説明

コンテンツ再生装置、方法及びプログラム

【課題】(1)ライセンス発行装置を用意する必要がなく、(2)コンテンツ再生装置がライセンス発行装置と通信できない環境下でもコンテンツを再生することができ、(3)コンテンツが不測の方法で複製された場合でも視聴を制限することができ、(4)ユーザはコンテンツプロバイダにより指定された方法によらずコンテンツを複製することができる、コンテンツ再生装置、方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】データ解釈手段11がディジタルデータを解釈してコンテンツとその配信日時を読みだす。一方で、現在日時取得手段12が現在日時を取得する。次に、品質劣化手段13が、配信後経過時時間(配信日時と現在日時の時間差あるいは日数差)を計算し、配信後経過時間に応じてコンテンツの再生品質を劣化させる。最後に、再生手段14が、品質が劣化したコンテンツを再生ハードウェア8に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワークを介して配信可能な音楽、音声、映像などのディジタルコンテンツを再生するためのコンテンツ再生装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワーク通信技術の進歩により、音楽、音声、画像などのコンテンツはディジタルデータの形態で配信されるようになっている。また、コンテンツの配信は、ダウンロードやストリーミングといったネットワーク経由のもの以外に、放送波による配信や各種記録媒体の配布によっても行われる。
【0003】
一方で、ディジタルデータは複製の際に劣化を伴わないことから、コンテンツをそのままの品質(音質や画質)で容易に複製することができる。このため、ディジタルコンテンツの著作権を保護するための対策として、様々な複製制限技術が開発されている。ディジタル著作権管理(DRM:Digital Rights Management)は、複製制限技術をはじめとするコンテンツの無制限な利用を防ぐための総称である。
【0004】
DRM技術は、特に、映像、音楽、電子書籍、ゲームなどといった高価値コンテンツを保護するために利用される。このようなDRM技術の一形態として、特定の条件下でコンテンツの品質を意図的に劣化させる技術が、下記特許文献1〜4において提案されている。
【0005】
特許文献1において提案された技術は、ディジタルデータを再生または複製するたびに、ディジタルデータにノイズを加えることで、再生または複製を繰り返すうちにコンテンツの再生品質がユーザの視聴に耐えられなくなるようにするものである。
【0006】
特許文献2において提案された技術は、ディジタルデータを再生するたびに符号化されたディジタルデータにエラーを加えることで、再生を繰り返すうちに復号が困難になるようにするものである。
【0007】
特許文献3において提案された技術は、ディジタルデータを複製または移動するたびに、コンテンツの種類に応じた品質劣化を起こさせることで、複製または移動を繰り返すうちにユーザの視聴に耐えられなくなるようにするものである。
【0008】
特許文献4において提案された技術は、ディジタルデータの再生時にライセンス発行装置と通信を行い、ユーザの消費するポイントが大きい場合には高品質、消費ポイントが小さい場合には低品質で、ディジタルデータを再生するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−42863号公報
【特許文献2】特開2002−288932号公報
【特許文献3】特開2004−30630号公報
【特許文献4】特開2007−148483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した特許文献1〜3の技術によれば、特許文献4の技術と異なり、ディジタルデータを再生する際に、ネットワークを介したライセンスの取得をすることなく再生できるので、コンテンツプロバイダにおいてライセンス発行装置を用意する必要がなく、また、コンテンツ再生装置がライセンス発行装置と通信できない環境下でもコンテンツを再生することができるという利点がある。
