説明

コンテンツ推薦装置及び方法及びプログラム

【課題】 ユーザのその時の興味及びトレンドに合ったアイテムを推薦する。
【解決手段】 本発明は、消費履歴と情報源から得られるコンテンツのタクソノミを入力として、該消費履歴の時間情報を時刻に変換して該消費履歴に付与し、時刻が付与された消費履歴を参照し、前記ユーザが消費したアイテム消費回数を一定時間間隔で区切ることによりベクトルで表し、該アイテムが属するクラス別にベクトルの和をとり、クラス別ユーザ別ベクトルを生成し、クラス別ユーザ別ベクトルから、現在時刻の直近の2つ時刻間におけるアイテムの消費回数のユーザ間の類似度を求め、時刻(t−1)と時刻tにおけるアイテムの消費パターンに基づいて、時刻間の消費の遷移確率を求め、遷移確率を時刻(t+1)に適用することにより推薦アイテムを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツ推薦装置及び方法及びプログラムに係り、特に、協調フィルタリングに基づいてコンテンツを推薦するために、ユーザが興味を持つコンテンツやコンテンツの所属するクラスの変化を捉え、そのときにあったコンテンツを推薦して提示するためのコンテンツ推薦装置及び方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
Webネットワーク上において、ユーザによる対象の意味や概念に対する参照要求が大きくなるにつれ、WikiPedia(登録商標)などの体系化された辞書が普及するようになってきている。また、こうしたユーザの要求を人手ではなく、人の代わりにサービスが処理し、ユーザにカスタマイズして提示可能とするため、機械処理可能な概念参照API(Application Program Interface)が急速に普及しており、DBPedia(登録商標)、Word-Net(登録商標)、FreeBasse(登録商標)など様々な情報プロバイダが、自身の持つ情報を体系化し、APIを通じ安価でかつ無料で提示するようになって着ている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
一方、ユーザの興味のある概念を推測し、ユーザに代わりに情報を収集提示するような推薦システムも必要とされ、研究されてきた。こうした研究と上記多様なAPIを組み合わせれば、より広範囲にユーザの興味を推定できる。しかし、現状の技術には2点大きな問題がある。
【0004】
(1)ユーザの興味は動的に変化する。多様な興味を取り扱うほど、時間軸に応じた興味の変化は激しいと考えられる。
【0005】
(2)概念体系は頻繁にメンテナンスされる。例えば、映像の体系は、サービスの深化とともに深堀りされたり、新たなグループが人気を博すと、そのグループの体系ができたりし、それに併せ体系も深化する。
【0006】
本発明では、(1)の問題について取り組む。
【0007】
興味推定を行う技術を以下に示す。
【0008】
まず、タクソノミに基づく興味推定について説明する。
【0009】
ユーザの興味の変動を取り扱っておらず、例え2年前の履歴であっても、最近の履歴と等価に扱っている。特に、クラスのような抽象的な情報でユーザ興味を管理すると、時系列が長くなると、非常に多くのクラスにユーザが興味を持つと見做されるようになりやすくなる(例えば、非特許文献2参照)。
【0010】
次に、テンソル分解に基づく手法について説明する。
【0011】
現在の時刻(t)に購入したアイテムと1つ前の時刻(t−1)に購入したアイテムとの関係から、(t+1)に購入したアイテムを予測するマルコフモデルに基づく方法では、全ユーザの購買に基づく統計のみから、(t+1)のアイテムを予測することになり、パーソナライズされていない。そこで、(t−1)に同様のアイテムを購入し、(t)にも同様のアイテムを購入したユーザグループをクラスタリングし、そうしたユーザ群で購入されるアイテムを推薦することで、パーソナル化されつつ、マルコフモデルに沿ったアイテム推薦を可能にする(例えば、非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Linked Open Data Project (http://linkeddata.org/).
【非特許文献2】Makoto Nakatsuji, Yasuhiro Fujiwara, Akimichi Tanaka, Tosho Uchiyama, Ko Fujimura, Toru Ishida, "Classical Music for Rock Fans? :Novel Recommendations for Expanding User Interests", pp. 949-958. The 19th ACM international conference on Information and knowledge management.
