説明

コンタクトレンズパッケージ

【課題】コンタクトレンズを収容して市場に提供する流通用パッケージ等として好適に用いられ得る、新規なコンタクトレンズパッケージを提供すること。
【解決手段】保持シート34の表面に平置状態でコンタクトレンズ18を載置し、該保持シート34を筒状に巻いてコンタクトレンズ18を巻き込むことで保持せしめた状態で、かかる保持シート34を、パッケージ14の収容領域内で保存液16内に浸漬させて収容した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズを保存液と共に収容するコンタクトレンズパッケージに係り、特にソフトコンタクトレンズを市場へ流通させる際に好適に用いられるコンタクトレンズパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは、レンズメーカーで製造され、コンタクトレンズパッケージに密封状態で収容されて市場に流通されて、販売店からユーザーに提供される。
【0003】
ところで、含水性ソフトコンタクトレンズなどは、一般に、保存液と共にコンタクトレンズパッケージに収容して提供される。かかるコンタクトレンズパッケージとしては、従来から、特開平7−322911号公報(特許文献1)や米国特許第4691820号公報(特許文献2)に記載されているように、硬質樹脂製で剛性の高い容器本体に形成された窪みに保存液とコンタクトレンズを収容してカバーフィルムで封止したブリスターパッケージが採用されている。
【0004】
しかしながら、このような従来構造のブリスターパッケージは、コンタクトレンズを平衡状態(外力による変形の無い状態)で収容するために窪みを充分な深さで形成しなければならず、コンパクト化が難しい。
【0005】
しかも、窪みに貯留された保存液中に浮遊状態でコンタクトレンズが収容されていることから、カバーフィルムを開封してコンタクトレンズを取り出す際に、コンタクトレンズが動いて手指で摘み取ることが難しいという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−322911号公報
【特許文献2】米国特許第4691820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景として為されたものであり、その解決課題とするところは、コンタクトレンズを一層コンパクトにして収容することが可能とされると共に、収容状態下でのコンタクトレンズを安定して位置決めすることができる、新規な構造のコンタクトレンズパッケージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、コンタクトレンズが保存液と共にパッケージに収容されたコンタクトレンズパッケージであって、前記パッケージに収容されて筒状に巻かれた保持シートを用い、該保持シートの表面に平置状態で配された前記コンタクトレンズに該保持シートを重ね合わせて、該保持シートの重ね合わせ方向に押圧変形状態で且つ筒状に巻かれた該保持シートの周方向に湾曲変形状態で、該コンタクトレンズを該保持シート間に保持せしめたコンタクトレンズパッケージにある。
【0009】
本態様のコンタクトレンズパッケージでは、保持シートの表面に平置状態で載置されたコンタクトレンズが保持シートに向けて光学中心軸方向に押し付けられて圧縮された押圧変形状態で収容されることから、コンタクトレンズ自体のサイズを平衡状態(保存液中に浮遊されて外力が及ぼされていない状態)に比して光学中心軸方向(インナーハイト方向)で小さくして効率的に収容することが可能となる。
【0010】
また、パッケージ収容状態下のコンタクトレンズは、保持シート間で押圧変形されることで位置決め状態で保持されていることから、パッケージ内面への擦れや打ち当り等が回避されて、安定して保存され得る。そして、コンタクトレンズの単体を取り出す際にも、保持シート間で位置決めされ、保持シート上の所定位置に配されていることから、コンタクトレンズの位置が特定されて取り出しが容易となる。
【0011】
