説明

コンテナターミナルにおける作業指示システムおよび作業指示方法

【課題】コンテナターミナルにおける荷役車両に、より最適に、作業指示を出し得る作業指示システムを提供する。
【解決手段】現時点で作業をしている各荷役車両毎に、新規の作業指示があった際に、その作業を完了する作業完了時間を求める作業完了時間演算手段14と、この演算手段で得られた作業完了時間が最も短くなる荷役車両を検出する最適車両検出手段15と、この検出手段15で検出された荷役車両にその作業指示を出すか保留するかを判断する作業保留判断手段16と、出すと判断された場合にその作業指示を荷役車両に配信するための配信手段17と、保留すべきと判断された場合に、その作業指示を保留する作業指示データ保留手段18と、保留されたデータを解除するか否かを判断し且つ解除すると判断した場合に保留手段18に保留されている作業指示データを作業完了時間演算手段14に入力するように指示するデータ保留解除判断手段19とを具備したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナターミナルにおける作業指示システムで、最適な作業指示を行い得るシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンテナターミナルにおいては、多数の荷役車両により、コンテナ船に対してコンテナの積み降ろしが行われている。
例えば、コンテナターミナルにおいては、トランスファクレーン、トップリフタなどにより、コンテナトレーラからコンテナをコンテナヤードに降ろしたり、またコンテナヤードに置かれたコンテナをコンテナトレーラに積み込んでいた。
【0003】
ところで、コンテナヤードに配置されている荷役車両の数には限りがあるとともに、色々な場所で発生する作業に対応する必要があり、そのため、荷役車両による積み降ろし作業が効率に行われるように、管理センターから各荷役車両にそれぞれ作業指示、つまり配車指示が出されている。
【0004】
そして、この作業指示は、当該作業指示が発生したタイミングで且つその荷役作業に適していると判断された荷役車両に対して出されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−75592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したように、作業指示が発生したタイミングで出されているが、該当する荷役車両の現在の作業内容または次の作業内容によっては、他の荷役車両に行わせた方が作業効率が良い場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、コンテナターミナルにおける荷役車両に、より最適に、作業指示を出すことができるコンテナターミナルにおける作業指示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のコンテナターミナルにおける作業指示システムは、コンテナターミナルにてコンテナの荷役作業を行う荷役車両に、少なくとも、作業内容と作業位置とからなる作業指示を出す作業指示システムであって、
現時点での各荷役車両に対する作業内容を保持している作業内容データ保持手段および各荷役車両の作業位置を保持している作業位置データ保持手段と、
新規に発生した作業指示を入力するとともに、上記各データ保持手段に保持されている現時点での作業内容および作業位置に基づき各荷役車両ごとに当該新規に発生した作業に要する時間を算出する作業時間算出部、荷役車両が新規に発生した作業位置に移動するのに必要な時間を算出する移動時間算出部およびこれら両時間算出部で算出された作業時間および移動時間を加算して作業完了時間を算出する完了時間算出部を具備する作業完了時間演算手段と、
この作業完了時間演算手段で求められた作業完了時間が最も短くなる荷役車両を検出する最適車両検出手段と、
この最適車両検出手段で検出された荷役車両に直ちにその作業指示を出すべきかまたは一時的に保留すべきかを判断する作業保留判断手段と、
この作業保留判断手段で作業指示を出すべきであると判断された場合に、当該作業指示を上記検出された荷役車両に配信するための配信手段と、
上記作業保留判断手段で作業指示を保留すべきであると判断された場合に、その作業指示を保留するための作業指示データ保留手段と、
この作業指示データ保留手段に保留された作業指示データの保留を解除するか否かを判断するとともに解除すると判断した場合に当該作業指示データを上記作業完了時間演算手段に入力させるように指示するデータ保留解除判断手段とから構成したものであり、
また上記作業保留判断手段における保留の判断基準が、最適車両検出手段で検出された荷役車両の作業件数が設定件数よりも多い場合、当該荷役車両が優先的に行うべき作業を行っている場合および当該荷役車両がその作業を行うべきコンテナ用載置レーンに存在しない場合とするものである。
