説明

コンテンツ再生装置および音声処理システム

【課題】コンテンツを特定し、機器同士での連係動作を実現するコンテンツ再生装置を提供する。
【解決手段】再生装置2は、拡散符号が重畳された音声をマイク20で集音し、集音した音声信号と重畳側と同じ拡散符号との相関値を算出し、算出した相関値のピーク強度に応じて再生装置1の再生コンテンツを特定する。制御部22は、特定したコンテンツに関連する自装置で必要なコンテンツを特定する。例えば、必要なコンテンツとしてオーディオデータと楽譜データを特定する(必要なコンテンツの特定はサーバ9にて行う)。制御部22は、特定したコンテンツデータをコンテンツデータ格納部25から読み出し、楽譜データを表示部23に出力し、オーディオデータを再生部26に出力する。表示部23は、入力された楽譜データを画面表示し、再生部26は、入力されたオーディオデータを再生し、音声信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンテンツを再生するコンテンツ再生装置およびこのコンテンツ再生装置を用いた音声処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オーディオデータに曲情報を電子透かしとして重畳し、受信側の機器でコンテンツを特定するものが提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−314980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の受信側の装置は、単にコンテンツを特定するだけであり、機器同士で何らかの連係動作を行うものではなかった。
【0005】
そこで、この発明は、コンテンツを特定し、機器同士での連係動作を可能とするコンテンツ再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のコンテンツ再生装置は、情報が重畳された音声信号を入力する入力手段と、前記音声信号に含まれる重畳された情報に基づいてコンテンツを特定し、特定したコンテンツに関連し、自装置に必要なコンテンツを特定するコンテンツ特定手段と、前記コンテンツ特定手段で特定したコンテンツを再生する再生手段と、を備えたことを特徴とする。音声信号は、マイクを用いて集音したものを入力するようにしてもよいし、オーディオケーブルを用いてライン伝送されたものを入力するようにしてもよい。また、コンテンツの再生は、音声だけでなく、画像表示等の概念も含むものである。
【0007】
このように、音声信号にコンテンツを特定するための情報が重畳されていれば、この情報を復調することで他の機器で再生されているコンテンツを特定することができる。例えば、データ重畳の手段として位相変調を使う場合、変調側ではコンテンツを特定するための情報(コンテンツ特定情報)のビットデータ(0,1)で拡散符号を位相変調(正負反転)し、復調側では、相関値のピークの正負判定を行うことでビットデータを復号することができる。
【0008】
そして、コンテンツ再生装置は、復号したビットデータに基づいてコンテンツを特定し、特定したコンテンツに関連した自装置に必要なコンテンツを特定し、再生する。自装置に必要なコンテンツは、他の機器で再生されているコンテンツと同じコンテンツであってもよいし、異なるコンテンツ(例えば、オーディオデータに対し楽譜データ等)であってもよい。例えば、他の機器がピアノ演奏の音声(コンテンツ特定情報が重畳された音声)を放音している場合において、本発明の再生装置でピアノ音を集音すると、このピアノ音に関連したコンテンツとして伴奏音が再生される、という態様が可能である。
【0009】
また、コンテンツ特定手段は、再生手段が再生可能であるコンテンツに応じて必要なコンテンツを特定する態様であってもよい。例えば、自装置がオーディオデータを再生することが可能なデジタルオーディオプレーヤであれば、コンテンツとしてオーディオデータを特定する。また、自装置が自動演奏装置であれば必要なコンテンツとしてMIDIデータを特定する態様も可能であるし、表示部を備えた装置であれば、楽譜データを必要なコンテンツとして特定する態様も可能である。
【0010】