【0011】
しかしながら、特許文献1〜3の技術では、ディジタルデータの再生回数等に応じて元データの品質を低下させるものなので、コンテンツが不測の方法でいくつも複製された場合には、一つ当たりのコンテンツに対する再生回数が少なくなり、品質劣化の進行による視聴制限が実質的に回避されてしまう問題がある。また、特許文献1〜3の技術では、ユーザはコンテンツプロバイダによりコンテンツの複製が厳しく制限されるため、コンテンツプロバイダにより指定された特定の方法でしかコンテンツを複製することができないという問題がある。
【0012】
上述した特許文献4の技術によれば、特許文献1〜3の技術と異なり、コンテンツが不測の方法で複製された場合でも視聴を制限することができ、ユーザはコンテンツプロバイダにより指定された方法によらずコンテンツを複製することができる利点がある。
【0013】
しかしながら、特許文献4の技術では、ディジタルデータを再生するのに、通信ネットワークを介して発行されるライセンスが必要であるため、コンテンツプロバイダにおいてライセンス発行装置を用意する必要がある。また、特許文献4の技術では、コンテンツ再生装置がライセンス発行装置と通信できない環境下では、コンテンツを再生することができないという問題がある。
【0014】
すなわち、従来では、以下の(1)〜(4)の利点を兼ね備えたコンテンツ再生技術がなかった。
(1)コンテンツプロバイダにおいてライセンス発行装置を用意する必要がない。
(2)コンテンツ再生装置がライセンス発行装置と通信できない環境下でもコンテンツを再生することができる。
(3)コンテンツが不測の方法で複製された場合でも視聴を制限することができる。
(4)ユーザはコンテンツプロバイダにより指定された方法によらずコンテンツを複製することができる。
【0015】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、上記(1)〜(4)の利点を兼ね備えたコンテンツ再生装置、方法およびプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の問題を解決するため、本発明のコンテンツ再生装置は、以下の構成を備えることを特徴とする。
(a)データ記憶手段に記憶されたディジタルデータを解釈してディジタルデータ形式のコンテンツ及びその配信日時を読み出すデータ解釈手段。
(b)現在日時を取得する現在日時取得手段。
(c)前記データ解釈手段で読みだしたコンテンツに対し、その配信日時から現在日時までの時間差または日数差である配信後経過時間に応じてコンテンツの再生品質を劣化させる処理を行う再生品質劣化手段であって、前記配信後経過時間と再生品質との関係を示す劣化パターンが、少なくとも、前記配信後経過時間が大きくなるに従って再生品質が低下する区間を含むものである再生品質劣化手段。
(d)前記再生品質劣化手段で再生品質を劣化させたコンテンツを再生ハードウェアに送信する再生手段。
【0017】
上記の本発明の構成によれば、コンテンツの再生時に、コンテンツの配信日時から現在日時までの時間差または日数差である配信後経過時間が大きいほど低い再生品質となるように、コンテンツの再生品質を劣化させるので、配信された日時からの時間の経過に伴ってコンテンツの再生品質が低下していく。このため、再生品質の劣化がある程度大きくなった段階で、コンテンツの品質がユーザの視聴に耐えられなくなるので、ディジタルコンテンツの利用が有限化される。
このように、本発明では、特許文献1〜3の技術と異なり、ディジタルコンテンツの元データにノイズを付加するものではなく、元データはそのままにして、コンテンツを再生するときに再生品質だけを劣化させるので、コンテンツが不測の方法で複製された場合でも、複製されたコンテンツにおいてもその配信日時に基づいて、再生品質が劣化する。
したがって、本発明によれば、コンテンツが不測の方法で複製された場合でも視聴を制限することができ、ユーザはコンテンツプロバイダにより指定された方法によらずコンテンツを複製することができる。
また、本発明では、上述の特許文献4の技術と異なり、ライセンスの有無によってコンテンツの利用を制限するものではなく、配信後経過時間に応じてコンテンツの品質を劣化させることによってコンテンツの利用に制限を加えるようにしたものである。
