説明

コンデンサ及びその製造方法

【課題】 陰極の固体電解質層の導電性に優れ、ESRが低いコンデンサを提供する。
【解決手段】 本発明のコンデンサ10は、弁金属の多孔質体からなる陽極11と、陽極11の表面が酸化されて形成された誘電体層12と、誘電体層12上に形成された陰極13とを有するコンデンサ10において、陰極13が、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物とを含む固体電解質層13aを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサなどコンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のデジタル化に伴い、電子機器に用いられるコンデンサは高周波領域におけるインピーダンスを低下させることが要求されている。従来から、この要求に対応すべく、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁金属の酸化皮膜を誘電体とし、この表面にπ共役系導電性高分子を形成して陰極とした、所謂、機能性コンデンサが使用されている。
【0003】
この機能性コンデンサの構造は、特許文献1に示されるように、弁金属多孔質体からなる陽極と、陽極の表面を酸化して形成した誘電体層と、誘電体層に固体電解質層、カーボン層、銀層を積層した陰極とを有するものが一般的である。コンデンサの固体電解質層は、ピロール、チオフェンなどのπ共役系導電性高分子から構成された層であり、多孔質体の内部にまで侵入し、より大面積の誘電体層と接触して高容量を引き出すと共に、誘電体層の欠損部を修復して漏れ電流の発生を防止する役割を果たしている。
π共役系導電性高分子の形成法としては、電解重合法(特許文献2参照)と化学酸化重合法(特許文献3参照)とが広く知られている。
しかし、電解重合法では、弁金属多孔質体表面にマンガン酸化物からなる導電層をあらかじめ形成しておく必要があり、非常に煩雑である上に、マンガン酸化物は導電性が低く、高導電性のπ共役系導電性高分子を使用する効果が薄れるという問題があった。
また、化学酸化重合法では、重合時間が長く、また、厚みを確保するために繰り返し重合しなければならず、コンデンサの生産効率が低かった上に、導電性も低かった。
【0004】
そこで、電解重合法や化学酸化重合法で誘電体層上にπ共役系導電性高分子を形成しない方法が提案されている(特許文献4参照)。特許文献4には、スルホ基、カルボキシ基等を持つ高分子酸を共存させながらアニリンを重合して水溶性のポリアニリンを調製し、そのポリアニリン水溶液を誘電体層上に塗布、乾燥する方法が記載されている。しかし、この製造方法は簡便であるものの、多孔質体内部への浸透性が劣ると共に、π共役系導電性高分子以外に高分子酸を含むために導電性が低く、しかも、高分子酸の影響で導電性に湿度依存性が見られることもあった。
【0005】
ところで、コンデンサとしては等価直列抵抗(ESR)が小さいものが求められており、ESRを小さくするためには、固体電解質層の導電性を高くすることが必要である。固体電解質層の導電性を高める方法としては、例えば、化学酸化重合法の条件を高度にコントロールすることが提案されている(特許文献5参照)。しかし、その製造方法では、煩雑な化学酸化重合法をより複雑にすることが多く、工程の簡略化、低コスト化を実現できなかった。
【特許文献1】特開2003−37024号公報
【特許文献2】特開昭63−158829号公報
【特許文献3】特開昭63−173313号公報
【特許文献4】特開平7−105718号公報
【特許文献5】特開平11−74157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、陰極の固体電解質層の導電性に優れ、ESRが低いコンデンサを提供することを目的とする。さらには、そのようなコンデンサを簡便に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコンデンサは、弁金属の多孔質体からなる陽極と、該陽極の表面が酸化されて形成された誘電体層と、該誘電体層上に形成された陰極とを有するコンデンサにおいて、
陰極が、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物とを含む固体電解質層を具備することを特徴とする。
本発明のコンデンサにおいては、前記ヒドロキシ基含有芳香族性化合物が、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0008】
【化1】

【0009】
(式(1)中、Rは炭素数1〜15の直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示す。)
本発明のコンデンサにおいては、前記陰極が、さらに、電解液を含むことが好ましい。
本発明のコンデンサの製造方法は、弁金属の多孔質体からなる陽極と該陽極の表面が酸化されて形成された誘電体層とを有するコンデンサ中間体における誘電体層側表面に、π共役系導電性高分子とポリアニオンとヒドロキシ基含有芳香族性化合物と溶媒とを含む導電性高分子溶液を塗布し、乾燥する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコンデンサは、陰極の導電性が高いので、等価直列抵抗が小さい。
本発明のコンデンサにおいて、陰極に電解液が含まれていれば、静電容量の引き出し率が高くなる。
本発明のコンデンサの製造方法によれば、陰極の導電性が高く、等価直列抵抗が小さいコンデンサを簡便に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のコンデンサ及びその製造方法の一実施形態例について説明する。
図1は、本実施形態例のコンデンサの構成を示す図である。このコンデンサ10は、弁金属の多孔質体からなる陽極11と、陽極11の表面が酸化されて形成された誘電体層12と、誘電体層12上に形成された陰極13とを有して概略構成されている。
【0012】
<陽極>
陽極11をなす弁金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモンなどが挙げられる。これらのうち、アルミニウム、タンタル、ニオブが好適である。これら弁金属は、電解酸化処理により、緻密で耐久性を有する誘電体酸化被膜(誘電体層)を形成できるため、コンデンサ容量を安定的に高くすることができる。
陽極11の具体例としては、アルミニウム箔をエッチングして表面積を増加させた後、その表面を酸化処理したものや、タンタル粒子やニオブ粒子の焼結体表面を酸化処理してペレットにしたものが挙げられる。このように処理されたものは表面に凹凸が形成されている。
【0013】
<誘電体層>
誘電体層12は、例えば、アジピン酸アンモニウム水溶液などの電解液中にて、金属体11の表面を陽極酸化することで形成されたものである。よって、図1に示すように、陽極11と同様に誘電体層12の表面にも凹凸が形成されている。