また、重畳される情報には、コンテンツの再生タイミングを示す同期情報が含まれていてもよい。例えば、送信側でMIDIに準じた基準クロックを同期情報として重畳しておけば、受信側では、復号した基準クロックでシーケンサを作動させることにより自動演奏を行うことができ、他の機器で再生するコンテンツと自装置で再生するコンテンツとを同期させることができる。例えば、他の機器がMIDIデータを再生した自動演奏楽器(例えば自動演奏ピアノ)である状況で、本発明の再生装置を近づけてピアノ音を集音すると、このピアノ音に同期した伴奏音が再生される。また、本発明の再生装置に表示部が内蔵されていれば、ピアノ音に同期して楽譜とその再生位置を表示することもでき、曲の進行に合わせて譜めくりを行うこともできる。
【0011】
また、上記コンテンツ再生装置において、自装置が再生する音声に新たな情報を重畳する重畳手段を備えている態様も可能である。この場合、複数のコンテンツ再生装置で連携したコンテンツ再生が可能となる。例えば、外出先のお店で他の装置からコンテンツ情報を取得し、自宅において自装置でコンテンツ情報を再重畳することにより、時間・場所を越えて機器間の連携が可能となる。
【0012】
また、復調した情報や、自装置が再生可能であるコンテンツを示す情報(例えば表示部の有無等、自装置の機能を示す情報)をサーバに送信し、サーバ側で関連コンテンツを抽出するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、特定したコンテンツに関連し、自装置に必要な関連コンテンツを取得、再生するため、機器同士での連係動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】音声処理システムの主要構成を示すブロック図である。
【図2】再生装置1の構成を示すブロック図である。
【図3】再生装置2の構成を示すブロック図である。
【図4】コンテンツデータ格納部および曲情報格納部のデータベースを示す図である。
【図5】再生装置3の構成を示すブロック図である。
【図6】応用例1に係る音声処理システムの構成を示すブロック図である。
【図7】応用例1に係る再生装置5の構成を示すブロック図である。
【図8】応用例2に係る音声処理システムの構成を示すブロック図である。
【図9】応用例2に係る再生装置6の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1(A)は、本発明の実施形態に係る音声処理システムの構成を示す図である。音声処理システムは、ネットワーク7を介して接続されている再生装置1、再生装置2、再生装置3、およびサーバ9を備えている。再生装置1には、スピーカ10が接続され、再生装置2には、マイク20が接続され、再生装置3にはマイク30が接続されている。再生装置1は、所定のコンテンツを再生してスピーカ10から音声を放音する(例えば、ピアノ演奏の音声を放音する)。
【0016】
マイク20およびマイク30は、各再生装置に内蔵されたものであってもよいし、ライン端子を介して外付けされるものであってもよい。また、図1(B)に示すように、マイクを使わずにオーディオケーブルを用いて再生装置間を接続してもよい。マイク20およびマイク30は、それぞれ聴取音(スピーカ10の放音音声)を集音し、集音した音声信号を再生装置2および再生装置3に出力する。再生装置2および再生装置3は、入力した音声信号に重畳されている情報に基づいて再生装置1の再生しているコンテンツを特定し、再生装置1の再生コンテンツに関連し、自装置で必要なコンテンツを再生する。自装置に必要なコンテンツが無い場合は、ネットワーク経由でコンテンツを取得し、再生する。これにより、音声処理システムは、機器同士での連携動作を行うものである。例えば、再生装置1がピアノ演奏の音声(コンテンツを特定するための情報が重畳された音声)を放音している場合において、再生装置2でピアノ音を集音すると、このピアノ音に関連したコンテンツとして伴奏音が再生される、という動作を行う。
【0017】
図2(A)は、再生装置1およびサーバ9の構成を示すブロック図である。再生装置1は、制御部11、コンテンツデータ格納部12、再生部13、重畳部14、および通信部15を備えている。サーバ9は、通信部91、制御部92、および曲情報格納部93を備えている。
