説明

コンタクトレンズ製品

本発明は、初期挿入快適さを有するだけでなく、約6時間を超える装用にも快適である改良されたコンタクトレンズ製品に関する。本発明は、ヒドロゲルレンズを、その中に配合された二つ以上の浸出可能なポリマー潤滑剤とともに、比較的低分子量のポリエチレングリコール(PEG)及び粘度増大性親水性ポリマーを含む比較的粘ちょうなパッケージング溶液中にパッケージングし、貯蔵することによって達成される。本発明はまた、本発明のコンタクトレンズ製品を製造する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期挿入快適さを有するだけでなく、約6時間を超える装用にも快適である改良されたコンタクトレンズ製品に関する。本発明はまた、本発明のコンタクトレンズ製品を製造する方法を提供する。
【0002】
コンタクトレンズ産業で長らく感じられているある必要性は、ユーザが快適に装用することができるコンタクトレンズを提供することである。一般に、コンタクトレンズユーザが訴える最大の問題は、初期不快感(すなわち、レンズ挿入直後)、ドライアイ状態及び/又は乾燥した環境での作業もしくは生活に伴う不快感ならびに1日の終わりの快適さである。この快適さの問題に対処するためにいくつかの手法が開発されている。
【0003】
たとえば、問題のいくつか、たとえば初期不快感、患者がレンズに慣れるまでに要する比較的長い適応期間(1、2週間)及び/又は不適切なフィット(レンズがずれたり、非常に不快であったりする)を緩和するためのソフトコンタクトレンズが開発されている。これは、レンズの比較的柔らかな表面によるだけでなく、異なる眼に対して形状をいくぶん変化させることを許すレンズの可撓性による。
【0004】
コンタクトレンズとの眼の快適さを改善するために広く使用されている手法の一つが、たとえば装用者の初期不快感、ドライアイ効果から生じる不快感又は1日の終わりの不快感のある程度の軽減を提供するために、レンズが装用されているときに潤滑剤の点眼液を装用者の眼に直接適用する手法である。しかし、この手法には避けられない欠点がある。たとえば、点眼液は通常、レンズ装用者が不快感を感じるようになってはじめて適用され、そのため、不快感が生じることを防ぐものではない。さらには、ユーザは、不快感を緩和するために簡便に点眼液にアクセスする必要があり、したがって、点眼液の小瓶を携帯しなければならない。これは、レンズ装用者にとってコスト及び不便さを増す。
【0005】
最近、初期不快感及び他の徴候をいくらか緩和するために、界面活性剤、潤滑剤又は他の添加物がレンズパッケージング溶液に加えられている(たとえば、米国特許第5,882,687号、第5,942,558号、第6,348,507号、第6,440,366号、第6,531,432号及び第6,699,435号ならびにPCT出願公開公報WO9720019及びWO2006/088758を参照)。しかし、そのような手法は不快感の一部の形態をいくらか緩和することはできるが、そのすべてを、特に1日の終わりの快適さ、ドライアイ徴候及び/又はコンタクトレンズ誘発ドライアイ徴候を緩和することはできない。
【0006】
加えて、一部の不快感徴候を緩和するためのコンタクトレンズを製造するために、浸出可能な潤滑剤がレンズ配合物に配合されている(たとえば、米国特許第6,822,016号及び第6,367,929号、米国特許出願公開公報第2006/0251696A1号を参照すること)。上記特許及び特許出願に開示されている方法は、一部の不快感徴候をいくらかは緩和することができるが、すべての徴候が解消及び/又は軽減されるわけではない。
【0007】
したがって、初期挿入快適さを有するだけでなく、約6時間を超える装用にも快適であるヒドロゲルソフトコンタクトレンズの必要性がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、一つの態様において、パッケージング溶液及びパッケージング溶液中に浸漬されたソフトヒドロゲルコンタクトレンズを含む、封止され、滅菌されたパッケージを含む眼科用製品であって、パッケージング溶液が、25℃で約1.5センチポアズ〜約20センチポアズ、好ましくは約2.0センチポアズ〜約15センチポアズの粘度をパッケージング溶液に提供するのに十分な量のヒドロキシル含有粘度増大性ポリマー、2000以下の分子量を有するポリエチレングリコール及び約6.0〜8.0のpHを溶液に提供するのに十分な量の一つ以上の緩衝剤を含み、約200〜約450mOsm/kgのオスモル濃度を有するものである眼科用製品を提供する。一つの好ましい実施態様において、ヒドロゲルコンタクトレンズは、ポリマーマトリックス、第一の浸出可能なポリマー潤滑剤及び第二の浸出可能なポリマー潤滑剤を含み、第二の浸出可能なポリマー潤滑剤の平均分子量が第一の浸出可能なポリマー潤滑剤の平均分子量の少なくとも約3倍である。
【0009】
本発明は、もう一つの態様において、装用者の初期不快感及び1日の終わりの不快感を緩和することができるソフトコンタクトレンズを製造する方法を提供する。本発明の方法は、a)ヒドロゲルレンズ配合物を型の中で硬化させてヒドロゲルコンタクトレンズを成形する工程(ここで、レンズ配合物は、第一の浸出可能なポリマー潤滑剤及び第二の浸出可能なポリマー潤滑剤を含み、第一及び第二の浸出可能なポリマー潤滑剤は、コンタクトレンズのマトリックス中に非共有結合的に組み込まれ、分散し、第二の浸出可能なポリマー潤滑剤は、分子量又はポリマー組成において第一の浸出可能なポリマー潤滑剤とは異なる)、b)ヒドロゲルコンタクトレンズを、パッケージング溶液を含有する容器中にパッケージングする工程(ここで、パッケージング溶液は、25℃で約1.5センチポアズ〜約20センチポアズ、好ましくは25℃で約2.0センチポアズ〜約15センチポアズの粘度をパッケージング溶液に提供するのに十分な量の非イオン性粘度増大性ポリマー及び約2,000ダルトン未満の分子量を有する非イオン性界面活性剤を含む)、及びc)ヒドロゲルコンタクトレンズをパッケージ中で滅菌してソフトコンタクトレンズを得る工程を含む。
【0010】
本発明は、さらなる態様において、第一の浸出可能なポリマー潤滑剤及び第二の浸出可能なポリマー潤滑剤を含むポリマーマトリックスを含み、第二の浸出可能なポリマー潤滑剤が、第一の浸出可能なポリマー潤滑剤の平均分子量の少なくとも約3倍である平均分子量を有するものである1日使い捨てコンタクトレンズを提供する。
【0011】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、好ましい実施態様の以下の説明から明らかになる。詳細な説明は、本発明を例示するものであり、請求の範囲及びその均等物によって定義される本発明の範囲を限定するものではない。当業者には自明であるように、開示の新規な概念の真意及び範囲を逸することなく、本発明の多くの変形及び改変を実現することができる。
【0012】
発明の詳細な説明
断りない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使用される術語及び実験手順は当該技術で周知であり、一般に使用されている。これらの手順には、当該技術及び種々の一般的参考文献で提供されているような従来法が使用される。ある語が単数形で記載されている場合、本発明者らはその語の複数形をも考慮している。本明細書で使用される術語及び以下に記載する実験手順は、当該技術で周知であり、一般に使用されているものである。本開示を通して使用される以下の用語は、断りない限り、以下の意味を有するものと理解されなければならない。
【0013】
「コンタクトレンズ」とは、装用者の眼の上又は中に配置することができる構造物をいう。コンタクトレンズは、使用者の視力を矯正、改善又は変化させることができるが、必ずしもそうでなくてもよい。コンタクトレンズは、当該技術で公知である又はのちに開発される適切な材料でできていることができ、ソフトレンズ、ハードレンズ又はハイブリッドレンズであることができる。「シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ」とは、シリコーンヒドロゲル材料を含むコンタクトレンズをいう。
【0014】
「ヒドロゲル」とは、完全に水和した状態で少なくとも10重量%の水を吸収することができるポリマー材料をいう。ヒドロゲル材料は、さらなるモノマー及び/又はマクロマー/プレポリマーの存在下又は非存在下における少なくとも一つの親水性モノマーの重合又は共重合によって、又はプレポリマーの架橋によって得られる。
【0015】
「シリコーンヒドロゲル」とは、少なくとも一つのシリコーン含有ビニルモノマー又は少なくとも一つのシリコーン含有マクロマー又はシリコーン含有プレポリマーを含む重合性組成物の共重合によって得られるヒドロゲルをいう。
【0016】