したがって、本発明によれば、コンテンツプロバイダにおいてライセンス発行装置を用意する必要がなく、また、コンテンツ再生装置がライセンス発行装置と通信できない環境下でもコンテンツを再生することができる。
【0018】
上記の再生品質劣化手段によるコンテンツの再生品質の劣化は、たとえば、コンテンツに対するノイズの付加、コンテンツの再生レートの変更、または所定の周波数帯域のカットによって、行うことが可能である。
【0019】
上記の再生品質劣化手段がコンテンツの再生品質を配信後経過時間に応じて劣化させるパターンとしては、以下のように、いくつかのパターンが考えられる。
例えば、再生品質劣化手段は、配信後経過時間がゼロより大きい場合に、配信後経過時間が大きいほど低い再生品質となるように、コンテンツの再生品質を劣化させてもよい。
あるいは、再生品質劣化手段は、配信後経過時間がゼロより大きい第1の時間以上である場合に、配信後経過時間が大きいほど低い再生品質となるように、コンテンツの再生品質を劣化させてもよい。
あるいは、再生品質劣化手段は、配信後経過時間がゼロより大きい第2の時間までは、配信後経過時間が大きいほど低い再生品質となるように、コンテンツの再生品質を劣化させ、配信後経過時間が第2の時間以上である場合は、第2の時間のときの劣化度と同じ劣化度で前記コンテンツの再生品質を劣化させてもよい。
あるいは、再生品質劣化手段は、配信後経過時間が、ゼロより大きい第1の時間から、第1の時間よりも大きい第2の時間までの範囲内にある場合に、配信後経過時間が大きいほど低い再生品質となるように、コンテンツの再生品質を劣化させ、配信後経過時間が第2の時間以上である場合は、第2の時間のときの劣化度と同じ劣化度でコンテンツの再生品質を劣化させてもよい。
【0020】
また、本発明のコンテンツ再生方法は、データ記憶手段に記憶されたディジタルデータを解釈してディジタルデータ形式のコンテンツ及びその配信日時を読み出し、現在日時を取得し、前記データ記憶手段から読みだしたコンテンツに対し、その配信日時から現在日時までの時間差または日数差である配信後経過時間に応じてコンテンツの再生品質を劣化させる処理であって、前記配信後経過時間と再生品質との関係を示す劣化パターンが、少なくとも、前記配信後経過時間が大きくなるに従って再生品質が低下する区間を含む処理を行い、再生品質を劣化させた前記コンテンツを再生ハードウェアに送信する、ことを特徴とする。
【0021】
また、本発明のコンテンツ再生用プログラムは、コンピュータに、データ記憶手段に記憶されたディジタルデータを解釈してディジタルデータ形式のコンテンツ及びその配信日時を読み出すデータ解釈処理、現在日時を取得する現在日時取得処理、前記データ記憶手段から読みだしたコンテンツに対し、その配信日時から現在日時までの時間差または日数差である配信後経過時間に応じてコンテンツの再生品質を劣化させる再生品質劣化処理であって、前記配信後経過時間と再生品質との関係を示す劣化パターンが、少なくとも、前記配信後経過時間が大きくなるに従って再生品質が低下する区間を含むものである再生品質劣化処理、および再生品質を劣化させた前記コンテンツを再生ハードウェアに送信する再生処理、を実行させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、以下のような効果が得られる。
(1)コンテンツプロバイダにおいてライセンス発行装置を用意する必要がない。
(2)コンテンツ再生装置がライセンス発行装置と通信できない環境下でもコンテンツを再生することができる。
(3)コンテンツが不測の方法で複製された場合でも視聴を制限することができる。
(4)ユーザはコンテンツプロバイダにより指定された方法によらずコンテンツを複製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るコンテンツ再生装置の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】配信後経過時間と再生品質との関係を示す第1のパターンを示す図である。