【0018】
制御部11には、コンテンツデータ格納部12からコンテンツデータが入力される。コンテンツデータは、曲名や歌手名等の曲情報が含まれたデータであり、MP3等の圧縮データやMIDIデータ等からなる。この例では、自装置内にコンテンツデータを格納する例を示しているが、放送波として外部から受信するようにしてもよいし、ネットワークを介して外部から(例えばサーバ9から)受信するようにしてもよい。また、CD等のメディアからPCMデータとTOCを取得する態様であってもよい。
【0019】
制御部11は、読み出したコンテンツデータを再生部13に入力する。再生部13は、入力されたコンテンツデータを再生し、音声信号を生成する。コンテンツデータが圧縮オーディオである場合、再生部13は、音声信号にデコードし、重畳部14に出力する。コンテンツデータがMIDIデータである場合、再生部13は、音源(不図示)を制御して楽音(音声信号)を発生し、重畳部14に出力する。
【0020】
また、制御部11は、再生するコンテンツを特定するための情報(コンテンツ特定情報)を重畳部14に入力し、出力する音声信号に重畳する。コンテンツ特定情報は、上述の曲情報や曲ID等からなる。曲IDは、曲毎に割り当てられた固有IDである。制御部11は、コンテンツデータから取得した曲情報を、通信部15を介してサーバ9に送信し、曲IDを取得する。すなわち、サーバ9は、曲情報格納部93に曲情報と曲IDを対応付けたデータベース(図4を参照)を構築しており、制御部92が通信部91を介して受信した曲情報で曲情報格納部93を参照し、曲IDを割り出す。割り出した曲IDは、再生装置1の制御部11に送信される。なお、曲情報格納部93は、CDDB等のデータベースも構築しており、制御部11がメディアからTOCを取得した場合、TOCをサーバ9に送信することで、曲情報を取得する。
【0021】
重畳部14は、再生部13から入力される音声信号に、制御部11から入力されたコンテンツ特定情報を例えば変調して重畳する。変調成分が重畳された音声信号は、スピーカ10から放音される。
【0022】
重畳部14の重畳方式は、どの様な方式であってもよいが、変調成分が聴取し難いような手法を用いることが好ましい。例えば、M系列やGold系列等の拡散符号(PN符号)を、聴感上違和感のない微弱なレベルで高帯域に重畳する。なお、コンテンツデータに予め拡散符号等により情報が重畳されている場合、再生装置1の構成としては、重畳部14が不要となる。
【0023】
図2(B)は、重畳部14の構成の一例を示すブロック図である。重畳部14は、LPF140、加算器141、拡散符号発生部142、乗算器144、XOR回路145、遅延器146、LPF147、乗算器148、およびキャリア信号発生器149を備えている。
【0024】
拡散符号発生部142は、制御部11の指示に従って、定期的にM系列等の拡散符号を発生する。拡散符号発生部142が生成する拡散符号とコンテンツ特定情報(−1,1に2値化した符号列)は、乗算器144で乗算される。これにより、拡散符号を位相変調する。すなわち、ビットデータが1の場合には位相が正転、ビットデータが0の場合には位相が反転した拡散符号となる。
【0025】
位相変調後の拡散符号は、XOR回路145に入力される。XOR回路145は、乗算器144から入力された符号と遅延器146を経て入力された1サンプル前の出力符号の排他的論理和を出力する。差動符号化後の信号は、−1,1で2値化しておくものとする。−1,1に2値化した差動符号を出力することで、復調側では、連続する2サンプルの差動符号を乗算することにより差動符号化前の拡散符号を抽出することができる。
【0026】
そして、差動符号化した拡散符号は、LPF147においてベースバンド内で帯域制限され、乗算器148に入力される。乗算器148は、キャリア信号発生器149が出力するキャリア信号(コンテンツの音声信号より高域のキャリア信号)とLPF147の出力信号を乗算し、差動符号化後の拡散符号をパスバンドに周波数シフトする。なお、差動符号化後の拡散符号は、アップサンプリングしてから周波数シフトしてもよい。周波数シフトされた後の拡散符号は、加算器141でコンテンツの音声信号と合成される。コンテンツの音声信号は、LPF140で拡散符号の周波数成分と異なる帯域に制限されている。
