説明

コンテナクレーン

【課題】複数のトロリーの間を連結し、そのトロリー間の距離が容易に調整でき、更にコンテナ部分を簡単に固定できる装置を提供する。
【解決手段】ブーム6に複数のトロリー8A、8Bを支持し、下方にそれぞれヘッドブロック13A、13Bを介して吊具9A、9Bをワイヤロープr1で吊下げ、前記トロリーは相互に連結・分離可能で、かつ間隔の調整が可能な連結装置で連結されると共に、前記2個のヘッドブロック13A、13Bに「空中連結装置20」を設け、この空中連結装置20は一方のヘッドブロックの側方より延長された腕部の先端部に受入れ部を、他方のヘッドブロックの側方より延長されたの腕部の先端部に前記受入れ部に嵌入される突出部をそれぞれ設けたことを特徴とするコンテナクレーン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンのブーム上に陸側と海側とに複数台のトロリーを走行させ、それぞれのトロリーより吊り具を支持して少なくとも2個のコンテナを同時に荷役したり、場合によっては1台のトロリーでも荷役操作をすることができる主としてコンテナを荷役するコンテナクレーン(岸壁クレーン)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンテナ船によるコンテナ輸送のシステムとして、荷役作業の高速化、省力化を実現できるコンテナ船やコンテナヤードなどの開発が行なわれている。従来のコンテナの荷役はクレーンを構成するブーム上に1台のトロリーを走行させ、この1台のトロリーより1個あるいは2個の吊具を吊り下げ、その長手方向に2個のコンテナを同時に吊り下げるクレーンが実施されている。
【0003】
また、ブーム上に2台のトロリーを走行させ、それぞれのトロリーより吊下げた吊具によって2個以上のコンテナを同時に吊上げる方法が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
ところが、これらのコンテナクレーンは、コンテナ船の長手方向に沿って隣合わせて吊下げられた2個の吊具を、同時に荷役できるように構成したものである。すなわち、コンテナ船の長手方向に沿って隣接して積み上げられたコンテナを2個同時に吊下げて荷役する装置が提案されている。
【0005】
このような構造のクレーンを採用すると、20フィートのコンテナを2個同時に荷役しようとするだけならば、特にその作業に問題はない。しかし、40フィートのコンテナを2個、あるいは20フィートのコンテナを3個以上同時に荷役できるようにするためにはコンテナクレーンの岸壁に沿って脚間を広げる必要がある。そのため、コンテナクレーンが大型化することになり、経済的には不利になる欠点があった。
【0006】
このような欠点を解消するため、コンテナ船の幅方向に隣接して配置される複数のコンテナを同時に荷役するように構成したコンテナクレーンが提案されている(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特公昭47−4019号公報
【特許文献2】特公昭49−14828号公報
【特許文献3】特開昭54−6267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献3で提案されているコンテナクレーンは、コンテナ船の幅方向、つまりガーダ及びブームの長手方向に隣接した2台のトロリーを設け、これらのトロリーを用いてコンテナ船に隣接して積まれている2個のコンテナを同時に吊り上げ、あるいは吊り下げる構成になっている。これらの2台のトロリーは、同じように移動させる必要があることから、互いにねじ軸で連結して2台のトロリーの間隔を調整するように構成している。
【0008】
例えばコンテナ船で運搬してきたコンテナをコンテナヤードに荷下ろしする場合、あるいは2台のトラックに積まれて運搬されてきたコンテナをコンテナ船側に荷役する場合について考えてみると、2個の吊具を2台のトラックの間隔に合わせる場合、コンテナ船の船倉に設けてあるガイドレールの間隔に合わせる場合の二つの場合における間隔調整が必要である。
【0009】
また、コンテナ船に積まれているコンテナの間隔に合わせて吊具の間隔を調整し、コンテナを吊上げ、そして先に調整した吊具の間隔をトラックの間隔に合わせて再調整する必要がある。なお、このトロリーの間隔の調整には前記ねじ軸をモータ駆動によって行うようになっている。
【0010】