「モノマー」とは、化学線的又は熱的に重合させることができる低分子量化合物をいう。低分子量とは、一般に、700ダルトン未満の平均分子量をいう。本発明にしたがって、モノマーは、ビニルモノマー又は二つのチオール基を含む化合物であることができる。二つのチオール基を含む化合物は、ビニル基を有するモノマーとのチオール−エン段階的成長ラジカル重合に関与してポリマーを形成することができる。段階的成長ラジカル重合は、2006年12月13日出願の、所有者が同じである同時係属中の米国特許出願第60/869,812号(「Production of Ophthalmic Devices Based on Photo-induced Step Growth Polymerization」と題する。参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、コンタクトレンズの製造に使用することができる。
【0017】
本明細書で使用する「ビニルモノマー」とは、エチレン性不飽和基を有し、化学線的又は熱的に重合させることができる低分子量化合物をいう。低分子量とは、一般に、700ダルトン未満の平均分子量をいう。
【0018】
「オレフィン性不飽和基」又は「エチレン性不飽和基」とは、本明細書中、広い意味で使用され、少なくとも一つの>C=C<基を含有する基を包含することを意図する。例示的なエチレン性不飽和基としては、非限定的に、アクリロイル、メタクリロイル、アリル、ビニル、スチレニル又は他のC=C含有基がある。
【0019】
重合性組成物又は材料の硬化又は重合に関して本明細書で使用する「化学線的」とは、硬化(たとえば架橋及び/又は重合)が化学線照射、たとえばUV線照射、電離放射線(たとえばγ線又はX線照射)、マイクロ波照射などによって実施されることをいう。熱硬化又は化学線硬化の方法は当業者には周知である。
【0020】
本明細書で使用する「流体」とは、液体のように流れることができる物質をいう。
【0021】
「親水性モノマー」とは、化学線的又は熱的に重合して、水溶性である、又は水を少なくとも10重量%吸収することができるポリマーを形成することができるモノマーをいう。
【0022】
本明細書で使用する「疎水性モノマー」とは、化学線的又は熱的に重合して、水不溶性であり、水を10重量%未満しか吸収することができないポリマーを形成するモノマーをいう。
【0023】
「マクロマー」とは、化学線的又は熱的に重合及び/又は架橋させることができる中及び高分子量化合物をいう。中及び高分子量とは、一般に、700ダルトンを超える平均分子量をいう。本発明にしたがって、マクロマーは、フリーラジカル連鎖成長重合又はチオール−エン段階的成長ラジカル重合に関与することができる一つ以上のエチレン性不飽和基及び/又は一つ以上のチオール基を含む。好ましくは、マクロマーは、エチレン性不飽和基を含み、化学線的又は熱的に重合させることができる。
【0024】
「プレポリマー」とは、架橋性基を含み、化学線的又は熱的に硬化(たとえば架橋及び/又は重合)して、開始ポリマーよりもずっと高い分子量を有する架橋及び/又は重合ポリマーを得ることができる開始ポリマーをいう。本発明にしたがって、プレポリマーは、フリーラジカル連鎖成長重合又はチオール−エン段階的成長ラジカル重合に関与することができる一つ以上のエチレン性不飽和基及び/又は一つ以上のチオール基を含む。
【0025】
「シリコーン含有プレポリマー」とは、シリコーンを含み、化学線的又は熱的に硬化して、開始ポリマー自体よりもずっと高い分子量を有する架橋ポリマーを得ることができる開始ポリマーをいう。
【0026】
「ポリマー」とは、一つ以上のモノマー又はマクロマーを重合させることによって、又は一つ以上のプレポリマーを架橋させることによって形成される物質をいう。
a.本明細書で使用されるポリマー材料(モノマー又はマクロマー材料を含む)の「分子量」とは、断りない限り、又は試験条件がそうではないことを指示しない限り、数平均分子量をいう。
b.レンズに関していう「視認用色付け」とは、ユーザがレンズ貯蔵、消毒又は洗浄容器内の透明な溶液中のレンズを容易に見つけることを可能にするためのレンズの染色(又は着色)をいう。レンズの視認用色付けに染料及び/又は顔料を使用することができるということは当該技術で周知である。
【0027】
「染料」とは、溶媒に可溶性であり、色を付与するために使用される物質をいう。染料は、一般的には半透明であり、光を吸収はするが、散乱はさせない。本発明では、適切な生体適合性染料を使用することができる。
【0028】
「顔料」とは、それが不溶性である液体中に懸濁した粉末状物質をいう。顔料は、蛍光顔料、発光顔料、真珠光沢顔料又は従来の顔料であることができる。適切な顔料を使用することができるが、顔料は耐熱性であり、非毒性であり、水溶液に不溶性であることが好ましい。
【0029】
「光開始剤」とは、光の使用によってラジカル架橋/重合反応を開始させる化学物質をいう。適切な光開始剤としては、非限定的に、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、Darocure(登録商標)タイプ及びIrgacure(登録商標)タイプ、好ましくはDarocure(登録商標)1173及びIrgacure(登録商標)2959がある。
【0030】
「熱開始剤」とは、熱エネルギーの使用によってラジカル架橋/重合反応を開始させる化学物質をいう。適切な熱開始剤の例は、非限定的に、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、過酸化物、たとえば過酸化ベンゾイルなどを含む。好ましくは、熱開始剤は2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)である。
【0031】
本明細書で使用する「相互貫入ネットワーク(IPN)」とは、広義には、二つ以上のポリマーからなり、その少なくとも一方が他方の存在下で合成及び/又は架橋されている密接なネットワークをいう。IPNを調製する技術は当業者には公知である。一般的な手順に関しては、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,536,554号、第4,983,702号、第5,087,392号及び第5,656,210号を参照すること。重合は一般に、およそ室温〜約145℃の範囲の温度で実施される。
【0032】
「化学線の空間的限定」とは、光線の形態のエネルギー放射をたとえばマスク又はスクリーン又はそれらの組み合わせによって指向させて、明確に画定された周辺境界を有する区域に空間限定的に衝突させる動作又はプロセスをいう。たとえば、UV線の空間的限定は、米国特許第6,627,124号(参照により本明細書に組み込まれる)の図1〜9に示すような、UV不透過性領域(隠蔽領域)によって包囲された透明な領域又は開放領域(非隠蔽領域)を有するマスク又はスクリーンを使用することによって達成することができる。非隠蔽領域は、非隠蔽領域との明確に画定された周辺境界を有する。得られるコンタクトレンズの二つの反対面(前面及び後面)は二つの成形面によって画定され、そのエッジは、型の壁によってではなく、化学線照射の空間的限定によって画定される。一般に、二つの成形面及び空間的限定の明確に画定された周辺境界の投影によって閉じ込められる領域内の流体組成物のみが架橋し、空間的限定の周辺境界の外及びすぐ周囲の流体プレポリマー組成物は架橋せず、それにより、コンタクトレンズのエッジは、化学線の空間的限定の寸法及び形状の滑らかかつ正確な複製になるはずである。架橋に使用されるエネルギーは、放射線エネルギー、特にUV線、ガンマ線、電子放射線又は熱放射線であり、放射線エネルギーは、一方で良好な制限を達成し、他方ではエネルギーの効率的使用を達成するために、好ましくは実質的に平行なビームの形態にある。そのようなコンタクトレンズ製造方法は、参照により本明細書に組み込まれる、1994年7月14日出願の米国特許出願第08/274,942号、2003年12月10日出願の第10/732,566号、2003年11月25日出願の第10/721,913号及び米国特許第6,627,124号に記載されている。
【0033】
「ヒドロゲルレンズ形成配合物」又は「ヒドロゲルレンズ形成材料」とは、架橋/重合ポリマー材料を得るために熱的又は化学線的に硬化(すなわち重合及び/又は架橋)させることができる重合性組成物をいう。レンズ形成材料は当業者には周知である。一般に、レンズ形成材料は、当業者に公知であるような重合性/架橋性成分、たとえばモノマー、マクロマー、プレポリマー又はそれらの組み合わせを含む。レンズ形成材料はさらに、他の成分、たとえば開始剤(たとえば光開始剤又は熱開始剤)、視認用色付け剤、UV遮断剤、増感剤、抗菌剤(たとえば銀ナノ粒子)、潤滑/湿潤剤(たとえば上記のもの)などを含むことができる。
【0034】
