説明

コンテナヤードおよび給電方法

【課題】低いコストで効果的に高調波対策を行う。
【解決手段】給電線ごとに設けられた三相変圧器のうち、対をなす2つの三相変圧器の一方の三相変圧器71Aで、電源電力と同相の電圧位相からなる第1の三相交流電力を動作電力として出力し、対をなす2つの三相変圧器の他方の三相変圧器71Bで、電源電力に対して電圧位相がπ/6だけずれた第2の三相交流電力を動作電力として出力し、クレーン装置10の蓄電装置4で、三相全波整流器1から共通母線Bへ供給された直流電力を蓄電し、直流電力の低減時に当該蓄電電力を共通母線Bへ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーンに沿って延設した給電線を介して給電された電力により、コンテナの荷役を行うクレーン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーン装置を用いて、船舶やトレーラーに対するコンテナの積み降ろしなどの荷役を行うコンテナヤードには、地上の電力設備から、レーンに沿って延設した給電線を介してクレーン装置へ給電する、いわゆる電動化方式のコンテナヤードがある(例えば、特許文献1など参照)。
【0003】
図9は、一般的なコンテナヤードの構成例を示す平面図である。
コンテナヤード100は、港の埠頭9Aに面して設けられており、埠頭9Aに配置されたコンテナクレーン9Cにより、船舶9Bに対するコンテナ9の積み降ろしが行われる。
また、これらコンテナヤード100は、その配置位置や使用目的に応じて、埠頭9Aに沿って複数の荷役領域、すなわちバース7に分割されている。
【0004】
各バース7には、コンテナ9の載置場所として、コンテナ9の長手方向に沿って伸延する平面視長方形状のエリアからなるレーン72が複数設けられており、レーン72内を当該レーン72の長手方向Xにクレーン装置10が走行することにより、レーン72内に載置されているコンテナ9が効率よく仕分けされる。なお、図9では、コンテナ9が岸壁と平行する方向に載置されている例が示されているが、これに限定されるものではなく、岸壁と直交する方向に載置されているケースもある。
【0005】
各レーン72には、クレーン装置10に対して電力を供給する三相変圧器71が設けられており、レーン72に沿って延設されている給電線8を介して、三相変圧器71から電力がクレーン装置10へ供給される。給電線8は、支柱に架設されたトロリー線(バスバー)からなり、クレーン装置10に搭載する集電装置を給電線8と電気的に接触させることにより、クレーン装置10が三相変圧器71から電力を集電するものとなっている。また、バース7ごとに、商用電源を受電変圧する受電設備70が設けられており、受電設備70で得られた動作電源が、当該バース7内の各三相変圧器71へ供給される。
【0006】
なお、給電線8は、トロリー線に限定されるものではなく、一般的なケーブルリールやケーブルリールキャリアを用いてもよい。また、図9では、隣接する2つのレーン72の隣接端に給電線8が隣り合わせに延設されている例が示されているが、これに限定されるものではなく、レーン72ごとに、同一端に給電線8が個別に延設されているケースもある。
【0007】
コンテナヤード100には、道路L側にゲートGが設けられており、トレーラー75はこのゲートGを通過してコンテナ9の搬入・搬出を行う。
レーン72には、トレーラー75の通路が設けられており、この通路に停車したトレーラー75に対して、クレーン装置10によるコンテナ9の積み降ろしが行われる。
クレーン装置10は、レーン72ごとに対応付けて配置してもよいが、他のレーン72へ移動させることにより効率よく荷役を行うことができる。このような場合、レーン72の端部に隣接して設けられているターンレーン74において、長手方向Xと直交する直角方向Yへクレーン装置10を直角走行させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−023817号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「高調波抑制対策技術指針」(電気技術指針 高調波編)、JEAG 9702-1995、社団法人日本電気協会、電気技術基準調査委員会、平成7年10月25日第3刷発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような電動化方式のコンテナヤードでは、各クレーン装置10にインバータを搭載し、三相変圧器71から給電線8を介して供給された電力を、三相全波整流器で交直流変換して得られた直流電力から、さらにインバータで直交流変換して交流電動機からなる巻上電動機や走行電動機を駆動し、あるいは、この直流電力をさらに電圧変換して得られた駆動用直流電力で直流電動機からなる巻上電動機や走行電動機を駆動するものとなっている。
このような三相全波整流器では、交直流変換の際、商用電力の基本波より周波数の高い高調波が発生することが知られている。したがって、クレーン装置10から給電線8および三相変圧器71を介して商用電力系統へ、このような高調波が高いレベルで漏洩した場合、商用電力系統の電力を利用している他の電気機器に対して悪影響を及ぼす可能性がある。
【0011】