しかも、パッケージ内への収容状態下において、コンタクトレンズは保持シートが巻かれた周方向となる径方向一方向で丸められるように湾曲されており、かかる湾曲方向で略均等な応力と歪が全体に生ぜしめられることとなる。それ故、コンタクトレンズを光学中心軸方向で単に押し潰すように変形させる場合に比して、局部的に大きな屈曲や皺が発生して集中的に過大な応力や歪が発生する等という不具合が軽減乃至は回避され得る。その結果、上述のようにコンタクトレンズをインナーハイト方向で圧縮変形させてコンパクトにしても、応力や歪の最大値を小さくすることが出来、開封直後に装用しても残留歪による見え方の不具合が効果的に回避されるのである。
【0012】
加えて、パッケージ内で丸められた状態にあるコンタクトレンズは、平たい状態にある場合に比して、単体でも外力に対する座屈等の変形強度が大きくされることに加えて、保持シートが表裏両側から重ね合わされて補強材として作用し得る。それ故、たとえパッケージの剛性が小さくて外力により変形する程度に軟質である等の理由から、保持シートにより保持せしめた状態のコンタクトレンズに対して外力が及ぼされた場合でも、コンタクトレンズの折れ曲がり等の過大な変形が効果的に防止されることとなり、外力等の作用による局所的に大きな変形や好ましくない歪の発生の回避効果も達成され得る。
【0013】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係るコンタクトレンズパッケージにおいて、前記パッケージが筒状の周壁部を備えており、筒状に巻かれた前記保持シートの中心軸を該パッケージの該周壁部の軸方向に向けて、該保持シートが該パッケージに収容されているものである。
【0014】
本態様のコンタクトレンズパッケージでは、筒状に巻かれてコンタクトレンズを保持した保持シートを、パッケージ内に効率的に収納することができる。また、本態様では、パッケージにおける筒状の周壁部の軸方向端部に開口部を設けることが好ましく、それにより、筒状に丸めた保持シートを、パッケージ内で軸方向に滑らせるように移動させることで、パッケージから容易に取り出すことが可能となる。
【0015】
本発明の第三の態様は、前記第二の態様に係るコンタクトレンズパッケージにおいて、筒状に巻かれた前記保持シートの前記パッケージにおける筒状の前記周壁部への当接力反力によって、該保持シートが筒状に巻かれた状態に保持されているものである。
【0016】
本態様のコンタクトレンズパッケージでは、保持シートを筒状に巻かれた状態に保持するための特別な部材が不要となり構造の簡略化が図られ得る。なお、本態様のパッケージは、硬質樹脂等の剛性材料で形成されていても良いし、手指による押圧力で変形する程度の軟質材料で形成されていても良い。軟質材料で形成されたパッケージでは、開封後にパッケージを押圧変形させることで、収容された保持シートを開封口から押し出すように移動させて取り出すことも可能である。
【0017】
本発明の第四の態様は、前記第一〜三の何れかの態様に係るコンタクトレンズパッケージにおいて、前記パッケージが有底筒状のパッケージ本体と該パッケージ本体の開口部を覆蓋する蓋体とを含んで構成されていると共に、前記保持シートを該蓋体に連結する連結部材が設けられているものである。
【0018】
本態様のコンタクトレンズパッケージでは、パッケージ本体から蓋体を取り外すことにより、蓋体と一緒に保持シートをパッケージ本体から外部に取り出すことが可能となる。これにより、コンタクトレンズの使用に際して、コンタクトレンズを保存液中から取り出すための作業を、レンズ使用者が一層容易に且つ速やかに行うことが可能となる。
【0019】
本発明の第五の態様は、前記第四の態様に係るコンタクトレンズパッケージであって、前記連結部材によって、筒状に巻かれた前記保持シートの内周側端部が前記蓋体に連結されているものである。
【0020】
本態様のコンタクトレンズパッケージでは、筒状に巻かれた保持シートをパッケージ本体に収容させた状態で活用されないデッドスペースとなりがちである、筒状に巻かれた保持シートの中央部分の領域を巧く利用して、保持シートを蓋体に連結する連結部材を設けることが可能となる。また、本態様では、例えば連結部材を蓋体からパッケージ本体内に突出させることで、かかる連結部材を、筒状に巻かれた保持シートの巻き付け用の軸部材などとして利用することも可能となる。更にまた、本態様の連結部材を採用することにより、保存液中への収容状態下で、保持シートを、連結部材を介して蓋体に対して位置決めすることが可能となり、コンタクトレンズを保持する保持シートの収容位置の安定化も図られ得る。
