説明

コンデンサ装置の誘電特性を求める装置及び方法

コンデンサ装置(21)の誘電特性を求める装置(1)は、交流信号をコンデンサ装置(21)に印加する交流信号発生器(3)を含んでいる。更に装置は、コンデンサ装置(21)から取出される電気信号の少なくとも1つの電気的測定量を評価する評価回路(6)を含んでいる。それに加えて装置は、交流信号発生器(3)とコンデンサ装置(21)との間の電気的通路に設けられる整合手段(4)を含み、所定の一定の条件において評価回路(6)の出力信号が特定の値なるべく零をとるように、整合手段(4)により交流信号のパラメータが可変である。制御信号を整合手段(4)へ送出する制御手段が設けられ、この制御手段により少なくとも1つのパラメータの変化が制御可能である。それにより装置(1)を簡単に速やかに安価に特に自動的に整合させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気測定装置の分野にある。本発明は、独立請求項の上位概念に記載のコンデンサ装置の少なくとも1つの誘電特性を求める装置及び方法に関する。本発明は装置の自動的な整合、装置による測定のシミュレーション、装置の検査、又は装置の後に接続される構成要素の検査を可能にする。
【0002】
本発明の好ましい使用分野は、カードスライバ、ロービング、糸又は織布のような縦長のなるべく繊維形成物の容量性検査である。このような検査は例えば異物の検出、単位長さ当たりの質量の変化の確認及び/又は供試品の湿度の測定を目的とすることができる。本発明は、例えば紡糸機又は巻取り機のヤーンクリヤラにおける製造過程(オンライン)又は糸試験器における実験室検査(オフライン)において使用可能である。
【背景技術】
【0003】
例えばカードスライバ、ロービング、糸又は織布のような縦長の繊維供試品を検査する多数の多様な装置が公知である。これらの装置は、その使用に応じて2つのクラス即ち実験室検査(オフライン)及び製造過程中の検査(オンライン)に分けられる。装置は種々の公知のセンサ原理を使用している。ここでは特に容量性測定原理に関心がある。この測定原理では、測定コンデンサが典型的に平らな板コンデンサとして構成され、供試品用の通過口を持っている。測定コンデンサはLC発振器の一部なので、LC発振器の励振の際交流電圧が測定コンデンサにかかる。通過口はそれにより交流電界を印加される。供試品は板コンデンサを通って動かされ、交流電界にさらされる。板コンデンサの電気出力信号が検出される。評価回路において、出力信号から供試品の誘電特性が求められる。この誘電特性から、単位長さ当たりの質量及び/又は材料組成のような供試品のパラメータが求められる。容量性糸センサ又はスライバセンサは例えば英国特許出願公開第638365号に記載されている。
【0004】
空気温度又は空気湿度のような外部の影響を受けない正確な測定を行うことができるようにするため、補償方法がしばしば使用される。この目的のため装置は、本来の測定コンデンサのほかに、基準コンデンサを含んでいる。この基準コンデンサは、両方の測定コンデンサ板に対して平行に設けられる第3のコンデンサ板の付加により形成することができ、3つのコンデンサ板が1つの容量測定回路にまとめられる。測定回路の例及びその出力信号の適当な評価回路は、欧州特許出願公開第924513号明細書、国際公開第2006/105676号及び国際公開第2007/115416号に見られる。
【0005】
供試品がないと、測定回路は、交流電圧を印加される場合値零の出力信号を供給するようにする。しかし実際には、実際の電気的構成要素の種々の不完全さのため、供試品なしで零信号を得るために、測定回路を対称に構成するだけでは十分でない。各測定回路は対称化のため個々に整合されねばならない。対称整合は製造者による製造中に行われ、必要な場合保守員により保守中に行われる。この目的のため通常は、測定容量に並列接続される少なくとも1つの整合コンデンサの容量が変化される。整合は適当な工具例えばねじ回しにより手で行われる。その代わりに公知のレーザ整合方法が使用される。いずれにせよ、整合のため装置を開かねばならない。このような手による整合はめんどうであり、時間をとりかつ高価である。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005006853号明細書は、第1振動回路を形成するセンサ素子を持つ測定システムを開示している。第2振動回路が第1振動回路に結合され、かつ可変構成要素を含んでいるので、その共振が調節可能である。両方の振動回路は結合されたシステムを形成するので、第1振動回路により決定される共振特性も影響を受け、それにより所望の値へ移される。それによりセンサ素子の製造又は組立ての際場合によっては起こる導体構造の容量又は誘導要素の例えば偏差が補償される。
【0007】