本発明にしたがって、パッケージング溶液は眼科的に安全である。パッケージング溶液に関して「眼科的に安全」とは、その溶液に浸漬されたコンタクトレンズが、すすぎなしで直接眼に入れても安全である、すなわち、その溶液がコンタクトレンズを介する眼との毎日の接触又はコンタクトレンズを使用する眼の表面(したがって眼の接触)への持ち越し汚染に関して安全であり、十分に快適であることをいう。眼科的に安全な溶液は、眼と適合性である張度及びpHを有し、刺激性ではなく、国際ISO規格及び米FDA規則にしたがって非細胞毒性である材料及びその量を含む。
【0035】
「眼と適合性」とは、眼を有意に損傷することなく、また、使用者が有意な不快感を感じることなく、長期間眼と密接することができる溶液をいう。
【0036】
「ポリエチレングリコールの酸化分解への感受性の低下」とは、滅菌処理を受けた後のα−オキソ多酸又はその塩を含有する溶液中のポリエチレングリコールの酸化分解に対する感受性が低下していることをいう(安定化されたポリ(オキシアルキレン)含有ポリマー材料中の検出可能なギ酸及び場合によっては他の分解副生成物の量が、α−オキソ酸又はその塩なしの溶液中で検出される量の80%以下、好ましくは65%以下、より好ましくは50%以下であることを特徴とする)。PEG含有ポリマー材料の酸化分解に由来するギ酸及び他の副生成物を測定する方法は、所有者が同じである同時係属中の特許出願(本明細書に組み込まれる米国特許出願公開公報第2004/0116564A1号)に記載されている。あるいはまた、当業者は、PEG含有ポリマー材料の酸化分解生成物を分析する方法を知っている。
【0037】
本明細書で使用される「浸出可能なポリマー潤滑剤」とは、コンタクトレンズのポリマーマトリックスと共有結合してはいないが、それと会合している、又はその中に閉じ込められており、コンタクトレンズ及び/又は眼の表面湿潤性を高める、又はコンタクトレンズ表面の摩擦特性を低下させることができる親水性ポリマーをいう。
【0038】
本発明は一般に、レンズ装用者の初期不快感を緩和し、6時間を超える長期間にわたり装用者に快適さを提供することができるヒドロゲルコンタクトレンズに関する。本発明は、一部には、ヒドロゲルレンズを、その中に配合された二つ以上の浸出可能なポリマー潤滑剤とともに、比較的低分子量のポリエチレングリコール(PEG)及び粘度増大性親水性ポリマー(たとえばポリビニルアルコール(PVA)もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)又は類似したヒドロキシル含有ポリマー)を含む比較的粘ちょうなパッケージング溶液中にパッケージングし、貯蔵することにより、現在利用可能なコンタクトレンズの大部分に伴う不快感問題を緩和することができるという発見に基づく。
【0039】
本発明者らは特定の理論によって束縛されることを望まないが、低分子量PEG及びHPMC(又はPVA又はヒドロキシル基を有する高分子量非イオン性親水性ポリマー)が、初期(レンズ挿入時)及びレンズ装用の最初の数時間の快適さに対して相乗効果を及ぼすことができると考えられる。比較的粘ちょうなレンズパッケージング溶液にヒドロゲルレンズを浸漬することにより、HPMC(又はPVA又はヒドロキシル基を有する高分子量非イオン性親水性ポリマー)及び低分子量PEGで構成されると考えられる粘ちょうなフィルムをレンズ表面に一時的に形成することができ、このフィルムが、特に初期不快感を緩和するためのクッションとして働くことができ、また、レンズパッケージング溶液中に放出する傾向のある浸出可能なポリマー潤滑剤に対するバリヤとして、また、眼の環境中への浸出可能なポリマー潤滑剤の爆発的放出を提供することができる浸出可能なポリマー潤滑剤の一時的な溜めとして機能することができる。低分子量PEGが、HPMC(又はPVA又はヒドロキシル基を有する高分子量非イオン性親水性ポリマー)とともに、表面張力及びレンズ表面の粘ちょうなフィルムの摩擦を減らし、それにより、装用者の快適さを高めることができる。
【0040】
また、二つ以上のポリマー潤滑剤の平均分子量が互いに非常に大きな程度に異なる場合、それらの放出が異なる時間スケールで起こることができると考えられる。低分子量の潤滑剤がはじめに放出し、高い方の分子量の潤滑剤がその後に放出する。二つの潤滑剤の間で少なくとも約3倍の分子量差を有することにより、高い方の分子量の潤滑剤が約6時間の装用後に眼の中に放出することを保証することができる。本発明のヒドロゲルコンタクトレンズは、たとえば約5年もの長期にわたりパッケージング溶液中に貯蔵されていた後でさえ、延長された装用者快適さ、特に1日の終わりの快適さを提供することができる。
【0041】
本発明は、一つの態様において、パッケージング溶液及びパッケージング溶液中に浸漬されたソフトヒドロゲルコンタクトレンズを含む、封止され、滅菌されたパッケージを含む眼科用製品であって、パッケージング溶液が、25℃で約1.5センチポアズ〜約20センチポアズの粘度をパッケージング溶液に提供するのに十分な量のヒドロキシル含有粘度増大性ポリマー、2000以下の分子量を有するポリエチレングリコール及び約6.0〜8.0のpHを溶液に提供するのに十分な量の一つ以上の緩衝剤を含み、約200〜約450mOsm/kgのオスモル濃度を有するものである眼科用製品を提供する。一つの好ましい実施態様において、ヒドロゲルコンタクトレンズは、ポリマーマトリックス、第一の浸出可能なポリマー潤滑剤及び第二の浸出可能なポリマー潤滑剤を含み、第二の浸出可能なポリマー潤滑剤は、分子量又はポリマー組成において第一の浸出可能なポリマー潤滑剤とは異なる(すなわち、異なるモノマー単位でできている、又は同じモノマー単位でできているが割合が異なる)。
【0042】
レンズパッケージ(又は容器)は、ソフトコンタクトレンズをオートクレーブ処理し、貯蔵する技術の当業者には周知である。いかなるレンズパッケージを本発明で使用することもできる。好ましくは、レンズパッケージは、ベース及びカバーを含むブリスタパッケージであり、カバーはベースに脱着可能に封止され、ベースは、無菌パッケージング溶液及びコンタクトレンズを受け入れるためのキャビティを含む。
【0043】
レンズは、ユーザに分配される前に、個別のパッケージ中にパッケージングされ、封止され、滅菌される(たとえばオートクレーブにより)。当業者は、レンズパッケージを封止し、滅菌する方法を十分に理解するであろう。
【0044】
本発明にしたがって、ソフトヒドロゲルコンタクトレンズは、従来のヒドロゲルコンタクトレンズ(すなわち、非シリコーンヒドロゲルレンズ)又はシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであることができる。
【0045】
本発明のパッケージング溶液は、眼科的に適合性であり、コンタクトレンズの貯蔵に使用される任意の水性溶液であることができる。本発明のパッケージング溶液は、食塩水、緩衝溶液及び脱イオン水であることができる。
【0046】
本発明の溶液は、ヒドロキシル含有粘度増大性ポリマーを含有する。粘度増大性ポリマーは、好ましくは非イオン性である。溶液粘度を高めると、コンタクトレンズの快適な装用を促進することができるフィルムがレンズ上に得られる。粘度増大性成分はまた、挿入中に眼の表面に対する衝撃を緩衝するように働くことができ、また、眼の刺激感を緩和するように作用する。
【0047】
好ましい粘度増大性ポリマーとしては、非限定的に、水溶性セルロース誘導ポリマー、水溶性ポリビニルアルコール(PVA)、約2000を超える(10,000,000ダルトンまでの)分子量を有する高分子量ポリ(エチレンオキシド)、少なくとも一つのビニルラクタムと一つ以上のヒドロキシル含有モノマーとのコポリマーなどがある。水溶性セルロース誘導ポリマーがもっとも好ましい粘度増大性ポリマーである。有用なセルロース誘導ポリマーの例は、非限定的に、セルロースエーテルを含む。
【0048】
例示的な好ましいセルロースエーテルは、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)又はそれらの混合物である。より好ましくは、セルロースエーテルは、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びそれらの混合物である。セルロースエーテルは、パッケージング溶液の全量に基づいて約0.01重量%〜約5重量%、好ましくは約0.05重量%〜約3重量%、さらに好ましくは約0.1重量%〜約1重量%の量で組成物に含まれる。
【0049】
場合によっては、他の粘度増大性ポリマー、たとえばコポリマーを含むポリビニルピロリドンポリマーを溶液に加えることもできることが理解される。
【0050】
本発明のパッケージング溶液は、25℃で1.5センチポアズ〜約20センチポアズ、好ましくは25℃で約2.0センチポアズ〜約15センチポアズ、より好ましくは25℃で約2.0センチポアズ〜約8センチポアズの粘度を有する。
