能する。
【0030】
そして、物品収納部Sに対する物品の出し入れを行なう場合は、全閉位置に保持されているコンソールリッド12の指掛部39を把持しながら、該コンソールリッド12を後方側(図3の右方向)へやや強めに押す。これにより、コンソールリッド12を介して所定値を上回る正転方向の回転力が可逆的回転体62の回転軸66に付与されるようになり、該可逆的回転体62は逆転フリー状態から正転フリー状態へ切換わる。そして、若干強めの力でコンソールリッド12を後方側へ押し続けると、各捻りバネ54の付勢力による逆転方向への回転力を上回る正転方向の回転力が可逆的回転体62の回転軸66に付与されるため、該回転軸66は連続的に正転するようになる。従ってコンソールリッド12は、リッド支持機構40の揺動支持部材46の揺動変位と、ガイドレール48,48と支持ピン50,50との嵌合とにより、スライド移動および回動の複合動作を行ないながら開口部28から後部空間26へ移動するようになる。
【0031】
ここでコンソールリッド12の開放変位は、該コンソールリッド12に対して若干強めの力を加えている間だけ、すなわち可逆的回転体62に対して捻りバネ54の付勢力による逆転方向への回転力を上回る正転方向の回転力が付与されている間だけである。換言すると、開放途中で押すのを止めたり手を離した場合、正転方向への回転力の付与が解除されると共に、各捻りバネ54の付勢力による逆転方向の回転力が正転方向から逆転方向へ切換わるための所定値の回転力より小さいため、可逆的回転体62の回転軸66は逆転方向へ付勢された状態で停止するようになり、コンソールリッド12はその位置において停止保持されるようになる。従って、停止させたい位置にコンソールリッド12が到来した時点で押すのを止めれば、図5に例示するように、コンソールリッド12はその位置に停止して姿勢保持される。しかも、この状態では、乗員の身体がコンソールリッド12に軽く触れたり、走行中の急加速または急減速によりコンソールリッド12に慣性力が作用したり、或いはコンソールリッド12自体の重みが作用しても可逆的回転体62の回転軸66は停止したままとなり、該コンソールリッド12が全開方向または全閉方向へ勝手に姿勢変位することはない。
【0032】
そして、図5に例示した開閉途中位置で傾斜姿勢にコンソールリッド12が停止保持されている場合、該コンソールリッド12を後方側(図5の右方向)へ若干強めに押すと、各捻りバネ54の付勢力による逆転方向への回転力を上回る正転方向の回転力が可逆的回転体62の回転軸66に再び付与されるため、該回転軸66は連続的に正転するようになる。従ってコンソールリッド12は、リッド支持機構40の揺動支持部材46の揺動変位と、ガイドレール48,48と支持ピン50,50との嵌合とにより、スライド移動および回動の複合動作を行ないながら開口部28から後部空間26へ移動し、押し続ければ図6に例示した全開位置まで姿勢変位するようになる。
【0033】
一方、図5の状態からコンソールリッド12を前方側(図5の左方向)へ若干強めに引張ると、該コンソールリッド12を介して所定値を上回る逆転方向の回転力が可逆的回転体62の回転軸66に付与されるようになり、該可逆的回転体62は正転フリー状態から逆転フリー状態へ切換わる。これによりコンソールリッド12は、リッド支持機構40の揺動支持部材46の揺動変位と、ガイドレール48,48と支持ピン50,50との嵌合とにより、スライド移動および回動の複合動作を行ないながら前方へ移動する。そしてこの際には、前述した各捻りバネ54の付勢力が揺動支持部材46を介してコンソールリッド12へ付与されているため、該コンソールリッド12は手を離しても自動的に全閉位置まで姿勢変位する。但し、全閉位置への移動速度は、ロータリーダンパ56により略一定に制御される。
【0034】
