説明

コンテンツ配信装置及び方法

【課題】劇場とネット配信の相互補完的、互恵的活用を図る技術を提供すること。
【解決手段】映画館など劇場の予約システムから得る空席数に基づいて決定する配信数を上限として配信数を制限しつつ、劇場に係る映画などの映像コンテンツをネット配信することにより、作品や日時などで空席が多い場合は配信数の増加によるプロモーション効果で劇場への集客が期待できる。他方、空席が少ない場合は配信数が絞られて視聴の希少性が維持されるので劇場からネット配信への需要流出は抑制される。そして、従来の二次的流通の時期を待たずに最新作についてもネット配信の機会が生まれる。これらにより、劇場とネット配信の相互補完的、互恵的活用を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像コンテンツの配信に関する。
【背景技術】
【0002】
劇場で鑑賞する映画などのコンテンツは長い歴史と文化的経済的価値に富み、近年ではインターネットのウェブサイトで映画館のチケット販売と合わせて座席予約もできるシステムが提案されている(例えば特許文献1参照)。この種のシステムとして、複数の映画館から上映作品及びスケジュール等の情報、各館の座席配置や空席数等の座席情報を収集し、サーバ上で集中管理して予約受付処理を行うものもある。
【0003】
一方で、映画などのコンテンツは、インターネットを介して映像コンテンツを配信するサービス(「ネット配信」とも呼ぶこととする)の対象ともなっている(例えば特許文献2参照)。ネット配信の主流は、映画館での上映期間が終了した過去の作品をデジタル化し、ユーザのパソコンなど個人の端末に有料で配信し対価を得るビジネスモデルである。
【0004】
それを含め、映画については、映画館での上映期間後、映像コンテンツとして加工され、DVD等の記録媒体としてのパッケージ販売や、ネット配信、テレビなどによるいわゆる二次的流通が行われることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−24465号
【特許文献2】特開2002−342648号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで近年、劇場、特に映画館について、客数減や収益悪化による閉館など衰退が危惧され、その要因として、社会経済状況の変化、趣味嗜好や娯楽の多様化などのほか、上記のような二次的流通の早期化やネット配信の普及などの影響を指摘する向きもある。
【0007】
仮に、ネット配信が映画産業と対立し、映画館衰退の一因となる可能性を想定すると、それが配給会社による作品の発掘や提供の衰退、ひいては配給会社自体や作品制作部門、映像コンテンツ全体の衰退につながり、結果的に作品が減ることで、影響が回りまわってネット配信自体の衰退を招く矛盾が生じる。このようにネット配信と映画界が対立・矛盾する可能性を仮定すると、それは映画に代表されるコンテンツ市場全体が抱える問題ともいえ、その防止が潜在的に望まれる。
【0008】
上記の課題に対し、本発明の目的は、劇場とネット配信の相互補完的、互恵的活用を図る技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的をふまえ、本発明の一態様(1)であるコンテンツ配信装置は、劇場の座席について空席か否かを含む座席情報を保持して座席予約を処理する座席予約手段と、前記劇場での上演又は上映に係る映像コンテンツを通信ネットワーク経由で端末へ配信する配信手段と、前記座席予約手段から前記劇場での前記上演又は上映に係る空席数を取得し、その空席数に基づいてその劇場に係る前記映像コンテンツの配信数を決定する配信数決定手段と、決定された前記配信数に基づいて、前記配信手段による前記映像コンテンツについて実際の配信数を制限する配信数制限手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様(4)であるコンテンツ配信方法は、上記態様を方法のカテゴリで捉えたもので、劇場の座席について空席か否かを含む座席情報を保持して座席予約を処理する座席予約処理と、前記劇場での上演又は上映に係る映像コンテンツを通信ネットワーク経由で端末へ配信する配信処理と、前記座席予約手段から前記劇場での前記上演又は上映に係る空席数を取得し、その空席数に基づいてその劇場に係る前記映像コンテンツの配信数を決定する配信数決定処理と、決定された前記配信数に基づいて、前記配信手段による前記映像コンテンツについて実際の配信数を制限する配信数制限処理と、をコンピュータが実行することを特徴とする。
