説明

コンソールボックス

【課題】コンソールリッドの開閉操作の簡易化を図る。
【解決手段】伸縮的なリンク動作が可能な第1リンク部材82および第2リンク部材84により、トレー部材12とコンソールリッド14とを連結する。これにより、トレー部材12を前進延出させると、第1リンク部材82および第2リンク部材84の伸び方向のリンク動作により、閉成していたコンソールリッド14が適宜時間差を伴って開放する。また、トレー部材12を後退収納させると、第1リンク部材82および第2リンク部材84の縮み方向のリンク動作により、開放していたコンソールリッド14が適宜時間差を伴って閉成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンソールボックスに関し、更に詳細には、上方に開口した物品収納部を画成したコンソール本体と、物品収納部の上部開口部に配設されたトレー部材と、コンソール本体の上部に配設されて物品収納部を開閉するコンソールリッドとからなるコンソールボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
セダンタイプやステーションワゴンタイプ等の自動車では、車内における前部座席間(運転席と助手席との間)のフロアに、例えば図9(a)に例示したようなコンソールボックスが設置されている。このコンソールボックスCO1は、インジェクション成形部材である合成樹脂製のコンソール本体10を主体とし、このコンソール本体10の後側部分には上方へ開口する物品収納部16が設けられており、身辺小間物を出し入れ可能に収納し得るようになっている。そしてコンソール本体10の後側上部には、物品収納部16の上部開口部16Aを開放可能にするコンソールリッド14が枢設されており、このコンソールリッド14を後方側へ回動させることで物品収納部16に対する物品の出し入れが可能となっている。なおコンソールリッド14は、図示しない前部座席に隣接して位置するため、この前部座席を利用する乗員のためのアームレストとしても機能する。
【0003】
そして、図9(a)に例示したコンソールボックスCO1では、物品収納部16とコンソールリッド14との間に、物品載置部18を形成したトレー部材12を追加装備したタイプとなっている。このトレー部材12は、例えば硬貨、ボールペン、携帯電話または眼鏡等、比較的に小型または薄型な形状をなす種々小間物の収納に適しており、前述したコンソールリッド14と同様にヒンジを利用してコンソール本体10へ枢設した形態が実用化されている。なお、このようなトレー部材12を備えたコンソールボックスに関しては、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平11−59278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図9(a)に例示したコンソールボックスCO1では、トレー部材12の物品載置部18に対する物品の出し入れはコンソールリッド14のみを開放することで実現され、コンソール本体10の物品収納部16に対する物品の出し入れは、図9(b)に例示するように、コンソールリッド14およびトレー部材12の両方を一緒に開放することで実現されるようになっている。このため、物品収納部16に対する物品の出し入れ時には、コンソールリッド14と共にトレー部材12も垂直近くまで回動して傾斜するようになるので、このトレー部材12の物品載置部18に収納載置されていた小間物が、該物品載置部18内で後方側へずれ動いて乱雑となる欠点を内在していた。
【0005】
そこで、図9に例示したコンソールボックスCO1に内在する欠点を解決するため、図10(a)に例示した構成のコンソールボックスCO2が提案されている。このコンソールボックスCO2では、例えばトレー部材12の後端がコンソールリッド14の下面略中央に枢着されており、また該トレー部材12の側面に配設されたボス20が、コンソール本体10の内壁に配設されたガイドレール部材22へ摺動可能に嵌合した構造となっている。このためトレー部材12は、図10(b)に例示したように、レバー体24の揺動変位に基づいてコンソールリッド14が後方へスライドしながら開放するに際し、略水平状態に姿勢保持されたもとでコンソール本体10の後方側へ従動的にスライド移動するようになる。