【0051】
本発明にしたがって、パッケージング溶液は、2000以下、好ましくは1000以下、さらに好ましくは600以下、もっとも好ましくは約100〜約500ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールを含む。
【0052】
本発明の好ましい実施態様において、パッケージング溶液は、パッケージング溶液中のポリエチレングリコールの酸化分解への感受性を低下させるのに十分な量のα−オキソ多酸又はその塩を含む。所有者が同じである同時係属中の特許出願(本明細書に組み込まれる米国特許出願公開公報第2004/0116564A1号)は、オキソ多酸又はその塩がPEG含有ポリマー材料の酸化分解への感受性を低下させることができることを開示している。
【0053】
例示的なα−オキソ酸又はその生体適合性の塩としては、非限定的に、クエン酸、2−ケトグルタル酸もしくはリンゴ酸又はそれらの生体適合性(好ましくは眼科的に適合性)の塩がある。より好ましくは、α−オキソ多酸は、クエン酸もしくはリンゴ酸又はそれらの生体適合性(好ましくは眼科的に適合性)の塩(たとえばナトリウム塩、カリウム塩など)である。
【0054】
本発明の溶液は好ましくは緩衝剤を含有する。緩衝剤は、pHを好ましくは所望の範囲、たとえば約6〜約8の生理学的に許容可能な範囲に維持する。生理学的に適合性の公知の緩衝剤を使用することができる。本発明のコンタクトレンズケア組成物の成分として適切な緩衝剤は当業者に公知である。例は、ホウ酸、ホウ酸塩、たとえばホウ酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸塩、たとえばクエン酸カリウム、炭酸水素塩、たとえば炭酸水素ナトリウム、TRIS(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)、ビス−トリス(ビス(2−ヒドロキシエチル)−イミノ−トリス−(ヒドロキシメチル)−メタン)、ビス−アミノポリオール、トリエタノールアミン、ACES(N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS(3−[N−モルホリノ]−プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン−N,N′−ビス(2−エタンスルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)、それらの塩、リン酸緩衝剤、たとえばNa2HPO4、NaH2PO4及びKH2PO4又はそれらの混合物である。好ましいビス−アミノポリオールは、1,3−ビス(トリス[ヒドロキシメチル]−メチルアミノ)プロパン(ビスTRISプロパン)である。各緩衝剤の量は、約6.0〜約8.0の組成物pHを達成する効果を発揮するために必要な量である。一般に、0.001重量%〜2重量%、好ましくは0.01重量%〜1重量%、もっとも好ましくは約0.05重量%〜約0.30重量%の量で含まれる。
【0055】
本発明の溶液は、好ましくは、涙液と等張性であるようなやり方で調合される。涙液と等張性である溶液とは、一般に、濃度が0.9%塩化ナトリウム溶液の濃度(308mOsm/kg)に一致する溶液であると理解される。所望ならば、この濃度の逸脱は可能である。
【0056】
涙液との等張性又は他の所望の張度は、張度に影響する有機又は無機物質を加えることによって調節することができる。眼に許容可能な適切な等張化剤としては、非限定的に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセロール、プロピレングリコール、ポリオール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール及びそれらの混合物がある。好ましくは、溶液の張度の大部分は、非ハロゲン化物含有電解質(たとえば炭酸水素ナトリウム)及び非電解化合物からなる群より選択される一つ又は複数の化合物によって提供される。溶液の張度は、一般には約200〜約450ミリオスモル(mOsm)、好ましくは約250〜350mOsmの範囲になるように調節される。
【0057】
本発明にしたがって、溶液はさらに、ムチン様物質、眼科的に有益な物質及び/又は界面活性剤を含むことができる。
【0058】
例示的なムチン様物質としては、非限定的に、ポリグリコール酸、ポリラクチドなどがある。ムチン様物質は、ドライアイ症候群を治療するために、長期間かけて眼の表面に連続的に徐放させることができるゲスト材料として使用することができる。ムチン様物質は、好ましくは、有効量で含まれる。
【0059】
例示的な眼科的に有益な物質としては、非限定的に、2−ピロリドン−5−カルボン酸(PCA)、アミノ酸(たとえばタウリン、グリシンなど)、α−ヒドロキシ酸(たとえばグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、マンデル酸及びクエン酸ならびにそれらの塩など)、リノール酸及びγ−リノール酸ならびにビタミン(たとえばB5、A、B6など)がある。
【0060】
界面活性剤は、実質的に、非イオン性、アニオン性及び両性の界面活性剤を含む、眼に許容可能な任意の界面活性剤であることができる。好ましい界面活性剤の例は、非限定的に、ポロキサマー(たとえばPluronic(登録商標)F108、F88、F68、F68LF、F127、F87、F77、P85、P75、P104及びP84)、ポロアミン(たとえばTetronic(登録商標)707、1107及び1307)、脂肪酸のポリエチレングリコールエステル(たとえばTween(登録商標)20、Tween(登録商標)80)、C12〜C18アルカンのポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンエーテル(たとえばBrij(登録商標)35)、ポリオキシエチレンステアレート(Myrj(登録商標)52)、ポリオキシエチレンプロピレングリコールステアレート(Atlas(登録商標)G2612)ならびに商品名Mirataine(登録商標)及びMiranol(登録商標)としての両性界面活性剤を含む。
【0061】
一つの好ましい実施態様において、ヒドロゲルコンタクトレンズは、ポリマーマトリックス、第一の浸出可能なポリマー潤滑剤及び第二の浸出可能なポリマー潤滑剤を含み、第二の浸出可能なポリマー潤滑剤は、分子量又はポリマー組成において第一の浸出可能なポリマー潤滑剤とは異なる。より好ましくは、第二の浸出可能なポリマー潤滑剤の平均分子量は第一の浸出可能なポリマー潤滑剤の平均分子量の少なくとも約3倍である。
【0062】
レンズは、当業者に公知の方法にしたがって、異なる分子量を有する二つ以上の非架橋性親水性ポリマー(すなわち浸出可能なポリマー潤滑剤)を含むヒドロゲルレンズ形成配合物から調製することができる。
【0063】
本発明にしたがって、ヒドロゲルレンズ形成配合物(又は重合性流体組成物)は、溶液又は無溶剤液体又は60℃未満の温度で溶融体であることができる。
【0064】
重合性流体組成物が溶液である場合、それは、少なくとも一つの重合性/架橋性成分(たとえば一つ以上のモノマー、一つ以上のマクロマー及び/又は一つ以上のプレポリマー)及び他すべての所望の成分を当業者に公知の適切な溶媒に溶解させることによって調製することができる。適切な溶媒の例は、水、アルコール、たとえば低級アルカノール(たとえばエタノール又はメタノール)、及びさらにはカルボン酸アミド(たとえばジメチルホルムアミド)、双極性非プロトン性溶媒(たとえばジメチルスルホキシド又はメチルエチルケトン)、ケトン(たとえばアセトン又はシクロヘキサノン)、炭化水素(たとえばトルエン)、エーテル(たとえばTHF、ジメトキシエタン又はジオキサン)及びハロゲン化炭化水素(たとえばトリクロロエタン)ならびに適切な溶媒の混合物、たとえば水とアルコールとの混合物(たとえば水/エタノール又は水/メタノール混合物)である。
【0065】
本発明にしたがって、重合性流体組成物は、少なくとも二つの異なる非架橋性親水性ポリマー及び少なくとも一つの化学線架橋性プレポリマーを含む。それは、溶液、無溶剤液体又は溶融体であることができ、化学線架橋性プレポリマーを含む。好ましくは、流体組成物は、少なくとも一つの化学線的プレポリマーの溶液である。より好ましくは、流体組成物は、少なくとも一つの化学線架橋性プレポリマーの水溶液である。流体組成物もまた、一つ以上のモノマー、一つ以上のマクロマー及び/又は一つ以上の架橋剤を含むことができる(ただし、好ましくは含まない)ということが理解される。しかし、これらの成分の量は、流体組成物から製造されたヒドロゲルレンズが許容不可能なレベルの未重合モノマー、マクロマー及び/又は架橋剤を含有しないよう、少量であるべきである。許容不可能なレベルの未重合モノマー、マクロマー及び/又は架橋剤の存在は、それらを除去するための抽出を要することがある。同様に、流体組成物はさらに、様々な成分、たとえば重合開始剤(たとえば光又は熱開始剤)、増感剤、インヒビタ、充填材などを、レンズ中のそれらの存在がレンズを抽出処理に付すことを要しない限りにおいて、含むことができる。