しかし、2台トロリーにそれぞれ1個の吊具を装備したコンテナクレーンの場合、横行する際には2台のトロリーが一体として同時に移動する必要がある。つまり、トロリーが2台準備されていてもクレーンに対して1台のトロリーしか設けられている場合と同様に操作することになるのである。
【0011】
また、2台のトロリーを連結して一体とし、しかも複数系列の独立した巻上装置をそれぞれのトロリーに設けたコンテナクレーンの場合は、常に2個の吊具が2台のトロリーと共に横行していることになる。従って、例えば1個の吊具のみを使用して1個のコンテナ(40ft)を荷役する場合を仮定すると、ブームやガーダ上を2台のトロリーを1体として移動させる必要があることから、その動作エネルギーが無駄となる。その上、2台のトロリーと2個の吊具を同時に横行させることから、慣性質量が大きくならざるを得ず、そのために操作性が悪くなるという問題があったのである。
【0012】
また、隣接して2個のコンテナを吊上げた場合、海風をコンテナが受けて振れた場合は互いに衝突するような事態も発生するが、このような問題を解決する方法が提案されていない。
【0013】
本発明は、前記従来のコンテナクレーンの欠点である、複数台のトロリーが間隔の調整はできるが、簡単に分離できない構造である点と、クレーンの動作エネルギーを減少させて迅速に荷役することができ、更に慣性力の減少により操作性を改善でき、また、コンテナ同士の衝突を防止することができるコンテナクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するための本発明のコンテナクレーンは次のように構成されている。
1)岸壁に沿って走行可能なクレーン本体と、該クレーン本体の陸側及び海側に向けて前記クレーン本体に固設したガーダと、該ガーダの海側に設けたブームと、該ガーダとブームとの間を移動する複数台のトロリーからなるコンテナクレーンにおいて、
前記複数台のトロリーの下方にそれぞれヘッドブロックを介して吊具をワイヤロープで吊下げ、前記複数台のトロリーは相互に連結・分離可能で、かつ間隔の調整が可能な連結装置で連結されると共に、対向するヘッドブロックに「空中連結装置」を設けている。
【0015】
この空中連結装置は、一方のヘッドブロックの側方より延長された腕部の先端部に受入れ部を、他方のヘッドブロックの側方より延長されたの腕部の先端部に前記受入れ部に嵌入される突出部をそれぞれ設けたことを特徴としている。
【0016】
2)前記空中連結装置は、連結する腕の位置に若干の誤差があっても、自然に連結できるものを意味している。
【0017】
前記空中連結装置は、受入れ側に拡開されたガイド部材を持ち、その底部に連結手段が配置されている。
【0018】
連結手段としては各種のものを採用できるが、具体的には、A.磁気を利用して吸着するタイプのもの、B.バキュームを利用して吸着するタイプのもの、C.ガイド部材の代わりに複数本の腕を広げて接続する相手を掴むような構造のもの、D.更に、一般にコンテナの固定手段として使用されているツイストロック型のものなどを利用できる。
【0019】
本発明におけるトロリーの台数は基本的には2台であるが、これに限定されるものではなく、3台あるいはそれ以上の複数台数で連結した場合にも応用が可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るコンテナクレーンは、複数台のトロリーを海側と陸側に並列した状態で同時に走行させ、それぞれより繰出される複数個の吊具を使用して同時に複数個のコンテナを荷役することができるのが基本的な構造である。
【0021】
複数台のトロリーは連結されて一体として横行し、各トロリーより吊下げられている複数個の吊具によってコンテナをそれぞれ固定し、通常はこの状態で荷役操作ができるようになっている。
【0022】
特に、強い海風などで隣接する2個のコンテナが空中で揺れ、衝突する危険性がある場合は、2個の吊具をそれぞれのトロリーの部分まで上昇させ、両吊具を固定しているヘッドブロックの間を本発明で適用した「空中連結装置」によって自動的に連結することで、2個のコンテナを一体化して荷役操作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係るコンテナクレーンの側面図である。このコンテナクレーン1は、岸壁2に沿って敷設されたガイドレール3上を自由に走行できるクレーン本体4と、このクレーン本体4の陸側と海側に向けて前記クレーン本体4に水平に固設したガーダ5と、このガーダ5の海側に仰伏可能に延長して設けたブーム6と、前記ガーダ5とブーム6とに設けたレール5a、6aに沿って移動する2台のトロリー8A、8Bが設けてある。おな、本発明は2台のトロリー8A、8Bの連結のみに限定されるものではなく、勿論、それ以上のトロリーを使用する場合も含んでいるが、この実施の形態においては本発明の理解を助けるために2台のトロリー8A、8Bを使用する場合について説明する。