【0011】
このように、映画館など劇場の予約システムから得る空席数に基づいて決定する配信数を上限として配信数を制限しつつ、劇場に係る映画などの映像コンテンツをネット配信することにより、作品や日時などで空席が多い場合は配信数の増加によるプロモーション効果で劇場への集客が期待できる。他方、空席が少ない場合は配信数が絞られて視聴の希少性が維持されるので劇場からネット配信への需要流出は抑制される。そして、従来の二次的流通の時期を待たずに最新作についてもネット配信の機会が生まれる。これらにより、劇場とネット配信の相互補完的、互恵的活用を図ることができる。
【0012】
本発明の他の態様(2)は、上記いずれかの態様において、前記座席予約手段から前記劇場の空席数を取得し、その劇場に係る前記映像コンテンツについて前記配信の単価を、空席数が所定以上なら相対的な低額に、空席数が所定未満なら相対的な高額に、変更する単価変更手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
このように、ネット配信の料金を一律ではなく、空席数の多寡に応じて変更することにより、空席が多い場合はプロモーションを兼ねて安くネット配信で鑑賞してもらい、劇場の大画面での改めての鑑賞や、ブログや口コミなどでの話題化を期待することにより、劇場への一層の集客を図ることができる。
【0014】
本発明の他の態様(3)は、上記いずれかの態様において、前記座席予約手段により前記劇場の前記座席予約を行ったユーザが、その劇場に係る前記映像コンテンツの配信を前記配信手段により利用する場合、又は、前記配信手段により前記映像コンテンツの前記配信を利用したユーザが、その映像コンテンツに係る前記劇場の前記座席予約を前記座席予約手段により行う場合、の少なくとも一方について、劇場又は配信の一方又は双方の利用料金に所定の割引を適用する割引手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
このように、同じユーザが映像コンテンツ配信と劇場座席予約の双方を利用の場合に所定の割引を適用することにより、劇場で観た映画を自宅でもう一度鑑賞したり、ネット配信で観た映画を改めて劇場の大画面で鑑賞するなど、劇場とネット配信の相乗効果による一層の集客、需要増大を図ることが可能となる。
【0016】
なお、上記の各態様は、明記しない他のカテゴリ(方法、プログラム、システムなど)としても把握することができ、方法やプログラムのカテゴリについては、装置のカテゴリで示した「手段」を、「処理」や「ステップ」のように適宜読み替えるものとする。また、当然ながら、処理やステップの実行順序は本出願に直接明記するものに限定されず、適宜変更したりまとめて処理するなど変更可能である。さらに、方法やプログラムのカテゴリにおいて、個々の処理やステップを実行する「コンピュータ」は共通でもよいし処理ごとに異なってもよい。加えて、本発明は、後述するさらに具体的な各態様を含むものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、劇場とネット配信の相互補完的、互恵的活用を図る技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態について構成を示す機能ブロック図。
【図2】本発明の実施形態におけるデータ例を示す図。
【図3】本発明の実施形態における処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」と呼ぶ)について図に沿って例示する。なお、背景技術や課題などで既に述べた内容と共通の前提事項は適宜省略する。
【0020】
〔1.構成〕
本実施形態は、図1(構成図)に示すように、ユーザ端末T1からの劇場の座席予約を処理する予約サーバ1と、ユーザ端末T1へ映像コンテンツの配信(「ネット配信」や単に「配信」とも呼ぶ)するコンテンツ配信装置である配信サーバ2と、を有するコンテンツ配信システムに関するものである。
【0021】