【0009】
さらに、本発明のコンテナターミナルにおける作業指示方法は、コンテナターミナルにてコンテナの荷役作業を行う荷役車両に、少なくとも、作業内容と作業位置とからなる作業指示を出す作業指示方法であって、
新規に荷役作業が発生した場合、現時点での各荷役車両の作業内容および作業位置に基づき、その作業を終わらせるとともに新規に発生した荷役作業の作業位置に移動するまでの上記各荷役車両ごとにおける作業完了時間をそれぞれ求める作業完了時間演算工程と、
この作業完了時間演算工程で求められた各荷役車両の作業完了時間が最も短くなる荷役車両を検出する最適車両検出工程と、
この最適車両検出工程で検出された荷役車両にその作業指示を直ちに出すべきかまたは一時的に保留しておくべきかを判断する作業保留判断工程と、
この作業保留判断工程で作業指示を出すべきであると判断された場合に、当該作業指示を該当する荷役車両に配信する配信工程と、
上記作業保留判断工程で作業指示を保留すべきであると判断された場合に、その作業指示データを保留する作業指示データ保留工程と、
この作業指示データ保留工程で保留された作業指示データを、新しく発生した作業指示などのイベントに基づき解除するか否かを判断するとともに、解除すると判断した場合に当該保留された作業指示データを再度上記作業完了時間演算工程に入力する方法であり、
また上記作業保留判断工程における保留の判断基準を、最適車両検出手段で検出された荷役車両の作業件数が設定件数よりも多い場合、当該荷役車両が優先的に行うべき作業を行っている場合および当該荷役車両がその作業を行うべきコンテナ載置用レーンに存在しない場合とする方法である。
【発明の効果】
【0010】
上記作業指示システムおよび作業指示方法によると、新しい作業指示に応じて、現時点における各荷役車両での作業指示を考慮して最適な荷役車両を検出するとともに、この荷役車両の現時点における作業を直ちに実行できない場合に、その作業指示を保留し、新しい作業指示などのイベントがあった場合に、再度の作業指示を出すようにしているので、より最適な作業指示を出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係るコンテナターミナルの概略構成を示す模式図である。
【図2】同コンテナターミナルにおける作業指示システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】同作業指示システムにおける作業指示例を説明する模式図である。
【図4】同作業指示システムにおける作業指示例を説明する模式図である。
【図5】同作業指示システムにおける作業指示例を説明する模式図である。
【図6】同作業指示システムにおける保留指示例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るコンテナターミナルにおける作業指示システムを具体的に示した実施例に基づき説明する。
まず、コンテナターミナルの全体構成について、図1に基づき、概略的に説明しておく。
【0013】
このコンテナターミナル1には、コンテナ船Sが接岸する岸壁2の近くに、コンテナCを一時的に載置(蔵置)するコンテナヤード3が設けられるとともに、このコンテナヤード3の近くには、トレーラなどの搬送車両AによるコンテナCの搬入および搬出を管理するための受付ゲート4が設けられ、またコンテナターミナル1の全体を管理するための管理棟5が設けられている。この管理棟5には、コンテナCの搬入および搬出、コンテナ船SへのコンテナCの積み込み(船積)または荷降ろし(陸揚)などの各種作業を指示するためのコンピュータシステムであるコンテナターミナル管理システム(以下、単に、管理システムという)が具備されている。
【0014】
コンテナヤード3には、コンテナCを列状に載置するためのコンテナ載置用レーンRが多数設けられており、またコンテナターミナル1で発生する荷役作業の大部分は、コンテナヤード3にて発生するコンテナCの取り扱いに関するものである。
【0015】
そして、コンテナCのコンテナ船Sに対する積み込みおよび荷降ろし作業は、岸壁2に配置されたガントリクレーン6にて行われ、コンテナヤード3における搬送車両Aに対するコンテナCの積み込みおよび荷降ろし作業は、主として、トランスファクレーン(RTG)などの荷役車両7により行われる。なお、トランスファクレーンの他に、トップリフタなども用いられる。
【0016】