【0014】
<陰極>
陰極13は、固体電解質層13aと、固体電解質層13a上に形成されたカーボン、銀、アルミニウム等で構成されている導電層13bとを具備し、固体電解質層13aが、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物とを含むものである。
導電層13bがカーボン、銀等で構成される場合には、カーボン、銀等の導電体を含む導電性ペーストから形成されたものである。また、導電層13bがアルミニウムで構成される場合には、アルミニウム箔からなる。
また、固体電解質層13aと導電層13bとの間には、必要に応じて、セパレータを設けることができる。
【0015】
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用できる。例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。重合の容易さ、空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。
π共役系導電性高分子は無置換のままでも、充分な導電性を得ることができるが、導電性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0016】
このようなπ共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0017】
中でも、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)から選ばれる1種又は2種からなる(共)重合体が抵抗値、反応性の点から好適に用いられる。さらには、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、導電性がより高い上に、耐熱性が向上する点から、より好ましい。
【0018】
上記π共役系導電性高分子は、溶媒中、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリアニオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
[前駆体モノマー]
前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
【0019】
[溶媒]
π共役系導電性高分子の製造で使用する溶媒としては特に制限されず、前記前駆体モノマーを溶解又は分散しうる溶媒であり、酸化剤及び酸化触媒の酸化力を維持させることができるものであればよい。例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の有機溶媒との混合物としてもよい。
【0020】
[酸化剤及び酸化触媒]
酸化剤、酸化触媒としては、前記前駆体モノマーを酸化させてπ共役系導電性高分子を得ることができるものであればよく、例えば、ぺルオキソ二硫酸アンモニウム、ぺルオキソ二硫酸ナトリウム、ぺルオキソ二硫酸カリウム等のぺルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウムなどの金属ハロゲン化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が挙げられる。
【0021】
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。
このポリアニオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させる可溶化高分子である。また、ポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
【0022】
ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。ポリアルキレンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(3,3,3−トリフルオロプロピレン)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0023】
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和結合(ビニル基)が1個以上含まれる構成単位からなるポリマーである。ポリアルケニレンの具体例としては、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、1−ペンタデシル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−ドデシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、1−ペンタデシル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−ドデシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、3−エチル−2−ブテニレン、3−ブチル−2−ブテニレン、3−ヘキシル−2−ブテニレン、3−オクチル−2−ブテニレン、3−デシル−2−ブテニレン、3−ドデシル−2−ブテニレン、3−フェニル−2−ブテニレン、3−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる一種以上の構成単位を含む重合体が挙げられる。
これらの中でも、不飽和結合とπ共役系導電性高分子との相互作用があること、置換若しくは未置換のブタジエンを出発物質として合成しやすいことから、置換若しくは未置換のブテニレンが好ましい。
【0024】
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2,3,3−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、2,2−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の無水物とオキシジアニン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドが挙げられる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0025】
ポリアニオンが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基等が挙げられる。溶媒への溶解性、耐熱性及び樹脂への相溶性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシ基、フェノール基、エステル基が好ましい。