このため、コンテナヤードでは、三相変圧器71やその上位の受電設備に、商用電力系統へ漏洩する高調波を抑制するPWMコンバータや高周波フィルタを設けるなど、高調波対策が必要となる。しかしながら、このような高調波抑制設備は、非常に高価な製品が多く、またコンテナヤードなどの大電力対応のものはさらに高価となるため、初期投資が大きな負担となるという問題点があった。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、低いコストで効果的に高調波対策を行うことができるクレーン装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために、本発明にかかるコンテナヤードは、コンテナの載置場所に延設されて、コンテナの荷役を行うクレーン装置へ動作電力を給電する給電線と、給電線ごとに設けられて、上位電源設備から供給された電源電力を変圧し、得られた動作電力を当該給電線へ供給する複数の三相変圧器とを備え、三相変圧器のうち、対をなす2つの三相変圧器の一方は、電源電力と同相の電圧位相からなる第1の三相交流電力を動作電力として出力する第1の三相変圧器からなり、対をなす2つの三相変圧器の他方は、電源電力に対して電圧位相がπ/6だけずれた第2の三相交流電力を動作電力として出力する第2の三相変圧器からなり、クレーン装置に、給電線から供給された動作電力を全波整流し、得られた直流電力を共通母線へ供給する三相全波整流器と、三相全波整流器から共通母線へ供給された直流電力に基づいて駆動してコンテナの巻上下を行う電動機と、三相全波整流器から共通母線へ供給された直流電力を蓄電し、直流電力の低減時に当該蓄電電力を共通母線へ供給する蓄電装置とを備えている。
【0013】
この際、第1の三相変圧器として、Δ−Δ結線方式またはY−Y結線方式の三相変圧器を用い、第2の三相変圧器として、Δ−Y結線方式またはY−Δ結線方式の三相変圧器を用いてもよい。
【0014】
また、本発明にかかる給電方法は、コンテナの載置場所に延設されて、コンテナの荷役を行うクレーン装置へ動作電力を給電する給電線と、給電線ごとに設けられて、上位電源設備から供給された電源電力を変圧し、得られた動作電力を当該給電線へ供給する複数の三相変圧器とを備えるコンテナヤードで用いられる給電方式であって、三相変圧器のうち、対をなす2つの三相変圧器の一方が、電源電力と同相の電圧位相からなる第1の三相交流電力を動作電力として出力するステップと、対をなす2つの三相変圧器の他方が、電源電力に対して電圧位相がπ/6だけずれた第2の三相交流電力を動作電力として出力するステップと、クレーン装置が、給電線から供給された動作電力を三相全波整流器で全波整流し、得られた直流電力を共通母線へ供給し、三相全波整流器から共通母線へ供給された直流電力に基づいてコンテナの巻上下を行う電動機を駆動し、三相全波整流器から共通母線へ供給された直流電力を蓄電装置で蓄電し、直流電力の低減時に当該蓄電電力を共通母線へ供給するステップとを備えている。
【0015】
この際、第1の三相変圧器として、Δ−Δ結線方式またはY−Y結線方式の三相変圧器を用い、第2の三相変圧器として、Δ−Y結線方式またはY−Δ結線方式の三相変圧器を用いるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、クレーン装置へ供給される動作電力の電圧位相が、対をなす2つの三相変圧器間でπ/6だけずれるため、クレーン装置の三相全波整流器で発生する5次高調波および7次高調波が、これら三相変圧器の一次側において、互いに逆位相の関係となる。このため、これら三相変圧器の一次側に接続されている給電線上で、5次高調波および7次高調波が打ち消される。
これに加えて、クレーン装置において、蓄電装置からの蓄電電力により、当該クレーン装置で消費する動作電源の変動が抑制されるため、対をなす2つの三相変圧器の一次側へ漏洩する5次高調波および7次高調波のレベル変動も抑制されて平均化される。
【0017】
したがって、三相変圧器の一次側に接続されている給電線上で、5次高調波および7次高調波が打ち消される際、双方の5次高調波および7次高調波のレベル差を少なくすることができる。このため、双方のレベル差により残留する5次高調波および7次高調波のレベルを低減することができ、結果として、商用電力系統へ漏洩する高調波が、極めて効果的に低減されることになる。
【0018】
このため、コンテナヤードにおいて、三相変圧器やその上位の受電設備に、商用電力系統へ漏洩する高調波を抑制するPWMコンバータや高周波フィルタなどの、非常に高価な設備を設ける場合と比較して、三相変圧器の結線方式を変更するだけで、高調波対策を行うことができる。また、このような三相変圧器は、一般的なものでよく、低いコストで効果的に高調波対策を行うことができる。これにより、コンテナヤードの初期投資を大幅に軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施の形態にかかるコンテナヤードの給電構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態にかかるコンテナヤードの電力系統を示す回路図である。
【図3】Δ−Y結線方式変圧器における電圧位相を示す説明図である。
【図4】クレーン装置での負荷の変化を示す信号波形図である。
【図5】第2の実施の形態にかかるクレーン装置の電力系統を示す回路図である。
【図6】Y−Δ結線方式変圧器における電圧位相を示す説明図である。
【図7】第3の実施の形態にかかるコンテナヤードの給電構成を示すブロック図である。
【図8】第3の実施の形態にかかる他のコンテナヤードの給電構成を示すブロック図である。