【0021】
本発明の第六の態様は、前記第一〜五の何れかの態様に係るコンタクトレンズパッケージであって、前記保持シートが単一の帯状体によって構成されているものである。
【0022】
本態様のコンタクトレンズパッケージでは、一枚の保持シートでコンタクトレンズを圧縮および湾曲された目的の変形状態に保持することが出来、互いに重ね合わされる二枚の保持シートを採用する場合等に比して、部品点数の減少と構造の簡略化などが達成され得る。
【0023】
本発明の第七の態様は、前記第一〜六の何れかの態様に係るコンタクトレンズパッケージであって、前記保持シートに対して、保持された前記コンタクトレンズに関連する情報表示部が設けられているものである。
【0024】
本態様のコンタクトレンズパッケージでは、保持シートを利用することにより、コンタクトレンズに直接に表示する場合に比して、コンタクトレンズの装用感や光学特性等を損なうことなく、より多くの情報を安全に且つ容易に表示することが可能となる。
【0025】
本発明の第八の態様は、前記第一〜七の何れかの態様に係るコンタクトレンズパッケージであって、前記保持シートにおいて、保持された前記コンタクトレンズを、筒状に巻かれた該保持シートの外部から視認可能とする透明な確認部分が設けられているものである。
【0026】
本態様のコンタクトレンズパッケージでは、その製造段階や出荷段階、流通段階、販売段階、使用段階等の必要な段階で、パッケージを開封することなくコンタクトレンズの収容の有無を容易に且つ速やかに確認することができる。また、コンタクトレンズを使用するに際して、ユーザーは、巻かれた保持シートを保存液から取り出した状態で、保持シート内におけるコンタクトレンズの有無や位置を目視確認することも可能となる。
【発明の効果】
【0027】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされたコンタクトレンズパッケージにおいては、コンタクトレンズが、保持シートによって圧縮および湾曲された特定の変形状態で、過大な応力や歪の局部的な発生を回避せしめつつ安定して保持されて、保存液中に収容され得る。それ故、収容状態でのコンタクトレンズにおける応力や歪を小さくして、開封直後の光学特性も良好に確保しつつ、コンタクトレンズを安定して収容保存することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第一の実施形態としてのコンタクトレンズパッケージの斜視説明図。
【図2】図1に示されたコンタクトレンズパッケージの分解斜視説明図。
【図3】図1に示されたコンタクトレンズパッケージにおける保持シートによるコンタクトレンズの保持状態を説明するための斜視説明図。
【図4】本発明の第二の実施形態としてのコンタクトレンズパッケージの斜視説明図。
【図5】図4に示されたコンタクトレンズパッケージの分解斜視説明図。
【図6】図4に示されたコンタクトレンズパッケージにおける保持シートによるコンタクトレンズの保持状態を説明するための斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1には、本発明の第一の実施形態としてのコンタクトレンズパッケージ10が示されていると共に、その分解構造が図2に示されている。
【0030】
本実施形態のコンタクトレンズパッケージ10は、密閉構造の収容領域12を形成する中空構造のパッケージ14を備えている。そして、このパッケージ14の収容領域12において、保存液16に浸漬された状態でコンタクトレンズ18が収容されている。
【0031】
詳細には、パッケージ14は、パッケージ本体19と蓋体20から構成されている。パッケージ本体19は、カップ形状とされており、上方に開口する開口部としての開封口22を備えた収容凹所23が形成されている。特に本実施形態では、有底円筒形状のパッケージ本体19が採用されており、円板形状の底壁部24の外周縁部から円筒形状の周壁部26が立ち上がって一体形成されている。
【0032】