各サーバ1及び2は、図1に示すように、コンピュータの構成として少なくとも、CPUなどの演算制御部6と、主メモリや補助記憶装置等の記憶装置7と、通信ネットワークN(例えば、インターネット、移動通信網など)との通信手段8(通信ゲートウェイ装置、移動通信網との通信回路、無線LANアダプタなど)と、を有する。
【0022】
また、ユーザ端末T1と、劇場の担当者が用いる劇場用端末T2は、それぞれ、据置型PC、スマートフォン、タブレットPCなどの情報端末で、図示はしないが、上記のようなコンピュータの構成に加え、ウェブ閲覧用のウェブブラウザのほか、液晶表示パネルやタッチパネル、押ボタンなどを用いた入出力部を有する。ユーザ端末T1は、図1では少数を模式的に示すが、実際はユーザ数に応じ多数存在し、劇場用端末T2も同様に劇場の数に応じて存在する。劇場用端末T2は、劇場の担当者が空席情報の更新や予約サーバ1による予約結果の参照などに用いる。
【0023】
そして、各サーバ1及び2では、それぞれ、記憶装置7に記憶(インストール)した所定のコンピュータ・プログラムが演算制御部6を制御することで、図1に示す各手段などの要素(10,20ほか)を実現する。
【0024】
それら要素のうち情報の記憶手段は、記憶装置7上のファイルなど任意のデータ形式で実現できるほか、ネットワークコンピューティング(クラウド)によるリモート記憶でもよい。また、記憶手段は、データの格納領域だけでなく、データの入出力や管理などの機能を含んでもよい。また、本出願に示す記憶手段の単位は説明上の便宜によるもので、適宜、構成を分けたり一体化できるほか、明示する記憶手段以外にも、各手段の処理データや処理結果などを記憶する記憶手段を適宜用いるものとする。
【0025】
そして、記憶手段のうち、映像コンテンツ記憶手段22は、劇場での上演又は上映に係る演目(映画、演劇、ショーなどの上演作品)をデジタル化した映像コンテンツを記憶する手段で、映像コンテンツは予め記憶しておいてもよいし、劇場の舞台をカメラで撮影しリアルタイム又は準リアルタイムにデジタル化したものを配信に備えて一時的に記憶しておくのでもよい。
【0026】
また、座席情報記憶手段9は、座席予約の対象となる劇場について、席の種類(A席、S席、二人用など)、席の数、配置図上の位置関係などを記憶している手段である。また、予約履歴記憶手段15は、図2(1)に例示するように、予約サーバ1で受け付けた座席予約の内容を、コンテンツID、上映回の時刻、座席番号やユーザIDなどを含む予約履歴として記憶する手段である。座席番号ごとの空席又は予約の別を表す座席情報を図2(1)のように上映回ごとに蓄積することで、座席情報と予約履歴とを兼用すればシステム構成が単純となり記憶容量も節約できる。さらに、配信履歴記憶手段25は、配信サーバ2による映像コンテンツの配信について、コンテンツIDやユーザIDなどを含む配信履歴として記憶する手段である(例えば図2(2))。
【0027】
なお、図中(例えば図1)の矢印は、データや制御などの流れについて主要な方向を補助的に示すもので、他の流れを否定するものでも、方向の限定を意味するものでもない。例えばデータをある方向に取得する場合、事前のデータリクエストや事後のアクノリッジ(ACK)が逆方向に送信される。また、記憶手段以外の各手段は、以下に説明するような情報処理の機能・作用を実現・実行する処理手段であるが、これらは説明のために整理した機能単位であり、実際のハードウェア要素やソフトウェアモジュールとの一致は問わない。
【0028】
〔2.作用〕
上記のように構成された第1実施形態の作用を、図3のフローチャートに示す。
〔2−1.概要〕
まず、作用の概要のみを抽出して説明すると、予約サーバ1の座席予約手段10が、劇場の座席について空席か否かを含む座席情報を保持して座席予約を処理する一方、配信手段20は、劇場での上演又は上映に係る映像コンテンツをユーザのリクエスト(閲覧要求)に応じてストリーミング配信などの動画配信技術により通信ネットワークN経由でユーザ端末T1へ配信する。
【0029】
そして、配信数決定手段30が、座席予約手段10から劇場での上演又は上映に係る空席数を取得して、その空席数に基づいてその劇場に係る映像コンテンツの配信数を決定し(ステップS22)、決定された前記配信数に基づいて、配信数制限手段40が、配信手段20による映像コンテンツについて実際の配信数を制限する。
【0030】