【図3】配信後経過時間と再生品質との関係を示す第2のパターンを示す図である。
【図4】配信後経過時間と再生品質との関係を示す第3のパターンを示す図である。
【図5】配信後経過時間と再生品質との関係を示す第4のパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0025】
図1は、本発明に係るコンテンツ再生装置10の実施形態を示す概略構成図である。図1において、コンテンツ再生装置10は、ユーザ側デバイス5の構成要素の一部、あるいはユーザ側デバイス5がもつ機能の一部として構成されている。コンテンツ再生装置10によって再生されるディジタルコンテンツには、音楽、音声(演説、講演、スピーチなど)、映画(動画)、静止画、電子書籍、コンピュータゲームなどが含まれる。
【0026】
ユーザ側デバイス5は、たとえば、コンテンツ再生機能を有するパーソナルコンピュータ、携帯型音楽プレーヤー、携帯型動画プレーヤー、電子ブック再生装置、携帯電話、ハードディスクプレーヤ、DVDプレーヤー、CDプレーヤーであり、あるいはこれらのうち複数の機能が組み合わせられた機器であってもよい。
【0027】
ユーザ側デバイス5は、図1に示すように、その構成要素あるいは機能の一部としてのコンテンツ再生装置10の他に、通信手段6と、データ記憶手段7と、再生ハードウェア8を備える。また、図1では図示していないが、ユーザ側デバイス5は、CPU(MPU)、RAMなどのコンピュータが通常有するデバイスを備えている。
【0028】
通信手段6は、インターネットなどの通信ネットワーク1に接続して双方向有線通信あるいは双方向無線通信が可能であるように構成されている。この通信手段6により、通信ネットワーク1を介してコンテンツプロバイダ3にアクセスし、ディジタルコンテンツをダウンロードによって取得する。
【0029】
データ記憶手段7は、通信手段6によってダウンロードしたコンテンツとその配信日時を記憶できるように構成されている。データ記憶手段7としては、例えばユーザ側デバイス5に内蔵されたハードディスクドライブ(HDD)、フラッシュメモリドライブ(SSD)などを使用できる。あるいは、データ記憶手段7は、ユーザ側デバイス5に接続あるいは挿入して、書き込み/読み出しが可能な他の記憶媒体(フラッシュメモリ、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、CD−R、CD−RW、MOディスク、ZIPディスクなど)であってもよい。
【0030】
再生ハードウェア8は、コンテンツ再生装置10で再生したコンテンツを視覚的あるいは聴覚的に認識可能な形態で出力する装置であり、ディスプレイ8Aやスピーカ8Bである。再生ハードウェア8は、ユーザ側デバイス5に内蔵されたものに限らず、ユーザ側デバイス5と有線通信又は無線通信が可能な外付け型のデバイスであってもよい。
【0031】
コンテンツ再生装置10は、データ解釈手段11と、現在日時取得手段12と、再生品質劣化手段13と、再生手段14とを備える。
【0032】
データ解釈手段11は、データ記憶手段7に記憶されたディジタルデータを解釈してディジタルデータ形式のコンテンツ及びその配信日時を読み出す機能を有する。この配信日時は、通信手段6によってコンテンツがダウンロードされた日時である。
【0033】
現在日時取得手段12は、現在日時を取得する機能を有する。この場合、現在日時の取得処理を実行する時点において、ユーザ側デバイス5が通信ネットワーク1に接続されており、通信ネットワーク1経由で現在日時を取得できる状況であれば、通信ネットワーク1経由で現在日時を取得する。ユーザ側デバイス5が、通信ネットワーク1に接続されておらず通信ネットワーク1経由で現在日時を取得できない状況であれば、ユーザ側デバイス5に内蔵された内部時計から現在日時を取得する。
【0034】
再生品質劣化手段13は、データ解釈手段11で読みだしたコンテンツに対し、その配信日時から現在日時までの時間差または日数差である配信後経過時間に応じて、コンテンツの再生品質を劣化させる処理を行う機能を有する。配信後経過時間と再生品質との関係を示す劣化パターンは、少なくとも、配信後経過時間が大きくなるに従って再生品質が低下する区間を含んでいる。なお上記の劣化パターンについては、後述する。