【0006】
しかしながら、後方へ移動したトレー部材12が依然として物品収納部16の上部開口部16Aに位置しているため、該上部開口部16Aにおける開口幅Wが狭くなって開口領域が小さくなってしまい、物品収納部16に対する物品の出し入れが行ない難くなることは勿論、やや大型サイズの物品の出し入れが不可能となる欠点があった。またトレー部材12は、開放したコンソールリッド14に近接して位置するようになるため、開放したコンソールリッド14が前方へ傾斜している場合にはトレー部材12の上方へ覆い被さるようになり、このトレー部材12に対する小間物の出し入れも行ない難い問題があった。なお、図10(b)に二点鎖線で例示したように、開放させたコンソールリッド14に対してトレー部材12を回動可能とした構造とすることも可能ではあるが、物品収納部16に対する大型サイズの物品の出し入れが可能となるとしても、図9に例示した従前のコンソールボックスCO1と同様に物品載置部18内の小間物がずれ動く問題が発生することとなり、依然として問題解決がなされないままとなっていた。
【0007】
更に、図9および図10に例示した各々のコンソールボックスCO1,CO2では、トレー部材12の物品載置部18に対して物品の出し入れを行なうには、必ずコンソールリッド14を開放させなければならなかった。しかしながら、このコンソールリッド14の開閉操作は、前部座席に着座した乗員が腕を挙げながら上体を大きく捻るという窮屈な姿勢を強いられるものであるため、トレー部材12に対し小間物を出し入れするだけでも面倒で煩わしい操作が伴ってしまう課題があった。
【0008】
そこで本発明では、コンソールリッドとトレー部材とをリンク機構で連繋的に連結させ、トレー部材の進退に対してコンソールリッドを適宜時間差を伴って開閉させるようにすることで、コンソールリッドの開閉操作の簡易化を図ると共に、トレー部材に対する物品の出し入れの容易化をも図り得るようにしたコンソールボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため本発明は、
上方に開口した物品収納部を画成したコンソール本体と、前記物品収納部の上部開口部に配設されたトレー部材と、前記コンソール本体の上部に配設されて前記物品収納部を開閉するコンソールリッドとからなるコンソールボックスにおいて、
前記コンソール本体に進退移動可能に配設された前記トレー部材に、その一端部を枢着した第1リンク部材と、
前記コンソール本体に対し回動可能に配設された前記コンソールリッドおよび前記第1リンク部材の他端部に、各端部を夫々枢着した第2リンク部材とからなり、
前記コンソール本体に収納されていた前記トレー部材を前進延出させる際に、前記第1リンク部材および第2リンク部材に伸び方向のリンク動作を与えることで、該コンソール本体へ閉成していた前記コンソールリッドを適宜の時間差を伴って開放方向へ回動させ、
延出していた前記トレー部材を前記コンソール本体へ後退収納させる際に、前記第1リンク部材および第2リンク部材に縮み方向のリンク動作を与えることで、開放していた前記コンソールリッドを適宜の時間差を伴って該コンソール本体へ閉成方向へ回動させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るコンソールボックスによれば、第1リンク部材および第2リンク部材の伸び方向または縮み方向のリンク動作により、トレー部材の進退に対してコンソールリッドを適宜時間差を伴って開閉させ得るので、コンソールリッドの開閉操作の簡易化を図り得る利点がある。すなわち、コンソールリッドの開閉はトレー部材の進退操作を行なうだけでよく、腕を前下方へ伸ばした自然な姿勢でコンソールリッドを閉成し得ると共に、開閉するコンソールリッドが腕等に接触することを回避し得る。そして、コンソールリッドを開閉させることなくトレー部材だけを進退させることも可能であるから、コンソールリッドを開閉することなく該トレー部材に対する物品の出し入れを容易に行ない得る利点もある。また、コンソールリッドを開放させた際には、トレー部材が物品収納部の上部開口部から退避した位置まで移動するため、上部開口部の開口領域が拡大して該物品収納部に対する物品の出し入れを容易に行ない得る利点等もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明に係るコンソールボックスにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお、後述する実施例では、図9および図10に既出の部材・部位と同一の部材・部位については同一の符号を付して説明する。また、説明の便宜上、車体前方側をコンソールボックスの前側とする。