アルキル基は、極性溶媒又は非極性溶媒への溶解性及び分散性、樹脂への相溶性及び分散性等を高くすることができ、ヒドロキシ基は、他の水素原子等との水素結合を形成しやすくでき、有機溶媒への溶解性、樹脂への相溶性、分散性、接着性を高くすることができる。また、シアノ基及びヒドロキシフェニル基は、極性樹脂への相溶性、溶解性を高くすることができ、しかも、耐熱性も高くすることができる。
上記置換基の中では、アルキル基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基が好ましい。
【0026】
前記アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等の鎖状アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。有機溶剤への溶解性、樹脂への分散性、立体障害等を考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
前記ヒドロキシ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したヒドロキシ基又は他の官能基を介在して結合したヒドロキシ基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。ヒドロキシ基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。これらの中では樹脂への相溶及び有機溶剤への溶解性から、主鎖に結合した炭素数1〜6のアルキル基の末端に結合したヒドロキシ基がより好ましい。
前記アミノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したアミノ基又は他の官能基を介在して結合したアミノ基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。アミノ基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。
前記フェノール基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したフェノール基又は他の官能基を介在して結合したフェノール基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。フェノール基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。
前記エステル基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したアルキル系エステル基、芳香族系エステル基、他の官能基を介在してなるアルキル系エステル基又は芳香族系エステル基が挙げられる。
シアノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数1〜7のアルキル基の末端に結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数2〜7のアルケニル基の末端に結合したシアノ基等を挙げることができる。
【0027】
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
【0028】
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらのうち、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリアニオンは、得られる帯電防止塗料の導電性をより高くでき、また、π共役系導電性高分子の熱分解を緩和することができる。
【0029】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
【0030】
ポリアニオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
得られたポリマーがポリアニオン塩である場合には、ポリアニオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0031】
アニオン基含有重合性モノマーは、モノマーの一部が一置換硫酸エステル基、カルボキシ基、スルホ基等で置換されたものであり、例えば、置換若しくは未置換のエチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のスチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のメタクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリルアミドスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のシクロビニレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のブタジエンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のビニル芳香族スルホン酸化合物が挙げられる。
具体的には、ビニルスルホン酸及びその塩類、アリルスルホン酸及びその塩類、メタリルスルホン酸及びその塩類、スチレンスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、アリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、α−メチルスチレンスルホン酸及びその塩類、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸及びその塩類、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩類、シクロブテン−3−スルホン酸及びその塩類、イソプレンスルホン酸及びその塩類、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−2−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−4−スルホン酸及びその塩類、アクリル酸エチルスルホン酸(CHCH-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、アクリル酸プロピルスルホン酸(CHCH-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、アクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、アクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、アリル酸エチルスルホン酸(CHCHCH-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、アリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCHCH-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸エチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸プロピルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸フェニレンスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C64-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸ナフタレンスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C108-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸エチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸プロピルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸フェニレンスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C64-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸ナフタレンスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C108-SO3H)及びその塩類、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。また、これらを2種以上含む共重合体であってもよい。
【0032】
アニオン基を有さない重合性モノマーとしては、エチレン、プロぺン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−メトキシスチレン、α−メチルスチレン、2−ビニルナフタレン、6−メチル−2−ビニルナフタレン、1−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルアセテート、アクリルアルデヒド、アクリルニトリル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾ−ル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニルブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸アリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸エチルカルビトール、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリロイルモルホリン、ビニルアミン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジブチルビニルアミン、N,N−ジ−t−ブチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、N−ビニルカルバゾール、ビニルアルコール、塩化ビニル、フッ化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、2−メチルシクロヘキセン、ビニルフェノール、1,3−ブタジエン、1−メチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,4−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン、2−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
これらアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合することで溶媒溶解性をコントロールすることができる。
【0033】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
【0034】
固体電解質層13a中のポリアニオンの含有量は、π共役系導電性高分子1モルに対して0.1〜10モルの範囲であることが好ましく、1〜7モルの範囲であることがより好ましい。ポリアニオンの含有量が0.1モルより少なくなると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがある。その上、溶媒への分散性及び溶解性が低くなり、均一な分散液を得ることが困難になる。また、ポリアニオンの含有量が10モルより多くなると、固体電解質層13a中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0035】
(ヒドロキシ基含有芳香族性化合物)
ヒドロキシ基含有芳香族性化合物は、芳香族環に、ヒドロキシ基が2個以上結合しているものである。このヒドロキシ基含有芳香族性化合物は、ヒドロキシ基と芳香族環との相互作用が強く、該化合物中の水素を放出しやすいという性質を有する。
【0036】
ヒドロキシ基含有芳香族性化合物としては、例えば、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸及びその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸及びその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸及びその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸及びその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸及びその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸及びその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン等が挙げられる。
ヒドロキシ基含有芳香族性化合物の中でも、導電性の点からは、π共役系導電性高分子にドーピングしうる、アニオン基であるスルホ基及び/又はカルボキシ基を有する化合物がより好ましい。
【0037】
また、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物の中でも、導電性及び安定性がより優れることから、上記式(1)で表される化合物が好ましい。