【非特許文献3】Factorizing Personalized Markov Chains for Next-Basket Recommendation : Stefffen Rendle著(http://www.ra.ethz.ch/CDstore/www2010/www/p811.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記のタクソノミに基づく興味推定は、多くのクラスで他ユーザと類似することになり、精度が落ちる場合がある。一方、最近の履歴のみでは、履歴がスパースになりすぎ、精度が悪くなるという問題もある。
【0014】
また、テンソル分解に基づく手法では、同様のアイテムを購入したという点が、クラスタに基づいているため、クラスタリングにおいてパラメータチューニングの工夫や時間がかかるという問題があること、生成されたクラスタがユーザにとって体系的に参照可能ではないという課題を持つ。
【0015】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、ユーザのその時の興味及びトレンドに合ったアイテムを推薦することが可能なコンテンツ推薦装置及び方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、本発明(請求項1)は、ユーザが興味を持つコンテンツをその時に応じて推薦するコンテンツ推薦装置であって、
ユーザのコンテンツに対する評価値と評価した時間情報を持つユーザのコンテンツの消費履歴を格納した消費履歴記憶手段と、
前記消費履歴記憶手段の前記消費履歴と情報源から得られるコンテンツのタクソノミを入力として、該消費履歴の時間情報を時刻に変換して該消費履歴に付与する時刻付与手段と、
時刻が付与された前記消費履歴からユーザの興味を抽出し、データ構造化してユーザ興味記憶手段に格納するユーザ興味構築手段と、
前記ユーザ興味記憶手段のデータ構造化されたユーザの興味について、隣り合う2つの時刻間で類似するユーザの消費パターンを計測し、消費パターン群記憶手段に格納する類似度計測手段と、
前記消費パターン群記憶手段の類似する消費パターン群において、コンテンツやクラスの個人毎の遷移確率を計算し遷移確率記憶手段に格納する遷移確率計算手段と、
前記遷移確率記憶手段の各遷移確率を取得して個人へのコンテンツの推薦値を計算する予測値計算手段と、を有する。
【0017】
また、本発明(請求項2)は、前記ユーザ興味構築手段において、
前記時刻が付与された消費履歴を参照し、前記ユーザが消費したアイテム消費回数を一定時間間隔で区切ることによりベクトルで表し、該アイテムが属するクラス別にベクトルの和をとり、クラス別ユーザ別ベクトルを生成し、前記ユーザ興味記憶手段に格納する手段を含み、
前記類似度計測手段において、
前記ユーザ興味記憶手段の前記クラス別ユーザ別ベクトルから、現在時刻の直近の2つ時刻間におけるアイテムの消費回数のユーザ間の類似度を求め、類似するユーザの消費パターンとして前記消費パターン群記憶手段に格納する手段を含み、
前記遷移確率計算手段において、
前記消費パターン群記憶手段から、時刻(t−1)と時刻tにおけるアイテムの消費パターンに基づいて、時刻間の消費の遷移確率を求める手段を含み、
前記予測値計算手段において、
前記遷移確率を時刻(t+1)に適用することにより推薦アイテムを決定する手段を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、その時の興味にそって、かつ、トレンドにも沿ったアイテム(コンテンツ)をパーソナライズして推薦可能となる。また、クラス情報も考慮することにより推薦根拠も持ちうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態におけるコンテンツ推薦装置の構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態におけるコンテンツ推薦装置の処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明のベースとなる技術について説明する。
【0021】
従来の協調フィルタリングにおいて、ユーザ間の類似度を計測する際には、Cosineベースアプローチ(Breese, Heckerman, & Kadie 1998, Sarwar, Karypis, Konstan, & Ridel 2001)とPearson correlationアプローチ(Resnick,Iacovou, & Suchak 1994, Shardanand & Maes 1995)を用いることが多い。Cosineベースアプローチにおいては、アクティブユーザaとあるユーザuの間の類似度S(a,u)は、aとuの評価ベクトルのCosine角度を計算することで求められる。形式的には、両方のユーザが評価を与えているアイテム数をMとし、ユーザuのアイテムIに対する評価値を
【0022】
【数1】