糸が通過する測定コンデンサを持つ容量性ヤーンクリヤラが英国特許出願公開第963258号明細書に示されている。測定コンデンサにかかる電圧が取出されて、糸切断を開始するために使用される。測定コンデンサに対して直列に可変抵抗が接続され、こうして形成される直列回路の両端が交流電圧発生器に接続されている。ヤーンクリヤラの感度は抵抗の変化により調節することができる。
【0008】
米国特許出願公開第3768006号明細書は、管路を流れる油−水エマルジョン中の水割合を容量で測定する装置及び方法を示している。管外壁は測定コンデンサの外側接地電極を形成し、管中心に設けられる素子が内側電極を形成している。既知の容量の基準コンデンサは、測定コンデンサに直列接続されている。交流電圧発生器がコンデンサに印加される交流電圧を発生する。基準コンデンサの電圧が測定され、水割合の尺度となる。測定物を満たされる測定コンデンサの電圧は、交流電圧発生器の出力振幅を制御する制御回路により一定に保持される。
【0009】
米国特許出願公開第3684953号明細書は、誘電性供試品の特性特に相対湿気含有量を定量的に求める装置及び方法に関する。供試品が測定コンデンサへ入れられる。測定コンデンサに、後に増幅器を接続される発振器により発生される交流信号が印加される。測定コンデンサから取出される信号が復調され、測定コンデンサに印加されかつ場合によっては復調される交流信号と比較され、両方の信号の商が形成される。この比較から供試品の湿気含有量が推論される。復調の動的範囲を維持するため、増幅器のゲインが測定コンデンサの復調される出力信号により制御される。供試品なしの零整合のため、測定コンデンサに並列接続される可変整合コンデンサが設けられている。
【0010】
米国特許出願公開第4843879号明細書から、糸の容量性品質管理装置が公知である。この装置は、測定コンデンサ及び基準コンデンサを持つ二重コンデンサ装置を含んでいる。二重コンデンサ装置は、電気回路へ組込まれている。電気回路は、互いに逆の位相を持つ2つの交流電圧を二重コンデンサ装置の両方の外側コンデンサ電極へ印加する発振器を含んでいる。発振器とそれぞれの電極との間の各分枝には信号増幅器及び整合コンデンサがある。整合コンデンサは、供試品のない二重コンデンサ装置の出力信号を値零に整合するのに用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って本発明の課題は、コンデンサ装置の少なくとも1つの誘電特性を求めるため、上記の欠点を持たない装置及び方法を提示することである。装置が簡単に速やかに安価に特に自動的に整合可能であるようにする。本発明の別の課題は、装置により測定を模擬し、装置を検出し、又は装置の後に接続される構成要素を検査する方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題及び他の課題は、独立請求項に規定されているような本発明による装置及び本発明による方法によって解決される。有利な実施形態は従属請求項に示されている。
【0013】
本発明は、装置の出力信号を整合させるため、交流信号発生器とコンデンサ装置を含む測定回路との間の電気的通路にあって制御信号により制御可能な制御手段を設けるという考えに基いている。このような外部整合手段によって、コンデンサ装置自体に介入することなく、装置が整合せしめられる。これは装置の自動的な整合の可能性を開く。
【0014】
この明細書において“コンデンサ装置”という概念は、交流信号発生器の交流信号により異なるように充電可能で少なくとも1つの誘電体により互いに隔離されている2つの物体を持つ装置を意味する。好ましい実施形態では、コンデンサ装置は、互いに間隔を置く2つの板を持つコンデンサであって、これらの板の間に空気が存在し、かつこれらの板の間へ動かされる縦長の検査すべき繊維供試品が導入可能である。この明細書において“交流信号”という概念は、時間的に実質的に一定な成分(DC成分、オフセット)を付加的に重畳可能で時間的に変化するなるべく周期的な成分(AC成分)を持つ電圧信号又は電流信号を意味する。
【0015】
コンデンサ装置の少なくとも1つの誘電特性を求めるため本発明による装置は、交流信号をコンデンサ装置に印加する少なくとも1つの交流信号発生器を含んでいる。更に装置は、コンデンサ装置から取出される電気信号の少なくとも1つの電気的測定量を評価する評価回路を含んでいる。その上装置は、少なくとも1つの交流信号発生器とコンデンサ装置との間の電気的通路に設けられる整合手段を含み、所定の一定の条件において評価回路の出力信号が特定の値なるべく零をとるように、整合手段により交流信号の少なくとも1つのパラメータが可変である。制御信号を整合手段へ送出する制御手段が設けられ、この制御手段により少なくとも1つのパラメータの変化が制御可能である。
【0016】