【0027】
なお、拡散符号の重畳帯域は、20kHz以上の非可聴域にすることが望ましいが、D/A変換や圧縮オーディオのエンコード等により非可聴域が使えない構成の場合、例えば10〜15kHz程度の帯域であっても、聴感上の影響は少なくすることができる。また、この例では、LPF140でコンテンツの音声信号と拡散符号の帯域を完全に分割する態様としているが、コンテンツの音声信号と疑似ノイズの周波数成分が若干重複していたとしても、聴取者に変調信号が聞こえにくく、かつ集音側で変調成分を復調する程度のSN比を確保することは可能である。
【0028】
再生装置2および再生装置3は、それぞれ、拡散符号が重畳された音声をマイク20およびマイク30で集音し、集音した音声信号と、重畳部14と同じ拡散符号と、の相関値を算出し、算出した相関値のピークに基づいてコンテンツ特定情報を復号する。
【0029】
図3(A)は、再生装置2の構成を示すブロック図である。再生装置2は、通信部21、制御部22、表示部23、復調部24、コンテンツデータ格納部25、再生部26、およびスピーカ27を備えている。復調部24は、マイク20から入力された音声信号に重畳されている情報を復調し、コンテンツ特定情報を復号する。この例では、再生装置が表示部と再生部を両方備えた例を示しているが、どちらか片方だけ備えた構成であってもよい。
【0030】
図3(B)は、復調部24の構成を示すブロック図である。復調部24は、HPF241、遅延器242、乗算器243、LPF244、相関器245、ピーク検出部246、および符号判定部247を備えている。マイク20が集音した音声は、HPF241に入力される。HPF241は、コンテンツの音声信号成分を除去するためのフィルタである。HPF251の出力信号は、遅延器242および乗算器243に入力される。
【0031】
遅延器242の遅延量は、差動符号の1サンプル分の時間に設定される。差動符号をアップサンプリングしている場合、アップサンプリング後の1サンプル分の時間に設定される。乗算器243は、HPF241から入力される信号と、遅延器242から出力される1サンプル前の信号とを乗算し、遅延検波処理を行う。差動符号化された信号は、−1,1に2値化されており、1サンプル前の符号からの位相変化を示したものであるため、1サンプル前の信号と乗算することにより、差動符号化前の拡散符号が抽出される。
【0032】
そして、乗算器243の出力信号は、LPF244を経てベースバンド信号として抽出され、相関器245に入力される。相関器245は、フィルタ係数として拡散符号発生部142で発生する拡散符号が設定されたFIRフィルタ(マッチドフィルタ)からなり、入力された音声信号と拡散符号との相関値を求める。拡散符号は、M系列やGord系列等の自己相関性が高い符号を用いているため、相関器245が出力する相関値は、ピーク検出部246で拡散符号の周期(データ符号の周期)で正負のピーク成分が抽出される。符号判定部247は、各ピーク成分をコンテンツ特定情報のデータ符号(正のピークを1,負のピークを0)として復号する。
【0033】
復号されたコンテンツ特定情報のうち、曲名・作曲者名・演奏者名等の曲情報は、表示部23に入力され、画面表示される。曲IDは、制御部22に入力され、コンテンツの特定に用いられる。制御部22は、入力した曲IDに応じてコンテンツを特定し、特定したコンテンツに関連する自装置で必要なコンテンツ(再生装置1と同じコンテンツ、自装置特有なコンテンツ、または楽譜データ等のコンテンツ)を特定する。例えば、再生装置が図2(A)に示すような、オーディオデータ再生機能と画面表示機能を備えたものである場合、必要なコンテンツとしてオーディオデータと楽譜データを特定する。
【0034】