【0035】
再生品質劣化手段13によるコンテンツの再生品質の劣化は、たとえば、コンテンツに対するノイズ(ランダムノイズなど)の付加、コンテンツの再生レートの変更、または所定の周波数帯域のカットによって、行うことが可能である。
【0036】
再生手段14は、再生品質劣化手段13で再生品質を劣化させたコンテンツを再生ハードウェア8に送信する機能を有する。
【0037】
上述したデータ解釈手段11、現在日時取得手段12、再生品質劣化手段13及び再生手段14は、具体的には、コンテンツ再生プログラムとコンピュータとが協働することで構成されるものであり、ユーザ側デバイス5に内蔵された演算処理装置(CPUあるいはMPU)がコンテンツ再生プログラムに従って動作することで、上述した各処理を実行する機能を有するデータ解釈手段11、現在日時取得手段12、再生品質劣化手段13及び再生手段14が実現される。
【0038】
すなわち、本発明のコンテンツ再生プログラムは、以下の(a)〜(d)の処理をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
(a)コンピュータに、データ記憶手段7に記憶されたディジタルデータを解釈してディジタルデータ形式のコンテンツ及びその配信日時を読み出すデータ解釈処理。
(b)現在日時を取得する現在日時取得処理
(c)データ記憶手段7から読みだしたコンテンツに対し、その配信日時から現在日時までの時間差または日数差である配信後経過時間に応じてコンテンツの再生品質を劣化させる再生品質劣化処理であって、配信後経過時間と再生品質との関係を示す劣化パターンが、少なくとも、配信後経過時間が大きくなるに従って再生品質が低下する区間を含むものである再生品質劣化処理。
(d)再生品質を劣化させたコンテンツを再生ハードウェア8に送信する再生処理。
【0039】
このようなコンテンツ再生プログラムは、ユーザ側デバイス5に搭載された専用のマイクロコンピュータに予めプログラムされたものでも、通信ネットワーク1経由でダウンロードされてインストールされたものでも、記憶媒体に記憶されたプログラムを読み込んでインストールされたものでもよい。
【0040】
上述のように構成されたコンテンツ再生装置10において、ユーザがコンテンツの再生を指示すると、以下のように動作する。
【0041】
まずデータ解釈手段11が、データ記憶手段7に記憶されたディジタルデータを解釈して、コンテンツとその配信日時を読みだす。一方で、現在日時取得手段12が、通信ネットワーク1経由あるいは内部時計から現在日時を取得する。
次に、読み出した配信日時と、取得した現在日時から時間差あるいは日数差として、配信後経過時間を計算し、配信後経過時間に応じてコンテンツの再生品質を劣化させる。
最後に、品質が劣化したコンテンツを再生ハードウェア8に送信することで、コンテンツが再生される。
【0042】
ここで、再生品質劣化手段13がコンテンツの再生品質を配信後経過時間に応じて劣化させるパターン(劣化パターン)としては、図2〜図5に示すように、いくつかのパターンが考えられる。図2〜図5は、配信経過時間Tと再生品質Qとの関係を示す図であり、横軸に配信経過時間T、縦軸に再生品質Qをとっている。
【0043】
第1のパターンとして、図2に示すように、再生品質劣化手段13は、配信後経過時間Tがゼロより大きい場合に、配信後経過時間Tが大きいほど低い再生品質Qとなるように、コンテンツの再生品質Qを劣化させてもよい。第1のパターンでは、配信日時の時点が最高品質qmaxであり、その後は徐々にコンテンツの再生品質Qが低下していく。
【0044】
第2のパターンとして、図3に示すように、再生品質劣化手段13は、配信後経過時間Tがゼロより大きい第1の時間t1以上である場合に、配信後経過時間Tが大きいほど低い再生品質Qとなるように、コンテンツの再生品質を劣化させてもよい。第2のパターンでは、配信後経過時間Tが第1の時間t1(任意に設定可能であるが、例えば1週間、1か月、半年など)までは、コンテンツの再生品質Qが劣化しないので、配信日時から一定期間は配信時点と同じ最高品質qmaxでコンテンツが再生される。
