説明

コンタクトレンズ洗浄用有核錠及びそれを含むコンタクトレンズ洗浄用製剤、並びにコンタクトレンズ洗浄方法

【課題】本発明は、発泡成分存在下で、簡便にコンタクトレンズ(CL)の消毒を行いうるCL洗浄用有核錠及びそれを含むCL洗浄用製剤、並びにCL洗浄方法を提供すること。
【解決手段】本発明のCL洗浄用有核錠は、ヨウ素系殺菌剤、炭酸塩及び有機酸を含む外殻と、中和剤、炭酸塩及び有機酸を含む内核とから構成される有核錠であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成分である炭酸ナトリウムの存在下、ヨウ素系殺菌剤による十分な殺菌が可能であり、かつ、密閉容器であるレンズケース内で静置するだけでコンタクトレンズのケアが可能なコンタクトレンズ洗浄用有核剤、及びそのような洗浄用有核剤を含むコンタクトレンズ洗浄用製剤に関する。また、本発明は、当該コンタクトレンズ洗浄用有核剤を使用してコンタクトレンズを洗浄する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の有用な視力の矯正方法としては、眼鏡の使用、コンタクトレンズ(以下CLと略す)の装用、外科的手術(レーシック手術等)といったものが挙げられる。その中でもCLは、高い視力矯正力に加え、眼鏡の使用時よりも矯正された視野が広いこと、運動時でも安定した視界が得られること、さらに外科的手術に比べ侵襲性が低いことから多くの人に使用されている。現在、日本では人口の約13%に当たる1600万人程度がCLを使用している。
【0003】
CLは着脱の操作又は連続装用によって、細菌等の微生物、手指又は涙液に由来するタンパク質又は脂質等の汚れが付着する。このような微生物又は汚れを放置すると、CLの変形、CL装用時の異物感、痒みといった装用感悪化の誘因となるだけでなく、微生物等による眼感染症、角膜又は結膜等の眼表面への障害の原因ともなる。そのため、同じCLを複数回使用する場合には、熱又は化学薬品による消毒、界面活性剤又はタンパク質及び/又は脂質分解酵素等による洗浄といったケアが不可欠である。特に、一般的にソフトコンタクトレンズと呼ばれ使用されている含水性コンタクトレンズの場合は、素材が水分を含んでいることから微生物が繁殖しやすく、CLのケアに当たっては微生物の消毒が必須となる。
【0004】
主なCLの消毒方法には、煮沸消毒と薬品による化学消毒の2種類がある。近年では、専用の機器を必要とせず、操作も簡便であることから化学消毒が主に用いられている。
【0005】
化学消毒に使用される消毒成分にはいくつかの種類があり、過酸化水素を消毒成分とするもの、ビグアニドに代表される分子内に電荷を帯びた官能基を持つ殺菌性化合物を消毒成分とするもの、ヨウ素を消毒成分とするものが主なものとして挙げられる。この中でも、ヨウ素を消毒成分としているCL洗浄用製品は、非常に高い消毒力を有し、誤使用した場合でも眼への刺激が少なく安全であることから注目されている。
【0006】
ヨウ素を消毒成分とする消毒剤としては、一般的にはヨードフォアと呼ばれる高分子ポリマーとヨウ素分子の複合体で、ポリビニルピロリドンにヨウ素を配位させたポビドンヨードが汎用されている。例えば、特許文献1には、コンタクトレンズの消毒、中和及び洗浄のための一液型組み合わせ製剤として、ヨウ素系消毒剤及び蛋白質分解酵素を含有する第1の製剤と、含硫黄還元剤及び発泡剤を含み、かつ、遅延放出被覆を有する第2の製剤との組み合わせからなり、第1の製剤及び第2の製剤の少なくとも一方に非イオン性界面活性剤を含有する製剤が開示されている。
【0007】
また、ヨウ素系殺菌剤の安定化方法として、ポビドンヨード溶液にヨウ化物塩を配合する方法(特許文献2)、アルカリ化剤を配合しガラス瓶に貯蔵する方法(特許文献3)、ポリエステル樹脂等からなる容器にヨウ素溶液を保存する方法(特許文献4)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−111298号公報
【特許文献2】米国特許第4,996,048号
【特許文献3】特開平5−70356号公報