好ましい実施形態では、装置がフィードバックを持ち、このフィードバックによりコンデンサ装置又は評価回路の出力信号が制御手段に作用する。コンデンサ装置が、印加される交流信号の基本周波数及び信号形状に著しく影響しないように、交流信号発生器から切離されているのがよい。
【0017】
整合手段を実現するために、種々の変形例が提案され、以下の列挙は決定的ではない。
整合手段が、個々に又は群毎に接続又は切離し可能な複数の抵抗を含んでいる。
整合手段が交流信号の振幅変調用変調器を含んでいる。
整合手段が、交流信号を増幅するため可変又はプログラミング可能なゲインを持つ増幅器を含んでいる。
整合手段がディジタルポテンショメータ又はレジャスタ(Rejustor)を含んでいる。
整合手段が容量ダイオードを含んでいる。
整合手段が、少なくとも1つの交流信号発生器に電圧を印加するディジタル−アナログ変換器を含み、電圧の印加により交流信号の少なくとも1つのパラメータが可変であるように、交流信号発生器が構成されている。
【0018】
本発明による装置は、装置がコンデンサ装置に直列接続される基準コンデンサを含んでいるのがよい。その際交流信号発生器が、コンデンサ装置又は基準コンデンサに互いに逆の位相を持つ2つの交流電圧を印加するために設けられている。複数の整合手段が、交流信号発生器とコンデンサ装置との間の電気的通路及び/又は少なくとも1つの交流信号発生器と基準コンデンサとの間の電気的通路に設けられている。
【0019】
本発明による装置は、カードスライバ、ロービング、糸又は織布のように動かされる縦長の繊維供試品を容量により検査するために使用され、動かされる供試品がコンデンサ装置に影響する。
【0020】
コンデンサ装置の少なくとも1つの電気的特性を求めるための本発明による方法では、交流信号が少なくとも1つの交流信号発生器により発生されて、コンデンサ装置に印加される。コンデンサ装置から取出される電気信号の少なくとも1つの電気的測定量が評価される。交流信号発生器とコンデンサ装置との間の電気的通路にある交流信号の少なくとも1つのパラメータが変化されて、評価の出力信号が所定の一定条件で特定の値なるべく零をとる。少なくとも1つのパラメータの変化が制御信号により制御される。
【0021】
本発明による方法の第1の好ましい実施形態では、コンデンサ装置が時間的に実質的に不変なままにされ、交流信号がコンデンサ装置に印加され、コンデンサの出力信号が取出され、かつ制御信号がこの出力信号により影響される。その際出力信号による制御信号への影響が閉じた制御回路において自動的に行われる。本発明による方法のこの第1の実施形態は、本発明による装置の整合のために、出力信号が所定の一定の条件において特定の値なるべく零をとるようにされる。
【0022】
本発明による方法の第2の好ましい実施形態では、コンデンサ装置が時間的に実質的に不変なままにされ、かつ制御信号がコンデンサ装置の出力信号とは無関係である。本発明による方法のこの第2の実施形態は、本発明による装置で測定を模擬するため、本発明の装置を検査するため、又は本発明による装置の後に接続される構成要素を検査するために使用される。
【0023】
本発明が与える利点として、とりわけ次のものをあげることができる。
第1に、整合を測定回路において行う必要がない。測定回路は容量性装置のよく敏感な部分であり、従って妨害及び非直線性に極めて敏感である。整合手段を測定回路外に設けることによって、本発明は測定回路におけるこのような妨害を回避する。
第2に、本発明により整合が任意の精度で行われる。例えば任意の大きさの分解能を持つインタフェースを介して制御される抵抗を持つディジタルポテンショメータを使用することができる。
第3に、本発明により、今まで測定回路にある整合可能なコンデンサにより整合が行われたすべての容量性センサのために、信号対雑音費を著しく改善することができる。これは、測定回路にある整合可能な素子が測定回路に永続的に影響を及ぼすからである。
【0024】
本発明は装置の整合のために有益である。本発明により、装置の整合が簡単に、速やかにかつ安価になる。測定回路を整合させるために、装置を開く必要がない。整合はいつでも行うことができる。整合は、操作者による介入なしに、装置自体により自動的に行うことができる。それにより整合は、各測定の前、10回目の各測定の前に、出力信号の長時間測定の著しい変化の際又は周囲条件の比較的大きい変化後に自動的に行うことができる。その結果測定精度、測定の信頼性、再現可能性の向上、及び測定結果の改善が行われる。
【0025】
しかし整合手段は装置の整合のために有益であるだけではない。それは装置への任意の制御信号の供給にも用いることができる。このような制御信号により、装置が適切に離調される。装置の適切な離調は、測定すべき容量の変化による離調と同じ又は類似な効果を持つことができる。即ち整合手段を介して装置へ制御信号を供給することにより、測定を模擬することができる。その際整合手段を除いて、装置の容量が変化しないようにする。模擬される測定は、例えば評価回路の検査及び評価回路における欠陥検査のために使用することができる。これらの測定は、評価回路例えば評価回路に含まれるフィルタの整合に用いることができる。測定は装置の検査及び/又は設定にも用いることができる。実際の測定の出力信号を前もって同じ装置又は他のセンサにより記録し、メモリに記憶し、入力信号として整合手段を介して装置へ供給することができる。それにより装置は、“記録及び再生”機能を備えることができる。
【0026】
概略的な図面により、本発明が以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】 本発明による装置のブロック線図を示す。
【図2】 本発明による装置の実施例の回路図を示す。
【図3】 本発明による装置の実施例の回路図を示す。
【図4】 本発明による装置の実施例の回路図を示す。
【図5】 本発明による装置の実施例の回路図を示す。
【図6】 本発明による装置の実施例の回路図を示す。
【図7】 本発明による装置の実施例の回路図を示す。
【図8】 本発明による装置の実施例の回路図を示す。
【図9】 本発明による装置の実施例の回路図を示す。
【図10】 本発明による装置の実施例の回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は簡単なブロック線図により本発明を説明する。本発明による装置1は、測定回路2に使用できる容量21の測定に用いられる。測定回路2には交流信号例えば交流電圧が印加される。交流信号を発生するために、交流信号発生器3が設けられている。交流信号発生器3により発生される交流信号は、更にフィルタ及び/又は増幅段5において濾波及び/又は増幅される。フィルタ及び/又は増幅段5は、測定すべき容量21を交流信号発生器3から切離して、交流信号発生器により発生される交流信号のパラメータ例えば交流信号の周波数、位相及び/又は振幅に影響を及ぼさないようにするのにも役立つ、簡単にするため、フィルタ及び/又は増幅段5は以下の図にはもはや記入されていない。測定回路2の後になるべく評価回路6が接続されて、測定回路2の出力信号を評価する。評価回路6は計算機として構成することができる。それは、出力導線61に、測定すべき容量21の尺度である出力信号を出力する。本発明による装置1において、もちろん別の段を設けることができる。特に測定回路2と評価回路6との間にフィルタ、増幅器及び/又はミキサを挿入することが有利又は必要であるが、簡単にするため添付図面には示してない。
【0029】
本発明によれば、交流信号発生器3と測定回路2との間に、装置1の整合用整合手段4により交流信号の少なくとも1つのパラメータ例えば振幅が可変である。装置1の整合中に、測定すべき容量21及び場合によっては測定回路2に存在する他の容量が時間的に変化しないように、注意せねばならない。従って時間的に一定な周囲条件例えば温度及び空気湿度が存在するか、又は対応する変化が補償されるようにせねばならない。(以下の図に示すように)容量21が供試物を受入れるコンデンサとして構成されている場合、整合中に供試品がコンデンサ中に存在しないか、又は供試品の容量が時間的に変化しないようにする。装置1の整合のため、交流電圧信号が測定すべき容量に印加される。整合手段4は交流信号の少なくとも1つのパラメータを変化して、装置1の出力信号が出力導線61において特定の値をとり、なるべく零になるようにする。この目的のため、例えば装置1の製造後又は保守の際、整合手段4が操作者により手で調節可能である。その代りに、整合手段4を自動的に調節することができる。自動調節は、そのため特別に設けられる制御装置7又は評価装置6において行うことができる。図1には出力導線61から整合手段4へのフィードバックが記入され、このフィードバックが評価装置6又は測定回路2の出力信号に関係する制御信号を整合手段4へ送出する。整合手段4の自動調節により、装置1が自動的に整合可能である。それにより閉じた制御回路が存在し、この制御回路において出力信号が目標値零に制御されるべき制御量であり、制御装置7が制御器として作用し、制御信号が操作量である。その代りに、制御量を評価装置6の後で取出す代わりに、評価装置6の前で取出すこともできる。
【0030】
本発明による装置1の第1実施例が図2に示されている。装置1は供試品9例えば糸の容量性測定に用いられる。そのため供試品9が測定コンデンサ21例えば平らな板コンデンサへ入れられる。測定コンデンサ21は、直列接続される基準コンデンサ22及び多分別の(図示しない)構成要素と共に容量性測定回路2を形成する。測定回路2の後に、図1におけるように評価回路6を接続することができるが、見易くするため、図2及び後続の図には示してない。
【0031】
交流信号発生器3は例えばシンセサイザなるべく直接ディジタルシンセサイザ(DDS)であってもよい。シンセサイザ3はディジタルインタフェース33により制御可能である。シンセサイザ3は、実質的に同じであるが180°だけ互いに移相されている2つの交流信号用のなるべく2つの出力端31,32を持っている。当業者には、測定回路2へ交流信号を印加するのに適した例えば次の集合から成る交流信号発生器も既知である。RC発振器、LC発振器、水晶発振器、セラミック発振器を持つ発振器、SAW(表面音響波)素子、論理装置、フェーズロックループ(PLL)、パルス幅変調器(PWM)、マルチバイブレータ。
【0032】
図2の実施例では、整合手段4は、互いに並列接続されかつ個々に又は群毎に開閉器422例えば高周波トランジスタにより接続又は切離し可能な複数の抵抗421を含んでいる。それにより1つの可変な全抵抗が生じ、この全抵抗にわたって電圧が降下し、この電圧は更にシンセサイザにより送出される電流に関係している。抵抗421は両方のシンセサイザ出力端の1つのみに設けられるが、図2の実施例におけるように、両方のシンセサイザ出力端31,32に設けられる。開閉器422は、適当なディジタルインタフェース7により制御することができる。
【0033】
装置1の自動的な整合のために、測定回路2の出力信号と開閉器422を制御するディジタルインタフェース7との間にフィードバックを設けることができる。装置を整合させるため、好ましい使用では、供試品9が測定コンデンサへ導入されず、空気湿度及び温度のように時間的にできるだけ不変な周囲条件に留意する。シンセサイザ3により交流信号が測定回路2に印加され、開閉器422の位置がディジタルインタフェース7により制御されて、測定回路2の出力信号が零であるようにする。この場合装置1が整合せしめられ、開閉器422の位置が記憶され、供試品9による本来の測定のために維持される。従ってディジタルインタフェース7が図1の制御装置7に相当し、閉じた制御回路にある制御器として作用する。
【0034】
しかし本発明による装置1のすべての実施例において、フィードバック及び制御の可能性は、簡単にするため、以下の図にはもはや記入されていない。同じ理由から、図2〜10にも自由選択の濾波及び/増幅段5(図1参照)は記入されていない。
【0035】
図3は本発明による装置1の第2実施例を示す。ここでは整合手段4が抵抗導体として構成されている。このような抵抗導体は、実質的に複数の直列接続される抵抗431から成り、これらの抵抗43は開閉器432により別の抵抗433を介して個々に又は群毎に接続又は切離すことができる。ディジタルインタフェース7により制御できる適当な開閉器位置によって、装置1の整合を行うことができる。
【0036】
本発明による図4の第3実施例では、任意のビット幅の2つの出力端を持つ差動ディジタル−アナログ変換器441が使用される。これは測定回路2の離調又は整合に比例する電圧を発生する。この電圧により、アナログミキサ又は乗算器442においてシンセサイザ3の交流電圧が変調され、こうして変調される信号が測定回路2に印加される。こうして装置が整合せしめられるまで、シンセサイザ3により発生される交流電圧の振幅を任意に調節することができる。図4に示す両方の抵抗443は、シンセサイザ3から供給される交流電流を交流電圧に変換するのに用いられる。シンセサイザ3が既に交流電圧源として構成されている場合、これらの抵抗はなくなる。差動ディジタル−アナログ変換器441の代わりに、2つの1極ディジタル−アナログ変換器を使用することができる。
【0037】
図5に示されているような本発明による装置1の第4実施例は、電圧制御される増幅器の原理に従って動作する。この装置は、シンセサイザ3の両方の出力信号用の2つの電圧制御される可変増幅器(可変ゲイン増幅器VGA)452を含んでいる。可変増幅器452のゲインは、例えばディジタルインタフェース7により制御される。ディジタル−アナログ変換器451によって制御される。シンセサイザ3の両方の出力信号のための適当なゲインの調節により、装置1の整合を行うことができる。
【0038】
図6に示す本発明による装置1の第5実施例は、図5の実施例と同じように動作する。しかしここでは、アナログで制御される可変増幅器452の代わりに、プログラミング可能なゲインを持つ増幅器(PGA)462が使用される。これらの増幅器は適当なディジタルインタフェース7により制御される。この実施例ではディジタル−アナログ変換器451はない。
【0039】
図7の本発明による装置1の第6実施例は、ディジタルポテンショメータ又はレジャスタ(Rejustor)471を使用する。これらの素子471は1つ又は2つのディジタルインタフェース7を介して制御され、それによりその抵抗が変化されて、シンセサイザ3により発生される交流電流により適切な電圧降下が生じるようにしている。シンセサイザ3が交流電圧源として構成されている場合、装置1を分圧器として配線することができる。
【0040】
図8に示されている本発明による装置1の第7実施例でも、ディジタルポテンショメータ又はレジャスタ481が使用され、しかも例えばシンセサイザ3と測定回路2との間でシンセサイザ3により発生される交流信号を増幅する増幅器482の負フィードバックで使用される。
【0041】
図7及び8の実施例では、ディジタルポテンショメータ481の代わりに、従来のアナログポテンショメータを使用することができる。それにより操作者が装置1を手で整合させることができる。
【0042】
図9の本発明による装置1の第8実施例では、容量ダイオード492により容量性分圧器が形成されている。容量ダイオード492の制御用電圧は、例えば2つの出力端を持ちかつディジタルインタフェース7により制御される差動ディジタル−アナログ変換器491から供給される。差動ディジタル−アナログ変換器491の代わりに、2つの1極ディジタル−アナログ変換器を使用することができる。
【0043】
最後に図10は、本発明による装置1の第9実施例を示す。これは2つの直接ディジタルシンセサイザ3を使用し、これらのシンセサイザ3はディジタルインタフェース33により制御されて、その交流信号が互いに180°移相されるようにしている。更にシンセサイザ3に印加される制御電圧により、交流信号の振幅に影響を及ぼすことができる。こうして交流信号の振幅を制御するために、例えばディジタルインタフェース7により制御されて制御電圧を発生するディジタル−アナログ変換器411が、シンセサイザ3に接続されている。
【0044】
本発明が上述した実施例に限定されないことは自明である。本発明を知れば、当業者は本発明の対象にも属する別の変形例を推論できるであろう。このような変形例は例えば上述した実施例の組合わせであってもよい。本発明による装置1用の整合手段4として問題になる多くの電気的構成要素は当業者に周知である。
【符号の説明】
【0045】
1 装置
2 測定回路
21 測定すべき容量、測定コンデンサ
22 基準コンデンサ
3 交流信号発生器
31,32 交流信号発生器の出力端
33 交流信号発生器を制御するディジタルインタフェース
4 整合手段
411 ディジタル−アナログ変換器
421 抵抗
422 開閉器
431,433抵抗
432 開閉器
441 ディジタル−アナログ変換器
442 乗算器
451 ディジタル−アナログ変換器
452 可変増幅器
462 可変ゲインを持つ増幅器
471 ディジタルポテンショメータ又はレジャスタ
481 ディジタルポテンショメータ又はレジャスタ
482 増幅器
491 ディジタル−アナログ変換器
492 容量ダイオード
5 フィルタ及び/又は増幅段
6 評価回路
7 制御装置
9 供試品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ装置(21)の少なくとも1つの誘電特性を求める装置(1)であって、
交流信号をコンデンサ装置(21)に印加する少なくとも1つの交流信号発生器(3)、
コンデンサ装置(21)から取出される電気信号の少なくとも1つの電気的測定量を評価する評価回路(6)、及び
少なくとも1つの交流信号発生器(3)とコンデンサ装置(21)との間の電気的通路に設けられる整合手段(4)を含み、
所定の一定の条件において評価回路(6)の出力信号が特定の値なるべく零をとるように、整合手段(4)により交流信号の少なくとも1つのパラメータが可変であるものにおいて、
制御信号を整合手段(4)へ送出する制御手段(7)が設けられ、この制御手段(7)により少なくとも1つのパラメータの変化が制御可能である
ことを特徴とする、装置。
【請求項2】
装置(1)がフィードバックを持ち、このフィードバックによりコンデンサ装置(21)又は評価回路(6)の出力信号が制御手段(7)に作用する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
コンデンサ装置(21)が、印加される交流信号の基本周波数及び信号形状に著しく影響しないように、交流信号発生器(3)から切離されている、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項4】
整合手段(4)が、個々に又は群毎に接続又は切離し可能な複数の抵抗(421,431,433)を含んでいる、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項5】
整合手段(4)が交流信号の振幅変調用変調器(442)を含んでいる、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項6】
整合手段(4)が、交流信号を増幅するため可変又はプログラミング可能なゲインを持つ増幅器(452,462)を含んでいる、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項7】
整合手段(4)がディジタルポテンショメータ又はレジャスタ(Rejustor)(471,481)を含んでいる、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項8】
整合手段(4)が容量ダイオード(492)を含んでいる、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項9】
整合手段(4)が、少なくとも1つの交流信号発生器(3)に電圧を印加するディジタル−アナログ変換器(441)を含み、電圧の印加により交流信号の少なくとも1つのパラメータが可変であるように、交流信号発生器(3)が構成されている、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項10】
装置(1)がコンデンサ装置(21)に直列接続される基準コンデンサ(22)を含んでいる、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項11】
交流信号発生器(3)が、コンデンサ装置(21)又は基準コンデンサ(22)に互いに逆の位相を持つ2つの交流電圧を印加するために設けられている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
複数の整合手段(4)が、交流信号発生器(3)とコンデンサ装置(21)との間の電気的通路及び/又は少なくとも1つの交流信号発生器(3)と基準コンデンサ(22)との間の電気的通路に設けられている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
カードスライバ、ロービング、糸又は織布のように動かされる縦長の繊維供試品(9)を容量により検査するために使用され、動かされる供試品(9)がコンデンサ装置(21)に影響する、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項14】
コンデンサ装置(21)の少なくとも1つの電気的特性を求める方法であって、
交流信号が少なくとも1つの交流信号発生器(3)により発生されて、コンデンサ装置(21)に印加され、
コンデンサ装置(21)から取出される電気信号の少なくとも1つの電気的測定量が評価され、かつ
交流信号発生器(3)とコンデンサ装置(21)との間にある電気的通路にある交流信号の少なくとも1つのパラメータが変化されて、評価の出力信号が所定の一定条件で特定の値なるべく零をとるものにおいて、
少なくとも1つのパラメータの変化が制御信号により制御される
ことを特徴とする。方法。
【請求項15】
コンデンサ装置(21)が時間的に実質的に不変なままにされ、
交流信号がコンデンサ装置(21)に印加され、
コンデンサ(21)の出力信号が取出され、かつ
制御信号がこの出力信号により影響される
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
出力信号による制御信号への影響が閉じた制御回路において自動的に行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
出力信号が所定の一定の条件において特定の値なるべく零をとるように、請求項1〜12に記載の装置(1)を整合するために使用される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
コンデンサ装置(21)が時間的に実質的に不変なままにされ、かつ
制御信号がコンデンサ装置(21)の出力信号とは無関係である
請求項14に記載の方法。
【請求項19】
制御信号が時間的に速く変化しかつ合成的に発生されかつ/又は前もって記憶される信号である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
測定を請求項1〜12の1つに記載の装置で測定を模擬するため、請求項1〜12の1つに記載の装置(1)を検査するため、又は請求項1〜12の1つに記載の装置(1)の後に接続される構成要素を検査するために使用される、請求項18又は19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−506059(P2012−506059A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533503(P2011−533503)
【出願日】平成21年10月12日(2009.10.12)
【国際出願番号】PCT/CH2009/000329
【国際公開番号】WO2010/043065
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(503169552)ウステル・テヒノロジーズ・アクチエンゲゼルシヤフト (37)
【Fターム(参考)】