【実施例】
【0012】
図1は、好適実施例に係るコンソールボックスを、トレー部材を引出した状態で示した概略斜視図であり、図2は、図1の状態のコンソールボックスを一部破断して示した部分側面図である。また図3は、本実施例のコンソールボックスを、トレー部材を収納した状態で示した概略斜視図であり、図4は、図3の状態のコンソールボックスを一部破断して示した部分側面図である。更に図5は、本実施例のコンソールボックスを、トレー部材を引出すと共にコンソールリッドを開放させた状態で示した概略斜視図であり、図6は、図5の状態のコンソールボックスを一部破断して示した部分側面図である。本実施例のコンソールボックスCNは、上方に開口した物品収納部16を画成したコンソール本体10と、この物品収納部16の上部開口部16Aに配設されたトレー部材12と、コンソール本体10の上部に回動自在に配設されて物品収納部16を開閉するコンソールリッド14とから基本的に構成されている。
【0013】
コンソール本体10は、例えばポリプロピレン(PP)等の合成樹脂素材からインジェクション成形された合成樹脂製の成形部材であるアウター部材30と、前述した物品収納部16が画成されてアウター部材30の内側に組み付けられるインナー部材32とからなり、その前側が図示しないインストルメントパネルの中央に連結されるようになっている。そして前側部分には、チェンジレバー34やドリンクホルダ36等が設けられ、前側部分よりも高さ寸法が大きく設定された後側部分には、前述の物品収納部16が画成されていると共に、該物品収納部16の上部開口部16Aにおける上方にトレー収納部38が画成されている。そして後側部分の後部には、前述したインナー部材32に固定された支持部材40が上方へ突出しており、コンソールリッド14を枢支するための枢支軸42がその先端部に水平に貫通支持されている。なお符号44は、アウター部材30とは別部材であるオーナメントである。
【0014】
トレー部材12は、例えばポリプロピレン(PP)等の合成樹脂素材からインジェクション成形されて、前述したトレー収納部38に整合し得る形状・サイズとされたトレー本体70と、同じくポリプロピレン(PP)等の合成樹脂素材からインジェクション成形され、トレー本体70の前側に装着されてコンソール本体10の一部を構成するトレーパネル72とから構成されており、このトレー本体70に上方へ開口した物品載置部18が陥設されている。また、トレー本体70の左右側壁には、トレー収納部38に臨んだインナー部材32の左右壁面に延設したガイド溝46,46に摺接されるスライド片74,74が、該トレー本体70の後方へ所要長に延出した状態に設けられている。これによりトレー部材12は、各ガイド溝46,46にスライド片74,74が対応的に嵌合することで、コンソール本体10に対して常に水平姿勢で支持されると共に、これらスライド片74,74がガイド溝46,46に沿って摺動することでコンソール本体10の前後方向へスライド移動が可能となっている。そして、後述するリンク機構80における第1リンク部材82の一端がスライド片74に枢着されており、このリンク機構80におけるリンク動作により、コンソール本体10のトレー収納部38に収納された収納位置(図4)と、コンソール本体10から前方へ延出した第1延出位置(図2)と、この第1延出位置より更に前方側でかつ物品収納部16の上部開口部16Aから完全に退避した第2延出位置(図6)とに、水平姿勢に保持されながら位置変位するようになる。
【0015】