【特許文献4】特開2001−117056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示されている組み合わせ製剤は、第一の製剤及び第二の製剤の2製剤から構成されているが、CL消毒時にはこれら2製剤を溶解用水溶液で溶解する必要がある。しかし、第一の製剤であるヨウ素系殺菌剤含有製剤が発泡成分を含んでいないため、均一に溶解させるためには攪拌操作が必要であり、操作が煩雑であった。
【0010】
本発明は、発泡成分存在下で、簡便にCLの消毒を行いうるCL洗浄用有核錠及びそれを含むCL洗浄用製剤、並びにCL洗浄方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、ヨウ素系殺菌剤及び発泡剤を含む外殻と、中和剤、発泡剤及び界面活性剤を含む内核とから構成される有核錠とすることにより、固形剤1種類を溶解液で溶解させるだけで、撹拌操作を行わなくとも、CLの安全な消毒が行いうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
具体的に、本発明は、
ヨウ素系殺菌剤、炭酸塩及び有機酸を含む外殻と、
中和剤、炭酸塩及び有機酸を含む内核と、
から構成される有核錠であることを特徴とするCL洗浄用有核錠、に関する。
【0013】
外殻に炭酸塩及び有機酸を配合することにより、有核錠を溶解液に浸漬すれば炭酸ガスが発泡する。その結果、撹拌操作を行うことなく、ヨウ素系殺菌剤を溶解液中に均等に溶解させ、CLを効果的に消毒することが可能となる。
【0014】
また、本発明では、ヨウ素系殺菌剤によるCL消毒時間を十分に維持した後、内核を溶解液に溶解させることができる。内核にも発泡成分として炭酸塩及び有機酸を配合することにより、撹拌操作を行うことなく、炭酸ガスの発泡により中和剤を溶解液中に均等に溶解させることが可能である。
【0015】
その結果、有核錠及び溶解液と共にCLをレンズケースにセットしておけば、そのまま静置するだけでヨウ素系殺菌剤によるCL消毒と、消毒後のヨウ素系殺菌剤の中和が完了させることが可能であり、消毒操作を簡便化できる。
【0016】
炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が使用可能である。また、有機酸としては、クエン酸、酒石酸等のオキソカルボン酸が使用可能である。外殻中の炭酸塩及び有機酸は、5重量%以上60重量%とすることが好ましい。
【0017】
内核は、遅延放出被覆されていることが好ましい。
【0018】
内核を遅延放出被覆することにより、外殻溶解後、内核が溶解しはじめるまでの時間を調整し、ヨウ素系殺菌剤による十分な消毒時間を確保することができる。遅延放出被覆は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等で内核表面を被覆することにより行いうる。
【0019】
外殻は、滑沢剤を含むことが好ましい。
【0020】
外殻の原薬となる粉体の流動性を良くし、打錠装置による連続した錠剤形成を容易にするためである。滑沢剤としては、(1)ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸又はその塩化物;(2)ポリソルベート、ポリエチレングリコール等の界面活性剤;(3)デンプン、乳糖等の有機物;(4)ケイ酸マグネシウム、硫酸カルシウム等の無機塩等を使用しうる。
【0021】
滑沢剤は、界面活性剤であることが好ましい。
【0022】
界面活性剤は、外殻の崩壊を促進する効果を発揮しうる。また、溶解剤への溶解性が高いため、CL表面に残渣が付着する二次汚染を防止しうるためである。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤等を使用しうる。なお、外殻中の界面活性剤は、0.2重量%以上30重量%以下とすることが好ましい。
【0023】
ヨウ素系殺菌剤としては、ポビドンヨード、ポリビニルアルコールヨード、シクロデキストリンヨード等を使用しうる。汎用的で安価であることから、ヨウ素系殺菌剤はポビドンヨードであることが好ましい。
【0024】
界面活性剤は、数平均分子量2000あたり1未満の水酸基を有する界面活性剤であることが好ましい。
【0025】
本発明者等は、利便性向上のためにヨウ素系殺菌剤含有製剤を発泡性製剤にすることを検討した。しかし、ヨウ素系殺菌剤含有製剤に発泡成分及び界面活性剤を配合すると、消毒成分であるヨウ素系殺菌剤が不安定化し、消毒効果が低下してしまう場合があった。このような発泡製剤におけるヨウ素系殺菌剤の安定化方法については、特許文献2〜4には開示されていない。このため、本発明者等は、製剤の安定性を維持したまま発泡成分を配合するための新規な方法について、さらに検討した。