一方、蓋体20は、浅底の逆カップ形状とされており、本実施形態では、円形の上底部28の外周縁部から下方に向かって円筒形状の周壁部30が一体形成されている。そして、パッケージ本体19に対して上方から蓋体20が重ね合わされて、蓋体20の周壁部30がパッケージ本体19の周壁部26の上端の嵌合部32に対して外嵌されている。これにより、パッケージ本体19の開封口22が蓋体20で覆蓋されて、収容凹所23が外部空間から遮断されることで収容領域12が画成されている。
【0033】
なお、パッケージ本体19および蓋体20は、手指の押圧で変形する程度に軟質の合成樹脂材料で形成することも可能であるが、取扱いを容易とするために、手指の押圧で変形しない程度の剛性を備えた硬質の合成樹脂材料で形成されることが望ましい。また、パッケージ本体19から蓋体20が不用意に外れないように、蓋体20をパッケージ本体19に対して接着や溶着で簡易固着したり、螺着構造等を採用することも可能である。
【0034】
そして、かかる収容領域12に保存液16が封入されていると共に、ソフトタイプのコンタクトレンズ18が、保存液16に浸漬されて収容されている。ここにおいて、コンタクトレンズ18の収容に際して保持シート34が用いられており、かかる保持シート34によってコンタクトレンズ18が保持された状態で、コンタクトレンズ18と共に保持シート34が、収容領域12内で保存液16に浸漬されて収容されている。
【0035】
この保持シート34は、薄肉のシート形状を有しており、丸めて巻き取ることが出来る程度の可撓性と、巻き取った形状が安定する程度の強度(剛性)とを有するものである。具体的な材質としては、保存液16やコンタクトレンズ18に対して充分な安定性(耐蝕性を含む)を有すると共に、人体への安全性(無毒性)を有することを要件として、各種の合成樹脂製のフィルムやシートの他、耐水紙や不織布を含む各種の繊維シート等も採用可能である。特に好適には、例えばポリエチレンテレフタレートやポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルニトリル等の可視光線の透過性が高い合成樹脂材料からなる保持シート34が採用される。また、コンタクトレンズ18の保持力等を考慮して、保持シート34の材質は親水性であることが望ましい。
【0036】
かかる保持シート34は、一枚の略帯形状とされており、コンタクトレンズ18の径方向寸法(DIA)よりも大きな幅寸法をもって延びている。そして、保持シート34が長さ方向で略一定の曲率半径をもって巻かれることにより、一つの中心軸回りで巻き重ねられて全体として円筒形状の巻物状態とされている。そして、巻き重ねの中心軸を、パッケージ本体19の周壁部26の中心軸方向に向けた状態で、収容領域12に収容されている。
【0037】
また、このように巻かれて円筒形状とされた保持シート34は、軸直角方向で複数層に重ね合わされており、かかる重ね合わせ面間にコンタクトレンズ18が挟まれた状態で配設保持されている。そして、本実施形態では、保持シート34を筒状に丸めた変形状態に保持せしめて、元の帯形のシート形状に展開して復元することを妨げる保持力が、筒状に丸めた保持シート34の外周面に及ぼされる、パッケージ本体19の周壁部26内面への当接反力によって発揮されている。
【0038】
すなわち、保持シート34が、略平坦なシート形状に復元する所定の弾性を有することにより、筒状に巻かれた保持シート34の外周面をパッケージ本体19の周壁部26で抑えて拡径方向の復元を阻止することによって、保持シート34自体の弾性を利用して、保持シート34の重ね合わせ面間において重ね合わせ方向の押圧力を生ぜしめ、かかる押圧力をコンタクトレンズ18に対して光学中心軸方向への圧縮力として常時作用せしめることが可能となる。その結果、ある程度の弾性(粘弾性を含む)を有するコンタクトレンズ18でも、重ね合わされた保持シート34間で圧縮変形状態に保持され得ることとなる。
【0039】
ところで、このように巻き重ねられた保持シート34間にコンタクトレンズ18を介在させて保持せしめるに際しては、例えば、保持シート34にコンタクトレンズ18を重ね合わせて保持シート34の巻き取りに際してコンタクトレンズ18を一緒に巻き込むことが好適である。
【0040】