ここで、「劇場」とは、演劇、舞踊、オペラ、演奏、映画等を上演し、多数の観客が集まってこれを観覧するための施設であり、複数のスクリーンを持つ映画館であるシネマコンプレックス(シネコン)の場合、上演内容の異なる個々のスクリーン(上映室)が劇場である。なお、スポーツや競技が行われ、多数の観客が集まってこれを観覧するための施設も劇場として扱うようにしてもよい。同じ施設内の複数のスクリーン又は複数の映画館で同じ内容を同時並行で上映する場合に、それら複数のスクリーンや映画館の空席数を合算して扱えば、より多くの配信数をまとめて効率よく処理できる。
【0031】
劇場の空席数については、新たな座席予約を受け付けたときや(ステップS18)上映回の切り替わりなど所定のタイミングで(ステップS11)、劇場の座席情報(例えば図2(1))を更新し(ステップS12)、座席情報のうち空席であるものを抽出してカウントすれば空席数が得られる(ステップS22)。空席数を基に配信数を決定する計算の基準については自由であり、空席数と同数の配信数とすれば配信数が上演売り上げに与える影響が抑制でき、一方、空席数に適宜な整数や実数などの係数を乗じて配信数を得るようにすれば、より大規模な配信数を扱って利益拡大を図ることができる。
【0032】
配信数制限手段40による配信数の制限としては、コンテンツの閲覧要求を受信した際(ステップS23)、実際の配信数について決定された配信数が終了していれば(ステップS24:「YES」)、その旨を表示して配信(ステップS30)を行わないなどの処理が考えられる。なお、劇場の座席予約について満席のときも(ステップS14:「YES」)、その旨を表示して(ステップS15)予約の処理(ステップS18)は行わない。
【0033】
〔2−2.空席数に応じた単価の変更〕
また、上記のようなネット配信について本実施形態では、単価変更手段50は、座席予約手段10から劇場の空席数を取得し、その劇場に係る映像コンテンツについて配信の単価を、空席数が所定以上なら相対的な低額に、空席が所定未満なら相対的な高額に、変更する。
【0034】
ここでは、相対的な高額である所定の通常価格に予め設定されている配信の単価を、空席数が所定以上の場合だけ(ステップS26:「YES」)相対的な低額に変更することにより(ステップS27)、空席が所定未満の場合に(ステップS26:「NO」)相対的な高額としている。例えば、空席数が50未満なら映像コンテンツ1本が通常配信料金1000円のところ、空席数が50以上なら割引価格700円とするなどである。相対的な低額、高額は、空席数の範囲に応じて3段階以上に分けてもよい。
【0035】
〔2−3.予約と配信の組合せ割引〕
また、本実施形態では、上記のような劇場の座席予約とネット配信の両方を利用するユーザには割引を適用する。すなわち、割引手段60は、座席予約手段10により劇場の座席予約を行ったユーザが、その劇場に係る映像コンテンツの配信を配信手段20により利用する場合、又は、配信手段20により映像コンテンツの配信を利用したユーザが、その映像コンテンツに係る劇場の座席予約を座席予約手段10により行う場合、の少なくとも一方について、劇場又は配信の一方又は双方の利用料金に所定の割引を適用する。
【0036】
具体例としては、座席予約手段10が劇場の座席予約のアクセスをユーザ端末T1から受け付けた際に(ステップS13)、そのユーザのユーザIDと、予約に係る作品を識別するコンテンツIDとを割引手段60に渡し、割引手段60は、渡されたユーザIDとコンテンツIDを、配信履歴記憶手段25に記憶されている配信履歴(例えば図2(2))と照会する。これにより、座席予約をしようとしているユーザが、同じコンテンツIDの映像コンテンツを直近の所定期間内(例えば過去7日以内)にネット配信で利用したユーザか判断し、そうであれば(ステップS16:「YES」)、劇場料金通常1800円を1200円に割り引くなど所定の割引を適用する(ステップS17)。そして、座席予約を処理し、その履歴を記録する(ステップS18)。
【0037】
また、配信手段20が、映像コンテンツの閲覧要求をユーザ端末T1から受け付けた際に(ステップS23)、そのユーザをユーザIDのユーザIDと、閲覧要求に係る映像コンテンツを識別するコンテンツIDなどを割引手段60に渡し、割引手段60は、渡されたユーザIDとコンテンツIDを、予約履歴記憶手段15に記憶されている予約履歴(例えば図2(1))と照会することで、閲覧要求に係るユーザが、同じコンテンツIDの作品の上演又は上映に係る劇場を直近の所定期間内に座席予約したユーザか判断し、そうであれば(ステップS28:「YES」)、配信料金通常1200円を900円に割り引くなど所定の割引を適用する(ステップS29)。そして、ユーザ端末T1に対して映像コンテンツを配信し、その履歴を記録する(ステップS30)。