【図9】一般的なコンテナヤードの構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるコンテナヤード100について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかるコンテナヤードの給電構成を示すブロック図である。
【0021】
コンテナヤード100は、港の埠頭に面して設けられて、船舶やトレーラーに対するコンテナの積み降ろしなどの荷役を行う施設であり、その配置位置や使用目的に応じて、埠頭に沿って荷役領域、すなわちバース7が設けられている。
図1に示すように、バース7には、コンテナの載置場所として、コンテナの長手方向に沿って伸延する平面視長方形状のエリアからなるレーン72が複数設けられており、レーン72内を当該レーン72の長手方向に沿ってクレーン装置10(10A,10B)が走行することにより、レーン72内に載置されているコンテナが効率よく仕分けされる。
【0022】
また、図1では、レーン72が長手方向に2つのブロック73A,73Bに分割されており、ブロック73Aには、三相変圧器71Aと給電線8Aとが設けられており、ブロック73Bには、三相変圧器71Bと給電線8Bとが設けられている。この構成によれば、レーン72の中央から給電線8A,8Bへ動作電力を給電できるので、三相変圧器71からクレーン装置10までの給電線8A,8Bの平均距離を短縮できるため、給電線8A,8Bでの電力損失を抑制できる。
【0023】
商用電力系統から供給された商用電力は、バース7ごとに設けられた受電設備70、およびレーン72ごとに設けられた三相変圧器71(71A,71B)を介して、各クレーン装置10(10A,10B)へ供給される。
受電設備70は、給電線80Sを介して供給された商用電力を受電して、自設備内の三相変圧器で一旦降圧し、得られた電源電力を給電線80を介して各レーン72へ供給する電源設備である。
【0024】
三相変圧器71(71A,71B)は、各レーン72のブロック73(73A,73B)に延設された給電線8(8A,8B)ごとに設けられて、受電設備70から給電線80を介して供給され電源電力を降圧し、得られた動作電源を、当該ブロック73の給電線8を介して当該各クレーン装置10へそれぞれ供給する電源設備である。
【0025】
これら三相変圧器71は、それぞれ2つの三相変圧器で対をなしており、図1の例では、同一レーン72の2つのブロック73A,73Bに設置されている2つの三相変圧器71A,71Bで1つの対をなしている。
【0026】
これら対をなす2つの三相変圧器の一方の三相変圧器(第1の三相変圧器)71Aは、Δ−Δ結線方式またはY−Y結線方式の三相変圧器からなり、上位電源設備である受電設備70からの電源電力と同相の電圧位相からなる第1の三相交流電力を動作電力として出力する機能を有している。
また、対をなす2つの三相変圧器の他方の三相変圧器(第2の三相変圧器)71Bは、Δ−Y結線方式またはY−Δ結線方式の三相変圧器からなり、上位電源設備である受電設備70からの電源電力に対して電圧位相がπ/6だけずれた第2の三相交流電力を動作電力として出力する機能を有している。
【0027】
クレーン装置10(10A,10B)は、給電線8(8A,8B)を介して三相変圧器71(71A,71B)から給電された動作電力で、各種電動機を駆動してコンテナなどの荷物の積み降ろしや、コンテナヤード100内での走行などの各種クレーン動作を行うクレーン装置である。
このクレーン装置10には、主な構成として、三相全波整流器1、インバータ2、電動機3、蓄電装置4、および共通母線Bが設けられている。
【0028】
三相全波整流器1は、ダイオードなどの半導体整流素子からなり、給電線8(8A,8B)から集電した三相交流の動作電力11(11A,11B)を直流電力12(12A,12B)へ変換して共通母線Bへ供給する機能を有している。
電動機3は、コンテナの巻上げ下げ、横行、走行などを行うための交流電動機であり、用途に応じてそれぞれ個別に設けられている。
【0029】
インバータ2は、三相全波整流器1から共通母線Bへ供給された直流電力を交流電力に変換した後、電動機3へ供給するDC/AC変換器である。
蓄電装置40は、キャパシタやリチウムイオン電池などの蓄電池を内蔵する回路装置であり、三相全波整流器1から共通母線Bへ供給された直流電力を蓄電し、レーン替え時などの給電線8からクレーン装置10が離脱して地上給電が停止した際、さらにはコンテナ巻上げ時などの大電力を消費する直流電力低減時に当該蓄電電力を共通母線へ供給する機能を有している。
【0030】
共通母線B上へ供給される電力としては、三相全波整流器1から供給される直流電力12のほかに、荷物の巻き下げ時に電動機3からインバータ2を介して共通母線Bに供給される回生電力がある。なお、共通母線B上に供給されている全電力のうち、電動機3ほかクレーン装置10の各部で使用する電力以外の残りの電力、すなわち余剰電力を蓄電装置4へ蓄電する場合が一般的であるが、クレーン装置10の各部で使用する電力を制限して得た余剰電力を蓄電装置4へ蓄電するようにしてもよい。
【0031】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図2−図4を参照して、本実施の形態にかかるコンテナヤード100の動作について説明する。図2は、第1の実施の形態にかかるコンテナヤードの電力系統を示す回路図である。図3は、Δ−Y結線方式変圧器における電圧位相を示す説明図である。図4は、クレーン装置での負荷の変化を示す信号波形図である。