すなわち、制御部22は、曲IDに対応する関連コンテンツデータ(オーディオデータおよび楽譜データ)をコンテンツデータ格納部25から検索する。図4(A)に示すように、コンテンツデータ格納部25には自装置が再生可能であるコンテンツデータと、それに対応した曲ID、曲情報を記憶している。制御部22は、対応するコンテンツデータが見つかった場合は、コンテンツデータ格納部25から読み出し、楽譜データを表示部23に出力し、オーディオデータを再生部26に出力する。表示部23は、入力された楽譜データを画面表示し、再生部26は、入力されたオーディオデータを再生し、音声信号を生成する。生成した音声信号は、スピーカ27に出力され、音声として放音される。
【0035】
制御部22は、曲IDに対応したデータがコンテンツデータ格納部25に無い場合、必要なコンテンツを特定するために、通信部21を介して接続されているサーバ9に、復号した曲IDおよび自装置の再生機能(オーディオ再生機能、楽譜表示機能、自動演奏機能等(自装置で再生可能な楽器パート情報等を含む。))を示す情報(再生可能コンテンツ情報とする。)を送信する。図2(A)の構成の場合、制御部22は、復号した曲IDと、オーディオ再生および楽譜表示が可能である旨を示す再生可能コンテンツ情報と、をサーバ9に送信する。
【0036】
サーバ9の制御部92は、通信部91を介して受信した各種情報で曲情報格納部93を参照し、再生装置2に必要なコンテンツを特定するための情報である関連コンテンツ情報を抽出する。図4(B)に示すように、曲情報格納部93には、曲ID毎に曲情報や各種関連コンテンツ情報を対応付けたデータベースが記憶されている。関連コンテンツ情報は、曲情報やオーディオデータ、楽譜データ、楽曲データ(MIDIデータ)等からなる。
【0037】
制御部92は、受信した曲IDと再生可能コンテンツ情報に基づいて、関連コンテンツを取得する。図2(A)の例では、再生装置2から、オーディオ再生および楽譜表示が可能である旨を示す再生可能コンテンツ情報が送信されるため、受信した曲IDに対応付けられているオーディオデータおよび楽譜データを取得する。取得したコンテンツは、再生装置2の制御部22に送信され、コンテンツデータ格納部25に保存される。
【0038】
制御部22は、サーバ9から取得した楽譜データを表示部23に出力し、オーディオデータを再生部26に出力する。表示部23は、入力された楽譜データを画面表示し、再生部26は、入力されたオーディオデータを再生し、音声信号を生成する。生成した音声信号は、スピーカ27に出力され、音声として放音される。
【0039】
一方、制御部22は、図5に示す再生装置3のように、自装置が自動演奏機能を備えた機器である場合、復号した曲IDに対応した楽曲データ(MIDIデータ)をコンテンツデータ格納部25から検索し、見つかった場合は、この楽曲データ(MIDIデータ)を読み出し、自動演奏部36に出力する。コンテンツデータ格納部25に対応するコンテンツが無い場合、復号した曲IDと、自動演奏が可能である旨を示す再生可能コンテンツ情報と、をサーバ9に送信する。再生装置3は、図4(A)に示した再生装置2から表示部23が省略され、再生部26に代えて自動演奏部36を備えたものである。
【0040】
この場合、サーバ9の制御部92は、再生装置3から、自動演奏が可能である旨を示す再生可能コンテンツ情報が送信されるため、特定した曲IDに対応付けられている楽曲データ(MIDIデータ)を取得する。取得した楽曲データ(MIDIデータ)は、再生装置3の制御部22に送信され、コンテンツデータ格納部25に保存される。再生装置3の制御部22は、サーバ9から送信された楽曲データ(MIDIデータ)を自動演奏部36に出力する。自動演奏部36は、入力された楽曲データ(MIDIデータ)をシーケンスし、音声信号を生成する。生成した音声信号は、スピーカ27に出力され、音声として放音される。
【0041】
以上のようにして、本実施形態の音声処理システムでは、あるコンテンツを再生する再生装置1で変調成分が含まれた音声が放音されると、この音声を集音した他の再生装置で関連コンテンツが再生されるため、機器同士での連携動作を行うことができる。例えば、再生装置1がピアノ演奏の音声を放音している場合において、再生装置2でピアノ音を集音すると、表示部23にこのピアノ音のコンテンツ情報が表示されるとともに、このピアノ音に関連したコンテンツとして楽譜データが表示され、伴奏音(ストリングス音やリズム音等)が再生される。また、再生装置3でも伴奏音が自動演奏により放音される。