【0026】
その結果、ヨウ素系殺菌剤の不安定化の原因が、発泡剤として炭酸塩と共に使用される有機酸と界面活性剤とのエステル反応によって生じる水であることを解明した。そして、この有機酸と界面活性剤とのエステル反応は、界面活性剤に数平均分子量2000あたり1以上の水酸基が存在する場合に反応が起こり易いことを見出した。
【0027】
外殻が含む分子量2000あたり1未満の水酸基を有する界面活性剤はポリエチレングリコール6000であることが好ましい。なお、外殻中のヨウ素系殺菌剤は、0.2重量%以上30重量%以下とすることが好ましい。
【0028】
ヨウ素系殺菌剤としてポビドンヨードを外殻に配合すると、打錠時のスティッキング又は溶解液に浸漬した場合の外殻の溶解不良等のトラブルが発生する場合があった。本発明者等は、これらのトラブルを防止する方法について検討した結果、数平均分子量2000あたり1未満の水酸基を有する界面活性剤としてポリエチレングリコール6000を使用すれば打錠時又は溶解時のトラブルを防止しうることを見出した。
【0029】
なお、ヨウ素系殺菌剤の中和剤(還元剤)としては、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の含硫還元剤、アスコルビン酸、エデト酸等を使用しうる。
【0030】
内核は、さらにタンパク質分解酵素を含むことが好ましい。タンパク質分解酵素としては、ズブチリシン等のバチルス属微生物が生産するタンパク質分解酵素、パンクレアチン等の動物膵臓由来の酵素等を使用しうる。
【0031】
CL表面に付着しているタンパク質を除去し、洗浄効果を高めるためである。なお、内核にタンパク質分解酵素を配合する場合、内核溶解時に溶解液のpHがタンパク質分解酵素の至適pHとなるように、内核又は溶解液にpH調整剤を配合しておくことが好ましい。また、内核中のタンパク質分解酵素は、1重量%以上20重量%以下とすることが好ましい。
【0032】
また、本発明は、
上記のCL洗浄用有核錠と、
溶解液と、
から構成されるCL洗浄用製剤、に関する。
【0033】
さらに、本発明は、
密閉容器内で、上記のCL洗浄用有核錠を溶解液に溶解させ、溶解液に洗浄対象であるCLが浸漬した状態のまま、上記有核錠が完全に溶解するまで静置することを特徴とするCL洗浄方法、に関する。
【発明の効果】
【0034】
本発明のCL洗浄用有核錠、CL洗浄用製剤又はCL洗浄方法によれば、就寝前に消毒容器内にCLをセットしておけば、起床時にすぐCLを着用可能であり、日常生活においてCLを簡易、かつ、確実に消毒することが可能となる。また、1種類の有核錠を溶解液に溶解させるだけで済むため、構成製剤の紛失事故も防止しうる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の有核錠の外観図である。
【図2】本発明のCL洗浄製剤の使用方法を説明する図面である。
【図3】界面活性剤の違いによる有効ヨウ素残量を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参酌しながら説明する。なお、本発明は、以下に限定されない。
【0037】
図1は、本発明の有核錠1の外観図である。右図は、左図のA−A断面図である。有核錠1は、外殻2と内核3とから構成されている。なお、有核錠1の形状及び寸法は特に限定されないが、CL(2枚セット)を1回洗浄するために必要な薬剤を含有すれば足りる。
【0038】
図2は、本発明のCL洗浄用製剤の使用方法を説明する図である。まず、レンズケース上部7にCL8をセットする(図2(a))。
【0039】
次に、有核錠パッケージ9から有核錠1を取り出し、レンズケース下部4に入れる。また、溶解液容器5から溶解液6を所定量レンズケース内に採取する(図2(b))。なお、レンズケース下部4には、採取すべき溶解液6の量を表示するための目盛を設けておくことが好ましい。
【0040】
次に、レンズケース下部4にレンズケース上部7を取り付ける(図2(c))。このとき、CL8全体が溶解液6に浸漬するように、溶解液6量を調整することが好ましい。
【0041】