【0066】
適切な光開始剤の例は、ベンゾインメチルエーテル、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン又はDarocure(登録商標)もしくはIrgacure(登録商標)タイプ、たとえばDarocure(登録商標)1173もしくはIrgacure(登録商標)2959である。光開始剤の量は、広い範囲内で選択することができ、0.05g/gまで、特に0.003g/gまでの量のプレポリマーが有益であることが証明されている。当業者は、光開始剤を選択する方法を周知しているであろう。
【0067】
本明細書で先に定義したプレポリマー及び浸出可能な潤滑剤の溶液は、好ましくは、高純度の溶液、すなわち、望まれない成分を含まない又は本質的に含まない、たとえばプレポリマー調製に使用されるモノマー、オリゴマー又はポリマー出発化合物を含まない、及び/又はプレポリマー調製中に形成される二次生成物を含まない溶液である。
【0068】
プレポリマー水溶液のさらなる溶媒は、たとえば、アルコール、たとえばメタノール、エタノール、n−もしくはイソプロパノール又はカルボン酸アミド、たとえばN,N−ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドであることができる。水溶液は好ましくはさらなる溶媒を含有しない。
【0069】
プレポリマーの水溶液は、好ましくは、レンズが形成されたのち除去されなければならないコモノマーを含有しない。
【0070】
プレポリマーの好ましい群は、水、水−有機溶媒混合物及び有機溶媒に可溶性であり、約85℃未満の温度で溶融可能であり、眼科的に適合性であるものである。化学線架橋性プレポリマーは実質的に高純度の形態にある(たとえば、プレポリマーを形成するための大部分の反応体を除去するために限外ろ過によって精製されている)ことが有利である。したがって、化学線による架橋ののち、医療装置、好ましくは眼科用装置は、それ以後の精製、たとえば特に未重合成分の複雑な抽出を実質的に要しないかもしれない。さらには、架橋は、溶媒なしで起こすこともできるし、水溶液中で起こすこともでき、そのため、後続の溶媒交換又は水和工程は不要である。
【0071】
好ましい化学線架橋性プレポリマーの例は、非限定的に、米国特許第5,583,163号及び第6,303,687号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている水溶性架橋性ポリ(ビニルアルコール)プレポリマー、米国特許出願公開公報第2004/0082680号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている水溶性ビニル基末端化ポリウレタンプレポリマー、米国特許第5,849,841号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン又はポリビニルアミンの誘導体、米国特許第6,479,587号及び2004年11月17日出願の、所有者が同じである係属中の米国特許出願第10/991,124号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている水溶性架橋性ポリウレアプレポリマー、架橋性ポリアクリルアミド、EP655,470及びUS5,712,356に開示されているビニルラクタム、MMA及びコモノマーの架橋性統計コポリマー、EP712,867及びUS5,665,840に開示されているビニルラクタム、酢酸ビニル及びビニルアルコールの架橋性コポリマー、EP932,635及びUS6,492,478に開示されている架橋性側鎖を有するポリエーテル−ポリエステルコポリマー、EP958,315及びUS6,165,408に開示されている分岐ポリアルキレングリコール−ウレタンプレポリマー、EP961,941及びUS6,221,303に開示されているポリアルキレングリコール−テトラ(メタ)アクリレートプレポリマーならびにPCT特許出願WO2000/31150及びUS6,472,489に開示されている架橋性ポリアリルアミングルコノラクトンプレポリマーを含む。
【0072】
シリコーン含有プレポリマーの例は、参照により本明細書に組み込まれる、所有者が同じである米国特許出願公開公報第2001−0037001A1及び米国特許第6,039,913号に記載されているものである。
【0073】
好ましい実施態様において、化学線架橋性プレポリマーは水溶性の架橋性ポリ(ビニルアルコール)である。
【0074】
もう一つの好ましい実施態様において、化学線架橋性プレポリマーは、米国特許第6,479,587号又は2004年11月17日出願の譲受人が同じである同時係属中の米国特許出願第10/991,124号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている架橋性ポリウレアである。
【0075】
本発明にしたがって、プレポリマーが水溶性であるという基準は、具体的には、プレポリマーが実質的に水性の溶液中に約3〜90重量%、好ましくは約5〜60重量%、特に約10〜60重量%の濃度で可溶性であることを指す。また、個々の場合で可能である限り、本発明にしたがって、90%を超えるプレポリマー濃度が含まれる。特に好ましい溶液中のプレポリマーの濃度は、約15重量%〜約50重量%、特に約15重量%〜約40重量%、たとえば約25重量%〜約40重量%である。
【0076】
好ましくは、本発明の方法で使用されるプレポリマーは、それ自体は公知のやり方で、たとえば、アセトンのような有機溶媒による析出、ろ過及び洗浄、適切な溶媒中での抽出、透析又は限外ろ過、特に好ましくは限外ろ過により、事前に精製される。このような精製処理により、プレポリマーを、きわめて高純度の形態、たとえば、塩のような反応生成物及び非ポリマー成分のような出発原料を含まない又は少なくとも実質的に含まない濃縮水溶液の形態で得ることができる。
【0077】
本発明の方法で使用されるプレポリマーに好ましい精製法である限外ろ過は、それ自体は公知のやり方で実施することができる。限外ろ過は、繰返し、たとえば2回〜10回、実施することが可能である。あるいはまた、限外ろ過は、選択される純度が達成されるまで連続的に実施することもできる。選択される純度は、原則的に、所望の高さであることができる。純度の適切な測度は、たとえば、公知のやり方で簡単に測定することができる、副生成物として得られる溶解塩の濃度である。
【0078】
本発明にしたがって、浸出可能な潤滑剤は、好ましくは電荷を有しない非架橋性親水性ポリマー(すなわち、化学線架橋性基を有しない)である。レンズ形成材料とで適合性である(すなわち、光学的に明澄なコンタクトレンズを製造することができる)限り、適切な親水性ポリマーを使用することができる。例示的な非架橋性(すなわち、化学線架橋性基を有しない)親水性ポリマーとしては、非限定的に、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリイミド、ポリラクトン、ビニルラクタムのホモポリマー、一つ以上の親水性ビニルコモノマーの存在下又は非存在下における少なくとも一つのビニルラクタムのコポリマー、アルキル化ポリビニルピロリドン、アクリルアミド又はメタクリルアミドのホモポリマー、アクリルアミド又はメタクリルアミドと一つ以上の親水性ビニルモノマーとのコポリマー、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリオキシエチレン誘導体、ポリ−N,N−ジメチルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリ−2−エチルオキサゾリン、ヘパリン多糖、多糖及びそれらの混合物がある。
【0079】
N−ビニルラクタムの例は、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−5,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3,3,5−トリメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−5−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3,4,5−トリメチル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4,4−ジメチル−2−ピペリドン、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4,6−ジメチル−2−カプロラクタム及びN−ビニル−3,5,7−トリメチル−2−カプロラクタムを含む。