【0032】
本実施の形態にかかるコンテナヤード100では、図1および図2に示すように、受電設備70から給電線80を介して供給された電源電力が、レーン72のブロック73(73A,73B)のそれぞれに設置されている三相変圧器71(71A,71B)へ供給される。
三相変圧器71(71A,71B)は、一次側巻線に供給された電源電力を降圧し、二次側巻線から得られた三相交流電力11(11A,11B)を、それぞれ対応する給電線8(8A,8B)を介して当該ブロック73(73A,73B)内のクレーン装置10(10A,10B)へ、動作電力として供給する。図2の例では、三相変圧器71AとしてΔ−Δ結線方式の三相変圧器が用いられており、三相変圧器71BとしてΔ−Y結線方式の三相変圧器が用いられている。
【0033】
図2に示すように、クレーン装置10の三相全波整流器1は、整流素子としてダイオードを用いた三相全波整流ブリッジ回路から構成されている。
三相全波整流器1の正側出力端子+は、直流リアクタンスLを介して、平滑コンデンサCの正側端子と接続されている。また、三相全波整流器1の負側出力端子−は、平滑コンデンサCの負側端子と接続されている。これら平滑コンデンサCの正側端子と負側端子に、共通母線Bの正側配線B+および負側配線B−が接続されている。
【0034】
クレーン装置10Aは、給電線8Aを介して三相変圧器71Aから供給された三相交流電力11Aを三相全波整流器1で全波整流する。三相全波整流器1の正側出力端子+と負側出力端子−との間に出力された直流電力12Aは、直流リアクタンスLおよび平滑コンデンサCにより平滑化された後、共通母線Bへ供給される。
また、クレーン装置10Bは、給電線8Bを介して三相変圧器71Bから供給された三相交流電力11Bを三相全波整流器1で全波整流する。三相全波整流器1の正側出力端子+と負側出力端子−との間に出力された直流電力12Bは、直流リアクタンスLおよび平滑コンデンサCにより平滑化された後、共通母線Bへ供給される。
【0035】
三相交流を変圧する三相変圧器には、一次側および二次側の巻線に関するΔ(デルタ)結線およびY(スター)結線の2種類の結線方式の組合せ、すなわちΔ−Δ、Δ−Y、Y−Δ、およびY−Yの4種類の結線方式が存在する。
【0036】
Δ結線は、三相各相を相電圧が加わる向きに接続し閉回路とする結線であり、3つの巻線の端部がリング状に直列接続され、これら3つの接続点に三相各相がそれぞれ接続される。
Y結線は、三相各相をその一端の中性点で接続する結線であり、3つの巻線の一方が中性点に共通接続され、3つの巻線の他端に三相各相がそれぞれ接続される。
【0037】
これら4種類の三相変圧器のうち、Δ−Δ結線方式およびY−Y結線方式については、一次側および二次側で結線方式が同じであることから、一次側および二次側で電圧位相にずれは生じない。一方、Δ−Y結線方式は、図3に示すように、一次側に比較して、二次側の電圧位相がπ/6だけ進みを生じる。
【0038】
通常、三相交流を三相全波整流器で全波整流した場合、得られる直流電圧波形に基本波の1/6周期のリップルが発生し、三相全波整流器に入力される交流電流波形には、5次高調波および7次高調波を主として、これ以上の高次高調波がそれぞれ発生する。これら交流電流波形上の高調波は、一般に、次数が高くなるにつれてそのレベルが小さくなる傾向を有している。具体的には、基本波に対する各高調波成分の含有率は、5次高調波が17.5%、7次高調波が11.0%、11次高調波が4.5%、13次高調波が3.0%となる。したがって、比較的レベルの大きい5次高調波および7次高調波を低減することが、効果的な高調波対策となる。
【0039】
ここで、図2に示すように、受電設備70からの給電線80に対して、三相変圧器71A,71Bの一次側を並列的に接続した場合、三相変圧器71Aの二次側からクレーン装置10Aの三相全波整流器1へ供給される三相交流電力11Aに対して、基本波のπ/6の位相差を持つ三相交流電力11Bが、三相変圧器71Bの二次側からクレーン装置10Bの三相全波整流器1へ供給される。
【0040】
このため、例えば非特許文献1の88頁−91頁「(2)キャンセル効果」欄や同じく108頁−120頁「3.2.1多パルス化」欄に記載されているように、三相変圧器71Aの一次側における5次高調波と三相変圧器71Bの一次側における5次高調波とは、互いに逆位相となるため、それぞれの三相変圧器71A,71Bの一次側に接続されている給電線80上で互いに打ち消し合って、そのレベルが低減する。また、三相変圧器71Aからの7次高調波と三相変圧器71Bからの7次高調波とは、互いに逆位相となるため、それぞれの三相変圧器71A,71Bの一次側に接続されている給電線80上で互いに打ち消し合って、そのレベルが低減する。これにより、結果として、給電線80S側、すなわち商用電力系統へ漏洩する高調波が抑制されることになる。
【0041】
一方、クレーン装置10(10A,10B)で発生する負荷は、図4に示すように、クレーン動作の内容に応じて、大きく変動する。図4において、波形51は、クレーン装置全体での負荷であり、波形52は、蓄電装置4で充放電される蓄電電力を示している。また、波形53は、クレーン装置全体で消費する動作電力を示している。
【0042】