とすると、類似度S(a,u)は以下の式(1)で与えられる。
【0023】
【数2】

一方、Pearson correlationアプローチでは、ユーザ間の類似度の計測において、ユーザの評価スキームはユーザ毎に異なるという考え方を採用しており、以下の式(2)で表される。
【0024】
【数3】

ここで、
【0025】
【数4】

は、ユーザuのアイテムへの評価値の平均値を示す。
【0026】
CosineベースアプローチもPearson correlationアプローチも、両方のユーザaとuが評価を与えたアイテムのみに焦点を絞り計算を行っている点に注意が必要である。
【0027】
最終的にNをアクティブユーザaと類似度の高いユーザの数とすると、aのアイテムIiに対する予測値
【0028】
【数5】

は、以下の式(3)で与えられる。
【0029】
【数6】

以下図面と共に、本発明の実施の形態を説明する。
【0030】
本発明では、テンソル分解に基づく手法における考え方を踏襲しつつ、クラスタに基づく類似計算ではなく、クラスに基づく計算を導入する。
【0031】
現在の時刻(t)に購入したアイテムと1つ前の時刻(t−1)に購入したアイテムとの関係から、(t+1)に購入したアイテムを予測する従来のマルコフモデルに基づく方法では、全ユーザの購買に基づく統計のみから、(t+1)のアイテムを予測することになり、パーソナライズされていない。
【0032】
そこで、本発明では、(t−1)に同様のアイテム/クラスを購入し、(t)にも同様のアイテム/クラスを購入したユーザグループとの類似度を計算し、そのユーザの中で、(t−1)と(t)で購入したアイテム/クラスを基に、(t−1)にあるアイテム/クラスを消費した際の、(t)におけるアイテム/クラスの消費確率を計算する。
【0033】
つまり、(t−1)にあるアイテム/クラスを購入したという条件下で、(t)においてあるアイテム/クラスを購入するという条件付き確率を計算する。その条件付き確率に基づき(t+1)において被推薦者のユーザaが購入する可能性のあるアイテムを計算する。
【0034】
図1は、本発明の一実施の形態におけるコンテンツ推薦装置の構成を示す。
【0035】
同図示すコンテンツ推薦装置は、時刻情報付与部10、ユーザ興味構築部20、類似度計算部30、遷移確率計算部40、予測値計算部50、消費履歴DB1、ユーザ興味記憶部2、消費パターン群記憶部3、遷移確率記憶部4から構成される。
【0036】
なお、消費履歴DB1、ユーザ興味記憶部2、消費パターン群記憶部3、遷移確率記憶部4は、ハードディスク等の記憶媒体である。
【0037】
消費履歴DB1は、ユーザのコンテンツに対する評価値として評価した時間情報を持つユーザの消費履歴(ログ)を格納したものであり、ユーザ興味記憶部2、消費パターン群記憶部3、遷移確率記憶部4は、それぞれ、ユーザ興味構築部20、類似度計算部30、遷移確率計算部40で算出されたデータを格納する。
【0038】
時刻情報付与部10は、消費履歴DB1から消費ログを読み込み、WikiPedia(登録商標)等の情報源から得られるコンテンツのタクソノミを取得し、消費履歴の時間情報を時刻に変換し、消費履歴に時刻を付与してユーザ興味構築部20に出力する。
【0039】
ユーザ興味構築部20は、時刻情報付与部10から取得した時刻が付与された消費履歴からユーザの興味を、ユーザによって消費されたアイテムが属するクラス毎にベクトルで表現されたデータ構造として構築し、ユーザ興味記憶部2に格納する。
【0040】
類似度計算部30は、ユーザ興味記憶部2からユーザの興味(ベクトル)を取得し、隣り合う2時刻(t,t−1)間で類似するユーザ間の消費パターンの類似性を計測し、その消費パターンを消費パターン群記憶部3に格納する。
【0041】
遷移確率計算部40は、消費パターン群記憶部3から消費パターンを読み出し、類似する消費パターン群において、コンテンツやクラスの個人ごとの遷移確率を計算し、遷移確率記憶部4に格納する。
【0042】
予測値計算部50は、遷移確率記憶部4から遷移確率を読み出して、個人へのコンテンツの推薦値を計算する。
【0043】
以下に、詳細に上記の構成における処理を説明する。
【0044】
図2は、本発明の一実施の形態におけるコンテンツ推薦装置の動作のフローチャートである。
【0045】
ステップ1) 時刻情報付与部10は、消費履歴DB1の消費履歴と、情報源からタクソノミを取得し、消費履歴の時間情報を時刻に変換し、消費履歴に時刻を付与する。本発明では、ユーザがアイテム(音楽などのマルチメディアコンテンツ、Webページなど)を消費した時間を、一定時間毎に分離し、離散した時刻として扱う。具体的には、消費履歴の中に記載されている時間情報に対し、消費履歴上での最初の時間をSとし、期間を表す値をDとすると、各時刻t(i)は、S+D×iからS+D×(i+1)までの時間を取り扱う。
【0046】
ステップ2) ユーザ興味構築部20は、時刻情報を取得してユーザの興味を構築する。ユーザvのある時刻tにおける消費アイテムは、S+D×tからS+D×(t+1)の間にユーザuが消費したアイテムを指す。その期間に消費したアイテムであれば、順序を考慮せず、ユーザuが時刻tに消費したコンテンツ集合として管理する。ユーザuが消費したアイテムi毎にベクトルvu,iを形成する。当該ベクトルは、時間を示し、その列内の要素は各時刻におけるアイテムiの消費頻度が格納される。
【0047】
ユーザuが消費したアイテムが所属するクラスc毎にベクトルvu,cを形成する。当該ベクトルの列は時刻を示し、その列内の要素は、各時刻におけるc配下のアイテム消費頻度の和が格納される。また、vu,c(t)が0より大きければ、cの上位クラスに値を伝播させる。計算量の削減ため、0以下であれば値を伝播させない。特にアイテムに関しては、事前い0以上のアイテムのみを集合として管理しておけば、その集合のみをチェックし、伝播を決定すれば計算量の削減に繋がる。
【0048】
本ベクトルの列tに対応する要素の値は以下のように計算される。f(c)はcの子クラス集合を返す関数であり、cはクラスcのある子クラスである。
【0049】
【数7】