【0024】
また、前記トロリー8A、8Bにはそれぞれヘッドブロックを介在させた吊具9A、9Bがワイヤロープr1で吊下げられており、前記トロリーのうち、陸側のトロリー8Aには運転室8Cが設けられ、この運転室8Cからの操作によって2台のトロリー8A、8Bの連結装置12によって間隔の調節、更に吊具9A、9Bの荷役操作ができるように構成されている。また、クレーン本体4には機械室10が設けてあり、これに設置された巻取機によってワイヤロープr2を操作して前記トロリー8A、8Bをガーダ5とブーム6上を移動させ、また、別のワイヤロープr3を操作してブーム6の保持角度を調整できるようになっている。
【0025】
(トロリーの連結装置)
図2は2台のトロリー8A、8Bと、その連結装置12を示しており、各トロリー8A、8Bにはそれぞれ設けた図示しないトロリー上に搭載された巻取機から繰出されるワイヤロープr1によって吊具9A、9B(スプレッダ)が吊下げられている。
【0026】
前記巻取機から繰出されるワイヤロープr1はヘッドブロック13A、13Bに設けたシーブ14a、14bを介して吊られており、このヘッドブロック13A、13Bに吊具9A、9Bがそれぞれ固定されている。また、この吊具9A、9Bの下方にはツイストロック16が設けられ、コンテナ17の金具に係合・離脱するようになっている。
【0027】
図2に示すように、陸側のトロリー8A上には連結装置12のモータや減速機などの主要部品が設けられているが、この連結装置12は駆動装置12aにカップリング12bを介してねじ軸12cを海側のトロリー8Bに向かって延長して設けている。このねじ軸12cはモータによって回転するように構成されていると共に、図示しないシリンダ装置によってねじ軸12cを前後に移動するようになっている。
【0028】
一方、海側のトロリー8Bには前記ねじ軸12cのねじを螺合する雌ねじを有する受部12dを設けており、この受部12dには前記ねじ軸12cを受ける部分にラッパ状のガイド部材12eを設けている。
【0029】
そして機械室10から操作により両トロリー8A、8Bを接近させ、ねじ軸12cを受部12dのガイド部材12eの中に入れて駆動装置12aを駆動してねじ軸12cを受け部材12dのねじに螺合させ、両トロリー8A、8Bを連結する。そして必要に応じてねじ軸12cを回転させてその突出長さを調整し、更に、図示しないシリンダ装置を操作して両トロリー8A、8Bの間隔を調節し、2個の吊具9A、9Bの間隔を調節することができるようになっている。
【0030】
このトロリーの間隔の調節は、例えば、図5に示すようにトロリー8Aにマグネスケールと検出器、あるいは超音波距離計などの距離計18によって両トロリー8A、8Bの間隔を測定しながらその信号により遠隔操作で自動的に行うことができるようになっている。
【0031】
(ヘッドブロックあるいは吊具の連結)
トロリー8A、8Bより伸びるワイヤロープr1(図2)が長くなると前記トロリー8A、8Bとこれらに吊られているコンテナ17、17との間の距離がかなり長くなる。この状態で2個のコンテナ17、17に強い海風が作用すると、コンテナ同士が衝突したり、衝突により破損したり、あるいはコンテナ船に衝突したりすることになる。また、風によってコンテナ17が旋回するのでこの運動を止めるための操作が必要であるなど荷役する際に色々と不都合が発生する。
【0032】
そこで本発明においては、ブーム6に設けたレール6a上を陸側と海側に横行する複数台のトロリー8A、8Bを設け、これより吊り下げた吊具9A、9Bにそれぞれコンテナ17、17を固定した状態で、ワイヤロープr1を巻込んでトロリー8A、8Bの近傍まで上昇させて安定な状態とし、その位置において「空中連結装置20」を使用してヘッドブロック13A、13B同士を連結するようになっている。
【0033】
この空中連結装置20は、図3及び図4に示すように、2台のヘッドブロック13A、13Bが対面する側面に磁力式連結装置21と、ツイストロックなどを使用した機械式固定装置22を設けている。
【0034】