ところで、管理棟5に具備されている管理システムの主要な項目は、発生した荷役作業を迅速に処理し得る荷役車両を検出(検索)すること、言い換えれば、最適な荷役車両を配車することである。コンテナターミナル全体について言えば、搬送車両、荷役車両、ガントリクレーンなどに、コンテナの積み込みまたは荷降ろしなどの作業指示を出すことである。この作業指示は、少なくとも、作業内容データおよび作業位置(車両位置)データから構成されている。また、荷役車両に作業指示を出すことは、配車指示を出すことと同じ意味であるため、説明上、「作業指示」よりも「配車指示」を用いた方が良い場合には、「配車または配車指示」という語句を単独または作業指示と併せて用いるものとする。
【0017】
ここで、作業指示(配車指示)について簡単に説明しておく。
配車には、ヤードプランナーが指示を出す手動配車と、管理システム側が指示を出す自動配車とがあり、またこの自動配車についても、本船作業、ゲート作業およびマーシャリング作業がある。
【0018】
本船作業とは、コンテナ船Sに直接コンテナCを積み込みまたは荷降ろしを行う作業で、優先的に行う必要があるため(つまり、本船作業は優先的に行う作業である)、リアルタイムで行われる。
【0019】
一方、ゲート作業は、搬送車両Aが受付ゲート4に到着した場合に生じる作業、つまりコンテナCの搬入および搬出に伴う作業で、具体的には、コンテナCをコンテナヤード3に降ろしたり、コンテナヤード3に載置されたコンテナCを搬送車両Aに積み込む作業であり、この作業指示の荷役車両7に対する配信が本発明に係る作業指示システムにより行われる。
【0020】
なお、マーシャリング作業は、コンテナヤード1に載置されたコンテナCの整理を行うためのもので、ヤードプランナーにより任意のタイミングで作業指示が出される(発行される)ものである。
【0021】
以下、作業指示システムについて説明する。
まず、作業指示システムの概略構成を図2に基づき説明する。
この作業指示システムは、現時点での各荷役車両7に対する荷役作業に基づく作業指示のうち作業内容データを保持している作業内容データ保持手段(データベースである)11と、各荷役車両7の現在の作業位置を保持している作業位置データ保持手段(データベースである)12と、新規に発生した荷役作業に基づく作業指示(配車要求)とともに後述する保留された作業指示データ(保留配車データ)を保持して後続の演算などの処理部に引き渡すための作業指示データ保持手段(データベースであり、配車要求データ保持手段ともいえる)13と、この作業指示データ保持手段13から送られた作業指示(配車要求)つまり作業内容および作業位置に基づき、各荷役車両7ごとに当該作業内容を終えるのに要する時間を算出する作業時間算出部14a、荷役車両7がその作業位置に移動するのに必要な時間を算出する移動時間算出部14b、およびこれら両時間算出部14a,14bで求められた両時間を加算して作業完了時間を算出する完了時間算出部14cを具備する作業完了時間演算手段14と、この作業完了時間演算手段14で求められた作業完了時間が最も短くなるような荷役車両を検出する最適車両検出手段15と、この最適車両検出手段15で検出された最適な荷役車両7が直ちにその作業を実行すべきかまたは一時的に保留すべきかを判断するための作業保留判断手段(配車保留判断手段ともいえる)16と、この作業保留判断手段16で作業指示を出すべき(配車すべき)であると判断された場合に、当該作業指示を該当する荷役車両7に配信するための配信手段(配車指示手段ともいえる)17と、上記作業保留判断手段16で作業指示を保留すべきであると判断された場合に、その作業指示データを一時的に保留するための作業指示データ保留手段(配車データ保留手段ともいえる)18と、この作業指示データ保留手段18に一時的に保留された作業指示データ(保留配車データ)を解除するか否かを判断するとともに解除すると判断した場合に当該作業指示データ保留手段18に保留されている作業指示データを上記作業指示データ保持手段13に送るように指示するデータ保留解除判断手段(配車保留解除判断手段ともいえる)19とから構成されている。
【0022】
なお、少なくとも、上記演算手段、判断手段などの各構成部材としてはコンピュータが用いられており、その機能はプログラムにより実行されるものである。
次に、本発明に係る作業指示システムにおける作業指示動作(配車指示動作)つまり作業指示方法について説明する。
【0023】
なお、現時点における全ての荷役車両7に対する荷役作業の内容、すなわち全ての荷役車両7に対する作業内容データが作業内容データ保持手段11に保持されるとともに、全ての荷役車両7の作業位置データが作業位置データ保持手段12に保持されているものとする。
【0024】
この状態で、例えば受付ゲート4にコンテナCを積載した搬送車両Aが到着すると、受付ゲート4から管理システムに所定データ(コンテナデータ、送り先などのコンテナを積み込むための受付データ)が送られ(管理システム側からは、確認の旨が送られる)、この管理システムにて、当該コンテナCのコンテナヤード3における載置箇所(作業位置)および荷降ろしなどの作業内容が決定され、そのための作業指示(配車要求)が自動的に出される。