【0038】
例えば、図2(1)の予約履歴と、図2(2)の配信履歴の例では、同じコンテンツID「AB1285」である映画「○○ストーリー」について、ユーザID「01587」が共通しており、このユーザについては、劇場の座席予約が先でも、映像コンテンツの閲覧要求が先でも、上記のような割引が適用される。クレジットカードや電子マネーなどの電子決済を用いて、割引手段60が事後的に課金額を調整するようにすれば、劇場と配信の双方について利用料金を割り引く処理が特に容易になる。また、予め定められたカテゴリの映画(たとえば、○○ストーリー1、○○ストーリー2といった続きものの映画や映画ジャンル等)についてそのコンテンツIDをグループ化したグループ化IDを記憶しておき、予約履歴記憶手段15に記憶されている予約履歴或いはグループ配信履歴記憶手段25に記憶されている配信履歴を参照して、閲覧要求のあったコンテンツIDが当該グループ化IDに含まれ、かつ、当該グループ化IDに含まれる他のコンテンツIDが予約履歴或いは配信履歴に含まれるとき、利用料金を割り引く処理を行うようにしてもよい。
【0039】
〔3.実施形態の効果〕
以上のように本実施形態では、映画館など劇場の予約システムから得る空席数に基づいて決定(例えばステップS22)する配信数を上限として配信数を制限しつつ(例えばステップS24,S25)、劇場に係る映画などの映像コンテンツをネット配信することにより(例えばステップS30)、作品や日時などで空席が多い場合は配信数の増加によるプロモーション効果で劇場への集客が期待できる。他方、空席が少ない場合は配信数が絞られて視聴の希少性が維持されるので劇場からネット配信への需要流出は抑制される。そして、従来の二次的流通の時期を待たずに最新作についてもネット配信の機会が生まれる。これらにより、劇場とネット配信の相互補完的、互恵的活用を図ることができる。
【0040】
また、本実施形態では、ネット配信の料金を一律ではなく、空席数の多寡に応じて(例えばステップS26)変更することにより(例えばステップS27)、空席が多い場合はプロモーションを兼ねて安くネット配信で鑑賞してもらい、劇場の大画面での改めての鑑賞や、ブログや口コミなどでの話題化を期待することにより、劇場への一層の集客を図ることができる。
【0041】
特に、本実施形態では、同じユーザが映像コンテンツ配信と劇場座席予約の双方を利用の場合に(例えばステップS16,S28)所定の割引を適用することにより(例えばステップS17,S29)、劇場で観た映画を自宅でもう一度鑑賞したり、ネット配信で観た映画を改めて劇場の大画面で鑑賞するなど、劇場とネット配信の相乗効果による一層の集客、需要増大を図ることが可能となる。
【0042】
〔4.関係主体ごとのメリット〕
上記のような本実施形態をコンテンツビジネスの分野に導入することにより、まず、映画ファンなどのエンドユーザは、地理的時間的その他の都合で劇場に足を運ぶことが難しい状況でも、最新の映画コンテンツを個人端末で、いつでもどこでも容易に視聴することができ、他人を気にせずコンテンツ内容に集中できる。
【0043】
また、映画館など劇場の運営者にとっては、空席が出てもその分、ネット配信からの分配金などで収益を見込めるビジネスモデルが採用可能となり、また、映画館に足を運ばない又は運べないユーザ層を新たに取り込んで映画館の衰退を食い止めることができる。とりわけ、ミニシアター系にとっては好ましい。
【0044】
さらに、コンテンツ配信事業者は、従来の二次的流通の時期を待たずに上映中作品など最新の映画コンテンツをVOD(ビデオ・オン・デマンド)配信することで、熱心な映画ファンなど新たな顧客層を獲得可能となる。また、コンテンツ配信事業者が、映画館の座席販売と管理を行うシステムとして図1のようなコンテンツ配信システムを他事業者からの利用に供すれば(プラットフォーム化)、こうしたシステムを持たない映画館から利用料が得られ、新たな収益となる。
【0045】