具体的には、図3に示されているように、巻く前の展開状態での保持シート34において、その表面35上にコンタクトレンズ18を平置状態で載置する。その後に、保持シート34を長さ方向の一旦側から巻きはじめて、長さ方向の他端側まで巻き終わるまでの間に、コンタクトレンズ18を載置したままで保持シート34を湾曲させて筒状に巻き取る。そして、コンタクトレンズ18が載置された部分の外周面に対して、更に保持シート34を巻き重ねることによって、互いに重ね合わされた保持シート34の間にコンタクトレンズ18を挟み込んで保持せしめることができる。
【0041】
その際、例えばコンタクトレンズ18と保持シート34の少なくとも一方に保存液等を付着させておくことで、保存液等の表面張力や粘着力等による付着力を利用して、保持シート34上の所定位置にコンタクトレンズ18を位置決めしつつ巻き込むことが可能である。更に、必要に応じて、適当な接着剤を用いたり、保持シートに切込みを設けてコンタクトレンズ18を係止させたりすることで、保持シート34の表面35上にコンタクトレンズ18を位置決めしても良い。
【0042】
なお、保持シート34においてコンタクトレンズ18が載置される表面35は、保持シート34において巻き重ねられる面をいい、保持シート34の表裏の区別はない。即ち、コンタクトレンズ18の載置は、保持シート34の巻かれる内周側の表面でも良いし、外周側の表面でも良い。また、平置状態とは、コンタクトレンズ18を、その光学中心軸が表面35に直交して外周エッジ部が円環形状をもって表面35に重ね合わされる状態をいい、コンタクトレンズ18の表裏の区別はない。即ち、コンタクトレンズ18における保持シート34への載置側の面は、装用時に角膜側となる面でも良いし、眼瞼側となる面でも良い。
【0043】
さらに、本実施形態では、蓋体20において連結部材としての連結軸36が一体的に設けられており、この連結軸36が、蓋体20の上底部28の略中央から収容領域12の略中央部分に突出している。そして、この連結軸36に対して、保持シート34の内周側端部が係止や接着等で取り付けられており、収容領域12において、保持シート34が、連結軸36を介して、パッケージ14によって位置決め支持されている。
【0044】
上述のようにして円筒形状に巻かれた保持シート34の内部に挟まれた状態で保持されたコンタクトレンズ18は、光軸方向となる表裏両側から保持シート34が重ね合わされて光軸方向への押圧力が及ぼされて圧縮変形状態とされている。それ故、コンタクトレンズ18を、平衡状態に比してコンパクトに収納することが可能となる。
【0045】
しかも、保持シート34が周方向に湾曲していることにより、保持シート34で挟まれたコンタクトレンズ18も、径方向一方向で略一定の曲率半径で全体的に湾曲されている。一方、巻かれた保持シート34の軸方向となる径方向では、コンタクトレンズ18も湾曲されていない。
【0046】
このようにコンタクトレンズ18の表面と裏面との何れか一方の側に曲率中心が設定されて、径方向一方向だけで丸められたコンタクトレンズ18では、丸められた方向において引張又は圧縮となる略均等な応力と歪が全体に生ぜしめられることとなる。それ故、コンタクトレンズ18を単に平面的に光学中心軸方向で押し潰すように変形させる場合に比して、発生する歪や応力が湾曲方向の略全体に分散されることにより、局部的に大きな屈曲や皺が発生して集中的に過大な応力や歪が発生することが防止される。
【0047】
その結果、コンタクトレンズ18を光学中心軸方向で圧縮させると共に、径方向一方向に湾曲させることで、コンタクトレンズ18をコンパクトに収容することを可能と為しつつ、収容状態下でのコンタクトレンズ18に生ずる応力や歪の最大値を小さくすることが出来るのであり、それ故、パッケージ14を開封してコンタクトレンズ18を取り出した直後に装用しても、著しい変形が残留することがなく、残留歪による見え方の不具合が効果的に回避されるのである。
【0048】
また、上述のように保持シート34に巻き込まれて収容領域12に収容されたコンタクトレンズ18は、保持シート34間で位置決めされて自由な浮遊移動が阻止された拘束状態とされている。それ故、収容領域12内で保存液16が流動してもコンタクトレンズ18が収容領域12の内面に当接したり擦れたりすることなく、安定して保存され得る。
【0049】