【0025】
この作業指示は、作業指示データ保持手段13を経て、作業完了時間演算手段14に入力され、そして作業時間算出部14aでその作業内容を終わらせる作業時間を算出し、またこれと同時に、移動時間算出部14bにおいて、その作業位置に近い荷役車両7を複数選択する(コンテナヤードに存在している全ての荷役車両を対象にすることもできる)とともにこれら選択された各荷役車両7がその作業位置に移動する時間を算出し、さらにこれら求められた両時間が完了時間算出部14cに入力されてこれらが加算されて作業完了時間が求められる。
【0026】
次に、求められた作業完了時間が最適車両検出手段15に入力されて、最も作業完了時間が短くなるような荷役車両Cが最適な車両として検出される。
ここで、最適車両の検出方法について具体的に説明する。
【0027】
なお、ここでは、説明を簡単にするため、図3に示すような、レーン配置である場合について説明する。
図3に示すように、コンテナCを載置するレーンR(R1〜R3)が3列(以下、A列、B列、C列という)でもって並置されており、そして各レーンRについては、中央にこれら各レーンRを分断する通路Pが設けられて前後に分割されているものとする。なお、図面上、右側を前部レーン(R1a〜R3a)および左側を後部レーン(R1b〜R3b)という。
【0028】
上述した前提条件にて、新たにゲート作業(本船作業も同じ)が発生した場合の3つの具体例について説明する。
(1)図3に示すように、3つのレーンR(R1〜R3)には、それぞれ荷役車両7(7A〜7C)が配置されており且つこれら各荷役車両7には作業指示が無いものとする。
【0029】
そして、この状態で、B列のレーンR2で且つ前部レーンR2aのコンテナCを搬送車両に積み込む作業指示が出される場合、当該B列のレーンR2に存在している荷役車両7Bに対して作業指示が配信される。
(2)図4に示すように、A列のレーンR1とC列のレーンR3に荷役車両7A,7Cが配置されており(存在しており)且つこれら各荷役車両7A,7Cには作業指示が無いものとする。
【0030】
この状態で、荷役車両が配置されていないB列のレーンR2で且つ前部レーンR2aのコンテナCを搬送車両に積み込む作業指示が出される場合、各荷役車両7A,7Cによる作業完了時間が短くなる荷役車両に対して作業指示が配信される。ここでは、移動時間が短いC列の荷役車両7Cに配信される。
(3)図5に示すように、3つのレーンR(R1〜R3)にそれぞれ荷役車両7(7A〜7C)が配置されているとともにA列とC列の荷役車両7A,7Cには作業指示が無く、且つB列の前部レーンR2aに配置されている荷役車両7Bには基準時間(予め、ターミナル側で定められている作業終了までの目標時間で、例えば15分程度である)内で完了し得るように作業指示が出されているものとする。
【0031】
この状態で、B列の後部レーンR2bのコンテナCを搬送車両7に積み込む作業指示が出される場合、同じB列に存在している荷役車両7Bには出されずに(出すと、当該荷役車両7Bで発生している作業または新しく出される作業のいずれかが遅れることになるため)、作業が無いA列またはC列の荷役車両7A,7Cで且つその作業の完了時間が短くなる方に作業指示が配信される。
【0032】
このように、最適車両検出手段15にて、作業指示を配信すべき荷役車両が検出されると、この荷役車両が作業保留判断手段16に入力されて、その作業指示を直ちに実行すべきか(Y:配車指示)、それとも一時的に保留すべきか(N:配車保留)が判断される。
【0033】
このときの保留すべきか否かの判断としては、以下に示す3つの判断基準が設けられている。
1.該当する荷役車両の作業件数が予め定められた設定件数を越えている場合
2.該当する荷役車両が優先作業(優先的作業)を実行している場合
3.該当する荷役車両がそのレーンに存在しない場合で且つ隣接するレーンに存在している荷役車両が他の作業を実行している場合
上記3つのいずれかの判断基準に該当する場合には、作業指示(配車指示)が一時的に保留(プーリングともいう)すべきものであると判断され、この作業指示は作業指示データ保留手段18で保留される。
【0034】
ここで、保留指示動作について、作業指示の説明で用いたものと同様の図面に基づき具体的に説明する。
図6に示すように、A列のレーンR1とC列のレーンR3に荷役車両7A,7Cが配置されており且つこれら各荷役車両7A,7Cは作業を行っているものとする。
【0035】
この状態で、荷役車両が配置されていないB列のレーンR2のコンテナCを搬送車両に積み込む作業指示が出される場合、隣接するレーンR1,R3の各荷役車両7A,7Cが他の作業をそれぞれ実行しているため(上述の3番目の判断基準に該当する)、この作業指示は一時的に保留すべきものであると判断される。すなわち、この作業指示は、作業指示データ保留手段18にて保留される。