また、コンソール本体10の内部において、前述したトレー収納部38の下方には、トレー部材12のトレー本体70の底面に連結された公知の定張力バネ(第1付勢手段)76が配設されており、該トレー部材12を常に延出方向へ弾力付勢している。また、トレー本体70の後部には、コンソール本体10の内部に配設された部材と組をなすプッシュラッチ式の係脱装置(図示せず)が配設されており、トレーパネル72を指先で後方側へ押すかまたは後述するリッド開放ボタン64を押し、トレー部材12を適宜後退移動させて係脱装置による係止状態を解除させることで、トレー部材12は前方側へのスライド移動(前進)が許容される。また、第1延出位置または第2延出位置に延出しているトレー部材12を後方へ押してトレー収納部38までスライド移動(後退)させた際には、係脱装置が再び係止状態となり、該トレー部材12は該トレー収納部38内に収納保持されるようになる。
【0016】
コンソールリッド14は、例えばポリプロピレン(PP)等の合成樹脂素材からインジェクション成形され、前述した後側部分の上面であるリッド配設部位に整合し得る形状・サイズとされたリッドアウター部材50と、同じくポリプロピレン(PP)等の合成樹脂素材からインジェクション成形され、リッドアウター部材50の内側に装着されるリッドインナー部材52とから構成されている。そしてリッドアウター部材50の外面には、必要に応じてクッション材54および表皮材56が配設されて質感向上および触感向上が図られ、図示しない前部座席を利用する乗員のアームレストとしても機能するようになっている。このようなコンソールリッド14は、リッドインナー部材52に形成した支持突部58が前述した支持部材40に貫通支持された枢支軸42に枢設され、コンソール本体10の上面に倒伏して物品収納部16およびトレー部材12の物品載置部18を覆蓋した閉成位置(図3および図4)と、コンソール本体10から略垂直に起立して物品収納部16を外部へ露出させた開放位置(図5および図6)とに回動可能となっている。
【0017】
なお、前述した枢支軸42に捻りバネ(第2付勢手段)60が配設されており、コンソールリッド14は、常に開放方向へ適宜の付勢力で弾力付勢されている。この捻りバネ60は、閉成位置にあるコンソールリッド14を開放方向へ積極的に開放させるためのものではなく、開放位置まで開放した該コンソールリッド14を略垂直状態に保持させるためのものである。また、リッドインナー部材52の先端両側には、コンソール本体10の内部に配設されたロック機構(図示せず)に係脱可能に係合する鉤状の係止突部62,62が突設されており、これら係止突部62,62がロック機構に係合することで、コンソールリッド14が閉成状態に保持されるようになっている。なお、係止突部62とロック機構との係止状態は、コンソール本体10の側壁部に配設したリッド開放ボタン64を押すことで解除されるようになっており、このリッド開放ボタン64を押すと前述した捻りバネ60の付勢力により、コンソールリッド14は軽く回動して開放変位するようになる。
【0018】
そして、本実施例のコンソールボックスCNでは、図2、図4および図6に例示したように、コンソール本体10に進退移動可能に配設されたトレー部材12に、その一端部を枢着した第1リンク部材82と、該コンソール本体10に対し回動可能に配設されたコンソールリッド14および該第1リンク部材82の他端部に、各端部を夫々枢着した第2リンク部材84とからなるリンク機構80を装備しており、トレー部材12とコンソールリッド14とを連繋させたことを特徴としている。このリンク機構80は、いわばトレー部材12とコンソールリッド14とを連結した伸縮機構であって、該トレー部材12の進退移動に対してコンソールリッド14の回動を常に連動させるものではなく、トレー部材12を前進または後退させるに際してリンク動作することで、コンソールリッド14を適宜時間差を伴って開放または閉成させるために機能するようになっている。
【0019】
すなわち後述するように、リンク機構80の第1リンク部材82および第2リンク部材84が、相互の連結部88を中心として所定角度の範囲内で回動して伸び方向および縮み方向のリンク動作をなすことで、トレー部材12の進退およびコンソールリッド14の開閉に関して次の(1)〜(3)ような動作態様が実現可能となっている。
(1)コンソール本体10に収納されていたトレー部材12を第2延出位置へ前進延出させると、該コンソール本体10へ閉成していたコンソールリッド14を、適宜の時間差を伴って開放方向へ回動させ得る。