【0042】
なお、再生装置1の重畳部14は、コンテンツ特定情報に限らず、他の情報を重畳してもよい。例えば、コンテンツの再生タイミングを示す同期情報を重畳し、再生装置1、再生装置2、再生装置3でコンテンツの同期再生を行ってもよい。
【0043】
同期再生を行う場合、再生装置1が再生開始からの時間経過を示す情報を同期情報として重畳し、再生装置2および再生装置3がこの時間経過を示す情報に応じてコンテンツを再生するように構成してもよいが、コンテンツデータがMIDIデータに準じた形式である場合、上記拡散符号のピーク抽出タイミングを基準クロックとして用い、同期再生を行うことも可能である。この場合、制御部11は、基準クロックの時間間隔で拡散符号を出力するように重畳部14に設定する。再生装置2の再生部26や再生装置3の自動演奏部36は、定期的に算出される相関値のピークを基準クロックとしてシーケンサを作動させ、自動演奏を行うことが可能である。
【0044】
なお、楽音発生タイミングと基準クロックとの時間差に関する情報を重畳しておけば、復調側でさらに高精度な同期再生を行うことができる。また、ノートナンバやベロシティ等の演奏情報も重畳しておけば、復調側でMIDIデータを記憶していなくとも、自動演奏を行うことができる。
【0045】
このように同期再生を行う場合、再生装置1がピアノパートの音を放音し、再生装置2がストリングスパートの音を放音しながら楽譜表示を行い、再生装置3がドラムパートの音を放音する、といった機器間の連係動作が可能となる。また、楽譜表示では、現時点の再生タイミング(曲の進行具合)を表示することも可能となる。
【0046】
なお、上述の例では、再生装置1がコンテンツを再生してスピーカ10から音声として放音する構成を示したが、再生装置1に自動演奏楽器(例えば自動演奏ピアノ)を接続し、自動演奏楽器から楽音を発生させる態様とすることも可能である。自動演奏ピアノは、入力されたMIDIデータに応じて、ピアノ内部のキーアクションに取り付けられたソレノイドを作動させて打鍵を行うアコースティック楽器である。この場合、再生装置1は、スピーカ10から変調音声だけを出力する。
【0047】
また、上記実施形態では、各装置内にコンテンツデータを格納している例を示しているが、コンテンツデータは、放送波として外部から受信するようにしてもよいし、ネットワークを介して(例えばサーバ9から)受信するようにしてもよい。また、CD等のメディアからPCMデータを取得する態様であってもよい。
【0048】
特に、ネットワークを介してコンテンツデータを受信する場合、特定したコンテンツに課金処理を行い、決済後にコンテンツデータをダウンロードするように構成することも可能である。課金処理を行うサーバやコンテンツデータを格納するサーバが上述のサーバ9と同一である場合、曲IDをサーバ9に送信することでコンテンツの特定、課金処理をまとめて行うことが可能である。課金処理を行うサーバが別の課金処理用サーバである場合、曲IDをサーバ9に送信して課金処理用サーバで参照される課金専用の固有IDに変換し、課金処理やダウンロードを行うように構成すればよい。
【0049】
<<応用例1>>
次に、図6は、応用例1に係る音声処理システムの構成を示すブロック図である。この場合、音声処理システムは、ネットワーク7を介して接続される再生装置1、再生装置2、再生装置5、およびサーバ9からなる。再生装置5には、マイク50およびスピーカ51が接続されている。ただし、マイク50やスピーカ51は再生装置5に内蔵されている態様でも可能である。
【0050】
再生装置1、再生装置2、再生装置5は、同時に同じ地点に存在してもよいが、この例では、再生装置5が携帯型の機器であり、まず再生装置5を再生装置1と同じ地点Aに設置して再生装置5に音声信号を入力し、その後、再生装置5を移動させて、再生装置2と同じ地点Bに設置して再生装置2に音声信号を入力する構成として説明する。
【0051】
図7は、再生装置5およびサーバ9の構成を示すブロック図である。再生装置5は、図3(A)に示した再生装置3の構成に加え、再生部26から入力される音声信号に新たな変調成分(コンテンツ特定情報)を重畳する重畳部28を備え、新たな変調成分が重畳された音声をスピーカ51から放音する構成である。