【0036】
具体的には説明しなかったが、上述の1番目または2番目の判断基準に該当する場合にも、その作業指示は一時的に保留すべきものであると判断されて、作業指示データ保留手段18にて保留される。
【0037】
勿論、上記3つの判断基準のいずれにも該当しない場合には、その作業指示データは配信手段17に送られ、無線を介して各荷役車両7に配信される。同時に、この作業指示データは、作業内容データ保持手段11および作業位置データ保持手段12に送られ、次の作業指示(配車)があった場合に、作業完了時間の演算用データおよび最適車両の検出用データとして用いられる。また、この作業指示データは、上記データ保持手段11,12以外であっても、必要な箇所(例えば、最適車両検出手段、作業保留判断手段など)に配信されている。なお、荷役車両7での作業が完了(終了)した場合には、作業完了の報告が管理システム側に送られ、またガントリクレーン6についても、当然ながら、管理システム側から作業データが配信されている。
【0038】
そして、上記作業指示データ保留手段18に保留された作業指示データは、データ保留解除判断手段19にて、常に、保留状態を解除すべきか否かが判断されている。すなわち、このデータ保留解除判断手段19には、保留の解除条件となるトリガー(イベントでもあり、保留解除指令ともいえる)が入力されており、このトリガーが入力された場合には、その保留が解除されて、その作業指示データが作業指示データ保持手段13に送られ、ここから、再度、作業指示(再配車要求である)が行われる。
【0039】
この保留状態を解除するトリガーは、例えば新規の作業指示(配車要求)があった場合、いずれかの作業が完了した場合、予め定められた時間(所定時間)が経過した場合などである。
【0040】
なお、再度、作業指示を出す場合には、作業指示データ保持手段13を介して作業完了時間演算手段14に送られて、上述したのと同様の手順にて、改めて、作業指示が荷役車両に配信される。
【0041】
ここで、上述した作業指示方法の概略内容を行程形式で表わすと、以下のようになる。
すなわち、コンテナターミナルにおける作業指示方法は、コンテナターミナルにてコンテナの荷役作業を行う荷役車両に、少なくとも、作業内容と作業位置とからなる作業指示を出す作業指示方法であって、
新規に荷役作業が発生した場合、現時点での各荷役車両の作業内容および作業位置に基づき、その作業を終わらせるとともに新規に発生した荷役作業の作業位置に移動するまでの上記各荷役車両ごとにおける作業完了時間をそれぞれ求める作業完了時間演算工程と、
この作業完了時間演算工程で求められた各荷役車両の作業完了時間が最も短くなる荷役車両を検出する最適車両検出工程と、
この最適車両検出工程で検出された荷役車両にその作業指示を出すべきかまたは保留しておくべきかを判断する作業保留判断工程と、
この作業保留判断工程で作業指示を出すべきであると判断された場合に、当該作業指示を該当する荷役車両に配信する配信工程と、
上記作業保留判断工程で作業指示を保留すべきであると判断された場合に、その作業指示データを保留する作業指示データ保留工程と、
この作業指示データ保留工程で保留された作業指示データを、新しく発生した作業指示などのイベントに基づき解除するか否かを判断するとともに、解除すると判断した場合に当該保留された作業指示データを再度上記作業完了時間演算工程に入力する方法であり、
また上記作業指示方法において、
作業保留判断工程における保留の判断基準を、最適車両検出手段で検出された荷役車両の作業件数が設定件数よりも多い場合、当該荷役車両が優先的に行うべき作業を行っている場合および当該荷役車両がその作業を行うべきコンテナ載置用レーンに存在しない場合とする方法である。
【0042】
このように、新しい作業指示(配車要求)に応じて、現時点における各荷役車両での作業指示を考慮して最適なつまり当該作業指示が迅速に(または最も早く)行い得る荷役車両を検出するとともに、この荷役車両の現時点における作業を直ちに実行できない場合に、その作業指示を一時的に保留し、所定のトリガーつまり保留解除指令があった場合に、再度、作業指示(配車要求)を出すようにしているので、常に、最適な作業指示を行うことができる。
【0043】
ところで、上記実施例においては、作業内容データ保持手段11と作業位置データ保持手段12とを別々に設けるように説明したが、同じ手段に設けるようにしてもよく、また作業完了時間演算手段14と最適車両検出手段15とについても同様に、別々に設けるのではなく、同じ手段に設けるようにしてもよい。さらに、作業指示データ保持手段13を設けずに、新しい作業指示(配車要求)および再度の作業指示(再配車要求)を、直接、作業完了時間演算手段14に入力するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 コンテナターミナル