例えば、クレーン装置10において、コンテナをレーン72内の載置場所から巻上げてトレーラーへ載せる場合、コンテナを巻上げる巻上げ動作時の負荷が最も大きい。この巻上げ動作の開始に応じて、共通母線B上の直流電力の直流電圧が低下するため、蓄電装置4に蓄電されている蓄電電力の直流電圧より低くなった時点で、蓄電装置4の蓄電電力が共通母線Bへ供給される。これにより、三相変圧器71(71A,71B)からクレーン装置10へ供給されて消費される動作電力、すなわち三相交流電力11(11A,11B)の変動が抑制される。
【0043】
同様に、巻上げたコンテナを吊持している架台上部のトロリーをレーン72の短手方向に移動させる横行動作、およびクレーン装置10をレーン72の長手方向に沿って走行させる走行動作においても、蓄電装置4の蓄電電力が共通母線Bへ供給され、三相交流電力11の変動が抑制される。
なお、レーン替えの際にターンレーンに沿ってクレーン装置10を直角走行させる直角走行動作においては、給電線8(8A,8B)からクレーン装置10が離脱するため、三相交流電力11の供給が停止し、直角走行時に要する負荷のすべてが、蓄電装置4の蓄電電力により供給される。
【0044】
一方、巻上げたコンテナをトレーラーや載置場所へ降ろす巻下げ動作時には、電動機3がコンテナの重さで回転するため、この回転で回生電力が発生する。この回生電力は、インバータ2を介して直流電力に逆変換されて共通母線Bへ供給される。したがって、共通母線B上の直流電力の直流電圧が上昇するため、蓄電装置4に蓄電されている蓄電電力の直流電圧より高くなった時点で、共通母線B上の直流電力が蓄電装置4へ蓄電電力として蓄電される。
【0045】
なお、三相変圧器71からは、常に三相交流電力11が動作電力としてクレーン装置10へ供給されており、この動作電力から直流電力12が三相全波整流器1により生成されて共通母線Bへ供給されている。したがって、クレーン装置10において、巻上げ、横行、走行、直角走行などの負荷の大きい動作が行われていない場合で、かつ蓄電装置の蓄電電力が必要以上に低下している場合、共通母線B上の直流電力が、蓄電電力として蓄電装置4へ蓄電されることになる。
【0046】
このようにして、クレーン装置10では、負荷の大きい動作を行った場合、蓄電装置4から蓄電電力が供給されるため、三相変圧器71からクレーン装置10へ供給される動作電力、すなわち三相交流電力11の変動が抑制される。このため、動作電力の増大に応じて、三相全波整流器1で発生する5次高調波および7次高調波のレベルも増大するものの、蓄電電力により動作電力の変動が抑制されるため、5次高調波および7次高調波のレベル変動が抑制される。これにより、クレーン装置10から給電線8を介して三相変圧器71へ漏洩する5次高調波および7次高調波のレベル変動が抑制されて平均化される。
【0047】
したがって、三相変圧器71の一次側に接続されている給電線80上で、5次高調波および7次高調波が打ち消される際、双方の5次高調波および7次高調波のレベル差を少なくすることができる。このため、双方のレベル差により残留する5次高調波および7次高調波のレベルを低減することができ、極めて効果的に5次高調波および7次高調波の発生を抑制することができる。
【0048】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、給電線ごとに設けられた三相変圧器71のうち、対をなす2つの三相変圧器の一方の三相変圧器71A、電源電力と同相の電圧位相からなる第1の三相交流電力11Aを動作電力として出力し、対をなす2つの三相変圧器の他方の三相変圧器71Bで、電源電力に対して電圧位相がπ/6だけずれた第2の三相交流電力11Bを動作電力として出力し、クレーン装置10(10A,10B)の蓄電装置4で、三相全波整流器1から共通母線Bへ供給された直流電力を蓄電し、直流電力の低減時に当該蓄電電力を共通母線Bへ供給するようにしたものである。
【0049】
これにより、クレーン装置10A,10Bへ供給される動作電力11A,11Bの電圧位相が、対をなす2つの三相変圧器71A,71B間でπ/6だけずれるため、クレーン装置10A,10Bの三相全波整流器1で発生する5次高調波および7次高調波が、これら三相変圧器71A,71Bの一次側において、互いに逆位相の関係となる。このため、これら三相変圧器71A,71Bの一次側に接続されている給電線80上で、5次高調波および7次高調波が打ち消される。
これに加えて、クレーン装置10A,10Bにおいて、蓄電装置4からの蓄電電力により、当該クレーン装置10A,10Bで消費する動作電源の変動が抑制されるため、対をなす2つの三相変圧器71A,71Bの一次側へ漏洩する5次高調波および7次高調波のレベル変動も抑制されて平均化される。
【0050】
したがって、三相変圧器71A,71Bの一次側に接続されている給電線80上で、5次高調波および7次高調波が打ち消される際、双方の5次高調波および7次高調波のレベル差を少なくすることができる。このため、双方のレベル差により残留する5次高調波および7次高調波のレベルを低減することができ、結果として、地上設備の三相変圧器71側、すなわち商用電力系統へ漏洩する高調波が、極めて効果的に低減されることになる。
【0051】
このため、コンテナヤードにおいて、三相変圧器71A,71Bやその上位の受電設備に、商用電力系統へ漏洩する高調波を抑制するPWMコンバータや高周波フィルタなどの、非常に高価な設備を設ける場合と比較して、三相変圧器71A,71Bの結線方式を変更するだけで、高調波対策を行うことができる。また、このような三相変圧器は、一般的なものでよく、低いコストで効果的に高調波対策を行うことができる。これにより、コンテナヤードの初期投資を大幅に軽減することが可能となる。
