説明

コンデンサ

【課題】小型でかつ高い静電容量を得られ、さらに絶縁性能の高い薄膜誘電体を用いたコンデンサを提供する。
【解決手段】薄膜コンデンサは無機物層と、自己組織化によって形成した有機物層とを積層した厚み10nm以下の誘電体膜と、前記誘電体膜の表面に形成された電極膜とを有する。電極膜はアルミを蒸着法によって、誘電体膜はアルミ蒸着膜を酸素プラズマ処理によって酸化膜を形成した表面に有機膜を付与して、形成することができる。これらを繰り返し積層、さらに巻回することが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、誘電体を用いたクコンデンサに関するもので、特に、薄膜誘電体を用いたコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエレクトロニクス技術の進展に伴い、小型で容量密度の高いコンデンサが求められている。このため、誘電体膜の超薄膜化によって、小型で容量密度の高いコンデンサを実現する動きがある。
【0003】
しかし、誘電体にSiO2などの無機物を用いた場合、2nm以下まで薄層化を行った場合、トンネル電流が発生し、絶縁性が保てない、という問題があった。
【0004】
これに対して、特許文献1にあるように、有機物を自己組織化単層膜によって形成する手法が提案されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−119618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、誘電率がまだまだ低いという課題がある。これを解決すべく、この薄膜を用い積層等の集積化を進める方法があるが、端部が極端に薄くなることで、リーク電流が増加し易い、という課題があった。
【0007】
そこで、この発明の目的は、上述したような課題を解決するため、リーク電流が少なく、かつ、有機物単体と比較して高い静電容量が得られるコンデンサを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、無機物層と、自己組織化によって形成した有機物層と、を積層した厚み10nm以下の誘電体膜と、前記誘電体膜の表面に形成された電極膜と、を有するコンデンサである。
【0009】
また、本発明のコンデンサでは、前記誘電体膜と電極膜とが巻回されたものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小型で高い静電容量が得られ、かつリーク電流の少ないコンデンサを得ることができる。特に、積層時に積層構造端部に発生する段差や、巻回時のゆがみによってできるリーク電流を抑制することができる
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明に係るコンデンサを積層方向からから見た図である。
【図2】この発明に係るコンデンサの断面図である。
【図3】この発明に係るコンデンサの、絶縁抵抗のDC電圧依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1および図2を参照して、まず、この発明に係る誘電体コンデンサの例について説明する。

まず、本発明のコンデンサを形成するためのSi単結晶基板を用意する。これは、単にコンデンサを形成するための基材であって、本発明のコンデンサの構成に直接関係するものではない。
【0013】
誘電体膜は、無機物層と、自己組織化によって形成した有機物層と、の2層を少なくとも含む。この誘電体膜の厚みは10nm以下である。この誘電体膜の少なくとも表面に、電極膜が形成されている。
【実施例】
【0014】
Si単結晶基板上にAl膜を20nm蒸着した。
【0015】
次に、酸素プラズマによって、Al膜の表面に厚み2nmの酸化膜を形成した。このとき、Al膜が電極膜であり、Alの酸化膜が無機物層である。
【0016】
そして、酸化膜の表面に対し、自己組織化有機膜の原料であるホスホン酸を溶かした溶媒を付与し、厚み2nmの自己組織化有機膜を形成した。
【0017】
その後、60℃にて溶媒を揮発させた後、シャドウマスクを用いてパターニングしつつ、Al膜を再び蒸着した。
【0018】
本プロセスを繰り返し、10層の誘電体膜を積層形成し、これを実施例のコンデンサとした。
【0019】
一方で、自己組織化有機膜の処理を行わない以外は、実施例と同様に形成したコンデンサを作製した。これを比較例とする。
【0020】
実施例と比較例において、DC電圧を印加し、リーク電流を測定した。このリーク電流より絶縁抵抗を算出し、この絶縁抵抗のDC電圧依存性を求めた。結果を図3に示す。
【0021】
図3によると、本発明のコンデンサが、比較例に比べて、絶縁性能が十分に高いことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機物層と、自己組織化によって形成した有機物層と、を積層した厚み10nm以下の誘電体膜と、前記誘電体膜の表面に形成された電極膜と、を有するコンデンサ。
【請求項2】
前記誘電体膜と前記電極膜とが、複数層ずつ積層されたものである、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記誘電体膜と前記電極膜とが、複数層ずつ積層され、かつ巻回されたものである、請求項1または2に記載の積層コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−98406(P2013−98406A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240987(P2011−240987)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】