2 岸壁
3 コンテナヤード
4 受付ゲート
5 管理棟
6 ガントリクレーン
7 荷役車両
11 作業内容データ保持手段
12 車両位置データ保持手段
13 作業指示データ保持手段
14 作業完了時間演算手段
14a 作業時間算出部
14b 移動時間算出部
14c 完了時間算出部
15 最適車両検出手段
16 作業保留判断手段
17 配信手段
18 作業指示データ保留手段
19 データ保留解除判断手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナターミナルにてコンテナの荷役作業を行う荷役車両に、少なくとも、作業内容と作業位置とからなる作業指示を出す作業指示システムであって、
現時点での各荷役車両に対する作業内容を保持している作業内容データ保持手段および各荷役車両の作業位置を保持している作業位置データ保持手段と、
新規に発生した作業指示を入力するとともに、上記各データ保持手段に保持されている現時点での作業内容および作業位置に基づき各荷役車両ごとに当該新規に発生した作業に要する時間を算出する作業時間算出部、荷役車両が新規に発生した作業位置に移動するのに必要な時間を算出する移動時間算出部およびこれら両時間算出部で算出された作業時間および移動時間を加算して作業完了時間を算出する完了時間算出部を具備する作業完了時間演算手段と、
この作業完了時間演算手段で求められた作業完了時間が最も短くなる荷役車両を検出する最適車両検出手段と、
この最適車両検出手段で検出された荷役車両にその作業指示を出すべきかまたは保留すべきかを判断する作業保留判断手段と、
この作業保留判断手段で作業指示を出すべきであると判断された場合に、当該作業指示を上記検出された荷役車両に配信するための配信手段と、
上記作業保留判断手段で作業指示を保留すべきであると判断された場合に、その作業指示を保留するための作業指示データ保留手段と、
この作業指示データ保留手段に保留された作業指示データの保留を解除するか否かを判断するとともに解除すると判断した場合に当該作業指示データを上記作業完了時間演算手段に入力させるように指示するデータ保留解除判断手段とから構成したことを特徴とするコンテナターミナルにおける作業指示システム。
【請求項2】
作業保留判断手段における保留の判断基準が、最適車両検出手段で検出された荷役車両の作業件数が設定件数よりも多い場合、当該荷役車両が優先的に行うべき作業を行っている場合および当該荷役車両がその作業を行うべきコンテナ載置用レーンに存在しない場合であることを特徴とする請求項1に記載のコンテナターミナルにおける作業指示システム。
【請求項3】
コンテナターミナルにてコンテナの荷役作業を行う荷役車両に、少なくとも、作業内容と作業位置とからなる作業指示を出す作業指示方法であって、
新規に荷役作業が発生した場合、現時点での各荷役車両の作業内容および作業位置に基づき、その作業を終わらせるとともに新規に発生した荷役作業の作業位置に移動するまでの上記各荷役車両ごとにおける作業完了時間をそれぞれ求める作業完了時間演算工程と、
この作業完了時間演算工程で求められた各荷役車両の作業完了時間が最も短くなる荷役車両を検出する最適車両検出工程と、
この最適車両検出工程で検出された荷役車両にその作業指示を出すべきかまたは保留しておくべきかを判断する作業保留判断工程と、
この作業保留判断工程で作業指示を出すべきであると判断された場合に、当該作業指示を該当する荷役車両に配信する配信工程と、
上記作業保留判断工程で作業指示を保留すべきであると判断された場合に、その作業指示データを保留する作業指示データ保留工程と、
この作業指示データ保留工程で保留された作業指示データを、新しく発生した作業指示などのイベントに基づき解除するか否かを判断するとともに、解除すると判断した場合に当該保留された作業指示データを再度上記作業完了時間演算工程に入力することを特徴とするコンテナターミナルにおける作業指示方法。
【請求項4】
作業保留判断工程における保留の判断基準が、最適車両検出手段で検出された荷役車両の作業件数が設定件数よりも多い場合、当該荷役車両が優先的に行うべき作業を行っている場合および当該荷役車両がその作業を行うべきコンテナ載置用レーンに存在しない場合であることを特徴とする請求項3に記載のコンテナターミナルにおける作業指示方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−73796(P2011−73796A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223572(P2009−223572)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)