【0045】
第3のパターンとして、図4に示すように、再生品質劣化手段13は、配信後経過時間Tがゼロより大きい第2の時間t2までは、配信後経過時間Tが大きいほど低い再生品質となるように、コンテンツの再生品質Qを劣化させ、配信後経過時間Tが第2の時間t2以上である場合は、第2の時間t2のときの劣化度と同じ劣化度でコンテンツの再生品質Qを劣化させてもよい。第3のパターンでは、配信後経過時間Tが第2の時間t2(任意に設定可能であるが、例えば半年、1年、数年など)まではコンテンツの再生品質が劣化していくが、それ以降は第2の時間t2のときの劣化度と同じ品質で再生される。
【0046】
第4のパターンとして、図5に示すように、再生品質劣化手段13は、配信後経過時間Tが、ゼロより大きい第1の時間t1から、第1の時間t1よりも大きい第2の時間t2までの範囲内にある場合に、配信後経過時間Tが大きいほど低い再生品質となるように、コンテンツの再生品質Qを劣化させ、配信後経過時間Tが第2の時間t2以上である場合は、第2の時間t2のときの劣化度と同じ劣化度でコンテンツの再生品質Qを劣化させてもよい。第4のパターンでは、第1の時間t1から第2の時間t2の間だけ配信後経過時間Tの大きさに応じて品質を劣化させ、それ以降は第2の時間のときの劣化度と同じ品質で再生される。
【0047】
なお、上述した第1〜第4のパターンにおいて、再生品質が劣化する区間では、配信後経過時間の大きさに比例して劣化度(加えるノイズの大きさなど)が大きくなっているが、かならずしも配信後経過時間に比例した劣化でなくてもよく、配信後経過時間の自乗や対数や指数に比例して劣化度を大きくするなど、配信後経過時間の大きさに対して単調増加であればよい。
【0048】
また、上述した特許文献1〜3において提案されている、コンテンツを少しずつ劣化させる方法(ノイズを加える、エラーを加えるなど)を、配信後経過時間の大きさに比例した回数、再帰的に適用してコンテンツの再生品質を劣化させるようにしてもよい。
【0049】
上述した本発明の実施形態によれば、コンテンツの再生時に、配信後経過時間に応じてコンテンツの再生品質を劣化させるので、配信された日時からの時間の経過に伴ってコンテンツの再生品質が低下していく。このため、再生品質の劣化がある程度大きくなった段階で、コンテンツの品質がユーザの視聴に耐えられなくなるので、ディジタルコンテンツの利用が有限化される。
【0050】
このように、本発明では、特許文献1〜3の技術と異なり、ディジタルコンテンツの元データにノイズ等を付加するものではなく、元データはそのままにして、コンテンツを再生するときに再生品質だけを劣化させるので、コンテンツが不測の方法で複製された場合でも、複製されたコンテンツにおいてもその配信日時に基づいて、再生品質が劣化する。
したがって、本発明によれば、コンテンツが不測の方法で複製された場合でも視聴を制限することができ、ユーザはコンテンツプロバイダ3により指定された方法によらずコンテンツを複製することができる。
【0051】
また、本発明では、上述の特許文献4の技術と異なり、ライセンスの有無によってコンテンツの利用を制限するものではなく、配信後経過時間に応じてコンテンツの品質を劣化させることによってコンテンツの利用に制限を加えるようにしたものである。
したがって、本発明によれば、コンテンツプロバイダ3においてライセンス発行装置を用意する必要がなく、また、コンテンツ再生装置10がライセンス発行装置と通信できない環境下でもコンテンツを再生することができる。
【0052】
なお、上記において、本発明の実施形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0053】
1 通信ネットワーク
3 コンテンツプロバイダ
5 ユーザ側デバイス
6 通信手段
7 データ記憶手段
8 再生ハードウェア
8A ディスプレイ
8B スピーカ
10 コンテンツ再生装置
11 データ解釈手段
12 現在日時取得手段
13 再生品質劣化手段
14 再生手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ記憶手段に記憶されたディジタルデータを解釈してディジタルデータ形式のコンテンツ及びその配信日時を読み出すデータ解釈手段と、