【0052】
重畳部28の構成は、図2(B)に示した重畳部14の構成と同様である。この場合、再生装置5は、再生するコンテンツ(オーディオデータ)の音声信号に、復調部24で復調したコンテンツ特定情報を再び重畳し、音声として放音する機能を有する。つまり、地点A(例えば外出先)で再生装置1が再生するコンテンツ(例えば有線放送など)を集音してコンテンツを特定し、その後、地点B(例えば自宅)において関連コンテンツ(例えば放送されていたコンテンツと同じオーディオデータ)を再生すると、再生装置2でさらに関連コンテンツが再生される。このようにして、リレー式に関連コンテンツを連携再生させることも可能である。
【0053】
なお、再生装置5で重畳する拡散符号は、再生装置1で重畳する拡散符号と同じ拡散符号であってもよいし、異なる拡散符号であってもよい。ただし、再生装置1と異なる拡散符号を用いる場合、復調側(再生装置2)では、再生装置5で重畳される拡散符号を記憶しておくものとする。
【0054】
また、再生装置5の制御部22は、マイク50で集音した音声信号から、LPF介してコンテンツの音声信号のみを抽出し、録音データとしてコンテンツデータ格納部25に記録しておくことも可能である。この場合、録音したデータを再生にコンテンツ特定情報を再び重畳し、変調成分が含まれた音声を放音することが可能である。なお、LPFは必須ではなく、拡散符号が含まれた音声信号をそのままコンテンツデータ格納部25に録音しておき、後に再生出力するようにしてもよい。この場合、重畳部28の構成は必須ではない。
【0055】
<<応用例2>>
図8は、応用例2に係る音声処理システムの構成を示すブロック図である。この場合、音声処理システムは、ネットワーク7を介して接続される再生装置1、再生装置2、再生装置6、およびサーバ9からなる。再生装置6には、マイク60およびスピーカ61が接続されている。ただし、マイク60やスピーカ61は再生装置6に内蔵されている態様でも可能である。
【0056】
応用例2の音声処理システムでは、再生装置6が集音した音声信号を分析サーバ(サーバ9と同一でも他のサーバでもよい。)に送信し、サーバ側で復調やコンテンツの特定を行うものである。応用例2では、サーバ9に分析機能を追加した例として説明する。
【0057】
図9は、応用例2に係る再生装置6およびサーバ9の構成を示すブロック図である。再生装置6は、一般的なデジタルオーディオプレーヤであり、図3(A)に示した再生装置2から、復調部24が省略されたものに等しい構成である。
【0058】
この場合、制御部22は、マイク60で集音した音声信号(あるいはエンコードしたデータ)を通信部21を介してサーバ9に送信する。また、制御部22は、自装置が再生可能であるコンテンツを示す情報(再生可能コンテンツ情報)を送信する。
【0059】
サーバ9は、復調部24と同様の構成、機能を有した復調部94を備えており、制御部92は、受信した音声信号を復調部94に入力してコンテンツ特定情報を復号する。そして、制御部92は、復号したコンテンツ特定情報を再生装置6の制御部22に送信する。また、制御部92は、復号したコンテンツ特定情報に含まれる曲IDと再生装置6から受信した再生可能コンテンツ情報に基づいて、関連コンテンツ情報(コンテンツID)を抽出し、再生装置6の制御部22に送信する。
【0060】
制御部22は、受信したコンテンツ特定情報に含まれる曲情報を表示部23に表示する。また、制御部22は、受信したコンテンツIDに対応するコンテンツデータ(オーディオデータおよび楽譜データ)をコンテンツデータ格納部25から検索し、見つかった場合はこのコンテンツデータを読み出し、再生部26に出力する。コンテンツデータ格納部25にデータが見つからない場合はサーバ9から関連コンテンツをダウンロードする。表示部23は、入力された楽譜データを画面表示し、再生部26は、入力されたコンテンツデータを再生し、音声信号を生成する。生成した音声信号は、スピーカ61に出力され、音声として放音される。
【0061】
また、再生装置6の制御部22は、マイク60で集音した音声信号を録音データとしてコンテンツデータ格納部25に記録しておく。この場合、拡散符号が含まれた音声信号をそのままコンテンツデータ格納部25に録音しておく。そして、地点B(例えば自宅)において録音データを再生すると、再生装置2で関連コンテンツが再生される。