【0080】
親水性ポリマーの数平均分子量Mnは、好ましくは10,000〜500,000、より好ましくは20,000〜200,000である。
【0081】
ポリビニルピロリドン(PVP)の例は、非限定的に、K−15、K−30、K−60、K−90、K−120などの分子量グレードを特徴とするポリマーを含む。
【0082】
n−ビニルピロリドンと一つ以上のビニルモノマーとのコポリマーの例は、非限定的に、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー(たとえばISP社のCopolymer 845、Copolymer 937、Copolymer 958)、ビニルピロリドン/ビニルカプロラクタム/ジメチル−アミノエチルメタクリレートコポリマーを含む。
【0083】
アルキル化ピロリドンの例は、非限定的に、ISP社のGANEX(登録商標)アルキル化ピロリドンのファミリーを含む。
【0084】
適切なポリオキシエチレン誘導体は、たとえば、n−アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル、n−アルキルポリオキシ−エチレンエーテル(たとえばTRITON(登録商標))、ポリグリコールエーテル界面活性剤(TERGITOL(登録商標))、ポリオキシエチレンソルビタン(たとえばTWEEN(登録商標))、ポリオキシエチレン化グリコールモノエーテル(たとえばBRIJ(登録商標)、ポリオキシエチレン9ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン10エーテル、ポリオキシエチレン10トリデシルエーテル)又はエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーである。
【0085】
エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーの例は、非限定的に、たとえば商品名PLURONIC(登録商標)、PLURONIC-R(登録商標)、TETRONIC(登録商標)、TETRONIC-R(登録商標)又はPLURADOT(登録商標)として市販されているポロキサマー及びポロキサミンを含む。ポロキサマーとは、構造PEO−PPO−PEO(「PEO」はポリ(エチレンオキシド)であり、「PPO」はポリ(プロピレンオキシド)である)を有するトリブロックコポリマーである。
【0086】
単に分子量及びPEO/PPO比が異なるだけの相当な数のポロキサマーが公知である。ポロキサマーの例は、101、105、108、122、123、124、181、182、183、184、185、188、212、215、217、231、234、235、237、238、282、284、288、331、333、334、335、338、401、402、403及び407を含む。ポリオキシエチレンブロックとポリオキシプロピレンブロックとの順序を逆にすると、PLURONIC-R(登録商標)ポリマーとして知られる、構造PPO−PEO−PPOを有するブロックコポリマーを創製することができる。
【0087】
ポロキサミンとは、様々な分子量及びPEO/PPO比で利用可能である、構造(PEO−PPO)2−N−(CH22−N−(PPO−PEO)2を有するポリマーである。ここでもまた、ポリオキシエチレンブロックとポリオキシプロピレンブロックとの順序を逆にすると、TETRONIC-R(登録商標)ポリマーとして知られる、構造(PPO−PEO)2−N−(CH22−N−(PEO−PPO)2を有するブロックコポリマーを創製することができる。
【0088】
ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロックコポリマーはまた、エチレンオキシド反復単位とプロピレンオキシド反復単位とのランダムなミックスを含む親水性ブロックで設計することもできる。ブロックの親水特性を維持するために、エチレンオキシドが優位を占める。同様に、疎水性ブロックもまた、エチレンオキシド反復単位とプロピレンオキシド反復単位との混合物であることができる。そのようなブロックコポリマーは、商品名PLURADOT(登録商標)として市販されている。
【0089】
すべての種類の非架橋性PVA、たとえば低、中又は高ポリ酢酸ビニル含量のPVAを使用することができる。加えて、使用されるPVAはまた、上述したコポリマー単位を小さな割合で、たとえば20%まで、好ましくは16%まで含むことができる。20%未満、好ましくは16%未満のポリ酢酸ビニル単位を含有する非反応性PVAの使用が好ましい。
【0090】
本発明で使用される非架橋性ポリビニルアルコールは公知であり、たとえば商品名Mowiol(登録商標)としてKSE(Kuraray Specialties Europe)又はGohsenol(日本合成化学)から市販されている。
【0091】
レンズ配合物への浸出可能な潤滑剤の添加が、得られるレンズの光学透明度に悪影響を及ぼすべきではないことが理解される。浸出可能な潤滑剤は、異なる分子量を有する同じポリマー又は異なる分子量を有する異なるポリマーであることができる。
【0092】
本発明は、もう一つの態様において、装用者の初期不快感及び1日の終わりの不快感を緩和することができるソフトコンタクトレンズを製造する方法を提供する。本発明の方法は、a)ヒドロゲルレンズ配合物を型の中で硬化させてヒドロゲルコンタクトレンズを成形する工程(ここで、レンズ配合物は、第一の浸出可能なポリマー潤滑剤及び第二の浸出可能なポリマー潤滑剤を含み、第一及び第二の浸出可能なポリマー潤滑剤は、コンタクトレンズのマトリックス中に非共有結合的に組み込まれ、分散し、第二の浸出可能なポリマー潤滑剤は、分子量又はポリマー組成において第一の浸出可能なポリマー潤滑剤とは異なる)、b)ヒドロゲルコンタクトレンズを、パッケージング溶液を含有する容器中にパッケージングする工程(パッケージング溶液は、25℃で約1.5センチポアズ〜約20センチポアズ、好ましくは25℃で約2.0センチポアズ〜約15センチポアズの粘度をパッケージング溶液に提供するのに十分な量の粘度増大性ポリマー及び約2000ダルトン未満の分子量を有するポリマー界面活性剤を含む)、及びc)ヒドロゲルコンタクトレンズをパッケージ中で滅菌してソフトコンタクトレンズを得る工程を含む。
【0093】
本発明のこの態様においては、パッケージング溶液、粘度増大性ポリマー、パッケージング溶液の粘度、ヒドロゲルレンズ形成配合物(レンズ形成材料)、浸出可能な潤滑剤、パッケージ、封止及び滅菌ならびにその他の上記様々な実施態様及び好ましい実施態様を使用することができる。
【0094】
コンタクトレンズを製造するためのレンズ型は当業者に周知であり、たとえばキャスト成形又はスピンキャスティングで使用される。たとえば、型(フルキャスト成形用)は一般に、少なくとも二つの型区分(又は部分)又は型枠、すなわち第一及び第二の型枠を含む。第一の型枠は第一の成形(又は光学)面を画定し、第二の型枠は第二の成形(又は光学)面を画定する。第一及び第二の型枠は、互いを受け入れて第一の成形面と第二の成形面との間にレンズ成形キャビティが形成されるように構成されている。型枠の成形面は型のキャビティ形成面であり、重合性流体組成物と直接接触する。
【0095】
コンタクトレンズをキャスト成形するための型区分を製造する方法は一般に当業者には周知である。型を製造するための当該技術で公知の実質すべての材料を、コンタクトレンズを製造するための型の製造に使用することができる。たとえば、ポリマー材料(たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PMMA)、環式オレフィンコポリマー(たとえばドイツFrankfurt及び米ニュージャージー州SummitのTicona社のTopas(登録商標)COCグレード8007-S1O(エチレンとノルボルネンとの明澄な非晶質コポリマー)、米ケンタッキー州LouisvilleのZeon Chemicals LPのZeonex(登録商標)及びZeonor(登録商標))などを使用することができる。UV光を透過させる他の材料、たとえば石英ガラス及びサファイアを使用することもできる。
【0096】
当業者は、型に入れたレンズ形成配合物から熱又は化学線重合に基づいてレンズをキャスト成形する方法を周知しているであろう。
【0097】
好ましい実施態様において、流体組成物中の重合性成分が本質的にプレポリマーで構成されているならば、再使用可能な型が使用され、流体組成物は、化学線の空間的限定の下で化学線的に硬化されてカラーコンタクトレンズを形成する。好ましい再使用可能な型の例は、参照により本明細書に組み込まれる、1994年7月14日出願の米国特許出願第08/274,942号、2003年12月10日出願の第10/732,566号、2003年11月25日出願の第10/721,913号及び米国特許第6,627,124号に開示されているものである。