上記のようにして求められたベクトルをユーザ興味情報としてユーザ興味記憶部2に格納する。
【0050】
ステップ3) 類似度計算部30は、ユーザ興味記憶部2からベクトルを読み出して、類似するユーザの消費パターンを抽出する。被推薦ユーザaに対しては、現在の時刻Tからみて、x回直近の時刻までの消費履歴を特に考慮する。具体的には、T−x+1からTまでの履歴を特に考慮することで、直近のx時刻の消費履歴を重視した推薦を実現可能とする。このため、ベクトルva,cを直近の時刻の次元に縮退させる。この直近のx時刻の消費履歴におけるクラスcに関する消費ベクトルra,cを与える。当該消費ベクトルra,cは、以下のように計算される。本発明では、tとt−1のみを考えるため、xは2となる。
【0051】
以下の式(5)において、0はゼロ行列を指し、添え字は次元数である。Eは単位行列を指し、添え字は次元数である。
【0052】
【数8】

次に、あるクラスcに対するユーザaとあるユーザuのある時刻tを最終時刻とする類似度計算式を以下に示す。cos()はcosine類似度を示す。Cはユーザuに対し、ステップ2で計算済みのクラス集合を指し、タクソノミ上の全クラスではない。これは計算量削減のためである。
【0053】
【数9】

ユーザaとユーザuの消費アイテムの類似度の計算は、消費履歴がスパースになりすぎることを避けるためと、計算量の削減のため、時系列を考慮しないものとする。消費アイテムの類似度(SI(a,u))は、ユーザuのクラスc配下のt−1とtでのアイテム集合をIとすると、非特許文献2と同様に、以下の式(7)から計算する。式(7)において、jac()はjaccard係数を表す。なお、アイテムの類似度の計算方式は、以下の式(7)以外の公知の方法を用いてもよい。
【0054】
【数10】

次に、ユーザaとユーザuの消費パターン間の類似度(Sa,u)は、以下の式(8)により計算する。Nは正規化関数である。
【0055】
【数11】

上記式(8)により求められたユーザa,u間のパターン間の類似度(消費パターン類似度)(Sa,u)は消費パターン群記憶部3に格納する。
【0056】
ステップ4) 次に、遷移確率計算部40は、消費パターン群記憶部3から消費パターン類似度を読み出し、当該消費パターン類似度を0から1の間に正規化する。以降、正規化されたものをsa,uと記す。
【0057】
その上で、時刻t−1にあるアイテムi(t−1)を消費し、時刻tに別のアイテムi(t)を消費した条件付確率は以下の式(9)となる。ここで、I(t−1)は、時刻t−1で消費されたアイテム集合である。
【0058】
【数12】