この状態で4時間以上、静置する。有核錠1の外殻1は、炭酸塩及び有機酸による発泡効果(炭酸ガスによる発泡)により徐々に溶解液中に溶解し、溶解液6はヨウ素系殺菌剤によって徐々に黄色〜褐色に着色する。ヨウ素系殺菌剤及び界面活性剤は、発泡効果によって撹拌操作を全く行わなくても、均一に溶解液6中に溶解することができる。
【0042】
有核錠1の外殻は、5分未満で完全に溶解し、ヨウ素系殺菌剤によってCLが消毒されるように、打錠圧、崩壊剤分量等を調整することが好ましい。内核はヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等によって表面を被覆(遅延放出被覆)することにより、外殻が溶解しても、すぐには溶解しないようにすることもできる。これによって、ヨウ素系殺菌剤によるCLの消毒時間を十分に維持することが可能となる。また、ヨウ素系殺菌剤の濃度に応じて、内核が溶解し始めるまでの時間を調整することが好ましい。
【0043】
外殻が溶解すると内核が溶解し始める。内核にも炭酸塩及び有機酸が配合されているため、撹拌操作を行わなくても、配合成分が溶解液中に均一に溶解することができる。内核にはヨウ素系殺菌剤の中和剤が配合されているため、内核の溶解に伴ってヨウ素系殺菌剤は徐々に中和される。それに伴い、溶解液6は徐々に無色となる。
【0044】
内核の基本的機能は、中和剤の放出によるヨウ素系殺菌剤の中和(還元)である。しかし、さらに界面活性剤を配合することにより、CL表面のタンパク質、脂肪等の汚れを除去することが可能となる。なお、内核にタンパク質分解酵素をさらに配合することにより、CL表面に付着したタンパク質を効果的に除去することも可能となる。このとき、タンパク質分解酵素の至適pHとなるように、溶解液5のpHを調整するか、内核にpH調整剤を配合しておくことが好ましい。
【0045】
有核錠1の内核は、30分未満で完全に溶解し、ヨウ素系殺菌剤の中和及びCL表面の洗浄が完了するように、打錠圧、崩壊剤分量等を調整することが好ましい。洗浄操作後のCLは、レンズケース上部7から取り外し、そのまま着用することが可能である。ただし、内核に界面活性剤及び/又はタンパク質分解酵素を配合させる場合等には、洗浄操作後の溶解液6を捨てた後、レンズケース内で新しい溶解液を用いてCLをすすぐことが好ましい。
【0046】
CLは毎日消毒することが推奨されている。本発明のCL洗浄用製剤及びCL洗浄方法であれば、就寝前にレンズケース内に溶解液、有核錠及びCLをセットして静置しておくだけで、起床時にはCLの消毒及び洗浄が完了し、すぐに装着することができる。
【0047】
本発明のCL洗浄用製剤及びCL洗浄方法は、CL洗浄用有核錠を溶解させるための溶解液が必要である。溶解液は、100〜400mOsm程度の浸透圧を有することが好ましく、200〜300mOsm程度の浸透圧を有することがより好ましいが、その成分は特に限定されない。例えば、生理食塩水、リン酸水、ホウ酸水等のCL洗浄液として使用しうるものであれば、その種類は問わない。
【0048】
本発明のCL洗浄用有核錠及び/又は溶解液には、ヨウ素系殺菌剤の殺菌効果を妨げず、生体(眼球)及びCLの物性又は形状に対する何らの有意な影響を及ぼさない範囲において、必要に応じて緩衝剤、等張化剤、粘稠化剤等を含有させることができる。
【0049】
緩衝剤は、溶解液のpHを安定化する目的で使用される。緩衝剤としては、一般にCL用洗浄液又は眼科用製剤に用いられている緩衝剤を使用しうる。例えば、(1)リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム等のリン酸系緩衝剤;(2)ホウ酸、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸系緩衝剤;(3)トリスアミノメタンと希塩酸、トリスマレートと希カセイソーダ液等のトリス系緩衝剤;を使用することが好ましい。これら緩衝剤は、CL洗浄用有核剤を溶解液に溶解させたとき0.05〜1.0重量%の濃度範囲となるように、CL洗浄用有核錠及び/又は溶解液に配合することが好ましい。
【0050】
また、CL洗浄用有核剤を溶解液に溶解させたときにpH5〜8の範囲とすることが好ましい。pH5未満の酸性領域又はpH8超のアルカリ性領域では、眼刺激や眼障害を生じる可能性があるので避けるべきである。
【0051】