式(1)中のRの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−へキシル基、イソへキシル基、t−へキシル基、sec−へキシル基などのアルキル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基などのアルケニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基などのシクロアルキル基、シクロヘキセニル基などのシクロアルケニル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基などが挙げられる。
【0038】
ヒドロキシ基置換芳香族性化合物の含有量は、ポリアニオン1モルに対して0.05〜10モルの範囲であることが好ましく、0.3〜5モルの範囲であることがより好ましい。ポリアニオンの含有量が0.05モルより少なくなると、導電性及び耐熱性が不足することがある。また、ポリアニオンの含有量が10モルより多くなると、固体電解質層13a中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくく、固体電解質層13aの物性が変化することがある。
【0039】
(ドーパント)
固体電解質層13aにおいては、電気伝導度(導電性)を向上させるために、ポリアニオン以外に他のドーパントを添加してもよい。他のドーパントとしては、π共役系導電性高分子を酸化還元させることができればドナー性のものであってもよく、アクセプタ性のものであってもよい。
【0040】
[ドナー性ドーパント]
ドナー性ドーパントとしては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等の4級アミン化合物等が挙げられる。
【0041】
[アクセプタ性ドーパント]
アクセプタ性ドーパントとしては、例えば、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機シアノ化合物、有機金属化合物、フラーレン、水素化フラーレン、水酸化フラーレン、カルボン酸化フラーレン、スルホン酸化フラーレン等を使用できる。
さらに、ハロゲン化合物としては、例えば、塩素(Cl)、臭素(Br2)、ヨウ素(I)、塩化ヨウ素(ICl)、臭化ヨウ素(IBr)、フッ化ヨウ素(IF)等が挙げられる。
ルイス酸としては、例えば、PF、AsF、SbF、BF、BCl、BBr、SO等が挙げられる。
有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が使用できる。例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等が挙げられる。
【0042】
プロトン酸としては、無機酸、有機酸が挙げられる。さらに、無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等が挙げられる。また、有機酸としては、有機カルボン酸、フェノール類、有機スルホン酸等が挙げられる。
【0043】
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボキシ基を一つ又は二つ以上を含むものを使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。
【0044】
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホ基を一つ又は二つ以上含むもの、又は、スルホ基を含む高分子を使用できる。
スルホ基を一つ含むものとして、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、1−テトラデカンスルホン酸、1−ペンタデカンスルホン酸、2−ブロモエタンスルホン酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロエタンスルホン酸、コリスチンメタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキチルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−5−メトキシ−2−メチルベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アセトアミド−3−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、8−クロロナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物、アントラキノンスルホン酸、ピレンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
【0045】
スルホ基を二つ以上含むものとしては、例えば、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、o−ベンゼンジスルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、p−ベンゼンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、キシレンジスルホン酸、クロロベンゼンジスルホン酸、フルオロベンゼンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、ペンタデシルナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、1−アセトアミド−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、8−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸、4−アミノ−5−ナフトール−2,7−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオ−シアノトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−マレイミジルスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ジナフチルメタンジスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
【0046】
以上説明したコンデンサ10は、陰極13が、π共役系導電性高分子とポリアニオンとヒドロキシ基含有芳香族性化合物とを含む固体電解質層13aを具備するものである。固体電解質層13aに含まれるヒドロキシ基含有芳香族性化合物は、水素を放出するので、π共役系導電性高分子の酸化劣化の際に生じるラジカルを失活させることができる。これにより、ラジカルの連鎖反応を遮断することができ、劣化の進行を抑制できるため、耐熱性及び安定性が高くなると考えられる。