同じく、時刻t−1にあるクラスc(t−1)を消費し、時刻tに別のクラスc(t)を消費した条件付き確率は式(10)のようになる。ここで、c(t−1)は、時刻t−1で消費されたクラス集合である。
【0059】
【数13】

一方、時刻tにおけるクラスc内のアイテムiの生起確率は、時刻t−1における生起頻度を受け継ぐとし、式(11)のように計算する。
【0060】
【数14】

同じく、時刻tにおける親クラスpc内のクラスcの生起確率tは、時刻t−1におけるクラスcの生起頻度を受け継ぐとし、式(12)のように計算する。
【0061】
【数15】

なお、タクソノミのルートクラス直下のクラスの生起確率は、一様に生起すると仮定する。直下のクラス数をNとすると、生起確率は1/Nとなる。
【0062】
上記の式(9),(10),(11),(12)で求められた各生起確率を生起確率記憶部4に格納する。
【0063】
ステップ5) 予測値計算部50は、生起確率記憶部4から生起確率を読み出し、時刻t+1におけるアイテムiの予測値Pを計算する。
【0064】
時刻(t+1)におけるアイテムiの予測値Pは、式(13)のように計算される。
【0065】
時刻tにユーザaが消費したアイテム集合をIとし、クラス集合をCaとすると、
【0066】
【数16】

として計算する。
【0067】
なお、上記の説明は、t−1とtの消費履歴のみを用い、遷移確率を計算していたが、今後っとt+1の消費履歴を用い、遷移確率を更新することもできる。その場合は、以下の式(14)で更新を行う。以下の式(14)においてαは、過去の履歴をどれだけ重要視するかを決定するパラメータである。
【0068】
【数17】