【0098】
成形されたレンズを型から取り出すための型の開放は、それ自体は公知のやり方で実施することができる。
【0099】
本発明にしたがって、成形されるコンタクトレンズがすでに精製されたプレポリマーから溶媒なしで製造される場合、通常、成形されたレンズの取り出しののち、抽出のような精製工程を実施することは不要である。理由は、使用されるプレポリマーが望まれない低分子量成分を含有せず、したがって、架橋生成物もまた、そのような成分を含まない又は実質的に含まず、後続の抽出を省くことができるからである。したがって、コンタクトレンズは、通常の方法で、本発明のパッケージング溶液(上記)中での水和により、すぐに使用可能なコンタクトレンズへと直接転換することができる。
【0100】
本発明にしたがって、成形されるコンタクトレンズがすでに精製されたプレポリマーの水溶液から製造される場合にも、架橋生成物は、問題になる不純物を含有しない。したがって、後続の抽出を実施することは不要である。さらには、架橋は本質的に水性の溶液中で実施されるため、後続の水和を実施することも不要である。
【0101】
コンタクトレンズは、型から取りだしたのち、それ自体は公知のやり方でオートクレーブ処理することによって滅菌することができる。
【0102】
本発明は、さらなる態様において、第一の浸出可能なポリマー潤滑剤及び第二の浸出可能なポリマー潤滑剤を含むポリマーマトリックスを含み、第二の浸出可能なポリマー潤滑剤が、第一の浸出可能なポリマー潤滑剤の平均分子量の少なくとも約3倍である平均分子量を有するものである1日使い捨てコンタクトレンズを提供する。
【0103】
本発明のこの態様において、ヒドロゲルレンズ形成配合物(レンズ形成材料)、浸出可能な潤滑剤及びその他の上記様々な実施態様及び好ましい実施態様を使用することができる。
【0104】
前記開示は、当業者が本発明を実施することを可能にする。読者が具体的な実施態様及びその利点をより良く理解することができるよう、以下の非限定的実施例を参照されたい。ただし、以下の実施例は、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0105】
実施例1
レンズ配合物
nelfilcon A(水溶性であり、化学線架橋性であるアクリル化ポリ(ビニルアルコール)、CIBA Vision)、水、光開始剤(Irgacure 2959、Ciba Specialty Chemicals)、ポロキサマー108(Pluronic(登録商標)F38)及びGohsenolからのGH-22及び銅フタロシアニン(CuP)から流体プレポリマー組成物(水性配合物)を調製した。
【0106】
配合物I
配合物Iは、nelfilcon A30.6重量%、Irgacure 2959 0.095重量%(全マクロマー固形分の割合として計測)、ポロキサマー108 0.3重量%、Mowiol 6-98(非架橋性PVA)0.5重量%(全マクロマー固形分の割合として計測)及びGohsenol GH-22 1.5重量%(全マクロマー固形分の割合として計測)及び97%の透過率を配合物に提供するだけの量のCuPを含有するように調製した。
【0107】
配合物II
配合物IIは、nelfilcon A30.6重量%、Irgacure 2950 0.095重量%、ポロキサマー108 0.3重量%、Mowiol 6-98 1.5重量%及びMowiol 10-98 0.5重量%(全マクロマー固形分の割合として計測)及び98%の透過率を配合物に提供するだけの量のCuPを含有するように調製した。
【0108】
レンズ製造
上記で調製した配合物を、EFDオートマチックディスペンサを使用することにより(4bar、1.2秒)、メス型枠に小出しした。次いで、メス型枠を対応するオス型枠と嵌合させた。空気式閉止システムを使用することによって型を閉じた。配合物を、二つの異なるUV光(それぞれ1.8mW/cm2)の下、4.9秒の全露光時間、UV硬化させた。
【0109】
各レンズを、対応するパッケージング溶液を含有する従来のブリスタパッケージ中にパッケージングし、アルミニウム封止箔で封止した。次いで、各レンズをパッケージ中でオートクレーブ処理した。オートクレーブ処理ののち、コンタクトレンズの直径及び弾性率を測定した。対照配合物ならびに配合物I及びIIから製造されたレンズの間で機械的性質(弾性率、伸び、応力及び破断点靱性)における有意な差違を識別することはできなかった。配合物I又はIIから製造されたレンズの直径は、非架橋性PVAの添加なしの配合物から製造されたレンズよりもわずかに大きかった。
【0110】
実施例2
レンズパッケージング食塩水
1.0%ポリエチレングリコール(PEG400)、0.294%クエン酸ナトリウム二水和物、0.3297%塩化ナトリウム、0.8105%リン酸水素二ナトリウム二水和物、0.0034%ポロキサマー108及び水を含有する一連のパッケージング食塩水を、HPMCの濃度(w/w)を変化させて(0.1%、0.15%、0.2%、0.3%、0.4%)調製した。実施例1からのレンズ(配合物1)を異なる食塩水中にパッケージングし、オートクレーブ処理した。次いで、完成したレンズブリスタ(パッケージ)中のパッケージング食塩水の粘度を試験食塩水ごとに計測した。
【0111】
【表1】

【0112】
実施例3
レンズパッケージング溶液
パッケージング溶液I
溶液Iは、0.15重量%HPMC、1.0%ポリエチレングリコール(PEG400)、0.294%クエン酸ナトリウム二水和物、0.3297%塩化ナトリウム、0.8105%リン酸水素二ナトリウム二水和物、0.0034%ポロキサマー108及び水を含有するように調製した。
【0113】
パッケージング溶液II
溶液IIは、0.4395%塩化ナトリウム、1.0806%リン酸水素二ナトリウム二水和物、0.0045%ポロキサマー108及び水を含有するように調製した。
【0114】
実施例4
レンズ製造
実施例1のようにして製造したレンズ(配合物I)を実施例3からのパッケージング溶液I中にパッケージングした。実施例1のようにして製造したレンズ(配合物II)を実施例3からのパッケージング溶液II中にパッケージングした。次いで、レンズをオートクレーブ処理した。
【0115】
実施例5
J of Biomed Mater Res Part B: Appl Biomater 8OB: 424-432, 2007のWintertonらの手法にしたがって、ただし、試験前にレンズをPBS中ですばやくすすぐのではなく、レンズからパッケージング食塩水を軽くぬぐい取って、実施例4のレンズからの湿潤剤の放出をモニタリングした。HPLC分析は、2時間に及ぶレンズからのPEG−400の溶出を明らかにした。
【0116】
実施例6
実施例4からのレンズの臨床評価は、配合物IIから製造され、パッケージング溶液II中にパッケージングされたレンズと比較して、配合物1から製造され、パッケージング溶液I中にパッケージングされたレンズに対する患者の強い好みを示した。
【0117】
具体的な用語、装置及び方法を使用して本発明の様々な実施態様を説明したが、このような説明は例を示すためだけのものである。使用した語は説明のための語であり、限定のための語ではない。請求の範囲に記載される本発明の真意又は範囲を逸することなく当業者によって変形及び改変が加えられうるということが理解されよう。加えて、様々な実施態様は、全体的又は部分的に互換可能であるということが理解されるべきである。したがって、請求の範囲の真意及び範囲は、本明細書に含まれる好ましい態様の記載に限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージング溶液及びパッケージング溶液中に浸漬されたソフトヒドロゲルコンタクトレンズを含む、封止され、滅菌されたパッケージを含む眼科用製品であって、ここでパッケージング溶液は、約1.5センチポアズ〜約20センチポアズの粘度をパッケージング溶液に提供するのに十分な量のヒドロキシル含有粘度増大性ポリマー、2000以下の分子量を有するポリエチレングリコール、パッケージング溶液中のポリエチレングリコールの酸化分解への感受性を低下させるのに十分な量のα−オキソ多酸又はその塩及び約6.0〜8.0のpHを溶液に提供するのに十分な量の一つ以上の緩衝剤を含み、ここで、パッケージング溶液は約200〜約450mOsm/kgのオスモル濃度を有するものである眼科用製品。
【請求項2】
α−オキソ多酸が、クエン酸、2−ケトグルタル酸及びリンゴ酸からなる群より選択される、請求項1記載の眼科用製品。
【請求項3】
α−オキソ多酸が、クエン酸である、請求項2記載の眼科用製品。