現在日時を取得する現在日時取得手段と、
前記データ解釈手段で読みだしたコンテンツに対し、その配信日時から現在日時までの時間差または日数差である配信後経過時間に応じてコンテンツの再生品質を劣化させる処理を行う再生品質劣化手段であって、前記配信後経過時間と再生品質との関係を示す劣化パターンが、少なくとも、前記配信後経過時間が大きくなるに従って再生品質が低下する区間を含むものである再生品質劣化手段と、
前記再生品質劣化手段で再生品質を劣化させたコンテンツを再生ハードウェアに送信する再生手段と、を備えることを特徴とするコンテンツ再生装置。
【請求項2】
前記再生品質劣化手段は、前記コンテンツに対するノイズの付加、コンテンツの再生レートの変更、または所定の周波数帯域のカットによって、前記コンテンツの再生品質を劣化させる、請求項1記載のコンテンツ再生装置。
【請求項3】
前記再生品質劣化手段は、前記配信後経過時間がゼロより大きい場合には、前記配信後経過時間が大きいほど低い再生品質となるように、前記コンテンツの再生品質を劣化させる、請求項1または2記載のコンテンツ再生装置。
【請求項4】
前記再生品質劣化手段は、前記配信後経過時間がゼロより大きい第1の時間以上である場合に、前記配信後経過時間が大きいほど低い再生品質となるように、前記コンテンツの再生品質を劣化させる、請求項1または2記載のコンテンツ再生装置。
【請求項5】
前記再生品質劣化手段は、前記配信後経過時間がゼロより大きい第2の時間までは、前記配信後経過時間が大きいほど低い再生品質となるように、前記コンテンツの再生品質を劣化させ、前記配信後経過時間が前記第2の時間以上である場合は、前記第2の時間のときの劣化度と同じ劣化度で前記コンテンツの再生品質を劣化させる、請求項1または2記載のコンテンツ再生装置。
【請求項6】
前記再生品質劣化手段は、前記配信後経過時間が、ゼロより大きい第1の時間から、第1の時間よりも大きい第2の時間までの範囲内にある場合に、前記配信後経過時間が大きいほど低い再生品質となるように、前記コンテンツの再生品質を劣化させ、前記配信後経過時間が前記第2の時間以上である場合は、前記第2の時間のときの劣化度と同じ劣化度で前記コンテンツの再生品質を劣化させる、請求項1または2記載のコンテンツ再生装置。
【請求項7】
データ記憶手段に記憶されたディジタルデータを解釈してディジタルデータ形式のコンテンツ及びその配信日時を読み出し、
現在日時を取得し、
前記データ記憶手段から読みだしたコンテンツに対し、その配信日時から現在日時までの時間差または日数差である配信後経過時間に応じてコンテンツの再生品質を劣化させる処理であって、前記配信後経過時間と再生品質との関係を示す劣化パターンが、少なくとも、前記配信後経過時間が大きくなるに従って再生品質が低下する区間を含む処理を行い、
再生品質を劣化させた前記コンテンツを再生ハードウェアに送信する、ことを特徴とするコンテンツ再生方法。
【請求項8】
コンピュータに、
データ記憶手段に記憶されたディジタルデータを解釈してディジタルデータ形式のコンテンツ及びその配信日時を読み出すデータ解釈処理、
現在日時を取得する現在日時取得処理、
前記データ記憶手段から読みだしたコンテンツに対し、その配信日時から現在日時までの時間差または日数差である配信後経過時間に応じてコンテンツの再生品質を劣化させる再生品質劣化処理であって、前記配信後経過時間と再生品質との関係を示す劣化パターンが、少なくとも、前記配信後経過時間が大きくなるに従って再生品質が低下する区間を含むものである再生品質劣化処理、および
再生品質を劣化させた前記コンテンツを再生ハードウェアに送信する再生処理、を実行させるためのコンテンツ再生用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−251903(P2010−251903A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97017(P2009−97017)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】