以下に、従来技術における非特許文献1の技術との違いを以下に示す。
【0069】
(1)本発明は、ユーザの持つ消費履歴のうち、クラスに関しては全てを利用するのではなく、時系列に沿った一部機関のみを利用する。被推薦ユーザに関しては直近の消費履歴のみを用い、類似度計算対象ユーザに対しては、時系列に沿った任意の一部機関のみを利用する。これにより、ユーザの興味の変動に対応でき、スパース問題も回避できつつ、長期間にわたり多様な消費行動をとったユーザは、クラスレベルで非常にたくさんのユーザと繋がってしまうという従来技術の問題を回避することができる。
【0070】
(2)アイテムを予測する際のアイテム集合としては、ユーザ毎の類似度をもちいるのではなく、ユーザの持つ消費パターンの類似している部分のみ用いる。これにより、現在のユーザの興味とは外れているアイテムを推薦から除外でき、適合率が高まる。
【0071】
次に、非特許文献2の技術との違い示す。
【0072】
(1)テンソル分解に基づくcube内で、時刻t−1とtで消費行動が近いユーザ集合を管理するのではなく、タクソノミ上のクラスを介したユーザ類似度に基づき管理する。推薦を個人化でき、スパーシティ問題を回避できるという点では、非特許文献2と着眼点は同じであるが、類似ユーザ数を絞り込めば、推薦の適合率を向上できるという利点がある。
【0073】
(2)クラスの体系化された情報を元にお勧めコンテンツを提示できるという利点がある。
【0074】
なお、上記の実施の形態では、コンテンツを対象として説明しているが、この例に限定されることなく、一般的な商品に適用することも可能である。
【0075】
上記の図1のコンンテンツ推薦装置の各構成要素の動作をプログラムとして構築し、コンンテンツ推薦装置として利用されるコンピュータにインストールして実行させる、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。
【0076】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 消費履歴データベース(DB)
2 ユーザ興味記憶部
3 消費パターン群記憶部
4 遷移確率記憶部
10 時刻情報付与部
20 ユーザ興味構築部
30 類似度計算部
40 遷移確率計算部
50 予測値計算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが興味を持つコンテンツをその時に応じて推薦するコンテンツ推薦装置であって、
ユーザのコンテンツに対する評価値と評価した時間情報を持つユーザのコンテンツの消費履歴を格納した消費履歴記憶手段と、
前記消費履歴記憶手段の前記消費履歴と情報源から得られるコンテンツのタクソノミを入力として、該消費履歴の時間情報を時刻に変換して該消費履歴に付与する時刻付与手段と、
時刻が付与された前記消費履歴からユーザの興味を抽出し、データ構造化してユーザ興味記憶手段に格納するユーザ興味構築手段と、
前記ユーザ興味記憶手段のデータ構造化されたユーザの興味について、隣り合う2つの時刻間で類似するユーザの消費パターンを計測し、消費パターン群記憶手段に格納する類似度計測手段と、
前記消費パターン群記憶手段の類似する消費パターン群において、コンテンツやクラスの個人毎の遷移確率を計算し遷移確率記憶手段に格納する遷移確率計算手段と、
前記遷移確率記憶手段の各遷移確率を取得して個人へのコンテンツの推薦値を計算する予測値計算手段と、
を有することを特徴とするコンテンツ推薦装置。
【請求項2】
前記ユーザ興味構築手段は、
前記時刻が付与された消費履歴を参照し、前記ユーザが消費したアイテム消費回数を一定時間間隔で区切ることによりベクトルで表し、該アイテムが属するクラス別にベクトルの和をとり、クラス別ユーザ別ベクトルを生成し、前記ユーザ興味記憶手段に格納する手段を含み、
前記類似度計測手段は、
前記ユーザ興味記憶手段の前記クラス別ユーザ別ベクトルから、現在時刻の直近の2つ時刻間におけるアイテムの消費回数のユーザ間の類似度を求め、類似するユーザの消費パターンとして前記消費パターン群記憶手段に格納する手段を含み、
前記遷移確率計算手段は、
前記消費パターン群記憶手段から、時刻(t−1)と時刻tにおけるアイテムの消費パターンに基づいて、時刻間の消費の遷移確率を求める手段を含み、
前記予測値計算手段は、
前記遷移確率を時刻(t+1)に適用することにより推薦アイテムを決定する手段を含む
請求項1記載のコンテンツ推薦装置。
【請求項3】
ユーザが興味を持つコンテンツをその時に応じて推薦するコンテンツ推薦方法であって、
時刻付与手段が、ユーザのコンテンツに対する評価値と評価した時間情報を持つユーザのコンテンツの消費履歴を格納した消費履歴記憶手段の前記消費履歴と情報源から得られるコンテンツのタクソノミを入力として、該消費履歴の時間情報を時刻に変換して該消費履歴に付与する時刻付与ステップと、
ユーザ興味構築手段が、時刻が付与された前記消費履歴からユーザの興味を抽出し、データ構造化してユーザ興味記憶手段に格納するユーザ興味構築ステップと、
類似度計測手段が、前記ユーザ興味記憶手段のデータ構造化されたユーザの興味について、隣り合う2つの時刻間で類似するユーザの消費パターンを計測し、消費パターン群記憶手段に格納する類似度計測ステップと、
遷移確率計算手段が、前記消費パターン群記憶手段の類似する消費パターン群において、コンテンツやクラスの個人毎の遷移確率を計算し遷移確率記憶手段に格納する遷移確率計算ステップと、
予測値計算手段が、前記遷移確率記憶手段の各遷移確率を取得して個人へのコンテンツの推薦値を計算する予測値計算ステップと、
を行うことを特徴とするコンテンツ推薦方法。
【請求項4】
前記ユーザ興味構築ステップにおいて、
前記時刻が付与された消費履歴を参照し、前記ユーザが消費したアイテム消費回数を一定時間間隔で区切ることによりベクトルで表し、該アイテムが属するクラス別にベクトルの和をとり、クラス別ユーザ別ベクトルを生成し、前記ユーザ興味記憶手段に格納し、
前記類似度計測ステップにおいて、
前記ユーザ興味記憶手段の前記クラス別ユーザ別ベクトルから、現在時刻の直近の2つ時刻間におけるアイテムの消費回数のユーザ間の類似度を求め、類似するユーザの消費パターンとして前記消費パターン群記憶手段に格納し、
前記遷移確率計算ステップにおいて、
前記消費パターン群記憶手段から、時刻(t−1)と時刻tにおけるアイテムの消費パターンに基づいて、時刻間の消費の遷移確率を求め、
前記予測値計算ステップにおいて、
前記遷移確率を時刻(t+1)に適用することにより推薦アイテムを決定する
請求項3記載のコンテンツ推薦方法。
【請求項5】
コンピュータを、
請求項1または2記載のコンテンツ推薦装置の各手段として機能させるためのコンテンツ推薦プログラム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−109427(P2013−109427A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252107(P2011−252107)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)