また、図6に例示した全開位置にコンソールリッド12が停止保持されている場合、該コンソールリッド12を上方側へ若干強めに引張ると、該コンソールリッド12を介して所定値を上回る逆転方向への回転力が可逆的回転体62の回転軸66に付与されるようになり、該可逆的回転体62は正転フリー状態から逆転フリー状態へ切換わる。これによりコンソールリッド12は、リッド支持機構40の揺動支持部材46の揺動変位と、ガイドレール48,48と支持ピン50,50との嵌合とにより、スライド移動および回動の複合動作を行ないながら後部空間26から前方へ移動する。そしてこの際も、前述した各捻りバネ54の付勢力が揺動支持部材46を介してコンソールリッド12へ付与されているため、該コンソールリッド12は手を離しても自動的に全閉位置まで姿勢変位する。但し、全閉位置への移動速度は、ロータリーダンパ56により制御される。
【0035】
なお、図5に例示した開閉途中位置または図6に例示した全開位置から捻りバネ54の付勢力に基づいて全閉方向へ移動しているコンソールリッド12を、手で押えて再び開放方向へ若干強めの力で押した場合には、コンソールリッド12を介して所定値を上回る正転方向の回転力が可逆的回転体62の回転軸66に付与されるようになり、該可逆的回転体62は再び逆転フリー状態から正転フリー状態へ切換わる。従って、若干強めの力で押した後に押すのを止めると、コンソールリッド12はその位置で再び停止して姿勢保持される。
【0036】
このように本実施例のコンソールボックスCBでは、正転方向へのみ自在回転可能な正転フリー状態および逆転方向へのみ自在回転可能な逆転フリー状態に切換え可能で、正転フリー状態から逆転フリー状態への切換えおよび逆転フリー状態からから正転フリー状態への切換えが、コンソールリッド12を介して与えた回転力が所定値を上回る場合に可能となる可逆的回転体62を、該コンソールリッド12とコンソール本体10との間に介在させたことにより、該コンソールリッド12を開放方向または閉成方向の何れか一方向への姿勢変位を許容すると共に他方向への姿勢変位を規制することができる。従って、開放途中のコンソールリッド12が不用意に閉成方向へ姿勢変位することがないと共に、閉成途中のコンソールリッド12が不用意に開放方向へ姿勢変位することがない。
【0037】
また、前述した可逆的回転体62と共に、更に捻りバネ54をコンソールリッド12とコンソール本体10との間に介在させたことにより、コンソールリッド12を、全閉位置(図3)および全開位置(図6)で姿勢保持させることが可能であることは勿論、開放操作時にはその途中の適宜位置(図5)で停止させて姿勢保持させることが可能であり、かつ閉成操作時には最初だけ力を加えれば後は全閉位置まで自動的に姿勢変位させることが可能である。従って、コンソールリッド12を全開位置まで開放させなくても開閉途中(半開き)で姿勢保持させ、物品収納部Sに対する物品の出し入れを行なうことができる。また、開閉途中に姿勢保持させた状態から全閉位置へ閉成させる場合には、コンソールリッド12をやや強めに引張るだけでよく、全開位置まで一旦開放させた後に閉める動作が必要なく、開閉操作に無理な姿勢を強要されることがない。
【0038】
更に本実施例のコンソールボックスCBでは、コンソールリッド12の開閉動作がスライド移動と回動移動との複合動作となり、全開位置に到来した際には後部空間26内へ収容されて上方への突出高さが最小限に抑えられるため、開閉操作が簡易で楽になると共に後部座席からの物品収納部Sに対する物品の出し入れも容易となる。しかも、全開位置へ変位したコンソールリッド12が後部空間26内へ収容されてコンソール本体10から後方側へ飛び出ないため、該コンソールリッド12が後部座席の乗員の足に衝突する不都合等も回避される。
【0039】
図10は、変更例に係るコンソールボックスCBを、その後側部分を破断した状態で示した部分断面図である。この変更例に係るコンソールボックスCBでは、可逆的回転体62を、コンソール本体10におけるインナー部材18の側壁18Aの外側に配設して、その回転軸66の端部とコンソールリッド12を揺動支持する揺動支持部材46を枢着した第1支軸42とを直接的に連結することにより、該コンソールリッド12の姿勢変位に伴って可逆的回転体62に回転力が付与されるようにしたものである。このような構成でも、前述した実施例のコンソールボックスCBと同等の作用効果を得ることができる。なお、可逆的回転体62の回転軸66と第1支軸42とは、回転軸66と第1支軸42とを直結する形態の他に、前述した実施例における第3ギヤ78および第4ギヤ80等のギヤを介して連繋させる形態としてもよい。
【0040】