更にまた、本実施形態では、保存液16に浸漬されて収容領域12に収容された保持シート34も、その内周側端部が連結軸36によって蓋体20に対して位置決めされていると共に、その外周面が周壁部26への当接によってパッケージ本体19に対して位置決めされている。これにより、保持シート34ひいてはコンタクトレンズ18が、パッケージ14の収容領域12内で一層安定して収容保存され得る。
【0050】
さらに、保持シート34として、前述の如き可視光線の透過率が大きい透明樹脂製のシートを採用すれば、保持シート34が巻かれた円筒形状とされたままの状態で、内部に挟まれて保持されたコンタクトレンズ18の有無や位置を確認することも可能となる。なお、この場合には保持シート34の全体が透明な確認部分として構成されることとなるが、例えば、コンタクトレンズ18の保持領域に対応する部分だけを透明な確認部分としても良い。
【0051】
また、保持シート34には、適当な記号や文字などからなる情報表示部38を付することができる。これにより、コンタクトレンズ18に対して直接に印刷や刻設等で情報表示をすることなく、コンタクトレンズ18に関する情報を見易い態様で表すことが可能となる。なお、かかる情報表示部として、保持シート34上でのコンタクトレンズ18の配設位置を表示するマークを採用することも可能であり、それによって、コンタクトレンズ18を取り出す際にコンタクトレンズ18の位置を一層容易に目視確認することが可能となる。
【0052】
以上、本発明の第一の実施形態について詳述してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでない。例えば、図4〜5に示された第二の実施形態としてのコンタクトレンズパッケージ40のように、蓋体20に連結軸36を設けることなく、パッケージ14の収容領域12内に、コンタクトレンズ18を巻き込んで円筒形状とした保持シート34の単体を、そのまま収容して保存しても良い。このようにパッケージ14から独立した保持シート34であっても、図6に示されているように、コンタクトレンズ18を表面35に載置して巻くことにより、第一の実施形態と同様にコンタクトレンズ18を圧縮および湾曲させた状態で保持することが出来ると共に、展開することで表面35上にはりついたコンタクトレンズ18を摘んで容易に取り出すことが可能となる。なお、図4〜6中、前記第一の実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、それぞれ、第一の実施形態と同一の符号を図中に付することにより、それらの詳細な説明を割愛する。
【0053】
また、保持シート34において適当な大きさの通孔を形成したり、保持シート34として多孔構造のシート材を採用することも可能である。このように孔を有する保持シート34を採用することにより、コンタクトレンズ18への保存液16の接触量を向上させたり、孔を利用してコンタクトレンズ18の視認性を向上させたりすることができる。
【0054】
さらに、保持シート34は、前記実施形態のように、略平坦な面を有するものに限定されない。例えば、保持シート34のコンタクトレンズ18が載置される部分に、コンタクトレンズが嵌まる凹部を設けてもよい。これにより、コンタクトレンズ18の更なる位置決め効果の向上が実現される。
【0055】
更にまた、保持シート34の二枚を用いて、それら二枚の保持シート34,34を互いに重ね合わせ、かかる重ね合わせ面間にコンタクトレンズ18を圧縮状態で保持せしめても良い。このように二枚の保持シートを採用すれば、保持シートを円筒形状に巻く前の工程で、展開状態とされた二枚の保持シートの重ね合わせ面間にコンタクトレンズ18を挟んで予め圧縮状態に保持しておくことが可能となる。それ故、保持シートを巻くに際してのコンタクトレンズの位置ずれ等の問題に対して有効である。なお、二枚の保持シートを採用するに際しては、少なくともコンタクトレンズ18の配設部分において二枚の保持シートが重ね合わせ状態とされていれば良く、一方の保持シートに比して他方の保持シートを小さくしても良い。
【0056】