【0052】
また、本実施の形態では、1つのレーン72を2つに分割して設けたブロック73A,73Bに配置した三相変圧器71A,71Bを対として、これら対をなす2つの三相変圧器の他方の三相変圧器71Bで、一方の三相変圧器71Aに対して電圧位相がπ/6だけずれた三相交流電力11を出力するようにしたので、クレーン装置10で発生した高調波を、その高調波の発生源から可能な限り近い位置で打ち消すことができる。これにより、高調波が給電線を伝搬する距離を短縮することができ、高調波の伝搬により発生する悪影響を最小限に抑制することが可能となる。
【0053】
また、本実施の形態では、クレーン装置10において、共通母線B上の直流電力をインバータ2で変換して得られた交流電力で、交流電動機からなる電動機3を駆動する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。共通母線B上の直流電力をインバータ2で変換して得られた直流電力で、直流電動機からなる電動機3を駆動する場合にも、前述と同様にして本実施の形態を適用でき、同様の作用効果を得ることができる。
【0054】
[第2の実施の形態]
次に、図5および図6を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかるクレーン装置10について説明する。図5は、第2の実施の形態にかかるクレーン装置の電力系統を示す回路図である。図6は、Y−Δ結線方式変圧器における電圧位相を示す説明図である。
【0055】
第1の実施の形態では、三相変圧器71Bとして、Δ−Y結線方式の三相変圧器を用いた場合を例として説明した。本実施の形態では、三相変圧器71Bとして、Y−Δ結線方式の三相変圧器を用いた場合について説明する。
【0056】
本実施の形態にかかるコンテナヤード100では、前述した図1と同様に、受電設備70から給電線80を介して供給された電源電力が、レーン72のブロック73(73A,73B)Bのそれぞれに設置されている三相変圧器71(71A,71B)へ供給される。
ここで、本実施の形態では、図5に示すように、三相変圧器71AとしてΔ−Δ結線方式の三相変圧器が用いられており、三相変圧器71BとしてY−Δ結線方式の三相変圧器が用いられている。
【0057】
Y−Δ結線方式は、図6に示すように、一次側に比較して、二次側の電圧位相がπ/6だけ遅れを生じる。したがって、受電設備70からの給電線80に対して、三相変圧器71A,71Bの一次側を並列的に接続した場合、三相変圧器71Aの二次側からクレーン装置10Aの三相全波整流器1へ供給される三相交流電力11Aに対して、基本波のπ/6の位相差を持つ三相交流電力11Bが、三相変圧器71Bの二次側からクレーン装置10Bの三相全波整流器1へ供給される。
【0058】
このため、第1の実施の形態と同様の原理により、三相変圧器71Aの一次側における5次高調波と三相変圧器71Bの一次側における5次高調波とは、互いに逆位相となるため、それぞれの三相変圧器71A,71Bの一次側に接続されている給電線80上で互いに打ち消し合って、そのレベルが低減する。また、三相変圧器71Aからの7次高調波と三相変圧器71Bからの7次高調波とは、互いに逆位相となるため、それぞれの三相変圧器71A,71Bの一次側に接続されている給電線80上で互いに打ち消し合って、そのレベルが低減する。これにより、結果として、給電線80S側、すなわち商用電力系統へ漏洩する高調波が抑制されることになる。
【0059】
また、クレーン装置10(10A,10B)では、第1の実施の形態と同様にして、負荷の大きい動作を行った場合、蓄電装置4から蓄電電力が供給されるため、三相変圧器71(71A,71B)からクレーン装置10へ供給される動作電力、すなわち三相交流電力11(11A,11B)の変動が抑制される。このため、動作電力の増大に応じて、三相全波整流器1で発生する5次高調波および7次高調波のレベルも増大するものの、蓄電電力により動作電力の変動が抑制されるため、5次高調波および7次高調波のレベル変動が抑制される。これにより、クレーン装置10から給電線8を介して三相変圧器71へ漏洩する5次高調波および7次高調波のレベル変動が抑制されて平均化される。
【0060】
したがって、三相変圧器71の一次側に接続されている給電線80上で、5次高調波および7次高調波が打ち消される際、双方の5次高調波および7次高調波のレベル差を少なくすることができる。このため、双方のレベル差により残留する5次高調波および7次高調波のレベルを低減することができ、極めて効果的に5次高調波および7次高調波の発生を抑制することができる。
【0061】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、第1の実施の形態のうち、三相変圧器71BとしてY−Δ結線方式の三相変圧器を用いるようにしたので、クレーン装置10(10A,10B)の三相全波整流器1から発生する5次高調波および7次高調波が、三相変圧器71A,71Bの一次側において逆位相となって、三相変圧器71A,71Bの一次側に接続されている給電線80上で、5次高調波および7次高調波が打ち消される。
【0062】
これに加えて、蓄電装置4からの蓄電電力により、クレーン装置10A,10Bで消費する動作電源の変動が抑制されるため、対をなす2つの三相変圧器71A,71Bの一次側へ漏洩する5次高調波および7次高調波のレベル変動も抑制されて平均化される。