(2)第2延出位置に延出していたトレー部材12をコンソール本体10へ後退収納させると、開放していたコンソールリッド14を、適宜の時間差を伴って閉成方向へ回動させ得る。
(3)コンソールリッド14をコンソール本体10に閉成させたロック状態において、トレー部材12を該コンソール本体10から進退させ得る。
なお、このようなリンク機構80は、アウター部材30とインナー部材32との間において、コンソール本体10内の左右両側に夫々配設されているが、各図面では右側に配設されたものだけを例示している。
【0020】
リンク機構80を構成する第1リンク部材82は、略「I」字形の真直形状を呈した樹脂成形部材であって、その一端部が前述したトレー部材12のスライド片74に枢着されており、トレー部材12に対して回動自在に連結されている。なお、第1リンク部材82とトレー部材12とは、前述したガイド溝46に沿って延設されたスリット48に挿通させたピンを介して連結されている。
【0021】
リンク機構80を構成する第2リンク部材84は、略「く」字形の屈曲形状を呈した樹脂成形部材であって、コンソールリッド14のリッドインナー部材52に形成された取付片86にその一端部が枢着されていると共に、第1リンク部材82の他端部にその他端部が枢着されており、第1リンク部材82およびコンソールリッド14に対して回動自在に連結されている。そして、コンソールリッド14と取付片86とが連結された枢支ポイントP1は、図7に例示するように、前述した枢支軸42から所要の距離Hだけ離間した位置に設定されている。更に枢支ポイントP1は、コンソールリッド14が閉成位置にある場合では、図7に実線表示するように枢支軸42よりも後方側に位置し、該コンソールリッド14が開放位置にある場合では、図7に二点鎖線表示するように該枢支軸42よりも前方側に位置するようになっており、コンソールリッド14の姿勢(閉成状態および開放状態)に基づく枢支軸42と枢支ポイントP1との位置関係により、前述した(2)および(3)の態様を実現するようになる。
【0022】
また、第1リンク部材82における連結部88側の端部には、第2リンク部材84における該連結部88側の端部に形成した第3当接面94に当接可能な第1当接面90および第2当接面92が形成されている。これによりリンク機構80は、第1リンク部材82および第2リンク部材84が連結部88を中心として回動した際に、第1当接面90と第3当接面94とが当接して略V字状に鋭角的に縮んだ第1姿勢(縮み状態:図7の実線表示状態)と、第2当接面92と第3当接面94とが当接して略I字状に鈍角的に伸びた第2姿勢(伸び状態:図8の実線表示状態)とに屈伸変形するリンク動作が可能である。そして、第1姿勢よりも縮み方向への姿勢変位が規制されると共に、第2姿勢よりも伸び方向への姿勢変位が規制されており、この第1姿勢と第2姿勢との間での屈伸変形が前述した(1)の態様を実現するようになる。
【0023】
すなわち、第1リンク部材82および第2リンク部材84のリンク動作が許容される場合は、コンソールリッド14の回動に関係なくトレー部材12の進退移動が許容され、リンク動作が規制される場合は、トレー部材12の進退移動にコンソールリッド14の回動が連動するようになっている。
【0024】
なお第2姿勢の状態では、図8に例示したように、連結部88における枢支ポイントP3が、トレー部材12と第1リンク部材82との枢支ポイントP2および枢支ポイントP1を結んだラインLより下側に位置している。従って、図8の状態からトレー部材12を後方側へ移動させた際には、リンク機構80は必ず前述した第1姿勢に向け姿勢変位するようになる。
【0025】
(実施例の作用)
次に、前述のように構成された本実施例のコンソールボックスCNの作用につき、説明する。
【0026】
前述したリンク機構80を有した本実施例のコンソールボックスCNでは、コンソールリッド14が閉成位置に保持されると共にトレー部材12がトレー収納部38に収納された収納位置に保持されている場合(図3、図4および図7)、第1リンク部材82および第2リンク部材84が折曲してリンク機構80は第1姿勢となっている。また、第1リンク部材82と取付片86との枢支ポイントP1は、図7に例示したように、コンソールリッド14が閉成位置に保持されているため枢支軸42より後方側に位置している。