さらに、本発明のコンタクトレンズパッケージに収容されるコンタクトレンズ18は、弾性変形可能であれば良く、その材質や光学特性に関して特に限定されるものでない。例えば、HEMA系イオン性高含水ソフトコンタクトレンズの他、シリコーン成分を有するシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズ等のように粘性が比較的大きい材質からなるコンタクトレンズも採用可能である。
【0057】
また、収容領域12への収容状態下で、コンタクトレンズ18を巻き込んで筒形状とされた保持シート34は、必ずしも真円の筒形状である必要はなく、例えば軸直角方向に押しつぶされた楕円の筒形状等であっても良い。
【0058】
更にまた、パッケージ14の構造や形状も限定されるものでなく、例えば、窪みを設けた硬質樹脂成形体からなるパッケージ本体に対して、コンタクトレンズを巻き込んだ保持シートを保存液と共に、かかる窪みに収容してフラットなシートで流体密に覆蓋したブリスター構造のパッケージなども、本発明において採用可能である。
【0059】
また、蓋体に対して保持シートを連結する連結部材として、第一の実施形態に例示の連結軸36の他、例えば、筒状に巻かれた保持シート34の長さ方向中間部分や外周端部を蓋体に連結する連結部材を採用したり、保持シート34の一部を蓋体側に延び出させて固着させることによって連結部材を構成したりすることも可能であって、具体的な連結部位や連結構造は限定されない。
【0060】
さらに、保持シート34によって保持されるコンタクトレンズ18の数は、単一であっても良いし、複数であっても良い。
【符号の説明】
【0061】
10,40:コンタクトレンズパッケージ、14:パッケージ、16:保存液、18:コンタクトレンズ、19:パッケージ本体、20:蓋体、22:開封口(開口部)、26:周壁部、34:保持シート、36:連結軸(連結部材)、38:情報表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズが保存液と共にパッケージに収容されたコンタクトレンズパッケージであって、
前記パッケージに収容されて筒状に巻かれた保持シートを用い、該保持シートの表面に平置状態で配された前記コンタクトレンズに該保持シートを重ね合わせて、該保持シートの重ね合わせ方向に押圧変形状態で且つ筒状に巻かれた該保持シートの周方向に湾曲変形状態で、該コンタクトレンズを該保持シート間に保持せしめたことを特徴とするコンタクトレンズパッケージ。
【請求項2】
前記パッケージが筒状の周壁部を備えており、筒状に巻かれた前記保持シートの中心軸を該パッケージの該周壁部の軸方向に向けて、該保持シートが該パッケージに収容されている請求項1に記載のコンタクトレンズパッケージ。
【請求項3】
筒状に巻かれた前記保持シートの前記パッケージにおける筒状の前記周壁部への当接力反力によって、該保持シートが筒状に巻かれた状態に保持されている請求項2に記載のコンタクトレンズパッケージ。
【請求項4】
前記パッケージが有底筒状のパッケージ本体と該パッケージ本体の開口部を覆蓋する蓋体とを含んで構成されていると共に、
前記保持シートを該蓋体に連結する連結部材が設けられている請求項1〜3の何れか1項に記載のコンタクトレンズパッケージ。
【請求項5】
前記連結部材によって、筒状に巻かれた前記保持シートの内周側端部が前記蓋体に連結されている請求項4に記載のコンタクトレンズパッケージ。
【請求項6】
前記保持シートが単一の帯状体によって構成されている請求項1〜5の何れか1項に記載のコンタクトレンズパッケージ。
【請求項7】
前記保持シートに対して、保持された前記コンタクトレンズに関連する情報表示部が設けられている請求項1〜6の何れか1項に記載のコンタクトレンズパッケージ。
【請求項8】
前記保持シートにおいて、保持された前記コンタクトレンズを、筒状に巻かれた該保持シートの外部から視認可能とする透明な確認部分が設けられている請求項1〜7の何れか1項に記載のコンタクトレンズパッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−214228(P2012−214228A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78966(P2011−78966)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【Fターム(参考)】