【請求項4】
ヒドロゲルコンタクトレンズが、ポリマーマトリックス、第一の浸出可能なポリマー潤滑剤及び第二の浸出可能なポリマー潤滑剤を含み、第二の浸出可能なポリマー潤滑剤が、分子量又はポリマー組成において第一の浸出可能なポリマー潤滑剤とは異なる、請求項1記載の眼科用製品。
【請求項5】
第一及び第二の浸出可能な潤滑剤が、互いに独立して、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリラクトン、ビニルラクタムのホモポリマー、少なくとも一つのビニルラクタムと少なくとも一つの親水性ビニルモノマーとのコポリマー、アルキル化ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー、アクリルアミドと少なくとも一つの親水性ビニルモノマーとのコポリマー、メタクリルアミドと少なくとも一つの親水性ビニルモノマーとのコポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン誘導体、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリ2エチルオキサゾリン、ヘパリン多糖、多糖及びそれらの混合物からなる群より選択される非架橋性親水性ポリマーである、請求項4記載の眼科用製品。
【請求項6】
粘度増大性ポリマーが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、2000ダルトンを超える分子量を有するポリ(エチレンオキシド)及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1記載の眼科用製品。
【請求項7】
ポリエチレングリコールが、約600ダルトン以下の分子量を有する、請求項1記載の眼科用製品。
【請求項8】
パッケージング溶液が、25℃で約2.0センチポアズ〜約8センチポアズの粘度を有する、請求項1記載の眼科用製品。
【請求項9】
パッケージング溶液が、ホウ酸、リン酸、TRIS(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)、ビス−トリス(ビス(2−ヒドロキシエチル)−イミノ−トリス−(ヒドロキシメチル)−メタン)、ビス−アミノポリオール、トリエタノールアミン、ACES(N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS(3−[N−モルホリノ]−プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン−N,N′−ビス(2−エタンスルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも一つの緩衝剤を含有する、請求項1記載の眼科用製品。
【請求項10】
パッケージング溶液が、ポロキサマー、ポロアミン、脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、C12〜C18アルカンのポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンエーテル、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンプロピレングリコールステアレート及びそれらの混合物からなる群より選択される眼科的に許容可能な界面活性剤を含有する、請求項1記載の眼科用製品。
【請求項11】
ソフトコンタクトレンズを製造する方法であって、
a)ヒドロゲルレンズ形成配合物を型の中で硬化させてヒドロゲルコンタクトレンズを形成する工程(ここで、レンズ配合物は、第一の浸出可能なポリマー潤滑剤及び第二の浸出可能なポリマー潤滑剤を含み、第一及び第二の浸出可能なポリマー潤滑剤は、コンタクトレンズのマトリックス中に非共有結合的に組み込まれ、分散し、第二の浸出可能なポリマー潤滑剤は、分子量又はポリマー組成において第一の浸出可能なポリマー潤滑剤とは異なる)、
b)ヒドロゲルコンタクトレンズを、パッケージング溶液を含有する容器中にパッケージングする工程(ここで、パッケージング溶液は、25℃で約1.5センチポアズ〜約20センチポアズの粘度をパッケージング溶液に提供するのに十分な量の粘度増大性ポリマー及び約2,000ダルトン未満の分子量を有するポリマー界面活性剤を含む)、及び
c)ヒドロゲルコンタクトレンズをパッケージ中で滅菌してソフトコンタクトレンズを得る工程
を含む方法。
【請求項12】
粘度増大性ポリマーが非イオン性親水性ポリマーであり、ポリマー界面活性剤がポリエチレングリコールであり、パッケージング溶液が、パッケージング溶液中のポリエチレングリコールの酸化分解への感受性を低下させるのに十分な量のα−オキソ多酸又はその塩を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
α−オキソ多酸が、クエン酸、2−ケトグルタル酸及びリンゴ酸からなる群より選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
α−オキソ多酸が、クエン酸である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
粘度増大性ポリマーが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、2000ダルトンを超える分子量を有するポリ(エチレンオキシド)及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項12記載の方法。
【請求項16】
ポリエチレングリコールが、600ダルトンの分子量を有する、請求項12記載の方法。
【請求項17】
ヒドロゲルレンズ形成配合物が、水、水−有機溶媒混合物又は有機溶媒に可溶性である、又は約85℃未満の温度で溶融可能である少なくとも一つの化学線架橋性プレポリマーを含む、請求項12記載の方法。
【請求項18】
該化学線架橋性プレポリマーが、水溶性架橋性ポリ(ビニルアルコール)プレポリマー;水溶性ビニル基末端化ポリウレタンプレポリマー;ポリビニルアルコールの誘導体;ポリエチレンイミンの誘導体;ポリビニルアミンの誘導体;水溶性架橋性ポリウレアプレポリマー;架橋性ポリアクリルアミド;ビニルラクタム、MMA及びコモノマーの架橋性統計コポリマー;ビニルラクタム、酢酸ビニル及びビニルアルコールの架橋性コポリマー;架橋性側鎖を有するポリエーテル−ポリエステルコポリマー;分岐鎖状ポリアルキレングリコール−ウレタンプレポリマー;ポリアルキレングリコール−テトラ(メタ)アクリレートプレポリマー及び架橋性ポリアリルアミングルコノラクトンプレポリマーならびにそれらの混合物からなる群より選択される、請求項12記載の方法。
【請求項19】
第一及び第二の浸出可能な潤滑剤が、互いに独立して、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリラクトン、ビニルラクタムのホモポリマー、少なくとも一つのビニルラクタムと少なくとも一つの親水性ビニルモノマーとのコポリマー、アルキル化ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー、アクリルアミドと少なくとも一つの親水性ビニルモノマーとのコポリマー、メタクリルアミドと少なくとも一つの親水性ビニルモノマーとのコポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン誘導体、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリ2エチルオキサゾリン、ヘパリン多糖、多糖及びそれらの混合物からなる群より選択される非架橋性かつ非荷電親水性ポリマーである、請求項12記載の方法。
【請求項20】
第一の浸出可能なポリマー潤滑剤及び第二の浸出可能なポリマー潤滑剤を含むポリマーマトリックスを含み、第一の浸出可能なポリマー潤滑剤が、ユーザがレンズを装着したのち約2〜約4時間をピークに、レンズからユーザの眼の中へとゆっくりと浸出し、第二の浸出可能なポリマー潤滑剤が、第一の浸出可能なポリマー潤滑剤の平均分子量の少なくとも約3倍である平均分子量を有するものである、1日使い捨てコンタクトレンズ。

【公表番号】特表2010−538322(P2010−538322A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522942(P2010−522942)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/010159
【国際公開番号】WO2009/032132
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】