【0027】
そして、図3および図4の状態において、収納位置に保持されているトレー部材12のトレーパネル72を後方側へ押すと、コンソール本体10に対するトレー部材12の係止状態が解除されるため、該トレー部材12は定張力バネ76の弾力付勢によってコンソール本体10から前方側へスライド移動が可能となる。この際にリンク機構80は、図7に一点鎖線で例示するように、第1リンク部材82および第2リンク部材84の回動により、第2姿勢に姿勢変位するまでトレー部材12の前方側へのスライド移動を許容する。ここで、コンソールリッド14は閉成位置にロック保持されているため、前述した枢支ポイントP1は枢支軸42の後方側から全く位置変位しない。従ってトレー部材12は、リンク機構80が第2姿勢となった際に、前述した第1延出位置までスライド移動するようになる。トレー部材12が第1延出位置に到来した状態では、図1および図2に例示したように、物品載置部18がコンソールリッド14から略完全に露出した状態となり、該物品載置部18に対する物品の出し入れが可能となる。
【0028】
また、図3および図4の状態において、前述したリッド開放ボタン64を押すと、コンソールリッド14に対するトレー部材12の係止状態およびコンソールリッド14の係止状態が同時に解除される。これによりトレー部材12は、定張力バネ76の弾力付勢によりリンク機構80が第2姿勢へ姿勢変位することで、コンソール本体10から前方側へスライド移動するようになる。一方、コンソールリッド14は、捻りバネ60の弾力が比較的弱く設定されているため、リンク機構80が第2姿勢となるまでは閉成位置に保持されている。そして、リンク機構80が図7に一点鎖線で図示した第2姿勢となると、それ以降は捻りバネ60の弾力付勢のもとで、トレー部材12の前進延出に連動して開放位置に向けて後上方へ回動するようになる。
【0029】
これによりリンク機構80は、図7に二点鎖線で例示したように、コンソールリッド14の回動変位に伴って枢支ポイントP1が枢支軸42より前方側へ位置変位するようになるため、第2姿勢に保持されたままでトレー部材12のスライド方向に沿った前方側へ位置変位する。すなわち、コンソールリッド14の回動により枢支ポイントP1がストロークSだけ前方側へ移動するため、リンク機構80がこのストロークS分だけ前方側へ位置変位し、よってトレー部材12は前述した第2延出位置まで前方側へ更にスライド移動するようになる。換言すると、トレー部材12は、コンソールリッド14が同時に開放した場合、ストロークS分だけ更に前進した第2延出位置までスライド移動して、物品収納部16の上部開口部16Aから完全に退避するようになるため、該上部開口部16Aの開口領域が大きく開放されて該物品収納部16に対する物品の出し入れが可能となる。
【0030】
なお、図1および図2の状態、すなわちトレー部材12だけを第1延出位置まで延出させた状態において前述したリッド開放ボタン64を押せば、コンソールリッド14を単独で開放させることが可能である。この際に、コンソールリッド14の開放変位に伴って第2姿勢となっているリンク機構80が前方側へストロークS分だけ位置変位するため、第1延出位置まで延出していたトレー部材12は第2延出位置まで更に前方側へスライド移動するようになり、前と同様に上部開口部16Aから完全に退避するようになる。
【0031】
一方、図5および図6に例示した状態から、第2延出位置まで延出したトレー部材12をコンソール本体10へ収納するように押込むかまたは引込むと、図8に例示するように、コンソールリッド14が前述した捻りバネ60の弾力付勢により開放位置に保持され、第2姿勢となっていたリンク機構80がトレー部材12の後方側へのスライド移動に連動して第1姿勢へ姿勢変位するようになる。すなわちコンソールリッド14は、リンク機構80が第2姿勢から第1姿勢へ姿勢変位するまで、トレー部材12が後方側へ移動しても開放位置に停止保持されたままとなり、図8に一点鎖線表示するように該リンク機構80が第1姿勢まで姿勢変位すると、トレー部材12の後退移動と連動して閉成方向へ回動するようになる。そして、トレー部材12がトレー収納部38に収納されてコンソール本体10へ係止されると同時に、コンソールリッド14も閉成された該コンソール本体10へ係止される。