また、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物は、ポリアニオン中のアニオン基と相互作用が起きやすく、この相互作用によって、ポリアニオン同士を接近させることができると考えられる。そのため、ドーピングによってポリアニオン上に吸着されているπ共役系導電性高分子同士も接近させることができる。その結果、π共役系導電性高分子同士間の電気伝導現象であるホッピングに必要なエネルギーが小さくなり、全体の電気抵抗が小さくなる(導電性が高くなる)と考えられる。
【0047】
(コンデンサの製造方法)
コンデンサの製造方法は、弁金属の多孔質体からなる陽極11と陽極11の表面が酸化されて形成された酸化被膜の誘電体層12とを有するコンデンサ中間体の誘電体層12側表面に、導電性高分子溶液を塗布、固体電解質層13aを形成する方法である。
【0048】
この製造方法における導電性高分子溶液は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとヒドロキシ基含有芳香族性化合物と溶媒とを含むものである。
導電性高分子溶液を調製するには、まず、ポリアニオンを、これを溶解可能な溶媒に溶解し、これにより得られた溶液に、π共役系導電性高分子を形成するアニリンやピロール、チオフェンなどの前駆体モノマーを添加する。次いで、酸化剤を添加して前駆体モノマーを重合させ、その後、余剰の酸化剤や前駆体モノマーを分離、精製する。そして、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物を添加して導電性高分子溶液を得る。
【0049】
導電性高分子溶液に含まれる溶媒としては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)などのアルコール系溶媒、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド系溶媒、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル系溶媒、トルエン、キシレン、水などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、混合して使用してもよい。中でも、近年の環境保護の観点から、環境負荷の小さい水やアルコール系溶媒が好ましい。
【0050】
導電性高分子溶液の塗布方法としては、例えば、コーティング、浸漬、スプレーなどの公知の手法が挙げられる。乾燥方法としては、熱風乾燥など公知の手法が挙げられる。
【0051】
固体電解質層13aを形成した後には、カーボンペースト、銀ペーストによって導電層13bを形成したり、セパレータを介して陰極電極を対向したりする公知の手法により導電層13bを形成することができる。
【0052】
固体電解質層13aにおいては、π共役系導電性高分子が粒子径1〜500nmの粒子として形成することが多い。そのため、コンデンサ中間体の誘電体層表面における微細な空隙の最深部にまでπ共役系導電性高分子が行き届かず、容量を引き出すことが難しくなることがある。このことから、固体電解質層13aを形成した後に、必要に応じて電解液を浸透させることで、容量を補充することが好ましい。
【0053】
[電解液]
電解液としては導電性が高ければ特に限定されず、周知の溶媒中に周知の電解質を溶解させたものである。
電解液における溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等のアルコール系溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン等のアミド系溶媒、アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、水等が挙げられる。
電解質としては、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、安息香酸、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、トルイル酸、エナント酸、マロン酸、蟻酸、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸等のデカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸等のオクタンジカルボン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の有機酸、あるいは、硼酸、硼酸と多価アルコールより得られる硼酸の多価アルコール錯化合物、りん酸、炭酸、けい酸等の無機酸などをアニオン成分とし、一級アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン等)、二級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ジフェニルアミン等)、三級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリフェニルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7等)、テトラアルキルアンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等)などをカチオン成分とした電解質が挙げられる。
【0054】
以上説明したコンデンサの製造方法は、導電性高分子溶液を塗布、乾燥することにより固体電解質層を形成するから、工程が簡便であり、大量生産に向いており、低コストである。また、導電性高分子溶液は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとヒドロキシ基含有芳香族性化合物とを含んでいるため、固体電解質層中のπ共役系導電性高分子の劣化を防ぐことができ、さらに、ホッピングエネルギーを小さくすることができる。したがって、固体電解質層の導電性を高くできるので、コンデンサの性能を高くできる。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
(製造例1)
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合させた。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS−PEDOT)を含むポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液100gに2.0gのヒドロキノンスルホン酸カリウムを添加し、均一に分散させて導電性高分子溶液Aを得た。
その導電性高分子溶液をガラス上に塗布し、120℃のオーブン中で乾燥させて導電性組成物の塗布膜を得た。得られた塗布膜の電気伝導度をローレスタ(三菱化学社製)により測定した。その結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
(製造例2)