【0062】
このように、再生装置6は、集音した音声信号を送信し、分析結果を受信して動作を行う態様とすることで、一般的なデジタルオーディオプレーヤを用いて本発明のコンテンツ再生装置を実現することが可能となる。
【0063】
なお、上記の例では、全ての再生装置がスピーカを用いて音声を放音し、マイクを用いて音声信号を生成し、空間放音を用いて音声を伝送する例を示したが、ライン接続によりオーディオ信号を伝送する態様としてもよい。
【0064】
また、本実施形態では、再生装置が再生可能であるコンテンツを示す情報をサーバに送信する例を示したが、再生装置を特定する情報(再生装置に固有のID等)を送信するようにしてもよい。この場合、サーバでは、再生装置毎に再生可能であるコンテンツを示す情報をデータベースとして記憶しておき、受信した再生装置を特定する情報でデータベースを参照することにより、その再生装置で再生可能であるコンテンツを特定することができる。
【0065】
また、再生可能なコンテンツを示す情報と、再生装置を特定する情報と、を両方送信するようにしてもよい。この場合、再生装置の動作状態により、再生可能であるコンテンツが変化する状況においても適切なコンテンツが特定される。
【符号の説明】
【0066】
1,2,3…再生装置
7…ネットワーク
9…サーバ
10…スピーカ
11…制御部
12…コンテンツデータ格納部
13…再生部
14…重畳部
15…通信部
20…マイク
21…通信部
22…制御部
23…表示部
24…復調部
25…コンテンツデータ格納部
26…再生部
27…スピーカ
28…重畳部
30…マイク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報が重畳された音声信号を入力する入力手段と、
前記音声信号に重畳された情報に基づいてコンテンツを特定し、特定したコンテンツに関連し、自装置に必要なコンテンツを特定するコンテンツ特定手段と、
前記コンテンツ特定手段で特定したコンテンツを再生する再生手段と、
を備えたコンテンツ再生装置。
【請求項2】
自装置に必要なコンテンツが無い場合に、サーバよりコンテンツを取得するコンテンツ取得手段を備えた請求項1に記載のコンテンツ再生装置。
【請求項3】
前記コンテンツ特定手段は、前記再生手段が再生可能であるコンテンツに応じて前記必要なコンテンツを特定する請求項1または請求項2に記載のコンテンツ再生装置。
【請求項4】
前記音声信号に重畳される情報は、コンテンツの再生タイミングを示す同期情報を含み、
前記同期情報に基づいて、他の機器の再生するコンテンツと前記再生手段が再生するコンテンツを同期させる同期手段を備えた請求項1乃至請求項3に記載のコンテンツ再生装置。
【請求項5】
前記再生手段が再生するコンテンツの音声に新たな情報を重畳する重畳手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のコンテンツ再生装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のコンテンツ再生装置と、コンテンツ再生装置に接続されるサーバと、を備えた音声処理システムであって、
前記コンテンツ特定手段は、前記音声信号に含まれる変調成分を復調する復調手段と、
前記復調手段が復調した情報、および前記再生手段が再生可能であるコンテンツを示す情報もしくはコンテンツ再生装置を特定する情報の少なくともいずれか一方を前記サーバに送信する通信手段と、を備え、
前記サーバは、
前記コンテンツ再生装置から受信した情報に基づいて、コンテンツ再生装置に必要なコンテンツを示す関連コンテンツ情報を抽出する抽出手段を備え、
前記コンテンツ特定手段は、前記サーバの抽出手段で抽出された関連コンテンツ情報に基づいて自装置に必要なコンテンツを特定することを特徴とする音声処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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