説明

コンデンサ−による水中の重水含有率の測定

【課題】水中の重水の含有率を測定する。
【解決手段】重水含有の水に染ませた紙を、小穴のある平面コンデンサ−の負極板と絶縁膜の間に置き、コンデンサ−に端子電圧をかけ、分極によるH,Dイオンを引き出し磁場型質量分析器に導く。このとき、コンデンサ−と質量分析器は真空容器の中に置き、回転ポンプで排気し、5Pa〜10Paの圧力にする。

【発明の詳細な説明】
水溶液の中の重水をトレ−サ−として利用する方式が最近注目されている。水中の重水の含有率を測定するとき、比重計では水の比重(1.00)と重水の比重(1.11)が近いので、10数%以下の含有率では比重計の1%以下の精度誤差の範囲に入る。即ち、重水の有無が判定し難くなる。また、最近開発されたガスクロマトグラフィ−は重水素を強調した測定方法ではなく、一般のガスを共通して測定する。従って重水をトレ−サ−として水溶液中で使用する場合には、一般性の分だけ効果が低下し、複雑、高価になり、誤差の範囲が増大する。重水がトレ−サ−の場合には、重水を選択的に強調できる方法が望ましい。重水は高価なので、この点からも必要である。
この発明では平板コンデンサ−の絶縁膜と負電極の間に重水含有の水を染ませた紙を挟み、負電極板に小穴を開けてコンデンサ−の正、負極間に電圧を加えた。このコンデンサ−を真空容器に入れ、回転ポンプで排気し、5Pa〜10Paにすると紙の中でその水、重水が分極して、コンデンサ−の端子電圧で加速された水素正イオンH、重水素正イオンDがその小穴から発生する。これ等を簡単な90′曲げ磁場型質量分析器で分析するとH,Dが判明しそれ等の強弱に応じた正イオン電流が分析器のビ−ムコレクタ−の電流計に現れる。ここで驚くべきことに先の圧力範囲5Pa〜10PaではDの分極効果がHより著しく大きいことが発見された。この現象は、純水HOに市販の重水DOを加えて、紙に染ませて実験すれば正確に判明する。その結果HOに1%のDOを加えて上の方法を試したとき、5Pa〜10PaではHとDの質量分析の磁場特性が同程度になった。即ち、HとDのビ−ムコレクタ−への正電流のピ−ク値〜10nAが同じになった。HO50%とDO50%を同程度の基準とすれば、この方法ではDOのD検出能力がHOのHより50倍大きいことを示している。DOの0.02%(自然水の重水濃度)でも明確に検出できたことは重水トレ−サ−の検出能力としては画期的である。重水は放射性物質でなく、毒性も小さいのでトレ−サ−としてこの発明は今後期待される。なお、重水の反ミュ−ニュ−トリノによる水からの人工的製法は、既に特願2004−382704に発表してあり、20%近くの濃度があり(上の方法で正確に決定)価格も安価なので、この発明の検出装置に活用できる。
【図面の簡単な説明】
[図1]水と重水を染ませた紙を挟んだコンデンサ−と質量分析器
[図2]水に対する重水の含有率と質量分析図
【符号の説明】
[図1]
[C]:平面コンデンサ−、[MA]:磁場型質量分析器、M:金属板、Ins:コンデンサ−の絶縁膜(誘電膜)、P:水と重水を染ませた紙、V:コンデンサ−の端子電圧、HO:純水、DO:重水、BC:ビ−ムコレクタ−、B:垂直磁場、I:BCへの正電流、[VC]:真空容器、[Pump]:排気ポンプ(回転ポンプ)、H:水素正イオン、 D:重水素正イオン
[図2]
O/HO:重水の水に対する比率(体積比)
a:DO/HO=10%
b:DO/HO= 1%
c:DO/HO=0.1%
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ−の電極と誘電膜の間に重水を含む水溶液に浸した物を置き、電極に穴を開け、コンデンサ−の電極間の電界で重水を含む水溶液を分極させ、イオンを引き出し、質量分析器で分析する装置。

【公開番号】特開2006−258780(P2006−258780A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116261(P2005−116261)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(391010194)
【Fターム(参考)】