【0032】
なお、図5および図6に例示した状態から、開放位置に停止していたコンソールリッド14だけを、単独でコンソール本体10へ閉成させることも可能である。この際には、コンソールリッド14の閉成変位に伴い、リンク機構80が第2姿勢のまま後方側へストロークS分だけ位置変位するため、第2延出位置に延出していたトレー部材12は、この第2延出位置から第1延出位置まで後方側へスライド移動するようになる。
【0033】
このように本実施例のコンソールボックスCNでは、第1リンク部材82および第2リンク部材84の伸び方向(第2姿勢方向)または縮み方向(第1姿勢方向)のリンク動作により、トレー部材12の進退に対してコンソールリッド14を適宜時間差を伴って開閉させ得るので、コンソールリッド14の開閉操作の簡易化を図り得る利点がある。すなわち、コンソールリッド14の開閉はトレー部材12の前進延出または後退収納の操作を行なうだけでよく、腕を前下方へ伸ばした自然な姿勢でコンソールリッドを閉成し得ると共に、開閉するコンソールリッド14が腕等に接触することを回避し得る。このため、このコンソールリッド14の開閉操作に際し、前部座席に着座した乗員が腕を挙げて上体を大きく捻って該コンソールリッド14を把持するという窮屈な姿勢を強いられることがなく、コンソールリッド14の開閉操作の簡易化を図り得る。
【0034】
また、コンソールリッド14を開閉させることなく、トレー部材12だけをコンソール本体10に対して出し入れさせることも可能であるから、コンソールリッド14を開閉させずに該トレー部材12の物品載置部18に対する物品の出し入れを容易に行ない得る。すなわち、トレー部材12の物品載置部18に対して物品を出し入れするに際し、コンソールリッド14を開閉させる煩わしい操作を必要としない。またトレー部材12は、水平姿勢でスライド移動するようになっており、該トレー部材12の出し入れに際して、物品載置部18内に収納した物品がずれ動いて乱雑となることが防止される。
【0035】
また、コンソールリッド14を開放させた際には、トレー部材12が物品収納部16の上部開口部16Aから完全に退避した位置まで移動するため、上部開口部16Aの開口領域が拡大して該物品収納部16に対する物品の出し入れを容易に行ない得る。しかもトレー部材12は、コンソールボックスCNの後方側へ開放するコンソールリッド14とは反対である前方側へスライド移動するようになるため、コンソールリッド14を開放させた状態において物品載置部18に対する物品の出し入れも容易となる。更にトレー部材12は、コンソールリッド14の開放に際して略水平姿勢の状態でスライド移動するため、コンソールリッド14の開閉操作に際して物品載置部18内に収納された物品がずれ動いて乱雑となることも防止される。
【0036】
なお、リンク機構80を構成する第1リンク部材82および第2リンク部材84は、前述した実施例に例示した形状・連結態様に限定されるものではなく、前述した(1)〜(3)の機能を達成するものであれば、これ以外の形状・連結態様であってもよい。
【0037】
更に、トレー部材12のスライド移動方向は、コンソール本体10の前方側に限定されるものではなく、コンソールリッド14の開放方向とは異なることを前提として、コンソール本体10の左側方または右側方としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係るコンソールボックスは、上方に開口した物品収納部を画成したコンソール本体と、物品収納部の上部開口部に配設されたトレー部材と、コンソール本体の上部に配設されて物品収納部を開閉するコンソールリッドとからなるコンソールボックスであって、コンソールボックスを有する全ての自動車に好適に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例のコンソールボックスを、コンソールリッドを閉成したままトレー部材を引出した状態で示した概略斜視図である。
【図2】図1の状態のコンソールボックスを一部破断して示した部分側面図である。
【図3】実施例のコンソールボックスを、コンソールリッドを閉成すると共にトレー部材を収納した状態で示した概略斜視図である。