加えて、配給会社にとっては、配給先である映画館の減少が抑えられ、事業の安定性の確保が期待できる。とりわけ、広く集客しやすいビッグタイトルに縛られず、自社独自の選定基準で作品を買い付けることができる。
【0046】
〔5.他の実施形態〕
なお、上記実施形態は例示に過ぎず、本発明は、以下に例示するものやそれ以外の他の実施態様も含むものである。例えば、本出願における構成図、データの図、フローチャートなどは例示に過ぎず、各要素の有無、その配置や処理実行などの順序、具体的内容などは適宜変更可能である。一例として、図1に示した予約サーバ1と配信サーバ2を一体化してもよいし、逆に、図1に示した個々のサーバにおける個々の手段をそれぞれ独立した装置で実現する構成も一般的である。
【0047】
また、外部のプラットフォーム等をAPI(アプリケーション・プログラム・インタフェース)やネットワークコンピューティング(いわゆるクラウドなど)で呼び出すことで各手段を実現するなど、構成は柔軟に変更できる。さらに、本発明に関する手段などの各要素は、コンピュータの演算制御部に限らず物理的な電子回路など他の情報処理機構で実現してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 予約サーバ
2 配信サーバ
6 演算制御部
7 記憶装置
8 通信手段
9 座席情報記憶手段
10 座席予約手段
15 予約履歴記憶手段
20 配信手段
22 映像コンテンツ記憶手段
25 配信履歴記憶手段
30 配信数決定手段
40 配信数制限手段
50 単価変更手段
60 割引手段
N 通信ネットワーク
T1 ユーザ端末
T2 劇場用端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
劇場の座席について空席か否かを含む座席情報を保持して座席予約を処理する座席予約手段と、
前記劇場での上演又は上映に係る映像コンテンツを通信ネットワーク経由で端末へ配信する配信手段と、
前記座席予約手段から前記劇場での前記上演又は上映に係る空席数を取得し、その空席数に基づいてその劇場に係る前記映像コンテンツの配信数を決定する配信数決定手段と、
決定された前記配信数に基づいて、前記配信手段による前記映像コンテンツについて実際の配信数を制限する配信数制限手段と、
を備えたことを特徴とするコンテンツ配信装置。
【請求項2】
前記座席予約手段から前記劇場の空席数を取得し、その劇場に係る前記映像コンテンツについて前記配信の単価を、空席数が所定以上なら相対的な低額に、空席数が所定未満なら相対的な高額に、変更する単価変更手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のコンテンツ配信装置。
【請求項3】
前記座席予約手段により前記劇場の前記座席予約を行ったユーザが、その劇場に係る前記映像コンテンツの配信を前記配信手段により利用する場合、又は、前記配信手段により前記映像コンテンツの前記配信を利用したユーザが、その映像コンテンツに係る前記劇場の前記座席予約を前記座席予約手段により行う場合、の少なくとも一方について、劇場又は配信の一方又は双方の利用料金に所定の割引を適用する割引手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のコンテンツ配信装置。
【請求項4】
劇場の座席について空席か否かを含む座席情報を保持して座席予約を処理する座席予約処理と、
前記劇場での上演又は上映に係る映像コンテンツを通信ネットワーク経由で端末へ配信する配信処理と、
前記座席予約手段から前記劇場での前記上演又は上映に係る空席数を取得し、その空席数に基づいてその劇場に係る前記映像コンテンツの配信数を決定する配信数決定処理と、
決定された前記配信数に基づいて、前記配信手段による前記映像コンテンツについて実際の配信数を制限する配信数制限処理と、
をコンピュータが実行することを特徴とするコンテンツ配信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−45192(P2013−45192A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181077(P2011−181077)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(500257300)ヤフー株式会社 (1,128)