製造例1において得られた100gのポリマー溶液に、ヒドロキノンスルホン酸カリウムの代わりに、1.5gの1,2,3−トリヒドロキシベンゼンを添加したこと以外は製造例1と同様にして導電性高分子溶液Bを得た。そして、製造例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0058】
(製造例3)
製造例1において得られた100mlのポリマー溶液に、ヒドロキノンスルホン酸カリウムの代わりに、0.7gの3,4,5−トリヒドロキ安息香酸メチルを添加したこと以外は製造例1と同様にして導電性高分子溶液Cを得た。そして、製造例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0059】
・コンデンサの製造
(実施例1)
エッチドアルミ箔(陽極泊)に陽極リード端子を接続した後、アジピン酸アンモニウム10質量%水溶液中で化成(酸化処理)して、アルミ箔表面に誘電体層を形成してコンデンサ中間体を得た。
次に、コンデンサ中間体と、陰極リード端子を溶接させた対向アルミ陰極箔とを積層し、これを巻き取ってコンデンサ素子とした。その際、コンデンサ中間体の陽極箔と陰極箔との間にセパレータを挟んだ。
製造例1で調製した導電性高分子溶液Aにコンデンサ素子を浸漬した後、120℃の熱風乾燥機で乾燥してコンデンサ中間体の誘電体層側表面に固体電解質層を形成させた。
次いで、アルミニウム製のケースに、固体電解質層が形成されたコンデンサ素子と、電解液であるアジピン酸水素アンモニウム20質量%−エチレングリコール80質量%溶液とを充填し、封口ゴムで封止して、コンデンサを作製した。
作製したコンデンサについて、LCZメータ2345(エヌエフ回路設計ブロック社製)を用いて、120Hzでの静電容量、100kHzでの等価直列抵抗(ESR)の初期値、125℃、500時間後のESRを測定した。測定結果を表1に示す。
【0060】
(実施例2)
導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Bを用いたこと以外は実施例1と同様にしてコンデンサを作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0061】
(実施例3)
導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Cを用いたこと以外は実施例1と同様にしてコンデンサを作製し、実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0062】
(実施例4)
エッチドアルミ箔(陽極泊)に陽極リード端子を接続した後、アジピン酸アンモニウム10質量%水溶液中で化成(酸化処理)して、アルミ箔表面に誘電体層を形成してコンデンサ中間体を得た。
次に、製造例1で調製した導電性高分子溶液Aにコンデンサ中間体を浸漬した後、120℃の熱風乾燥機で乾燥してコンデンサ中間体の誘電体層側表面に固体電解質層を形成させた。
次いで、形成された固体電解質層の上に、カーボンペーストを塗布し、120℃の熱風乾燥機で乾燥した後、さらに、銀ペーストを塗布して導電層を形成し、120℃の熱風乾燥機で乾燥して陰極を形成した。
その陰極にリード端子を取り付け、これを巻き取ってコンデンサ素子とした。その際、コンデンサ中間体の陽極箔と陰極箔との間にセパレータを挟んだ。
アルミニウム製のケースに、固体電解質層が形成されたコンデンサ素子を装填し、封口ゴムで封止して、コンデンサを作製した。
作製したコンデンサについて、LCZメータ2345(エヌエフ回路設計ブロック社製)を用いて、120Hzでの静電容量、100kHzでの等価直列抵抗(ESR)の初期値、125℃、500時間後のESRを測定した。測定結果を表1に示す。
【0063】
(実施例5)
導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Bを用いたこと以外は実施例3と同様にしてコンデンサを作製し、実施例4と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0064】
(比較例1)
製造例1のポリマー溶液を導電性高分子溶液として用いたこと以外は実施例1と同様にしてコンデンサを作製し、実施例1と同様にして評価した。
【0065】
陰極の固体電解質層がπ共役系導電性高分子とポリアニオンとヒドロキシ基含有芳香族性化合物とを含む実施例1〜5のコンデンサは、陰極の導電性に優れており、等価直列抵抗が低かった。特に、ヒドロキシ基含有芳香族化合物として式(1)で表される化合物を用いた実施例5のコンデンサは、陰極の導電性が高く、等価直列抵抗が低かった。
これに対し、陰極の固体電解質層がヒドロキシ基含有芳香族性化合物を含まない比較例1のコンデンサは、陰極の導電性が低く、等価直列抵抗が高かった。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明のコンデンサにおける一実施形態例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0067】
10 コンデンサ
11 陽極
12 誘電体層
13 陰極
13a 固体電解質層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁金属の多孔質体からなる陽極と、該陽極の表面が酸化されて形成された誘電体層と、該誘電体層上に形成された陰極とを有するコンデンサにおいて、
陰極が、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、ヒドロキシ基含有芳香族性化合物とを含む固体電解質層を具備することを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
前記ヒドロキシ基含有芳香族性化合物が、下記式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【化1】

(式(1)中、Rは炭素数1〜15の直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを示す。)
【請求項3】
前記陰極が、さらに、電解液を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のコンデンサ。
【請求項4】
弁金属の多孔質体からなる陽極と該陽極の表面が酸化されて形成された誘電体層とを有するコンデンサ中間体における誘電体層側表面に、π共役系導電性高分子とポリアニオンとヒドロキシ基含有芳香族性化合物と溶媒とを含む導電性高分子溶液を塗布し、乾燥する工程を有することを特徴とするコンデンサの製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2006−186292(P2006−186292A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72757(P2005−72757)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)