等張化剤は、溶解液の浸透圧を調整する目的で使用される。等張化剤としては、一般にCL用洗浄液又は眼科用製剤に用いられている等張化剤を使用しうる。例えば、(1)塩化ナトリウム、塩化カリウム又は塩化マグネシウム等のアルカリ又はアルカリ土類金属塩;(2)グルコース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、デキストラン等の糖質;を使用することが好ましい。
【0052】
これら等張化剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。これら等張化剤は、CL洗浄用有核剤を溶解液に溶解させたときに0.5〜5.0重量%の濃度範囲とすることが好ましい。また、等張化剤の濃度を調整することにより、CL洗浄用有核剤を溶解液に溶解させたときの浸透圧を100〜400mOsm程度、より好ましくは200〜300mOsm程度に調整することすることが好ましい。
【0053】
粘稠化剤は、溶解液の粘度を調整する目的で使用される。粘稠化剤としては、一般にCL用洗浄液又は眼科用製剤に用いられている粘稠化剤を使用しうる。例えば、(1)グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等のポリオール類;(2)トレハロース、シュクロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の糖質類;を使用することが好ましい。これらの粘稠剤の濃度は、特に限定されないが、CL洗浄用有核剤を溶解液に溶解させたときに0.05〜5.0重量%の範囲とすることが好ましい。
【0054】
<有効ヨウ素残存率の測定>
50mLのバイアルにポビドンヨード粉末3(g)、表1に示した界面活性剤72(mg)、及び酒石酸360(mg)を混合したものを入れ、これを密閉して40℃の恒温槽中で保管した。そして、0,3,7,15日後のポビドンヨード粉末中の有効ヨウ素残存率を測定した。
【0055】
【表1】

【0056】
有効ヨウ素残存率(%)は、日本薬局方「ポビドンヨード」の項記載の有効ヨウ素定量法に従って、保存開始前及び保存後の有効ヨウ素量を定量することにより算出した。図3は、有効ヨウ素残存率の測定結果を示すグラフである。ポリエチレングリコール4000は、他の界面活性剤と比較して有効ヨウ素残存率の低下が大きかった。ラウロイルサルコシンナトリウム、ポリエチレングリコール6000、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコールは、いずれも15日経過後の有効ヨウ素残存率が100%に近く、ステアリン酸ポリオキシル40は90%程度となった。
【0057】
<有核錠の製造>
[実施例1〜4]
表2に示す成分を含む有核錠を製造した。具体的な製造方法は、以下に説明するとおりである。なお、表2における配合分量は、1錠あたりの配合量を示している。
【0058】
【表2】

【0059】
まず、内核の成分のうち、乾燥炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム(一部)、D−マンニトール(一部)、ビオプラーゼコンク(一般名称=ズブチリシン、ナガセケムテックス社製)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(一部)を採取し、粒状に製した。この白色顆粒を第一粒とする。
【0060】
次に、内核の成分のうち、酒石酸、塩化ナトリウム(残部)、D−マンニトール(残部)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(残部)を採取し、粒状に製した。この白色顆粒を第二粒とする。
【0061】
第一粒及び第二粒をそれぞれ所定量混合し、日本薬局方の製剤総則の項に準じて、裸錠を製した(1錠あたり66mg)。そして、この裸錠を、ヒプロメロースを定法によって被覆(遅延放出被覆)し、内核を製した。
【0062】
別途、外殻の成分であるポビドンヨード、乾燥炭酸ナトリウム、酒石酸、D−マンニトールを採取し、マクロゴール6000(日本薬局方品)を加えながら粒状に製した。この微黄褐色顆粒を第三粒とする。
【0063】