【0063】
したがって、三相変圧器71A,71Bの一次側に接続されている給電線80上で、5次高調波および7次高調波が打ち消される際、双方の5次高調波および7次高調波のレベル差を少なくすることができる。このため、双方のレベル差により残留する5次高調波および7次高調波のレベルを低減することができ、結果として、受電設備70側、すなわち商用電力系統へ漏洩する高調波が、極めて効果的に低減されることになり、第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0064】
[第3の実施の形態]
次に、図7を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかるコンテナヤードについて説明する。図7は、第3の実施の形態にかかるコンテナヤードの給電構成を示すブロック図である。
【0065】
第1および第2の実施の形態では、1つのレーン72を2つに分割して設けたブロック73A,73Bに配置した三相変圧器71A,71Bを対として電圧位相を調整する場合を例として説明した。本実施の形態では、隣接する2つのレーン72A,72Bに配置した三相変圧器71A,71Bを対として電圧位相を調整する場合について説明する。
【0066】
図7の場合、バース7内で隣接するレーン72A,72Bのそれぞれに設けられている2つの三相変圧器71A,71Bが対をなしており、それぞれ給電線80を介して受電設備70に接続されている。また、受電設備70には、給電線80Sを介して商用電力が変電所から供給されている。
【0067】
本実施の形態において、対をなす2つの三相変圧器のうち、一方の三相変圧器71Aは、受電設備70からの電源電力と同相の電圧位相からなる第1の三相交流電力を生成し、動作電力として給電線8Aへ出力する、例えばΔ−Δ結線方式またはY−Y結線方式の第1の三相変圧器からなる。
また、対をなす2つの三相変圧器のうち、他方の三相変圧器71Bは、受電設備70からの電源電力に対して電圧位相がπ/6だけずれた第2の三相交流電力を生成し、動作電力として給電線8Bへ出力する、例えばΔ−Y結線方式またはY−Δ結線方式の第2の三相変圧器からなる。
【0068】
これにより、第1の実施の形態と同様の原理により、一方の三相変圧器71Aの給電線8Aに接続されたクレーン装置10Aから発生した5次高調波および7次高調波と、他方の三相変圧器71Bの給電線8Bに接続されたクレーン装置10Bから発生した5次高調波および7次高調波とは、これら三相変圧器71A,71Bの一次側の給電線80で互いに打ち消し合って、そのレベルが低減する。
【0069】
また、クレーン装置10A,10Bでは、第1の実施の形態と同様にして、負荷の大きい動作を行った場合、蓄電装置4から蓄電電力が供給されるため、三相変圧器71A,71Bからクレーン装置10A,10Bへ供給される動作電力、すなわち三相交流電力11A,11Bの変動が抑制される。
【0070】
したがって、三相変圧器71A,71Bの一次側に接続されている給電線80上で、5次高調波および7次高調波が打ち消される際、双方の5次高調波および7次高調波のレベル差を少なくすることができる。このため、双方のレベル差により残留する5次高調波および7次高調波のレベルを低減することができ、極めて効果的に5次高調波および7次高調波の発生を抑制することができる。
【0071】
また、このような対をなす2つの三相変圧器71は、2つのレーン72に設けられたものに限定されるものではない。図8は、第3の実施の形態にかかる他のコンテナヤードの給電構成を示すブロック図である。
ここでは、コンテナヤード100を分割して設けた2つのバース7A,7Bごとに、受電設備70A,70Bが設けられている。これら受電設備70A,70Bには、変電設備70Sから給電線80Sを介して高圧給電される電源電力を降圧するための三相変圧器71A,71Bがそれぞれ内蔵されている。
【0072】
このため、一方の受電設備70Aの三相変圧器71Aを、変電設備70Sからの電源電力と同相の電圧位相からなる第1の三相交流電力を生成し、動作電力として給電線80Aへ供給する、例えばΔ−Δ結線方式またはY−Y結線方式の第1の三相変圧器とする。
また、他方の受電設備70Bの三相変圧器71Bを、変電設備70Sからの電源電力に対して電圧位相がπ/6だけずれた第2の三相交流電力を生成し、動作電力として給電線80Bへ供給する、例えばΔ−Y結線方式またはY−Δ結線方式の第2の三相変圧器とする。
【0073】
これにより、第1の実施の形態と同様の原理により、一方の受電設備70Aの給電線80Aに接続されたクレーン装置10Aから発生した5次高調波および7次高調波と、他方の受電設備70Bの給電線80Bに接続されたクレーン装置10Bから発生した5次高調波および7次高調波とは、これら受電設備70A,70Bの一次側の給電線80Sで互いに打ち消し合って、そのレベルが低減する。
【0074】
これに加えて、クレーン装置10A,10Bでは、蓄電装置4からの蓄電電力により、当該クレーン装置10A,10Bで消費する動作電源の変動が抑制されるため、対をなす2つの受電設備70A,70Bの一次側へ漏洩する5次高調波および7次高調波のレベル変動も抑制されて平均化される。
このため、双方のレベル差により残留する5次高調波および7次高調波のレベルを低減することができ、結果として、変電設備70S側、すなわち商用電力系統へ漏洩する高調波が、極めて効果的に低減されることになる。