【図4】図3の状態のコンソールボックスを一部破断して示した部分側面図である。
【図5】実施例のコンソールボックスを、コンソールリッドを開放すると共にトレー部材を引出した状態で示した概略斜視図である。
【図6】図5の状態のコンソールボックスを一部破断して示した部分側面図である。
【図7】収納されていたトレー部材を前進延出させる場合において、リンク機構の伸び方向へのリンク動作に基づき、コンソールリッドが適宜時間差を伴って開放することを示した説明図である。
【図8】延出していたトレー部材を後退収納させる場合において、リンク機構の縮み方向へのリンク動作に基づき、コンソールリッドが適宜時間差を伴って閉成することを示した説明図である。
【図9】トレー部材を具備した従前のコンソールボックスを例示した説明図であって、(a)はコンソールリッドのみを開放させた状態を例示し、(b)はコンソールリッドおよびトレー部材の両方を開放させた状態を例示している。
【図10】トレー部材を具備した従来のコンソールボックスを例示した説明図であって、(a)はコンソールリッドを閉成させた状態を例示し、(b)はコンソールリッドを開放させた状態を例示している。
【符号の説明】
【0040】
10 コンソール本体
12 トレー部材
14 コンソールリッド
16 物品収納部
16A 上部開口部
60 捻りバネ(第2付勢手段)
76 定張力バネ(第1付勢手段)
82 第1リンク部材
84 第2リンク部材
88 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口した物品収納部(16)を画成したコンソール本体(10)と、前記物品収納部(16)の上部開口部(16A)に配設されたトレー部材(12)と、前記コンソール本体(10)の上部に配設されて前記物品収納部(16)を開閉するコンソールリッド(14)とからなるコンソールボックスにおいて、
前記コンソール本体(10)に進退移動可能に配設された前記トレー部材(12)に、その一端部を枢着した第1リンク部材(82)と、
前記コンソール本体(10)に対し回動可能に配設された前記コンソールリッド(14)および前記第1リンク部材(82)の他端部に、各端部を夫々枢着した第2リンク部材(84)とからなり、
前記コンソール本体(10)に収納されていた前記トレー部材(12)を前進延出させる際に、前記第1リンク部材(82)および第2リンク部材(84)に伸び方向のリンク動作を与えることで、該コンソール本体(10)へ閉成していた前記コンソールリッド(14)を適宜の時間差を伴って開放方向へ回動させ、
延出していた前記トレー部材(12)を前記コンソール本体(10)へ後退収納させる際に、前記第1リンク部材(82)および第2リンク部材(84)に縮み方向のリンク動作を与えることで、開放していた前記コンソールリッド(14)を適宜の時間差を伴って該コンソール本体(10)へ閉成方向へ回動させるようにした
ことを特徴とするコンソールボックス。
【請求項2】
前記第1リンク部材(82)および第2リンク部材(84)は、相互の連結部(88)での回動により鋭角的に縮んだ第1姿勢および鈍角的に伸びた第2姿勢の間でリンク動作し、
前記リンク動作が許容される場合は、前記コンソールリッド(14)の回動に関係なく前記トレー部材(12)の進退移動が許容され、
前記リンク動作が規制される場合は、前記トレー部材(12)の進退移動に前記コンソールリッド(14)の回動が連動する請求項1記載のコンソールボックス。
【請求項3】
前記トレー部材(12)は、前記コンソールリッド(14)を閉成位置に保持させたもとで、リンク動作により該コンソールリッド(14)から延出可能となっている請求項1または2記載のコンソールボックス。
【請求項4】
前記トレー部材(12)を常に前進方向へ付勢する第1付勢手段(76)を有する請求項1〜3の何れかに記載のコンソールボックス。
【請求項5】
前記コンソールリッド(14)を常に開放方向へ付勢する第2付勢手段(60)を有する請求項1〜4の何れかに記載のコンソールボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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