また、図11に例示した従来のコンソールボックスCB1のように、コンソール本体10に対してコンソールリッド12が支軸を介して直接的に枢支されるタイプの場合には、この支軸に前述した可逆的回転体62を直結または連繋させるようにすれば、前述した実施例および変更例の各コンソールボックスCBと同等の作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係るコンソールボックスは、上方に開口する物品収納部を画成したコンソール本体と、このコンソール本体の上部に姿勢変位可能に配設されて前記物品収納部の開口部を開閉するコンソールリッドとからなるコンソールボックスであって、コンソールボックスを有する全ての自動車に好適に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施例に係るコンソールボックスを、コンソールリッドを全閉位置へ閉成させた状態で示した斜視図である。
【図2】図1に例示したコンソールボックスを、コンソールリッドを全開位置へ開放させた状態で示した斜視図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図1に例示したコンソールボックスを、コンソールリッドを開閉途中の適宜の位置で停止させた状態で示した部分断面図である。
【図6】図2のVI−VI線断面図である。
【図7】可逆的回転体と、第3ギヤを設けたフライホイルを示した斜視図である。
【図8】可逆的回転体が、所定値を上回る回転力が付与されると回転または逆回転することを示した説明図である。
【図9】破断状態で例示した可逆的回転体の機能説明図であって、(a)は、回転軸が正転フリー状態となっている場合を例示し、(b)は反転方向への回転力が所定値を下回るために回転軸の逆転が規制されている状態を示し、(c)は反転方向への回転力が所定値を上回ったため、リングバネの付勢力に抗して当接体が径方向外方へ変位して球状移動体の移動が許容された状態を例示し、(d)は、球状回転体が反対側の凹部へ移動したことにより、回転軸が逆転フリー状態となった場合を例示している。
【図10】変更例に係るコンソールボックスを、コンソールリッドを全閉位置へ閉成させた状態で示した部分断面図である。
【図11】従来実施されているコンソールボックスを例示した説明図である。
【符号の説明】
【0043】
S 物品収納部
10 コンソール本体
12 コンソールリッド
62 可逆的回転体
54 捻りバネ(付勢部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する物品収納部(S)を画成したコンソール本体(10)と、このコンソール本体(10)の上部に姿勢変位可能に配設され、前記物品収納部(S)の開口部を開閉するコンソールリッド(12)とからなるコンソールボックスにおいて、
正転方向へのみ自在回転可能な第1状態および逆転方向へのみ自在回転可能な第2状態に切換え可能で、前記第1状態から第2状態への切換えおよび前記第2状態から第1状態への切換えが、前記コンソールリッド(12)を介して与えた回転力が所定値を上回る場合に可能となる可逆的回転体(62)を、該コンソールリッド(12)と前記コンソール本体(10)との間に介在させ、
前記可逆的回転体(62)には、前記コンソールリッド(12)に開放方向へ力を加えると正転方向への回転力が付与され、該コンソールリッド(12)に閉成方向へ力を加えると逆転方向への回転力が付与されるよう構成した
ことを特徴とするコンソールボックス。
【請求項2】
前記コンソールリッド(12)を常に閉成方向へ付勢する付勢部材(54)を設け、この付勢部材(54)により前記可逆的回転体(62)に付与される回転力は前記所定値以下となっている請求項1記載のコンソールボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−182149(P2006−182149A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376911(P2004−376911)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】