有核打錠機を用い、内核及び第三粒を有核錠として打錠し、実施例1〜4の有核錠を製造した。これら有核錠は、溶解液としてホウ酸緩衝液8mLを用いた場合、いずれも3分で外殻が完全に溶解した。また、外殻溶解後、いずれも15分で内核が完全に溶解してポビドンヨードが中和され、溶解液が無色透明となっていた。
【0064】
[実施例5]
外殻の滑沢剤としてポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコールを同量使用する以外、すべて実施例1と同じ操作を行い、有核錠の製造を試みた。有核錠の打錠時にスティッキング現象がときどき起こったため、有核錠を大量生産するには若干支障があった。
【0065】
[実施例6]
外殻の滑沢剤としてステアリン酸ポリオキシル40を同量使用する以外、すべて実施例1と同じ操作を行い、有核錠の製造を試みた。有核錠の打錠時にスティッキング現象がときどき起こったため、有核錠を大量生産するには若干支障があった。
【0066】
[実施例7]
外殻の滑沢剤としてラウロイルサルコシンナトリウムを同量使用する以外、すべて実施例1と同じ操作を行い、有核錠の製造を試みた。有核錠の打錠時にスティッキング現象がときどき起こったため、有核錠を大量生産するには若干支障があった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のCL洗浄用有核錠及びそれを含むCL洗浄用製剤、並びにCL洗浄方法は、CLの洗浄用製剤及び洗浄方法として有用である。
【符号の説明】
【0068】
1:有核錠
2:外殻
3:内核
4:レンズケース下部
5:溶解液容器
6:溶解液
7:レンズケース上部
8:コンタクトレンズ
9:有核錠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素系殺菌剤、炭酸塩及び有機酸を含む外殻と、
中和剤、炭酸塩及び有機酸を含む内核と、
から構成される有核錠であることを特徴とするコンタクトレンズ洗浄用有核錠。
【請求項2】
前記内核が遅延放出被覆されている、請求項1に記載のコンタクトレンズ洗浄用有核錠。
【請求項3】
前記外殻が滑沢剤を含む、請求項1又は2に記載のコンタクトレンズ洗浄用有核錠。
【請求項4】
前記滑沢剤が界面活性剤である、請求項1乃至3に記載のコンタクトレンズ洗浄用有核錠。
【請求項5】
前記ヨウ素系殺菌剤がポビドンヨードである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ洗浄用有核錠。
【請求項6】
前記界面活性剤が数平均分子量2000あたり1未満の水酸基を有する界面活性剤である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ洗浄用有核錠。
【請求項7】
前記数平均分子量2000あたり1未満の水酸基を有する界面活性剤がポリエチレングリコール6000である、請求項6に記載のコンタクトレンズ洗浄用有核錠。
【請求項8】
前記内核がさらに界面活性剤及び/又はタンパク質分解酵素を含む、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ洗浄用有核錠。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ洗浄用有核錠と、
溶解液と、
から構成されるコンタクトレンズ洗浄用製剤。
【請求項10】
密閉容器内で、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のコンタクトレンズ洗浄用有核錠を溶解液に溶解させつつ、
前記溶解液に洗浄対象であるコンタクトレンズを浸漬させた状態で、前記有核錠が完全に溶解するまで静置することを特徴とするコンタクトレンズ洗浄方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−145615(P2011−145615A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8387(P2010−8387)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名 第63回日本臨床眼科学会 主催者名 財団法人 日本眼科学会 公開日 平成21年10月9日〜12日
【出願人】(595149793)株式会社オフテクス (8)
【Fターム(参考)】