この磁力式連結装置21は、一方の腕部21a(好ましくは伸縮する腕部)にラッパ型の受け面を、他方の腕部21bに前記受け面に突入する突出面をそれぞれ形成している。これらの装置は磁力によって接合するように構成されており、両腕部21a、21bを伸ばした状態で磁力を利用して接近した状態で吸着接合することによってヘッドブロック13A、13Bの旋回動作を抑制する。
【0035】
次に、前記腕部21a、21bの長さを縮めて機械的固定装置22の受入れ側の腕22aの先の受入部22bに、対向している突入側の腕22dの突入部材22e(ツイストロック用ブロック)を挿入し、90度回転させて両腕22a、22dを連結する。
【0036】
この状態になると、2個のコンテナ17、17の間はヘッドブロック13A、13Bを介して確実に連結された状態となり、互いの運動が制約され、従って衝突や破損などの事故を防止でき、安全に荷役操作を行うことができるのである。
【0037】
(空中連結装置の構造)
図6〜図9は各種の空中連結装置20の例を示すものであり、図6は受入側の拡開ガイドとバキューム装置を持つ腕と、先端にゴム状部材で被覆した突出側の腕を示す。
【0038】
図7は受入側の拡開ガイドと、このガイドの底部に配置した電磁石を設けた腕と、先端に磁性体を持つ突出側の腕を示している。
【0039】
図8は受入れ側に円錐状係合体を持つ腕と、先端に前記係合体を抱持する複数の爪体を持つ突出側の腕を示している。
【0040】
図9は、受入れ側の拡開ガイドとツイストロックの雌部を持つ腕と、先端にツイストロックの雄部を持つ腕を示している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施態様に係るコンテナクレーンの概略図である。
【図2】2台のトロリーと吊具の関係を示す概略図である。
【図3】空中連結装置を設けたヘッドブロックの正面図である。
【図4】空中連結装置を構成する機械式固定装置の一部断面図である。
【図5】2台のトロリーの間の距離の測定装置の一例を示す図である。
【図6】バキューム式空中連結装置を概略正面図である。
【図7】電磁石式空中連結装置の概略正面図である。
【図8】開閉爪式空中連通装置の概略正面図である。
【図9】ツイストロック式空中連結装置の概略正面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 クレーン 3 ガイドレール 4 クレーン本体
5 ガーダ 6 ブーム 8A、8B トロリー
9A、9B 吊具 12 連結装置 12a 駆動装置
12b カップリング 12c ねじ軸 12d 受け部
12e ガイド部材
13 ヘッドブロック
16 ツイストロック 17 コンテナ 18 距離計
20 空中連結装置 21 磁力的連結装置
22 機械式固定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岸壁に沿って走行可能なクレーン本体と、該クレーン本体の陸側及び海側に向けて前記クレーン本体に固設したガーダと、該ガーダの海側に設けたブームと、該ガーダとブームとの間を移動する複数台のトロリーからなるコンテナクレーンにおいて、
前記複数台のトロリーの下方にそれぞれヘッドブロックを介して吊具をワイヤロープで吊下げ、前記複数台のトロリーは相互に連結・分離可能で、かつ間隔の調整が可能な連結装置で連結されると共に前記複数個のヘッドブロックに空中連結装置を設け、
該空中連結装置は、一方のヘッドブロックの側方より延長された腕部の先端部に受入れ部を、他方のヘッドブロックの側方より延長された腕部の先端部に前記受入れ部に嵌入される突出部をそれぞれ設けたことを特徴とするコンテナクレーン。
【請求項2】
前記空中連結装置は、一方のヘッドブロックの側方より延長された腕部の先端に拡開状の案内面と、該案内面の底部に設けた可動爪、嵌合凹部、電磁石、バキューム吸引装置などの連結手段を、他方のヘッドブロックの側方より延長された前記可動爪に把持される突起部、前記電磁石に吸着される部材、前記バキューム吸引装置に吸引される部材などの連結手段であることを特徴とする請求項1記載のコンテナクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−269425(P2007−269425A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95119(P2006−95119)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】