【0075】
[第3の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、コンテナヤード100内の給電線ごとに設けられて、上位電源設備から供給された電源電力を変圧し、得られた動作電力を当該給電線へ供給する三相変圧器のうち、対をなす2つの三相変圧器の一方の三相変圧器71Aで、電源電力と同相の電圧位相からなる第1の三相交流電力を動作電力として出力し、対をなす2つの三相変圧器の他方の三相変圧器71Bで、電源電力に対して電圧位相がπ/6だけずれた第2の三相交流電力を動作電力として出力するようにしたものである。
【0076】
これに加えて、蓄電装置4からの蓄電電力により、クレーン装置10A,10Bで消費する動作電源の変動が抑制されるため、対をなす2つの三相変圧器71A,71Bの一次側へ漏洩する5次高調波および7次高調波のレベル変動も抑制されて平均化される。
【0077】
したがって、三相変圧器71A,71Bの一次側に接続されている給電線上で、5次高調波および7次高調波が打ち消される際、双方の5次高調波および7次高調波のレベル差を少なくすることができる。このため、双方のレベル差により残留する5次高調波および7次高調波のレベルを低減することができ、結果として、上位の電気設備側、すなわち商用電力系統へ漏洩する高調波が、極めて効果的に低減されることになり、第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0078】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0079】
100…コンテナヤード、10,10A,10B…クレーン装置、1…三相全波整流器、11…三相交流電力、11A…三相交流電力(第1の三相交流電力)、11B…三相交流電力(第2の三相交流電力)、12,12A,12B…直流電力、2…インバータ(INV)、3…電動機、4…蓄電装置、7,7A,7B…バース、70,70A,70B…受電設備、70S…変電設備、71…三相変圧器、71A…三相変圧器(第1の三相変圧器)、71B…三相変圧器(第2の三相変圧器)、72,72A,72B…レーン、73,73A,73B…ブロック、74…ターンレーン、8,8A,8B,80,80A,80B,80S…給電線、9…コンテナ、B…共通母線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナの載置場所に延設されて、前記コンテナの荷役を行うクレーン装置へ動作電力を給電する給電線と、
前記給電線ごとに設けられて、上位電源設備から供給された電源電力を変圧し、得られた動作電力を当該給電線へ供給する複数の三相変圧器と
を備え、
前記三相変圧器のうち、対をなす2つの三相変圧器の一方は、前記電源電力と同相の電圧位相からなる第1の三相交流電力を前記動作電力として出力する第1の三相変圧器からなり、前記対をなす2つの三相変圧器の他方は、前記電源電力に対して電圧位相がπ/6だけずれた第2の三相交流電力を前記動作電力として出力する第2の三相変圧器からなり、
前記クレーン装置は、前記給電線から供給された前記動作電力を全波整流し、得られた直流電力を共通母線へ供給する三相全波整流器と、前記三相全波整流器から前記共通母線へ供給された前記直流電力に基づき駆動して前記コンテナの巻上下を行う電動機と、前記三相全波整流器から前記共通母線へ供給された前記直流電力を蓄電し、前記直流電力の低減時に当該蓄電電力を前記共通母線へ供給する蓄電装置とを備える
ことを特徴とするコンテナヤード。
【請求項2】
請求項1に記載のコンテナヤードにおいて、
前記第1の三相変圧器は、Δ−Δ結線方式またはY−Y結線方式の三相変圧器からなり、前記第2の三相変圧器は、Δ−Y結線方式またはY−Δ結線方式の三相変圧器からなる
ことを特徴とするコンテナヤード。
【請求項3】
コンテナの載置場所に延設されて、前記コンテナの荷役を行うクレーン装置へ動作電力を給電する給電線と、前記給電線ごとに設けられて、上位電源設備から供給された電源電力を変圧し、得られた動作電力を当該給電線へ供給する複数の三相変圧器とを備えるコンテナヤードで用いられる給電方式であって、
前記三相変圧器のうち、対をなす2つの三相変圧器の一方が、前記電源電力と同相の電圧位相からなる第1の三相交流電力を前記動作電力として出力するステップと、
前記対をなす2つの三相変圧器の他方が、前記電源電力に対して電圧位相がπ/6だけずれた第2の三相交流電力を前記動作電力として出力するステップと、
前記クレーン装置が、前記給電線から供給された前記動作電力を三相全波整流器で全波整流し、得られた直流電力を共通母線へ供給し、前記三相全波整流器から前記共通母線へ供給された前記直流電力に基づいて前記コンテナの巻上下を行う電動機を駆動し、前記三相全波整流器から前記共通母線へ供給された前記直流電力を蓄電装置で蓄電し、前記直流電力の低減時に当該蓄電電力を前記共通母線へ供給するステップと
を備えることを特徴とする給電方法。
【請求項4】
請求項3に記載の給電方法において、
前記第1の三相変圧器は、Δ−Δ結線方式またはY−Y結線方式の三相変圧器からなり、前記第2の三相変圧器は、Δ−Y結線方式またはY−Δ結線方式の三相変圧器からなることを特徴とする給電方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate