説明

コンデンサ製造用治具及びコンデンサ製造方法

【課題】漏れ電流が小さくかつ耐電圧の大きい信頼性の高いコンデンサを低コストで作製するためのコンデンサ製造用治具及びコンデンサ製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁性基板4上に並列に接続されて形成された、アノード5bとカソード5aを有する定電流素子5とを有する回路基板2と、基部10の一方の面に、定電流素子5のカソード5aと導通するコネクタ11と、基部10の他方の面に、コネクタ11と導通するように形成され導電体12と接続される導電体用端子とを有するソケット部3とを設け、回路基板2とソケット部3とを着脱可能とし、回路基板2とソケット部3が接続されているときは定電流素子5のカソード5aとコネクタ11とが導通している。絶縁性基板4の一方の面に、コネクタ11を受容可能な端子穴7を形成し、端子穴7の内表面の一部に定電流素子5のカソード5aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ製造用治具及びコンデンサ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサ製造用治具は、コンデンサ素子となる少なくとも1つの導電体を保持し、当該導電体をコンデンサの一連の製造工程において各工程を流動させて導電体上に層を形成する際に用いられるものである。
【0003】
特許文献1においては、複数個の定電流素子を有する回路基板が設けられ、その各出力に導電体用の接続素子(ソケット部)が接続されたコンデンサ製造用治具が提案されている。特許文献1のコンデンサ製造用治具によれば、定電流素子を有するため、各コンデンサ素子に同一電流を流すことができ、また素子を着脱可能にソケット保持することができるので、素子の抜き取り時に高額な回路基板が損傷することがなく再利用可能であるという利点がある。
【0004】
また、特許文献2においては、ソケット部を有するコンデンサ製造用治具において基板に実装したソケット板に対し、同数のソケット個数を有する第2のソケット板を連結し適宜交換してもよい旨開示されている。特許文献2の構造によれば、ソケット部の損傷時にソケット部のみの交換が可能となり、基板全体を廃棄する必要が無くなるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−244154号公報
【特許文献2】国際公開2006/101167号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2のコンデンサ製造用治具では、回路基板に実装された部品の耐熱性が低いため、導電体の化成皮膜強化のための高温のアニール処理を実施することができず、漏れ電流が小さく耐電圧の大きい商品を製造することが困難であるという問題があった。また、回路基板が乾燥等の熱履歴を受けた際に抵抗値が変動するため、毎バッチ流動前に回路基板の抵抗値調節が必要となる。さらには、当該治具を複数のプロセスにおいて支持基板として使用するため、コンデンサ製造用治具が戻ってくるまでのリードタイムが長くなり、大量生産時には高価な回路基板を備えた治具を多数所有する必要があり製造コストが嵩むという問題があった。
【0007】
したがって、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、漏れ電流が小さくかつ耐電圧の大きい信頼性の高いコンデンサを低コストで作製するためのコンデンサ製造用治具及びコンデンサ製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、定電流素子を有する回路基板とコンデンサ素子を保持するソケット部とを別体としこれらを着脱可能にし、加熱処理工程において回路基板を取り外し、熱履歴を受けないようにすれば、流動前の抵抗値調節が不要になるとともに、化成皮膜に対する加熱処理により化成皮膜を強化することができ、これにより漏れ電流を小さく耐電圧を大きくすることができることを見出した。さらに、半導体層の形成工程においては、回路基板とソケット部とを接続すれば、定電流素子を介して、保持された全てのコンデンサ素子に一定の電流を流すことができ、半導体層の形成具合が揃い安定した容量のコンデンサ群を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
したがって、本発明に係るコンデンサ製造用治具は、回路基板とソケット部とを有するコンデンサ製造用治具であって、
前記回路基板は、絶縁性基板と、該絶縁性基板上に形成された、アノードとカソードを有する少なくとも1つの定電流素子と、を有し、かつ、
前記ソケット部は、基部と、該基部の一方の面に形成された少なくとも1つのコネクタと、前記基部の他方の面に前記コネクタと導通するように形成された少なくとも1つの導電体用端子と、を有し、
前記回路基板と前記ソケット部は着脱可能であり、前記回路基板と前記ソケット部が接続されているときは前記定電流素子のカソードと前記コネクタとが導通していることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るコンデンサ製造用治具によれば、回路基板をソケット部から取り外すことにより、ソケット部に保持されたコンデンサ素子に対して高温のアニール処理が可能となる。そのため化成処理中に高温のアニール処理をすることで化成皮膜が強化されることから、漏れ電流が小さく、耐電圧の高い化成皮膜を形成することができる。また、回路基板をソケット部から取り外すことにより、乾燥工程などの加熱処理の際に、回路基板が熱履歴を受けることが無くなるので、回路基板の抵抗調整が不要となる。これによって、大幅な労務工程の削減が可能となる。さらには、回路基板の使用を半導体層形成工程のみとすることにより、回路基板のリードタイムを短くすることができるので、高額な回路基板の所有数量を低減することができる。
【0011】
本発明に係るコンデンサ製造用治具は、上記構成において、前記回路基板が、前記絶縁性基板上に並列に形成された2つ以上の定電流素子を有することが好ましい。
【0012】
本発明に係るコンデンサ製造用治具は、上記構成において、前記絶縁性基板の一方の面に、前記コネクタを受容可能な少なくとも1つの端子穴が形成され、該端子穴の内表面の少なくとも一部に前記定電流素子のカソードが形成されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るコンデンサ製造用治具は、上記構成において、前記定電流素子の個数は、前記コネクタの個数に一致することが好ましい。
【0014】
さらに、本発明に係るコンデンサ製造用治具は、上記構成において、前記コネクタの個数は、前記端子の個数に一致することが好ましい。
【0015】
また、本発明に係るコンデンサ製造用治具は、前記回路基板と略同一の形状を有し、定電流素子を有しておらず、かつ前記ソケット部を着脱可能な交換用基板をさらに備えることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係るコンデンサ製造用治具において、前記交換用基板の一方の面に、前記コネクタを受容可能な少なくとも1つの端子穴が形成されていることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明に係るコンデンサ製造方法は、上述のコンデンサ製造用治具を用いることを特徴とする。すなわち、上述のコンデンサ製造用治具に係る回路基板、ソケット部、及び交換用基板を準備する工程と、
前記ソケット部に、コンデンサ素子の一方の電極となる少なくとも1つの導電体を取り付ける工程と、
前記ソケット部を前記交換用基板に取り付ける工程と、
化成溶液槽に前記導電体が浸漬されるように配置し、前記交換用基板に陽極を、該槽内に設けられた外部電極に陰極を設置し、前記導電体に電圧を印加し、前記導電体の表面を化成する化成処理工程と、
前記ソケット部を前記交換用基板から取り外し、前記回路基板に取り付ける工程と、
半導体層形成溶液槽に前記導電体が浸漬されるように設置し、前記回路基板に陽極を、該槽内に設けられた外部電極に陰極を設置し、前記導電体に一定の電流になるように電圧を印加し、化成皮膜上に半導体層を形成する半導体層形成工程と、
前記ソケット部を前記回路基板から取り外し、前記交換用基板に取り付ける工程と、
化成溶液槽に前記導電体が浸漬されるように配置し、前記交換用基板に陽極を、化成溶液槽に設けられた外部電極に陰極を設置し、前記導電体に電圧を印加し、導電体の化成皮膜を再度化成する再化成処理工程と、
前記半導体層上にカーボンペースト層及び金属ペースト層を順次形成する工程と、を有する。
【0018】
本発明に係るコンデンサ製造方法によれば、上記同様、回路基板をソケット部から取り外すことにより、ソケット部に保持されたコンデンサ素子に対して高温のアニール処理が可能となる。そのため化成皮膜を形成した後に高温のアニール処理を施すことができるようになり、漏れ電流が小さく、耐電圧の高い化成皮膜を形成することができる。また、回路基板をソケット部から取り外すことにより、乾燥工程などの加熱処理の際に、回路基板が熱履歴を受けることが無くなるので、回路基板の抵抗調整が不要となる。これによって、大幅な労務工程の削減が可能となる。さらには、回路基板の使用を半導体層形成工程のみとすることにより、回路基板のリードタイムを短くすることができるので、高額な回路基板の所有数量を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
したがって、本発明によれば、漏れ電流が小さくかつ耐電圧の大きい信頼性の高いコンデンサを低コストで作製するためのコンデンサ製造用治具及びコンデンサ製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係るコンデンサ製造用治具の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るコンデンサ製造用治具のA-A断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係るコンデンサ製造用治具の斜視図である。
【図4】(I)は、本発明の実施の形態3に係るコンデンサ製造方法における導電体および交換用基板の取り付け工程を示す概略図、(II)は、化成処理工程を示す概略図、(III)は、回路基板の取り付けおよびドーパント含浸工程を示す概略図である。
【図5】(IV)は、本発明の実施の形態3に係るコンデンサ製造方法における半導体層形成工程を示す概略図、(V)は、交換用基板の取り付け、および再化成処理工程を示す概略図、(VI)は、カーボンペースト層形成工程を示す概略図である。
【図6】(VII)は、本発明の実施の形態3に係るコンデンサ製造方法における金属ペースト層形成工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るコンデンサ製造用治具及びこれを用いたコンデンサの製造方法に関して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は単に本発明を例示するものであってこれに限定するものではない。なお、各図において、共通する部材、構成要素については同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明に係るコンデンサ製造用治具1の斜視図である。本発明に係るコンデンサ製造用治具1は、回路基板2と、ソケット部3と、を備える。回路基板2は、絶縁性基板4と、絶縁性基板4上に並列に接続されて形成された、アノード5bとカソード5aを有する2以上の定電流素子5と、を有する。また、ソケット部3は、基部10と、基部10の一方の面に形成された2以上のコネクタ11と、基部10の他方の面に、コネクタ11と導通するように形成された2以上の導電体用端子(不図示)と、を有する。該導電体用端子は、コンデンサ素子の一方の電極(特に陽極)となる導電体12と接続される。回路基板2とソケット部3は着脱可能であり、回路基板2とソケット部3が接続されているときは定電流素子5のカソード5aとコネクタ11とが導通している。
【0023】
具体的には、図2に示すように、絶縁性基板4の一方の面に、コネクタ11を受容可能な端子穴7が形成され、さらに、端子穴7の内表面7aの少なくとも一部に定電流素子5のカソード5aが形成されている。カソード5aは、端子穴7から回路基板2の外表面まで貫通して形成されたスルーホール8を介して端子穴7の内表面7aに形成してもよい。コネクタ11の外形と端子穴7の内形は略一致し端子穴7にコネクタ11が収容されてソケット部3が回路基板2により保持されるとともに定電流素子5のカソード5aとコネクタ11とを導通させることが肝要である。このような構成を有することにより、回路基板2とソケット部3とが着脱可能になる。
【0024】
ソケット部3を確実に回路基板2に保持することができる限り他の保持手段を用いることができる。他の保持手段としては、磁石、フック、クリップ、導電性接着剤等が挙げられる。
【0025】
本発明に係るコンデンサ製造用治具1において、定電流素子5のアノード5bは、端子6に並列に接続されている。端子6に外部電源の陽極が接続され、一方、導電体12が浸漬される溶液に外部電源の陰極が配置され、電圧を印加することにより電解重合を行うことができる。
【0026】
本発明に係るコンデンサ製造用治具1において、回路基板2の絶縁性基板4は、ポリイミド、ガラスエポキシ樹脂、アクリル樹脂、セラミック等の絶縁性材料から構成されていることが好ましい。これにより、寸法精度が良好で、変形が少なく、取り扱いやすくなる。回路基板2の絶縁性基板4としては、より好ましくはポリイミドが用いられる。
また、金属などの導電性材料からなる基材上に、上記のような絶縁性材料をコーティングしたものを用いてもよい。これにより、定電流素子5が発熱した際に、効果的に放熱することができる。
【0027】
本発明に係るコンデンサ製造用治具1の定電流素子5としては、表面に誘電体層を有する導電体12に定電流で通電できる定電流回路が構成できればよい。例えば、回路が単純で、部品点数を少なくすることができる定電流ダイオードで構成することが好ましい。また、定電流素子5は、電界効果トランジスタで構成してもよい。
【0028】
以下、主に定電流素子5として定電流ダイオードを用いた例について説明するが、定電流素子はこれに限定されるものではない。
【0029】
具体的には、表面に誘電体層を有する導電体(一方の電極)12を定電流ダイオード5のカソード5aに電気的に直列に接続する。
そして、半導体層形成溶液を用意し、導電体12を半導体層形成溶液に浸漬し、半導体層形成溶液中に配置された外部電極と定電流ダイオードのアノードとに所定電圧を印加すると、定電流ダイオードのランク(電流規格)に応じた一定の電流が流れ、この電流により導電体12の誘電体層15上に半導体からなる半導体層16が形成される。
定電流ダイオード5は、順方向に規定範囲の電圧を印加すると所定の定電流が流れるが、電流値は定電流ダイオードのランクを選択するか、適当なランクの定電流ダイオードを複数個並列に接続することにより段階的に変更可能であるので、形成する半導体量の所望値に合わせて定電流ダイオードを選択して任意範囲の定電流を流すことができる。
【0030】
本発明のコンデンサ製造用治具1において、コネクタ11は、銅、銀、金、鉄等の導電性材料から構成されていることが好ましい。導電性を有し、ある程度の機械的強度を有する限り如何なる材料により構成されていてもよいが、好適には銅が用いられる。コネクタ11の形状は如何なる形状であってもよいが、コネクタ11の端子穴7への挿抜を考慮すると、円柱状、多角柱状(例えば四角柱状、六角柱状、八角柱状)であることが好ましい。好適には、コネクタ11としては円柱状のものが使用される。
【0031】
本発明のコンデンサ製造用治具1において、ソケット部3の基部10としては、マイカ等の絶縁性材料から構成されていることが好ましい。基部10の形状としては、如何なる形状であってもよいが、好適には矩形状のものが用いられる。
【0032】
本発明のコンデンサ製造用治具1において、コンデンサ素子の陽極となる導電体12を保持する導電体用端子は、導電性を有していれば如何なる材料により構成されていてもよい。当該端子は、ソケット構造、クリップ、導電性接着剤等を有し、当該導電体用端子に導電体12を着脱可能に取り付けることが好ましい。これにより、再生処理なく、導電体用端子を再利用できるようになる。
【0033】
本発明の導電体用端子の例としては、ソケット構造の接続端子、金属板、印刷技術によって描かれた箔状金属材料等からなる接続端子が挙げられる。ソケット構造の接続端子とは、導電体が棒状の場合または導電体に陽極端子が接続された構造の導電体の場合に棒状の導電体または陽極端子を差し込むことによって導電体との接続を図るものである。導電体用端子を構成する金属材料としては、例えば銅、鉄、銀、アルミニウムから選ばれた金属の少なくとも1種を主成分とする金属または合金であり、表面に錫めっき、半田めっき、ニッケルめっき、金めっき、銀めっき、銅めっき等の従来公知のめっきを少なくとも1種施しておいてもよい。
【0034】
本発明のコンデンサ製造用治具1は、例えば、電気回路が形成された絶縁性基板4に定電流ダイオードやダイオード、場合によってはソケット構造の接続端子や金属板の接続端子を半田付け、挿入取り付け後半田付け等で接続して使用することにより作製できる。絶縁性基板4の材質としては、ポリイミド、ガラスエポキシ樹脂、アクリル樹脂、セラミックス、絶縁性材料をコーティングしたもの等が挙げられる。好ましくは1〜10mm、より好ましくは1.2〜4mm、さらに好ましくは1.5〜4mmの厚さの絶縁性基板を使用すると、寸法精度が良好で多数回の利用後も変形が少なく、取り扱いもしやすいため好ましい。
【0035】
本発明のコンデンサ製造用治具1を用いて製造されるコンデンサは、部品実装されている回路基板2をソケット部3から取り外すことにより、ソケット部3に保持されたコンデンサ素子に対して高温のアニール処理が可能となる。そのため化成処理中に高温のアニール処理をすることで化成皮膜が強化されることから、漏れ電流が小さく、耐電圧の高い化成皮膜を形成することができる。また、回路基板2をソケット部3から取り外すことにより、乾燥工程などの加熱処理の際に、回路基板2が熱履歴を受けることが無くなるので、回路基板2の抵抗調整が不要となる。これによって、大幅な労務工程の削減が可能となる。さらには、回路基板2の使用を半導体層形成工程のみとすることにより、回路基板2のリードタイムを短くすることができるので、高額な回路基板の所有数量を低減することができる。
【0036】
(実施の形態2)
図3は、本発明に係る別の態様のコンデンサ製造用治具の斜視図である。本発明に係るコンデンサ製造用治具は、上述のコンデンサ製造用治具1と、定電流素子を有しておらず、回路基板2と略同一の形状を有し、ソケット部3を着脱可能な交換用基板20と、を備える。交換用基板20の下面には、コネクタ11を挿抜可能であって保持可能な接続端子9を有する。接続端子9はコネクタ11の数に対応させて対応する位置に設けることが肝要である。交換用基板20は、定電流素子(例えば定電流ダイオード5)を有しないため、一定の電流をコンデンサ素子に流すことを要しない化成処理工程や再化成処理工程など、半導体層形成工程以外の工程で用いられる。交換用基板20は、耐熱性を有しかつ導電性を有する材料から構成されることが好ましく、具体的には、SUS304、SUS316、SUS316L等が挙げられる。耐熱性を有することにより、高温処理が可能となる。
【0037】
コンデンサ製造用治具は、コンデンサの製造工程を流動する際に、搬送装置に保持されることがある。このとき、実施の形態2に示したとおり、回路基板2を必要としない工程において、回路基板2と略同一の形状を有する交換用基板20をソケット部3に取り付けるようにすれば、回路基板2を必要としない工程及びこれを必要とする工程において共通の搬送装置を用いることができ、製造工程が煩雑化することを防ぐことができる。
【0038】
(実施の形態3)
次に、上述の実施の形態2のコンデンサ製造用治具を使って通電手法により半導体層を形成する方法について詳細に説明する。図4〜6は、本発明に係るコンデンサ製造方法の工程を説明するための概略図である。
【0039】
1.治具の準備
実施の形態2で示したコンデンサ製造用治具の回路基板2、ソケット部3、及び交換用基板20を準備する。
【0040】
2.導電体取り付け
図4の(I)に示すように、ソケット部3の下面の導電体用端子に、陽極端子13を有する2以上の導電体12を陽極端子13が把持されるように取り付ける。導電体12を各1個ずつ位置を合わせて導電体用端子に接続する。陽極端子13の外周には、例えばテフロンリング14を装着することが好ましい。これにより、陽極端子13に半導体層17が形成されるのを防止することができる。
【0041】
3.交換用基板の取り付け
図4の(I)に示すように、ソケット部3を、耐熱性及び導電性を有する材料から構成される交換用基板20に取り付ける。
【0042】
4.化成処理および高温アニール処理工程
図4の(II)に示すように、化成溶液槽に導電体12と陽極端子13の一部が浸漬されるように配置し、交換用基板20を陽極に、化成溶液30中に設けた外部電極を陰極にして定電圧を印加することにより誘電体層15を形成することができる。その後、誘電体層15が形成された導電体12を化成溶液30から引き上げ水洗した後に 高温アニール処理(加熱処理)を施し、再度化成溶液30に導電体12と陽極端子13の一部が浸漬されるように設置し化成処理を施す。その後、表面に誘電体層15が形成された導電体12を化成溶液30から引き上げ、これを水洗し、乾燥を行う。当該化成処理工程は、定電流を流すことは必要ではないので、定電流ダイオード5を有しない交換用基板20を用いる。化成溶液30には、有機酸またはその塩(例えば、アジピン酸、酢酸、アジピン酸アンモニウム、安息香酸)、無機酸またはその塩(例えば、燐酸、珪酸、燐酸アンモニウム、珪酸アンモニウム、硫酸、硫酸アンモニウム)等の従来公知の電解質が溶解または懸濁している。化成温度、時間、電流値、電圧等の条件は、使用する導電体の種類、大きさ、質量、目的とするコンデンサの規格を考慮して予備実験によって決定される。
【0043】
5.回路基板の取り付けおよびドーパント含浸工程
図4の(III)に示すように、ソケット部3を交換用基板20から取り外し、回路基板2に取り付ける。表面に誘電体層15が形成された誘電体12をドーパント溶液31に浸漬した後に水洗、乾燥を行うことにより、ドーパント16を誘電体層15上に形成する。
【0044】
6.半導体層形成工程
図5の(IV)に示すように、ドーパント16により被覆された導電体12を半導体層形成溶液32中に浸漬し、端子6を陽極に、槽内に浸漬させた電極を陰極にして電流が一定となるように電圧を印加して、誘電体層15上に半導体層17を形成する。通電時間、半導体層形成溶液32の濃度、pH、温度、通電電流値、通電電圧値は、使用する導電体の種類、大きさ、質量、所望する半導体層17の形成厚み等によって変わるため、予備実験によって予め条件を決定しておく。通電条件を変えて複数回通電を行うことも可能である。なお、図4の(III)のドーパント含浸工程で形成されたドーパント16は、半導体形成工程において、半導体層17に取り込まれる。
【0045】
7.交換用基板の取り付け、再化成処理工程およびカーボンペースト、金属ペースト塗布工程
続いて、図5の(V)に示すように、ソケット部3を回路基板2から取り外し、上述の交換用基板20に取り付ける。交換用基板20を用いて図5の(V)、(VI)及び図6の(VII)に示すように、再化成処理、カーボンペースト及び金属ペーストの塗布及び乾燥を順次行う。
【0046】
本発明のコンデンサ製造用治具を用いたコンデンサ製造方法によれば、部品実装されている回路基板2をソケット部3から取り外すことができるため、化成皮膜を形成した後に高温処理を施すことができるようになり、漏れ電流が小さく、耐電圧の高い化成皮膜を形成することができる。また、回路基板2をソケット部3から取り外すことにより、乾燥工程などの加熱処理の際に、回路基板2が熱履歴を受けることが無くなるので、回路基板2の抵抗調整が不要となる。これによって、大幅な労務工程の削減が可能となる。さらには、回路基板2の使用を半導体層形成工程のみとすることにより、回路基板2のリードタイムを短くすることができるので、高額な回路基板の所有数量を低減することができる。
【実施例1】
【0047】
1.コンデンサ製造用治具の作製
図3(A)に示すように、長さ260mm、幅20mm、厚み1.6mmのポリイミド板(回路基板2の絶縁性基板4)の一方の面に外部端子6からコネクタの端子穴7(32穴が等間隔で配置されている)に並列に印刷配線をし、外部端子6側をアノードとして定電流ダイオード5を載置した。
【0048】
次に、図3(A)に示すように、長さ200mm、幅10mm、厚み1.6mmの耐熱温度550℃の絶縁性であるマイカ(雲母)板(ソケット部3の基部10)に穴径φ0.5mmの導電体用端子が端子穴7と同ピッチで32個形成されており、他方は同ピッチに形成されたコネクタ11と電気的に接続した。コネクタ11と端子穴7は繰り返し脱着が可能な構造となっている。
【0049】
次に、図3(B)に示すように、ポリイミド板(回路基板2の絶縁性基板4)と外形寸法が同じステンレス(SUS)板(交換用基板20)に、端子穴7と同ピッチ、同数のコネクタの接続端子9を形成した。
【0050】
2.コンデンサの作製
CV80000μF・V/gのタンタル焼結体(大きさ4×3×1mm、質量72mg、陽極端子13となる引き出しリード線0.4mmφが10mm表面から突出している)を導電体12として使用した。図4の(I)に示すように、この導電体12を前述したコンデンサ製造用治具のマイカ板(ソケット部3の基部10)の導電体用端子に、向き、高さを揃えて接続した。マイカ板のコネクタ11を、SUS板(交換用基板20)に接続した。タンタル焼結体が32個接続されたコンデンサ製造用治具(マイカ板及びSUS板)を合計50枚用意し、3mm間隔で治具を並列できるフレーム(交換用基板20の左右両端を保持する金属製フレーム)に設置した。
【0051】
図4の(II)に示すように、このフレームを最初1%燐酸水溶液が入っている化成槽に導電体部分と陽極端子の一部が浸漬されるように設置し、SUS板(交換用基板20)に化成用給電端子の陽極を接続し、化成槽に設けられた外部電極(タンタル板)に陰極を接続して、90℃、3時間、導電体12への印加電圧8Vで化成した。フレームを化成槽から引き上げ水洗した後、350℃10分の加熱処理を施し、再度化成槽に導電体部分と陽極端子の一部が浸漬されるように設置し、90℃、3時間、導電体への印加電圧10Vで化成した。最後に、フレームを化成槽から引き上げ水洗した後、100℃で乾燥した。以上の工程により、導電体と陽極端子の一部に酸化タンタルからなる誘電体層15を形成した。
【0052】
次に、コネクタ11をSUS板から取り外し、定電流ダイオード5が形成されているポリイミド板に接続してこれをフレームに戻した。
【0053】
図5の(IV)に示すように、フレームを半導体層形成溶液(アントラキノンスルホン酸ナトリウム0.2Mとエチレンジオキシチオフェンが過飽和状態で投入されている20%エチレングリコールと水の混合溶液)32が入った槽に導電体部分が浸漬されるように設置し、外部端子6を陽極に、槽内に浸漬させたタンタル板(槽の底面全体をカバーするサイズ)を陰極にしてこの端子6に、130μAの電流を1時間通電し半導体層17を形成した。その後、フレームを引き上げ、エタノールで洗浄した後、常温環境下にて自然乾燥した。このような半導体層形成と洗浄・乾燥工程を10回繰り返した。
【0054】
次に、コネクタ11をポリイミド板から取り外し、SUS板に再び接続して、これをフレームに戻した。
【0055】
図5の(V)に示すように、前述の化成槽にフレームを導電体部分が浸漬されるように設置し、SUS板に対して給電端子の陽極を接続し、印加電圧7Vで1時間導電体に対して再化成を行った。フレームを引き上げ洗浄した後100℃で乾燥させた。
【0056】
さらに、図5の(VI)に示すように、フレームをカーボンペースト槽に導電体部分が浸漬されるように設置し、カーボンペースト層18を半導体層17上に塗布した。その後、フレームを引き上げてカーボンペースト層18を乾燥させ、カーボンペースト層18を形成した。つづいて、図6(VII)に示すように、フレームを金属ペースト槽に導電体部分が浸漬されるように設置し、金属ペースト層19をカーボンペースト層18上に塗布し、その後フレームを引き上げて金属ペースト層19を乾燥させ、金属ペースト層19を形成した。
【0057】
カーボンペースト層18及び金属ペースト層19を形成した個々の導電体12をソケット部3から取り外し、別途用意した表面が錫めっきされたリードフレームの両先端部の陽極側に導電体の陽極端子を一部切断除去して載置し、陰極側に導電体の金属ペースト側を載置し、前者はスポット溶接で、後者は金属ペーストで接続した。その後、リードフレームの一部を除いてエポキシ樹脂で封口し(リードフレームは、封口した樹脂外の所定場所で切断された後折り曲げ加工されている)、大きさ7.3×4.3×2.8mmのチップ状コンデンサを作製した。さらに、コンデンサを温度60℃、相対湿度90%RHの恒湿槽に48時間放置した後、125℃、誘電体15への印加電圧3.5Vで5時間エージングした。得られたコンデンサは、定格2.5V容量680μFであり、化成での加熱処理を実施しなかったものと比較して、非常に漏れ電流の小さい特性が得られた。
【符号の説明】
【0058】
1 コンデンサ製造用治具
2 回路基板
3 ソケット部
4 絶縁性基板
5 定電流素子(定電流ダイオード)
5a カソード
5b アノード
6 端子
7 端子穴
7a 端子穴の内表面
8 スルーホール
9 接続端子
10 基部
11 コネクタ
12 導電体
13 陽極端子
14 テフロンリング
15 誘電体層
16 ドーパント
17 半導体層
18 カーボンペースト層
19 金属ペースト層
20 交換用基板
30 化成溶液
31 ドーパント溶液
32 半導体層形成溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板とソケット部とを有するコンデンサ製造用治具であって、
前記回路基板は、絶縁性基板と、該絶縁性基板上に形成された、アノードとカソードを有する少なくとも1つの定電流素子と、を有し、かつ、
前記ソケット部は、基部と、該基部の一方の面に形成された少なくとも1つのコネクタと、前記基部の他方の面に前記コネクタと導通するように形成された少なくとも1つの導電体用端子と、を有し、
前記回路基板と前記ソケット部は着脱可能であり、前記回路基板と前記ソケット部が接続されているときは前記定電流素子のカソードと前記コネクタとが導通していることを特徴とするコンデンサ製造用治具。
【請求項2】
前記回路基板は、前記絶縁性基板上に並列に形成された2つ以上の定電流素子を有することを特徴とする請求項1記載のコンデンサ製造用治具。
【請求項3】
前記絶縁性基板の一方の面に、前記コネクタを受容可能な少なくとも1つの端子穴が形成され、該端子穴の内表面の少なくとも一部に前記定電流素子のカソードが形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のコンデンサ製造用治具。
【請求項4】
前記定電流素子の個数は、前記コネクタの個数に一致することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコンデンサ製造用治具。
【請求項5】
前記コネクタの個数は、前記端子の個数に一致することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコンデンサ製造用治具。
【請求項6】
前記回路基板と略同一の形状を有し、定電流素子を有しておらず、かつ前記ソケット部を着脱可能な交換用基板をさらに備える、請求項1〜5のいずれかに記載のコンデンサ製造用治具。
【請求項7】
前記交換用基板の一方の面に、前記コネクタを受容可能な少なくとも1つの端子穴が形成されていることを特徴とする請求項6に記載のコンデンサ製造用治具。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のコンデンサ製造用治具を用いることを特徴とするコンデンサの製造方法。
【請求項9】
請求項6又は7に記載のコンデンサ製造用治具に係る回路基板、ソケット部、及び交換用基板を準備する工程と、
前記ソケット部に、コンデンサ素子の一方の電極となる少なくとも1つの導電体を取り付ける工程と、
前記ソケット部を前記交換用基板に取り付ける工程と、
化成溶液槽に前記導電体が浸漬されるように配置し、前記交換用基板に陽極を、該槽内に設けられた外部電極に陰極を設置し、前記導電体に電圧を印加し、前記導電体の表面を化成する化成処理工程と、
前記ソケット部を前記交換用基板から取り外し、前記回路基板に取り付ける工程と、
半導体層形成溶液槽に前記導電体が浸漬されるように設置し、前記回路基板に陽極を、該槽内に設けられた外部電極に陰極を設置し、前記導電体に一定の電流になるように電圧を印加し、化成皮膜上に半導体層を形成する半導体層形成工程と、
前記ソケット部を前記回路基板から取り外し、前記交換用基板に取り付ける工程と、
化成溶液槽に前記導電体が浸漬されるように配置し、前記交換用基板に陽極を、化成溶液槽に設けられた外部電極に陰極を設置し、前記導電体へ電圧を印加し、導電体の化成皮膜を再度化成する再化成処理工程と、
前記半導体層上にカーボンペースト層及び金属ペースト層を順次形成する工程と、を有するコンデンサ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−238740(P2011−238740A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108174(P2010−108174)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】